説明

感光性ペースト

【課題】高度の反射率と低誘電率性を兼ね備える隔壁を形成し得る感光性ペーストを提供する。
【解決手段】(A)熱軟化温度が400℃〜600℃であり、下記i)、ii)およびiii)の要件を満足するガラス粒子、(B)感光性有機成分および(C)有機溶剤を含有する感光性ペースト。
i)酸化亜鉛の含有量が10質量%以上であること
ii)酸化鉛および酸化ビスマスの含有量が共に10質量%以下であること
iii)酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を、前記(A)に対する質量分率で5質量%〜60質量%含むこと

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイにおいて小型・高精細化・低消費電力化・高輝度化が進んでおり、それに伴って、ディスプレイ画素に係るパターン加工技術の向上が望まれている。
このような状況において、プラズマディスプレイの背面板の隔壁を形成・加工する方法として感光性ペースト法の精度向上が種々検討され、例えば、アクリル酸−スチレン共重合ポリマー、ガラス粉末および光重合開始剤を含有してなる感光性ペーストを基板上に塗布し、露光、現像して隔壁パターンを形成し、焼成せしめて隔壁を形成する方法などが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−22064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマディスプレイパネルの低消費電力化・高輝度化のためには、隔壁の比誘電率を下げ、且つ、隔壁の反射率が高いことが求められている。
しかし、特許文献1が開示する感光性ペーストは、融着成分である低融点ガラスとして、軟化温度を下げるために、酸化鉛あるいは酸化ビスマスを含有するガラスを使用しており、このような低融点ガラスを用いると、得られる隔壁は、その比誘電率を下げることが困難となるものであった。
また、低融点ガラスとして、酸化鉛や酸化ビスマスの替わりに酸化亜鉛を含有するものが知られているが、このような低融点ガラスを使用した場合、得られる隔壁の反射率が低下し、反射率を上げるために白色顔料(アルミナ、チタニア等)を添加すると、該白色顔料は一般に比誘電率が高いことから得られる隔壁の比誘電率を上昇させる結果となる。このように低誘電率と反射率とがともに良好な隔壁を得ることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、低誘電率と高度の反射率を兼ね備えた隔壁を形成し得る感光性ペーストを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、低誘電率に好適である酸化亜鉛を含有しながらも、高度の反射率を備える隔壁を製造し得る低融点ガラスについて鋭意検討した結果、上記課題を解決しうる感光性ペーストを見出し、さらに種々の検討を加えて、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
[1](A)熱軟化温度が400℃〜600℃であり、下記i)、ii)およびiii)の要件を満足するガラス粒子、(B)感光性有機成分および(C)有機溶剤を含有する感光性ペースト、を提供するものである。
i)酸化亜鉛の含有量が10質量%以上であること
ii)酸化鉛および酸化ビスマスの含有量が共に10質量%以下であること
iii)酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を、前記(A)に対する質量分率で5質量%〜60質量%含むこと
【0007】
また、本発明は、上記[1]に係る好適な実施様態として、下記[2]〜[7]を提供する。
[2]前記(A)がさらに下記iv)で表される要件を満足する、[1]の感光性ペースト
iv)アルカリ金属酸化物の含有量が、前記(A)に対する質量分率で3質量%以下であること
[3]前記(A)、(B)および(C)の含有量が感光性ペースト総量に対して、(A)10〜90質量%、(B)5〜85質量%、(C)5〜20質量%である[1]または[2]の感光性ペースト
[4]前記(B)が、分子内にカルボキシル基を含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの感光性ペースト
[5]前記(B)が、分子内に炭素―炭素二重結合を含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの感光性ペースト
[6]前記(B)が、分子内にカルボキシル基と炭素―炭素二重結合とを含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの感光性ペースト
[7]前記(B)が、多官能の(メタ)アクリレート化合物を10〜80質量%含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの感光性ペースト
【0008】
さらに、本発明は上記いずれかの感光性ペーストを用いる、下記[8]〜[11]を提供する。
[8]上記いずれかに記載の感光性ペーストを用いて製造されてなるプラズマディスプレイ用隔壁
[9][8]のプラズマディスプレイ用隔壁を備えるプラズマディスプレイ用背面板
[10][9]のプラズマディスプレイ用背面板を備えるプラズマディスプレイパネル
[11]下記の工程を備えるプラズマディスプレイパネル用隔壁の製造方法。
(a) 上記いずれかに記載の感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥して塗膜を
形成する工程
(b) 上記(b)で得られた塗膜を露光する工程
(c) 露光後の塗膜を加熱する工程
(d) 塗膜を現像する工程
(e) 現像後、該基板を400℃〜610℃の温度で焼成する工程
【発明の効果】
【0009】
本発明の感光性ペーストによれば、高度の反射率を備える隔壁を形成することができる。また、前記のように低誘電率化が期待される酸化亜鉛を含有するガラス粒子を使用していることから、プラズマディスプレイパネルの低消費電力化・高輝度化を達成しうるため、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の感光性ペーストは、(A)熱軟化温度が400℃〜600℃のガラス粒子、(B)感光性有機成分および(C)有機溶剤を含有する感光性ペーストであって、前記(A)が、特定の要件を満足することを特徴とする感光性ペーストである。
【0011】
まず、前記(A)に係る特定の要件に関して説明する。(A)としては、
i)酸化亜鉛の含有量が10質量%以上であること
ii)酸化鉛および酸化ビスマスの含有量が共に10質量%以下であること
iii)酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化バリウムからなる郡より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を、前記(A)に対する質量分率で5質量%〜60質量%含むこと
の3つの要件を満足するものである。
i)としては、ガラス粒子中に含まれる酸化亜鉛の含有量を規定するものであり、12質量%以上であると、さらに好ましく、15質量%以上であると特に好ましい。酸化亜鉛の含有量が10質量%を下回ると、ガラスの熱線膨張係数が大きくなる傾向がある。
また、ii)としては、ガラス粒子中に含まれる酸化鉛の含有量が10質量%以下であり、且つ酸化ビスマスの含有量がともに10質量%以下であることを示す。酸化鉛としては5質量%以下であると、より好ましく、1質量%以下であると特に好ましい。一方、酸化ビスマスとしては5質量%以下であると、より好ましく、1質量%以下であると特に好ましい。酸化鉛の含有量あるいは酸化ビスマスの含有量が10質量%を超えると、比誘電率が高くなることから好ましくない。
iii)としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を特定の含有量で含むことを表し、かかる含有量としては、10質量%〜60質量%であると、より好ましい。
これらのアルカリ土類金属酸化物の中でも好ましくは、酸化カルシウムおよび/または酸化バリウムである。さらに、他のアルカリ土類金属酸化物として、酸化ベリリウムまたは酸化ストロンチウムが含まれていてもよい。
【0012】
前記i)、ii)およびiii)に示す各種酸化物の含有量を求めるには、ガラス粒子を必要に応じて灰化処理などを行って、フッ化水素酸水溶液に溶解せしめた後、原子吸光分析、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析、ICP質量分析などの分析手法にて、陽イオン含有量を求め、その陽イオンの酸化物換算で求めることができる。
【0013】
前記(A)としては、ホウ素酸化物を主成分とする軟化温度が400℃〜600℃のガラス粒子などが挙げられる。前記のホウ素酸化物を主成分とする軟化温度が400℃〜600℃のガラス粒子としては、酸化ホウ素-酸化亜鉛-アルカリ土類金属系ガラス粒子などが挙げられる。
【0014】
さらに、前記(A)としては、下記iv)で表される要件を満足するものであると、より好ましい。
iv)アルカリ金属酸化物の含有量が、前記(A)に対する質量分率で3質量%以下であること
かかるアルカリ金属酸化物は、ガラス粒子の製造において、ガラスの軟化温度を下げるための成分または不純物としてガラス粒子中に含まれることがある。
本発明において、アルカリ金属酸化物の含有量を、ガラス粒子(A)に対する質量分率で3質量%以下にすることにより、反射率の低下を、より抑制することができるため好ましい。
また、アルカリ金属酸化物の含有量は、ガラス粒子(A)に対して質量分率で、好ましくは0.00001〜3質量%であり、より好ましくは0.00001〜2.5質量%であり、とりわけ好ましくは0.00001〜2質量%である。
【0015】
前記のアルカリ金属酸化物としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウムなどが挙げられる。ガラス粒子(A)中にある、これらアルカリ金属酸化物の含有量も上記と同様の分析手段により求めることができる。
【0016】
本発明の感光性ペーストは、感光性有機成分(B)を含有する。本発明の感光性有機成分とは、X線、紫外線、可視光線、近赤外線あるいは電子線からなる群から選ばれる少なくとも一種の放射光によって化学反応を生じる有機化合物を含む有機成分であり、好適なものとしては、感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性ポリマーから選ばれる少なくとも1種類から選ばれる感光性成分を含有するものである。
【0017】
前記感光性有機成分は、さらに必要に応じて、バインダー、光重合開始剤、紫外線吸収剤、増感剤、増感助剤、重合禁止剤、可塑剤、増粘剤、有機溶媒、酸化防止剤、分散剤、沈降防止剤やレベリング剤などの添加剤成分を加えることができる。
【0018】
前記感光性モノマーとしては、炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物を挙げることができる。炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフロロデシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシ(メタ)ペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジア(メタ)クリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アクリルアミド(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキシド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオフェノールジ(メタ)アクリレート、ベンジルメルカプタン(メタ)アクリレートまたはこれらの芳香環の水素原子のうち、1〜5個を塩素または臭素原子に置換したモノマー、もしくは、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、塩素化スチレン、臭素化スチレン、α−メチルスチレン、塩素化α−メチルスチレン、臭素化α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、カルボシキメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルカルバゾール、および、上記化合物の分子内のアクリレートを一部もしくはすべてをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。本発明の感光性モノマーとしては、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0019】
なお、感光性有機成分(B)として、上記に例示した感光性モノマーを用いる場合、得られるペーストのチキソ性を向上させる観点からバインダーを用いることもできる。かかるバインダーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、α−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などがあげられる。
【0020】
また、感光性有機成分(B)としては、上記に例示した炭素−炭素二重結合を有する化合物を重合してオリゴマーまたはポリマーを製造し、かかるオリゴマーまたはポリマーに光反応性基を導入して得られる感光性オリゴマー、感光性ポリマーを用いてもよい。かかるポリマーを重合して得る際には、上記に例示した炭素−炭素二重結合を有する化合物が10重量%以上となる範囲で、他のモノマーと共重合することができる。なお、該炭素−炭素二重結合を有する化合物としては、35重量%以上となる範囲であると、さらに好ましい。
【0021】
共重合可能な他のモノマーとしては、上記炭素−炭素二重結合を有する化合物と共重合しうるものであれば、特に限定されないが、不飽和カルボン酸等の不飽和酸を共重合するが好ましく、かかる不飽和酸を共重合することで、得られるオリゴマーまたはポリマー中に酸性基を導入することができ、感光後の現像性を向上することができる。不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、またはこれらの酸無水物などがあげられる。
【0022】
こうして得られたカルボキシル基等の酸性基を有するオリゴマーまたはポリマーの、酸価(AV)は50〜180、さらには70〜140の範囲が好ましい。酸価が、このような範囲にあると、現像許容幅を広くすることが可能であり、未露光部の現像液に対する溶解性が良好であり、かつ露光部の剥がれを抑制することができるため、高精細なパターンが得られやすい。
【0023】
以上示したオリゴマーまたはポリマーに対して、光反応性基を側鎖または分子末端に付加させることによって、感光性オリゴマーまたは感光性ポリマーを製造する。かかる感光性オリゴマー、感光性ポリマーとしては、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法で求められる重量平均分子量が500〜10万であると好ましく、該重量平均分子量は通常、ポリスチレン換算の重量平均分子量として求めることができる。
【0024】
該光反応性基として好ましい基は、エチレン性不飽和基を有するものである。エチレン性不飽和基としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。
【0025】
このような光反応性基をオリゴマーまたはポリマーに付加させる方法は、オリゴマー分子中あるいはポリマー分子中のカルボキシル基に対して、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させて作る方法がある。また、オリゴマー分子中あるいはポリマー分子中にメルカプト基、アミノ基または水酸基を導入している場合は、これらの基にグリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させてもよい。
【0026】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。
【0027】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルエチルイソシアネートなどがある。
【0028】
また、グリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドは、ポリマー中にある、かかる化合物と反応しうる基に対して0.05〜1モル当量付加させることが好ましい。
【0029】
次に、上記添加剤成分について説明する。
光重合開始剤としての具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾインおよびエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。光重合開始剤は、感光性有機成分に対し、0.05〜10重量%の範囲で添加され、より好ましくは、0.1〜5重量%である。重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり、光重合開始剤の量が多すぎれば、未露光部に残渣が残る傾向がある。
【0030】
紫外線吸収剤を添加することも有効である。紫外線吸収効果の高い化合物を添加することによって高アスペクト比、高精細、高解像度が得られる。紫外線吸収剤としては有機系染料もしくは有機顔料、中でも350〜450nmの波長範囲で高UV吸収係数を有する有機系染料が好ましく用いられる。具体的には、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アミノケトン系染料、アントラキノン系、ベンゾフェノン系、ジフェニルシアノアクリレート系、トリアジン系、p−アミノ安息香酸系染料などが使用できる。有機系染料は吸光剤として添加した場合にも、焼成後の絶縁膜中に残存しないで吸光剤による絶縁膜特性の低下を少なくできるので好ましい。これらの中でもアゾ系およびベンゾフェノン系染料が好ましい。有機染料の添加量は、感光性ペースト総量に対して0.05〜5重量部が好ましい。0.05重量%以下では紫外線吸光剤の添加効果が減少し、5重量%を越えると焼成後の絶縁膜特性が低下するので好ましくない。より好ましくは0.05〜1重量%である。有機染料からなる紫外線吸光剤の添加方法の一例を上げると、有機染料を予め有機溶媒に溶解した溶液を作製し、それをペースト作製時に混練する方法以外に、有機染料を予め溶解した有機溶媒中にガラス粒子(A)を混合後、乾燥する方法があげられる。この方法によってガラス粒子の個々の表面に有機の膜をコートしたいわゆるカプセル状のガラス粒子が作製できる。
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例としては、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミニベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオテトラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオテトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものもある。増感剤を本発明の感光性ペーストに添加する場合、その添加量は感光性有機成分の総量に対して通常0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0031】
重合禁止剤は、保存時の熱安定性を向上させるために添加される。重合禁止剤の具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられる。重合禁止剤を添加する場合、その添加量は、感光性ペースト中に、通常、0.001〜1質量%である。
【0032】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0033】
酸化防止剤は、保存時におけるアクリル系共重合体の酸化を防ぐために添加される。酸化防止剤の具体的な例として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−ビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス[3,3−ビス−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、ジラウリルチオジプロピオナート、トリフェニルホスファイトなどが挙げられる。酸化防止剤を添加する場合、その添加量は通常、添加量は、ペースト中に、通常、0.001〜1重量%である。
【0034】
本発明の感光性ペーストには、ペースト粘度を調整する目的で有機溶媒(C)を加える。このとき使用される有機溶媒としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトン、ブロモベンゼン、クロロベンゼン、ジブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモ安息香酸、クロロ安息香酸などやこれらのうちの2種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0035】
本発明の感光性ペーストには、更に、骨材として無機粒子(ただし、軟化温度が600℃以下のガラス粒子を除く)を添加してもよい。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、軟化温度が600℃を越えるガラス粒子などが挙げられる。これらの無機粒子は、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
シリカ粒子の市販品としては、例えばアドマファイン((株)アドマテックス製)などが挙げられる。
軟化温度が600℃を越えるガラス粒子の市販品としては、BS3(日本山村硝子(株)製)などが挙げられる。
【0036】
前記の無機粒子の屈折率は、好ましくは1.40〜2.70であり、より好ましくは1.43〜2.20であり、とりわけ好ましくは1.43〜1.80である。無機粒子の屈折率が前記の範囲にあると、露光時に光の散乱が小さいため良好なパターンを形成することができる傾向があり、好ましい。
屈折率は、プリズム屈折率測定装置(例えば、GP1−P;OPTEC社製)を用いて、例えば25℃において、測定することができる。そして、市販の無機粒子の屈折率を測定し、当該範囲にある無機粒子を選択することができる。
【0037】
前記の無機粒子の平均粒径は、好ましくは0.01〜40μmであり、より好ましくは0.1〜10μmであり、とりわけ好ましくは1〜8μmである。無機粒子の平均粒径が、前記の範囲にあると、感光性ペーストを用いて形成される隔壁中における無機粒子の充填量を増加させることができることから焼成時の収縮が少ないため好ましく、また露光時の光の散乱が小さいため良好なパターンを形成できる傾向があり、好ましい。
平均粒径は、粒径測定装置(例えば、DLS−7000;大塚電子(株)製、レーザー回折/散乱式粒子系測定装置LA−950;(株)堀場製作所製)を用いて、例えば25℃において、測定することができる。そして、市販の無機粒子の平均粒径を測定し、当該範囲にある無機粒子を選択することができる。
本発明の感光性ペーストにおいては、平均粒径の異なる無機粒子を任意の割合で混合して用いてもよい。
前記の無機粒子の形状は、好ましくは球状である。
【0038】
本発明の感光性ペーストにおける前記無機粒子(ただし、軟化温度が600℃以下のガラス粒子を除く)の含有量は、感光性ペーストに対して質量分率で、好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜35質量%である。
無機粒子の含有量が前記の範囲にあると、焼成時の膜収縮が小さくなり基板から剥離しにくくなる傾向が見られ、また露光時の光の散乱が小さくなり良好なパターンを形成できる傾向があり、好ましい。
【0039】
本発明の感光性ペーストは、ガラス粒子(A)、感光性有機成分(B)[感光性モノマー、感光性オリゴマーおよび感光性モノマーから選ばれる感光性有機成分]、有機溶媒(C)、さらに必要に応じて添加剤成分[紫外線吸光剤、光重合開始剤など]の各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラや混練機で均質に混合分散し調製する。
【0040】
ペースト粘度はガラス粒子(A)を含む無機粒子、増粘剤、(C)有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤などの添加割合によって適宜調節されるが、その範囲は2000〜20万cps(センチ・ポイズ)である。例えばガラス基板への塗布をスピンコート法で行う場合は、2000〜5000cpsが好ましい。スクリーン印刷法で1回塗布して膜厚10〜20μmを得るには、5万〜20万cpsが好ましい。ブレードコーター法やダイコーター法などを用いる場合は、2000〜20000cpsが好ましい。
【0041】
次に本発明によって、プラズマディスプレイの隔壁層のパターン加工を行う好適な例について説明する。
本発明の感光性ペーストは下記の工程ならなる製造方法にて、隔壁を製造することができる。
(a) 本発明の感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥して塗膜を成する工程
(b) 上記(b)で得られた塗膜を露光する工程
(c) 露光後の塗膜を加熱する工程
(d) 塗膜を現像する工程
(e) 現像後、該基板を400℃〜610℃の温度で焼成する工程
【0042】
まず、上記(a)について説明する。
ガラス基板やポリマー製フィルムの上に、感光性ペーストを全面塗布、もしくは部分的に塗布する。塗布方法としては、スクリーン印刷、バーコーター、ロールコーターなど公知の方法を用いることができる。塗布厚みは、塗布回数、コーターのギャップ、スクリーンのメッシュ、ペーストの粘度を選ぶことによって調整できるが、プラズマディスプレイの隔壁は100〜200μmの厚みが必要であり、乾燥や焼成による収縮を考慮して、120〜300μm程度の厚みで塗布することが好ましい。
【0043】
ここでペーストとガラス基板との密着性を高めるためにガラス基板の表面処理を行うことができる。表面処理液としてはシランカップリング剤、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス−(2−メトキシエトキシ)ビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどあるいは有機金属例えば有機チタン、有機アルミニウム、有機ジルコニウムなどである。シランカップリング剤あるいは有機金属を有機溶媒例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどで0.1〜5%の濃度に希釈したものを用いる。次にこの表面処理液をスピナーなどで基板上に均一に塗布した後に80〜140℃で10〜60分間乾燥することによって表面処理ができる
また、ポリマーフィルム上に塗布した場合、フィルム状の感光性ペーストシート(感光性グリーンシート)をガラス基板上に張り付けることによって、簡便にガラス基板上への塗布を行うことができる。
【0044】
塗布した後、露光装置を用いて露光を行う。露光は通常のフォトリソグラフィーで行われるように、フォトマスクを用いてマスク露光する方法が一般的である。用いるマスクは、感光性有機成分の種類によって、ネガ型もしくはポジ型のどちらかを選定する。また、フォトマスクを用いずに、レーザー光などで直接描画する方法を用いても良い。露光装置としては、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などを用いることができる。
【0045】
露光工程を1回だけ行うことが、複数回の露光を行う場合に比べて、精度良く簡便に隔壁層を形成する方法としては好ましい。
【0046】
また、大面積の露光を行う場合は、ガラス基板などの基板上に感光性ペーストを塗布した後に、搬送しながら露光を行うことによって、小さな有効露光面積の露光機で、大きな面積を露光することができる。
【0047】
この際使用される活性光源は、たとえば、可視光線、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光などが挙げられるが、これらの中で紫外線が好ましく、その光源としてはたとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は塗布厚みによって異なるが、0.5〜100mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて0.5〜30分間露光を行なう。特に、露光量が0.3〜5J/cm2程度の露光を行うことが好ましい。
【0048】
塗布した感光性ペースト表面に酸素遮蔽膜を設けることによって、パターン形状を向上することができる。酸素遮蔽膜の一例としては、PVA(ポリビニルアルコール)やセルロースなどからなる膜、あるいは、ポリエステルなどからなるフィルムが挙げられる。
【0049】
PVAフィルムの形成方法は、PVAが0.5〜5重量%の水溶液をスピナーなどの方法で基板上に均一に塗布した後に70〜90℃で10〜60分間乾燥することによって水分を蒸発させて行う。また水溶液中にアルコールを少量添加すると絶縁膜との塗れ性が良くなり蒸発が容易になるので好ましい。さらに好ましいPVAの溶液濃度は、1〜3重量%である。この範囲にあると感度が一層向上する。PVA塗布によって感度が向上するのは次の理由が推定される。すなわち感光性成分が光反応する際に、空気中の酸素があると光硬化の感度を妨害すると考えられるが、PVAの膜があると余分な酸素を遮断できるので露光時に感度が向上するので好ましい。
【0050】
ポリエステルやポリプロピレン、ポリエチレンなどの透明なフィルムを用いる場合は、塗布後の感光性ペーストの上に、これらのフィルムを張り付けて用いる方法がある。
【0051】
露光後、現像液を使用して現像を行なうが、この場合、浸漬法やスプレー法、ブラシ法のいずれを用いてもよい。
【0052】
現像液は、感光性ペースト中の有機成分が溶解可能である有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。感光性ペースト中にカルボキシル基等の酸性基を持つ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。
【0053】
有機アルカリとしては、公知のアミン化合物を用いることができる。具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されずに、アルカリ濃度が高すぎれば、パターン部を剥離させ、また露光部を腐食させるおそれがあり良くない。また、現像時の現像温度は、20〜50℃で行うことが工程管理上好ましい。
【0054】
次に焼成炉にて焼成を行う。焼成雰囲気や、温度はペーストや基板の種類によって異なるが、空気中、窒素、水素等の雰囲気中で焼成する。焼成温度は400〜610℃で行う。ガラス基板上にパターン加工する場合は、520〜610℃の温度で10〜60分間保持して焼成を行う。焼成炉としては、バッチ式の焼成炉やベルト式の連続型焼成炉を用いることができる。
【0055】
また、以上の工程中に、乾燥、予備反応の目的で、50〜300℃加熱工程を導入してもよい。
【0056】
以上の工程によって得られた隔壁層を有するガラス基板はプラズマディスプレイの前面側もしくは背面側に用いることができる。また、プラズマアドレス液晶ディスプレイのアドレス部分の放電を行うための基板として用いることができる。
【0057】
形成した隔壁層の間に蛍光体を塗布した後に、前背面のガラス基板を合わせて封着し、ヘリウム、ネオン、キセノン等の希ガスを封入することによって、プラズマディスプレイのパネル部分を製造できる。
【0058】
さらに、駆動用のドライバーICを実装することによって、プラズマディスプレイを製造することができる。
【0059】
上記において、本発明の実施の形態について説明を行なったが、上記に開示された本発明の実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれらの実施の形態に限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【実施例】
【0060】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0061】
<樹脂(B1)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよびガス導入管を備えた1Lのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート333gを投入した。その後、窒素ガスをガス導入管を通じてフラスコ内に導入し、フラスコ内雰囲気を窒素ガスに置換した。その後、フラスコ内の溶液温度を100℃に昇温した後、ジシクロペンタニルメタクリレート(FA−513M;日立化成(株)製)22.0g(0.10モル)、ベンジルメタクリレート70.5g(0.40モル)、メタクリル酸43.0g(0.5モル)、アゾビスイソブチロニトリル3.6gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート164gからなる混合物を、滴下ロートを用いて2時間かけてフラスコに滴下した。滴下完了後さらに100℃で5時間撹拌を続けた。
攪拌終了後、ガス導入管を通じて空気をフラスコ内に導入し、フラスコ内雰囲気を空気にした後、グリシジルメタクリレート35.5g[0.25モル(本反応に用いたメタクリル酸に対してモル分率で、50モル%)]、トリスジメチルアミノメチルフェノール0.9gおよびハイドロキノン0.145gをフラスコ内に投入して、内温110℃で6時間反応させることで、樹脂B1を含む溶液が得られた(固形分38.5質量%、酸価80mgKOH/g)。
ここで、酸価は、カルボン酸などの酸基を有する重合体1gを中和するに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、通常、濃度既知の水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求められる。
得られた樹脂B1のポリスチレン換算重量平均分子量は9,000であった。
【0062】
なお、上記樹脂B1のポリスチレン換算重量平均分子量の測定については、GPC法を用いて、以下の条件で行った。
装置;HLC-8120GPC(東ソー(株)製)
カラム;TSK−GELG2000HXL
カラム温度;40℃
溶媒;THF
流速;1.0mL/min
被検液固形分濃度;0.001〜0.01質量%
注入量;50μL
検出器;RI
校正用標準物質;TSK STANDARD POLYSTYRENE F−40、F−4、F−1、A−2500、A−500(東ソー(株)製)
【0063】
本実施例で用いる成分は以下の通りであり、以下、省略して表示することがある。
(A−1)球状シリカ((株)アドマテックス製;SO−C6)
(A−2)低融点無鉛ガラス粒子(ヤマト電子(株)製、YEB2−6701)
(A−3)低融点無鉛ガラス粒子(旭硝子(株)製、NLPF023)
(B−1)樹脂B1(樹脂濃度 38.5質量%)
(C−1)光重合性化合物:TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
(D−1)光重合開始剤:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン
(D−2)光重合開始助剤:2,4−ジエチルチオキサントン
(E−3)ガンマ−ブチロラクトン
(E−4)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(H−1)酸化チタン粒子(石原産業(株)製、CR−EL)
【0064】
実施例1
(A−1) 12.66質量部
(A−2) 18.99質量部
(B−1) 13.36質量部
(C−1) 2.37質量部
(D−1) 0.79質量部
(D−2) 0.16質量部
(E−4) 0.29質量部
(E−3) 0.99質量部
(H−1) 0.40質量部
をポリプロピレン製密閉容器に入れ、攪拌脱泡機((株)キーエンス社製;HM−500)を用いて攪拌して均一な感光性ペーストを調製した。調製された感光性ペーストは(A)63.3質量%、(B)26.7質量%および(C)4.7質量%である。
調製した感光性ペーストを200μmギャップのアプリケーターを用いて、誘電体付きガラス基板上に1回塗布した。塗布後90℃のオーブンで40分乾燥して塗膜を調製した。
なお、ガラス(A−2)中の酸化亜鉛ならびにアルカリ土類金属酸化物の含有量は、亜鉛ならびにアルカリ土類金属の含有量として、フレーム原子吸光法により測定した。その結果、ガラス中の酸化亜鉛の含量は18質量%、酸化バリウムの含量は45質量%、酸化カルシウムの含量は10質量%、酸化マグネシウムの含量は0.1質量%以下であった。
【0065】
次いで、乾燥後の塗膜を、45μmライン、240μmピッチのマスクを用いて、プロキシミティ露光機(大日本スクリーン製造(株)製;MAP−1300)で露光した。照射露光量は、50mJ/cm2であった。露光後、0.4質量%水酸化ナトリウム水溶液で現像して、パターン上部幅51μm、パターン下部幅88μm、高さ74μmのパターンが得られた。
【0066】
前記調製した感光性ペーストを60μmギャップのアプリケーターを用いて、ガラス基板上に1回塗布した。塗布後90℃のオーブンで40分乾燥して塗膜を調製した。得られた塗膜を580℃で30分焼成し、反射率測定用のサンプルを作製した。反射率測定は、分光測色計(ミノルタ製;CM2002)を用いて行った。450nmでの反射率は、70%であった。
【0067】
比較例1
ガラス粒子として(A−2)の替わりに(A−3)を用いた以外は、実施例1と同様にして感光性ペーストを調製した。
なお、ガラス(A−3)中の酸化亜鉛ならびにアルカリ土類金属酸化物の含有量は、亜鉛ならびにアルカリ土類金属の含有量として、フレーム原子吸光法により測定した。その結果、ガラス中の酸化亜鉛の含量は25質量%、酸化バリウムの含量は0.1質量%以下、酸化カルシウムの含量は0.1質量%以下、酸化マグネシウムの含量は0.1質量%以下であった。
【0068】
現像後のパターンの形状は、パターン上部幅55μm、パターン下部幅90μm、高さ79μmであった。実施例1と同様にして反射率測定用のサンプルを作製し、反射率を測定した結果、450nmでの反射率は50%であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の感光性ペーストは、プラズマディスプレイの部材である背面板の隔壁形成などに用いることができるほか、平面バックライトのスペーサー形成、マイクロリアクターなどの形成に用いることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱軟化温度が400℃〜600℃であり、下記i)、ii)およびiii)の要件を満足するガラス粒子、(B)感光性有機成分および(C)有機溶剤を含有する感光性ペースト。
i)酸化亜鉛の含有量が10質量%以上であること
ii)酸化鉛および酸化ビスマスの含有量が共に10質量%以下であること
iii)酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化バリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物を、前記(A)に対する質量分率で5質量%〜60質量%含むこと
【請求項2】
前記(A)がさらに下記iv)で表される要件を満足する、請求項1記載の感光性ペースト。
iv)アルカリ金属酸化物の含有量が、前記(A)に対する質量分率で3質量%以下であること
【請求項3】
前記(A)、(B)および(C)の含有量が感光性ペースト総量に対して、(A)10〜90質量%、(B)5〜85質量%、(C)5〜20質量%である請求項1または2に記載の感光性ペースト。
【請求項4】
前記(B)が、分子内にカルボキシル基を含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項5】
前記(B)が、分子内に炭素―炭素二重結合を含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項6】
前記(B)が、分子内にカルボキシル基と炭素―炭素二重結合とを含有し、且つ重量平均分子量500〜10万のオリゴマーもしくはポリマーを10〜90質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項7】
前記(B)が、多官能の(メタ)アクリレート化合物を10〜80質量%含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の感光性ペースト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の感光性ペーストを用いて製造されてなるプラズマディスプレイ用隔壁。
【請求項9】
請求項8に記載のプラズマディスプレイ用隔壁を備えるプラズマディスプレイ用背面板。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイ用背面板を備えるプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
下記の工程を備えるプラズマディスプレイパネル用隔壁の製造方法。
(a) 請求項1〜7のいずれかに記載の感光性ペーストを基板上に塗布・乾燥して
塗膜を形成する工程
(b) 上記(b)で得られた塗膜を露光する工程
(c) 露光後の塗膜を加熱する工程
(d) 塗膜を現像する工程
(e) 現像後、該基板を400℃〜610℃の温度で焼成する工程

【公開番号】特開2008−37719(P2008−37719A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216630(P2006−216630)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】