説明

感光体駆動装置および画像形成装置

【課題】 感光体駆動装置において、組付け容易なかつ安価な構造によって、歯車噛み合い振動による回転ムラを低減し、歯車噛み合い周期の振動、回転ムラによる画像不良を抑える感光体駆動装置を提供する。
【解決手段】 デジタルコピー機、レーザープリンタなどの画像形成装置に利用できる感光体駆動装置において、モジュール、歯数、ピッチ円直径、圧力角、ねじれ角が等しい2枚の歯車3、4を同軸上で、一方の歯車の歯底ともう一方の歯車の歯先が対応する位置にあり、かつ前記2枚の歯車3、4の間に噛み合う相手の歯車の歯幅以上の幅の直径が歯底円直径以下の領域を有する2重歯車を減速系として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け構造を簡素化して低価格で感光体駆動系を形成できる、デジタルコピー機、レーザープリンタなどの画像形成装置に利用できる感光体駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感光体を駆動する駆動手段と、駆動手段の駆動力を感光体に伝達する駆動伝達手段とを備え、駆動伝達手段に、ねじれ方向が互いに逆の2枚のハスバ歯車間に減衰部材を挟んだ構造の歯車体から成る歯車対を少なくとも1組設けた、または、歯車体の2枚のハスバ歯車の歯を互いに半ピッチ位相をずらせた感光体駆動装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
図10は従来の感光体駆動装置の一例を示す概略断面図である。図10において、安価な構成で歯車噛み合い振動による回転むらを低減するために、枠体20には感光体ドラム21が軸21aによって支持されている。
感光体駆動モータ23の駆動力を感光ドラム21に伝達する駆動伝達手段24に、ねじれ方向が互いに逆の2枚のハスバ歯車30、31の間に減衰部材32を挟んだ構造の歯車体33から成る歯車対を少なくとも1組設ける。
ハスバ歯車30、31を用いることで噛み合い率を大きくして噛み合い振動を低減するとともに、ねじれ方向が互いに逆の2枚のハスバ歯車30、31を組み合わせることで各ハスバ歯車の噛み合いによるスラスト力を打ち消し合ってスラスト方向の振動を低減し、かつ2枚のハスバ歯車30、31の間に挟んだ減衰部材32にてハスバ歯車30、31間の成形誤差、組み立て誤差等による振動も低減するようにしている。
【特許文献1】特開平10−161477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歯車噛み合い周波数の振動、回転ムラは画像不良の原因となる。2枚の歯車を半ピッチずらして同軸上で重ねて用いることによって、振動周波数の高周波側シフト、回転ムラ振幅の低減が図れる。
しかしながら、従来技術の方法では歯車の着脱のさいに歯車を軸方向に移動することが困難になるため、軸受け機構などが複雑になり、コストアップの問題が生じる。
図10においては、2枚のネジレ方向が異なるハスバ歯車30、31を同軸方向で合わせた例が示されているが、これらの歯車30、31を着脱するさいには、これらの歯車30、31を軸方向にスライドする動きが互いの歯車30、31によって規制されるため、軸間距離を可変するなど、複雑な機構が必要となってしまい、軸受け構造を含めると安価な駆動装置を得ることが困難になる。
本発明の目的は、上述した実情を考慮して、感光体駆動装置において、組付け容易なかつ安価な構造によって、歯車噛み合い振動による回転ムラを低減し、歯車かみ合い周期の振動、回転ムラによる画像不良を抑える感光体駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、モジュール、歯数、ピッチ円直径、圧力角、ねじれ角が等しい2枚の歯車を同軸状に重ねた2重歯車を減速系として用いる感光体駆動装置であって、一方の歯車の歯底と他方の歯車の歯先が周方向に対応する位置関係にあり、かつ2枚の歯車の対向面には夫々前記歯底円の直径以下の直径を有したスペーサを有し、各スペーサの合計幅は2枚の歯車が噛み合う相手側歯車の歯幅以上の幅を有していることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1において、前記2枚の歯車のすべての諸元が等しいことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記2枚の歯車は、夫々同一の金型で成形可能な構成を有していることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1、2又は3において、前記2枚の歯車の外形が真円でなく周期的形状誤差を有している場合に、周期的形状誤差の半周期分だけ周方向位置をずらして重ねて用いられることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1、2、3又は4において、前記2枚の歯車間の周方向位置関係は、一方の歯車側面に設けた複数のゲートの位置が、他方の歯車側面に設けたゲート間に位置するように組み付けられたことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1、2、3、又は5において、2枚の歯車の位置関係が、一方の歯車と他方の歯車がほぼ90度ずれた位置関係で組み付けられたことを特徴とする。 請求項7の発明は、請求項1、2、3、5又は6において、前記2枚の歯車の各歯車軸穴の軸方向両端部の開口径が異なっている場合に、歯車軸穴径の大きな側が向かい合うように2枚の歯車を組み付けたことを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項1乃至7において、各歯車のスペーサの対向面には、夫々同一個所に凹凸形状部分を備え、この凹凸形状部分同志の嵌合によって、一方の歯車と同軸上にあるもう他方の歯車が半ピッチずれた位置関係で組み付けられることを特徴とする。
請求項9の発明は、請求項1乃至8の何れか一項に記載の感光体駆動装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、歯車のバックラッシュを少なくして歯車噛み合い周期の回転ムラを減らし、また噛み合いの周波数をシフトさせることによって画像不良現象を低減し、かつ、歯車を軸方向に着脱できるので、軸受け構造を簡素化して低価格で感光体駆動系を形成できる、デジタルコピー機、レーザープリンタなどの画像形成機器に利用できる感光体駆動装置を実現することが可能となる。
また、2枚の歯車の側面に、噛み合う相手側の歯車の各歯幅以上の幅Sを形成するスペーサを夫々備えた形状の2重歯車を形成することによって、周波数の高周波側シフト、回転ムラ振幅の低減による画像不良の低減が図れ、かつ、軸方向と回転方向の動きだけで、歯車の着脱が可能となりかつ低コストの駆動系が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付け前の状態で示す概略図である。図1に示すように、この第1の実施の形態においては、感光体ドラム1の軸2に接続される2枚の歯車3、4が設けられる。
これらの歯車3、4の間には、相手側歯車7、8の各歯幅よりも、大きなスペース(歯がない部分)Sを有している。つまり、各歯車3、4の対向面に設けたスペーサ3a、4aの合計幅Sは、各相手側歯車7、8の歯幅よりも大きく設定してある。このため、取り付けのさいには、軸方向に歯車3、4をスライドさせることが可能である。
即ち、本発明は、モジュール、歯数、ピッチ円直径、圧力角、ねじれ角が等しい2枚の歯車3、4を同軸状に重ねた2重歯車を減速系として用いる感光体駆動装置であって、一方の歯車の歯底と他方の歯車の歯先が周方向に対応する位置関係(半ピッチずれた位置関係)にあり、かつ2枚の歯車の対向面には夫々前記歯底円の直径以下の直径を有したスペーサ3a、4aを有し、各スペーサの合計幅Sは2枚の歯車が噛み合う相手側歯車7、8の個々の歯幅以上の幅を有している。
図2は本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付け中間過程の状態で示す概略図である。図2に示すように1枚目の歯車3をモータ5の軸6のピニオンギヤ7、8のギヤ間スペースまでスライドさせたところで、歯車3を半ピッチ分回転させる。
つまり、予め相手側歯車7、8は、互いに歯車の位置が半ピッチずれた状態となるように周方向位置がずれて軸6に固定されている。これに対して、2枚の歯車3、4も同様に半ピッチずれた状態で組み付けられている。図1の状態から図2の状態に2枚の歯車3、4の結合体である2重歯車を組み付ける場合、歯車3が歯車8を通過した後で、歯車3と歯車7、歯車4と歯車8を夫々同時に噛合させるためには、2重歯車をそのまま軸方向移動させたのでは、各歯車同志が半ピッチずれた状態にあるため噛合できないので、図2のように歯車3と4の間のスペースS内に歯車8が位置する状態で2重歯車を半ピッチ分回動させる。これにより、歯車3と歯車7、歯車4と歯車8を夫々同時に噛合させることが可能となる。
【0007】
図3は本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付けた状態で示す概略図である。図2において示したように、歯車3を半ピッチ分回転させることによって、図3に示すように2枚目の歯車4を含めて組み付けることが可能となる。
図4は歯車3、4の組み合わせを示す概略図である。図5は図4の歯車3、4が組み合わされた状態を示す概略図である。例えば、上述した第1の実施の形態における歯車3および4の組み合わせである。一方の歯車3のギヤ3Gの歯底に、他方の歯車4のギヤ4Gの歯先が位置するように周方向位置をずらして組み付けている。
図6は2枚の歯車の側面に設けた複数のゲート同志の周方向位置が重ならないように、組み付ける場合の実施の形態を示す概略図である。図7は図6の2枚の歯車を組み付けた状態を示す概略図である。
各ゲートの位置に対応して各歯車3、4の歯溝の振れや真円度誤差が生じる場合が多いが、本実施の形態のように一方の歯車のゲート位置が他方の歯車のゲートとゲートの間にくるように組み付けることによって、ゲート位置に対応した歯車形状誤差の影響(回転ムラ)を低減することができる。
図8は2枚の歯車を半ピッチずらして組み付けるための、凹凸形状の実施の形態を示す概略図である。図9は図8の2枚の歯車を組み付けた状態を示す概略図である。
図に示したようにスペーサ部分となる円盤状のスペーサ3a、4aの側面上に嵌合可能な凹凸形状部分9、10を所定の円周軌道に沿って所定の配置にて設けることによって、同形状の成形品である歯車3、4同志を凹凸嵌合させつつ組み付けた場合に、2枚の歯車3、4の歯が半ピッチずれた位置関係に組み付けることができる。
これによって、周波数の高周波側シフト、回転ムラ振幅の低減による画像不良の低減が図れ、かつ、軸方向と回転方向の動きだけで、歯車の着脱が可能となり低コストの駆動系が実現できる。
【0008】
本発明の感光体駆動装置においては、すべての諸元が等しい2枚の歯車を同軸上で、一方の歯車の歯底ともう一方の歯車の歯先が対応する位置にあり、かつ、2枚の歯車の間に噛み合う相手の歯車の歯幅以上の幅の直径が歯底円直径以下の領域(2つのスペーサ3a、4aの接合体)を有する2重歯車を減速系として用いる。
そのため、噛み合い周波数の高周波側シフト、回転ムラ振幅の低減による画像不良の低減が図れ、かつ、軸方向と回転方向の動きだけで、歯車の着脱が可能となり低コストの駆動系が実現できる。
また、諸元が等しい2枚の歯車を用いるので、同ロットで加工され形状特性が近い歯車を適切に組み合わせることによって、形状誤差に起因する回転ムラをキャンセルすることができる。
本発明の感光体駆動装置においては、重ねて用いられる歯車が同一の金型で成形されたものを半ピッチずらして用いるので、噛み合い周波数の高周波側シフト、回転ムラ振幅の低減による画像不良の低減が図れ、かつ、軸方向と回転方向の動きだけで、ギヤの着脱が可能となり低コストの駆動系が実現できる。
本発明の感光体駆動装置においては、各歯車が有する周期的形状誤差の半周期分ずらした位置関係で重ねて用いるので、歯車の周期的形状誤差に起因している回転ムラをキャンセルすることができる。つまり、同一形状である各歯車3、4に、一回転中に一回周期の誤差がある場合、2つの誤差が互いにキャンセルしあうように180度周方向位置をずらして組み付ける。
【0009】
本発明の感光体駆動装置においては、重ねて用いられる歯車の位置関係が一方のゲートの位置が他方のゲート間の位置になるように組み付けるので、ゲートの位置に対応した歯車の形状誤差に起因する回転ムラをキャンセルすることができる。
本発明の感光体駆動装置においては、重ねて用いられる歯車の位置関係が一方の歯車と他方の歯車がほぼ90度ずれた位置関係でかつ、半ピッチずれて組み付けるので、金型温度分布などによる歯車の楕円成分形状誤差に起因する回転ムラを低減することができる。即ち、各歯車3、4が真円ではなく、例えば楕円形状に近い偏心を有している場合(一回転で2回周期の形状誤差がある場合)には、2個所の誤差部分の位置が90度ずれるように両ギヤ3、4の周方向位置をずらして組み付ける。勿論、各歯車のピッチは半ピッチずれた状態である。
したがって、噛み合い周波数の高周波側シフト、噛み合い周期、および2次成分の回転ムラ振幅の低減による画像不良の低減が図れ、かつ、軸方向と回転方向の動きだけで、歯車の着脱が可能となり低コストの駆動系が実現できる。
本発明の感光体駆動装置においては、上記感光体駆動装置であって、重ねて用いられる歯車の位置関係が一方の歯車と他方の歯車の位置関係が、歯車軸穴径の大きな側が向かい合う位置関係でかつ、半ピッチずれて組み付けられるので、組み付けのさいに歯車軸穴の両端の径が小さい傾向となり、歯車が傾いた状態で組み付くことを防ぐことが可能である。つまり、同一形状の2枚の歯車3、4の軸穴の軸方向両端開口の径が異なる場合に、大きい開口側を合致させた状態で組み付けることにより、軸を挿通した時のがたつきが防止される。つまり、2重歯車の軸穴の外側開口が小径となるので、軸と密着することができ、がたつきがなくなる。
本発明の感光体駆動装置においては、各歯車のスペーサ部分に凹凸を有し、この凹凸の嵌合によって、一方の歯車と同軸上にあるもう一方の歯車が半ピッチずれた位置関係で組み付けられるので、容易に半ピッチずれた位置関係で2個の歯車を位置決めして固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付け前の状態で示す概略図。
【図2】本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付け中間過程の状態で示す概略図。
【図3】本発明による感光体駆動装置の第1の実施の形態を組み付けた状態で示す概略図。
【図4】歯車単体との組み合わせを示す概略図。
【図5】図4の歯車が組み合わされた状態を示す概略図。
【図6】2枚の歯車のゲート位置が重ならないように、組み付ける場合の実施の形態を示す概略図。
【図7】図6の2枚の歯車を組み付けた状態を示す概略図。
【図8】2枚の歯車を半ピッチずらして組み付けるための、凹凸形状の実施の形態を示す概略図。
【図9】図8の2枚の歯車を組み付けた状態を示す概略図。
【図10】従来の感光体駆動装置の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0011】
1 感光体ドラム、2 感光体ドラムの軸、3 歯車、4 歯車、5 モータ、9 凸形状部分、10 凹形状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュール、歯数、ピッチ円直径、圧力角、ねじれ角が等しい2枚の歯車を同軸状に重ねた2重歯車を減速系として用いる感光体駆動装置であって、一方の歯車の歯底と他方の歯車の歯先が周方向に対応する半ピッチずれた位置関係にあり、かつ2枚の歯車の対向面には夫々前記歯底円の直径以下の直径を有したスペーサを有し、各スペーサの合計幅は2枚の歯車が噛み合う相手側歯車の歯幅以上の幅を有していることを特徴とする感光体駆動装置。
【請求項2】
前記2枚の歯車のすべての諸元が等しいことを特徴とする請求項1記載の感光体駆動装置。
【請求項3】
前記2枚の歯車は、夫々同一の金型で成形可能な構成を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光体駆動装置。
【請求項4】
前記2枚の歯車の外形が真円でなく周期的形状誤差を有している場合に、周期的形状誤差の半周期分だけ周方向位置をずらして重ねて用いられることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の感光体駆動装置。
【請求項5】
前記2枚の歯車間の周方向位置関係は、一方の歯車側面に設けた複数のゲートの位置が、他方の歯車側面に設けたゲート間に位置するように組み付けられたことを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の感光体駆動装置。
【請求項6】
前記2枚の歯車の位置関係が、一方の歯車と他方の歯車がほぼ90度ずれた位置関係で組み付けられたことを特徴とする請求項1、2、3、又は5に記載の感光体駆動装置。
【請求項7】
前記2枚の歯車の各歯車軸穴の軸方向両端部の開口径が異なっている場合に、歯車軸穴径の大きな側が向かい合うように2枚の歯車を組み付けたことを特徴とする請求項1、2、3、5又は6に記載の感光体駆動装置。
【請求項8】
各歯車のスペーサの対向面には、夫々同一個所に凹凸形状部分を備え、この凹凸形状部分同志の嵌合によって、一方の歯車と同軸上にあるもう他方の歯車が半ピッチずれた位置関係で組み付けられることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の感光体駆動装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の感光体駆動装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3567(P2006−3567A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178856(P2004−178856)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】