説明

情報提示装置および情報提示方法

【課題】運転者の運転負荷に応じて、情報を運転者に適切に提示できる情報提示装置を提供する。
【解決手段】運転者の運転負荷を推定する推定手段と、複数の構成情報からなる提示情報を取得する取得手段と、推定した運転者の運転負荷に基づいて提示情報の提示態様を決定する提示態様決定手段と、提示情報を運転者に対して提示する提示手段500と、運転者の運転負荷に応じた優先度を設定する優先度設定手段と、を備える、提示態様決定手段は、推定した運転者の運転負荷が所定値以上の場合には、推定した運転負荷に応じた優先度に基づいて、運転者に提示する構成情報の量を少なく設定し、また、提示情報を提示している際に、推定した運転者の運転負荷が所定値未満に変化した場合、変化後の運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて、運転者に提示する構成情報の量を増加するように提示態様を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報提示装置および情報提示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の運転負荷が所定値よりも小さい場合には、運転者に提示すべき情報をそのまま提示し、一方、運転者の運転負荷が所定値よりも大きい場合には、運転者に提示すべき情報を簡素化して提示する情報提示装置が知られている。また、このような情報提示装置において、運転負荷が所定値よりも大きい状態から小さい状態に低下した場合に、所定の時間以内に運転負荷が再度所定値よりも大きくなると予測された場合には、簡素化された情報の提示を継続する構成としている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−322528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、運転者の運転負荷が低下したことにより、運転者が多くの情報を取得可能となっても、簡素化された情報のみが提示されるため、運転者に十分な情報を適切に提示できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転者の運転負荷に応じて、情報を運転者に適切に提示できる情報提示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、運転者の運転負荷に応じた優先度を設定し、提示情報を提示している際に、運転者の運転負荷が所定値未満に変化した場合には、変化後の運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて構成情報の量を増加し、提示情報を提示することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、運転者の運転負荷に応じて、提示情報を運転者に適切に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る情報提示システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態に係る制御装置における情報提示処理を示すフローチャート(その1)である。
【図3】本実施形態に係る制御装置における情報提示処理を示すフローチャート(その2)である。
【図4】将来予測される運転負荷の推定方法の一例を説明するための図である。
【図5】提示情報の種別が渋滞情報の場合に、提示情報を構成する複数の構成情報に設定される優先度の一例を示す図である。
【図6】提示情報の種別がいわゆるエコ運転アドバイス情報の場合に、提示情報を構成する複数の構成情報に設定される優先度の一例を示す図である。
【図7】現時点での運転負荷の推定方法の一例を説明するための図である。
【図8】運転者の運転負荷が、当初推定した運転負荷のまま推移する場合の提示情報の提示態様の一例を示す図である。
【図9】運転者の運転負荷が、情報提示の途中で低下した場合の提示情報の提示態様の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態においては、車両の運転者に対して提示情報を提示する情報提示システムを有する車両を例示して説明する。
【0010】
図1は、情報提示システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の情報提示システムは、情報提示ユニット100、車両コントローラ200、各種センサ300、ナビゲーション装置400、および情報提示装置500を備える。これらの各構成は、CAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続され、相互に情報の授受を行うことができる。
【0011】
車両コントローラ200は、各種センサ300から、車両の走行情報、および運転者による操作情報など各種車両情報を取得する。各種センサ300には、例えば、図1に示すように、車速センサ301や操舵角センサ302が含まれ、車両コントローラ200は、車速センサ301から車速、操舵角センサ302から操舵角などの各種車両情報を取得する。なお、取得した車両情報は、情報提示ユニット100に送信される。
【0012】
ナビゲーション装置400は、道路形状データなどを格納する地図データベース410と、携帯電話などと接続して外部データベースと通信する通信装置420と、地図データベース410および通信装置420から道路情報を取得する道路情報取得装置430とを有している。そして、ナビゲーション装置400は、地図データベース410を参照して、車両が走行すると予測される経路において運転負荷が高いと予測される道路形状の有無や、その道路形状の位置情報などの道路情報を取得する機能を有する。ここで、運転者の運転負荷が高いと予測される道路形状としては、例えば、カーブ、交差点、合流点、分岐点、または環状交差点(ランナバウト、もしくはRoundabout)などが挙げられる。
【0013】
また、ナビゲーション装置400は、通信装置420を介して、外部のテレマティクスデータベースと通信することで、車両が走行すると予測される経路上の気象情報を取得する機能を有す。さらに、ナビゲーション装置400は、GPS(Global Positioning System)モジュール(不図示)を有しており、GPSモジュールを介して、自車両の位置情報を検出する機能を有する。加えて、ナビゲーション装置400は、地図データベース410を参照して、目的地までの誘導経路を取得する機能を有する。
【0014】
情報提示ユニット100は、運転者の運転負荷に応じて、提示情報を運転者に提示するための情報提示処理を実行する制御装置10を備える。
【0015】
本実施形態の制御装置10は、情報提示処理を実行するためのプログラムが格納されたROM(Read Only Memory)12と、このROM12に格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)11と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)13と、を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)11に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0016】
制御装置10は、ROM12に格納されたプログラムをCPU11により実行することにより、車両情報取得機能、道路情報取得機能、運転負荷推定機能、情報種別選択機能、提示情報取得機能、優先度設定機能、および提示態様決定機能の各機能を実現する。以下に、制御装置10が備える各機能について説明する。
【0017】
制御装置10の車両情報取得機能は、車両コントローラ200から、車両の走行情報や、運転者による操作情報など各種車両情報を取得する。
【0018】
制御装置10の道路情報取得機能は、ナビゲーション装置400の道路情報取得装置430から、車両が走行すると予測される経路における道路状況を道路情報として取得する。例えば、道路情報取得機能は、ナビゲーション装置400に備える地図データベース410を参照して、車両が走行すると予測される経路において運転負荷が高いと予測される道路形状の有無や、その道路形状の位置情報などの道路情報を取得する。また、道路情報取得機能は、車両が走行すると予測される経路上の気象情報、自車両の位置情報、および経路誘導情報などの道路情報を取得する。
【0019】
制御装置10の運転負荷推定機能は、車両情報取得機能により取得した車両情報と、道路情報取得機能により取得した道路情報とに基づいて、運転者の運転負荷を推定する。なお、本実施形態において、運転負荷推定機能は、運転者の運転負荷を「高」、「中」、「低」の三段階の運転負荷レベルに分けて推定する。運転者の運転負荷の詳細な推定方法については後述する。
【0020】
制御装置10の情報種別選択機能は、車両情報取得機能により取得された車両情報と、道路情報取得機能により取得された道路情報とに基づいて、いわゆるエコ運転(消費燃料の観点から効率の良い運転)アドバイスや、車両が半ドア状態で走行していることを示す半ドア走行警告などの提示情報の種別のうち、車両の状態および車両周辺の状況に応じて運転者に提示すべき提示情報の種別を選択する。例えば、車両情報取得機能により半ドア警報信号が取得された場合、情報種別選択機能は、半ドア走行警告を運転者に提示すべき提示情報の種別として選択する。さらに、情報種別選択機能は、運転者がナビゲーション装置400に備える操作パネル(不図示)など操作して選択した提示情報の種別を、運転者に提示する提示情報の種別として選択する。
【0021】
制御装置10の提示情報取得機能は、車両情報取得機能により取得された車両情報と、道路情報取得機能により取得された道路情報と、情報種別選択機能により選択された提示情報の種別とに基づいて、運転者に提示すべき提示情報を取得する。例えば、選択された提示情報の種別が渋滞情報の場合、道路情報取得機能から取得した道路情報に基づいて、「交通事故のため、次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、交通集中のため、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。この渋滞を通過するのに約10分掛かります。イライラせずに運転しましょう。」との提示情報を取得する。
【0022】
制御装置10の優先度設定機能は、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、運転者の運転負荷に応じた優先度を設定する。提示情報取得機能により取得された提示情報は複数の構成情報から構成されており、例えば、上記の渋滞情報に関する提示情報は「次の○○○交差点から約2km渋滞」、「事故渋滞」、「通過するのに約20分」、「更にその先、交通集中」、「更にその先、△△△交差点から約1kmの渋滞」、「更にその先、通過するのに約10分」、および「イライラせずに」との複数の構成情報から構成されている。優先度設定機能は、提示情報を構成するこれらの構成情報のそれぞれに優先度を設定する。
【0023】
なお、構成情報に設定される優先度は、運転者の運転負荷に対応して設定される。例えば、本実施形態では、運転者の運転負荷は、運転負荷レベル「高」、「中」、「低」の三段階で推定されるため、構成情報に設定される優先度も運転者の運転負荷レベルに対応して「高」、「中」、「低」の三段階に分けて設定される。
【0024】
また、構成情報に設定される優先度は、例えば、構成情報の重要性、構成情報の把握し易さ、および構成情報の提示が運転者に必要とされるまでの時間などに基づいて設定される。例えば、構成情報の重要性が高いほど、構成情報が把握し易いほど、または構成情報の提示が運転者に必要とされるまでの時間が短いほど、構成情報の優先度は高く設定される。
【0025】
制御装置10の提示態様決定機能は、運転負荷推定機能により推定された運転者の運転負荷と、情報種別選択機能により選択された提示情報の種別とに基づいて、提示情報を運転者に提示する提示態様(提示方法)を決定する。本実施形態において、提示態様決定機能は、運転者に提示する提示情報の情報量、運転者に提示情報を提示する提示時間、および運転者に提示情報を提示する提示タイミングを決定することで提示情報の提示態様を決定する。例えば、提示情報の情報量に関して、提示態様決定機能は、運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて、提示情報を構成する複数の構成情報のうち一部の構成情報を運転者に提示する構成情報として抽出することで、運転者に提示する提示情報の情報量を調整することができる。例えば、運転者の運転負荷レベルが「高」の場合、優先度「高」が設定された構成情報から提示情報を構成することで、運転者に提示する提示情報の情報量を少なく設定する。また、運転者の運転負荷レベルが「中」の場合は、優先度「高」が設定された構成情報に加え、優先度「中」が設定された構成情報から提示情報を構成することで、運転者の運転負荷レベルが「高」の場合よりも、運転者に提示する提示情報の情報量を多く設定する。さらに、運転者の運転負荷レベルが「低」の場合は、優先度「高」が設定された構成情報および優先度「中」が設定された構成情報に加え、優先度「低」が設定された構成情報から提示情報を構成することで、運転者に提示する提示情報が十分な情報量となるように設定する。
【0026】
また、提示態様決定機能は、決定した提示情報の情報量に基づいて、運転者に提示情報を提示する提示時間Tdを決定する。すなわち、運転者が提示情報を認識できるように、運転者に提示する提示情報の情報量が多い場合は、運転者に提示する提示情報の提示時間Tdを長く設定し、一方、運転者に提示する提示情報の情報量が少ない場合は、運転者に提示する提示情報の提示時間Tdを短く設定する。なお、提示情報の情報量は運転負荷に応じて変化するため、提示時間Tdを運転負荷推定機能により推定された運転者の運転負荷に応じて決定してもよい。
【0027】
さらに、提示態様決定機能は、運転負荷推定機能により推定された運転者の運転負荷に応じて、運転者に提示情報を提示する提示タイミングを決定する。例えば、運転者の運転負荷が大きい場合は、運転者の運転負荷が大きくなる前、または運転者の運転負荷が小さくなった後で提示情報の提示を開始するように、運転者に提示情報を提示する提示タイミングを変更する。加えて、提示態様決定機能は、運転者が提示情報を把握するのに適した時期に提示情報を提示できるように、提示タイミングを決定する。例えば、提示情報の種別が渋滞情報である場合、渋滞箇所の手前までに当該渋滞箇所の渋滞情報が提示される必要があるため、提示態様決定機能は、渋滞箇所の手前までに当該渋滞箇所の渋滞情報が提示されるように、提示タイミングを決定する。
【0028】
なお、上述した各機能は、本実施形態においては、制御装置10により実現されるが、これに限定するものではなく、例えば、これら機能を、ナビゲーション装置400やメーターコントロール(不図示)などの装置に分散させてもよい。
【0029】
情報提示装置500は、制御機能10の提示態様決定機能により決定された提示情報の提示態様で、運転者に提示情報を提示する。情報提示装置500としては、ディスプレイ510や、スピーカ520などが挙げられる。ディスプレイ510は、例えば、ナビゲーション装置400やメーターパネル(不図示)内に設置されており、ディスプレイ510に備える画面上に提示情報をテキスト情報として表示することで、運転者に提示情報を認識させることができる。また、スピーカ520は、例えば、ナビゲーション装置400に設置されており、ガイダンス音声として提示情報を出力することで、運転者に提示情報を認識させることができる。
【0030】
次に、制御装置10による情報提示処理を、図2および図3に示すフローチャートに沿って説明する。図2および図3は、制御装置10における情報提示処理を示すフローチャートである。この情報提示処理は、制御装置10により、一定時間間隔で実行される。なお、この情報提示処理を行うための各機能をナビゲーション装置400やメーターコントロールなどの装置に分散させている場合には、ナビゲーション装置400やメーターコントロールのメインプログラムにより、これら機能を実行するプログラムを一定時間間隔で呼び出すことで、この情報提示処理が一定時間間隔で実行される。
【0031】
まず、ステップS101では、制御装置10により、イグニッションがオンであるか判断される。イグニッションがオンである場合は、ステップS102に進む。一方、イグニッションがオフである場合は、一定時間経過後に、再び、ステップS101を行う。
【0032】
次に、ステップS102では、運転者により提示すべき提示情報の種別が選択されたか判断される。例えば、運転者が渋滞情報を取得するため、ナビゲーション装置400に備える操作パネルなどを操作して、渋滞情報を運転者に提示する提示情報の種別として選択した場合には、情報種別選択機能は、運転者により提示情報の種別が選択されたと判断する。運転者により提示情報の種別が選択された場合は、ステップS103に進む。一方、運転者により提示情報の種別が選択されていない場合は、ステップS104に進む。
【0033】
ステップS103では、運転者により選択された提示情報の種別が、運転者に提示すべき提示情報の種別として制御装置10のRAM13に記憶される。
【0034】
ステップS104では、制御装置10の情報種別選択機能により、運転者に提示すべき提示情報の種別があるか否かが判断される。例えば、ステップS102において、運転者により提示すべき提示情報の種別が選択されており、ステップS103において、運転者に提示すべき提示情報の種別がRAM13に記憶されている場合は、情報種別選択機能は、RAM13を参照して、提示すべき提示情報の種別があると判断し、ステップS105に進む。また、運転者により提示すべき提示情報の種別が選択されていない場合(ステップS102=NO)、情報種別選択機能は、車両情報取得機能により取得された車両情報と、道路情報取得機能により取得された道路情報とに基づいて、車両の状態および車両周辺の状況に応じて運転者に提示すべき提示情報の種別を選択する。例えば、車両情報取得機能により、車両コントローラ200から半ドア走行警告信号を取得した場合、情報種別選択機能は、半ドア走行警告を提示すべきと判断し、半ドア走行警告を運転者に提示すべき提示情報の種別として選択する。このように、情報種別選択機能により、運転者に提示すべき提示情報の種別が選択された場合も、運転者に提示すべき提示情報の種別があると判断され、ステップS105に進む。なお、情報種別選択機能により、提示すべき提示情報の種別はないと判断された場合は、ステップS102に戻る。また、運転者に提示すべき提示情報の種別が2以上ある場合は、例えば、予め提示情報の種別ごとに設定した優先度などに基づいて、いずれか一方の種別の提示情報を提示してもよいし、または、2以上の種別の提示情報を同時に提示してもよい。
【0035】
次に、ステップS105では、制御装置10の車両情報取得機能により、車両コントローラ200から車両情報が取得される。
【0036】
ステップS106では、制御装置10の道路情報取得機能により、ナビゲーション装置400から道路情報が取得される。なお、ステップS105および106は並行して行ってもよく、またステップS106を先に行ってもよい。
【0037】
ステップS107では、ステップS105において車両情報が取得されたか、またはステップS106において道路情報が取得されたか判断される。これらの情報が取得された場合はステップS108に進み、一方、これらの情報が取得されていない場合はステップS102に戻る。あるいは、例えば、運転者が渋滞情報の提示を選択した場合に、渋滞情報に関する車両情報・道路情報を取得できない場合には、「渋滞はありません。」などの提示情報を提示するために、ステップS108に進む態様としてもよい。
【0038】
ステップS108では、運転負荷推定機能により、車両情報取得機能により取得された車両情報、および道路情報取得機能により取得された道路情報を用いて、車両が走行すると予測される経路において将来予測される運転者の運転負荷が推定される。なお、本実施形態においては、運転負荷推定機能は、将来予測される運転者の運転負荷を「高」、「中」、「低」の三段階の推定負荷レベルに分けて推定する。また、推定された運転者の運転負荷は、制御装置10のRAM13に記憶される。RAM13に記憶されたこの運転負荷は、後述するステップS116において、運転負荷レベルが低下したかを判断する際に用いられる。
【0039】
図4は、将来予測される運転者の運転負荷の推定方法の一例を説明するための図である。本実施形態において、運転負荷推定機能は、運転者の運転負荷が高くなると予測される交差点、合流点、分岐点、または環状交差点などの道路形状の位置から自車両の位置までの距離と、運転負荷の推定基準となる基準距離Lとを比較し、将来予測される運転者の運転負荷を推定する。具体的には、運転者の運転負荷が高くなると予測されるこれら道路形状の位置から自車両の位置までの距離が基準距離L以内である場合、運転負荷推定機能は、後述するように道路形状の種別に応じて、運転者の運転負荷レベルを「高」または「中」と推定する。一方、運転負荷が高くなると予測される道路形状の位置から自車両の位置までの距離が基準距離Lよりも大きい場合は、運転負荷推定機能は、運転者の運転負荷レベルを「低」と推定する。図4に示す場面例では、運転負荷推定機能は、ナビゲーション装置400から、車両が走行すると予測される経路上にある交差点の位置情報と、自車両の位置情報とを取得し、交差点の位置から自車両の位置までの距離が基準距離L以内であるかを判断する。図4に示すように、交差点の位置から自車両の位置までの距離が基準距離Lより小さいため、運転負荷推定機能は、将来予測される運転者の運転負荷レベルは「高」または「中」と推定することになる。
【0040】
ここで、運転者の運転負荷が高くなると予測される道路形状の位置から自車両の位置までの距離が基準距離L以内の場合における、道路形状の種別ごとに推定される運転者の運転負荷レベルの一例を下記の表に示す。
【表1】

表1に示すように、例えば、道路形状の種別が合流点または環状交差点の場合、運転者はこれら地点において他の車両などに注意を払う必要があるため、これら地点における運転者の運転負荷は高くなると想定される。そのため、道路形状の種別が合流点または環状交差点の場合、運転者の運転負荷レベルは「高」と推定される。一方、道路形状の種別が分岐点の場合、道路形状の種別が合流点または環状交差点の場合と比べ、運転者の運転負荷は低くなると想定されるため、運転者の運転負荷レベルは「中」と推定される。また、道路形状の種別が交差点の場合には、さらにナビゲーション装置400による経路誘導があるか否かが判断され、経路誘導がない場合、または右左折の経路誘導がある場合には、運転者の運転負荷は高くなると想定されるため、運転者の運転負荷レベルは「高」と推定される。一方、道路形状の種別が交差点の場合に、直進の経路誘導がある場合は、運転者の運転負荷レベルは「中」と推定される。図4に示す例では、経路上の道路形状の種別が交差点であり、またナビゲーション装置400から経路誘導情報を取得していないため、運転者の運転負荷レベルは「高」と推定される。
【0041】
なお、基準距離Lは、任意に設定した距離としてもよいが、車速に応じた距離となるように、下記の式に基づいて算出してもよい。
L[m] = K × V[km/h]
ここで、Kは適宜設定される定数であり、Vは車速を示す。車両の速度が速いほど運転者の運転負荷は高くなるものと想定されるため、このように、車両の速度が速くなるほど、運転負荷の推定基準となる基準距離Lを大きな値として算出することで、運転者の運転負荷を適切に推定することができる。
【0042】
加えて、運転負荷推定機能は、ナビゲーション装置400の通信装置420を介して、テレマティクスデータベースから、車両が走行すると予測される経路上の気象情報を取得し、取得した気象情報に基づいて運転者の運転負荷を推定してもよい。例えば、取得した気象情報が雪や強い雨の場合には、運転者の運転負荷レベルを「高」と推定してもよい。
【0043】
次に、ステップS109では、提示情報取得機能により提示情報が取得される。提示情報取得機能は、ステップS105で取得した車両情報と、ステップS106で取得した道路情報と、ステップS104で選択された提示情報の種別とに基づいて、運転者に提示すべき提示情報を取得する。例えば、選択された提示情報の種別が渋滞情報の場合、道路情報取得機能により取得した道路情報に基づいて、「交通事故のため、次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、交通集中のため、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。この渋滞を通過するのに約10分掛かります。イライラせずに運転しましょう。」との提示情報を取得する。また、選択された提示情報の種別がエコ運転アドバイス情報の場合、車両情報取得機能により取得した車両情報に基づいて、「今回の平均燃費は○○km/Lで、前回よりも△△km/L向上しました。特に発進時のアクセル操作が丁寧になりました。今後は、前方車両の流れを読んで、減速時の早めのアクセルオフを心掛ければ、更に燃費が向上します。これからも頑張りましょう。」との提示情報を取得する。
【0044】
次に、図3に示すステップS110では、優先度設定機能により、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、運転者の運転負荷に応じた優先度が設定される。
【0045】
ここで、提示情報を構成する複数の構成情報に優先度を設定する方法の一例について説明する。
【0046】
図5は、提示情報の種別が渋滞情報の場合に、提示情報を構成する複数の構成情報に設定される優先度の一例を示す図である。提示情報の種別が渋滞情報の場合、例えば、「交通事故のため、次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、交通集中のため、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。この渋滞を通過するのに約10分掛かります。イライラせずに運転しましょう。」との提示情報は、渋滞情報に関する「事故渋滞」、「次の○○○交差点から約2km渋滞」、「通過するのに約20分」、「更にその先、交通集中」、「更にその先、△△△交差点から約1kmの渋滞」、「更にその先、通過するのに約10分」、および「イライラせずに」などの複数の構成情報から構成される。優先度設定機能は、以下に説明するように、例えば、構成情報の重要性、構成情報の把握し易さ、および構成情報の提示が運転者に必要とされるまでの時間などに基づいて、これらの構成情報に優先度を設定する。
【0047】
例えば、提示情報の種別が渋滞情報の場合には、自車両の位置から近い渋滞箇所に関する構成情報や、近い将来、自車両に影響すると予測される渋滞に関する構成情報などの運転者に必要とされるまでの時間が短い構成情報の優先度は高く設定される。図5に示す例では、自車両の位置から最も近い渋滞箇所(図5中の直近)に関する「次の○○○交差点から約2km渋滞」、「通過するのに約20分」、「事故渋滞」との構成情報の優先度は高く設定され、一方、自車両の位置から遠い渋滞箇所(図5中のやや先)に関する「更に○○○交差点の先、交通集中」、「更に○○○交差点の先、△△△交差点から約1kmの渋滞」、「更に○○○交差点の先、通過するのに約10分」との構成情報の優先度は低く設定される。
【0048】
また、事実を提示する構成情報の優先度は高く設定され、一方、事実に基づく構成情報の優先度は低く設定される。図5に示す例では、実際に生じている渋滞の状況(図5中の事実)を提示する「次の○○○交差点から約2km渋滞」、「更に○○○交差点の先、△△△交差点から約1kmの渋滞」との構成情報は、事実を提示する情報であるため、優先度は高く設定される。一方、渋滞により予測される通過時間を提示する「通過するのに約20分」、「更に○○○交差点の先、通過するのに約10分」との構成情報は、事実に基づく情報であるため、優先度は低く設定される。なお、渋滞の原因を提示する「事故渋滞」、「更に○○○交差点の先、交通集中」は、事実を提示する構成情報であるが、運転者にとって重要性が低いと想定されるため、優先度は低く設定される。
【0049】
さらに、提示情報の概要を示す構成情報の優先度は高く設定され、一方、提示情報の詳細を示す構成情報の優先度は低く設定される。例えば、図5に示す例では、渋滞情報の概要を示す「次の○○○交差点から約2km渋滞」との構成情報の優先度は高く設定される。一方、渋滞の原因または種別(図5中の詳細)を示す「事故渋滞」や、この渋滞に要する通過時間(図5中の詳細)を示す「通過するのに約20分」などの詳細情報の優先度は低く設定される。このように、事実を提示する情報や概要を示す構成情報は重要度が高いため、優先度は高く設定される。
【0050】
加えて、運転者への付加的なメッセージなどの重要性の低い構成情報の優先度は低く設定される。例えば、図5に示す例では、「イライラせずに」などの付加的なメッセージ(図5中のその他)は、優先度が低く設定される。
【0051】
優先度設定機能は、上述した基準に基づいて各構成情報の優先度を総合的に判断し、運転者の運転負荷に応じた「高」、「中」、「低」の三段階の優先度を各構成情報に設定する。例えば、図5に示す例においては、直近の渋滞箇所に関する事実情報を提示する「次の○○○交差点から約2km渋滞」との構成情報の優先度は「高」に設定され、直近の渋滞箇所に関する詳細情報を提示する「通過するのに約20分」と、やや先の渋滞箇所に関する事実情報を提示する「更にその先、△△△交差点から約1kmの渋滞」との構成情報の優先度は「中」に設定され、その他、重要度の低い「更にその先、通過するのに約10分」、「事故渋滞」、「更にその先、交通集中」、および「イライラせずに」との構成情報の優先度は「低」に設定される。
【0052】
以上のようにして、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、優先度が設定される。
【0053】
このように、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに優先度を設定し、推定した運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて、複数の構成情報のうち運転者に提示すべき構成情報を選択して提示することにより、運転者の運転負荷が高い場合には、運転者に必要な情報を、要点を絞って提示でき、一方、運転者の運転負荷が低い場合には、十分な情報量の提示情報を運転者に提示できる。例えば、図5に示す例では、運転者の運転負荷レベルが「高」の場合には、「次の○○○交差点から先、約2km渋滞です」と、渋滞情報の要点を運転者に提示することができる。また、運転者の運転負荷レベルが「中」の場合には、「次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。」と、詳細情報までを含めた情報を提示することができる。さらに、運転者の運転負荷レベルが「低」の場合には、全ての構成情報から構成される提示情報「交通事故のため、次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、交通集中のため、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。この渋滞を通過するのに約10分掛かります。イライラせずに運転しましょう。」を提示することで、十分な情報量の提示情報を運転者に提示できる。
【0054】
加えて、図5に示す例では、車両から近い渋滞箇所「○○○交差点」に関する渋滞情報は、「○○○交差点」の手前までに提示される必要がある。このような場合、車両から近い渋滞箇所「○○○交差点」に関する渋滞情報の優先度を、車両から遠い渋滞箇所「△△△交差点」に関する渋滞情報の優先度よりも高く設定することで、渋滞箇所「○○○交差点」に関する渋滞情報を優先して提示することができる。これにより、「○○○交差点」の手前までに、渋滞箇所「○○○交差点」に関する渋滞情報を運転者に提示できる可能性がより高くなる。このように、提示情報に含まれる複数の構成情報のそれぞれに優先度を設定することにより、運転者が情報を必要とする時間までに、運転者が必要とする情報を提示することができる。
【0055】
また、他の例として、提示情報の種別がいわゆるエコ運転アドバイス情報の場合に、提示情報に含まれる複数の構成情報に設定される優先度について説明する。図6は、提示情報の種別がいわゆるエコ運転アドバイス情報の場合に、提示情報を構成する複数の構成情報に設定される優先度の一例を示す図である。提示情報の種別がエコ運転アドバイス情報の場合、例えば、「今回の平均燃費は○○km/Lで、前回よりも△△km/L向上しました。特に発進時のアクセル操作が丁寧になりました。今後は、前方車両の流れを読んで、減速時の早めのアクセルオフを心掛ければ、更に燃費が向上します。これからも頑張りましょう。」との提示情報は、エコ運転アドバイスに関する「平均燃費○○km/L」、「前回より向上」、「減速時の早めのアクセルオフでさらに燃費向上」、「発進時のアクセル操作が丁寧で良好」、「前回からの向上量は△△km/L」、「前方車両の流れを読む」、および「これからも頑張ろう」などの複数の構成情報から構成される。優先度設定機能は、以下に説明するように、各構成情報に優先度を設定する。
【0056】
例えば、図6に示す例においては、提示情報の種別が渋滞情報の場合と同様に、事実を提示する「平均燃費○○km/L」、「前回より向上」、「発進時のアクセル操作が丁寧で良好」、「前回からの向上量は△△km/L」などの構成情報の優先度は高く設定される。一方、事実に基づく方策(アドバイス)を提示する「減速時の早めのアクセルオフでさらに燃費が向上」、「前方車両の流れを読む」などの構成情報の優先度は低く設定される。
【0057】
また、エコ運転アドバイスの概要を示す「平均燃費○○km/L」、「前回より向上」との構成情報は、エコ運転アドバイスの詳細を示す「発進時のアクセル操作が丁寧で良好」、「前回からの向上量は△△km/L」との構成情報より優先度が高く設定さる。また同様に、方策(アドバイス)の概要を示す「減速時の早めのアクセルオフでさらに燃費が向上」との構成情報は、方策(アドバイス)の詳細を示す「前方車両の流れを読む」との構成情報よりも優先度が高く設定される。さらには、「これからも頑張ろう」などの付加的なメッセージである構成情報は、優先度が低く設定される。
【0058】
そして、優先度設定機能は、提示情報の種別が図6に示すいわゆるエコ運転アドバイス情報の場合でも、上述した基準に基づいて各構成情報の優先度を総合的に判断し、運転者の運転負荷に応じた「高」、「中」、「低」の三段階の優先度を各構成情報に設定する。例えば、エコ運転アドバイス情報の概要を示す事実情報である「平均燃費○○km/L」、「前回より向上」との構成情報の優先度は「高」に設定され、エコ運転アドバイス情報の方策(アドバイス)の概要を示す「減速時の早めのアクセルオフでさらに燃費が向上」との構成情報の優先度は「中」に設定され、その他、詳細情報などの重要度の低い「発進時のアクセル操作が丁寧で良好」、「前回からの向上量は△△km/L」、「前方車両の流れを読む」、および「これからも頑張ろう」との構成情報の優先度は「低」に設定される。
【0059】
次に、ステップS111では、提示態様決定機能により、運転負荷推定機能により推定された運転者の運転負荷と、運転者に提示すべき提示情報の種別とに基づいて、運転者に提示する提示情報の情報量、提示時間Td、および提示タイミングが決定される。
【0060】
例えば、提示情報の種別が図5に示す渋滞情報の場合、運転者の運転負荷レベルが「高」の場合には、運転者の運転負荷レベルに対応した優先度「高」が設定されている構成情報「次の○○○交差点から先、約2km渋滞です」から提示情報を構成することで、運転者に提示する提示情報の情報量を少なく設定する。また、運転者の運転負荷レベルが「中」の場合には、優先度が「高」に設定されている構成情報「次の○○○交差点から約2km渋滞」に加えて、優先度が「中」に設定されている「通過するのに約20分」、「更にその先、△△△交差点から約1kmの渋滞」の構成情報から「次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。」との提示情報を構成することで、運転者の運転負荷レベルが「高」の場合よりも、運転者に提示する提示情報の情報量を多く設定する。さらに、運転者の運転負荷レベルが「低」の場合には、優先度が「高」および「中」に設定されている構成情報に加えて、優先度「低」に設定されている構成情報、すなわち全ての構成情報から「交通事故のため、次の○○○交差点から先、約2km渋滞です。この渋滞を通過するのに約20分掛かります。更にその先、交通集中のため、△△△交差点から先、約1kmの渋滞です。この渋滞を通過するのに約10分掛かります。イライラせずに運転しましょう。」との提示情報を構成することで、運転者に提示する提示情報が十分な情報量となるように設定する。
【0061】
また、決定された情報量の提示情報を運転者が認識できるように、提示態様決定機能により、運転者に提示情報を提示する提示時間Tdが適宜決定される。さらに、運転者に提示情報を提示する提示タイミングも、運転者が提示情報を必要とするまでに、運転者が提示情報を認識できるタイミングとなるように適宜決定される。
【0062】
ステップS112では、情報提示装置500が、決定された提示情報の提示態様で、運転者に提示情報を提示する。なお、提示情報を提示している時間は、制御装置10に備えるタイマ14によりカウントされる。
【0063】
次に、ステップS113では、制御装置10により、制御装置10に備えるタイマ14が参照され、提示情報を提示してから提示時間Tdを経過したか判断される。提示情報を提示してから提示時間Tdを経過している場合は、ステップS118に進み、一方、提示情報を提示してから提示時間Tdをまだ経過していない場合は、ステップS114に進む。
【0064】
ステップS114では、車両情報取得機能により、車両コントローラ200から、車速、操舵角などの車両情報が取得される。
【0065】
ステップS115では、ステップS114で取得した車両情報に基づいて、現時点の運転者の運転負荷が推定される。ここで、図7は、現時点における運転者の運転負荷の推定方法の一例を説明するための図である。本実施形態においては、図7に示すように、現時点の運転者の運転負荷を「高」、「中」、「低」の三段階の運転負荷レベルに分け、取得した車速および操舵角の絶対値との関係に基づいて、運転者の運転負荷レベルを推定する。具体的には、制御装置10は、図7の上図に示すような車速および操舵角の絶対値と、運転者の運転負荷との関係を格納したテーブルをROM12に備えている。図7の上図に示すように、車速および操舵角の絶対値と、推定される運転者の運転負荷とは以下の関係を有する。すなわち、車両の速度が速くなるほど、運転者の運転負荷は高くなると想定されるため、運転者の運転負荷レベルは高く推定される。また、操舵角の絶対値が大きくなるほど、運転者にかかる運転負荷は高くなると想定されるため、運転者の運転負荷レベルは高く推定される。さらに、車速と操舵角の絶対値が共に大きくなる場合も、どちらか一方のみが大きい場合と比べて、運転者にかかる運転負荷は高くなると想定されるため、運転負荷レベルは高く推定される。運転負荷推定機能は、このテーブルを参照して、取得した車速および操舵角の絶対値が、図7の上図のいずれの運転者の運転負荷レベルに該当するか判断することにより、運転者の運転負荷レベルを推定する。
【0066】
また、図7の下図に示すように、車両コントローラ200から方向指示器点灯信号を取得している場合は、車両は車線変更するものと予測されるため、運転者の運転負荷は高くなるものと想定される。そのため、この場合、運転者の運転負荷の判定基準値(運転負荷レベル「高」、「中」、「低」を隔てる境界値)を通常時よりも低車速、小操舵角側に変更して、運転負荷を推定してもよい。また、車両情報取得機能により取得されたワイパーの作動速度がHi(高速度)の場合は、雨天により視界や路面状況が悪化していると予測されるため、同様に、運転者の運転負荷が高くなるものと想定される。よって、この場合も、運転者の運転負荷の判定基準値を通常時よりも低車速、小操舵角側に変更して、運転者の運転負荷を推定してもよい。さらに、オーディオ装置やエアコンが運転者により操作されている場合も、運転者の運転負荷は高くなると想定されるため、判定基準を通常時よりも低車速、小操舵角側にシフトして、運転負荷を推定してもよい。
【0067】
ステップS116では、運転者の運転負荷レベルが低下したかが判断される。具体的には、制御装置10のRAM13に記憶されている過去の運転負荷レベルと、ステップS115で推定した現時点の運転者の運転負荷レベルとを比較し、現時点の運転負荷レベルが、RAM13に記憶されている運転負荷レベルよりも低いかを判断する。運転者の運転負荷レベルが低下したと判断された場合、例えば、運転者の運転負荷レベルが「高」から「低」に変化した場合は、ステップS117に進む。一方、運転者の運転負荷レベルが低下していないと判断された場合は、ステップS112に戻り、現在提示している提示情報を続けて提示させる。なお、ステップS116において、運転者の運転負荷レベルが低下したか判断した後は、ステップS115で推定した現時点の運転者の運転負荷レベルを制御装置10のRAM13に記憶する。
【0068】
ステップS117では、ステップS115で推定した運転者の運転負荷に基づいて、再度、運転者に提示すべき提示情報の情報量および提示時間Tdが決定される。なお、ステップS117においては、運転者の運転負荷レベルは低下したものと判断されており、低下した運転負荷に応じた優先度に基づいて、運転者に提示する提示情報の情報量を増加するとともに、提示時間Tdを延長することになる。
【0069】
図8および図9は、運転者の運転負荷と提示情報の提示態様との関係を説明するための図である。図8は、運転者の運転負荷が、当初推定した運転負荷のまま推移する場合の提示情報の提示態様の一例を示す図であり、図9は、運転者の運転負荷が、情報提示の途中で低下した場合の提示情報の提示態様の一例を示す図である。なお、図8および図9に示す場面例は、提示情報の種別がいわゆるエコ運転アドバイス情報の場合における提示情報の提示態様の一例を示している。
【0070】
例えば、図8に示すように、運転者の運転負荷が当初推定した運転負荷レベル、すなわち、ステップS108で推定した運転者の運転負荷レベルである「高」のまま推移した場合は、ステップS117に進むことがないため、当初決定された提示情報および提示時間Td、すなわち、ステップS111で決定された提示情報の情報量および提示時間Tdは変更されない。そのため、当初推定した運転者の運転負荷レベルである「高」に応じて、優先度「高」の事実を提示する構成情報から構成される「今回の平均燃費は○○km/Lで、前回よりも向上しました。」との提示情報1が、当初決定された提示時間Td(時刻T1から提示終了予定時刻T2までの時間)を経過するまで、情報提示装置500により運転者に提示される。
【0071】
一方、図9に示すように、当初決定された提示時間Tdの終了予定時刻T2よりも前の時刻T3において、運転者の運転負荷レベルが「高」から「低」に低下した場合、提示態様決定機能により、再度、提示情報の提示態様が決定される。具体的には、図9に示すように、提示態様決定機能は、運転者の運転負荷レベル「高」に応じた優先度「高」の事実を提示する構成情報から構成される提示情報1に、運転者の運転負荷レベル「中」に応じた優先度「中」の方策(アドバイス)に関する構成情報から構成される提示情報2と、運転者の運転負荷レベル「低」に応じた優先度「低」の詳細情報に関する構成情報から構成される提示情報3と、を追加することで、運転者に提示する提示情報の情報量を増加する。すなわち、運転者の運転負荷レベルが「高」から「低」に低下した場合は、図9に示すように、提示情報1「今回の平均燃費は○○km/Lで、前回よりも向上しました。」に、提示情報2「ワンポイントアドバイス。減速時の早めのアクセルオフを心掛ければ、更に燃費が向上します。」と、提示情報3「詳細情報。前回からの向上量は△△km/Lです。特に発進時のアクセル操作が丁寧になりました。今後は、前方車両の流れを読むと更に燃費が向上します。これからも頑張りましょう。」と、を追加した提示情報が新たに決定した提示時間Td(時刻T3から時刻T4までの時間)だけ提示されることになる。
【0072】
なお、ステップS117において提示時間Tdが延長された場合は、ステップS113に戻り、ステップS113において、提示情報を提示してから延長された提示時間Tdを経過したかが判断される。
【0073】
ステップS113において、提示情報を提示してから提示時間Tdを経過したと判断された場合、ステップS118に進む。ステップS118では、制御装置10は、提示情報の提示を終了する。そして、提示情報の提示を終了した後は、ステップS119に進む。
【0074】
ステップS119では、制御装置10により、イグニッションがオフか判断される。イグニッションがオフの場合、制御装置10は、この情報提示処理を終了する。一方、イグニッションがオンの場合、ステップS102に戻り、再度、この情報提示処理を繰り返す。なお、ステップS119が行われたタイミングで、制御装置10に備えるタイマ14がカウントしていた提示情報を提示していた時間はクリアされる。
【0075】
以上のように、本実施形態では、提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、運転者の運転負荷に応じた優先度を設定し、推定した運転者の運転負荷に応じた優先度の構成情報から構成される提示情報を運転者に提示する。特に、本実施形態においては、情報の重要性、情報の把握し易さ、運転者が情報を必要とするまでの時間などを考慮して各構成情報に優先度が設定される。そのため、運転者の運転負荷が高い場合は、優先度が高い情報を優先して提示することで、運転者に必要な情報を、要点を絞って提示することができる。また、運転者が情報を必要とするまでの時間が短い情報は優先度が高く設定されるため、運転者が情報を必要とする時間までに運転者が必要とする提示情報を提示することができる。
【0076】
さらに、本実施形態においては、図9に示すように、当初推定した運転者の運転負荷に応じた情報量および提示時間Tdで提示情報を提示している途中に、運転者の運転負荷が低下した場合には、低下した運転者の運転負荷に応じた情報量となるように、現在提示されている情報に、低下した運転者の運転負荷に応じた優先度の構成情報を追加することで、運転者に提示する提示情報の情報量を増加させる。これにより、提示情報を提示している途中に、運転者の運転負荷が低下し、運転者に時間的な余裕が生じた場合には、低下した運転負荷に応じた十分な情報量の提示情報を運転者に提示することができる。さらに、本実施形態では、運転者の運転負荷が低下した場合に運転者に提示する提示情報の情報量を増加するとともに、増加した提示情報の情報量に応じて提示情報の提示時間Tdを延長する。これにより、運転者が、情報量の増加した提示情報を認識するための時間を確保することができ、運転者に情報量の増加した提示情報を適切に認識させることができる。
【0077】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0078】
すなわち、本発明は、上述した実施形態に限られず、例えば、本実施形態では、運転者の運転負荷を「高」、「中」、「低」の三段階の運転負荷レベルに分けて推定したが、例えば、「高」、「低」の二段階の運転負荷レベルに分けて推定してもよいし、または「高」、「中」、「低」の三段階よりも多くの運転負荷レベルに分けて推定してもよい。
【0079】
さらに、運転者の運転負荷を推定する際に、運転者の運転負荷を、車両情報などに基づいて数値として算出して、運転者の運転負荷を推定してもよい。
【0080】
なお、上述した実施形態の運転負荷推定機能は本発明の推定手段に、提示情報取得機能は本発明の取得手段に、優先度設定機能は本発明の優先度設定手段に、提示態様決定機能は本発明の提示態様決定手段に、情報提示装置500は本発明の提示手段にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0081】
100…情報提示ユニット
10…制御装置
200…車両コントローラ
300…各種センサ
301…車速センサ
302…操舵角センサ
400…ナビゲーション装置
500…情報提示装置
510…ディスプレイ
520…スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車両状態及び/又は道路状況に基づいて、運転者の運転負荷を推定する推定手段と、
複数の構成情報からなる提示情報を取得する取得手段と、
前記推定した運転者の運転負荷に基づいて、前記提示情報を構成する複数の構成情報のうち運転者に提示する構成情報の量を含む前記提示情報の提示態様を決定する提示態様決定手段と、
前記提示態様決定手段により決定された提示態様で、前記提示情報を運転者に対して提示する提示手段と、
前記提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、前記運転者の運転負荷に応じた優先度を設定する優先度設定手段と、を備える情報提示装置であって、
前記提示態様決定手段は、前記推定した運転者の運転負荷が所定値以上の場合には、前記推定した運転負荷に応じた優先度に基づいて、前記運転者に提示する構成情報の量を少なく設定し、
前記提示態様決定手段は、前記提示情報を提示している際に、前記推定した運転者の運転負荷が所定値未満に変化した場合に、前記変化後の運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて、前記運転者に提示する構成情報の量を増加するように前記提示態様を変更することを特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示装置であって、
前記提示態様は、前記提示情報の運転者への提示時間、および前記提示情報の運転者への提示タイミングをさらに含むことを特徴とする情報提示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提示装置であって、
前記提示態様決定手段は、前記運転者に提示する構成情報の量に応じて、前記提示情報の運転者への提示時間を設定することを特徴とする情報提示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の情報提示装置であって、
前記提示態様決定手段は、前記提示情報を提示している際に、運転者の運転負荷が所定値未満に変化した場合に、前記変化後の運転者の運転負荷に基づいて増加した前記構成情報の量に基づいて、前記提示時間を延長するように前記提示態様を変更することを特徴とする情報提示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の情報提示装置であって、
前記優先度設定手段は、前記構成情報の重要性、前記構成情報の把握し易さ、および前記構成情報が運転者に必要とされるまでの時間のうち少なくても1つに基づいて、前記優先度を設定することを特徴とする情報提示装置。
【請求項6】
提示情報を構成する複数の構成情報のそれぞれに、運転者の運転負荷に応じた優先度を設定し、前記運転者の運転負荷が所定値以上の場合には、前記運転負荷に応じた優先度に基づいて、前記運転者に提示する構成情報の量を少なく設定し、前記提示情報を提示している際に、前記運転者の運転負荷が所定値未満に変化した場合には、前記変化後の運転者の運転負荷に応じた優先度に基づいて、前記構成情報の量を増加するように、前記提示情報を提示することを特徴とする情報提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−237954(P2010−237954A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85141(P2009−85141)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】