説明

感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたプラズマディスプレイパネルの隔壁及びこれを含むプラズマディスプレイパネル

【課題】感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたプラズマディスプレイパネルの隔壁及びこれを含むプラズマディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】フッ化物ゾル及び無機物を含む感光性ペースト組成物において、フッ化物ゾルの平均屈折率N及び無機物の平均屈折率Nが下記数式1を満たすことを特徴とする感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたプラズマディスプレイパネルの隔壁及びこれを含むプラズマディスプレイパネルである:
−0.2≦N−N≦0.2 ・・・(式1)。これにより、1回の露光だけで高解像度及び高精密のプラズマディスプレイパネル用隔壁パターンを製造できるだけではなく、既存の隔壁に比べて高い反射率を有する隔壁を提供できるために、高い輝度を有するプラズマディスプレイパネルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたプラズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁及びこれを含むプラズマディスプレイパネルに関する。さらに具体的には、1回の露光だけで高解像度及び高精度のPDP用隔壁パターンを製造できるだけではなく、既存の隔壁に比べて高い反射率を有する隔壁を提供できる感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたPDPの隔壁及びこれを含むPDPに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPの構造において隔壁は、下板(または背面基板)に形成される構造物であり、放電空間の確保、及び隣接したセル間の電気的及び光学的クロストーク(cross talk)を防止する役割を果たす。かかる隔壁は、PDPの種類によって、形態(ストライプ型(stripe)または格子型(matrix))及び寸法(幅及びピッチ)が多様である。
【0003】
隔壁は、PDP下板にアドレス電極及びその上に誘電体を形成した後、サンドブラスト法(sand blast method)、エッチング法またはフォトリソグラフィ法(photolithography)などを利用して形成される。
【0004】
上記隔壁形成方法のうちフォトリソグラフィ法は、特許文献1に記載されているように、無機物と有機物との屈折率差を最小化し、無機物と有機物との界面での露光時に照射される光の散乱や反射を最小化し、1回の露光で隔壁を形成する方法が紹介されており、特許文献2には、上記特許文献1のように、無機物と有機物との屈折率差を最小化しつつ、光酸発生剤を利用した化学増幅型(chemically amplified type)架橋反応方式を利用することによって、露光時に酸素による架橋反応妨害を防止した方法が紹介されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるPDPに係る構造を図示した部分切開斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施例について詳細に説明する。
本発明による上記感光性ペースト組成物は、フッ化物ゾル及び無機物を含み、上記フッ化物ゾルの平均屈折率N及び上記無機物の平均屈折率Nが下記数式1を満たすことを特徴とする感光性ペースト組成物を提供する:
【0015】
−0.2≦N−N≦0.2・・・(式1)。
【0016】
本発明による上記感光性ペースト組成物は、従来一般的な感光性ペースト組成物とは異なり、フッ化物ゾルを含む。上記フッ化物ゾルは、数〜数十nmサイズのフッ化物が有機物に分散されてゾル状態で存在する物質であり、有機物中に凝集や沈殿のような現象が起こらない安定した状態で分散されており、無機物との混合使用が可能である。かかるフッ化物ゾルを含む感光性ペーストを使用して形成された隔壁は、従来の感光性隔壁に比べて反射率を高めて輝度を向上させる役割を行う。
【0017】
上記フッ化物(フッ化物ゾルの原料となるフッ化物)は、MまたはMM’のような化学式を有することができる。上記化学式でM及びM’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはケイ素(Si)のうちいずれか1つの元素であり、a、b、x、y及びzは、成分元素の原子数の比を表して1〜4の整数を有し、これらの値は、同じであるか異なりうる。特に、Mはアルカリ土類金属であり、M’はアルカリ金属であることが、フッ化物ゾルの製造収率の側面で望ましい。このうち購入容易性などの側面で、Mは、マグネシウムまたはカルシウムであることがさらに望ましい。
【0018】
上記フッ化物ゾルは、一般的に、MまたはM’を含む塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩などを水に溶かし製造したMまたはM’化合物の水溶液と、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NHF)、フッ化水素(HF)などを水に溶かして製造したフッ化物水溶液とを共に反応させた後、溶媒である水を有機溶剤で置換させることによって、フッ化物前駆体(precusor)を製造し、製造されたフッ化物前駆体を有機物に分散させることによって製造される。
【0019】
一方、上記フッ化物ゾルは、フッ化物成分としてシリカとフッ化物との混合体を含むこともできる。フッ化物前駆体の製造時に、シリカゾル水溶液をさらに導入してシリカとフッ化物との混合体を形成することによって、シリカとフッ化物とのネットワークを介して、フッ化物の安定性を確保することができる。また、フッ化物前駆体の製造時に、必要によって、表面改質剤(surface
modifier)をさらに導入することもできる。
【0020】
上記方法によって製造されたフッ化物ゾル中のフッ化物の平均粒径は、1〜60nmの平均粒径、さらに望ましくは2〜40nmの平均粒径、最も望ましくは4〜20nmの平均粒径を有する。上記フッ化物の平均粒径が1nmより小さいことは、製造することも困難であり、有機物内に均一な状態で分散させ難く、平均粒径が60nmを超えるようになれば、露光時に光を散乱させて光の透過を阻害する問題が発生する。なお、上記平均粒径は、通常使用される回折粒子寸法分析器(Shimadzu Corporation, SALD−2000J)などで測定できる。
【0021】
上記フッ化物ゾル中のフッ化物の屈折率は、1.3〜1.4を有することが望ましい。上記フッ化物前駆体を有機物に分散させて製造されたフッ化物ゾルの平均屈折率は、1.4〜1.5を有するように製造することが望ましい。上記フッ化物及びフッ化物ゾルの平均屈折率が上記範囲を外れるようになれば、前述の数式1の屈折率範囲を満たす感光性ペースト組成物を製造し難いという問題点がある。
【0022】
本明細書において、上記フッ化物ゾルの平均屈折率は、溶剤が含まれていない状態のフッ化物の平均屈折率を意味する。フッ化物ゾルの屈折率は、さまざまな方法で測定できるが、本発明では、上記フッ化物ゾルを透明フィルムまたはガラス基板などにコーティングし後、80〜120℃の温度で、数〜数十分間乾燥させて溶剤を除去した状態で、屈折率測定計を利用して測定される。前記屈折率測定計としては、通常のアベ屈折系(sodium D−line)を利用できる。無機物の平均屈折率も類似に測定できる。
【0023】
上記フッ化物ゾルの透過度は、厚さ1cmを基準に、500nmで50%以上になることが望ましい。上記透過度が50%未満になれば、ペースト製造後の露光時に、露光感度が落ちる問題点が発生する。また、上記フッ化物ゾルを製造するにおいて、フッ化物の含有量は、有機物100体積部対比で、1〜40体積部を有するように製造する。上記フッ化物ゾルでフッ化物の含有量が上記範囲未満である場合、隔壁の反射率上昇効率が落ち、上記範囲を超える場合、露光時の架橋反応の発生が不十分であり、所望の隔壁形状を得られなくなる。なお、上記透過度は、一般の分光分析器を利用して測定できる。
【0024】
上記フッ化物ゾルを無機物と混合するにおいて、その混合比率は、2つのことを考慮して混合する。第一に、フッ化物ゾル及び無機物の平均屈折率を考慮せねばならず、具体的には、フッ化物ゾル及び無機物の屈折率が前述の数式1の関係を満たすことが望ましく、さらに望ましくは、下記数式2を満たすことであり、最も望ましくは、下記数式3を満たすことである。
【0025】
−0.1≦N−N≦0.1 ・・・(式2)
【0026】
−0.05≦N−N≦0.05 ・・・(式3)
【0027】
もし上記フッ化物ゾル及び上記無機物の平均屈折率間の関係が、上記数式1に記載された範囲を外れるようになれば、露光時に照射される光の透過度が落ち、1回の露光によって隔壁を形成できず、その関係が上記数式3に近いほど露光感度が優秀になり、照射される光の散乱が小さくなることにより、隔壁パターンの直進性も優秀になる。
【0028】
次に、上記屈折率条件を満たすこと以外にも、感光性ペースト成分中の無機物含有量対比でのフッ化物のゾル中のフッ化物含有量も考慮し、混合比率を決定しなければならない。上記フッ化物の含有量は、無機物100体積部対比で、1〜20体積部になるようにすることが望ましく、さらに望ましくは無機物100体積部対比で、2〜10体積部になるようにする。上記フッ化物の含有量が上記範囲未満である場合、隔壁の反射率を向上させる効果が落ち、上記範囲を超える場合、無機物の焼結特性が落ちることになる。
【0029】
上記フッ化物と無機物との平均熱膨張係数(CTE,α)は、下記数式4を満たすことが望ましい。
【0030】
基板の熱膨脹係数x0.9≦α≦基板の熱膨脹係数 ・・・(式4)
【0031】
上記フッ化物と無機物との平均熱膨張係数が上記数式4を外れるようになれば、焼成後に基板が曲がったり、はなはだしい場合には、基板が破損するという問題が発生する。
【0032】
本発明による感光性ペースト組成物中の無機物の平均屈折率が1.5〜1.8を有することが望ましい。無機物の平均屈折率が上記範囲を外れるようになれば、無機物の屈折率とフッ化物のゾルの屈折率との差が大きく、1回の露光によって隔壁を形成できない。
【0033】
上記無機物は、低融点ガラス粉末(glass frit)と高融点ガラス粉末とによって構成されるが、上記無機物中の低融点ガラス粉末は、焼成工程時に焼結(sintering)が起こることによって、稠密な隔壁を形成する役割を果たし、高融点ガラス粉末は、焼成工程時に隔壁膜が崩れないように形態を維持させる役割を果たす。
【0034】
上記低融点ガラス粉末の粒子形状は特別に限定されないが、球形に近いことが望ましいが、それは、球形に近いほど充填率及び紫外線透過度において、さらに優秀な特性を有するためである。上記低融点ガラス粉末の粒径は、中間値D50が2〜5μm、最小値Dminは0.1μm、最大値Dmaxは20μmであることが望ましい。中間値が2μm未満であるか、または最小値が0.1μm未満になれば、分散性が落ちて印刷特性が悪くなり、焼成時に収縮率が大きくて所望形態の隔壁を得られず、中間値が5μmを超えたり、最大値が20μmを超えるようになれば、隔壁の稠密性及び隔壁形状の直進性が落ちてしまって望ましくない。なお、「中間値D50」とは、粒子寸法の中間値で、粒子大きさ分布のうち、体積及び重量累積が50%に該当する粒子の大きさをいう。
【0035】
上記低融点ガラス粉末の軟化温度Ts(Softening
Temperature)は、下記数式5を満たすことが望ましい。
【0036】
焼成温度−80℃<Ts<焼成温度 ・・・(式5)
【0037】
上記ガラス粉末の軟化温度が(焼成温度−80℃)以下になれば、焼成時に隔壁形状が崩れ、軟化温度が焼成温度以上になれば、焼結が望ましく起こらないという問題が発生する。
【0038】
上記低融点ガラス粉末の含有量は、無機物100体積部対比で、70体積部〜100体積部が望ましく、上記範囲未満である場合には、焼成時に焼結が望ましく起こらないという問題が発生する。
【0039】
上記低融点ガラス粉末の具体的な例としては、以下に制限されるものではないが、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、ケイ素(Si)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、IN(P)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)及びテルル(Te)などの酸化物を3種以上含む複合酸化物を例として挙げることができ、これらガラス粉末は、単独または2種で混合して使われることも可能である。上記低融点ガラス粉末のさらに具体的な例としては、PbO−B系、PbO−SiO−B系、Bi−B系、Bi−SiO−B系、SiO−B−Al系、SiO−B−BaO系、SiO−B−CaO系、ZnO−B−Al系、ZnO−SiO−B系、P系、SnO−P系、V−P系、V−Mo系、またはV−P−TeO系などからなる群から選択されたものを挙げることができる。
【0040】
上記高融点ガラス粉末の粒子形状は、特別に限定されるものではないが、球形に近いことが望ましいが、これは、球形に近いほど充填率及び紫外線透過度において、さらに優秀な特性を有するためである。上記高融点ガラス粉末の平均粒径は、中間値が1〜4μm、最小値は0.1μm、最大値は20μmであることが望ましい。中間値が1μm未満であるか、最小値が0.1μm未満になれば、露光感度の低下及び焼成時に収縮率が大きくて所望の形態の隔壁を得られず、中間値が5μmを超えたり、最大値が20μmを超えるようになれば、隔壁の稠密性及び隔壁形状の直進性が落ちるようになって望ましくない。
【0041】
上記高融点ガラス粉末の軟化温度は、下記数式6を満たすことが望ましい。
【0042】
Ts>焼成温度+20℃ ・・・(式6)
【0043】
上記高融点ガラス粉末の軟化温度が(焼成温度+20℃)以下になれば、焼成時に隔壁形状が崩れるという問題が発生する。
【0044】
上記高融点ガラス粉末の含有量は、上記無機物100体積部対比で、0超過30体積部以下であることが望ましい。上記範囲を超えれば、焼成時に焼結が望ましく起こらないという問題が発生する。
【0045】
上記高融点ガラス粉末の具体的な例としては、以下に制限されるものではないが、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、バリウム、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムなどの酸化物を3種以上含む複合酸化物を例として挙げることができ、それらガラス粉末は、単独または2種で混合して使われることも可能である。上記高融点ガラス粉末のさらに具体的な例としては、SiO−B−BaO系、SiO−B−CaO系、SiO−B−MgO系、SiO−B−CaO−BaO系、SiO−B−CaO−MgO系、SiO−Al−BaO系、SiO−Al−CaO系、SiO−Al−MgO系、SiO−Al−BaO−CaO系、またはSiO−Al−CaO−MgO系などからなる群から選択されたものを挙げることができる。
【0046】
上記低融点ガラス粉末と高融点ガラス粉末との平均屈折率は、前述の通り、1.5〜1.8範囲の値を有することが望ましい。また低融点ガラス粉末の平均屈折率Nと高融点ガラス粉末の平均屈折率Nとの差が下記数式7を満たすことが望ましく、より望ましくは下記数式8を満たすことであり、さらに望ましくは下記数式9を満たすことである。
【0047】
−0.2≦N−N≦0.2 ・・・(式7)
【0048】
−0.1≦N−N≦0.1 ・・・(式8)
【0049】
−0.05≦N−N≦0.05 ・・・(式9)
【0050】
上記低融点ガラス粉末と高融点ガラス粉末との平均屈折率差が上記数式7の範囲を外れるようになれば、露光時に照射される光の透過度が落ち、1回の露光によって隔壁を形成できず、その関係が上記数式9に近いほど露光感度が優秀になり、照射される光の散乱が小さくされることによって、隔壁パターンの直進性も優秀になる。
【0051】
本発明に利用される有機物は、2種類の形態が使われうる。第1形態の有機物は、アルカリ可溶性バインダA、光開始剤及び架橋剤Aを含み、露光時に照射された部分が架橋反応を起こし、アルカリ現像液に不溶である状態になるのである。上記有機物は、ペーストの特性改善のための添加剤、及び粘度調節などの必要によって溶剤も含むことができる。
【0052】
第2形態の有機物は、アルカリ可溶性バインダB、光酸発生剤(photo−acid
generator)及び架橋剤Bを含み、露光時に照射された部分に酸が発生し、その後の熱処理(baking)過程で架橋反応を起こし、現像液に不溶である状態になるのである。上記有機物は、ペーストの特性改善のための添加剤、及び粘度調節などの必要によって溶剤も含むことができる。
【0053】
上記バインダAの場合、アルカリ現像液に現像が可能でありつつも、構成成分の組成変化による特性調節が容易であるカルボン酸基を有するアクリル系樹脂が一般的に使われる。上記カルボン酸基を有するアクリル系樹脂は、アルカリ水溶液に現像させる役割以外に、感光性ペースト中の無機成分の分散性を良好にし、適切な粘度及び弾性を有させる役割も行う。上記カルボン酸基を有するアクリル系樹脂は、カルボン酸基を有するモノマーと、エチレン性不飽和基を有するモノマーとの共重合反応によって製造できる。
【0054】
上記カルボン酸基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、酢酸ビニル及びこれらの無水物からなる群から一つ以上選択されたものが望ましい。上記エチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アミノエチルアクリレート及び上記モノアクリレート分子内のアクリレートを一部または全部メタクリレートに替えたもの、またはスチレン、α−メチルスチレン、α−2−ジメチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどからなる群から一つ以上選択されたものであることが望ましい。
【0055】
またバインダAとしては、上記共重合体のカルボン酸基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させることによって、結果的に共重合体内に架橋反応を起こす成分が付加されたものを利用することもできる。上記エチレン性不飽和基を有する化合物としては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、塩化アリル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、または3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートなどからなる群から選択された一つ以上のものが使われうる。
【0056】
またバインダAとしては、上記共重合体を単独で使用することもできるが、膜レベリング(levelling)や揺変特性(thixotropy)向上などの目的で、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、n−プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、2−ヒドロキシエチルセルロース、メチル2−ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、硝酸セルロース、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートハイドロジェンフタレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、(アクリルアミドメチル)セルロースアセテートプロピオネート、(アクリルアミドメチル)セルロースアセテートブチレート、シアノエチレートセルロース、ペクチン酸、キトサン、キチン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシエチルセルロース、及びカルボキシエチルメチルセルロースからなる群から選択された一つ以上の物質を混合して使用することもできる。
【0057】
上記共重合体の重量平均分子量は、500〜100,000g/molであることが望ましい。酸価は、50〜300mgKOH/gであることが望ましい。共重合体の分子量が500g/mol未満である場合には、ペースト製造時に無機物に対する分散性が落ち、100,000g/molを超える場合には、現像時に現像速度が遅すぎたり、または現像されないという問題点があって望ましくない。また、共重合体の酸価が50mgKOH/g未満である場合には、現像性が落ち、300mgKOH/gを超える場合には、露光された部分まで現像されるという問題点があって望ましくない。
【0058】
上記バインダAの含有量は、上記有機物(バインダA、光開始剤及び架橋剤)100重量部に対して、30〜80重量部が望ましく、含有量が上記範囲未満である場合には、ペーストのコーティング性及び分散性が落ち、上記範囲を超える場合には、露光時に架橋反応の発生が不十分であり、所望の形状のパターンを得られずに望ましくない。
【0059】
上記光開始剤は、露光装置によって照射される光によってラジカルを生成し、生成されたラジカルは、エチレン性不飽和基を有する上記架橋剤の重合反応を起こすことによって、現像液に対して不溶である状態にする。本発明の光開始剤は、高感度が要求されるために、次のような光開始剤を2以上選択して混合して使用することが望ましい。かかる光開始剤の例としては、以下に制限されるものではないが、(i)イミダゾール化合物、(ii)トリアジン化合物、(iii)アミノアセトフェノン化合物、(iv)ベンゾフェノン及びアセトフェノン系化合物(v)ベンゾイン系化合物、(vi)チタノセン系化合物、(vii)オキサジアゾール系化合物、(viii)チオキサントン系化合物、(ix)(ビス)アシルホスフィンオキシド系化合物(x)有機ホウ素塩化合物を挙げることができる。
【0060】
上記イミダゾール系化合物としては、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(o,p−ジクロロフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールなどを挙げることができる。
【0061】
上記トリアジン系化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−プロピオニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンゾイル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−4−ビス(4−メトキシフェニル)−6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−アミノフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2、4−ビス(3−クロロフェニル)−6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(4−アミノスチリル)−4,6−ビス(ジクロロメチル)−s−トリアジンなどを挙げることができる。
【0062】
上記アミノアセトフェノン化合物としては、2−メチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−プロピル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−ブチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)エタン−1−オン、2−メチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)プロパン−1−オン、2−エチル−2−アミノ(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2−メチル−2−メチルアミノ(4−モルフォリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−ジメチルアミノ(4−モルフォリノフェニル)プロパン−1−オン、2−メチル−2−ジエチルアミノ(4−モルフォリノフェニル)プロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0063】
上記ベンゾフェノン及びアセトフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ベンゾイルベンゾ酸、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N−ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’、4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド、4−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロピル)ベンゾフェノン、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、メトクロライド一水和物、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−tert−ブチル−トリクロロアセトフェノンなどを挙げることができる。
【0064】
上記ベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0065】
上記チタノセン系化合物としては、ジシクロペンタジエニル−Ti−ジクロライド、ジシクロペンタジエニル−Ti−ジフェニル、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,6−ジトリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−Ti−ビス(2,4−ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−Ti−ビス(2,4−ジフルオロフェニル)などを挙げることができる。
【0066】
上記オキサジアゾール系化合物としては、2−フェニル−5−トリクロロメチル−1、3,4−オキサジアゾール、2−(p−メチルフェニル)−5−トリクロロメチル−1、3,4−オキサジアゾール、2−(p−メトキシフェニル)−5−トリクロロメチル−1、3,4−オキサジアゾール、2−スチリル−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−メトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾールなどを挙げることができる。
【0067】
上記チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサンテン−9−オンメトクロライドなどを挙げることができる。
【0068】
上記(ビス)アシルホスフィンオキシド系化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどを挙げることができる。
【0069】
上記有機ホウ素塩化合物は、下記化学式6のような第4級有機ホウ素塩化合物である。
【0070】
【化6】

【0071】
上記化学式6で、R、R、R、及びRは、それぞれ独立的に必要によって置換基を有することができるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、ヘテロ環基、またはハロゲン原子を示し、Zは、任意の陽イオンを表す。
【0072】
本発明において有機ホウ素塩化合物は、第4級有機ホウ素陰イオンと陽イオン(Z)とからなる。上記構造式で、R、R、R、及びRはそれぞれ独立的に、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シリル基、ヘテロ環基、またはハロゲン原子を示し、かかる基は、必要によって置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、アニシル基、ビフェニル基、ジフェニルメチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロトキシ基、イソプロトキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、メチレンジオキシ基、エチレンジオキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ベンジルオキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリジル基、及びフッ素基などを挙げることができる。
【0073】
上記有機ホウ素塩化合物の第4級有機ホウ素陰イオンの具体的な例としては、メチルトリフェニルボレート、n−ブチルトリフェニルボレート、n−オクチルトリフェニルボレート、n−ドデシルトリフェニルボレート、sec−ブチルトリフェニルボレート、tert−ブチルトリフェニルボレート、ベンジルトリフェニルボレート、n−ブチルトリ(p−アニシル)ボレート、n−オクチルトリ(p−アニシル)ボレート、n−ドデシルトリ(p−アニシル)ボレート、n−ブチルトリ(p−トリル)ボレート、n−ブチルトリ(o−トリル)ボレート、n−ブチルトリ(4−tert−ブチルフェニル)ボレート、n−ブチルトリ(4−フルオロ−2−メチルフェニル)ボレート、n−ブチルトリ(4−フルオロフェニル)ボレート、n−ブチルトリ(1−ナフチル)ボレート、エチルトリ(1−ナフチル)ボレート、n−ブチルトリ[1−(4−メチルナフチル)]ボレート、メチルトリ[1−(4−メチルナフチル)]ボレート、トリフェニルシリルトリフェニルボレート、トリメチルシリルトリフェニルボレート、テトラ−n−ブチルボレート、ジ−n−ブチルジフェニルボレート、テトラベンジルボレートなどを挙げることができる。上記第4級有機ホウ素陰イオンのR、R、R及びRで、Rはアルキル基、R、R及びRはナフチル基である構造を有する場合が、化合物の安定性と光反応性との均衡を維持するためにさらに望ましい。
【0074】
上記有機ホウ素塩化合物の陽イオン(Z)の具体的な例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、N−メチルキノリウム、N−エチルキノリウム、N−メチルピリジニウム、N−エチルピリジニウム、テトラメチルホスホニウム、テトラ−n−ブチルホスホニウム、トリメチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリメチルスルホキソニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、リチウム陽イオン、ナトリウム陽イオン、カリウム陽イオンなどを挙げることができる。
【0075】
上記光開始剤混合物に増感剤を混合して使用すれば、さらに高感度の効果を得ることができ、増感剤を混合して使用することが望ましい。増感剤としては、光開始剤によって選定することになるが、上記光開始剤の一部は、他の光開始剤の増感剤の役割も併行することもする。例として、イミダゾール系光開始剤を使用する場合には、ベンゾフェノン系またはチオキサントン系の化合物が光開始剤及び増感剤の役割も行うので、併行して使用すればよい。上記有機ホウ素塩化合物と併用して使用できる増感剤は、光吸収及び有機ホウ素塩化合物の分解を行う役割を果たすものであるならば、いかなるものでもよく、かかる役割を果たす化合物としては、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、キノン系化合物、及び陽イオン性染料から選択して使用できる。ベンゾフェノン系化合物とチオキサントン系化合物は、上記で説明した化合物のうちから選択して使用すればよく、キノン系化合物としては、キンヒドロン、2,5−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、5−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノン、2−クロロ−3−モルホリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、1,4−ジクロロアントラキノン、2−(ヒドロキシメチル)アントラキノン、9,10−フェナントレンキノンなどを挙げることができる。
【0076】
上記陽イオン性染料は、300nmから近赤外線範囲内で最大吸収波長を有し、一般的にyellow、orange、red、greenまたはblue色を帯び、具体的な例としては、ベーシックイエロー11(Basic yellow 11)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、チオフラビンT(Thioflavin
T)、オーラミンO(Auramine O)、インドシアニン・グリーン(Indocyanine green)、1,1’,3,3,3’,3’−ヘキサメチルインドジカルボシアニンヨード、IR−786パークロレートなどを挙げることができる。
【0077】
上記光開始剤の含有量は、上記有機物100重量部に対して、1〜20重量部が望ましい。光開始剤の含有量が上記範囲未満である場合には、露光感度が落ちるという問題点があり、上記範囲を超える場合には、非露光部まで現像がなされないという問題が発生して望ましくない。
【0078】
上記架橋剤Aとしては、モノアクリレート系及び多官能アクリレート系が使われる。モノアクリレートとしては、以下に制限されるものではないが、アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、アリルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、1−ナフチルアクリレート、2−ナフチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、アミノエチルアクリレート、または上記モノアクリレート分子内のアクリレートを一部または全部メタクリレートに替えたものなどがあり、多官能アクリレートとしては、以下に制限されるものではないが、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(エトキシレーティッド)ジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA(エトキシレーティッド)n(n=2〜8)ジアクリレート、またはビスフェノールAエポキシジアクリレートのようなジアクリレート系;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパン(エトキシレーティッド)トリアクリレート、グリセリン(プロキシレーティッド)トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、またはトリメチロールプロパン(プロキシレーティッド)−3−トリアクリレートのようなトリアクリレート系;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、またはペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなテトラアクリレート系;ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのようなペンタアクリレート系;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのようなヘキサアクリレート系;または上記多官能アクリレート分子内のアクリレートを一部または全部メタクリレートに替えたものなどがあり、上記モノ及び多官能アクリレートからなる群から一つ以上選択されたものであることが望ましい。
【0079】
上記架橋剤Aの含有量は、有機物100重量部に対して、15〜60重量部が望ましいが、架橋剤Aの含有量が上記範囲未満である場合には、露光感度が落ちるという問題点があり、上記範囲を超える場合には、焼成時に隔壁形状の短絡や脱落などが発生することがあって望ましくない。
【0080】
上記二番目の形態の有機物組成の構成成分であるアルカリ現像液に可溶であるバインダBの場合、酸存在下の熱処理過程で現像液に不溶である状態に変わる特性以外に、感光性ペースト中の無機成分の分散性を良好にし、適切な粘度及び弾性を有させる役割も行う。かかる上記バインダBの具体的な例としては、以下に制限されるものではないが、ヒドロキシフェノール基を有する樹脂、ヒドロキシスチレン構造を有する樹脂、エポキシ基を有する樹脂、及びヒドロキシ基とカルボン酸基とを有する樹脂などを挙げることができ、これらは単独または2種以上混合して使われうる。
【0081】
上記バインダBのうちヒドロキシフェノール基を有する代表的な樹脂としては、ノボラック(novolac)樹脂を挙げることができ、上記ノボラック樹脂は、酸存在下でフェノール類及びアルデヒド類、またはフェノール類及びケトン類の縮合反応によって製造される。上記ヒドロキシスチレン構造を有する樹脂は、ヒドロキシスチレンまたはα−メチル−ヒドロキシスチレンと、アクリル系モノマーとの共重合反応によって製造される。上記アクリル系モノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルなどを挙げることができる。上記エポキシ基を有する樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、アクリルエポキシ樹脂などを挙げることができる。上記ヒドロキシ基とカルボン酸基とを有する樹脂としては、上記ヒドロキシフェノール基を有する樹脂または上記ヒドロキシスチレン構造を有する樹脂に、カルボン酸基が導入された形態の樹脂であるか、ヒドロキシ基を有するアクリル系(またはメタクリル系)モノマーとカルボン酸基を有するアクリル系(またはメタクリル系)モノマーとの共重合体を挙げることができる。
【0082】
上記バインダBの重量平均分子量は、500〜100,000g/molであることが望ましく、分子量が500g/mol未満である場合には、ペースト製造時に無機物に対する分散性が落ち、100,000g/molを超える場合には、現像時に現像速度が遅すぎるか、現像されないという問題点があって望ましくない。
【0083】
上記バインダBの含有量は、上記有機物(バインダ、架橋剤及び光酸発生剤)100重量部に対して、50〜95重量部が望ましい。含有量が上記範囲未満である場合には、ペーストのコーティング性及び分散性が落ち、上記範囲を超える場合には、露光時に架橋反応の発生が不十分であり、所望の形状のパターンを得られずに望ましくない。
【0084】
上記光酸発生剤は、露光時に照射される光を受ければ酸を発生させる物質であり、本発明で提案する光酸発生剤の例としては、オニウム塩またはスルホニウム塩、有機ハロゲン、ナフトキノン−ジアジド−スルホン酸及び光反応性スルホン酸を挙げることができる。
【0085】
上記オニウム塩またはスルホニウム塩化合物の具体的な例としては、以下に制限されるものではないが、ジフェニルヨード塩ヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨード塩ヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨード塩ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルパラメトキシフェニルトリプレート、ジフェニルパラトルエニルトリプレート、ジフェニルパライソブチルフェニルトリプレート、ジフェニルパラ−t−ブチルフェニルトリプレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムトリプレート及びジブチルナフチルスルホニウムトリプレートなどからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。
【0086】
上記有機ハロゲン化合物としての具体的な例は、以下に制限されるものではないが、トリブロモアセトフェノン、フェニルトリハロメチル−スルホン化合物、ハロメチル−s−トリアジン化合物及びハロメチル−オキサジアゾール化合物などからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。上記ナフトキノン−ジアジド−スルホン酸化合物としての具体的な例は、以下に制限されるものではないが、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルクロライドまたは1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドなどからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。
【0087】
上記光反応性スルホン酸化合物としての具体的な例は、以下に制限されるものではないが、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホン酸エステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸アミド、β−ケトスルホン基を有する化合物、ニトロベンジルアルコールのエステル化合物、アリールスルホン酸のエステル化合物、オキシムエステル化合物、N−ヒドロキシアミドエステル化合物、N−ヒドロキシイミドエステル化合物、スルホン酸エステル化合物及びベンゾリン酸エステル化合物などからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。
【0088】
上記光酸発生剤の含有量は、上記有機物100重量部に対して、0.1〜5重量部が望ましいが、光開始剤の含有量が上記範囲未満である場合には、架橋反応の発生が不十分であるという問題が発生し、上記範囲を超える場合には、光酸発生剤自体が照射される光を吸収するために、むしろ露光感度が落ちるという問題が発生することがあって望ましくない。
【0089】
上記光酸発生剤は、露光感度を向上させるために、増感剤(sensitizer)と共に使用できる。上記増感剤の具体的な例としては、以下に制限されるものではないが、アントラセン、ペンアントラセン、1,2−ベンゾアントラセン、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、1,1,4,4、−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、2,3,4,5−テトラフェニルフラン、2,5−ジフェニルチオフェン、チオキサントン、2−クロロ−チオキサントン、フェノチアジン、1,3−ジフェニルピラゾリン、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−ベンゾフェノン、フルオロセン及びロダミンなどからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。上記増感剤の含有量は、上記光酸発生剤100重量部に対し、1〜1,000重量部が望ましい。上記範囲未満である場合には、増感効果が落ち、上記範囲を超える場合には、増感剤自体が照射される光を吸収するために、むしろ露光感度が落ちるという問題が発生することがあって望ましくない。
【0090】
上記架橋剤Bとしては、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂、及びエチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが使われ、このうちメラミン樹脂と尿素樹脂とが架橋反応性及び商用化面でさらに望ましい。上記メラミン樹脂及び尿素樹脂の具体的な例としては、アルコキシメチル化メラミン樹脂及びアルコキシメチル化尿素樹脂を挙げることができ、かかるアルコキシメチル化アミノ樹脂は、メラミンまたは尿素をホルマリンと反応させて得た縮合物に、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールのような低級アルコール類でエステル化させて製造される。
【0091】
上記架橋剤Bの含有量は、上記有機物100重量部に対して、5〜50重量部が望ましいが、架橋剤Bの含有量が上記範囲未満である場合には、露光時に架橋反応の発生がが不十分であって現像時にパターンが崩れるという問題点があり、上記範囲を超える場合には、焼成時にペーストの分散性及び印刷性に問題があって望ましくない。
【0092】
本発明による感光性ペースト組成物は、添加剤をさらに含むことができ、上記添加剤としては、組成物の保存性を向上させる重合禁止剤及び酸化防止剤、解像度を向上させる紫外線吸光剤、組成物内の気泡を減らす消泡剤、分散性を向上させる分散剤、印刷時に膜の平坦性を向上させるレベリング剤、熱分解特性を向上させる可塑剤及び揺変特性を付与する揺変剤などを例に挙げることができる。
【0093】
上記溶剤としては、フッ化物の分散性を落とさずに、バインダA、バインダB、光開始剤及び光酸発生剤を溶解させることができ、架橋剤及びその他添加剤と望ましく混合されつつ、沸点が150℃以上であるものが使われうる。沸点が150℃未満である場合には、組成物の製造過程、特に3ロールミル工程で揮発される傾向が大きくて問題になり、また印刷時に溶剤が早く揮発しすぎて印刷状態が好ましくなくなるので望ましくない。上記条件を充足させることができる望ましい溶剤としては、以下に制限されるものではないが、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、テルピン油、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ及びブチルセロソルブアセテートからなる群から一つ以上選択されたものが使われうる。
【0094】
上記溶剤の含有量は、特別に限定されるものではないが、印刷またはコーティングに適切なペーストの粘度になるように使用しなければならない。
【0095】
本発明による感光性ペースト組成物は、下記のような方法によって製造されうる。
【0096】
まず、フッ化物ゾルを製造する。フッ化物ゾルは、水性フッ化物ゲル中の水を有機溶剤で置換し、フッ化物前駆体を製造した後でこれを有機物に分散させることによって製造される。上記有機物は、事前にそれぞれの有機物成分を混合して十分に撹拌させ、均一であって透明な溶液に製造されたものである。上記製造されたフッ化物ゾルは、無機物と混合してペーストに製造される。PLM(planetary
mixer)などを利用して混合した後、3ロールミル数回実施して機械的混合を行う。3ロールミルの作業が終われば、SUSメッシュ#400でフィルタリングした後、真空ポンプを利用して脱泡(degassing)して感光性ペースト組成物を製造する。
【0097】
本発明は他の具現例で、上記感光性ペースト組成物を利用して製造されたプレズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁を提供する。
【0098】
本発明による感光性ペースト組成物を利用してPDP隔壁を形成する過程は、有機物に含まれた成分によって変わる。
【0099】
アルカリ可溶性バインダA、光開始剤及び架橋剤Aを含む第1形態の有機物を利用して感光性ペーストを製造した場合、下記のような工程を介して隔壁が製造される。上記感光性ペースト組成物をスクリーン印刷やテーブルコータなどを利用してアドレス電極と誘電体とが形成されているPDP下板に塗布し、ドライオーブンまたは赤外線(IR)オーブンで80〜120℃の温度で、5〜60分間乾燥させて溶剤をほどんど除去した後、乾燥膜上にフォトマスクが装着された紫外線露光装置を利用して所定の光を照射し、照射された部分に架橋反応を起こさせ、現像工程で、純水に希釈されたNaCO溶液、KOH溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)溶液またはモノエタノールアミン溶液のような適切なアルカリ現像液で30℃前後の温度で現像し、未露光の部位を除去してパターンを得て、また電気炉などで500〜600℃で5〜60分間焼成することによって、残存する有機物の除去及び低融点ガラス粉末の焼結を行うことによって、パターン化された隔壁を形成できる。
【0100】
アルカリ可溶性バインダB、光酸発生剤及び架橋剤Bを含む第2形態の有機物を利用して感光性ペースト組成物を製造した場合、乾燥膜上にフォトマスクが装着された紫外線露光装置を利用して所定の光を照射する過程までは上記第1形態の有機物を利用した工程と同一である。ただし、照射された部分で架橋反応が起こる代わりにまず酸が発生し、その後、80〜150℃の温度で5〜60分間熱処理過程で架橋反応が起こる。その後の現像及び焼成過程は、上記第1形態の有機物を利用した工程と同一である。
【0101】
さらに他の具現例で、本発明は、上記隔壁を含むPDPを提供する。
【0102】
図1には、本発明による感光性ペースト組成物を利用して製造された隔壁を含むPDPの具体的な構造が図示されている。
【0103】
本発明によるPDPは、前方パネル110及び後方パネル120を備える構造になっている。上記前方パネル110は、前面基板111、上記前面基板の背面111aに形成されたY電極112とX電極113とを具備した維持電極対114、上記維持電極対を覆う前方誘電体層115、及び上記前方誘電体層を覆う保護膜116を具備する。上記Y電極112とX電極113とのそれぞれは、ITOなどで形成された透明電極112b,113b;明暗向上のため黒色電極(図示せず)及び導電性を付与する白色電極(図示せず)によって構成されるバス電極112a,113aを具備する。上記バス電極112a,113aは、PDPの左右側に配された連結ケーブルと連結される。
【0104】
上記後方パネル120は、背面基板121、背面基板の前面121aに、上記維持電極対と交差するように形成されたアドレス電極122、上記アドレス電極を覆う後方誘電体層123、上記後方誘電体層上に形成されて発光セル126を区画する隔壁124、及び上記発光セル内に配された蛍光体層125を具備する。上記アドレス電極122は、PDPの上下側に配された連結ケーブルと連結される。
【実施例】
【0105】
以下、本発明について実施例を介してさらに詳細に説明するが、本発明の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0106】
<フッ化物前駆体の製造>
製造例1.フッ化マグネシウム(MgF)前駆体の製造
塩化マグネシウム(MgCl・6HO)203.3gを5リットルのイオン交換水に溶解して塩化マグネシウム水溶液を製造し、フッ化カリウム(KF・2HO)188.26gを5リットルのイオン交換水に溶解してフッ化カルシウム水溶液を製造した。50リットル反応容器に10リットルのイオン交換水を入れ、強く撹拌しつつ上記において製造された塩化マグネシウム水溶液とフッ化カルシウム水溶液とをそれぞれ10ml/秒の速度で同時に投入した。投入完了後、真空濃縮装置を利用して2リットルになるまで濃縮した後、濃縮液を95℃で24時間加熱熟成させてゲル状の液を作った。その後、ゲル状の液を限外濾過膜(ultrafiltration
membrane)を利用して電解質成分を除去した後、さらに真空濃縮装置を利用して1リットルになるまで濃縮し、水性フッ化マグネシウムゾルを製造した。上記において製造された水性フッ化マグネシウムゾルに、ジエチレングリコール有機溶剤1リットルを利用して溶媒置換装置を利用して処理することによって、ジエチレングリコールに分散されたフッ化マグネシウム前駆体を作った。
【0107】
製造例2.フッ化ナトリウムマグネシウム(NaMgF)前駆体の製造
フッ化カリウム水溶液の代わりに、フッ化ナトリウム(NaF)126gを5リットルのイオン交換水に溶解して製造されたフッ化ナトリウム水溶液を使用したこと以外は上記製造例1と同じ方法を利用し、ジエチレングリコールに分散されたフッ化ナトリウムマグネシウム前駆体を作った。
【0108】
製造例3.シリカ−フッ化マグネシウム(SiO−MgF)前駆体の製造
塩化マグネシウム(MgCl・6HO)203.3gを5リットルのイオン交換水に溶解して塩化マグネシウム水溶液を製造し、シリカゾル(10wt.%、平均粒径5nm)300gを5リットルのイオン交換水に希釈してシリカゾル水溶液を製造し、フッ化アンモニウム(NHF)74.08gを5リットルのイオン交換水に溶解してフッ化アンモニウム水溶液を製造した。50リットル反応容器に上記において製造されたシリカゾル水溶液を入れ、強く撹拌しつつ上記において製造された塩化マグネシウム水溶液を10ml/秒の速度で投入した後、0.1N塩酸溶液300gをさらに投入した。その後、上記において製造されたフッ化アンモニウム水溶液を10ml/秒の速度で投入した。投入完了後、製造例1の真空濃縮以後の過程と同じ方法を利用し、ジエチレングリコールに分散されたフッ化マグネシウムシリカ−フッ化マグネシウム前駆体を製造した。
【0109】
<フッ化物及びチタン酸化物の物性測定>
上記製造例1〜3で製造した3種のフッ化物前駆体中のフッ化物に対する屈折率(@589nm、20℃)、比重(@20℃)、透過度(@20℃)及び平均粒径(@20℃)に対する測定結果を、下記表1に示した。透過度は、厚さ1cm基準で500nmでの値であり、平均粒径は、PCS(Photon
Correlation Spectroscopy)を利用して測定した。
【0110】
【表1】

【0111】
<有機物の製造>
上記において製造したフッ化物前駆体と混合してフッ化物ゾルを製造するのに使われる有機物を下記のように製造した。
【0112】
製造例4.有機物1の製造
バインダ(ノボラック樹脂(m−クレゾールにホルマリンを添加し、シュウ酸触媒の下で製造)、重さ平均分子量18,000g/mol)79.4重量%、架橋剤(ヘキサメトキシメチル−メラミン)19.0重量%、光酸発生剤(トリフェニルスルホニウムトリプレート)1.6重量%の組成を有する有機混合物を製造した。溶解及び粘度調節のために、前記有機混合物100重量部対比で30重量部の溶剤(エチルカルビトール)を添加し、有機物1を製造した。
【0113】
製造例5.有機物2の製造
バインダ(ポリ(スチレン−co−メチルメタクリル酸)共重合体、重さ平均分子量12,000g/mol、酸価180mgKOH/g)54.0重量%、光開始剤(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン)9.5重量%、架橋剤(ビスフェノールA変性エポキシジアクリレート)29.5重量%、保存安定剤(ベンゾトリアゾール)7.0重量%の組成を有する有機混合物を製造した。溶解及び粘度調節のために、上記有機混合物組成100重量部対比で15重量部の溶剤(エチルカルビトール)を添加し、有機物2を製造した。
【0114】
製造例6.有機物3の製造
バインダ1(ポリ(メチルメタクリレート−co−ブチルメタクリレート−co−メチルメタクリル酸)共重合体、分子量12,000g/mol、酸価150mgKOH/g)60.0重量%、バインダ2(ヒドロキシプロピルセルロース、平均分子量(Mw)=80,000g/mol)2.0重量%、光開始剤1(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン)1.5重量%、光開始剤2(2,4−ジエチルチオサントン)0.5重量%、架橋剤1(メトキシジエチレングリコールアクリレート)25.0重量%、架橋剤2(トリメチロールプロパントリアクリレート)10.0重量%、保存安定剤(マロン酸)1.0重量%の組成を有する有機混合物を製造した。溶解及び粘度調節のために、上記有機混合物100重量部対比で20重量部の溶剤(テキサノール)を添加し、有機物3を製造した。
【0115】
<有機物の物性評価>
上記製造例4〜6で製造した有機物の屈折率及び比重測定結果を、下記表2に示した。
【0116】
【表2】

【0117】
<フッ化物ゾルの製造>
上記製造例1〜3で製造したフッ化物前駆体及びチタン酸化物前駆体を、上記製造例4〜6で製造した有機物に混合してそれぞれ分散させることによって、フッ化物ゾルを製造した。上記フッ化物ゾルの製造は、撹拌容器に有機物をまず入れ、撹拌する状態で計算された量ほどフッ化物前駆体を徐々に投入した後、数時間撹拌して製造した。ただし、下記製造例7〜9で体積比は、溶剤が除外された体積比を意味する。
【0118】
製造例7.フッ化物ゾル1の製造
上記製造例1によるMgF前駆体と、上記製造例4による有機物1とを、30:70の体積比で混合した。混合後に測定された屈折率は、1.50であった。
【0119】
製造例8.フッ化物ゾル2の製造
上記製造例2によるNaMgF前駆体と、上記製造例5による有機物2とを、30:70の体積比で混合した。混合後に測定された屈折率は、1.50であった。
【0120】
製造例9.フッ化物ゾル3の製造
上記製造例3によるSiO−MgF前駆体と、上記製造例4による有機物3とを、30:70の体積比で混合した。混合後に測定された屈折率は、1.45であった。
【0121】
<感光性ペースト組成物の製造>
上記製造例7〜製造例9で製造されたフッ化物ゾル1〜3に、下記実施例1〜3のように、低融点ガラス粉末及び高融点ガラス粉末を含む無機物を混合することによって、本発明による感光性ペースト組成物を製造した。また比較例として、下記比較例1のように、フッ化物のない感光性ペースト組成物を製造した。ただし、下記実施例1〜3と比較例1とでのフッ化物ゾルの体積%は、いずれも溶剤を除外した体積%を意味する。
【0122】
実施例1.感光性ペースト組成物1の製造
上記製造例7によるフッ化物ゾル1 45体積%、低融点ガラス粉末(SiO−B−Al−F系、無定形、D50=3.4μm、屈折率=1.47)50体積%、高融点ガラス粉末(SiO−B−Al系、無定形、D50=2.5μm、屈折率=1.46)5体積%で構成された感光性ペースト組成物1を、上記ペースト組成物の製造方法によって製造した。
【0123】
実施例2.感光性ペースト組成物2の製造
上記製造例7によるフッ化物ゾル1の代わりに、上記製造例8によるフッ化物ゾル2を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で感光性ペースト組成物2を、上記ペースト組成物の製造方法によって製造した。
【0124】
実施例3.感光性ペースト組成物3の製造
上記製造例7によるフッ化物ゾル1の代わりに、上記製造例9によるフッ化物ゾル3を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法で感光性ペースト組成物3を、上記ペースト組成物の製造方法によって製造した。
【0125】
比較例1.フッ化物のない感光性ペースト
上記製造例6による有機物3 40体積%、低融点ガラス粉末(SiO−B−Al−F系、無定形、D50=3.4μm、屈折率=1.47)50体積%、高融点ガラス粉末(SiO−B−Al系、無定形、D50=2.5μm、屈折率=1.46)10体積%で構成されたフッ化物のない感光性ペースト組成物を、上記ペースト組成物製造方法によって製造した。
【0126】
<感光性ペースト組成物の評価及び結果>
上記実施例1〜3及び比較例1で製造した感光性ペースト組成物を利用し、下記のような方法で隔壁を形成した。
【0127】
上記実施例1〜3及び比較例1で製造した感光性ペースト組成物を、6”ガラス基板上にコータを利用して塗布した後、ドライオーブンに入れて100℃で30分間乾燥し、厚さ180μmの乾燥膜を形成した。その後、格子パターン(横:線間幅=40μm(ピッチ=160μm)、縦:線間幅=40μm(ピッチ=560μm))を有するフォトマスクの装着された高圧水銀ランプ紫外線露光装置を利用し、300〜1,000mJ/cmで照射した。その後、上記実施例1で製造した感光性ペースト組成物1の場合だけ、ガラス基板を120℃ドライオーブンに入れ、10分間熱処理した後で現像工程を実施し、残りの感光性ペースト組成物2、3及びフッ化物のない感光性ペースト組成物の場合には、直接現像固定を実施した。現像工程は、35℃の0.8重量%炭酸ナトリウム水溶液をノズル圧力1.5kgf/cmで200秒間噴射して現像を実施したし、その後、常温の純水をノズル圧力1.2kgf/cmで30秒間噴射して洗浄した。その後、エアーナイフ(air
knife)を利用して乾燥させた後で電気焼成炉に入れ、560℃で20分間焼成して隔壁を形成した。その後、光学顕微鏡及びSEM(Scanning Electron
Microscope)を利用して形成された隔壁を評価した。
【0128】
上記方法によって形成された隔壁に対する評価結果を、下記表3に示した。下記表1での露光量は、最適のパターン結果を表す値を示し、隔壁色は、肉眼で観察した結果である。
【0129】
【表3】

【0130】
上記表3の結果は、下記のように解釈できる。
まず、露光感度(露光量)の場合、上記製造されたフッ化物ゾルの屈折率と無機物の屈折率との差に非常に依存するということが分かる。すなわち、実施例1〜3のうち屈折率差の小さい実施例3の場合、露光感度がさらに優秀であるということが分かる。併せて、上記表3の結果に示されているように、露光感度が落ちるほど上部幅が大きくなって下部幅が狭くなる結果を示している。これは、フッ化物ゾルと無機物との屈折率差が大きくなるほど、露光工程で照射される光の透過率は低くなり、一方、反射及び散乱は大きくなるために発生した結果である。上記表3で隔壁色の場合、フッ化物がある場合には、白色である一方、フッ化物のない場合には、灰色であると分かったが、これは、可視光線に対する反射率に差があるということを示している。
【0131】
<PDPの製作及び特性評価>
上記感光性ペースト組成物のうち実施例1〜3で製造した感光性ペースト組成物を利用し、6”パネルを製作した。併せて、特性比較のために、比較例1による感光性ペースト組成物を利用し、同じ方法でパネルを製作した。
【0132】
6”パネル製作は、パイロットラインで42”HDクラススペックで製作された。製造されたパネルに対する輝度を評価した結果を、下記表4に示した。
【0133】
【表4】

【0134】
上記表4の輝度結果を見れば、本発明による感光性ペースト組成物を使用する場合、比較例に比べて、約15〜20%の輝度上昇効果を示すということが分かる。これは、上記で言及した通り、フッ化物が隔壁の反射率を高めることによって、結果的に輝度が上昇したと把握される。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明の感光性ペースト組成物、これを利用して製造されたPDPの隔壁及びこれを含むPDPは、例えば、ディスプレイ関連の技術分野に効果的に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物に分散しているフッ化物ゾルと、無機物とを含む感光性ペースト組成物において、前記フッ化物ゾルの平均屈折率(N)及び前記無機物の平均屈折率(N)が下記数式1を満たすことを特徴とする感光性ペースト組成物:
−0.2≦N−N≦0.2 ・・・(式1)。
【請求項2】
前記フッ化物ゾルの原料となるフッ化物は、下記化学式1または化学式2で表現されることを特徴とする請求項1に記載の感光性ペースト組成物:
・・・(化1)
M’ ・・・(化2)
前記化学式で、M及びM’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはケイ素(Si)のうちいずれか1つの元素であり、
a、b、x、y及びzは、成分元素の原子数の比であって、1〜4の整数である。
【請求項3】
前記フッ化物ゾルは、
下記化学式3の化合物または下記化学式4の化合物の少なくともいずれかを水に溶かした水溶液と下記化学式5の化合物を水に溶かした水溶液とを混合して混合物を製造する段階と、
前記混合物のうち水を有機溶剤で置換することによって得られるフッ化物前駆体を製造する段階と、
前記フッ化物前駆体を有機物に分散させる段階とを含む方法によって製造されることを特徴とする請求項1又は2に記載の感光性ペースト組成物:
・・・(化3)
M’ ・・・(化4)
・・・(化5)
前記化学式で、M及びM’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはケイ素(Si)のうちいずれか1つの元素であり、
Xは、塩素、硝酸塩(NO)、硫酸塩(SO)または酢酸塩(CHCO)であり、
Aは、ナトリウム、カリウム、アンモニウムまたは水素であり、
a、b、t、u、x、y及びzは、成分元素の原子数の比であって、1〜4の整数である。
【請求項4】
前記フッ化物ゾルは、フッ化物成分としてシリカとフッ化物との混合体を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項5】
前記フッ化物成分は、1〜60nmの平均粒径を有することを特徴とする請求項4に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項6】
前記フッ化物ゾルの平均屈折率は、1.4〜1.5であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項7】
前記フッ化物の平均屈折率は、1.3〜1.4であることを特徴とする請求項2に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項8】
前記フッ化物ゾルの透過度は、厚さ1cmを基準に、500nmの波長において50%以上であることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項9】
前記フッ化物ゾルの平均屈折率(N)及び前記無機物の平均屈折率(N)が下記数式2を満たすことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の感光性ペースト組成物:
−0.1≦N−N≦0.1 ・・・(式2)。
【請求項10】
前記フッ化物ゾルのフッ化物の含有量は、前記有機物100体積部対比で、1〜40体積部であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項11】
前記フッ化物ゾルのフッ化物の含有量は、前記無機物100体積部対比で、1〜20体積部であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項12】
前記無機物は、平均屈折率(N)が1.5〜1.8であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項13】
前記無機物は、下記数式5を満たす低融点ガラス粉末、及び下記数式6を満たす高融点ガラス粉末を含むことを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の感光性ペースト組成物:
焼成温度−80℃<Ts<焼成温度 ・・・(式5)
Ts>焼成温度+20℃ ・・・(式6)。
【請求項14】
前記低融点ガラス粉末の平均粒径は、中間値(D50)が2〜5μm、最小値(Dmin)は0.1μm、最大値(Dmax)は20μmであることを特徴とする請求項13に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項15】
前記低融点ガラス粉末の含有量は、前記無機物100体積部に対して、70〜100体積部であることを特徴とする請求項13又は14に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項16】
前記低融点ガラス粉末は、PbO−B系、PbO−SiO−B系、Bi−B系、Bi−SiO−B系、SiO−B−Al系、SiO−B−BaO系、SiO−B−CaO系、ZnO−B−Al系、ZnO−SiO−B系、P系、SnO−P系、V−P系、V−Mo系及びV−P−TeO系からなる群から一つ以上選択されたことを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項17】
前記高融点ガラス粉末の平均粒径は、中間値が1〜4μm、最小値は0.1μm、最大値は20μmであることを特徴とする請求項13〜16の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項18】
前記高融点ガラス粉末の含有量は、前記無機物100体積部対比で、0超過30体積部以下であることを特徴とする請求項13〜17の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項19】
前記高融点ガラス粉末は、SiO−B−BaO系、SiO−B−CaO系、SiO−B−MgO系、SiO−B−CaO−BaO系、SiO−B−CaO−MgO系、SiO−Al−BaO系、SiO−Al−CaO系、SiO−Al−MgO系、SiO−Al−BaO−CaO系及びSiO−Al−CaO−MgO系からなる群から一つ以上選択されたことを特徴とする請求項13〜18の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項20】
前記低融点ガラス粉末の屈折率(N)と前記高融点ガラス粉末の屈折率(N)との差が下記数式7を満たすことを特徴とする請求項13〜19の何れかに記載の感光性ペースト組成物:
−0.2≦N−N≦0.2 ・・・(式7)。
【請求項21】
前記低融点ガラス粉末の屈折率(N)と前記高融点ガラス粉末の屈折率(N)との差が下記数式8を満たすことを特徴とする請求項13〜20の何れかに記載の感光性ペースト組成物:
−0.1≦N−N≦0.1 ・・・(式8)。
【請求項22】
前記有機物は、バインダと、光開始剤または光酸発生剤と、架橋剤とを含むことを特徴とする請求項1〜21の何れかに記載の感光性ペースト組成物。
【請求項23】
前記有機物は、添加剤または溶剤をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の感光性ペースト組成物。
【請求項24】
請求項1〜23のうちいずれか1項に記載の感光性ペースト組成物を利用して製造されたことを特徴とするプラズマディスプレイパネルの隔壁。
【請求項25】
請求項24に記載のプラズマディスプレイパネルの隔壁を含むことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2009−175734(P2009−175734A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6143(P2009−6143)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】