説明

感光性ドライフィルムレジスト及びこれを用いたプリント配線板

【課題】 本発明は、水系現像が可能で、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、保存安定性に優れた感光性ドライフィルムレジスト及利用方法を提供することである。
【解決手段】 第一感光層が(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤及び(E1)重合禁止剤を含有し、第二感光層が(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤、(D2)難燃剤及び(E2)重合禁止剤を含有し、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であり、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含むレジスト全体の残存溶媒量が5%以下である、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含む多層構造の感光性ドライフィルムレジストを用いることにより、上記課題を解決し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系現像が可能で、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、保存安定性に優れた感光性ドライフィルムレジスト及びこれらの利用方法に関するものである。特に、多層構造の感光性ドライフィルムレジスト、並びにこれらの利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化、小型化、軽量化に伴い、これら電子機器に用いられる電子部品に対しても、さらなる小型化、軽薄化が要求されている。そのため、プリント配線板上での半導体素子などの高密度実装や、配線の微細化、プリント配線板の多層化等を行うことにより、電子部品の高機能化や高性能化を図ることが求められている。また、配線の微細化に対応するためには、配線を保護するためにより高い電気絶縁性を有する絶縁材料が必要である。
【0003】
ところで、上記プリント配線板を作製する際には、種々の用途で感光性材料が用いられる。すなわち、プリント配線板の基板上へパターン化された回路(パターン回路)の形成や、プリント配線板表面やパターン回路を保護するための保護層の形成、多層プリント配線板の層間絶縁層の形成等に、感光性材料が使用されている。このような用途に用いられる感光性材料として、液状の感光性材料や、フィルム状の感光性材料がある。このうち、フィルム状の感光性材料は、液状の感光性材料に比べて、膜厚の均一性や作業性に優れているといった利点を備えている。そのため、パターン回路の形成に用いるパターン回路用レジストフィルム、上記保護層の形成に用いる感光性カバーレイフィルム、上記層間絶縁層の形成に用いる感光性ドライフィルムレジスト等、その用途に応じて、種々のフィルム状感光性材料も用いられている。
【0004】
上記感光性カバーレイフィルムや感光性ドライフィルムレジスト(以下、両者を感光性ドライフィルムレジストと総称する)としては、現在アクリル系のフィルムが上市されているが、難燃性が劣るため、用途が限定されていた。
【0005】
難燃性の改良に関しては、臭素系難燃剤を含む感光性樹脂組成物を硬化して作製された感光性ドライフィルムレジストがある(特許文献1)。しかし、ハロゲンを含む難燃剤は環境に悪い影響を与える恐れがあるので、臭素系難燃剤に替えて、非ハロゲン系難燃剤の検討が進められている。
【0006】
非ハロゲン系難燃剤としては、窒素系、リン系などが挙げられる。しかし、窒素系化合物は樹脂の硬化性への影響を考慮すると実用が困難であり、リン系化合物を用いた場合、樹脂組成物の吸湿性が高くなる傾向があり、耐湿性、電気信頼性が低下するという問題があった(特許文献2)。
【0007】
一方、耐湿性を有する樹脂層と、難燃性を有する樹脂層を積層することによって、耐湿性、難燃性を両立させる方法も提案されている。しかし、これは感光性のものではないため、微細加工に対応しておらず、用いる分野が異なる(特許文献3、4)。
【0008】
さらに、感光性フィルムの分野でも、複層化されたものはあるが、これらは、感光特性の改善が目的であり、難燃性、耐湿性、電気信頼性を改善させるようなものではなかった(特許文献5)。
【特許文献1】特開2001―335619号公報
【特許文献2】特開2000−241969号公報
【特許文献3】特開2004−311573号公報
【特許文献4】特開2005−161778号公報
【特許文献5】特開2005−202066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水系現像が可能で、解像度、難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、保存安定性に優れた感光性ドライフィルムレジスト及びこれらの利用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一感光層が(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤及び(E1)重合禁止剤を含有し、第二感光層が(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤及び(D2)難燃剤及び(E2)重合禁止剤を含有し、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であり、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含むレジスト全体の残存溶媒量が5%以下である、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含む多層構造の感光性ドライフィルムレジストである。
前記多層構造の感光性ドライフィルムレジストにおいて、(D1)難燃剤及び/または(D2)難燃剤がリン系化合物であることが好ましい。また前記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーであることが好ましい。また前記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、ポリアミド酸であることが好ましく、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたポリアミド酸であることがより好ましい。
【0011】
【化3】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)。
また前記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることが好ましく、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることがより好ましい。
【0012】
【化4】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
また前記(E1)重合禁止剤及び/または(E2)重合禁止剤が、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ニトロソアミン系化合物、芳香族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明の別の発明は、前記多層構造の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として用いることを特徴とするプリント配線板である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、水系現像性が良好であり、かつ難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、保存安定性に優れたものとなっている。
【0015】
したがって、本発明は、FPC等のプリント配線板を製造する産業、例えば電子部品用の樹脂材料を製造する樹脂産業分野に好適に用いることができるだけではなく、このようなプリント配線板を用いる電子機器の産業分野に好適に用いることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、第一感光層が(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤及び(E1)重合禁止剤を含有し、第二感光層が(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤及び(D2)難燃剤及び(E2)重合禁止剤を含有し、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であり、当該レジスト全体の残存溶媒量が5%以下であることを特徴とし、回路を形成した銅張積層板(回路付きCCLともいう)に接する側に第二感光層が接するように積層して用いる。
【0017】
本発明において、(A1)と(A2)は同一でも異なっていても良い。B、C、D、E、Fの各成分についても同様である。
【0018】
なお本発明において難燃剤含有率とは感光性ドライフィルムレジストを構成する全成分の重量分のうち、難燃剤の重量が占める割合のことをいい、下記計算式によって算出されるものとする。
第一感光層の難燃剤含有率(%)=(D1:難燃剤)÷{(A1:バインダーポリマー)+(B1:(メタ)アクリル系化合物)+(C1:光反応開始剤)+(D1:難燃剤)+(E1:重合禁止剤)+(F1:その他の成分)}×100
第二感光層の難燃剤含有率(%)=(D2:難燃剤)÷{(A2:バインダーポリマー)+(B2:(メタ)アクリル系化合物)+(C2:光反応開始剤)+(D2:難燃剤)+(E2:重合禁止剤)+(F2:その他の成分)}×100
本発明の多層構造の感光性ドライフィルムレジストにおいては、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であることを特徴とする。第一感光層の難燃剤含有率を高くすることによって難燃性を付与し、第二感光層の難燃剤含有率を低くするか、難燃剤を全く含まないようにすることによって、耐湿性、電気信頼性をより高めることが出来る。さらに、アルカリ現像時に残渣が発生しにくくなり、現像性、解像度をより高めることが出来る。
【0019】
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、感光能、保存安定性の向上のために、残存溶媒量が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが最も好ましい。残存溶媒量が5%を超えると、Bステージ状態のタック性が大きくなり取り扱い性が低下する。さらに、解像度が低くなりやすい傾向があり、感光性ドライフィルムレジストの保存安定性も低下してしまう。なお本発明において、残存溶媒量とは、感光性ドライフィルムレジストに残存する有機溶媒の残存量の総量のことを指し、ガスクロマトグラフィー(GC)、例えば、島津製作所GC−2014により測定することが可能である。
【0020】
このような構成にすることにより、感光性ドライフィルムレジスト全体としては、水系現像性が良好であり、かつ難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、保存安定性に優れたものとなる。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0021】
<(A)バインダーポリマー>
本発明において、バインダーポリマーとは、感光性ドライフィルムレジストを形成するために用いられる感光性樹脂組成物のうち、フィルム形成能を付与するために配合されるポリマー成分のことを指す。なお、本発明において、ポリマー成分とは、重量平均分子量が5,000以上のオリゴマー、ポリマー成分を指す。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0022】
本発明で用いるバインダーポリマーは、特に限定されないが、水系現像を可能とするために、アルカリ水溶液に可溶、または膨潤可能であることが望ましいため、ポリマー鎖中にカルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性官能基を含有することが好ましい。酸性官能基を有するバインダーポリマーとしては、カルボキシル基含有ビニル系ポリマー、ポリアミド酸、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを挙げることができ、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
(カルボキシル基含有ビニル系ポリマー)
バインダーポリマーとして、カルボキシル基含有ビニルポリマーを用いることによって、柔軟性、アルカリ溶解性に優れた感光性ドライフィルムレジストを作製することができる。また、製造も容易であり、生産面、コスト面にも優れる。
【0024】
カルボキシル基含有ビニル系ポリマーは、カルボキシル基含有モノマー、およびこれらと共重合可能なモノマーとを、公知の方法によって共重合させることによって得ることができる。
【0025】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、ビニル安息香酸、桂皮酸、プロピオール酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等が挙げられる。中でも、コスト、重合性などの観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記これらと共重合可能なモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジエステル類、フマル酸ジエステル類、クロトン酸エステル類、ビニルエステル類、マレイン酸ジエステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエーテル類、ビニルアルコール類、スチレン、スチレン誘導体等が挙げられる。中でも、重合性、可とう性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、スチレン誘導体を用いることが好ましい。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
これらのモノマーから得られるカルボキシル基含有ビニル系ポリマーは、特に限定されないが、カルボキシル基含有モノマーを5〜50モル%含有していることが好ましく、15〜40モル%含有していることがより好ましい。含有率が5モル%未満では、アルカリ水溶液への溶解性が劣る傾向があり、50モル%より大きいと、アルカリ水溶液への耐性が劣る場合がある。なお、カルボキシル基含有モノマーの含有率は、使用する全モノマーに対するカルボキシル基含有モノマーの割合のことを指す。
【0028】
上記カルボキシル基含有ビニル系ポリマーの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向がある。一方、重量平均分子量が300000より大きいと、作製された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0029】
(ポリアミド酸)
バインダーポリマーとして、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を用いることによって、感光性ドライフィルムレジスト全体として、水系現像性、難燃性、密着性、耐湿性、電気信頼性、半田耐熱性などの特性が優れたものになる。
【0030】
ポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に拡散分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0031】
ポリアミド酸を合成するために用いられるジアミンとしては、特に限定されるものではないが、反応性、難燃性、有機溶媒への溶解性、耐熱性、屈曲性などの観点から、芳香族酸無水物、芳香族ジアミンを用いることが好ましい。
【0032】
上記の芳香族酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。上記酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記芳香族酸二無水物のうち、合成の容易さ、アルカリ水溶液への溶解性から、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、2,2’−ヘキサフルオロプロピリデンジフタル酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましい。
【0034】
上記の芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノフェニルエタン、4,4’−ジアミノフェニルエーテル、3,4’−ジアミノフェニルエーテル、3,3’−ジアミノフェニルエーテル、4,4’−ジジアミノフェニルスルフィド、4,4’−ジジアミノフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、および4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを挙げることができる。上記ジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記芳香族ジアミンのうち、耐熱性、アルカリ水溶液への溶解性から、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル] スルホンを少なくとも一部用いることが好ましい。
【0036】
なお言うまでもないが、上記芳香族ジアミン以外に、公知の他のジアミンを原料の一部として同時に用いてもよい。
【0037】
特に、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンは、柔軟性、密着性、可とう性を向上させることが出来ることから特に好ましい。
【0038】
【化5】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
上記ジアミンと酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンと酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。すなわち、例えば、ジアミン成分と、上記酸二無水物とを用いて、上述したように、有機溶媒中で重合反応を行うことにより、ポリアミド酸を得ることができる。
【0039】
このとき、1種のジアミンと1種の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種及びジアミン成分1種のポリアミド酸になる。また、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
【0040】
上記ジアミンと酸二無水物の反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃がよい。80℃を超えると、ポリアミド酸が分解する恐れがあり、逆に0℃以下だと、重合反応の進行が遅くなる場合がある。また、反応時間は10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0041】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではないが、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0042】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0043】
上記ポリアミド酸の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向がある。一方、重量平均分子量が300000より大きいと溶液粘度が高くなりすぎるため取扱いが難しくなる傾向があり、また作製された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0044】
(カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミド)
難燃性、耐熱性の観点から、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドを、バインダーポリマーとして用いることも好ましい。さらに既にイミド化されているため、加熱キュアの温度を低く設定したり、時間を短く設定することが可能であるので生産性にも優れる。
【0045】
可溶性ポリイミドとは、有機溶媒に溶解するポリイミドであれば特に限定されるものではないが、本発明においては有機溶媒100gに対して、20℃で1.0g以上の溶解性を示すものが好ましい。より好ましくは20℃で5.0g以上の溶解性を示し、更に好ましくは、20℃で10g以上の溶解性を示すものがよい。有機溶媒100gに対する20℃での溶解性が1.0g未満であると、所望する厚みにて、感光性ドライフィルムレジストを形成することが困難になる傾向がある。上記有機溶媒としては、特に限定されないが、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0046】
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、5000〜300000であることが好ましく、10000〜200000であることがより好ましい。重量平均分子量が5000未満であると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすく、さらに硬化後のフィルムの耐屈曲性に劣るという傾向がある。一方、重量平均分子量が200000より大きいとカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの溶液粘度が高くなりすぎるため取扱いが難しくなる傾向があり、また作製された感光性ドライフィルムレジストの現像性が低下する場合がある。なお、上記重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、例えば、東ソー社製HLC8220GPCにより測定することが可能である。
【0047】
また、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドにおけるカルボキシル基及び/又は水酸基1個あたりの重量平均分子量(以下、酸当量という)は、7000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3000以下であることが最も好ましい。上記酸当量が7000を超えると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて作成された感光性ドライフィルムレジストの水系現像が困難になる傾向がある。なお、上記可溶性ポリイミドの酸当量は、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの組成より計算して求めることが可能である。
(ポリイミドの製造方法)
以下、上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの製造方法を説明するために、ポリアミド酸の合成方法、及びポリアミド酸を脱水閉環してイミド化する方法について詳細に説明する。
(ポリアミド酸の合成)
上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドは、その前駆体であるポリアミド酸から得ることができる。このポリアミド酸は、有機溶媒中でジアミンと酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。具体的には、アルゴン、窒素等の不活性雰囲気中において、ジアミンを有機溶媒中に溶解、又はスラリー状に分散させて、ジアミン溶液とする。一方、酸二無水物は、有機溶媒に溶解、又はスラリー状に分散させた状態とした後、あるいは固体の状態で、上記ジアミン溶液中に添加すればよい。
【0048】
本発明のカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸を合成するために用いられるジアミンとしては、特に限定されるものではないが、水系現像性の点から、1分子中に1以上のカルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。また、耐熱性や耐薬品性の点から、1分子中に1以上の芳香環を有する芳香族系ジアミンを原料の少なくとも一部として用いることが好ましい。特に、1分子中に1以上のカルボキシル基及び/又は水酸基を有する芳香族系ジアミンを原料の一部として用いれば、得られる感光性ドライフィルムレジストに、耐熱性と水系現像性を付与することができるため、特に好ましい。
【0049】
カルボキシル基及び/又は水酸基を有する芳香族系ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、以下の一般式(2)
【0050】
【化6】

(式中、R1は同一でも異なっていてもよく、カルボキシル基若しくは水酸基のいずれか一方であり、R2及びR3は、各々同一であっても異なっていてもよいが、水素原子、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜10のアルコキシ基、又は−COOR4(R4は炭素数1〜9のアルキル基を示す。)であり、Xは同一でも異なっていてもよく、−O−、−S−、−SO2−、−C(CH32−、−CH2−、−C(CH3)(C25)−、又は−C(CF32−である。mは1以上、nは0以上の整数であり、mとnはm+n=4の条件を満たす整数である。また、pは1以上、qは0以上の整数であり、pとqはp+q=4の条件を満たす整数である。rは0〜10の整数である。)で表される芳香族系ジアミンを可溶性ポリイミドの原料の一部として用いることが好ましい。
【0051】
カルボキシル基を有する芳香族系ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシビフェニル、4,4'−ジアミノ−2,2',5,5'−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類、4,4'−ジアミノ−3,3'−ジカルボキシジフェニルメタン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類、4,4'−ジアミノ−2,2',5,5'−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジカルボキシジフェニルスルホン等のジフェニルスルホン化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス(カルボキシフェノキシ)ビフェニル化合物、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物等を例示することができる。
【0052】
中でも、特に好ましいカルボキシル基含有芳香族系ジアミンの構造式の一部を以下に示す。
【0053】
【化7】

次に、水酸基を有する芳香族系ジアミンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2'−ジアミノビスフェノールA、2,2'−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メタン、2,6−ジ[(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル]−4−メチルフェノール、2,6−ジ[(2−ヒドロキシ−3−アミノ−5−メチルフェニル)メチル]−4−ヒドロキシ安息香酸プロピル等の化合物を挙げることができる。
【0054】
中でも、特に好ましい水酸基含有芳香族系ジアミンの構造式の一部を以下に示す。
【0055】
【化8】

これらのジアミンを原料の一部として使用することで、得られるカルボキシル基及び/又は水酸基を含有する可溶性ポリイミドの酸当量が低くなり、水系現像性を向上させることができる。
【0056】
なお言うまでもないが、上記カルボキシル基及び/又は水酸基を有するジアミン以外に、公知の他のジアミンを可溶性ポリイミドの原料の一部として同時に用いてもよい。例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタン、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンなどを挙げることができる。特に、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンは柔軟性、密着性、可とう性を向上させることが出来ることから特に好ましい。上記ジアミンは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0057】
【化9】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
一方、ポリアミド酸を合成するために用いられる酸二無水物としては、特に限定されないが、耐熱性を向上させる点から、芳香環を1〜4個有する酸二無水物または脂環式の酸二無水物を用いることが好ましい。また、有機溶媒への溶解性が高いポリイミド樹脂を得るためには、芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましく、芳香環を4個以上有する酸二無水物を少なくとも一部として用いることがより好ましい。
【0058】
上記の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族または脂環式テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。上記酸二無水物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0059】
上記酸二無水物のうち、合成の容易さ、得られるポリイミドの有機溶媒への溶解性の点から、2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物、2,3',3,4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物等の芳香環を2個以上有する酸二無水物を少なくとも一部用いることが好ましい。
【0060】
上記ジアミンと酸二無水物とを用いてポリアミド酸を合成する場合、上記ジアミンと酸二無水物とを、それぞれ少なくとも1種類ずつ用いて反応を行えばよい。すなわち、例えば、カルボキシル基及び/又は水酸基を含有するジアミンを少なくとも一部として含むジアミン成分と、上記酸二無水物とを用いて、上述したように、有機溶媒中で重合反応を行うことにより、カルボキシル基及び/又は水酸基を分子鎖中に1以上含有するポリアミド酸を得ることができる。
【0061】
このとき、1種のジアミンと1種の酸二無水物が実質上等モルであれば、酸二無水物成分1種及びジアミン成分1種のポリアミド酸になる。また、2種以上の酸二無水物成分及び2種以上のジアミン成分を用いる場合、複数のジアミン成分全量のモル比と複数の酸二無水物成分全量のモル比とを、実質上等モルに調整しておけば、ポリアミド酸共重合体を任意に得ることもできる。
【0062】
上記ジアミンと酸二無水物の反応(ポリアミド酸の合成反応)の温度条件は、特に限定されないが、80℃以下であることが好ましく、より好ましくは0〜50℃がよい。80℃を超えると、ポリアミド酸が分解する恐れがあり、逆に0℃以下だと、重合反応の進行が遅くなる場合がある。また、反応時間は10分〜30時間の範囲で任意に設定すればよい。
【0063】
さらに、上記ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、有機極性溶媒であれば特に限定されるものではない。しかしながら、上記ジアミンと酸二無水物との反応が進行するにつれてポリアミド酸が生成し、反応液の粘度が上昇する。また、後述するように、ポリアミド酸を合成して得られるポリアミド酸溶液を、減圧下で加熱して、有機溶媒の除去とイミド化を同時に行うことができる。そのため、上記有機溶媒としては、ポリアミド酸を溶解でき、かつ、なるべく沸点の低いものを選択することが工程上有利である。
【0064】
具体的には、ポリアミド酸の合成反応に使用する有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒等を挙げることができる。
【0065】
(ポリアミド酸のイミド化)
次に、上記ポリアミド酸を用いて、ポリイミドを得るために、上記ポリアミド酸をイミド化する方法について説明する。イミド化は、ポリアミド酸を脱水閉環することによって行われる。この脱水閉環は、共沸溶媒を用いた共沸法、熱的手法または化学的手法によって行うことができる。
【0066】
共沸溶媒を用いた共沸法は、ポリアミド酸溶液にトルエン・キシレン等の水と共沸する溶媒を加え、170〜200℃に昇温して、脱水閉環により生成してくる水を積極的に系外へ除去しながら、1時間〜5時間程度反応させればよい。反応終了後、メタノール等のアルコール溶媒中にて沈殿させ、必要に応じてアルコール溶媒にて洗浄を行ったのち、乾燥を行ってポリイミド樹脂を得ることができる。
【0067】
熱的手法による脱水閉環は、ポリアミド酸溶液を加熱して行えばよい。あるいは、ガラス板、金属板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム状支持体に、ポリアミド酸溶液を流延または塗布した後、80℃〜300℃の範囲内で熱処理を行えばよい。さらに、フッ素系樹脂によるコーティング等の離型処理を施した容器に直接ポリアミド酸溶液を入れ、減圧下で加熱乾燥することによって、ポリアミド酸の脱水閉環を行うこともできる。このような熱的手法によるポリアミド酸の脱水閉環により、ポリイミドを得ることができる。
【0068】
なお、上記各処理の加熱時間は、脱水閉環を行うポリアミド酸溶液の処理量や加熱温度により異なるが、一般的には、処理温度が最高温度に達してから1分〜5時間の範囲で行うことが好ましい。
【0069】
一方、化学的手法による脱水閉環は、上記ポリアミド酸溶液に、脱水剤と、必要に応じて触媒として、触媒量の第3級アミンとを加えて、加熱処理を行えばよい。なお、この加熱処理は、上記の熱的手法にて行った加熱処理を指すものとする。これにより、ポリイミドを得ることができる。
【0070】
化学的手法における上記脱水剤としては、一般的には、無水酢酸、無水プロピオン酸等の酸無水物が用いられる。また、上記第3級アミンとしては、ピリジン、イソキノリン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、イミダゾ−ル、ピコリン等を用いればよい。
【0071】
なお、本発明の可溶性ポリイミドが水酸基を有するものである場合には、脱水剤として加える酸無水物と水酸基との反応が考えられるため、用いる酸無水物は化学量論的にイミド化に必要な最低限の量にすることが好ましい。
【0072】
<(B)(メタ)アクリル系化合物>
次に(B)成分である(メタ)アクリル系化合物について説明する。感光性樹脂組成物に(B)成分を含有することにより、良好な硬化性を付与するだけでなく、作製される感光性ドライフィルムレジストの熱加工時での粘弾性を下げ、熱ラミネート時の流動性を付与することができる。すなわち、比較的低温での熱ラミネートが可能となり、回路の凹凸を埋め込むことができる。
【0073】
本発明において(メタ)アクリル系化合物とは、(メタ)アクリル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる化合物を示す。なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリル化合物及び/又はメタクリル化合物を指すものとする。
【0074】
上記(メタ)アクリル系化合物は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を組み合わせてもよい。本発明における感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル系化合物の総重量は、(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対して、1〜200重量部の範囲内で用いることが好ましく、1〜100重量部の範囲内で用いることがより好ましい。
【0075】
(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対して、(B)成分として200重量部を超える(メタ)アクリル系化合物を用いた場合は、得られる感光性ドライフィルムレジストにベタツキが生じやすくなる。
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物には、(B)成分として、特に限定されないが、光照射による架橋密度を向上するためには、少なくとも2つの炭素間二重結合を有する多官能の(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。また、得られる感光性ドライフィルムレジストに耐熱性を付与するために、1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有する化合物を用いることが好ましい。
1分子中に芳香環及び/又は複素環を少なくとも1つ有し、かつ炭素間二重結合を少なくとも2つ有する(メタ)アクリル化合物としては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−210、M−211B(東亞合成製)、NKエステルA−BPE−4、A−BPE−10−、A−BPE−30等のビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、アロニックスM−208(東亞合成製)等のビスフェノールF EO 変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート、デナコールアクリレートDA−250(ナガセ化成製)等のビスフェノールA PO変性(n=2〜20)ジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。さらに、芳香環は含まないが、アロニックスM−215等のイソシアヌル酸EO変性ジアクリレートやアロニックスM−315(東亞合成製)等のイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートなどが挙げることができる。なお、上記EO変性とは、エチレンオキサイド変性部位を有することを示し、PO変性とは、プロピレンオキサイド変性部位を有することを示す。
【0077】
また、現像性を制御のために、アルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましい。これらアルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物はベースポリマーとの相溶性に優れる。
【0078】
アルコール水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、V#2308、V#2323(大阪有機化学工業)等を挙げることができる。
【0079】
また、とくに1分子中に少なくとも1以上のエポキシ基及び1以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物を用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの耐加水分解性及び銅箔への接着性を向上させることが可能となる。
【0080】
1分子中に少なくとも1以上のエポキシ基及び1以上の(メタ)アクリル基を含有する(メタ)アクリル系化合物としては、特に限定されないが、例えば、グリシジルメタクリレート等のグリシジル化合物、NKオリゴEA−1010, EA−6310(新中村化学製)等を挙げることができる。
【0081】
また、1分子中に少なくとも2以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。このようなエポキシ(メタ)アクリレートを用いることにより、得られる感光性ドライフィルムレジストの水系現像液への溶解性が向上し、現像時間の短縮化が実現できる。
【0082】
1分子中に少なくとも2以上の水酸基を含有するエポキシ(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、リポキシSP−2600(昭和高分子製)、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEA−6340(新中村化学製)、カラヤッドR−280、 カラヤッドR−190(日本化薬製)、Ebecryl600、Ebecryl3700(ダイセルサイテック)等のビスフェノールAタイプのエポキシアクリレート、KRM7856、Ebecryl3604、Ebecryl3702、Ebecryl3703,Ebecryl3708(ダイセルサイテック)、LR9019(BASF)等の変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート、LR8765(BASF)等の脂肪族系エポキシアクリレート、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−6340(新中村化学製)等のフェノールノボラックエポキシアクリレート、カラヤッドR−167、 MAX−2104(日本化薬製)、デナコールアクリレートDA−212(ナガセ化成製)等の変性1,6−へキサンジオールジアクリレート、デナコールアクリレートDA−721(ナガセ化成製)等の変性フタル酸ジアクリレート、NKオリゴEA−1020(新中村化学製)等のクレゾールノボラックエポキシアクリレート等を挙げることができる。
【0083】
ポリエステル(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−5300、M−6100、M−7100(東亞合成製)等を挙げることができる。
【0084】
ウレタン(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに柔軟性を付与することができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスM−1100、M−1310(東亞合成製)、カラヤッドUX−4101(日本化薬製)等を挙げることができる。
【0085】
イミド(メタ)アクリレートを用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストを貼り合わせる基材(例えば、ポリイミドフィルム、銅箔等)への密着性を向上させることができる。イミド(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、アロニックスTO−1534、TO−1429、TO−1428(東亞合成製)を挙げることができる。
【0086】
<(C)光反応開始剤>
光反応開始剤を添加してなる感光性ドライフィルムレジストを露光した場合に、露光領域にて架橋反応や重合反応を促進することができる。これにより、露光領域と未露光領域とで、感光性ドライフィルムレジストの水系現像液への溶解性を十分に異なるようにすることができ、それゆえに、感光性ドライフィルムレジスト上にパターンを好適に現像することが可能になる。
【0087】
上記光反応開始剤としては、ラジカル発生剤、光カチオン発生剤、光塩基発生剤、光酸発生剤等を挙げることができる。
【0088】
上記ラジカル発生剤としては、特に限定されないが、g線程度の長波長の光によりラジカルを発生するものが好ましく、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンなどのケトン化合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物、ビス(−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン化合物が挙げることができる。とくに、ホスフィンオキサイド化合物やチタノセン化合物を用いることが好ましい。
【0089】
また、上記光カチオン発生剤としては、例えば、ジメトキシアントラキノンスルフォン酸のジフェニルヨードニウム塩等のジフェニルヨードニウム塩類、トリフェニルスルフォニウム塩類、ピリリニウム塩類、トリフェニルオニウム塩類、ジアゾニウム塩類等を挙げることができる。なお上記塩類の他、カチオン硬化性の高い脂環式エポキシやビニルエーテル化合物を混合することが好ましい。
【0090】
さらに、上記光塩基発生剤としては、ニトロベンジルアルコールやジニトロベンジルアルコールとイソシアナートの反応により得られるベンジルアルコール−ウレタン化合物、ニトロ−1−フェニルエチルアルコールやジニトロ−1−フェニルエチルアルコールとイソシアナートの反応により得られるフェニルアルコール−ウレタン化合物、ジメトキシ−2−フェニル−2−プロパノールとイソシアナートの反応により得られるプロパノール−ウレタン化合物等を挙げることができる。
【0091】
また、光酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルフォニウム塩、オニウム塩等のスルホン酸を発生させる化合物、ナフトキノンジアジド等のカルボン酸を発生させる化合物を挙げることができる。あるいは、ジアゾニウム塩や、ビス(トリクロロメチル)トリアジン類等の化合物は、光の照射によりスルホン基を生成させることができるので、これらの化合物も好ましく用いることができる。
【0092】
また、光反応開始剤と増感剤とを組み合わせて用いることもできる。特に、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のパーオキサイドと3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンとの組み合わせが好ましい。
【0093】
上記光反応開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0094】
上記光反応開始剤の使用量は、上記(A)成分であるバインダーポリマー及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.001〜10重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜10重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が、0.001重量部未満であると、十分な感度が得られず、10重量部を超えると、感光性ドライフィルムレジスト表面での吸収が増大し、内部の光硬化が不十分となる場合がある。
【0095】
<(D)難燃剤>
本明細書において、「難燃剤」とは、プラスチック、木材、または繊維等の可燃性物質に、添加または反応させることにより、可燃性物質を燃えにくくする働きのある物質のことを意味する。上記難燃剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、リン−窒素二重結合をもつホスファゼン化合物のようなリン系難燃剤、芳香族環の含有率が高いシリコーン化合物等を挙げることができる。これら難燃剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明においてリン系難燃剤とは、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド、ホスフィン、ホスファゼン化合物のようにリンを含む化合物のことを指す。
【0096】
感光性樹脂組成物との相溶性、難燃性の観点から、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物リン系難燃剤を用いることが好ましい。
縮合リン酸エステルとしては、例えば、CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)(大八化学製)、CR−741(大八化学製)、CR−747(大八化学製)、およびPX−200(大八化学製)などが挙げられ、ホスファゼン化合物としては、SPE−100(大塚化学製)、SPH−100(大塚化学製)などが挙げられる。
しかしながら、難燃剤を多量に添加すると、電気信頼性の低下だけでなく、アルカリ溶解性を低下させ、残渣が発生しやすくなる場合がある。なお、残渣は、相互作用の強い基材との界面で発生する場合が多い。
【0097】
そこで、本発明の多層構造の感光性ドライフィルムレジストにおいては、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下であって、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であることを特徴とする。第一感光層の難燃剤含有率を高くすることによって難燃性を付与し、第二感光層の難燃剤含有率を低くするか、難燃剤を全く含まないようにすることによって、耐湿性、電気信頼性をより高めることが出来る。さらに、基材に接する第二感光層がアルカリ溶解性に優れるために、アルカリ現像時に残渣が発生しにくくなり、現像性、解像度をより高めることが出来る。なお、基材に接する第二感光層のアルカリ溶解性が優れていれば、第一感光層のアルカリ溶解性が劣っていても、残渣は発生しにくくなる。
【0098】
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率は0〜50であることが好ましく、0〜20であることがより好ましく、0〜10であることが最も好ましい。第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が50を超えると、電気信頼性が低下する場合がある。
【0099】
また、第一感光層の難燃剤含有率は、1〜50%が好ましく、5〜40%がさらに好ましく、10〜30%が最も好ましい。第一感光層の難燃剤含有率が1%未満であると、十分な難燃効果が得られない場合がある。一方50%を超えると硬化物の物性に悪影響を与えるため好ましくない。
また、第二感光層の難燃剤含有率は、0〜10%が好ましく、0〜5%がさらに好ましく、0〜1%が最も好ましい。第二感光層の難燃剤含有率が10%を超えると、電気信頼性、アルカリ現像性が低下する場合がある。
【0100】
<(E)重合禁止剤>
(E)成分である重合禁止剤は、(A)バインダーポリマー及び/または(B)(メタ)アクリル系化合物に含有されるビニル基、アクリル基、メタクリル基等の光重合性・熱重合性官能基が、感光性樹脂組成物及び感光性ドライフィルムレジストの貯蔵中に架橋反応するのを防止し、保存安定性向上のために添加される。
本発明における重合禁止剤としては、一般的に重合禁止剤として用いられているものであれば特に限定されないが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DOHQ)、2,5−ビス(1,1−ジメチルブチル)ハイドロキノン(和光純薬(株)製、商品名DHHQ)等のハイドロキノン系化合物;p−ベンゾキノン、メチル−p−ベンゾキノン、t−ブチルベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等のベンゾキノン化合物;ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス1010)、N,N‘−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド](同社製、商品名イルガノックス1098)、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(同社製、商品名イルガノックス3114)、ヒドロキシフェノールベンゾトリアゾール(旭電化工業(株)製、商品名アデカAO−20)等のヒンダードフェノール系化合物;2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−;クレゾール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名TINUVIN P)等のベンゾトリアゾ−ル系化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(和光純薬(株)製、商品名Q−1300)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬(株)製、商品名Q−1301)等のニトロソアミン系化合物;フェノチアジン、ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等の有機硫黄化合物;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピぺリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル}メチル]ブチルマロネ−ト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス144)等のヒンダードアミン系化合物;p−ェニレンジアミン(通称パラミン)、N,N−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等の芳香族アミン;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(同社製、商品名イルガノックス168)テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォネート(同社製、商品名イルガノックスP−EPQ)等のリン系化合物などが挙げられる。
【0101】
特に、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ニトロソアミン系化合物、芳香族アミンであることが好ましい。これらの化合物を用いることにより、光重合性・熱重合性官能基の架橋反応を防ぐことができるため、感光性樹脂組成物の貯蔵中にその感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液の粘度の上昇を抑えることができ、感光性ドライフィルムレジストの保存安定性を向上できるだけでなく、酸化防止効果もあるので樹脂の劣化を防ぐことができ、感光性樹脂組成物から作製される硬化後の感光性ドライフィルムレジストの長期耐熱性や耐加水分解性を向上させることができる。
【0102】
上記重合禁止剤の使用量は、上記(A)成分であるバインダーポリマー及び(B)成分である(メタ)アクリル系化合物の総重量100重量部に対して、0.00001〜5重量部の範囲内であることが好ましく、0.0001〜1重量部の範囲内であることがより好ましい。上記光反応開始剤及び/又は増感剤の使用量が、0.00001重量部未満であると、保存時の安定性が低下する場合があり、5重量部を超えると、活性エネルギー線に対する感度が低下する傾向がある。
【0103】
<(F)その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物には、上記(A)バインダーポリマー、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤、(D難燃剤)、並びに(E)重合禁止剤以外に、必要に応じて(F)その他の成分の成分が含有されていてもよい。その他の成分としては、例えば、エポキシ樹脂、硬化促進剤及び/又は硬化剤、密着付与剤を挙げることができる。
【0104】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂を用いることにより、作製される感光性ドライフィルムレジストに銅箔やポリイミドフィルム等に対する接着性を向上させることができる。
【0105】
上記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、製品名エピコート828、834、1001、1002、1003、1004、1005、1007、1010、1100L(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、製品名ESCN−220L、220F、220H、220HH、180H65(ジャパンエポキシレジン(株)製)等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、製品名EPPN−502H(日本化薬(株)製)等のトリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、製品名ESN−375等のナフタレンアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、製品名ESN−185(新日鐵化学(株))等のノボラック型エポキシ樹脂、製品名YX4000H等のビフェノール型エポキシ樹脂を挙げることができる。
【0106】
また、上記の他、ビスフェノールAグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラックグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、芳香族型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等であってもよい。
【0107】
上記エポキシ樹脂は、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記エポキシ樹脂は、(A)成分であるバインダーポリマー100重量部に対し、必要に応じて1〜100重量部の範囲内で用いることが好ましく、0〜50重量部の範囲内で用いることがより好ましく、1〜30重量部の範囲内で用いることが特に好ましい。上記エポキシ樹脂が(A)バインダーポリマー100重量部に対して30重量部を超えると耐屈曲性の低下を引き起こす可能性がある。
【0108】
(硬化促進剤及び/又は硬化剤)
感光性樹脂組成物の材料としてエポキシ樹脂を用いた場合、作製される感光性ドライフィルムレジストの硬化を効率良く行うために、感光性樹脂組成物に硬化促進剤及び/又は硬化剤を添加してもよい。このような硬化促進剤及び/又は硬化剤としては特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂の硬化を効率良く行うためには、イミダゾ−ル系化合物、酸無水物、第3級アミン類、ヒドラジン類、芳香族アミン類、フェノール類、トリフェニルホスフィン類、有機過酸化物などを挙げることができる。これらの硬化促進剤及び/又は硬化剤のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いればよい。
【0109】
上記硬化促進剤及び/又は硬化剤の使用量は、(A)成分であるベースポリマー100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲内であることが好ましく、0.5〜20重量部の範囲内であることがより好ましく、0.5〜15重量部の範囲内であることが特に好ましい。上記硬化促進剤及び/又は硬化剤が(A)バインダーポリマー100重量部に対して0.1重量部未満であると、エポキシ樹脂の硬化が十分に行われず、逆に20重量部を超えると耐熱性の低下を引き起こす可能性がある。
(密着付与剤)
ポリイミドフィルム、金属等の基材との密着性を向上させるために、公知のいわゆる密着付与剤を添加してもよい。本発明においては、基材との密着面となる第二感光層に添加されることが好ましい。
このような密着促進剤は特に限定されないが、例えば、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、トリアゾール、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0110】
<感光性樹脂組成物の調製方法と感光性ドライフィルムレジストの作製方法>
続いて、感光性樹脂組成物の調製方法及び感光性ドライフィルムレジストの作製方法について説明するが、本発明の多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、以下で説明する作製方法により得られたものに限定されないことは言うまでも無い。
【0111】
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、感光能、保存安定性の向上のために、残存溶媒量が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが最も好ましい。残存溶媒量が5%を超えると、Bステージ状態のタック性が大きくなり取り扱い性が低下する。さらに、アルカリ水溶液に膨潤しやすくなり、現像後のレジストの形状が汚くなりやすく、解像度が低くなりやすい傾向がある。さらに、感光性ドライフィルムレジストの保存安定性も低下してしまう。また残存溶媒量は、感光性ドライフィルムレジストを作製する際に用いる有機溶媒の選定、乾燥条件の選定により調整することが出来る。
【0112】
本発明の多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、支持体フィルム上に第一感光層を形成した後、第一感光層表面に第二感光層を形成させることによって得られる。
【0113】
(感光性樹脂組成物の調製方法)
まず、第一感光層形成用の第一感光層樹脂組成物と、第二感光層形成用の第二感光層樹脂組成物を調製する。
【0114】
第一感光層樹脂組成物は、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤、(E1)重合禁止剤、並びに必要に応じて(F1)その他の成分をある割合で混合したものであり、それを有機溶媒に均一に溶解させた溶液を第一感光層の有機溶媒溶液という。
【0115】
第二感光層樹脂組成物は、(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤、(D2)難燃剤、(E2)重合禁止剤、並びに必要に応じて(F2)その他の成分をある割合で混合したものであり、それを有機溶媒に均一に溶解させた溶液を第二感光層の有機溶媒溶液という。
【0116】
この有機溶媒としては、感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解することができる有機溶媒であれば、特に限定されるものではない。上記有機溶媒としては、例えば、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール系溶媒等を挙げることができる。これらの有機溶媒は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、後の工程にて、上記有機溶媒の除去を行うので、上記感光性樹脂組成物に含有される成分を溶解し、できるだけ沸点の低いものを選択することが、製造工程上、有利である。
【0117】
(感光性ドライフィルムレジストの製造方法)
続いて、上記の第一感光層の有機溶媒溶液を支持体フィルム上に均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けを行う。これによって、上記有機溶媒を除去し、第一感光層樹脂組成物がフィルム状となった第一感光層を得ることができる。このように形成された第一感光層は、感光性樹脂組成物を半硬化状態(Bステージ)で保ったものである。それゆえ、熱ラミネート処理等の熱圧着処理を行う場合には適度な流動性を持ち、プリント配線板のパターン回路の埋め込みを好適に行うことができる。また、パターン回路を埋め込んだ後、露光処理、熱圧着処理、加熱キュアを行うことによって、完全に硬化させることができる。
【0118】
上記加熱及び/又は熱風吹き付けを行うことによって、感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を乾燥する時の温度は、感光性樹脂組成物に含有される(メタ)アクリル基、エポキシ基などの硬化性基が反応しない程度の温度であればよい。具体的には、150℃以下であることが好ましく、120℃以下であることが特に望ましい。また、乾燥時間は有機溶媒を除去することが可能な範囲内で、より短い時間とすることが好ましい。
【0119】
上記支持体フィルムの材料としては、得に限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリイミドフィルムなど、通常市販されている各種のフィルムが使用可能である。上記支持体フィルムのうち、ある程度の耐熱性を有し、比較的安価に手に入る点から、PETフィルムが多く用いられる。なお、支持体フィルムの感光性ドライフィルムレジストとの接合面については、密着性と剥離性を向上させるために表面処理されているものを用いてもよい。
【0120】
本発明の多層構造の感光性ドライフィルムレジストは、第一感光層表面に、第二感光層を形成させることによって得られる。第二感光層の厚みは、第一感光層の厚みを100とした場合、第二感光層の厚みが400以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。第一感光層の厚みを100とした場合、第二感光層の厚みが400より大きいと感光性ドライフィルムレジストの難燃性が低下してしまう。
【0121】
第一感光層表面に、第二感光層を形成する方法については、1)直接塗布法、2)転写法、の2通りがある。1)直接塗布法は、第一感光層表面に第二感光層の有機溶媒溶液を塗布及び乾燥して第二感光層を形成する方法であり、2)転写法は、第二感光層の有機溶媒溶液を表面に塗布し乾燥した保護フィルムの溶液塗布面を第一感光層に貼り合わせた後に、保護フィルムを剥離することにより、第一感光層表面に第二感光層を転写させる方法のことである。
【0122】
上記1)の方法の場合、支持体フィルム上に第一感光層を形成した後、第一感光層表面に第二感光層の有機溶媒溶液をグラビアメッシュなどの塗布器具を用いて均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥する。このようにして、第一感光層上に第二感光層が形成された「支持体フィルム/第一感光層/第二感光層」という構成のドライフィルムレジストが得られる。この後、第二感光層の上にさらに保護フィルムを積層してもよい。保護フィルムについては後述する。
【0123】
次に、上記2)の方法の場合、第二感光層の有機溶媒溶液をPEフィルムなどの保護フィルムにグラビアメッシュなどの塗布器具を用いて均一に塗布した後、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶媒を除去して乾燥する。こうして得られた第二感光層付き保護フィルム(「保護フィルム/第二感光層」)を、第二感光層面が第一感光層との接合面となるように支持体フィルム付き第一感光層(「第一感光層/支持体フィルム」)とを貼り合わせるために、20℃〜70℃の温度でロールラミネートする。この後、保護フィルムを剥離すれば、「支持体フィルム/第一感光層/第二感光層」という構成の感光性ドライフィルムレジストとして使用することができる。
【0124】
さらに、作製した感光性ドライフィルムレジストの上には、保護フィルムを積層することが好ましい。空気中のゴミやチリが付着することを防ぎ感光性ドライフィルムレジストの乾燥による品質の劣化を防ぐことができる。
【0125】
上記保護フィルムは、感光性ドライフィルムレジスト面に10℃〜50℃の温度でラミネートして積層することが好ましい。なお、ラミネート処理時の温度が50℃よりも高くなると、保護フィルムの熱膨張を招き、ラミネート処理後の保護フィルムにしわやカールが生じる場合がある。なお、上記保護フィルムは使用時には剥離するため、保護フィルムと感光性ドライフィルムレジストとの接合面は、保管時には適度な密着性を有し、かつ剥離性に優れていることが好ましい。
【0126】
上記保護フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンフィルム(PEフィルム)、ポリエチレンビニルアルコールフィルム(EVAフィルム)、「ポリエチレンとエチレンビニルアルコールの共重合体フィルム」(以下(PE+EVA)共重合体フィルムと略す)、「PEフィルムと(PE+EVA)共重合体フィルムの貼り合せ体」、もしくは「(PE+EVA)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(片面がPEフィルム面であり、もう片面が(PE+EVA)共重合体フィルム面であるフィルムとなる)等を挙げることができる。
【0127】
上記PEフィルムは安価であり、表面の滑り性に優れているという長所がある。また、(PE+EVA)共重合体フィルムは、感光性ドライフィルムレジストへの適度な密着性と剥離性とを備えている。このような保護フィルムを用いることにより、保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムの三層を有するシートをロール状に巻き取った場合に、その表面の滑り性を向上することができる。
【0128】
<プリント配線板の作製>
本発明に係る多層構造の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として形成してなるプリント配線板を作製する手法について、説明する。プリント配線板として、パターン回路が形成されてなるCCL(以下、回路付きCCLともいう。)を用いる場合を例に挙げて説明するが、多層のプリント配線板を形成する場合にも、同様の手法により層間絶縁層を形成することができる。
【0129】
まず、上記にて説明した保護フィルム、感光性ドライフィルムレジスト、支持体フィルムを有してなるシートから保護フィルムを剥離する。以下では、保護フィルムが剥離されたものを支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストと記載する。そして、感光性ドライフィルムレジストの第二感光層側と回路付きCCLの回路部分とが対向するように、該回路付きCCLを、支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストにて覆い、熱圧着によって貼り合せる。この熱圧着による貼り合わせは、熱プレス処理、ラミネート処理(熱ラミネート処理)、熱ロールラミネート処理等によって行えばよく、特に限定されるものではない。
【0130】
上記貼り合わせを、熱ラミネート処理、熱ロールラミネート処理(以下、ラミネート処理と記載)によって行う場合、処理温度は、ラミネート処理が可能である下限の温度(以下、圧着可能温度)以上であればよい。具体的には、上記圧着可能温度は、50〜150℃の範囲内であることが好ましく、60〜120℃の範囲内であることがより好ましく、特に80〜120℃の範囲内であることが好ましい。
【0131】
上記処理温度が150℃を超えると、ラミネート処理時に、感光性ドライフィルムレジストに含まれる感光性反応基の架橋反応が生じ、感光性ドライフィルムレジストの硬化が進行する場合がある。一方、上記処理温度が50℃未満であると、感光性ドライフィルムレジストの流動性が低く、パターン回路を埋め込むことが困難となる。さらに、銅回路付きCCLの銅回路や該銅回路付きCCLのベースフィルムとの接着性が低下する場合がある。
【0132】
上記の熱圧着処理によって、回路付きCCL上に感光性ドライフィルムレジストが積層され、さらに支持体フィルムが積層されたサンプルが得られる。次いで、この貼り合わせサンプルについてパターン露光及び現像を行う。パターン露光及び現像に際しては、上記貼り合わせサンプルの支持体フィルム上にフォトマスクパターンを配置し、該フォトマスクを介して露光処理を行う。その後、支持体フィルムを剥離して現像処理を行うことにより、フォトマスクパターンに応じた穴(ビア)が形成される。
【0133】
なお、上記支持体フィルムは、露光処理後に剥離しているが、回路付きCCL上に支持体フィルム付き感光性ドライフィルムレジストが貼り合わせられた後に、すなわち、露光処理を行う前に剥離してもよい。感光性ドライフィルムレジストを保護する点からは、露光処理が完了した後に剥離することが好ましい。
【0134】
ここで露光に用いる光源としては、300〜430nmの光を有効に放射する光源が好ましい。この理由は、感光性ドライフィルムレジストに含有される光反応開始剤が、通常450nm以下の光を吸収して機能するためである。
【0135】
また、上記現像処理に用いる現像液としては、塩基性化合物が溶解した塩基性溶液を用いればよい。塩基性化合物を溶解させる溶媒としては、上記塩基性化合物を溶解することができる溶媒であれば特に限定されないが、環境問題等の観点から、水を使用することが特に好ましい。
【0136】
上記塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の有機アミン化合物等を挙げることができる。上記塩基性化合物は1種を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0137】
上記塩基性溶液に含有される塩基性化合物の濃度は、0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましいが、感光性ドライフィルムレジストの耐アルカリ性の点から、0.1〜5重量%の範囲内とすることがより好ましい。
【0138】
なお、現像処理の方法としては、特に限定されないが、塩基性溶液中に現像サンプルを入れて攪拌する方法や、現像液をスプレー状にして現像サンプルに噴射する方法等が挙げられる。
【0139】
本発明においては、特に、液温40℃に調整した1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液、あるいは1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液を現像液に用い、スプレー現像機を用いて行う現像処理を例示することができる。ここで、スプレー現像機とは、現像液をスプレー状にしてサンプルに噴射する装置であれば特に限定されない。
【0140】
ここで、感光性ドライフィルムレジストのパターンが描けるまでの現像時間は、パターンが描ける時間であればよいが、180秒以下の時間で現像できることが好ましく、90秒以下の時間で現像できることがより好ましく、60秒以下の時間で現像できることが最も好ましい。現像時間が180秒を超えると生産性が劣る傾向がある。
【0141】
ここで、現像時間の目安として、Bステージ(半硬化)状態の感光性ドライフィルムレジストの溶解時間を測定する方法がある。具体的には、感光性ドライフィルムレジストを銅箔光沢面に貼り合わせたサンプルを、未露光の状態で、1重量%濃度の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)、あるいは1重量%濃度の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)を現像液として、スプレー圧0.85MPaで、スプレー現像処理を行うという方法である。このスプレー現像処理により、感光性ドライフィルムレジストが180秒以下の時間で溶解して除去されることが好ましい。感光性ドライフィルムレジストが溶解除去されるまでの時間が180秒を超えると、作業性が低下する傾向がある。
【0142】
上記のように露光・現像処理が施された後、感光性ドライフィルムレジストに対して、加熱キュアを行うことにより、感光性ドライフィルムレジストが完全に硬化する。これにより、硬化した感光性ドライフィルムレジストは、プリント配線板の絶縁保護膜となる。
【0143】
また、多層のプリント配線板を形成する場合には、プリント配線板の保護層を層間絶縁層とし、該層間絶縁層上に、さらにスパッタリングや鍍金、もしくは銅箔との貼り合わせ等を行った後、パターン回路を形成し、上記のように感光性ドライフィルムレジストをラミネートすればよい。これにより、多層のプリント配線板を作製することができる。
【0144】
なお、本実施の形態では、感光性ドライフィルムレジストを、プリント配線板の絶縁保護材料または層間絶縁材料として用いる場合について説明したが、上記の用途以外に用いることも可能である。
【実施例】
【0145】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。感光性樹脂組成物の調製及び感光性ドライフィルムレジストの具体的な作製例、及びその物性の評価は次のようにして行った。
【0146】
<感光性樹脂組成物の調製>
第一感光層樹脂組成物は、(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤、(E1)重合禁止剤、並びに必要に応じて(F1)その他の成分をある割合で混合して作製し、その固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて、均一に溶解させた溶液を第一感光層の有機溶媒溶液として作製した。同様に、第二感光層樹脂組成物は、(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤、(E2)重合禁止剤、並びに必要に応じて(D2)難燃剤、(F2)その他の成分をある割合で混合して作製し、その固形分重量%(Sc)=30%となるようにジオキソランを加えて、均一に溶解させた溶液を第二感光層の有機溶媒溶液として作製した。ここで、固形分重量とは、有機溶媒以外の材料のことであり、例えば(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)成分の総重量を示し、有機溶媒以外の液体材料の重量は、液体であっても固形分として重量に含めるものとする。
【0147】
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
上記の第一感光層の有機溶媒溶液を、支持体フィルムに塗布した。支持体フィルムとしては、PETフィルム(東レ(株)製ルミラー、厚み25μm)を用いた。その後、支持体フィルム上の塗布層を100℃10分間の条件で乾燥することによって、有機溶媒を除去した。これにより、第一感光層/PETフィルムからなるシートを得た。なお、第一感光層はBステージ状態にある。
【0148】
次に、第一感光層表面に第二感光層を形成させるが、以下の直接塗布法、転写法の2種類の方法にて行った。
(1)第二感光層の形成 〜直接塗布法〜
直接塗布法の場合、上記で作製した第一感光層表面に、第二感光層の有機溶媒溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥して有機溶媒を除去した。
【0149】
このようにして作製された支持体フィルム/感光性ドライフィルムレジスト上に、保護フィルムとして「(EVA+PE)共重合体とポリエチレンとの同時押し出し製法によるフィルム」(積水化学(株)製プロテクト(#6221F)フィルム(厚み50μm))をその(EVA+PE)共重合体フィルム面が感光性ドライフィルムレジスト面と接するように、ロール温度40℃、ニップ圧は50000Pa・mの条件でラミネートした。
(2)第二感光層の形成 〜転写法〜
PPSフィルム(東レ(株)製トレリナ#3000、厚み25μm)上に、第二感光層の有機溶媒溶液を塗布し、100℃で5分間乾燥して有機溶媒を除去した。
【0150】
このようにして作製された第二感光層付き保護フィルムを第二感光層側が、上記で作製した第一感光層表面に接するようにして、ロール温度45℃、ニップ圧は50000Pa・mの条件でラミネートした。このPPSフィルムは感光性ドライフィルムレジスト使用時に、まず剥離されるものである。
【0151】
なお、上記直接塗布法、又は転写法によって作製された二層構成の感光性ドライフィルムレジストはBステージ状態にある。
【0152】
<感光性ドライフィルムレジストの物性の評価>
上記のようにして作製された感光性ドライフィルムレジストについて、次に示す各項目の物性について評価を行った。具体的には、残存溶媒量、アルカリ溶解性、現像性、解像度、保存安定性、密着性、難燃性、電気信頼性、半田耐熱性、Bステージ状態のタック性についての評価を行った。
【0153】
(残存溶媒量)
Bステージ状態の感光性ドライフィルムレジスト 1gをN−メチル−2−ピロリドン 10gに溶解させ、島津製作所GC−2014を使用してガスクロマトグラフィーにより測定を行った。
【0154】
(アルカリ溶解性)
まず、電解銅箔(三井金属(株)製、厚み38μm)を10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。感光性ドライフィルムレレジストの保護フィルムを剥離後、前記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。次いで、PETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)で、現像時間30〜180秒間の条件で現像処理を行った。現像後のサンプルは、蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。感光性ドライフィルムレジストが貼り合わされた銅箔光沢面から、感光性ドライフィルムレジストが完全に除去されるのに必要な最短の現像時間をBステージ状態のアルカリ溶解時間とした。1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)でのアルカリ溶解時間が180秒を超える場合には、現像液を1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)に変更して同様の試験を実施し、アルカリ溶解時間を測定した。
【0155】
この感光性ドライフィルムレジストのBステージ状態でのアルカリ溶解時間が、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)または1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)のいずれかの現像液で60秒以下のものを合格とし、180秒を超えるものを不合格とした。
【0156】
(現像性)
まず、電解銅箔(三井金属(株)製、厚み38μm)を10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチング(銅箔表面の防錆剤を除去する工程である)し、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、前記電解銅箔現像液を(ソフトエッチング後)の光沢面に、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この積層体のPETフィルムの上に、100×100μm角及び200×200μm角の微細な四角を描いたマスクパターンをのせ、波長405nmの光を300mJ/cm2だけ露光した。このサンプルのPETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、または1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、スプレー現像を行った。なお、現像液には、上記アルカリ溶解性試験において、炭酸ナトリウム水溶液に溶解した水準では現像液に炭酸ナトリウム水溶液を用い、水酸化ナトリウムのみに溶解した水準では、現像液に水酸化ナトリウム水溶液を用いた。現像によって形成したパターンは、次いで蒸留水により洗浄して、現像液を除去し、乾燥させた。光学顕微鏡で観察して少なくとも200μm×200μm角の四角が残渣なく現像できていれば合格とした。
【0157】
(解像度)
上記現像性と同様の条件にて、電解銅箔の光沢面に感光性ドライフィルムレジストをラミネートした。この積層体のPETフィルムの上に、ライン/スペースが40/40μmから200/200μmまで10μm刻みのマスクパターンを載せ、波長405nmの光を300mJ/cm2だけ露光した。このサンプルのPETフィルムを剥離した後、スプレー現像機(サンハヤト(株)製エッチングマシーンES−655D)を用いて、1重量%の水酸化ナトリウム水溶液(液温40℃)、または1重量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温40℃)を使用して、スプレー現像処理を行い、未露光部をきれいに除去することができた最小のライン幅を測定し、これを解像度とした。解像度は数値が小さいほど良好である。なお、現像液には、上記アルカリ溶解性試験において、炭酸ナトリウム水溶液に溶解した水準では現像液に炭酸ナトリウム水溶液を用い、水酸化ナトリウムのみに溶解した水準では、現像液に水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
【0158】
(保存安定性)
初期状態(室温保管0日)の感光性ドライフィルムレジストと、室温60日保管後の感光性ドライフィルムレジストにそれぞれについて、上記現像性の評価を行った。初期状態、室温60日保管後の現像性評価結果が、いずれも現像可能であれば合格とし、初期状態では現像可能なものが60日保管後に現像不可になれば不合格とした。なお、初期状態で現像不可なものは、保存安定性の評価不可とした。
【0159】
(密着性)
感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、25μm厚のポリイミドフィルム((株)カネカ製 NPI)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工した。次に、波長405nmの光を600mJ/cm2だけ露光してから支持体フィルムを剥離し、180℃のオーブンで2時間加熱キュアを行った。
【0160】
このように作製した「ポリイミドフィルム/感光性ドライフィルムレジスト」積層体サンプルをIPC TM650 2.4.28.1に準拠してクロスカットピール試験を行い、剥離が無ければ合格とした。
【0161】
(難燃性試験)
感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、50μm厚のポリイミドフィルム((株)カネカ製 NPI)に100℃、75000Pa・mでラミネート加工した。次に、波長405nmの光を600mJ/cm2だけ露光してから支持体フィルムを剥離し、180℃のオーブンで2時間加熱キュアを行った。
【0162】
このように作製した「ポリイミドフィルム/感光性ドライフィルムレジスト」積層体サンプルを寸法1.27cm幅×12.7cm長さ×75μm厚みにカットしたものを20本用意した。そのうち10本は、1)23℃/50%相対湿度/48時間で処理し、残りの10本は、2)70℃/50%相対湿度/168時間処理後、無水塩化カルシウム入りデシケーターで4時間以上冷却した。
【0163】
これらのサンプルの上部をクランプで止めて垂直に固定し、サンプル下部にバーナーの炎を10秒間近づけて着火した。10秒間経過したらバーナーの炎を遠ざけて、サンプルの炎や燃焼が何秒後に消えるか測定した。各条件(1)、2))につき、サンプルからバーナーの炎を遠ざけてから平均(10本の平均)で5秒以内、かつ最高で10秒以内に炎や燃焼が停止し自己消火したものを合格とした。1本でも10秒以内に消火しないサンプルがあったり、炎がサンプル上部のクランプのところまで上昇して燃焼するものは不合格とした。
【0164】
(電気信頼性)
銅箔付きポリイミドフィルム(新日鐵化学(株)製、商品名エスパネックス、ポリイミドフィルムの厚み25μm、銅箔の厚み18μm)の銅箔面、レジストフィルム(旭化成(株)製、サンフォート)を用いて、ライン/スペース=100/100μmおよび25/25μmの櫛型パターンを形成して、回路付きCCLを得た。保護フィルムを剥離した感光性ドライフィルムレジストを、この回路付きCCLの櫛型パターン部分の上を被覆するように重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長405nmの光を300mJ/cm2露光した後、PETフィルムを剥離し、180℃で2時間キュアして硬化させた。
このサンプルを温度85℃/相対湿度85%の条件の恒温恒湿器(エスペック製、商品名プラチナスPR―2K)の中に入れ、櫛型パターンの端子間に60Vの電圧を印加し続け、30分間おきに線間絶縁抵抗を測定した。少なくとも、ライン/スペース=100/100μmの櫛型パターンで、印加時間が500時間の時点での抵抗値が、1.0×108Ω以上であれば合格とし、500時間未満で回路が短絡してしまうものは不合格とした。ライン/スペース=25/25μmの櫛型パターンでも1.0×108Ω以上の抵抗値を保持していれば、電気信頼性はより良好であるといえる。
【0165】
(半田耐熱性)
銅箔(三井金属(株)製の電解銅箔、厚み38μm)を5cm角にカットし10重量%硫酸水溶液で1分間ソフトエッチングし、水洗い後、エタノール、アセトンで表面を洗ってから乾燥させた。次に4cm角にカットした感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離し、上記電解銅箔(ソフトエッチング後)の光沢面に重ねて、100℃、75000Pa・mの条件でラミネートした。この貼り合わせサンプルの感光性ドライフィルムレジスト面に波長405nmの光を300mJ/cm2露光した後、180℃で2時間キュアして硬化させた。このサンプルを1)常態(20℃/相対湿度40%の環境で24時間)、2)吸湿(40℃/相対湿度85%の環境で48時間)調湿した後に、260℃以上の溶融半田に30秒間浮かべ、銅箔と感光性ドライフィルムレジストの界面に膨れの発生若しくは剥離が生じていない最高温度を測定した。少なくとも260℃以上の半田耐熱性があれば、合格とした。
【0166】
(Bステージ状態のタック性)
感光性ドライフィルムレジストの保護フィルムを剥離後、指触によりタックの有無を調べ、タックフリー、僅かなタックであれば合格、タック性が強ければ、不合格とした。
【0167】
<バインダーポリマーの合成>
バインダーポリマーの重量平均分子量は、東ソー社製HLC8220GPCを使用して、サイズ排除クロマトグラフィーにより、ポリエチレンオキシド換算で算出した。
【0168】
(合成例1:ポリアミド酸)
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 29.23g(100mmol)をとり、ジメチルホルムアミド 58.46gに溶解して加え室温で1時間撹拌を行った。ついで、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物 31.02g(100mmol)を加え、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は100000であった。
【0169】
(合成例2:ポリアミド酸)
攪拌機を設置した2000mlのセパラブルフラスコに、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物 31.02g(100mmol)、ジメチルホルムアミド 102.7gをとり、信越化学製ポリシロキサンジアミンX−22−9409S 59.68g(40mmol:分子量1492)をジメチルホルムアミド 59.68gに溶解して加え室温で1時間撹拌を行った。ついで、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン 17.54g(60mmol)を加え、3時間撹拌を続け、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は80000であった。
【0170】
(合成例3:ポリアミド酸)
3Lセパラブルフラスコに攪拌機、還流冷却器、滴下ロート及び窒素導入菅を設置し、窒素雰囲気下、ピロメリット酸二無水物 87.3g(400mmol)、N―メチルピロリドン 496gをフラスコ内に投入し、これを攪拌しながら内部温度を50℃まで昇温した。その温度で、滴下ロートから東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のポリシロキサンジアミン BY16−853U 92.6g(100mmol:分子量926)を少量ずつ2時間かけて滴下した。滴下終了後、その温度で1時間撹拌を継続させた。その後、反応温度を30℃以下に冷却し、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを87.7g(300mmol)添加後20時間窒素雰囲気下で攪拌を継続し、ポリアミド酸を得た。このポリアミド酸の重量平均分子量は120000であった。
【0171】
(合成例4:カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミド)
攪拌機を設置した500mlのセパラブルフラスコに(2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物 17.3g (30mmol)、ジメチルホルムアミドを30g入れて、攪拌機で攪拌して溶解させた。次に、[ビス(4−アミノ−3−カルボキシ)フェニル]メタン 5.15g (18mmol)をジメチルホルムアミド 9gに溶解して、上記(2,2−ビス(ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエ−ト)−3,3',4,4'−テトラカルボン酸二無水物の溶液に加え、激しく攪拌した。溶液が均一になったらさらに、上記溶液に信越化学製ポリシロキサンジアミンKF−8010を7.47g(9mmol)を加え、激しく攪拌した。溶液が均一になったら最後に、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンを1.29g(3mmol)加えて1時間激しく攪拌した。このようにして得たポリアミド酸溶液をフッ素系樹脂でコートしたバットにとり、真空オーブンで、200℃、660Paの圧力で2時間減圧乾燥し、26.40gのカルボキシル基を有するポリイミドを得た。このポリイミドの重量平均分子量は37000であった。
【0172】
(実施例1)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0173】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・カルボキシル基含有ビニル系ポリマー(ダイセルサイテック(株)製、製品名ACA320 重量平均分子量25000)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・20重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(D1)難燃剤
・レゾルシノールビス(ジ2,6−キシレニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名PX−200・・・・・30重量部重量部
(E1)重合禁止剤
・N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬(株)製、商品名Q−1301)・・・・・0.001重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A2)バインダーポリマー
・カルボキシル基含有ビニル系ポリマー(ダイセルサイテック(株)製、製品名ACA320 重量平均分子量25000)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M305)・・・・・40重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(E2)重合禁止剤
・N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩(和光純薬(株)製、商品名Q−1301)・・・・・0.001重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、転写法にて、第一感光層20μ厚、第二感光層5μ厚であるBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0174】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.05%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:70μm
保存安定性:初期状態、室温60日保管後も現像可能であり、合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:1.7×108Ω、ライン/スペース=25/25μm:4.5×106Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
(実施例2)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0175】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・合成例1で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・10重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・40重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名CR−741・・・・・15重量部重量部
(E1)重合禁止剤
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス259)・・・・・0.5重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A2)バインダーポリマー
・合成例1で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・40重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(E2)重合禁止剤
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名イルガノックス259)・・・・・0.5重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、直接塗布法にて、第一感光層20μ厚、第二感光層5μ厚であるBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0176】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:1.15%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:70μm
保存安定性:初期状態、室温60日保管後も現像可能であり、合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.4×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:3.7×108Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
(実施例3)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0177】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・合成例2で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・20重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・30重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、製品名SPH−100)・・・・・20重量部
(E1)重合禁止剤
・ハイドロキノン・・・・・・0.01重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A2)バインダーポリマー
・合成例2で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名EB150)・・・・・10重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・20重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(E2)重合禁止剤
・ハイドロキノン・・・・・・0.01重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、直接塗布法にて、第一感光層20μ厚、第二感光層5μ厚であるBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0178】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:2.05%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:100μm
保存安定性:初期状態、室温60日保管後も現像可能であり、合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.4×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:5.3×108Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
(実施例4)
第一感光層、第二感光層を形成する際の乾燥時間をそれぞれ5分延長すること以外は、実施例3と全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0179】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.05%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:50μm
保存安定性:初期状態、室温60日保管後も現像可能であり、合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.6×1011Ω、ライン/スペース=25/25μm:5.4×108Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は290℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
(実施例5)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0180】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・合成例4で合成したカルボキシル基を有する可溶性ポリイミド・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名Ebecryl3708)・・・・・50重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、製品名SPE−100)・・・・・15重量部重量部
(E1)重合禁止剤
・ハイドロキノン・・・・・・0.01重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A2)バインダーポリマー
・合成例4で合成したカルボキシル基を有する可溶性ポリイミド・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・変性ビスフェノールA型のエポキシアクリレート(ダイセルサイテック(株)製、製品名Ebecryl3708)・・・・・50重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、製品名イルガキュア819)・・・・・2重量部
(E2)重合禁止剤
・ハイドロキノン・・・・・・0.01重量部
(F2)その他の成分
エポキシ樹脂として、
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製、製品名エピコート828)・・・・・10重量部
硬化剤として、
・4,4'−ジアミノジフェニルメタン(DDM)・・・・・1重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、直接塗布法にて、第一感光層20μ厚、第二感光層5μ厚であるBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0181】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.07%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液には180秒でも溶解せず。水酸化ナトリウム水溶液では30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:90μm
保存安定性:初期状態、室温60日保管後も現像可能であり、合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.7×108Ω、ライン/スペース=25/25μm:3.4×106Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は300℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
(比較例1)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0182】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A)バインダーポリマー
・ポリウレタン樹脂(大日精化(株)製、製品名FS−141・・・・・100重量部
(D)難燃剤
・ホスファゼン化合物(大塚化学(株)製、製品名SPE−100)・・・・・50重量部重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A)バインダーポリマー
・ポリウレタン樹脂(大日精化(株)製、製品名FS−141・・・・・100重量部
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.02%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液ともに180秒でも溶解せず。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに現像できず、不合格。
解像度:−(現像不可)
保存安定性:−(評価不可)
密着性:一部剥離し、不合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.4×108Ω、ライン/スペース=25/25μm:300時間後に短絡。)
半田耐熱性:260℃で膨れ発生し、不合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
このように、(A)バインダーポリマーが酸性官能基を有さず、(B)(メタ)アクリル系化合物、(C)光反応開始剤を添加していないような非感光性材料では、現像性がない。さらに、密着性、半田耐熱性も劣る。
【0183】
(比較例2)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0184】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・合成例3で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M−305)・・・・・25重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・25重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(D1)難燃剤
・ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名CR−741・・・・・20重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、第一感光層25μ厚で、第二感光層は設けないBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0185】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:3.12%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に60秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴は現像不可だが、200μm×200μm角の穴は現像可能であり、合格。
解像度:150μm
保存安定性:初期状態では現像可能であったが、室温60日保管後では200μm×200μm角の穴が現像不可になり、不合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:不合格。(ライン/スペース=100/100μm:200時間後に短絡、ライン/スペース=25/25μm:100時間後に短絡)
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タック性が強く、不合格
このように、第二感光層を設けない感光性ドライフィルムレジストでは、現像性、解像度、電気信頼性に劣り、Bステージ状態のタック性が強いため取り扱い性も劣る結果となった。また、保存安定性も悪い。
【0186】
(比較例3)
<感光性ドライフィルムレジストの作製>
以下に示す成分を混合し、固形分重量%(Sc)=40%となるようにジオキソランを加えて均一に溶解させ、第一感光層および、第二感光層の有機溶媒溶液を作製した。
【0187】
(第一感光層の有機溶媒溶液)
(A1)バインダーポリマー
・合成例3で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B1)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M−305)・・・・・40重量部
・ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート(日立化成工業(株)製、製品名FA321M)・・・・・10重量部
(C1)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・2重量部
(第二感光層の有機溶媒溶液)
(A2)バインダーポリマー
・合成例3で合成したポリアミド酸(固形分で換算)・・・・・100重量部
(B2)(メタ)アクリル系化合物
・ペンタエリストールアクリレート(東亜合成(株)製、製品名M−305)・・・・・20重量部
(C2)光反応開始剤
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア819)・・・・・1重量部
(D1)難燃剤
・ビスフェノールAビス(ジフェニル)ホスフェート(大八化学(株)製、製品名CR−741・・・・・30重量部
上記組成の感光性樹脂組成物の有機溶媒溶液を調製し、直接塗布法にて、第一感光層20μ厚、第二感光層5μ厚であるBステージ状態の感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0188】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.92%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液に60秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴の開口部に残渣が発生し不合格。
解像度:−(現像不可)
保存安定性:−(評価不可)
密着性:合格。
難燃性:不合格。
電気信頼性:不合格。(ライン/スペース=100/100μm:100時間後に短絡、ライン/スペース=25/25μm:50時間後に短絡)
半田耐熱性:半田耐熱性は260℃で合格。
Bステージ状態のタック性:僅かにタック性がある程度であり、合格
このように第一感光層が難燃剤を含有せず、第二感光層では難燃剤を含有する多層構造のものでは、現像性、解像度、難燃性、電気信頼性に劣る結果となった。
【0189】
(比較例4)
(E)成分である重合禁止剤を全く添加しないこと以外は、実施例5と全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0190】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:0.08%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液には180秒でも溶解せず。水酸化ナトリウム水溶液では30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。
解像度:90μm
保存安定性:初期状態では現像可能であったが、室温60日保管後では100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに現像不可になり、不合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.7×108Ω、ライン/スペース=25/25μm:3.4×106Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は300℃で合格。
Bステージ状態のタック性:タックフリーで合格
このように、(E)成分である重合禁止剤を使用しない場合、保存安定性に劣る結果となった。
【0191】
(比較例5)
第一感光層、第二感光層を形成する際の乾燥時間をそれぞれ2分に短縮すること以外は、実施例5と全く同様の条件で感光性ドライフィルムレジストを作製した。
【0192】
<物性の評価結果>
得られた感光性ドライフィルムレジストの物性評価結果は、次のようになった。
残存溶媒量:5.20%
アルカリ溶解性:1重量%の炭酸ナトリウム水溶液には180秒でも溶解せず。水酸化ナトリウム水溶液では30秒で溶解。
現像性:100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに残渣なく現像できており合格。しかし、レジスト形状は汚い。
解像度:170μm
保存安定性:初期状態では現像可能であったが、室温60日保管後では100μm×100μm角の穴、200μm×200μm角の穴がともに現像不可になり、不合格。
密着性:合格。
難燃性:合格。
電気信頼性:合格。(ライン/スペース=100/100μm:5.3×108Ω、ライン/スペース=25/25μm:3.1×106Ω)
半田耐熱性:半田耐熱性は300℃で合格。
Bステージ状態のタック性:僅かなタック性がある程度で合格
このように、残存溶媒量が5%を以上である場合、保存安定性に劣り、現像性、解像度、Bステージ状態のタック性も低下する結果となった。
【0193】
実施例の配合条件、厚み構成を表1に、比較例の配合条件、厚み構成を表2に、物性の評価結果を表3,4に示す。
【0194】
【表1】

【0195】
【表2】

【0196】
【表3】

【0197】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一感光層が(A1)バインダーポリマー、(B1)(メタ)アクリル系化合物、(C1)光反応開始剤、(D1)難燃剤及び(E1)重合禁止剤を含有し、第二感光層が(A2)バインダーポリマー、(B2)(メタ)アクリル系化合物、(C2)光反応開始剤、(D2)難燃剤及び(E2)重合禁止剤を含有し、第二感光層の難燃剤含有率が0%以上10%以下、かつ第一感光層の難燃剤含有率を100とした場合、第二感光層の難燃剤含有率が0以上50以下であり、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含むレジスト全体の残存溶媒量が5%以下である、第一感光層及び第二感光層を少なくとも含む多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項2】
上記(D1)難燃剤及び/または(D2)難燃剤がリン系化合物であることを特徴とする請求項1記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項3】
上記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、カルボキシル基含有ビニル系ポリマーであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項4】
上記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、ポリアミド酸であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項5】
上記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたポリアミド酸であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【化1】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【請求項6】
上記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、カルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項7】
上記(A1)バインダーポリマー及び/または(A2)バインダーポリマーが、一般式(1)で表されるポリシロキサンジアミンを原料の一部として用いたカルボキシル基及び/又は水酸基を有する可溶性ポリイミドであることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【化2】

(式中、R1はそれぞれ独立して、炭素数1〜5の炭化水素を表し、R2はそれぞれ独立して、炭素数1〜5のアルキル基またはフェニル基から選ばれる有機基を表し、nは1〜20の整数を表す。)
【請求項8】
上記(E1)重合禁止剤及び/または(E2)重合禁止剤が、ハイドロキノン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ニトロソアミン系化合物及び芳香族アミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジスト。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の多層構造の感光性ドライフィルムレジストを絶縁保護層として用いることを特徴とするプリント配線板。

【公開番号】特開2007−310201(P2007−310201A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140029(P2006−140029)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】