説明

感光性樹脂組成物、及びそれを用いたシリカ系被膜の形成方法、並びにシリカ系被膜を備えた装置及び部材

【課題】層間絶縁膜としてシリカ系被膜の形成が容易で保存安定性に優れ、比較的安価で、耐熱性、クラック耐性、解像性及び透明性に優れる感光性樹脂組成物、それを用いたシリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含む第1のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第1のシロキサン樹脂と、下記一般式(2)で表される化合物を含む第2のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第2のシロキサン樹脂とを混合し、さらに加水分解縮合して得られる重量平均分子量が8000〜300000であるシロキサン樹脂と、溶媒と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとを含有する感光性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及びそれを用いたシリカ系被膜の形成方法、シリカ系被膜を備えた半導体装置、平面表示装置、電子デバイス用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや液晶表示装置の製作においては、層間絶縁膜が用いられている。一般に層間絶縁膜は、塗布もしくは気相から堆積されたのちフォトレジストを介してエッチングされることによりパターン形成がなされる。微細なパターンの場合、エッチングには気相エッチングが用いられる。しかしながら、気相エッチングは装置コストが高く、処理速度が遅いという問題があり、プロセスコスト低減を目的とした塗布型の感光性層間絶縁膜材料の開発が行われるようになった。特に、液晶表示装置においては画素電極とゲート/ドレイン配線間の絶縁およびデバイス平坦化のためのポジ型の感光特性を有する感光性層間絶縁膜材料が要求されている。
【0003】
ポジ型の感光性層間絶縁膜材料としては、例えば、特許文献1に、ポリシラザンと光酸発生剤とを含む感光性ポリシラザン樹脂組成物が開示されている。また、特許文献2にはシロキサン樹脂と感光剤ジアゾナフトキノン(Diazonaphthoquinone,DNQ)から構成される組成物が開示されている。さらに特許文献3には、アクリル樹脂と感光剤ジアゾナフトキノンから構成される組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−181069号公報
【特許文献2】特開2009−211033号公報
【特許文献3】特開2000−131846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の感光性ポリシラザン樹脂組成物は、保存安定性が悪く、室温下1週間程度の保存で感光特性が低下したり、分子量が変化したりする傾向があった。また、特許文献2に記載の感光性シロキサン樹脂組成物では、感光性シロキサン樹脂組成物のpHを調整することによって保存安定性を向上させているが十分ではなく、また、シロキサン樹脂の合成時に触媒として含まれる酸を、シロキサン樹脂の水洗により除去を行いpHの調整をする必要があるため、工程が煩雑となっていた。また、特許文献3に記載のアクリル樹脂組成物からなる層間絶縁膜は、透明性が高く安定であるものの、耐熱性が250℃前後と充分でなく、液晶表示装置等の製造工程に適用することは困難である。
【0006】
そこで本発明は、層間絶縁膜として用いることのできるシリカ系被膜の形成が比較的容易であり、かつ保存安定性に優れると共に、プロセスコストが比較的安価で、形成されるシリカ系被膜が耐熱性、クラック耐性、解像性及び透明性に優れる感光性樹脂組成物、また、それを用いたシリカ系被膜の形成方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、シリカ系被膜の形成方法により形成されるシリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物を含む、第1のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第1のシロキサン樹脂と、下記一般式(2)で表される化合物を含む、第2のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第2のシロキサン樹脂とを混合し、さらに加水分解縮合して得られる、重量平均分子量が8000〜300000の範囲である第3のシロキサン樹脂と、
(b)成分:前記(a)成分からなるシロキサン樹脂を溶解する溶媒と、
(c)成分:ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、
を含有する感光性樹脂組成物を提供する。
【0008】
【化1】

[一般式(1)中、Rは1価の有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【0009】
【化2】

[一般式(2)中、RはH原子又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2以下であるとき、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2又は3であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
感光性樹脂組成物の構成成分として、シロキサン樹脂を用いているため、特許文献1に記載の方法では必須のポリシラザン構造をポリシロキサン構造に転化させる工程を省略することができることから、比較的容易にシリカ系被膜を形成することができる。
【0010】
さらに、かかる感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜は、クラック耐性、耐熱性及び解像性に優れる。本発明の感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜によりこのような効果を得ることができる理由は必ずしも明らかでないが、本発明者らは次のように考えている。
【0011】
すなわち、本発明の感光性樹脂組成物においては、(a)成分に含まれる第1のシロキサン樹脂が柔軟性に優れるため、形成されるシリカ系被膜を加熱処理する際のクラックの発生が防止されることから、クラック耐性に優れる。また、本発明の感光性樹脂組成物においては、耐熱性に優れるシロキサン樹脂を用いているため、形成されるシリカ系被膜も耐熱性に優れると考えられる。さらに、上記一般式(1)で表される化合物は、アルカリ水溶液への溶解性が高いアシロキシ基を有していることから、それを加水分解することにより得られるシロキサン樹脂もアルカリ水溶液への溶解性が高い。よって、シリカ系被膜を形成する際の露光後の現像時に、露光部をアルカリ水溶液により溶解させることが容易となるため、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差が大きくなり解像性が向上すると考えられる。
【0012】
そして本発明の感光性樹脂組成物によれば、構造の異なる2種類のシロキサン樹脂を併用することにより、解像性に優れ、良好なパターン形状(パターンだれなどの問題の少ない)を有するシリカ系被膜を形成することができる。
【0013】
また、上記感光性樹脂組成物は、保存安定性に十分優れるものである。通常、シロキサン樹脂は、シロキサン樹脂に含まれるシラノール基が架橋点となり、酸触媒下、シラノール基同士の脱水縮合が行われることで高分子量化が進む。特開2009−211033号公報(特許文献2)に記載のシロキサン樹脂の重量平均分子量は1000程度であるが、このように重量平均分子量が小さいと、シロキサン樹脂に含まれるシラノール基の量も大きくなり、架橋点同士の距離が近くなるために脱水縮合が行われやすくなり、保存安定性が悪くなる。一方で、本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(a)成分の第3のシロキサン樹脂の分子量は8000〜300000である為、シロキサン樹脂の重量平均分子量は比較的大きく、シラノール基の量が少なくなるために、架橋点同士の距離が長くなって、保存安定性が増すと考えられる。
【0014】
また、本発明は、第1のシラン化合物を加水分解縮合して第1のシロキサン樹脂を得る工程と、第2のシラン化合物を加水分解縮合して第2のシロキサン樹脂を得る工程と、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂を混合して加水分解縮合し、加水分解縮合によって生成するアルコールや水などの低沸成分を、加水分解縮合と同時に除去して製造される第3のシロキサン樹脂を用いると好ましい。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(a)成分の第3のシロキサン樹脂は、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂とを混合し、加水分解縮合することで得られるが、このとき加水分解縮合の際に必須な酸触媒の量を、従来と比較して非常に少なくしている。これは加水分解縮合の後にも多量の酸触媒が存在すると、保存時においてシラノール基の加水分解縮合が起こり、感光性樹脂組成物の保存安定性が悪くなるためである。
【0016】
但し、酸触媒を少量にするとシロキサン樹脂に含まれるシラノール基の加水分解縮合の反応性が落ちる。一方でシロキサン樹脂に含まれるシラノール基の加水分解縮合は、加水分解縮合で生成するアルコールや水を加水分解縮合と同時に除去すれば、反応が進みやすくなる。そこで加水分解縮合によってシロキサン樹脂から脱離したアルコールや水などの低沸成分を除去しながら反応させることで、シラノール基の反応性を維持したまま加水分解縮合を進めることができ、少量の酸触媒で第3のシロキサン樹脂を得ることが可能となる。
【0017】
これに対し、シロキサン樹脂に含まれる酸触媒を水洗して感光性樹脂組成物中の酸触媒を減らし、保存安定性を高めることもできるが(特許文献2:特開2009−211033号公報)、操作が複雑となり大量生産には向かない。これに対し、本発明の上記した方法によれば、水洗が必要ないために上記問題を解決することができる。
【0018】
本発明では、第1のシラン化合物を加水分解縮合して第1のシロキサン樹脂を得る工程と、第2のシラン化合物を加水分解縮合して第2のシロキサン樹脂を得る工程と、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂を混合して加水分解縮合し、加水分解縮合によって生成するアルコールや水などの低沸成分を、加水分解縮合と同時に除去する工程を有する、第3のシロキサン樹脂の製造方法を提供する。このような方法であれば、上述したようにシロキサン樹脂の分子量が増加し、また使用する酸触媒を低減できるため、感光性樹脂組成物の保存安定性が向上し、シロキサン樹脂を水洗するといった、余計な工程を少なくすることができる。
【0019】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、(c)成分としてフェノール類又はアルコール類とナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステルを含有することで良好なポジ型感光性を発現することができ、シリカ系被膜を形成する際の露光後の現像時に、優れた現像性を得ることができる。
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、(c)成分のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが、ナフトキノンジアジドスルホン酸と、1価又は多価アルコールとのエステルであると好ましい。前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの重合度2〜10の重合体からなる群より選択されるアルコールであることがより好ましい。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記(c)成分は、フェノール類又は1つ以上のアリール基を有するアルコール類とナフトキノンジアジドスルホン酸とのエステルを含むことが好ましい。これにより、かかる感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜の感光特性が向上する。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物において、上記(b)成分は、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。これにより、かかる感光性樹脂組成物を基板上に塗布する際の塗布ムラやはじきを抑えることができる。
【0022】
また本発明では、第3のシロキサン樹脂と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、これらが溶解する溶媒とを混合する工程を有する感光性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明は、また、上述した本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、を有する、シリカ系被膜の形成方法を提供する。かかる形成方法によれば、上述した本発明の感光性樹脂組成物を用いているため、耐熱性及び解像性に優れるシリカ系被膜を得ることができる。
【0024】
本発明はまた、上述した本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、を有する、シリカ系被膜の形成方法を提供する。かかる形成方法によれば、上述の感光性樹脂組成物を用いているため、耐熱性及び解像性に優れるシリカ系被膜を得ることができる。さらに、可視光領域に光学吸収を有する(c)成分が第2露光工程で分解され、可視光領域における光学吸収が十分に小さい化合物が生成する。よって、得られるシリカ系被膜の透明性が向上する。
【0025】
本発明はさらに、基板と、該基板上に上述した本発明の形成方法により形成されたシリカ系被膜とを備える、半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供する。これらの半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材は、上述した本発明の感光性樹脂組成物から形成されるシリカ系被膜を層間絶縁膜として備えているため、優れた性能を発揮する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、層間絶縁膜として用いることのできるシリカ系被膜の形成が比較的容易であり、かつ保存安定性に優れると共に、プロセスコストが比較的安価で、形成されるシリカ系被膜が耐熱性、クラック耐性、解像性及び透明性に優れる感光性樹脂組成物、及びそれを用いるシリカ系被膜の形成方法を提供することができる。また、本発明によれば、シリカ系被膜の方法により形成されるシリカ系被膜を備える半導体装置、平面表示装置及び電子デバイス用部材を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の電子部品の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図2は、本発明の平面表示装置の一実施形態におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図である。
【図3】図3は、図2のアクティブマトリクス基板におけるIII−III’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0029】
また、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)により測定され、かつ標準ポリスチレンの検量線を使用して換算されたものである。
【0030】
ここで、重量平均分子量(Mw)は、例えば、以下の条件で、GPCを用いて測定することができる。
(条件)
試料: 10μL
標準ポリスチレン: 東ソー株式会社製標準ポリスチレン(分子量;190000、17900、9100、2980、578、474、370、266)
検出器: 株式会社日立製作所社製RI−モニター、商品名「L−3000」
インテグレーター: 株式会社日立製作所社製GPCインテグレーター、商品名「D−2200」
ポンプ: 株式会社日立製作所社製、商品名「L−6000」
デガス装置: 昭和電工株式会社製、商品名「Shodex DEGAS」
カラム: 日立化成工業株式会社製、商品名「GL−R440」、「GL−R430」、「GL−R420」をこの順番で連結して使用
溶離液: テトラヒドロフラン(THF)
測定温度: 23℃
流速: 1.75mL/分
測定時間: 45分
【0031】
(感光性樹脂組成物)
本発明の感光性樹脂組成物は、(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を含有する。以下、各成分について説明する。
【0032】
<(a)成分>
(a)成分は下記一般式(1)で表される化合物を含む、第1のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第1のシロキサン樹脂と、下記一般式(2)で表される化合物を含む、第2のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第2のシロキサン樹脂とを混合し、さらに加水分解縮合して得られる、重量平均分子量が8000〜300000の範囲である第3のシロキサン樹脂である。
【0033】
【化3】

[一般式(1)中、Rは1価の有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示す。なお、各Xは同一でも異なっていてもよい。]
【0034】
【化4】

[一般式(2)中、RはH原子又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2以下であるとき、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2又は3であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0035】
一般式(1)中、Rで示される1価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1〜20の直鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の基が挙げられる。分枝状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基等の基が挙げられる。また、環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の基が挙げられる。これらの中で、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5の直鎖状の炭化水素基がより好ましく、原料入手容易性の観点からメチル基が特に好ましい。
【0036】
一般式(1)中、Aで示される2価の有機基としては、例えば、2価の芳香族炭化水素基及び2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、原料入手容易性等の観点から、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の2価の炭化水素基が好ましい。
【0037】
炭素数1〜20の直鎖状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の分枝状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、イソプロピレン基、イソブチレン基等の基が挙げられる。炭素数1〜20の環状の2価の炭化水素基の好ましい具体例としては、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、ノルボルナン骨格を有する基、アダマンタン骨格を有する基等の基が挙げられる。これらの中で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基のような炭素数1〜7の直鎖状の2価の炭化水素基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基のような炭素数3〜7の環状の2価の炭化水素基、ノルボルナン骨格を有する環状の2価の炭化水素基が特に好ましい。
【0038】
一般式(1)中、Xで示される加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、イソシアネート基及びヒドロキシル基が挙げられる。これらの中で、感光性樹脂組成物自体の液状安定性や塗布特性等の観点からアルコキシ基が好ましい。なお、後述する一般式(2)及び(3)でそれぞれ表される化合物についてもXで示される加水分解性基としては、一般式(1)で表される化合物におけるXと同様な基が具体例として挙げられる。
【0039】
また、上記第1のシラン化合物は、下記一般式(3)で表される化合物をさらに含むことが好ましい。これにより、得られるシリカ系被膜の耐熱性がさらに向上する。
【0040】
【化5】

[一般式(3)中、Rは1価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【0041】
一般式(3)中、Rで示される1価の有機基としては、例えば、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜20の直鎖状、分枝状又は環状の脂肪族炭化水素基が好ましい。炭素数1〜20の直鎖状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基等の基が挙げられる。分枝状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基等の基が挙げられる。また、環状の脂肪族炭化水素基の具体例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の基が挙げられる。これらの中で、熱的安定性及び原料入手容易性の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基がより好ましい。
【0042】
また、芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜20であるものが好ましい。その具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等の基が挙げられる。これらの中で、熱的安定性及び原料入手容易性の観点から、フェニル基及びナフチル基がより好ましい。
【0043】
また、上記一般式(3)で表される化合物を加水分解縮合する際には、一般式(1)で表される化合物と共に、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせてもよい。
なお、上記第1のシラン化合物が上記一般式(3)で表される化合物を含む場合のその含有割合は、上記第1のシラン化合物全体に対して、10〜90質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがより好ましい。
【0044】
上述の一般式(1)で表される化合物と一般式(3)で表される化合物とを含むシラン化合物を加水分解縮合して得られる第1のシロキサン樹脂(シルセスキオキサン)の構造の具体例を下記一般式(4)に示す。なお、この具体例は、1種の一般式(1)で表される化合物(Rはメチル基)と、2種の一般式(3)で表される化合物(Rはそれぞれフェニル基とメチル基)とを加水分解縮合して得られるシロキサン樹脂の構造である。また、簡略化のため構造を平面的に示したが、当業者には理解されるように、実際のシロキサン樹脂は3次元網目構造を有する。さらに、添え字の”3/2”は、1個のSi原子に対して3/2個の割合でO原子が結合していることを示す。
【0045】
【化6】

ここで、一般式(4)中、a、b、cは、それぞれ各部位に対応する原料のモル比(モル%)を示し、aは0.5〜99、bは0.5〜99、cは0.5〜99である。ただし、a、b及びcの合計は100である。また、一般式(4)中のAは、2価の有機基を示す。
【0046】
上述の第1のシラン化合物の加水分解縮合は、例えば、次のような条件で行うことができる。
まず、加水分解縮合の際に用いる水の量は、一般式(1)で表される化合物1モル当たり0.01〜1000モルであることが好ましく、0.05〜100モルであることがより好ましい。この水の量が0.01モル未満では加水分解縮合反応が充分に進行しない傾向があり、水の量が1000モルを超えると加水分解中又は縮合中にゲル化物を生じる傾向がある。
【0047】
また、加水分解縮合の際には、触媒を使用してもよい。触媒としては、例えば、酸触媒、アルカリ触媒、金属キレート化合物を用いることができる。これらの中で、一般式(1)で表される化合物におけるアシロキシ基の加水分解を防止する観点から、酸触媒が好ましい。
【0048】
酸触媒としては、例えば、有機酸及び無機酸が挙げられる。有機酸としては、例えば、蟻酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸等が挙げられる。無機酸としては、例えば、塩酸、燐酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、フッ酸等が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0049】
このような触媒の使用量は、一般式(1)で表される化合物1モルに対して、0.0001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が、0.0001モル未満では、実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると加水分解縮合時に、ゲル化が促進される傾向にある。
【0050】
なお、第1のシロキサン樹脂の加水分解縮合において上述の触媒を用いたときには、得られる感光性樹脂組成物の安定性が悪化する可能性や、触媒を含むことにより他の材料への腐食等の影響が懸念される可能性がある。これらのような悪影響は、例えば、加える触媒の量を極力少なくして加水分解縮合を進めたり、加水分解縮合後に触媒を感光性樹脂組成物から取り除いたり、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させたりすることにより解消することができる。これらの操作を実施するための方法としては、従来公知の方法を用いることができる。触媒を取り除く方法としては、例えば、水洗法や蒸留法、イオンクロマトカラム法等が挙げられる。また、触媒を他の化合物と反応させて触媒としての機能を失活させる方法としては、例えば、触媒が酸触媒の場合、塩基を添加して酸塩基反応により中和する方法が挙げられる。
【0051】
このようにして得られる第1のシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性や、成形性等の観点から、重量平均分子量が500〜100000であることが好ましく、500〜50000であることがより好ましく、500〜10000であることが更に好ましく、500〜5000であることが特に好ましい。この重量平均分子量が、500未満では、シリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が、100000を超えると、徐々に溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0052】
加水分解縮合の際には、水とアルコールが副生するが、後述する第3のシロキサン樹脂の加水分解縮合の際に除去することが可能であり、後に除去してもよい。
【0053】
第二のシロキサン樹脂は、上記一般式(2)で表される化合物を含むシラン化合物を、加水分解縮合して得ることができる。この成分は、形成されるシリカ系被膜の基板に対する、接着性の向上や被膜の耐熱性及び強度を向上させることができる。上記成分は、従来公知のシラン化合物を用いることもできるが、形成されるシリカ系被膜の基板に対する接着性がさらに向上する点から、一般式(2)で表されるシラン化合物を含むことが好ましい。
【0054】
一般式(2)中、Rで示される有機基としては、例えば、芳香環、アミノ基又はエポキシ基を有する基、脂環式炭化水素基及び炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらの中で、接着性の観点から、アミノ基又はエポキシ基を有する基及びメチル基が好ましい。
【0055】
一般式(2)中、Xで示される加水分解性基が、アルコキシ基である一般式(2)で表される化合物(アルコキシシラン)としては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0056】
テトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等が挙げられる。
【0057】
トリアルコキシシランとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリイソブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリイソブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリイソブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリイソブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリイソブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリイソブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリイソブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロエチルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0058】
ジオルガノジアルコキシシランとしては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジフェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジフェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジフェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジフェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジメトキシシラン等が挙げられる。
【0059】
また、一般式(2)中の、Xがアルコキシ基であり、Rが炭素数1〜20のアルキル基である化合物としては、例えば、上記のものの他、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリイソプロポキシシリル)メタン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、ビス(トリイソプロポキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)プロパン、ビス(トリイソプロポキシシリル)プロパン等のビスシリルアルカンが挙げられる。
【0060】
一般式(2)中の、Xがアルコキシ基であり、Rが芳香環を有する基である化合物としては、例えば上記の他、ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、ビス(トリイソプロポキシシリル)ベンゼン等のビスシリルベンゼンが挙げられる。
【0061】
一般式(2)中の、Xがアルコキシ基であり、Rがアミノ基を有する基である化合物としては、例えば、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−アジドスルフォニルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
一般式(2)中の、Xがアルコキシ基であり、Rがエポキシ基を有する基である化合物としては、例えば、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
上述したような、一般式(2)で表される化合物の中で、接着性の観点から、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルトリエトキシシラン、及び、ジメチルジエトキシシランが特に好ましい。
【0064】
上述の一般式(2)で表されるシラン化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
また、一般式(2)で表されるシラン化合物の加水分解縮合は、加水分解に要する水の量、酸触媒の種類などは上述した第1のシロキサン樹脂の合成と同様な条件で行うことが出来る。酸触媒の添加量については一般式(2)で表される化合物1モルに対して、0.000001〜1モルの範囲であることが好ましい。この使用量が、0.000001モル未満では、実質的に反応が進行しない傾向にあり、1モルを超えると加水分解縮合時に、ゲル化が促進される傾向にある。また加水分解縮合後はシロキサン樹脂溶液中の酸触媒を取り除いても良いし除かなくても良い。酸触媒を取り除かない場合は、第2のシロキサン樹脂に含まれる酸触媒を、後述する第3のシロキサン樹脂の加水分解縮合に用いることができる。またその際は酸触媒の使用量を0.000001〜0.005モルの範囲で用いることが好ましい。
【0066】
このようにして得られる第2のシロキサン樹脂は、溶媒への溶解性や成形性等の観点から、重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、500〜5000であることがより好ましく、500〜3000であることが更に好ましく、500〜2000であることが特に好ましい。この重量平均分子量が500未満では、シリカ系被膜の成膜性が劣る傾向にあり、この重量平均分子量が10000を超えると、溶媒との相溶性が低下する傾向にある。
【0067】
これら第1のシロキサン樹脂溶液及び第2のシロキサン樹脂溶液は、溶媒中で混合して加水分解縮合を行い、第3のシロキサン樹脂とされる。このとき、シロキサン樹脂の分子量が増加し、シロキサン樹脂中のシラノール量が少なくなり、加水分解縮合が行われにくくなるために、保存安定性が増すと考えられる。また、シロキサン樹脂間の相溶性が向上し、形成されるシリカ系被膜の基板に対する塗布性が良くなる。
【0068】
さらに、シロキサン樹脂の分子量が増加するため、その分子量を調整することによって、所望のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)アルカリ水溶液濃度に対する溶解速度を適宜調整することが可能となる。
加えて、分子量の違う第3のシロキサン樹脂をそれぞれ混合すれば、所望の溶解速度の範囲内に管理することも可能である。このことによって、感光性樹脂組成物の未露光部の溶解速度と露光部の溶解速度を調整できるため、良好な解像性を得ることができる。
【0069】
第3のシロキサン樹脂の加水分解縮合の際には、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂の混合溶液の加熱処理を行う。加熱処理方法は、公知の方法で行うことができる。具体的には、混合溶液を入れた容器を温浴やオイル中で加熱処理することができる。
【0070】
加熱処理する温度は、分子量の制御と溶液への安定性および、シロキサン樹脂から脱離する水やアルコールなど低沸成分の除去という観点から、70〜200℃であることが好ましく、80〜180℃であることがより好ましく、90〜160℃であることが更に好ましい。この加熱処理温度が、70℃未満では、分子量を上げるために長い時間が必要となる傾向にあり、200℃を超えると、分子量の制御が困難となり、ゲル化する傾向にある。
【0071】
また、加水分解縮合は、加水分解縮合に要する水の量、酸触媒の種類などは上述した第1のシロキサン樹脂、第2のシロキサン樹脂の合成と同様な条件で行うことが出来る。また第2のシロキサン樹脂に含まれる酸触媒をそのまま用いて反応を行うことができる。
【0072】
このとき、加水分解縮合によってシロキサン樹脂から脱離したアルコールや水などの低沸成分を除去しながら反応させることで、酸触媒の添加量が少なくても、効率よく加水分解縮合を進めることができる。低沸成分の除去はシロキサン樹脂溶液から加熱などによって常圧で除去しても良いし、また減圧しながら除去しても良い。
【0073】
また、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂の配合割合は、耐熱性、溶液への安定性の観点から、第1のシロキサン樹脂の固形分を基準として、5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましく、20〜50質量%であることが更に好ましく、30〜50質量%であることが特に好ましい。この配合割合が、5質量%未満では、耐熱性が劣る傾向にあり、60質量%を超えると、溶液の安定性が低下する傾向にある。
【0074】
また、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂を混合した場合の溶液濃度は、分子量の制御の観点から、シロキサン樹脂の固形分全体を基準として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましく、20〜30質量%であることが更に好ましい。この配合割合が、5質量%未満では、分子量を上げるために長い時間が必要となる傾向にあり、50質量%を超えると、短時間で分子量が上がってしまい分子量の制御が困難となる傾向にある。
【0075】
<(b)成分>
(b)成分は、(a)及び(c)成分を溶解する溶媒である。その具体例としては、非プロトン性溶媒及びプロトン性溶媒が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のケトン系溶媒;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルモノ−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル等のエステル系溶媒;エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のエーテルアセテート系溶媒;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルスルホキシド、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの中で、形成されるシリカ系被膜の厚膜化が可能となり、かつ感光性樹脂組成物の溶液安定性が向上する観点から、エーテル系溶媒、エーテルアセテート系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。これらの中でも塗布ムラやはじきを抑える観点から、エーテルアセテート系溶媒が最も好ましく、エーテル系溶媒が次に好ましく、ケトン系溶媒がその次に好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
プロトン性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル等のエステル系溶媒が挙げられる。これらの中で、保管安定性の観点から、アルコール系溶媒が好ましい。さらに、塗布ムラやはじきを抑える観点からは、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールプロピルエーテルが好ましい。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
(b)成分は、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含むことが好ましい。これにより、かかる感光性樹脂組成物を基板上に塗布する際の塗布ムラやはじきを抑えることができる。
【0079】
上述の(b)成分の種類は、(a)成分及び(c)成分の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、後述する(c)成分のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルがナフトキノンジアジドスルホン酸とフェノール類とのエステルであり、脂肪族炭化水素系溶媒への溶解性が低い場合には、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等を適宜選択することができる。
【0080】
このような(b)成分の配合量は、(a)成分及び(c)成分の種類等に応じて適宜調節することができるが、例えば、感光性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.1〜90質量%用いることができる。
【0081】
(b)成分を感光性樹脂組成物中に加える方法としては、従来公知の方法を用いることができる。その具体例としては、(a)成分を調製する際の溶媒として用いる方法、(a)成分を調製後、添加する方法、溶媒交換を行う方法、(a)成分を溶媒留去等で取り出した後に(b)成分を加える方法等が挙げられる。
【0082】
<(c)成分>
(c)成分は、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルである。この成分は、感光性樹脂組成物にポジ型感光性を付与するためのものである。ポジ型感光性は、例えば次のようにして発現する。
【0083】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルに含まれるナフトキノンジアジド基は、本来アルカリ現像液に対する溶解性を示さず、さらにシロキサン樹脂のアルカリ現像液への溶解を阻害する。しかし、紫外線又は可視光を照射することにより、ナフトキノンジアジド基は、インデンカルボン酸構造へと変化してアルカリ現像液に高い溶解性を示すようになる。よって、(c)成分を配合することにより、露光部がアルカリ現像液により除去されるポジ型感光性が発現する。
【0084】
ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとしては、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸とフェノール類又はアルコール類とのエステルが挙げられる。この中で、上記(a)成分との相溶性、形成されるシリカ系被膜の透明性の観点から、ナフトキノンジアジドスルホン酸と1価又は多価アルコール類とのエステルが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、例えば、ナフトキノン−1,2−ジアジド−5−スルホン酸、ナフトキノン−1,2−ジアジド−4−スルホン酸及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0085】
1価又は多価アルコール類としては、炭素数3〜20のものが好ましい。1価又は多価アルコール類の炭素数が1又は2である場合には、得られるナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが感光性樹脂組成物中で析出したり、(c)成分との相溶性が低かったりする傾向がある。また、1価又は多価アルコール類の炭素数が20を超える場合には、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル分子中のナフトキノンジアジド部位の占める割合が小さいため、感光特性が低下する傾向がある。
【0086】
炭素数3〜20の1価アルコール類の具体例としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール、ベンジルアルコール、シクロヘキシルアルコール、シクロヘキサンメタノール、シクロヘキサンエタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール、アダマンタンメタノール、ノルボルナン−2−メタノール、テトラフルフリルアルコール、2−メトキシエタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノメチルエーテル、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノエチルエーテル、重合度1〜10のポリプロレングリコールモノメチルエーテル、重合度1〜10のポリプロレングリコールモノエチルエーテル、さらにアルキル基がプロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソアミル、ヘキシル、シクロヘキシル等である重合度1〜10のポリプロレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0087】
炭素数3〜20の2価アルコール類の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、p−キシリレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2−ジイソアミル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジイソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−オクチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオールが挙げられる。
【0088】
炭素数3〜20の価数が3以上のアルコール類の具体例としては、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、糖類、これらの多価アルコールのエチレングリコール,プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール付加体が挙げられる。
【0089】
上述のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルは、従来公知の方法により得ることが可能であり、例えば、ナフトキノンジアジドスルホン酸塩化物とアルコールとを塩基存在下で反応させることにより得ることができる。
【0090】
また反応溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒、THF、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセート等のエーテルアセテート系溶媒、アセトン、イソブチルケトン等のケトン系溶媒、ヘキサン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0091】
この反応に用いる塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン等の第三級アルキルアミン、ピリジン、2,6−ルチジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、カリウム−tert−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。
【0092】
上述の(c)成分の配合割合は、感光特性等の観点から、感光性樹脂組成物の固形分全体を基準として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが更に好ましい。(c)成分の配合割合が1質量%以上の場合には、アルカリ現像液への溶解阻害作用が向上し、感光性が向上する傾向にある。また、(c)成分の配合割合が30質量%以下の場合には、塗膜を形成する際に(c)成分が析出しにくく、塗膜が均一となる傾向にある。さらに、このような場合には、感光剤としての(c)成分の濃度が高すぎず、形成される塗膜の表面近傍でのみ光の吸収が起こるということがないため、塗膜の下部まで露光時の光が到達し感光特性が向上する傾向にある。
【0093】
なお、上述の感光性樹脂組成物を電子部品等に使用する場合は、アルカリ金属やアルカリ土類金属を含有しないことが望ましく、含まれる場合でも組成物中のそれらの金属イオン濃度が1000ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。これらの金属イオン濃度が1000ppmを超えると、組成物から得られるシリカ系被膜を有する電子部品に金属イオンが流入し易くなって、電気性能そのものに悪影響を与えるおそれがある。したがって、必要に応じて、例えば、イオン交換フィルタ等を使用してアルカリ金属やアルカリ土類金属を組成物中から除去することが有効である。しかし、光導波路や他の用途等に用いる際は、その目的を損なわないのであればこの限りではない。
【0094】
また、上述の感光性樹脂組成物は、必要に応じて水を含んでいてもよいが、目的とする特性を損なわない範囲であることが好ましい。
【0095】
(感光性樹脂組成物の製造方法)
第3のシロキサン樹脂と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、第3のシロキサン樹脂が溶解する溶媒とを同時に又は任意の順で混合する工程とを有する製造方法により作製することができる。
【0096】
(シリカ系被膜の形成方法)
本発明のシリカ系被膜の形成方法は、上述した本発明の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有する。また、本発明のシリカ系被膜の形成方法は、上述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、塗膜の露光された所定部分を除去する除去工程と、所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程とを有していてもよい。以下、各工程について説明する。
【0097】
<塗布工程>
まず、感光性樹脂組成物を塗布するための基板を用意する。基板としては、表面が平坦なものであっても、電極等が形成され凹凸を有しているものであってもよい。これらの基板の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリル、ナイロン、ポリエーテルサルフォン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース等の有機高分子等が挙げられる。また、この有機高分子等がフィルム状になっているものを基板として用いることもできる。
【0098】
上述の感光性樹脂組成物は、このような基板上に従来公知の方法によって塗布することが可能である。塗布方法の具体例としては、スピンコート法、スプレー法、ロールコート法、回転法、スリット塗布法等が挙げられる。これらの中で、一般に成膜性及び膜均一性に優れるスピンコート法により感光性樹脂組成物を塗布することが好ましい。
【0099】
スピンコート法を用いる場合には、好ましくは300〜3000回転/分、より好ましくは400〜2000回転/分で、基板上に上述の感光性樹脂組成物をスピンコートして塗膜を形成する。この回転数が300回転/分未満では膜均一性が悪化する傾向があり、3000回転/分を超えると成膜性が悪化するおそれがある。
【0100】
このようにして形成される塗膜の膜厚は、例えば次のようにして調整することができる。まず、スピンコートの際に、回転数と塗布回数を調整することにより塗膜の膜厚を調整することができる。すなわち、スピンコートの回転数を下げたり塗布回数を増やすことにより、塗膜の膜厚を厚くすることができる。また、スピンコートの回転数を上げたり塗布回数を減らしたりすることにより、塗膜の膜厚を薄くすることができる。
【0101】
さらに、上述の感光性樹脂組成物において、(a)成分の濃度を調整することにより、塗膜の膜厚を調整することもできる。例えば、(a)成分の濃度を高くすることにより、塗膜の膜厚を厚くすることができる。また、(a)成分の濃度を低くすることにより、塗膜の膜厚を薄くすることができる。
【0102】
以上のようにして塗膜の膜厚を調整することにより、最終生成物であるシリカ系被膜の膜厚を調整することができる。シリカ系被膜の好適な膜厚は使用用途により異なる。例えば、シリカ系被膜の膜厚は、LSI等の層間絶縁膜に使用する際には0.01〜2μm;パッシベーション層に使用する際には2〜40μm;液晶用途に使用する際には0.1〜20μm;フォトレジストに使用する際には0.1〜2μm;光導波路に使用する際の膜厚は1〜50μm、であることが好ましい。一般的に、このシリカ系被膜の膜厚は、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜5μmであることがより好ましく、0.01〜3μmであることが更に好ましく、0.05〜3μmであることが特に好ましく、0.1〜3μmであることが極めて好ましい。本発明の感光性樹脂組成物は、0.5〜3.0μmの膜厚のシリカ系被膜に好適に用いることができ、0.5〜2.5μmの膜厚のシリカ系被膜により好適に用いることができ、1.0〜2.5μmの膜厚のシリカ系被膜に特に好適に用いることができる。
【0103】
上述のようにして基板上に塗膜を形成した後に、塗膜を乾燥して、塗膜中の有機溶媒を除去する。乾燥には従来公知の方法を用いることができ、例えばホットプレートを用いて乾燥することができる。乾燥温度は、50〜150℃であることが好ましく、70〜140℃がより好ましく、80℃〜130℃が更に好ましい。この乾燥温度が50℃未満では、有機溶媒の除去が十分に行われない傾向がある。また、乾燥温度が150℃を超えると膜中の感光剤が分解して透過率が低下したり、塗膜の硬化が進行することによる現像液に対する溶解性が低下して露光感度低下、解像度低下を伴う傾向にある。
【0104】
<減圧乾燥工程>
また、塗布工程により基板上に塗膜を形成した後で、ホットプレート等で膜中の溶媒を除去する前に減圧乾燥工程を有してもよい。この減圧乾燥により、成膜したときの面内膜厚ばらつきが小さくなったり、現像後の膜厚ばらつきが小さくなる効果がある。減圧乾燥工程の減圧度は150Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、50Pa以下が更に好ましく、20Pa以下が極めて好ましい。また、減圧乾燥の温度は0〜100℃が好ましく、10〜50℃がより好ましく、20〜30℃が更に好ましい。減圧度が150Pa以上だと溶媒の除去が十分でないことがある。また、温度が100℃以上だと面内の膜厚ばらつきが大きくなり、0℃以下だと溶媒の除去が不十分になる傾向がある。
【0105】
<第1露光工程>
次に、得られた塗膜の所定部分を露光する。塗膜の所定部分を露光する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、所定のパターンのマスクを介して塗膜に放射線を照射することにより、所定部分を露光することができる。ここで用いられる放射線としては、例えばg線(波長436nm)、i線(波長365nm)等の紫外線、KrFエキシマレーザー等の遠紫外線、シンクロトロン放射線等のX線、電子線等の荷電粒子線が挙げられる。これらのうち、g線及びi線が好ましい。露光量としては、通常10〜2000mJ/cm、好ましくは20〜200mJ/cmである。
【0106】
<除去工程>
続いて、塗膜の露光された所定部分(以下、「露光部」ともいう。)を除去して、所定のパターンを有する塗膜を得る。塗膜の露光部を除去する方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、現像液を用いて現像処理して露光部を除去することにより、所定のパターンを有する塗膜を得ることができる。ここで用いられる現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第二級アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類、ジメチルエタノ−ルアミン、トリエタノ−ルアミン等のアルコ−ルアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第四級アンモニウム塩又はピロ−ル、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−(5.4.0)−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−(4.3.0)−5−ノナン等の環状アミン類を水に溶解したアルカリ水溶液が好ましく使用される。また該現像液には、水溶性有機溶媒、例えばメタノ−ル、エタノ−ル等のアルコ−ル類や界面活性剤を適量添加して使用することもできる。さらに本発明の感光性樹脂組成物を溶解する各種有機溶媒も現像液として使用することができる。
【0107】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法等の適宜の方法を利用することができる。現像処理後に、パターニングされた膜に対し、例えば流水洗浄によるリンス処理を行ってもよい。
【0108】
<第2露光工程>
さらに、必要な場合には、除去工程後に残った塗膜の全面を露光する。これにより、上述の可視光領域に光学吸収を有する(c)成分が分解して、可視光領域における光学吸収が十分に小さい化合物が生成する。よって、最終生成物であるシリカ系被膜の透明性が向上する。露光には、第1露光工程と同様の放射線を用いることができる。露光量としては、(c)成分を完全に分解する必要があるため、通常100〜3000mJ/cm、好ましくは200〜2000mJ/cmである。
【0109】
<加熱工程>
最後に、除去工程後に残った塗膜を加熱して最終硬化を行う。この加熱工程により、最終生成物であるシリカ系被膜が得られる。加熱温度は、例えば、250〜500℃であることが好ましく、250〜400℃であることがより好ましい。この加熱温度が250℃未満では、十分に塗膜が硬化されない傾向にあり、500℃を超えると、金属配線層がある場合に、入熱量が増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0110】
なお、加熱工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性雰囲気下で行うのが好ましく、この場合、酸素濃度が1000ppm以下であると好ましい。また、加熱時間は2〜60分が好ましく、2〜30分であるとより好ましい。この加熱時間が2分未満では、十分に塗膜が硬化されない傾向にあり、60分を超えると、入熱量が過度に増大して配線金属の劣化が生じるおそれがある。
【0111】
さらに、加熱のための装置としては、石英チューブ炉その他の炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール(RTA)等の加熱処理装置又はEB、UVを併用した加熱処理装置を用いることが好ましい。
【0112】
上述の工程を経て形成されたシリカ系被膜は、例えば350℃の加熱処理を行っても十分な高い耐熱性、高い透明性を有するとともに、耐溶剤性に優れる。なお、従来知られているノボラック樹脂等のフェノール系樹脂及びキノンジアジド系感光剤を含有する組成物、あるいはアクリル系樹脂及びキノンジアジド系感光剤材料を含有する組成物から形成される被膜は、一般的に230℃程度が耐熱温度の上限であり、この温度を超えて加熱処理を行うと黄色や褐色に着色し、透明性が著しく低下する。
【0113】
上述の工程を経て形成されたシリカ系被膜は、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、有機EL、フィールドエミッションディスプレイ等の平面表示装置の層間絶縁膜として好適に使用できる。また、かかるシリカ系被膜は、半導体素子などの層間絶縁膜としても好適に使用できる。さらに、かかるシリカ系被膜は、半導体素子のウエハコート材料(表面保護膜、バンプ保護膜、MCM(multi−chip module)層間保護膜、ジャンクションコート)、パッケージ材(封止材、ダイボンディング材)等の電子デバイス用部材としても好適に使用することができる。
【0114】
上述のシリカ系被膜を備える本発明の電子部品の具体例としては、図1に示すメモリセルキャパシタが挙げられ、上述のシリカ系被膜を備える本発明の平面表示装置の具体例としては、図2及び3に示すアクティブマトリクス基板を有する平面表示装置が挙げられる。
【0115】
図1は、本発明の電子部品の一実施形態としてのメモリセルキャパシタを示す模式断面図である。図1に示すメモリセルキャパシタ10は、その表面に拡散領域1A及び1Bが形成されたシリコンウェハ1(基板)と、シリコンウェハ1上の拡散領域1A及び1Bの間の位置に設けられたゲート絶縁膜2Bと、ゲート絶縁膜2B上に設けられたゲート電極3と、ゲート電極3の上方に設けられた対向電極8Cと、ゲート電極3と対向電極8Cとの間にシリコンウェハ1側から順に積層された層間絶縁膜5及び7(絶縁被膜)とを有する。
【0116】
拡散領域1A上にはゲート絶縁膜2B及びゲート電極3の側壁と接する側壁酸化膜4Aが形成されている。拡散領域1B上にはゲート絶縁膜2B及びゲート電極3の側壁と接する側壁酸化膜4Bが形成されている。拡散領域1Bのゲート絶縁膜2Bとは反対側において、素子分離のためのフィールド酸化膜2Aがシリコンウェハ1と層間絶縁膜5の間に形成されている。
【0117】
層間絶縁膜5は、ゲート電極3、シリコンウェハ1及びフィールド酸化膜2Aを覆って形成されている。層間絶縁膜5のシリコンウェハ1とは反対側の面は平坦化されている。層間絶縁膜5は拡散領域1A上に位置する側壁を有しており、この側壁と拡散領域1Aを覆うとともに、層間絶縁膜5のシリコンウェハ1とは反対側の面の一部を覆うように延在するビット線6が形成されている。層間絶縁膜5上に設けられた層間絶縁膜7はビット線6を覆うように延びて形成されている。層間絶縁膜5及び層間絶縁膜7によって、ビット線6が埋め込まれたコンタクトホール5Aが形成されている。
【0118】
層間絶縁膜7のシリコンウェハ1とは反対側の面も平坦化されている。拡散領域1B上の位置において層間絶縁膜5及び層間絶縁膜7を貫通するコンタクトホール7Aが形成されている。コンタクトホール7A内には蓄積電極8Aが埋め込まれ、蓄積電極8Aはさらに、層間絶縁膜7のシリコンウェハ1とは反対側の面のうちコンタクトホール7A周囲の部分を覆うように延在している。対向電極8Cは蓄積電極8A及び層間絶縁膜7を覆って形成されており、対向電極8Cと蓄積電極8Aの間にはキャパシタ絶縁膜8Bが介在している。
【0119】
層間絶縁膜5及び7は、上述の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜である。層間絶縁膜5及び7は、例えば、感光性樹脂組成物をスピンコート法により塗布する工程を経て形成される。層間絶縁膜5及び7は同一の組成を有していても異なる組成を有していてもよい。
【0120】
図2は、本発明の平面表示装置の一実施形態におけるアクティブマトリクス基板の1画素部分の構成を示す平面図である。図2において、アクティブマトリクス基板20には、複数の画素電極21がマトリクス状に設けられており、これらの画素電極21の周囲を通り、互いに直交するように、走査信号を供給するための各ゲート配線22と表示信号を供給するためのソース配線23が設けられている。これらのゲート配線22とソース配線23はその一部が画素電極21の外周部分とオーバーラップしている。また、これらのゲート配線22とソース配線23の交差部分において、画素電極21に接続されるスイッチング素子としてのTFT24が設けられている。このTFT24のゲート電極32にはゲート配線22が接続され、ゲート電極に入力される信号によってTFT24が駆動制御される。また、TFT24のソース電極にはソース配線23が接続され、TFT24のソース電極にデータ信号が入力される。さらに、TFT24のドレイン電極は、接続電極25さらにコンタクトホール26を介して画素電極21と接続されるとともに、接続電極25を介して付加容量の一方の電極である付加容量電極(図示せず)と接続されている。この付加容量の他方の電極である付加容量対向電極27は共通配線に接続されている。
【0121】
図3は、図2のアクティブマトリクス基板におけるIII−III’断面図である。図3において、透明絶縁性基板31上に、ゲート配線22に接続されたゲート電極32が設けられ、その上を覆ってゲート絶縁膜33が設けられている。その上にはゲート電極32と重畳するように半導体層34が設けられ、その中央部上にチャネル保護層35が設けられている。このチャネル保護層35の両端部および半導体層34の一部を覆い、チャネル保護層35上で分断された状態で、ソース電極36aおよびドレイン電極36bとなるn+Si層が設けられている。一方のn+Si層であるソース電極36aの端部上には、透明導電膜37aと金属層38aとが設けられて2層構造のソース配線23となっている。また、他方のn+Si層であるドレイン電極36bの端部上には、透明導電膜37bと金属層38bとが設けられ、透明導電膜37bは延長されて、ドレイン電極36bと画素電極21とを接続するとともに付加容量の一方の電極である付加容量電極(図示せず)に接続される接続電極25となっている。さらに、TFT24、ゲート配線22およびソース配線23、接続電極25の上部を覆うように層間絶縁膜39が設けられている。この層間絶縁膜39上には、画素電極21となる透明導電膜が設けられ、層間絶縁膜39を貫くコンタクトホール26を介して、接続電極25によりTFT24のドレイン電極36bと接続されている。
【0122】
本実施形態のアクティブマトリクス基板は以上のように構成され、このアクティブマトリクス基板は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0123】
まず、ガラス基板などの透明絶縁性基板31上に、ゲート電極32、ゲート絶縁膜33、半導体層34、チャネル保護層35、ソース電極36aおよびドレイン電極36bとなるn+Si層を順次成膜して形成する。ここまでの作製プロセスは、従来のアクティブマトリクス基板の製造方法と同様にして行うことができる。
【0124】
次に、ソース配線23および接続電極25を構成する透明導電膜37a、37bおよび金属層38a、38bを、スパッタ法により順次成膜して所定形状にパターニングする。
【0125】
さらに、その上に、層間絶縁膜39となる上述の感光性樹脂組成物をスピンコート法により例えば2μmの膜厚で形成する。形成された塗膜に対して、マスクを介して露光し、アルカリ性の溶液によって現像処理することにより、層間絶縁膜39が形成される。この際、露光された部分のみがアルカリ性の溶液によってエッチングされ、層間絶縁膜39を貫通するコンタクトホール26が形成されることになる。
【0126】
その後、画素電極21となる透明導電膜をスパッタ法により形成し、パターニングする。これにより画素電極21は、層間絶縁膜39を貫くコンタクトホール26を介して、TFT24のドレイン電極36bと接続されている透明導電膜38bと接続されることになる。このようにして、上述のアクティブマトリクス基板を製造することができる。
【0127】
したがって、このようにして得られたアクティブマトリクス基板は、ゲート配線22、ソース配線23およびTFT24と、画素電極21との間に厚い膜厚の層間絶縁膜39が形成されているので、各配線22、23およびTFT24に対して画素電極21をオーバーラップさせることができるとともにその表面を平坦化させることができる。このため、アクティブマトリクス基板と対向基板の間に液晶を介在させた平面表示装置の構成とした時に、開口率を向上させることができると共に、各配線22、23に起因する電界を画素電極21でシールドしてディスクリネーションを抑制することができる。
【0128】
また、層間絶縁膜39となる、上述の感光性樹脂組成物は、比誘電率の値が3.0から3.8と無機膜(窒化シリコンの比誘電率8)の比誘電率に比べて低く、また、その透明度も高くスピン塗布法により容易に厚い膜厚にすることができる。このため、ゲート配線22と画素電極21との間の容量および、ソース配線23と画素電極21との間の容量を低くすることができて時定数が低くなり、各配線22、23と画素電極21との間の容量成分が表示に与えるクロストークなどの影響をより低減することができて良好で明るい表示を得ることができる。また、露光およびアルカリ現像によってパターニングを行うことにより、コンタクトホール26のテーパ形状を良好にすることができ、画素電極21と接続電極(透明導電膜)37bとの接続を良好にすることができる。さらに、上述の感光性樹脂組成物を用いることにより、スピンコート法を用いて薄膜が形成できるので、数μmという膜厚の薄膜を容易に形成でき、さらに、パターニングにフォトレジスト工程も不要であるので、生産性の点で有利である。ここで、層間絶縁膜39として用いた上述の感光性樹脂組成物は、塗布前に着色しているものであるが、パターニング後に全面露光処理を施してより透明化することができる。このように、樹脂の透明化処理は、光学的に行うことができるだけではなくて、化学的にも行うことが可能である。
【0129】
本実施形態で層間絶縁膜39として用いた、上述の感光性樹脂組成物の露光には、i線(波長365nm)、h線(波長405nm)及びg線(波長436nm)の輝線を含む水銀灯の光線を用いるのが一般的である。感光性樹脂組成物としては、これらの輝線のなかで最もエネルギーの高い(波長の最も短い)i線に感放射線性(吸収ピーク)を有する感光性樹脂組成物を用いることが好ましい。コンタクトホールの加工精度を高くするとともに、感光剤に起因する着色を最小限に抑制することができる。また、エキシマレーザーからの短波長の紫外線を用いてもよい。
【0130】
以下、本発明に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【実施例】
【0131】
(第1のシロキサン樹脂の合成)
(合成例1)第1のシロキサン樹脂A’:(下記式(10)で表される化合物;上記一般式(1)に相当)の合成
【0132】
【化7】

[式(10)中、20,50,30は、それぞれ各部位に対応する原料のモル比を示す。]
【0133】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた500mL4つ口フラスコに、トルエン55.8g及び水35.7gを仕込み、35%塩酸3.12g(0.03モル)を加えた。次に、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン13.5g(0.0605モル)、フェニルトリメトキシシラン30.0g(0.151モル)及びメチルトリメトキシシラン12.4g(0.0908モル)のトルエン27.9g溶液を20〜30℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成させた。このときの反応溶液をGC(ガスクロマトグラフィー)で分析した結果、原料は残っていないことが確認された。次に、反応溶液にトルエンと水を加えて生成物を有機相に抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後に、水で溶液が中性になるまで洗浄した。その後、有機相を回収し、トルエンを除去して、粘性液体状のシロキサン樹脂34.6gを得た。さらに、得られたシロキサン樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分濃度が50質量%になるように調整されたシロキサン樹脂の溶液を得た。
上記シロキサン樹脂とメチルイソブチルケトン69.2gとを300mL分液漏斗に仕込み溶液を均一にした後に、イオン交換水17.3gを加え抽出を行った。3回水洗した後、水相のpHが7.0となり、有機相を回収し濃縮することで粘性液体状の目的のシロキサン樹脂A69.2gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Aの重量平均分子量を測定すると1050であった。
【0134】
(合成例2)第1のシロキサン樹脂B(下記式(5)で表される化合物;上記一般式(1)に相当)の合成
【0135】
【化8】

[式(5)中、20,50,30は、それぞれ各部位に対応する原料のモル比を示す。]
【0136】
フェニルトリメトキシシラン30.0g(0.151モル)を2−ノルボルニルトリエトキシシラン39.0g(0.151モル)に変更した以外は、上記シロキサン樹脂Aの合成方法と同様の操作で目的の50質量%に調整した第1のシロキサン樹脂B溶液78.4gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Bの重量平均分子量を測定すると1020であった。
【0137】
(合成例3)第1のシロキサン樹脂C(下記式(20)で表される化合物;上記一般式(1)に相当)の合成
【0138】
【化9】

[式(20)中、20,50,30は、それぞれ各部位に対応する原料のモル比を示す。]
【0139】
3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン13.5g(0.0605モル)を(5−アセトキシノルボルナ−2(又は3)−イル)トリエトキシシラン39.0g(0.0605モル)に変更した以外は、上記シロキサン樹脂Aの合成方法と同様の操作で目的の50質量%に調整した第1のシロキサン樹脂C溶液78.4gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Cの重量平均分子量を測定すると1050であった。
【0140】
(第2のシロキサン樹脂の合成)
(合成例4)第2のシロキサン樹脂Dの合成:下記一般式(6)で表される化合物;上記一般式(2)に相当)の合成
【0141】
【化10】

【0142】
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1000mL4つ口フラスコに、テトラエトキシシラン131.5g、メチルトリエトキシシラン169.0g及びジエトキシジメチルシラン46.9gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート123.5gに溶解させた溶液を仕込み、60%硝酸0.04gをイオン交換水97.2gに溶解させた硝酸水溶液を攪拌下で60分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させ、固形分濃度が20%のシロキサン樹脂Dの溶液568.2gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Dの重量平均分子量を測定すると1200であった。
【0143】
(合成例5)比較用第2のシロキサン樹脂Eの合成:上記一般式(6)で表される化合物;上記一般式(2)に相当)の合成
【0144】
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1000mL4つ口フラスコに、テトラエトキシシラン189.3g、メチルトリエトキシシラン243.3g及びジエトキシジメチルシラン67.6gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート258.9gに溶解させた溶液を仕込み、0.6441%硝酸水溶液140.9gを攪拌下で60分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させ、溶液897.3gを得た。この溶液をさらにエバポレータで低沸成分を留去し、留去終了後、溶液の重量は464.0gであった。この溶液にさらにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート253.8g追加し、25質量%に調整された比較用第2のシロキサン樹脂溶液717.8gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Eの重量平均分子量を測定すると1250であった。
【0145】
(第3のシロキサン樹脂の合成)
(合成例6)第3のシロキサン樹脂F(加水分解縮合処理した第3のシロキサン樹脂に相当)の合成
【0146】
撹拌機、環流冷却器及び温度計を備えた300mL4つ口フラスコに、シロキサン樹脂A:37.5gとシロキサン樹脂D:85.2g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:33.5gを仕込み室温(25℃)で溶解した。その後、オイルバス中で混合溶液の温度が150℃の条件で7時間、加熱処理を行った。低沸成分は常圧で留去した。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを44.8g追加して室温で放置し冷却を行い、25質量%に調整したシロキサン樹脂溶液F:144.9gを得た。
得られたシロキサン樹脂Fの重量平均分子量を測定すると、10860であった。また、この溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、120℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAHへの溶解速度は5.3nm/secであった。
【0147】
(合成例7)第3のシロキサン樹脂G(合成例6のシロキサン樹脂A、Dの配合比率を変えたもの)の合成
【0148】
撹拌機、環流冷却器及び温度計を備えた300mL4つ口フラスコに、シロキサン樹脂A:30.0gとシロキサン樹脂D:159.1g,及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:43.3gを仕込み室温で溶解した。その後、オイルバス中で混合溶液の温度が150℃の条件で8時間、加熱処理を行った。低沸成分は常圧で留去した。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを87.0g追加して室温で放置し冷却を行い、25質量%に調整したシロキサン樹脂溶液G:185.5gを得た。
得られたシロキサン樹脂Gの重量平均分子量を測定すると、12330であった。また、この溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、120℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)への溶解速度は4.7nm/secであった。
【0149】
(合成例8)第3のシロキサン樹脂H(合成例6のシロキサン樹脂AをBに変えたもの)の合成
【0150】
シロキサン樹脂A:37.5gをシロキサン樹脂B:37.5gに変えた以外は上記合成例6と同様の操作で合成を行い、25質量%に調整したシロキサン樹脂H:142.7gを得た。
得られたシロキサン樹脂Hの重量平均分子量を測定すると、11580あった。また、この溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、115℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAHへの溶解速度は9.7nm/secであった。
【0151】
(合成例9)シロキサン樹脂I(合成例6のシロキサン樹AをCに変えたもの)の合成
【0152】
シロキサン樹脂A:37.5gをシロキサン樹脂C:37.5gに変えた以外は合成例6と同様の操作で合成を行い、25質量%に調整したシロキサン樹脂溶液I:143.3gを得た。
得られたシロキサン樹脂Iの重量平均分子量を測定すると、10930あった。また、この溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、115℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAHへの溶解速度は12.6nm/secであった。
【0153】
(合成例10)比較用シロキサン樹脂J(前記シロキサン樹脂Dの合成時において低沸成分を除去していないもの)の合成
【0154】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた300mL4つ口フラスコに、シロキサン樹脂A67.5g及び比較シロキサン樹脂D126.3g、10%硝酸27.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート97.9gを仕込み、95℃で5時間加熱攪拌した。次に、反応溶液にメチルイソブチルケトンと水を加えて抽出した後、有機相を回収し、メチルイソブチルケトンを除去して、粘性液体状のシロキサン樹脂324.8gを得た。さらに、得られたシロキサン樹脂をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解し、固形分濃度が25質量%になるように調整された比較シロキサン樹脂Jの溶液を得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Jの重量平均分子量を測定すると6800であった。そしてこの溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、115℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAHへの溶解速度は11.7nm/secであった。
【0155】
(合成例11)比較用シロキサン樹脂K(前記シロキサン樹脂Fの分子量が低いもの)の合成
【0156】
撹拌機、環流冷却器及び温度計を備えた2000mL4つ口フラスコに、シロキサン樹脂A:50.0gとシロキサン樹脂B:113.6,及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:44.7gを仕込み室温で溶解した。その後、オイルバス中で混合溶液の温度が150℃の条件で4時間、加熱処理を行った。低沸成分は常圧で留去した。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを59.8g追加して室温で放置し冷却を行い、25質量%の加熱処理したシロキサン樹脂K:168.4gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Kの重量平均分子量を測定すると6450であった。そしてこの溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、115℃の温度で溶媒を除去した被膜の2.38%TMAHへの溶解速度は58.9nm/secであった。
【0157】
(合成例12)比較用シロキサン樹脂L(前記シロキサン樹脂Dの分子量を上げたもの)の合成
【0158】
撹拌機、環流冷却器及び温度計を備えた100mL4つ口フラスコに、シロキサン樹脂D:56.8g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:16.3gを仕込み室温で溶解した。その後、オイルバス中で混合溶液の温度が130℃の条件で20時間、加熱処理を行った。低沸成分は常圧で留去した。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを10.9g追加して室温で放置し冷却を行い、25質量%に調整したシロキサン樹脂L:47.1gを得た。また、GPC法によりシロキサン樹脂Lの重量平均分子量を測定すると25200であった。そしてこの溶液をシリコンウエハの基板上に、1100回転で30秒間塗布し、120℃の温度で溶媒を除去した膜の2.38%TMAHへの溶解速度は11.2nm/secであった。
【0159】
(ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルの合成)
(合成例13)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA(上記(c)成分に相当)の合成
【0160】
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1000mL4つ口フラスコ中で、乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製、トリスフェノールノボラック)21.23g(0.05mol)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド37.62g(0.14mol)とを1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温(25℃)にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.58g(0.154mol)を、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下終了後、30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、濾液を水に投入した。その後、析出した沈殿物を濾過で集めた。この沈殿物を真空乾燥機で乾燥させ、固体物(ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA)48.36gを得た。
【0161】
(合成例14)ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルB(上記(c)成分に相当)の合成
【0162】
撹拌機、環流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた200mL4つ口フラスコにm−クレゾール5.41gとテトラヒドロフラン50gを仕込み、さらに室温(25℃)条件で、1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリド13.43g、トリエチルアミン5.06gを加え、室温(25℃)条件で4時間反応を行った。反応終了後、析出した固形分をろ別した。ろ別した固形分にメチルイソブチルケトン300gを添加して溶解させた後、イオン交換水50gで2回水洗を行い、減圧下、温浴中で溶媒を除去して固体物(ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルB)14.7gを得た。
【0163】
[感光性樹脂組成物の調製]
(実施例1)
シロキサン樹脂Fの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例1の感光性樹脂組成物を調製した。
【0164】
(実施例2)
シロキサン樹脂Fの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルB0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例2の感光性樹脂組成物を調製した。
【0165】
(実施例3)
シロキサン樹脂Fの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA0.15gおよびナフトキノンジアジドスルホン酸エステルB0.05gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例3の感光性樹脂組成物を調製した。
【0166】
(実施例4)
シロキサン樹脂Gの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例4の感光性樹脂組成物を調製した。
【0167】
(実施例5)
シロキサン樹脂Hの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例5の感光性樹脂組成物を調製した。
【0168】
(実施例6)
シロキサン樹脂Iの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルA0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例6の感光性樹脂組成物を調製した。
【0169】
(実施例7)
シロキサン樹脂Fの溶液3.5g(固形分0.88g)にシロキサン樹脂Hの溶液1.5g(固形分0.27g)、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例7の感光性樹脂組成物を調製した。
【0170】
(実施例8)
シロキサン樹脂Fの溶液3.5g(固形分0.88g)にシロキサン樹脂Iの溶液1.5g(固形分0.27g)、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、実施例8の感光性樹脂組成物を調製した。
【0171】
(比較例1)
シロキサン樹脂Jの溶液5.0g(固形分1.25g)にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、比較例1の感光性樹脂組成物を調製した。
【0172】
(比較例2)
シロキサン樹脂Kの溶液5.0g(固形分1.25g)の溶液にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルAの溶液0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、比較例2の感光性樹脂組成物を調製した。
【0173】
(比較例3)
シロキサン樹脂Lの溶液5.0g(固形分1.25g)の溶液にナフトキノンジアジドスルホン酸エステルBの溶液0.2gをそれぞれ添加して、室温(25℃)で30分間攪拌溶解し、比較例3の感光性樹脂組成物を調製した。
【0174】
なお、各実施例及び比較例の感光性樹脂組成物の組成(単位:g)を下記表1に示した。
【0175】
【表1】

【0176】
<シリカ系被膜の製造>
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた感光性樹脂組成物をPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のフィルターでろ過した。これをシリコンウェハ又はガラス基板上に、溶媒除去した後の膜厚が2.0μmになるような回転数で30秒間スピンコートした。その後、90℃〜120℃で2分間乾燥させ、溶媒を除去した。得られた塗膜に対し、所定のパターンマスクを介してキャノン株式会社製PLA−600F投影露光機を用い、露光量50mJ/cmて露光を行った。続いて、2.38質量%のTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)水溶液を用いて、25℃で、2分間揺動浸漬法で現像処理を行った。これを純水で流水洗浄し、乾燥してパターンを形成した。次いで、パターン部分をキャノン株式会社製PLA−600F投影露光機を用い、露光量1000mJ/cmで全面露光した。次いで、O濃度が1000ppm未満にコントロールされている石英チューブ炉にて350℃で30分間かけてパターンを最終硬化し、シリカ系被膜を得た。
【0177】
<被膜評価>
上述の方法により、実施例1〜8及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜に対して、以下の方法で膜評価を行った。
【0178】
[解像性の評価]
解像性の評価は、シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、5μm角のスルーホールパターンが抜けているかどうかで評価した。すなわち、電子顕微鏡S−4200(株式会社日立計測器サービス製)を用いて観察し、5μm角のスルーホールパターンが抜けている場合は「A」、抜けていない場合を「B」と評価した。
【0179】
[透過率の測定]
可視光領域に吸収がないガラス基板上に塗布されたシリカ系被膜について、株式会社日立製分光光度計UV3310装置によって波長300nm〜800nmの透過率を測定し、波長400nmの値を透過率とした。
【0180】
[耐熱性の評価]
シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、溶媒除去した後の膜厚に対する最終硬化後の膜厚の減少率が10%未満の場合をA、10%以上の場合をBとして評価した。なお、膜厚は、ガートナー社製のエリプソメータL116Bで測定された膜厚であり、具体的には被膜上にHe−Neレーザーを照射し、照射により生じた位相差から求められる膜厚である。
【0181】
[クラック耐性の評価]
シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、金属顕微鏡により10〜100倍の倍率で面内のクラックの有無を確認した。クラックの発生がない場合はA、クラックが見られた場合をBとして評価した。
【0182】
[温度依存性の評価]
シリコンウェハ上に形成されたシリカ系被膜について、スピンコート後のホットプレートなどによる溶媒除去の工程の温度を5℃高くしたときの解像性について確認した。電子顕微鏡S−4200(株式会社日立計測器サービス製)を用いて観察し、5μm角のスルーホールパターンが抜けている場合はA、ほぼ抜けているが少しの溶け残りが観察される場合をB、抜けていない場合をCと評価した。
【0183】
[保存安定性評価]
実施例1〜8及び比較例1〜3で製造した感光性樹脂組成物について、24℃、相対湿度50%のクリーンルーム下で3週間保存した。保存後の感光性樹脂組成物を用いて、上記と同様の方法でシリコンウェハ上にシリカ系被膜を形成し、光学式膜厚計にてシロキサン樹脂膜の膜厚を測定し、その後2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で浸漬現像して、そのときのシロキサン樹脂膜の溶解時間を測定してシロキサン樹脂膜の溶解速度を測定して評価した。初期の溶解速度値からの変動が10%以内の場合をA、10〜20%をB、20〜30%をC、30%以上をDと評価した。
【0184】
<評価結果>
実施例1〜8及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜の評価結果を下記の表1に示した。
【0185】
【表2】

【0186】
表1より、実施例1から8の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜は、保存安定性が非常に高く、解像性、透過率、耐熱性及びクラック耐性に優れていることが明らかである。これに対して、比較例1〜3の感光性樹脂組成物から形成されたシリカ系被膜は、保存安定性が悪く、溶解速度が初期値より20%以上も大きく変動することが分かった。また一般式(1)で示される第1のシロキサン樹脂が含まれていない比較例3については、クラックが発生した。
【符号の説明】
【0187】
1…シリコンウェハ、1A,1B…拡散領域、2A…フィールド酸化膜、2B…ゲート絶縁膜、3…ゲート電極、4A,4B…側壁酸化膜、5,7…層間絶縁膜、5A、7A…コンタクトホール、6…ビット線、8A…蓄積電極、8B…キャパシタ絶縁膜、8C…対向電極、10…メモリセルキャパシタ、20…アクティブマトリックス基板、21…画素電極、22…ゲート配線、23…ソース配線、24…TFT、25…接続電極、26…コンタクトホール、27…付加容量対向電極、31…透明絶縁性基板、32…ゲート電極、33…ゲート絶縁膜、34…半導体層、35…チャネル保護層、36a…ソース電極、36b…ドレイン電極、37a,37b…透明導電膜、38a、38b…金属層、39…層間絶縁膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:下記一般式(1)で表される化合物を含む、第1のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第1のシロキサン樹脂と、下記一般式(2)で表される化合物を含む、第2のシラン化合物を加水分解縮合して得られる第2のシロキサン樹脂とを混合し、さらに加水分解縮合して得られる、重量平均分子量が8000〜300000の範囲である第3のシロキサン樹脂と、
(b)成分:前記(a)成分からなるシロキサン樹脂を溶解する溶媒と、
(c)成分:ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルと、
を含有する感光性樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)中、Rは1価の有機基を示し、Aは2価の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよい。]
【化2】

[一般式(2)中、RはH原子又は有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜3の整数を示し、nが2以下であるとき、同一分子内の複数のXは同一でも異なっていてもよく、nが2又は3であるとき、同一分子内の複数のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
第1のシラン化合物を加水分解縮合して第1のシロキサン樹脂を得る工程と、第2のシラン化合物を加水分解縮合して第2のシロキサン樹脂を得る工程と、第1のシロキサン樹脂と第2のシロキサン樹脂を混合して加水分解縮合し、加水分解縮合によって生成するアルコールや水などの低沸成分を、加水分解縮合と同時に除去して製造される第3のシロキサン樹脂を用いる請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(c)成分のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが、ナフトキノンジアジドスルホン酸と、1価又は多価アルコールとのエステルである、請求項1又は請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール及びそれらの重合度2〜10の重合体からなる群より選択されるアルコールである、請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b)成分が、エーテルアセテート系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒及びケトン系溶媒からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、
前記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、
前記塗膜の露光された前記所定部分を除去する除去工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、
を有するシリカ系被膜の形成方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して塗膜を得る塗布工程と、
前記塗膜の所定部分を露光する第1露光工程と、
前記塗膜の露光された前記所定部分を除去する除去工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を露光する第2露光工程と、
前記所定部分が除去された塗膜を加熱する加熱工程と、
を有するシリカ系被膜の形成方法。
【請求項8】
基板と、該基板上に請求項6又は7に記載のシリカ系被膜の形成方法により形成されたシリカ系被膜を備えた半導体装置。
【請求項9】
基板と、該基板上に請求項6又は7に記載のシリカ系被膜の形成方法により形成されたシリカ系被膜を備えた平面表示装置。
【請求項10】
基板と、該基板上に請求項6又は7に記載のシリカ系被膜の形成方法により形成されたシリカ系被膜を備えた電子デバイス用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−227159(P2011−227159A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94533(P2010−94533)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】