説明

情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法、磁気記録媒体

【課題】アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板について、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いる研磨工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する方法において、酸化セリウム砥粒の残留を抑制し、更に主表面の面荒れを少なくする。
【解決手段】(SiO−Al)が62モル%以下のLiO−Al−SiO系ガラスからなる円板を、酸化セリウム研磨工程の跡、硫酸濃度20質量%以上80質量%以下、過酸化水素濃度1質量%以上10質量%以下である洗浄液を用いて50℃以上100℃以下の液温にて洗浄し、その後、ガラス円板の主表面をコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて仕上げ研磨する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法、並びに磁気記録媒体に関し、より詳細にはガラス基板研磨後の洗浄工程の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクの高容量化に向けたガラス基板に対する2つの大きな技術課題が存在している。1点は高速回転時の振動特性や強度などの機械的特性、もう1点がガラス基板に残留する異物除去である。
【0003】
高速回転時の振動特性や強度を改善するためには、ヤング率、比弾性率、比重、熱膨張係数、傷つきにくさや破壊靭性など諸特性を考慮した、適切なガラス組成のガラス基板を用いる必要がある。これら特性を達成するには、SiO−Al−RO系(ROはアルカリ金属酸化物)のアルカリアルミノシリケートガラスが好適であること、特にAlは機械的特性改善に有効な成分であることが知られている。
【0004】
一方、ガラス基板に残留する異物としては、研磨レートが高いことなどの理由からガラス研磨に好適に用いられている酸化セリウム砥粒が異物として残ることが知られている。ガラス基板の製造工程では、ガラス板から切り出したガラス円板の主表面及び端面を、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨した後、主表面を更に平坦化するためにコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーによる最終研磨を行うことがある。このとき、主表面に酸化セリウム砥粒が残留していても最終研磨により除去されるが、端面に付着している酸化セリウム砥粒は除去されずに残留し、最終研磨後の洗浄工程において主表面に再付着するものと考えられている。
【0005】
このような背景から、酸化セリウム砥粒を完全に除去することが望まれており、無機酸とアスコルビン酸を含有する洗浄液が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この洗浄液では、無機酸とアスコルビン酸の作用によって、酸化セリウム砥粒を溶かして除去している。
【0006】
また、加熱した硫酸を主成分とする洗浄液を最終工程の洗浄にて使用することも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−99847号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2004−59419号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2008−90898号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが上記の洗浄技術について検証したところ、アスコルビン酸と無機酸とを含む洗浄液による洗浄では、ガラス円板の端部に残留する酸化セリウム砥粒を少なくすることは可能であるものの、完全には除去できない場合があることを確認した。また、この洗浄液はpH1〜2と低いため、アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板に適用すると大きな面荒れを引き起こす場合があることも確認した。
【0009】
一方、加熱した硫酸を主成分とする洗浄液を最終研磨工程後の洗浄に使用する場合においては、ガラス基板の端部に残留する酸化セリウム砥粒をほぼ完全に除去できるが、おおきな面荒れが起こる場合があることを確認した。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板について、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いる研磨工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する方法において、酸化セリウム砥粒の残留を抑制し、更に主表面の面荒れの少ない情報記録媒体用ガラス基板を提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記に示す情報記録媒体用ガラス基板及びその製造方法、磁気記録媒体を提供する。
(1)アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板をラッピングするラッピング工程と、その後に、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨する酸化セリウム研磨工程とを含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が62モル%以下であり、
酸化セリウム研磨工程に引き続いてガラス円板を、硫酸濃度20質量%以上80質量%以下、過酸化水素濃度1質量%以上10質量%以下である洗浄液を用いて50℃以上100℃以下の液温にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後にガラス円板の主表面を、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨する仕上げ研磨工程と、を含むことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(2)アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:55〜75モル%、Al:5〜17モル%、LiO+NaO+KO(以下、ROと記す。):4〜27モル%、MgO+CaO+SrO+BaO(以下、R’Oと記す。):0〜20モル%で、かつ、SiO+Al+RO+R’O:90モル%以上である(1)記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(3)アルカリアルミノシリケートガラスの組成において、SiOが63モル%以上、ROが16モル%以上、R’Oが0〜10モル%である(2)記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(4)前記コロイダルシリカ砥粒の平均粒径が10nm以上50nm以下である(1)〜(3)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(5)前記コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーのpHが2以上6以下である(4)記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(6)仕上げ研磨工程を前記洗浄工程に引き続いて行うことを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(7)アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が50モル%以上62モル%以下である(6)に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(8)アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:63〜71モル%、Al:7〜12.5モル%、RO:16〜24モル%、R’O:0〜10モル%で、かつ、SiO+Al+RO+R’O:90モル%以上である(7)記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(9)前記洗浄工程と仕上げ研磨工程との間に、酸化セリウム砥粒を含むスラリーとショアA硬度が60°以下である発泡樹脂層を有する研磨パッドを用いてガラス円板の主表面を研磨する再研磨工程を含む(1)〜(5)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(10)前記洗浄工程と仕上げ研磨工程との間に、平均粒径が50nm超100nm以下であるコロイダルシリカ砥粒を含みpHが8以上12以下であるスラリーを用いてガラス円板の主表面を研磨する工程を含む(1)〜(5)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(11)アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が45モル%以上50モル%未満である(9)または(10)に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(12)アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:60モル%以上63モル%未満、Al:12.5〜15モル%、RO:18〜22モル%、R’O:0〜6モル%で、かつ、SiO+Al+RO+R’O:90モル%以上である(11)記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(13)前記洗浄工程において、ガラス円板を、50℃以上60℃未満の洗浄液に25分以上30分以下、または60℃以上70℃未満の洗浄液に15分以上30分以下、または70℃以上100℃以下の洗浄液に5分以上30分以下浸漬することを特徴とする(1)〜(12)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(14)仕上げ研磨工程において、ガラス円板の主表面の二乗平均粗さ(Rms)を0.15nm以下にすることを特徴とする(1)〜(13)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(15)仕上げ研磨工程の後にpH10以上のアルカリ性洗浄剤を用いて行なう洗浄工程を含むことを特徴とする(1)〜(14)の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
(16)(1)〜(15)の何れか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
(17)(16)に記載の情報記録媒体用ガラス基板の主表面に磁気記録層が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体。
【0012】
本発明者らは、加熱した硫酸を主成分とする洗浄液をガラス円板最終研磨工程後の洗浄に使用したときに大きな面荒れが起こる現象を調べたところ、そのようなガラス円板のガラスは耐酸性に劣り、その耐酸性にはガラスの前記(SiO−Al)が影響することを見出し、また、そのような面荒れがリーチングムラに起因しこれを修復するにはコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨する仕上げ研磨工程を設けることが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0013】
また、耐酸性がより低いガラスにおいてはコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨する前に酸化セリウム砥粒を含むスラリーとスエードパッドを用いて研磨すれば表面粗さが良好な基板が得られることを見出し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱した硫酸に過酸化水素を添加したものを洗浄工程に使用しているので、アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板を、酸化セリウム砥粒を含むスラリーによる研磨工程を有していても、砥粒残留がほぼ無くなるようにすることができる。リーチングムラによる主表面の面荒れが修復されて平坦性も良好となり、今後求められる高記録容量化にも十分に対応可能な磁気記録媒体用ガラス基板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ガラス板における(SiO−Al)とエッチングレートとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関して磁気ディスク用ガラス基板(ハードディスク用ガラス基板)の製造を例にして詳細に説明する。なお、本発明はこの例に限定されない。
【0017】
先ず、下記に示す組成のアルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス板からガラス円板を切り出す。
・SiO:55〜75モル%
・Al:5〜17モル%
・RO:4〜27モル%
・R’O:0〜20モル%
・SiO+Al+RO+R’O:90モル%以上
・(SiO−Al):62モル%以下
【0018】
上記アルカリアルミノシリケートガラスにおいて、SiOはガラスの骨格を形成する成分であり、必須である。55%未満では比重が大きくなる、ガラスにキズが付きやすくなる、失透温度が上昇しガラスが不安定になる、または耐酸性が低下する。好ましくは60%以上、より好ましくは61%以上、特に好ましくは62%以上、最も好ましくは63%以上、典型的には64%以上である。但し、75%超ではヤング率が低くなる、比弾性率が低くなる、熱膨張係数が小さくなる、また粘性が高くなりすぎガラスの溶解が困難になる。好ましくは71%以下、より好ましくは70%以下、最も好ましくは68%以下である。耐酸性はSiOが63モル%未満になると低下しやすくなる。
【0019】
Alはガラスの骨格を形成し、ヤング率や比弾性率、破壊靭性を高くする成分であり、必須である。5モル%未満ではヤング率が低くなる、比弾性率が低くなる、また破壊靭性が低くなる。好ましくは6モル%以上、より好ましくは7モル%以上、典型的には8モル%以上である。但し、Alが17モル%を超えると熱膨張係数が小さくなる、粘性が高くなりすぎガラスの溶解が困難になる、または耐酸性が低下する。好ましくは15モル%以下、より好ましくは14モル%以下である。耐酸性はAlが12.5モル超になると低下しやすくなる。
【0020】
上記の通り、SiOが少なくAlが多いガラスは耐酸性が低くなる。このため表1に示すように、(SiO−Al)が小さくなるとガラスの耐酸性は顕著に低下する。一方、ヤング率や比弾性率、破壊靭性などの機械特性を向上させるにはAlが多いことが有効であり、機械特性に優れたガラスは耐酸性が低い傾向がある。本発明はSiO及びAlの含有量を特定し、硫酸と過酸化水素とを混合してなる洗浄液を用いた洗浄工程の後に、仕上げ研磨及び洗浄を含む工程を通過させることで酸化セリウム砥粒残渣が少ないもしくは存在しない、表面品質に優れたガラス基板を提供することが可能となる。但し、(SiO−Al)が62モル%超では本発明の研磨・洗浄プロセスを適用しても効果が現れにくい。典型的には59モル%以下48モル%以上である。なお、(SiO−Al)が50モル%以上では再研磨工程を設ける必要性は低い。
【0021】
LiO、NaOおよびKOはガラスの溶解性を改善し、熱膨張係数を高くする成分であり、いずれか1成分以上を含有しなければならない。LiO、NaOおよびKOの含有量の合計ROが4モル%未満ではこの効果が小さくなる。好ましくは13モル%以上、より好ましくは15モル%以上、特に好ましくは16モル%以上、最も好ましくは17モル%以上、典型的には18モル%以上である。但し、27モル%超ではヤング率が低くなる、比弾性率が低くなる、破壊靭性が低くなる、また水分との反応でアルカリが溶出しやすくなるため、好ましくない。好ましくは25%以下、より好ましくは24モル%以下、特に好ましくは22モル%以下である。ROは典型的には16〜24モル%である。
【0022】
また、上記アルカリ金属酸化物の中でもLiOはヤング率や比弾性率、破壊靭性を高くする効果が高いため、5モル%以上含有させることが好ましい。より好ましくは7モル%以上、最も好ましくは8%以上である。
【0023】
MgO、CaO、SrOおよびBaOはいずれも必須ではないが、ガラスの溶解性を改善し、熱膨張係数を高くする成分であり、MgO、CaO、SrOおよびBaOの含有量合計R’Oが20モル%までの範囲で含有してもよい。但し、20モル%超では比重が大きくなる、またガラスが傷つきやすくなる。好ましくは10モル%以下、より好ましくは8モル%以下、最も好ましくは6モル%以下、典型的には4モル%以下である。
【0024】
また、ヤング率、比弾性率、比重、熱膨張係数、傷つきにくさや破壊靭性といった機械特性を高めるためには、SiO+Al+RO+R’Oで90モル%以上となる必要がある。90モル%未満ではこの効果が小さくなる。好ましくは93モル%以上、より好ましくは95モル%以上、最も好ましくは97モル%以上である。
【0025】
この例におけるアルカリアルミノシリケートガラスは本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。
【0026】
例えば、TiO、ZrO、Y、Nb、Ta、Laはヤング率や比弾性率、破壊靭性を高くする効果がある。これらのいずれか1以上を含有する場合、合量で7モル%以下が好ましい。7モル%超では比重が大きくなる、またガラスが傷つきやすくなるおそれがあり、より好ましくは5モル%未満、特に好ましくは4モル%未満、最も好ましくは3モル%未満である。
【0027】
はガラスの溶解性を改善し、また比重を小さくする、ガラスを傷つきにくくする効果がある。これを含有する場合3モル%以下が好ましい。3モル%超ではヤング率が低くなる、比弾性率が低くなる、また揮散によりガラスの品質を低下させるおそれがある。より好ましくは2モル%以下、特に好ましくは1モル%以下、最も好ましくは0.5モル%以下である。
【0028】
SO、Cl、As、Sb、SnO、CeOはガラスを清澄する効果がある。これらのいずれかを含有する場合、合計で2モル%以下が好ましい。
【0029】
ガラスの比重は2.60以下であることが好ましい。2.60超では磁気ディスクドライブ回転時にモーター負荷がかかって消費電力が大きくなる、またはドライブ回転が不安定になるおそれがある。好ましくは2.55以下、より好ましくは2.53以下、最も好ましくは2.52以下である。
【0030】
また、ガラスの−50〜+70℃の範囲における熱膨張係数(平均線膨張係数)は60×10−7/℃以上であることが好ましい。60×10−7/℃以下では金属製のドライブなど他の部材の熱膨張係数との差が大きくなり、温度変動時の応力発生による基板の割れなどが起こりやすくなるおそれがある。好ましくは62×10−7/℃以上、より好ましくは65×10−7/℃以上、最も好ましくは70×10−7/℃以上である。
【0031】
更に、ガラスのヤング率は80GPa以上、比弾性率は32MNm/kg以上であることが好ましい。ヤング率が80GPa未満であるか比弾性率が32MNm/kg未満であるとドライブ回転中に反りやたわみが発生しやすく、高記録密度の情報記録媒体を得ることが困難になるおそれがある。ヤング率が81GPa以上かつ比弾性率が32.5MNm/kg以上であることがより好ましい。
【0032】
このようなガラス組成のガラス板は、ヤング率や比弾性率、比重、熱膨張係数、傷つきにくさ、破壊靭性等のガラス基板として要求される諸特性に優れたものとなりやすい。
【0033】
尚、ガラス板の製造方法は特に限定されず、各種方法を適用できる。たとえば、通常使用される各成分の原料を目標組成となるように調合し、これをガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、周知のフロート法、プレス法、フュージョン法またダウンドロー法などの方法により所定の厚さの板ガラスに成形し、徐冷後必要に応じて研削、研磨などの加工を行った後、所定の寸法・形状のガラス基板とされる。成形法としては、特に、大量生産に適したフロート法が好適である。また、フロート法以外の連続成形法、すなわち、フュージョン法、ダウンドロー法にも好適である。
【0034】
次いで、ガラス円板の中央に円孔を開け、面取り、主表面ラッピング、端面鏡面研磨を順次行う。尚、主表面ラッピング工程を粗ラッピング工程と精ラッピング工程とに分け、それらの間に形状加工工程(円形ガラス板中央の孔開け、面取り、端面研磨)を設けてもよい。また、端面鏡面研磨は、ガラス円板を積層して内周端面を酸化セリウム砥粒を用いたブラシ研磨を行い、エッチング処理をしてもよいし、内周端面のブラシ研磨の代わりにそのエッチング処理された内周端面に例えばポリシラザン化合物含有液をスプレー法等によって塗布し、焼成して内周端面に被膜(保護被膜)形成を行ってもよい。主表面ラッピングは通常、平均粒径が6〜8μmである酸化アルミニウム砥粒または酸化アルミニウム質の砥粒を用いて行う。ラッピングされた主表面は通常、30〜40μm研磨される。
【0035】
これらの加工において、中央に円孔を有さないガラス基板を製造する場合には当然、ガラス円板中央の孔開け及び内周端面の鏡面研磨は不要である。
【0036】
その後、ガラス円板の主表面を、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨する。この主表面研磨工程は、ウレタン製研磨パッドを用いて行い、例えば、三次元表面構造解析装置(例えばADE社Opti-flat)を用いて波長領域がλ≦5mmの条件で測定されたうねり(Wa)が1nm以下となるように研磨する。また、研磨による板厚の減少量(研磨量)は、典型的には5〜15μmである。主表面研磨工程は、1回の研磨で行ってもよいし、サイズの異なる酸化セリウム砥粒を用いて2回以上実施してもよい。尚、酸化セリウム砥粒は公知のものであり、酸化セリウム以外に、通常はランタン等の希土類やフッ素等を含む。また、本発明の酸化セリウム研磨工程はラッピング工程で発生したキズ除去を目的とする酸化セリウム主表面研磨工程を含むが、それに限らず、ラッピング工程後に端面鏡面研磨が行われればそれも含む。
【0037】
次に、ガラス円板の洗浄を行う。この洗浄工程では、純水による浸漬工程を行い、次に、硫酸と過酸化水素水とを混合して加熱した洗浄液に浸漬する工程を行い、最後に純水でリンスする工程を実施する。尚、この洗浄工程の前に、酸性洗浄剤やアルカリ洗浄剤を用いた前洗浄工程を実施しても良い。また、純水による浸漬工程やリンス工程においては、超音波洗浄を併用したり、流水やシャワー水による洗浄を行っても良い。
【0038】
洗浄液における硫酸濃度は20質量%以上80質量%以下、過酸化水素濃度は1質量%以上10質量%以下であり、好ましくは硫酸濃度は50質量%以上80質量%以下、過酸化水素濃度は3質量%以上10質量%以下である。硫酸及び過酸化水素の濃度がこれより低い場合には、酸化セリウム砥粒が溶解されずに残留する。硫酸及び過酸化水素の濃度がこれより高い場合は、上記アルカリアルミノシリケートガラスのリーチングによる面荒れが顕著になり、後述する仕上げ研磨を行っても目的とする平坦性を得にくくなるとともに、汎用的に使用される樹脂製のガラス冶具が酸化・分解してしまうことから好ましくない。また、同様な理由から、洗浄液の液温は50℃以上100℃以下で、浸漬時間は5分以上30分以下である。詳細には、50℃以上60℃未満の洗浄液に25分以上30分以下、60℃以上70℃未満の洗浄液に15分以上30分以下、70℃以上100℃以下の洗浄液に5分以上30分以下の条件で浸漬することが好ましい。
【0039】
上記洗浄工程では硫酸を使用するためリーチングムラの発生が起こることがあり、ガラス円板の主表面を再度研磨して平坦性を改善する(仕上げ研磨工程)。また、ガラス円板の端面に残存している酸化セリウム砥粒が主表面に再付着している場合もあるが、この再付着砥粒も除去される。
【0040】
仕上げ研磨工程では、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて最終研磨を行う。仕上げ研磨工程では、平均粒径10nm以上50nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨するだけでもよく、平均粒径50nm超100nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて前研磨した後、平均粒径10nm以上50nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて仕上げ研磨してもよい。
【0041】
耐酸性が劣るガラスの場合は仕上げ研磨工程の前に酸化セリウム砥粒を含むスラリーとスエードパッドを用いて研磨を行うことが好ましい(再研磨工程)。このスエードパッドはショアA硬度が60°以下である発泡樹脂層をPETや不織布に貼り付けたものとすることが好ましい。ショアA硬度が60°超では空孔率を小さくする必要が出てくる場合があり、親水性を保ちにくくなるおそれがある。また、当該ショアA硬度は20°以上であることが好ましい。ショアA硬度が20°未満では、研磨レートが遅くなる可能性が高くなる。また、この発泡樹脂層は単層でもよいし、異なる発泡形態の発泡層を2層以上重ね合わせたものでもよい。後者の場合、ガラスと接触する第一の発泡樹脂層のショアA硬度が20°以上50°以下、下層の第二の発泡樹脂層が40°以上60°以下であり、第一の発泡層が第二の発泡層よりも硬度が低いことが好ましい。また、このような発泡樹脂層はポリウレタンであることが典型的である。特に、スエードパッドとしては、ショアA硬度が30〜60、圧縮率が0.5〜10%かつ密度が0.2〜0.9g/cmである発泡ウレタン樹脂からなるものが典型的である。
【0042】
酸化セリウム砥粒を含むスラリーは、pH8以上のアルカリ性の水性スラリーが好ましい。pH調整により酸化セリウム砥粒の分散性が向上し、ガラス円板の外周端部への砥粒残渣を高度に抑制することができる。
【0043】
また、砥粒サイズとしては、BET比表面積から得られる換算径で0.1μm以上であることが好ましい。0.1μm以下であれば、スエードパッドの発泡樹脂層に砥粒が詰まりやすく、研磨レートが低下する恐れがある。スラリーには酸化セリウム砥粒の凝集を抑制するためにポリカルボン酸塩や有機酸塩を含むことも可能である。通常は、ポリアクリル酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリマレイン酸塩やこれらの共重合体が用いられる場合が多く、分子量としては2000以上100000以下ものを砥粒量に対して0.1〜5質量%添加される。
【0044】
ショアA硬度は、それぞれJIS K7215に規定されているプラスチックのデュロメータA硬さを測定する方法によって測定される。また、圧縮率(単位:%)は次のようにして測定される。すなわち、研磨パッドから適切な大きさに切り出した測定試料について、ショッパー型厚さ測定器を用いて無荷重状態から10kPaの応力の負荷を30秒間加圧した時の材料厚さtを求め、次に厚さがtの状態から直ちに110kPaの応力の負荷を5分間加圧した時の材料厚さt1を求め、tおよびtの値から(t−t)×100/tを算出し、これを圧縮率とする。
【0045】
コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーによる研磨では、水ガラスを原料とするコロイダルシリカでは、一般的に中性領域においてゲル化が進行しやすいため、pHが1以上6以下もしくは2以上6以下、あるいはpHが8以上12以下で行うことが好ましい。pH1以上6以下の酸性領域とする場合のpH調整剤としては、酸としては無機酸又は有機酸が用いられる。無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸、ポリ燐酸、アミド硫酸等が挙げられる。また、有機酸としては、カルボン酸、有機燐酸、アミノ酸等が挙げられ、例えば、カルボン酸は、酢酸、グリコール酸、アスコルビン酸等の一価カルボン酸、蓚酸、酒石酸等の二価カルボン酸、クエン酸等の三価カルボン酸が挙げられる。特にpH1以上3以下とすることが好ましく、その場合は無機酸が好適に用いられる。また、pH3超においては、カルボン酸を用いるとコロイダルシリカ砥粒のゲル化を抑制できるため好ましい。更には、スラリーにアニオンもしくはノニオン界面活性剤を添加してもよい。一方、pHを8以上12以下とする場合のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの無機アルカリや、アンモニア、アミンなどの有機アルカリを1つ以上含むことが可能である。また、各種界面活性剤を添加することも可能である。尚、研磨具はスエードパッドであることが好ましい。このスエードパッドは前記再研磨工程で使用することが好ましいとしたスエードパッドであることが典型的であり、発泡樹脂層のショアA硬度が20°以上60°以下であり、密度が0.2g/cm以上0.8g/cm以下が好ましい。
【0046】
また、仕上げ研磨工程は、酸化セリウム砥粒を含むスラリーによる研磨(再研磨工程)を経ずに、行うこともできる。
【0047】
硫酸および過酸化水素を用いる洗浄工程の後において上記した何れの研磨方法を行うかは、洗浄後のガラス円板の主表面の状態に応じて選択する。ガラスが耐酸性に劣るために主表面の面荒れが顕著な場合には、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨した後にコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーによる最終研磨を行うことが好ましい。主表面の面荒れが中程度である場合には、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨することなく、平均粒径50nm超100nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨した後、10nm以上50nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨すればよい、また、主表面の面荒れが少ない場合は、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨することなく、10nm以上50nm以下のコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨すればよい。
【0048】
上記の仕上げ研磨工程によりガラス円板は、主表面の二乗平均粗さ(Rms)が0.15nm以下、好ましくは0.13nm以下の平坦性を有するように研磨されることが好ましい。この研磨における板厚の減少量(研磨量)は、典型的には0.5〜2μmである。
【0049】
仕上げ研磨工程の後、コロダルシリカ砥粒を除去するために洗浄を行う。この洗浄工程では、少なくとも1回はpH10以上のアルカリ性洗浄剤による洗浄を行うことが好ましい。洗浄方法は、ガラス円板を浸漬して超音波振動を加えてもよいし、スクラブ洗浄を用いてもよい。また、両方を組み合わせてもよい。更に、洗浄の前後に、純水による浸漬工程やリンス工程を行うことが好ましい。
【0050】
最終のリンス工程後にガラス円板を乾燥するが、乾燥方法としてはイソプロピルアルコール蒸気を用いる乾燥方法やスピン乾燥、真空乾燥などが用いられる。
【0051】
上記一連の工程により本発明のガラス基板が得られるが、その主表面には残留酸化セリウム砥粒が無く高度に平坦化されている。そのため、主表面に磁気記録媒体を塗工した本発明の磁気記録媒体は、高密度記録が可能になる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(試験1)
表1に記載の組成のガラス板A〜Hを用意した。表中の「Si+Al+R'+R」はSiO+Al+RO+R’O、「α」は−50℃〜+70℃の範囲における平均線膨張係数(単位:10−7/℃)であり、また、ヤング率の単位はGPa、比弾性率の単位はMNm/kgである。また、各ガラス板のエッチングレート(nm/h;室温、pH2、硝酸)を測定した。結果を表1の「耐酸性」の欄に示すとともに、(SiO−Al)とこのエッチングレートとをプロットしたものを図1に示す。(SiO−Al)が小さくなるほど耐酸性に劣ることがわかる。ガラス板B以外は、本発明で用いるガラス板の組成を満足するが、何れもガラス板Bに比べて耐酸性に劣っている。
【0053】
【表1】

【0054】
そして、最も耐酸性の低いガラス板Aと、最も耐酸性の高いガラス板Bを用い、それぞれから外径65mm、内径20mm、板厚0.635mmのドーナツ状ガラス円板(中央に円孔を有するガラス円板)を切り出し、内周面および外周面をダイヤモンド砥石を用いて研削加工し、上下主表面を酸化アルミニウム砥粒を用いてのラッピングした、
【0055】
次に、内外周の端面を、面取り幅0.15mm、面取り角度45°となるように面取り加工を行った。
【0056】
面取り後、端面を、研磨材として酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用い、研磨具としてブラシを用いて、ブラシ研磨により鏡面加工を行った。研磨量は、半径方向の除去量で30μmであった。
【0057】
鏡面加工後、研磨材として酸化セリウム砥粒(平均粒径:約2μm)を含むスラリーを用い、研磨具としてウレタンパッドを用いて、両面研磨装置により上下主表面の研磨加工を行った。研磨量は、上下主表面の厚さ方向で計35μmであった。
【0058】
次に、研磨材としてコロイダルシリカ砥粒(平均粒径:30nm)を含み、ガラス板AにおいてはpH5、ガラス板BにおいてはpH2に調整したスラリーを用い、研磨具としてポリエチレンテレフタレート層上にショアA硬度が55°の発泡ウレタン層、その上層にショアA硬度が34°の発泡ウレタン層が積層されているスエードパッド(ショアA硬度は約42°)を用いて、両面研磨装置により上下主表面を仕上げ研磨した。研磨量は、上下主表面の厚さ方向で計1μmであった。
【0059】
次に、コロイダルシリカを除去する為の洗浄工程として、アルカリ性洗浄剤での浸漬洗浄、スクラブ洗浄、超音波洗浄、純水でのリンス、イソプロピルアルコール蒸気を用いた乾燥順次行った。
【0060】
AFM(Veeco社型番Dimension3100)にて主表面の二乗平均粗さ(Rms)を測定したところ、ガラス板A、ガラス板BともにRmsが0.10〜0.13nmであった。次に、表1に示す条件にて硫酸と過酸化水素水とを含む洗浄液に浸漬して洗浄した。その後、AFM(Veeco社型番Dimension3100)にて主表面の二乗平均粗さ(Rms)を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2に示すように、ガラス板Aは本発明に従うガラス組成であるものの、リーチングムラを発生しやすく、洗浄液の液温が高まるのに伴って顕著になることが確認された。
【0063】
(試験2)
試験1と同様の加工条件にて、ガラス板Aからガラス円板を切り出し、内周面および外周面の研削加工、上下面のラッピング、内外周の面取り及び鏡面加工、酸化セリウム砥粒を含むスラリーによる上下主表面の研磨加工を行った。
【0064】
主表面研磨後、ガラス円板を、予備洗浄として純水での浸漬洗浄、アルカリ洗浄剤での超音波洗浄、純水でのリンスを実施した後、表3〜5に示す条件にて洗浄した。
【0065】
洗浄後、試験1と同様の条件にてコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いての再研磨、その後の洗浄及び乾燥を行った。
【0066】
そして、ガラス円板の外周端面をSEM−EDX(装置名:日立製作所社製S4700)を用いて観察し、酸化セリウム砥粒の残渣状況を調べた。即ち、SEMを用いて外周端部の任意の8点を5000倍に拡大表示し、粒子状付着物の数を計測し、粒子状付着物についてはEDXによる元素分析を実施して酸化セリウムであるか確認した。結果を表2〜4に示すが、8箇所全てにおいて付着物が無い場合を「◎」、1〜4箇所において付着物が見られる場合を「○」、5箇所以上に付着物が見られる場合を「×」とした。
【0067】
尚、試行番号28,29は他の結果からの推定値である。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
表3〜5から、本発明に従う洗浄条件が確認された。
【0072】
(試験3)
試験1と同様の加工条件にて、ガラス板Aからガラス円板を切り出し、内周面および外周面の研削加工、上下面のラッピング、内外周の面取り及び鏡面加工、酸化セリウム砥粒を含むスラリーによる上下主表面の研磨加工を行った。
【0073】
主表面研磨後、ガラス円板を、予備洗浄として純水での浸漬洗浄、アルカリ洗浄剤での超音波洗浄、純水でのリンスを実施した後、表6の試行Iに示す条件にて洗浄した。
【0074】
洗浄後、平均粒径1μmφの酸化セリウム砥粒を含むスラリーとスエードパットを用いて、上下主表面の研磨加工を行った(再研磨工程)。この時の研磨量は2.5μmであった。その後、試験1と同様の条件にてコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いての仕上げ研磨、その後の洗浄及び乾燥を行った。
【0075】
そして、ガラス円板の外周端面を試験2と同様にしてSEM−EDXを用いて観察し、酸化セリウム砥粒の残渣状況を調べた。結果を表6の試行Iに示す。
【0076】
(試験4)
試験1と同様の加工条件にて、ガラス板Aからガラス円板を切り出し、内周面および外周面の研削加工、上下面のラッピング、内外周の面取り及び鏡面加工、酸化セリウム砥粒を含むスラリーによる上下主表面の研磨加工を行った。
【0077】
主表面研磨後、ガラス円板を、予備洗浄として純水での浸漬洗浄、アルカリ洗浄剤での超音波洗浄、純水でのリンスを実施した後、表6の試行IIに示す条件にて洗浄した。
【0078】
洗浄後、平均粒径1μmφの酸化セリウム砥粒を含むスラリーとショアD硬度が55°(ショアAで90°以上)の硬質ウレタンパットを用いて、上下主表面の研磨加工を行った(再研磨工程)。この時の研磨量は2.5μmであった。その後、試験1と同様の条件にてコロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いての仕上げ研磨、その後の洗浄及び乾燥を行った。
【0079】
そして、ガラス円板の外周端面を試験2と同様にしてSEM−EDXを用いて観察し、酸化セリウム砥粒の残渣状況を調べた。結果を表6の試行IIに示す。
【0080】
【表6】

【0081】
(試験5)
試験2に従い、硫酸と過酸化水素との洗浄液に代えて、アルコルビン酸3質量%及び硝酸1質量%からなる液温60℃の洗浄液を用いて、洗浄を行った。酸化セリウム砥粒の残存状況を調べたところ、試験2の判定基準では「×」であった。
【0082】
(試験6)
試験2に従い、硫酸と過酸化水素との洗浄液による洗浄後、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いた再研磨を行わずに酸化セリウム砥粒の残存状況を調べたところ、試験2の判定基準では「○」であった。但し、面荒れが見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリアルミノシリケートガラスからなるガラス円板をラッピングするラッピング工程と、その後に、酸化セリウム砥粒を含むスラリーを用いて研磨する酸化セリウム研磨工程とを含む情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が62モル%以下であり、
酸化セリウム研磨工程に引き続いてガラス円板を、硫酸濃度20質量%以上80質量%以下、過酸化水素濃度1質量%以上10質量%以下である洗浄液を用いて50℃以上100℃以下の液温にて洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後にガラス円板の主表面を、コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーを用いて研磨する仕上げ研磨工程と、
を含むことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項2】
アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:55〜75モル%、Al:5〜17モル%、LiO+NaO+KO):4〜27モル%、R’O(MgO+CaO+SrO+BaO):0〜20モル%で、かつ、SiO+Al+RO+R’O:90モル%以上である請求項1記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項3】
アルカリアルミノシリケートガラスの組成において、SiOが63モル%以上、LiO+NaO+KOが16モル%以上、MgO+CaO+SrO+BaOが0〜10モル%である請求項2記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項4】
前記コロイダルシリカ砥粒の平均粒径が10nm以上50nm以下である請求項1〜3の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項5】
前記コロイダルシリカ砥粒を含むスラリーのpHが1以上6以下である請求項4記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項6】
仕上げ研磨工程を前記洗浄工程に引き続いて行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項7】
アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が50モル%以上62モル%以下である請求項6に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項8】
アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:63〜71モル%、Al:7〜12.5モル%、LiO+NaO+KO:16〜24モル%、MgO+CaO+SrO+BaO:0〜10モル%で、かつ、SiO+Al+LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO:90モル%以上である請求項7記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項9】
前記洗浄工程と仕上げ研磨工程との間に、酸化セリウム砥粒を含むスラリーとショアA硬度が60°以下である発泡樹脂層を有する研磨パッドを用いてガラス円板の主表面を研磨する再研磨工程を含む請求項1〜5の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項10】
前記洗浄工程と仕上げ研磨工程との間に、平均粒径が50nm超100nm以下であるコロイダルシリカ砥粒を含みpHが8以上12以下であるスラリーを用いてガラス円板の主表面を研磨する工程を含む請求項4または5に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項11】
アルカリアルミノシリケートガラスにおけるSiO含有量からAl含有量を減じた差(SiO−Al)が45モル%以上50モル%未満である請求項9または10に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項12】
アルカリアルミノシリケートガラスの組成が、SiO:60モル%以上63モル%未満、Al:12.5〜15モル%、LiO+NaO+KO:18〜22モル%、MgO+CaO+SrO+BaO:0〜6モル%で、かつ、SiO+Al+LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO:90モル%以上である請求項11記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項13】
前記洗浄工程において、ガラス円板を、50℃以上60℃未満の洗浄液に25分以上30分以下、または60℃以上70℃未満の洗浄液に15分以上30分以下、または70℃以上100℃以下の洗浄液に5分以上30分以下浸漬することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項14】
仕上げ研磨工程において、ガラス円板の主表面の二乗平均粗さ(Rms)を0.15nm以下にすることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項15】
仕上げ研磨工程の後にpH10以上のアルカリ性洗浄剤を用いて行なう洗浄工程を含むことを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15の何れか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板。
【請求項17】
請求項16に記載の情報記録媒体用ガラス基板の主表面に磁気記録層が設けられたことを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2011−18398(P2011−18398A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162746(P2009−162746)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】