説明

感光性転写材料、隔壁及びその形成方法、光学素子及びその製造方法、並びに表示装置

【課題】ブラックマトリクス等の遮光膜表面の液体接触角を保持してインクジェット付与されるインクのはみ出し及び混色を抑えつつ、感光性樹脂層の塗布形成時のハジキを抑制する。
【解決手段】仮支持体上に設けられた感光性樹脂層の仮支持体側表面に、下記構造式(1)で表される樹脂を含む表面処理層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタなどの表示素子の製造に好適な感光性転写材料、並びにこの感光性転写材料を用いた隔壁及びその形成方法、光学素子及びその製造方法、液晶ディスプレイ、液晶カラーテレビ等の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ用液晶ディスプレイや液晶カラーテレビなどの需要は増加する傾向にあり、これらを構成するディスプレイに不可欠なカラーフィルタの特性向上とコストダウンに対する要求が高まっている。
【0003】
従来から、カラーフィルタの製造方法としては、染色法、顔料分散法、電着法、印刷法などが提案されている。
例えば、染色法は、透明基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料層を形成し、これをフォトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬することにより着色されたパターンを得る。この工程を3回繰り返すことでR(赤)、G(緑)、B(青)の3色の着色層を形成することができる。
また、顔料分散法は、近年盛んに行なわれている方法であり、透明基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、形成された感光性樹脂層をパターニングすることにより単色のパターンが得られる。この工程を3回繰り返すことにより、R、G、Bの3色の着色層を形成することができる。
電着法は、透明基板上に透明電極をパターニングし、顔料、樹脂、電解液等の入った電着塗装液に浸漬して着色層を電着形成する。この工程を3回繰り返して、R、G、Bの3色の着色層を形成し、最後に焼成するものである。
印刷法は、熱硬化型の樹脂に顔料を分散して印刷を3回繰り返して行なうことによりR、G、Bを塗り分けた後、樹脂を熱硬化させることで着色層を形成する。
【0004】
上記の方法に共通している点は、赤色、緑色、青色3色の着色画素を形成しようとすると、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になる傾向にある点である。さらに、工程数も多いため、歩留まりが低下しやすいという問題もある。
【0005】
上記の事情に鑑み、近年では、予めブラックマトリックスを顔料分散法で形成した後に、RGBの着色画素をインクジェット法により形成するカラーフィルタ製造法が検討されている。
【0006】
このインクジェット法を利用した方法は、ブラックマトリックスで取り囲まれた凹部にR、G、B各色の着色インクを順次付与することで画素形成が可能であり、製造プロセスが簡略化でき、低コスト化が図れる利点がある。また、インクジェット法は、カラーフィルタの作製に限らず、エレクトロルミネッセンス素子などの他の光学素子の作製にも応用が可能である。
【0007】
エレクトロルミネッセンス素子は、蛍光性の無機又は有機化合物を含む薄膜を陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、薄膜に電子及び正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子を生成させ、この励起子が失活する際の蛍光あるいは燐光の放出を利用して発光させる素子である。このようなエレクトロルミネッセンス素子に用いられる各色蛍光性材料を、例えばTFT等素子を形成した基板上にインクジェット法により付与して発光層を形成し、素子を構成することができる。
【0008】
上記のように、インクジェット法等の液滴を付与する方法は、製造プロセスの簡略化及びコスト削減を図ることができることから、カラーフィルタやエレクトロルミネッセンス素子などの光学素子の製造へ応用されている。
【0009】
ところが、インクジェット法による光学素子を作製する際の特有の問題として、図1に示すような「白抜け」、「インクのはみ出し」、「混色」などが懸念されている。「インクのはみ出し」とは、隔壁として設けたブラックマトリックスで取り囲まれた基板の露出部(画素を形成しようとする領域)にインクを付与して着色領域を形成する場合に、隔壁であるブラックマトリックスを乗り越えてインクが溢れてしまう現象であり、「混色」とは、溢れたインクが隣接する着色領域間で混合してしまう現象である。
インクジェット法によりインクを付与する際にインクのはみ出しや混色が発生すると、作製された例えばカラーフィルタに色ムラが生じたり、表示画像のコントラストの低下を起こす等、表示不良の一因となる。
【0010】
そのため、従来からインクのはみ出しや混色を防止する技術が種々検討されており、例えば、撥水、撥油作用のあるシリコーンゴム層をパターニングして混色防止用の仕切り壁とする方法(例えば、特許文献1参照)や、遮光層となるブラックマトリックス上にシリコーンゴム層を形成し、混色防止用の隔壁として用いる方法(例えば、特許文献2〜3参照)が提案されている。これらの方法にでは、隔壁の表面層の示す撥インク性が不足し十分な効果が得られないのが現状である。
【0011】
また、シリコーン化合物よりも高い撥油・撥水性を示すフッ素化合物を用いる方法として、CFプラズマによる撥インク処理例が試みられている(例えば、特許文献4参照)。この方法により撥インク処理を行なうと、隣接画素間のインクの混合が効果的に防止されるが、白抜けが発生しやすい欠点がある。これは、前記撥インク処理が隔壁上面に留まらず、隔壁側面にも及ぶために生じる問題点である。また、プラズマ処理を行なうために大きな設備投資が必要となることも問題であった。
【0012】
大きな設備投資が不要な方法として、反応性基を有する濡れ性調整剤を用いる方法がある。例えば、反応性基を有する濡れ性調整剤として、含フッ素シランカップリング剤による撥インク処理例が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。この方法により撥インク処理を行なうと、隣接画素間のインクの混合を効果的に防止でき、隔壁側面が処理されないために隔壁近傍の気泡(ハジキ)の発生が抑えられるものの、先に塗布した黒色のフォトレジスト層の上に塗り重ねるため、含フッ素シランカップリング剤を、該フォトレジスト層を溶解させない溶媒で塗布する必要があり、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)のような、一般に高価な特殊な溶媒を用いることが必要とされた。
また、これらいずれの方法も、撥インク処理のための専用工程を設ける必要があり、コスト上負担ともなっていた。
【0013】
また、ベースフィルム上に撥インク性を有する第1層及び親インク性の第2層からなる転写層を有する転写フィルムを用いて隔壁を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0014】
また、カラーフィルタを構成する透明基板上に設けられた遮光層の上に、含フッ素化合物などを含有する樹脂層が積層されたカラーフィルタが開示されている(例えば、特許文献7参照)。また、感赤外線感光性組成物を塗設してなる平版印刷版用原版の現像を疲労現像液を用いて行なった場合の処理性(現像ラチチュード)を向上させるために、フッ素含有の共重合体を用いる技術に関する開示がある(例えば、特許文献8参照)。
【特許文献1】特開平4−123005号公報
【特許文献2】特開平5−241011号公報
【特許文献3】特開平5−241012号公報
【特許文献4】特開2003−344640号公報
【特許文献5】特開平9−127327号公報
【特許文献6】特開2002−139612号公報
【特許文献7】特開平7−35916号公報
【特許文献8】特開2003−248301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記のようにシリコーンゴム層を形成する方法では、隔壁表面の撥インク性としては不充分であり、また、含フッ素化合物などのフッ素素材を含む樹脂層を仮支持体上の感光性層の下層に設けようとすると、この樹脂層上に感光性層を形成する際に感光性層形成用の塗布液が弾いて均一膜が得られ難く、均一な塗布が困難になって塗膜の形成性が悪化する課題がある。
【0016】
また、例えば液晶表示装置の液晶セルではセルギャップがスペーサ材により規制されているが、隔壁上に層形成して撥インク化する方法では、セルギャップが定まらず表示ムラを起こしやすい。
【0017】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、転写された感光性樹脂層からなる硬化パターン(例えばカラーフィルタを作製する場合はブラックマトリクス等の遮光膜)の液体接触角(例えば撥インク性)及び光学素子としたときの画素の平坦性を保持し、塗布時の弾き(ハジキ)の発生が抑えられた均一な感光性樹脂層を有する感光性転写材料、撥インク性が良好で、インクジェット法によるインクの付与を良好に行ない得る隔壁及びその形成方法、並びに表示ムラやコントラストの低下がなく、良好な画像表示が可能な光学素子及びその製造方法、表示装置を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、含フッ素化合物を感光性樹脂層の表面処理層に含有するにあたり、含フッ素化合物の側鎖にポリエチレンオキシドもしくはポリプロピレンオキシドを導入することが、感光性樹脂層形成用の液を付与(例えば塗布)したときの弾き(ハジキ)防止に有効であるとの知見を得、かかる知見に基づいて達成されたものである。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0019】
<1> 仮支持体上に、感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の前記仮支持体側表面に設けられた表面処理層とを有する感光性転写材料であって、前記表面処理層が少なくとも下記構造式(1)で表される樹脂を含む感光性転写材料である。
【0020】
【化1】

【0021】
前記構造式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は、各々独立に、水素原子、又は総炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6は総炭素数1〜12のアルキル基又は総炭素数6〜20のアリール基を表すである。L1、L2、及びL3は、各々独立に、単結合でもよい2価の連結基を表すである。X1は、エステル基、アミド基、又はアリーレン基を表し、X2はエーテル基、エステル基、アミド基、アリーレン基、又はヘテロ環残基を表すである。Rfは、フッ素を含む置換基を表すである。nは、2〜20の整数を表し、a、b、c、及びdはそれぞれ質量比を表し、aは0〜30、bは1〜30、cは1〜30、dは20〜98を表すである。
【0022】
<2> カラーフィルタの作製に用いられることを特徴とする前記<1>に記載の感光性転写材料である。
<3> (a)前記<1>又は<2>に記載の感光性転写材料を、感光性樹脂層が被転写体に接するように前記被転写体に圧着する圧着工程と、(b)被転写体に圧着された前記感光性転写材料の感光性樹脂層を(少なくとも表面処理層を介してあるいは介さずに)パターン状に露光する露光工程と、(c)露光された前記感光性樹脂層を現像する現像工程と、を少なくとも有する隔壁の形成方法である。
<4> 前記(b)露光工程は、前記感光性樹脂層の前記被転写体と接する側と反対側の表面をフッ素化することを特徴とする前記<3>に記載の隔壁の形成方法である。
<5> 前記(c)現像工程は、表面処理層を除去することを特徴とする前記<3>又は<4>に記載の隔壁の形成方法である。
<6> 前記<3>〜<5>のいずれか1つに記載の隔壁の形成方法により形成された隔壁である。
<7> 被転写体上の感光性樹脂層の、前記被転写体と接する側と反対側の表面が表面処理層によりフッ素化されており、フッ素化された表面が露出していることを特徴とする前記<6>に記載の隔壁である。
<8> 遮光性を有することを特徴とする前記<6>又は<7>に記載の隔壁である。
【0023】
<9> 前記<6>〜<8>のいずれか1つに記載の隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する光学素子の製造方法である。
<10> 前記液滴が着色剤を含有し、前記画像領域が着色されていることを特徴とする前記<9>に記載の光学素子の製造方法である。
<11> 基板上に複数の着色領域からなる画素群と前記画素群の各着色領域を離隔する隔壁とを少なくとも有し、前記<10>に記載の光学素子の製造方法により作製された光学素子である。
<12> 前記<11>に記載の光学素子を備えた表示装置である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、転写された感光性樹脂層からなる硬化パターン(例えばカラーフィルタを作製する場合はブラックマトリクス等の遮光膜)の液体接触角(例えば撥インク性)、及び光学素子としたときの画素の平坦性を保持し、塗布時の弾き(ハジキ)の発生が抑えられた均一な感光性樹脂層を有する感光性転写材料、撥インク性が良好で、インクジェット法によるインクの付与を良好に行ない得る隔壁及びその形成方法、並びに、表示ムラやコントラストの低下がなく、良好な画像表示が可能な光学素子及びその製造方法、表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。
<感光性転写材料>
本発明の感光性転写材料は、仮支持体上に、感光性樹脂層と、感光性樹脂層の仮支持体側表面に接して設けられた表面処理層とを少なくとも含み、必要に応じて熱可塑性樹脂層などの他の層を設けて構成することができる。
【0026】
〜表面処理層〜
本発明に係る表面処理層は、感光性樹脂層の仮支持体側の表面に接するように形成され、感光性樹脂層の仮支持体側の表面を処理するための層である。具体的には、表面処理層としては、例えば、
(1)図2(b)に示すように、仮支持体30上に熱可塑性樹脂層40、中間層20及び感光性樹脂層10がこの順に形成された感光性転写材料においては、該中間層20をさし、
(2)図2(a)に示すように、仮支持体30上に中間層20及び感光性樹脂層10がこの順に互いが接するように形成された感光性転写材料においては、該中間層20をさす。また、
(3)仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層がこの順に互いが接するように形成された感光性転写材料においては、該熱可塑性樹脂層をさし、
(4)仮支持体上に熱可塑性樹脂層、中間層、表面処理層としての他の層及び感光性樹脂層がこの順に形成された感光性転写材料においては、該他の層をさす。
なお、前記感光性転写材料を、隔壁の形成等のために基板に圧着する場合、各層の混合防止や酸素遮断性、圧着時の密着性に優れ、かつ経済性にも好ましいことから、本発明の感光性転写材料は、前記(1)の態様であることが特に好ましい。
【0027】
本発明においては、この表面処理層を形成するための塗布液に、下記構造式(1)で表される樹脂である重合性基含有のフッ素化合物を含ませて例えば塗布等して仮支持体上に膜形成することにより、該重合性基含有フッ素化合物は膜の空気界面側(仮支持体と接しない側)に密集する。そして更に、この上(空気界面側)に感光性樹脂層を形成すると、前記表面処理層中の感光性樹脂層側の界面には重合性基含有のフッ素化合物が密集している状態となる。次いで、この状態で、感光性樹脂層を所望の被転写体に圧着し、圧着後に(好ましくは表面処理層側から)露光する。そうすると、感光性樹脂層中の開始剤の作用によって重合反応が起こり、感光性樹脂層が硬化する。この露光硬化の過程において、表面処理層中の重合性基含有のフッ素化合物が感光性樹脂層と化学結合又は物理的に吸着するなどの相互作用を起こし、表面処理層側界面に固定される。このようにして、感光性樹脂層の曝光された表面処理層側界面のみに撥インク性を付与することができる。さらに露光後、後述の(c)感光性樹脂層を現像する現像工程にて表面処理層を除去することで、感光性樹脂層の被転写体と接する側と反対側の表面(被転写体上の感光性樹脂層の上面)のみに撥インク性のある隔壁を形成することができる。(a)圧着工程の前、又は(a)圧着工程と(b)露光工程との間に、表面処理層と感光性樹脂層とを加熱する工程を設けることも、相互作用をより強くすることができる点で好ましい。
【0028】
以上のように、表面処理層中に下記の構造式(1)で表される樹脂を含有させることにより、転写された感光性樹脂層からなる硬化パターンの液体接触角を高く保持し得ると共に、仮支持体上の表面処理層の表面に重ねて感光性樹脂層形成用の液(以下、「感光性樹脂層形成液」ということがある。例えば、感光性樹脂層を塗布形成するときの塗布液)を付与(例えば塗布)したときの弾き(ハジキ)の発生を防止でき、均一な塗布が行なえる。また、液体接触角を高めることで、例えば撥インク性が得られ、感光性樹脂層で構成された隔壁で取り囲まれた領域にインクをインクジェット付与して着色領域を形成しようとする際のインクのはみ出し及び混色を効果的に防止することができる。
【0029】
なお、前記相互作用によって感光性樹脂層表面に固定された重合性基含有フッ素化合物は、現像では除去されないため、上記のように感光性樹脂層の被転写体と接する側と反対側の表面(被転写体上の感光性樹脂層の上面)のみに撥インク性が施されてなる隔壁を形成することができる。
【0030】
このように、表面処理層は分子一層程度の膜厚があればその目的を達成できるため、表面処理層の層厚には特に制限はない。但し、経済性や現像性の観点からは、表面処理層の層厚は、15.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。
【0031】
また、露光、現像後の感光性樹脂層の表面に0.1μm以上の厚みの重合性基含有フッ素化合物が存在することは好ましくない。このように重合性基含有フッ素化合物が層を成しているときは、表面処理層の除去が完全でなく、感光性樹脂層表面に相互作用によって固定されていないものが残っている可能性が高い。この場合、パネル化したときにフッ素化合物が液晶中に泣き出し、液晶の駆動に支障を来すことがある。また、隔壁の厚みが所望の厚みよりも厚くなってしまうことがあり、セルギャップが所望の値にならず、表示ムラの原因になる等の問題が発生することがある。
【0032】
本発明においては、被転写体上の隔壁にはその上面(被転写体と接する側と反対側の露出面)のみに撥インク性があり、側面には撥インク性の部位がない。このため、白抜け故障が発生しにくいという利点がある。また、隔壁の厚みが感光性樹脂層の厚みと同じにでき、膜厚の変動による問題が起きないという利点がある。
【0033】
表面処理層は、撥インク性を付与する点ではその層自体が必ずしも感光性を有する必要はなく、光重合開始剤及び光重合開始剤系を含まない非感光性であることが好ましい。ここで、「含まない」とは、表面処理層形成用の液(例えば塗布に用いる塗布液)を調製する際に、光重合開始剤や光重合開始剤系を添加しないことを意味する。具体的には、光重合開始剤及び光重合開始剤系の層中における含有量は層の全質量の10質量%以下であることが好ましい。表面処理層が光重合開始剤や光重合開始剤系を含むと、露光時に表面処理層も固まってしまい、隔壁の厚みが所望の厚みよりも厚くなってしまう。こうなると、セルギャップが所望の値にならず、表示ムラの原因になる等の問題が発生することがある。
【0034】
本発明に係る表面処理層は、仮支持体と感光性樹脂層との間において感光性樹脂層に隣接して設けられていればよく、設けられた表面処理層と仮支持体との間には、仮支持体の下塗り層などの他の層が設けられていてもよい。
また、表面処理層は、単層で構成されてもよいし、二層以上の多層構成であってもよい。
【0035】
表面処理層は、下記構造式(1)で表される樹脂の少なくとも一種(以下、「本発明に係るフッ素系樹脂」ということがある。)を少なくとも含んでなり、必要に応じて、更に他の成分を用いて構成することができる。
【0036】
【化2】

【0037】
前記構造式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は、各々独立に、水素原子、又は総炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6は総炭素数1〜12のアルキル基又は総炭素数6〜20のアリール基を表す。
【0038】
1〜R5、R7で表される総炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基などが挙げられ、中でも炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基は特に好ましい。
【0039】
上記のうち、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7としては、水素原子、メチル基が好ましい。
【0040】
6で表される総炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基などの無置換アルキル基、並びに、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、ウレタン基、ヒドロキシ基などの置換基を有する置換アルキル基が挙げられる。中でも、総炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、ブチル基、オクチル基は好ましい。
【0041】
6で表される総炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ノニルフェニル基が挙げられる。中でも、総炭素数6〜15のアリール基が好ましく、フェニル基、ノニルフェニル基は好ましい。
【0042】
上記のうち、R6としては、メチル基、フェニル基、ノニルフェニル基が好ましい。
【0043】
前記構造式(1)において、L1、L2、及びL3は、各々独立に、単結合又は2価の連結基を表す。
前記L1で表される2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましく、無置換でも置換基を有していてもよく、ヒドロキシ基、エステル基、モノエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合を有してもよい。
【0044】
中でも、下記基又は下記構造を有する基であることが好ましい。
【化3】

【0045】
Yは、単結合又は、下記基もしくは下記構造を有する基であることが好ましい。
【化4】

【0046】
前記L2で表される2価の連結基としては、ヒドロキシ基、エーテル結合、及びエステル結合の少なくとも一つを含むアルキレン基又はアリーレン基であってもよい。更に好ましくは、単結合、下記基又は下記構造を有する基であることがより好ましい。
【0047】
【化5】

【0048】
前記L3で表される2価の連結基としては、ヒドロキシ基、エーテル結合、及びエステル結合の少なくとも一つを含むアルキル基又はアリール基であってもよい。更に好ましくは、単結合、下記基又は下記構造を有する基であることがより好ましい。
【0049】
【化6】

【0050】
Yは、単結合又は、下記基もしくは下記構造を有する基であることがより好ましい。
【化7】

【0051】
構造式(1)において、X1は、エステル基、アミド基、又はアリーレン基を表し、X2はエーテル基、エステル基、アミド基、アリーレン基、又はヘテロ環残基を表す。
【0052】
1、X2で表されるアリーレン基としては、総炭素数6〜20のアリーレン基が好ましく、例えば、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン、ビフェニレンが挙げられ、これらはo−、p−、m−置換でもよい。中でも、炭素数6〜12のアリーレン基がより好ましく、フェニレン、ビフェニレンは特に好ましい。
【0053】
2で表されるヘテロ環残基としては、例えば、窒素原子または酸素原子を環の構成員として含む5員環、または6員環が好ましく、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イソオキサゾール環、ピラゾール環、イミダゾール環、キノリン環、チアジアゾール環等が好適であり、ピリジン環、チアジアゾール環がより好ましい。
【0054】
上記のうち、X1としては、下記連結基又は下記構造を有する連結基が好ましい。
【化8】

【0055】
ここで、Rxは、水素原子、または総炭素数1〜12のアルキル基、総炭素数6〜20のアリール基を表す。
総炭素数1〜12のアルキル基、及び総炭素数6〜20のアリール基はいずれも、R6における場合と同義であり、これらの好ましい態様も同様である。
【0056】
上記のうち、X2としては、下記連結器又は下記構造を有する連結基が好ましい。ここでのRxは、上記のRxと同義である。
【0057】
【化9】

【0058】
構造式(1)において、Rfは、フッ素を含む基を表す。フッ素を含む基としては、下記含フッ素基又は下記構造を有する含フッ素基が好適である。ここで、フッ素基中のmは1〜20の整数を表し、lは1〜10の整数を表し、nは1〜20を表す。
【0059】
【化10】

【0060】
構造式(1)において、nは、2〜20の整数を表し、好ましくは4〜12である。
また、a、b、c、及びdは、それぞれ質量比を表し、aは0〜30(好ましくは0〜20)であって、bは1〜30(好ましくは5〜20)であって、cは1〜30(好ましくは5〜30)であって、dは20〜98(好ましくは30〜80)である。
【0061】
上記した中でも、R1、R2、R7が水素原子であって、R3、R4、R6がメチル基であって、L1が−CH2CH(OH)CH2−であって、L2が単結合であって、L3が−CH2CH2−であって、X1が−O−CO−であって、X2が−CO−O−であって、Rfが−C817であって、Mが下記基(R5は水素原子である)であって、nが7〜9である態様が好ましい。
【0062】
【化11】

【0063】
本発明に係るフッ素系樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で1000〜200000が好ましく、4000〜50000がより好ましい。Mwが前記範囲内であると、表面処理層に安定に存在し、かつ隔壁層への移行の点で効果的である。
【0064】
以下、本発明に係るフッ素系樹脂の具体例〔例示化合物(1)〜(16)〕を示す。但し、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
【化14】

【0068】
次に、本発明に係るフッ素系樹脂の例示化合物のうち、具体的な例示樹脂a〜dを例に合成方法を示す。なお、例示樹脂a〜d以外の本発明に係るフッ素系樹脂についても同様の方法により合成することが可能である。
【0069】
(合成例1)
以下に示す2つのステップを経て合成することができる。
〈Step.1〉:樹脂a1の合成
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、ウォーターバスで70℃まで加熱した。これに、MFG40gにアクリル酸(AA、東京化成工業(株)製)12.5g(0.173mol)と2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC、ユニマテック(株)製)20g(0.039mol)とポリエチレンオキシドモノマー(PE350、日本油脂(株)製)17.5g(0.077mol)とを溶解させた溶液及び、MFG30gに2,2'−アゾビス(イソ酪酸)〔V601、和光純薬工業(株)製〕0.268g(0.001mol)を溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
以上のようにして、2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC)、アクリル酸(AA)、及びポリエチレンオキシドモノマー(PE350)を共重合させて、FAAC/AA/PE350=40/25/35(質量比)の樹脂a1を合成した。
【0070】
<Step.2> :樹脂a1への二重結合の導入
前記Step.1で得た樹脂a1の溶液に、ジ−t−ペンチルハイドロキノン(和光純薬工業(株)製)0.5g、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.326g(0.032mol)を、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、その溶液を攪拌して均一な溶液とした。内温が90℃になるように調整し、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)14.8g(0.104mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、12時間攪拌し、下記の例示樹脂a(a=12、b=28、c=32、d=28)を得た。
なお、例示樹脂aの重量平均分子量(GPC、THF、ポリスチレン換算)Mwは、10,000であった。また、酸価は72であった。
【0071】
【化15】

【0072】
(合成例2)
以下に示す2つのステップを経て合成することができる。
〈Step.1〉:樹脂b1の合成
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、ウォーターバスで70℃まで加熱した。これに、MFG40gにアクリル酸(AA、東京化成工業(株)製)5.0g(0.069mol)と2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC、ユニマテック(株)製)31.0g(0.060mol)とポリエチレンオキシドモノマー(PE350、日本油脂(株)製)14.0g(0.030mol)とを溶解させた溶液及び、MFG30gに2,2'−アゾビス(イソ酪酸)〔V601、和光純薬工業(株)製〕0.168g(0.001mol)を溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
以上のようにして、2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC)、アクリル酸(AA)、及びポリエチレンオキシドモノマー(PE350)を共重合させて、FAAC/AA/PE350=62/10/28(質量比)の樹脂b1を合成した。
【0073】
<Step.2> :樹脂b1への二重結合の導入
前記Step.1で得た樹脂b1の溶液に、ジ−t−ペンチルハイドロキノン(和光純薬工業(株)製)0.05g及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.076g(0.0069mol)を、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、その溶液を攪拌し、均一な溶液とした。内温が90℃になるように調整し、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)2.0g(0.014mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、12時間攪拌し、下記の例示樹脂b(a=5、b=13、c=25、d=57)を得た。
なお、例示樹脂bの重量平均分子量(GPC、THF、ポリスチレン換算)Mwは、13,000であった。また、酸価は36であった。
【0074】
【化16】

【0075】
(合成例3)
<Step.1> :樹脂c1の合成
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、ウォーターバスで70℃まで加熱した。これに、MFG40gにアクリル酸(AA、東京化成工業(株)製)12.5g(0.173mol)と2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC、ユニマテック(株)製)20g(0.039mol)とポリプロピレンオキシドモノマー(PP500、日本油脂(株)製)17.5g(0.035mol)とを溶解させた溶液及び、MFG30gに2,2'−アゾビス(イソ酪酸)〔V601、和光純薬工業〕0.165g(0.001mol)を溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
以上のようにして、2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC)、アクリル酸(AA)、及びポリプロピレンオキシドモノマー(PP500)を共重合させて、FAAC/AA/PP500=40/25/35(質量比)の樹脂c1を合成した。
【0076】
<Step.2> :樹脂c1への二重結合の導入
前記Step.1で得た樹脂c1の溶液に、ジ−t−ペンチルハイドロキノン(和光純薬工業(株)製)0.15g及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.326g(0.032mol)を、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、その溶液を攪拌し、均一な溶液とした。内温が90℃になるように調整し、グリシジルメタクリレート(東京化成工業)14.8g(0.104mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、攪拌を続けて、グリシジルメタクリレートの消失をガスクロマトグラフィ〔(株)島津製作所製〕にて確認し、下記の例示樹脂c(a=11、b=26、c=36、d=27)を得た。
なお、例示樹脂cの重量平均分子量(GPC、THF、ポリスチレン換算)Mwは、11,000であった。また、酸価は71であった。
【0077】
【化17】

【0078】
(合成例4)
<Step.1> :樹脂d1の合成
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、ウォーターバスで70℃まで加熱した。これに、MFG40gにアクリル酸(AA、東京化成工業(株)製)12.5g(0.173mol)と2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC、ユニマテック(株)製)20g(0.039mol)とポリプロピレンオキシドモノマー(M90G、新中村化学(株)製)17.5g(0.037mol)とを溶解させた溶液及び、MFG30gに2,2'−アゾビス(イソ酪酸)〔V601、和光純薬工業(株)製〕0.172g(0.001mol)を溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
以上のようにして、2−(パーフルオロオクチル)−エチルアクリレート(FAAC)、アクリル酸(AA)、及びポリプロピレンオキシドモノマー(M90G)を共重合させて、FAAC/AA/M90G=40/25/35(質量比)の樹脂d1を合成した。
【0079】
<Step.2> :樹脂d1への二重結合の導入
前記Step1で得た樹脂d1の溶液に、ジ−t−ペンチルハイドロキノン(和光純薬工業(株)製)0.15g及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(東京化成工業(株)製)0.326g(0.032mol)を、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、その溶液を攪拌し、均一な溶液とした。内温が90℃になるように調整し、グリシジルメタクリレート(東京化成工業(株)製)14.8g(0.104mol)を1時間かけて滴下した。滴下終了後、攪拌を続けて、グリシジルメタクリレートの消失をガスクロマトグラフィ〔(株)島津製作所製〕にて確認し、下記の例示樹脂d(a=12、b=28、c=32、d=28)を得た。
なお、例示樹脂dの重量平均分子量(GPC、THF、ポリスチレン換算)Mwは、14,000であった。また、酸価は68であった。
【0080】
【化18】

【0081】
本発明に係るフッ素系樹脂の表面処理層中における含有量としては、0.01〜5g/m2が好ましく、0.05〜4g/m2がより好ましく、0.1〜4g/m2が特に好ましい。フッ素系樹脂の含有量が前記範囲内であると、転写された感光性樹脂層からなる硬化パターンの液体接触角(例えばカラーフィルタを作製する場合はブラックマトリクス等の遮光膜上の撥インク性)を確保しながら、仮支持体上の表面処理層の表面に重ねて感光性樹脂層形成液を付与(例えば感光性樹脂層形成用の塗布液の塗布)したときの弾き(ハジキ)を効果的に防止することができる。
【0082】
以下、表面処理層の例として、中間層、熱可塑性樹脂層について説明する。
〜中間層〜
本発明の感光性転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、及び塗布後の保存時における成分の混合防止等のため中間層を設けることが好ましい。この場合、表面処理層としての中間層中に本発明に係るフッ素系樹脂の少なくとも一種を含有する。また、中間層は、感光性樹脂層との塗り分けの観点から、水系の層(溶媒の25質量%以上が水である液を用いて形成された層)であることが好ましい。
【0083】
中間層としては、特開平5−72724号公報の段落番号[0014]〜[0015]に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能を有する中間層でもよい。酸素遮断膜としては、低い酸素透過性を示し、水又はアルカリ水溶液に分散もしくは溶解するものが好ましく、公知のものの中から適宜選択することができる。酸素遮断層として、好ましいのはポリビニルアルコールであり、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとの組み合わせである。
【0084】
中間層の層厚としては、乾燥厚さで0.2〜5μmが一般的であり、0.5〜3μmが好ましく、1〜2.5μmが特に好ましい。
【0085】
〜熱可塑性樹脂層〜
本発明の感光性転写材料においては、必要に応じて熱可塑性樹脂層を形成してもよい。この場合、表面処理層としての熱可塑性樹脂層中に本発明に係るフッ素系樹脂の少なくとも一種を含有する。熱可塑性樹脂層は、少なくとも樹脂成分を用いて構成されたアルカリ可溶性を有する層である。
【0086】
前記樹脂成分としては、実質的な軟化点が80℃以下であることが好ましい。熱可塑性樹脂層が設けられると、転写の際(例えばカラーフィルタを構成するブラックマトリクスなどの隔壁の形成の際)に、永久支持体(基板)と良好に密着させることができる。
【0087】
「実質的な軟化点が80℃以下」のアルカリ可溶性の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンとアクリル酸エステル共重合体とのケン化物、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのケン化物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体などとのケン化物等が挙げられる。
【0088】
熱可塑性樹脂層には、上記の熱可塑性樹脂の少なくとも一種を適宜選択して用いることができ、更に「プラスチック性能便覧」(日本プラスチック工業連盟、全日本プラスチック成形工業連合会編著、工業調査会発行、1968年10月25日発行)による、軟化点が約80℃以下の有機高分子のうちアルカリ水溶液に可溶なものを使用することができる。
【0089】
また、軟化点が80℃以上の有機高分子物質についても、その有機高分子物質中に該高分子物質と相溶性のある各種可塑剤を添加することで、実質的な軟化点を80℃以下に下げて用いることもできる。また、これらの有機高分子物質には、仮支持体との接着力を調節する目的で、実質的な軟化点が80℃を越えない範囲で、各種ポリマーや過冷却物質、密着改良剤あるいは界面活性剤、離型剤等を加えることもできる。
【0090】
好ましい可塑剤の具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートビフェニルジフェニルフォスフェートを挙げることができる。
【0091】
〜感光性樹脂層〜
本発明の感光性転写材料を構成する仮支持体上の前記表面処理層の表面には、少なくとも一層の感光性樹脂層が設けられる。この感光性樹脂層は、被転写体への転写後にパターン露光及び現像等を行なってパターンを形成するための層であり、仮支持体上に設けられた既述の本発明に係る表面処理層の表面に直に層形成されるので、感光性樹脂層からなる硬化パターンの液体接触角(例えば撥インク性)を保ちながら、感光性樹脂層の形成(例えば塗布形成)は液の弾き(ハジキ)を抑えて行なわれる。
【0092】
感光性樹脂層は、少なくとも(1)アルカリ可溶性バインダーと(2)モノマー及び/又はオリゴマーと(3)光重合開始剤及び/又は光重合開始系とを含む感光性の樹脂組成物を層状に付与(好ましくは塗布)して形成することができる。
【0093】
樹脂組成物は、遮光性を付与する観点から、更に(4)着色剤を含むことが好ましい。感光性樹脂層が遮光性を有すると、ブラックマトリックスなど、カラーフィルタを構成する画素群の各着色領域(着色画素)を離隔する隔壁としての機能を持たせることができる点で好ましい。
【0094】
以下、感光性樹脂層を構成する成分(1)〜(4)について詳述する。
(1)アルカリ可溶性バインダー
アルカリ可溶性バインダー(以下、単に「バインダー」ということがある。)としては、側鎖にカルボン酸基やカルボン酸塩基などの極性基を有するポリマーが好ましい。その例としては、特開昭59−44615号公報、特公昭54−34327号公報、特公昭58−12577号公報、特公昭54−25957号公報、特開昭59−53836号公報、及び特開昭59−71048号公報に記載の、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、等を挙げることができる。また、側鎖にカルボン酸基を有するセルロース誘導体も挙げることができ、また、これら以外に水酸基を有するポリマーに環状酸無水物を付加したものも好適である。
【0095】
また、特に好ましい例として、米国特許第4139391号明細書に記載のベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸との共重合体や、ベンジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸と他のモノマーとの多元共重合体を挙げることができる。
【0096】
上記の極性基を有するバインダーポリマーは、単独で用いてもよいし、通常の膜形成性のポリマーと併用する組成物の状態で用いてもよい。
【0097】
アルカリ可溶性バインダーの感光性樹脂層中における含有量は、層(又は組成物)の全固形分に対して、20〜50質量%が一般的であり、25〜45質量%が好ましい。
【0098】
(2)モノマー又はオリゴマー
モノマー又はオリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を2個以上有し、光の照射によって付加重合するモノマー又はオリゴマーが好ましい。
このようなモノマー及びオリゴマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物を挙げることができる。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリン等の多官能アルコールにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを付加した後(メタ)アクリレート化したもの等の多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0099】
更に、特公昭48−41708号公報、特公昭50−6034号公報、及び特開昭51−37193号公報に記載のウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、及び特公昭52−30490号公報に記載のポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレー卜やメタクリレートを挙げることができる。
【0100】
これらの中で、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジぺンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、特開平11−133600号公報に記載の「重合性化合物B」も好適なものとして挙げることができる。
【0101】
モノマー又はオリゴマーは、単独でも、二種類以上を混合して用いてもよく、モノマー及び/又はオリゴマーの感光性樹脂層中における含有量としては、層又は組成物の全固形分に対して、5〜50質量%が一般的であり、10〜40質量%が好ましい。
【0102】
(3)光重合開始剤又は光重合開始系
光重合開始剤又は光重合開始系としては、米国特許第2367660号明細書に記載のビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載のアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾール二量体とp−アミノケトンの組み合わせ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物、米国特許第4239850号明細書に記載のトリハロメチル−トリアジン化合物、米国特許第4212976号明細書に記載のトリハロメチルオキサジアゾール化合物等を挙げることができる。特に、トリハロメチル−s−トリアジン、トリハロメチルオキサジアゾール、及びトリアリールイミダゾール二量体が好ましい。
また、この他、特開平11−133600号公報に記載の「重合開始剤C」も好適なものとして挙げることができ、更には、特開2000−310707号公報の段落番号[0028]〜[0042]に記載の光重合開始剤も好適なものとして用いることができる。
【0103】
光重合開始剤及び/又は光重合開始系は、単独でも、2種類以上を混合して用いてもよいが、特に2種類以上を併用することが好ましい。少なくとも2種の光重合開始剤を用いると、表示特性、特に表示のムラが低減できる。
【0104】
光重合開始剤及び/又は光重合開始系の感光性樹脂層中における含有量は、層又は組成物の全固形分に対して、0.5〜20質量%が一般的であり、1〜15質量%が好ましい。
【0105】
(4)着色剤
感光性樹脂層には、必要に応じて、着色剤を添加することが好ましい。
着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等を好適に用いることができ、感光性樹脂層中におけるに遮光性が要求される際には、カーボンブラック、酸化チタン、4酸化鉄等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉などの遮光剤のほか、赤色、青色、緑色等の顔料の混合物等を用いることができる。中でも特に、カーボンブラックは遮光性が優れている点で特に好ましい。
【0106】
感光性樹脂層又はこれを構成する感光性樹脂組成物には、上記成分以外に溶媒、界面活性剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0107】
(5)他の成分
−溶媒−
感光性樹脂層の形成に用いる感光性樹脂組成物には、その調製のために更に有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒の例としては、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム等を挙げることができる。
【0108】
−界面活性剤−
本発明の感光性転写材料においては、均一な膜厚に制御でき、塗布ムラ(膜厚変動による色ムラ)をより効果的に防止する観点から、感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物中に適切な界面活性剤を含有させることもできる。すなわち、従来の光学素子(カラーフィルタ等)においては、高い色純度を実現するために各画素の色が濃くなり、画素の膜厚のムラがそのまま色ムラとして認識されやすいが、画素の膜厚に直接影響を与える感光性樹脂層の形成(塗布)時の膜厚変動を抑えることができる。
【0109】
界面活性剤としては、特開2003−337424号公報、特開平11−133600号公報に記載の界面活性剤が好適である。
【0110】
−熱重合防止剤−
感光性樹脂層は、熱重合防止剤を含むことが好ましい。熱重合防止剤の例としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンズイミダゾール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0111】
−補助的に用いる染料・顔料−
本発明における感光性樹脂層には、より高い遮光性を得る目的から、必要に応じ前記着色剤(顔料)に加えて、公知の着色剤を更に添加することができる。
前記公知の着色剤のうち顔料を用いる場合には、感光性樹脂層(又は感光性樹脂組成物)中に均一に分散されていることが望ましく、そのため粒径が0.1μm以下、特には0.08μm以下であることが好ましい。
【0112】
前記公知の着色剤としては、具体的には、特開2005−17716号公報の段落番号[0038]〜[0040]に記載の色材や、特開2005−361447号公報の段落番号[0068]〜[0072]に記載の顔料や、特開2005−17521号公報の段落番号[0080]〜[0088]に記載の着色剤を好適に用いることができる。
【0113】
−紫外線吸収剤−
本発明における感光性樹脂層には、必要に応じて紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤としては、特開平5−72724号公報に記載の化合物のほか、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系などが挙げられる。
【0114】
具体的には、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3',5'−ジ−t−4'−ヒドロキシベンゾエート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2,2'−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ニッケルジブチルジチオカーバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピリジン)−セバケート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、サルチル酸フェニル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン縮合物、コハク酸−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリデニル)−エステル、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、7−{[4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−5−トリアジン−2−イル]アミノ}−3−フェニルクマリン等が挙げられる。
【0115】
また、感光性樹脂層には、上記以外に、特開平11−133600号公報に記載の「接着助剤」やその他の添加剤等を含有させることができる。
【0116】
本発明における感光性樹脂層は、感光性の樹脂組成物を用いて構成することができ、例えば、(a)少なくともp−クレゾールを含むフェノール類を酸触媒下アルデヒド類と反応させて得られる非ハイオルソ型のクレゾールノボラック樹脂及び(b)キノンジアジド基含有化合物を含有してなるポジ型フォトレジスト組成物であってもよい。更に、該ポジ型フォトレジスト組成物は、(a)成分中のp−クレゾールの2核体含有量がGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法において2.0%未満であることが好ましい。ポジ型フォトレジスト組成物の例としては、特許第3624718号の段落番号[0007]〜[0026]に記載の例が挙げられる。
ポジ型フォトレジスト組成物を用いると、高温ベークに施されても昇華物が発生しにくく、感度、解像性に優れると共に、残膜率の高い矩形に近いレジストパターンを形成することができる。
【0117】
本発明における感光性樹脂層には、230℃で1時間加熱したときの質量減少率が2質量%以下の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。該樹脂を用いると、ITO膜の作製、配向膜の作製等の200℃を越えるような加熱工程によっても、樹脂の劣化による変色に起因する光学素子(カラーフィルタなど)の色特性の劣化を生じることなく、色品質に優れた表示装置(例えば液晶ディスプレー)を提供することができる。該樹脂の例として、特開平11−194214号公報の段落番号[0013]〜[0016]に記載の樹脂が挙げられる。
【0118】
本発明における感光性樹脂層には、露光波長よりも小さな平均粒子径(例えば、1〜100nm程度)の無機微粒子を添加してもよい。無機微粒子は、官能基(例えば感光性基)を有していてもよいコロイダルシリカなどで構成できる。感光性樹脂層は、ネガ型又はポジ型のいずれであってもよく、水又はアルカリ現像可能であってもよい。無機微粒子を含有することで、酸素プラズマ耐性,耐熱性,耐ドライエッチング性,感度や解像度を大きく改善することができる。無機微粒子の例としては、特開平11−327125号公報の段落番号[0036]〜[0047]に記載のものが挙げられる。
【0119】
本発明における感光性樹脂層は、リタデーション低減粒子を含んでいてもよい。リタデーション低減粒子を含むことによって、リタデーションの絶対値を15nm以下とすることができ、これによってこの感光性樹脂層を転写してなるカラーフィルタは、視野角依存に優れ、該カラーフィルタを用いることにより高品位の画像が得られる液晶表示装置を提供できる。該リタデーション低減粒子の具体例としては、特開2000−187114号公報の段落番号[0014]〜[0035]に記載のものが挙げられる。
【0120】
本発明における感光性樹脂層には、光安定剤を含ませてもよい。光安定剤としては、例えば、ホスファイト系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系、サリチル酸エステル系、トリアジン系、ヒンダードフェノール系、及びチオエーテル系から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。光安定剤の具体例として、特開2000−214580号公報の段落番号[0007]〜[0014]に記載のものが好適な例として挙げられる。
【0121】
緑色有機顔料を用いる場合は、緑色有機顔料におけるテトラクロロフタル酸、テトラクロロフタル酸無水物及びテトラクロロフタルイミドの量を分析し、それらの合計が500ppm以下であることが好ましい。好ましい範囲の顔料を得る方法は、特開2000−321417号公報の段落番号[0005]〜[0020]に記載の方法が挙げられる。また同様の方法により、緑色以外の顔料の不純物も低減させることが可能である。該有機顔料を用いると、現像時のパターンに欠落や剥がれを生じることがなく、しかも表示パネルとしたときに焼き付き等の表示不良が発生することがなく、かつ成膜後の機械的強度が優れ、パターンの基板との密着性、パターン形状の良好なカラーフィルタを得ることができる。
【0122】
顔料は、電圧保持率が80%以上となるように選択ないし処理された顔料であることが好ましい。好ましい顔料として、特開2000−329929号公報の段落番号[0005]〜[0026]に記載の顔料が挙げられる。電圧保持率が80%以上となるように選択ないし処理された顔料を用いることにより、現像時の画素パターンに欠落や剥がれを生じることがなく、現像性に優れており、しかも表示パネルが焼き付きによる表示不良を生じることがなく、かつ成膜後の機械的強度が優れ、また画素の基板とも密着性、パターン形状も良好なカラーフィルタを得ることができる。
【0123】
本発明における感光性樹脂層は、ガラス転移温度Tgが60〜120℃の範囲であって重量平均分子量が10000〜100000の範囲であるポリマーと、25℃における粘度が10〜8000mPa・sの範囲である多官能のモノマーと、着色剤とを含有する層が好ましい。このような層を形成にするのに好ましい樹脂組成物として、特開平10−115917号公報の段落番号[0016]〜[0033]に記載の組合せが挙げられる。この場合、感光性樹脂層は20〜30℃の範囲で適度の粘性を示すので、材料の使用効率に優れ、かつ、湿式の現像工程及び洗浄工程を含まず工程が簡便な製造方法を提供することができる。
【0124】
また、本発明の感光性樹脂層に銅フタロシアニン顔料を用いる場合には、この顔料中に含まれる遊離銅の含有量は200ppm以下であることが好ましい。該顔料としては、例えば、特開2004−189852号公報の段落番号[0011]〜[0020]に記載のものが挙げられる。該顔料は、感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物の保存安定性を高めるのに有効である。
【0125】
本発明の感光性樹脂層にカーボンブラックを用いる場合には、一次粒子径20〜30nm、DBP吸収量140ml/100g以下、pH2.5〜4であるカーボンブラックが好ましい。該カーボンブラックの例として、特開2004−292672号公報の段落番号[0010]〜[0014]に記載のものが挙げられる。該カーボンブラックは、現像性、OD値ともに優れた隔壁(ブラックマトリックス、着色層など)を形成する場合に有効である。
【0126】
本発明の感光性樹脂層に金属化合物を用いる場合には、感光性樹脂層形成用の感光性樹脂組成物の比重が2.5以上であることが好ましい。この樹脂組成物としては、特開2004−352890号公報の段落番号[0007]〜[0013]に記載のものが好ましい。この樹脂組成物を用いてパターン(ブラックマトリクス等の隔壁など)を形成すると、従来以上に黒色の良好なパターンの形成が可能である。
【0127】
本発明における感光性樹脂層は、転写後硬化させて得られたパターン(ブラックマトリクス等の隔壁など)の硬度が鉛筆硬度で3H以上9H以下であり、かつ露光後に得られる樹脂層を、100r.p.m.での攪拌下の25℃のアルカリ水溶液に浸漬して120秒経過後の感光性樹脂層の未露光領域が溶解した部分の透過率(400〜780nmの平均)が98%以上100%以下である組成物であることが好ましい。例えば、特開2005−10763号公報の段落番号[0007]〜[0075]に記載の樹脂組成物が挙げられる。この樹脂組成物を用いてパターンを形成すると、高い表面硬度と良好な現像性とを両立することができる。
【0128】
本発明の感光性樹脂層に窒素原子含有分散剤を用いる場合、該分散剤の230℃で30分間加熱したときの全窒素量の残留率(加熱前の全窒素量に対する加熱後の全窒素量の質量比率)が60質量%以下であることが好ましい。該分散剤として、例えば、特開2004−325968号公報の段落番号[0043]〜[0047]に記載のものが挙げられる。該分散剤を用いたカラーフィルタ(隔壁や着色画素などを含む)は、液晶の電圧保持率に対する影響が極めて少ないため、表示ムラ、焼き付け等の表示不良が生じにくく、極めて高品質な表示装置を作製することができる。
【0129】
本発明の感光性転写材料の感光性樹脂層を転写して形成された硬化膜(ブラックマトリクス等の隔壁など)を形成するための組成物としては、特開平10−293397号公報の段落番号[0008]〜[0061]に記載の樹脂組成物が挙げられる。接触角を好ましい範囲にすることで、解像性が高く表面平滑性に優れたパターン形成が可能であり、しかも形成されたパターンの表面における突起の発生が抑制され、高い歩留まりでパターンを形成することができる。
【0130】
本発明の光学素子としてカラーフィルタを作製する際、オーバーコート層を設ける場合には、オーバーコートの押し込み硬度が下記式(1)の範囲内であることが好ましい。また、オーバーコート層を設ける場合及び設けない場合のいずれであっても、カラーフィルタの押し込み硬度が下記式(2)の範囲内であることが好ましい。前記範囲内にあると、セルギャップの不均一による液晶表示装置の表示ムラが発生しにくい。前記好ましい範囲の硬度を達成する手段として、特開平11−271525号公報の段落番号[0012]〜[0061]に記載の方法が挙げられる。
kP/gh2≧30 …(1)
kP/gh2≧40 …(2)
但し、P:硬さ評価時の押し込み荷重(mN)、h:PmNにおける押し込み深さ(μm)、g:重力加速度(=9.807m/s2)、k:圧子の形状によって決まる定数である。
【0131】
また、カラーフィルタは、平均屈折率が1.60以上、1.90以下で、かつ複屈折率の絶対値が0.01以下である着色層から形成されることが好ましい。該好ましい範囲内の着色層(隔壁を含む)を用いたカラーフィルタはリタデーションが低減されるため、表示特性の優れた液晶表示装置を提供できる。前記好ましい範囲内のカラーフィルタを作成する手段として、特開2000−136253号公報の段落番号[0007]〜[0042]に記載の方法が挙げられる。
【0132】
カラーフィルタを構成する場合に用いる顔料としては、比表面積が35〜120m2・g-1の範囲内であるものが好ましい。該比表面積が好ましい範囲の顔料を得る手段として、特開2001−42117号公報の段落番号[0015]〜[0022]に記載の方法が挙げられる。該顔料を用いて感光性樹脂層形成用の組成物を調製すると、組成物の流動特性を良好に維持したまま高透過率と高色純度を両立させた着色膜を得ることができる。その結果として、色特性を向上させたカラーフィルタを得ることができ、さらに表示装置の色特性をも向上させることができる。
【0133】
〜仮支持体〜
本発明の感光性転写材料を構成する仮支持体としては、化学的及び熱的に安定であって、可撓性の物質で構成されるものから適宜選択することができる。具体的には、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄いシート、フィルム、又はこれらの積層体を挙げることができる。中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0134】
仮支持体の厚みとしては、5〜300μmが適当であり、好ましくは20〜150μmである。
【0135】
〜保護フィルム〜
感光性樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護するために薄い保護フィルムを設けることが好ましい。保護フィルムは仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、感光性樹脂層から容易に分離されねばならない。
保護フィルムの材料としては、例えば、シリコーン紙、ポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンシートなどが適当である。
【0136】
〜〜感光性転写材料の製造方法〜〜
本発明の感光性転写材料は、仮支持体上に表面処理層と感光性樹脂層とを有し、表面処理層と感光性樹脂層とが隣接して形成された積層構造となっており、仮支持体上に熱可塑性樹脂層と中間層と感光性樹脂層とをこの順に互いが接するように設けた態様に好適に構成することができる。この場合、本発明に係るフッ素系樹脂は、中間層中に少なくとも含有させ、場合により更に熱可塑性樹脂層中に含有することもできる。
【0137】
ここで、前記好ましい態様の感光性転写材料の製造方法について説明する。
仮支持体上に、まず熱可塑性樹脂層の構成成分を溶解した塗布液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させることにより熱可塑性樹脂層を形成し、形成された熱可塑性樹脂層上に、熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤を用いた中間層の構成成分(本発明に係るフッ素系樹脂を含む。)を含む塗布液(中間層用塗布液)を塗布し、乾燥させることにより中間層を形成し、その後、形成された中間層上に中間層を溶解しない溶剤を用いた感光性樹脂層の構成成分を含む塗布液(感光性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて感光性樹脂層を設けることにより作製することができる。
また、仮支持体上に熱可塑性樹脂層及び中間層を設けたシート、及び保護フィルム上に感光性樹脂層を設けたシートを用意し、中間層と感光性樹脂層とが互いに接するように相互に貼り合わせることによっても作製することができる。
【0138】
なお、本発明の感光性転写材料において、感光性樹脂層の層厚としては、1.0〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましく、1.0〜3.0μmが特に好ましい。また、特に限定されるものではないが、その他の各層の好ましい膜厚としては、仮支持体は15〜100μm、熱可塑性樹脂層は2〜30μm、中間層は0.5〜3.0μm、保護フィルムは4〜40μmが一般的に好ましい。
【0139】
なお、前記塗布は、公知の塗布装置等によって行なうことができるが、本発明においては、液が吐出する部分にスリット状の穴を有するスリット状ノズルによって塗布することが好ましい。具体的には、特開2004−89851号公報、特開2004−17043号公報、特開2003−170098号公報、特開2003−164787号公報、特開2003−10767号公報、特開2002−79163号公報、特開2001−310147号公報等に記載のスリット状ノズル、及びスリットコータが好適に用いられる。
【0140】
<隔壁及びその形成方法>
本発明の隔壁は、少なくとも、(a)既述の本発明の感光性転写材料を用い、該感光性転写材料を、感光性樹脂層が被転写体に接するように前記被転写体に圧着する圧着工程と、(b)被転写体に圧着された前記感光性転写材料の感光性樹脂層を(少なくとも表面処理層を介してあるいは介さずに)パターン状に露光する露光工程と、(c)露光された前記感光性樹脂層を現像する現像工程とを有する方法によって形成されるものであり、好ましくは前記(c)現像工程の後に(d)現像して得られた隔壁パターンをベーク処理するベーク工程が設けられる。
【0141】
本発明の隔壁は、既述のように、本発明に係るフッ素系樹脂を含む表面処理層が感光性樹脂層に接して設けられた感光性転写材料を用いて形成されるので、転写後の露光、現像等を経て形成された隔壁の上面(隔壁の被転写体と接する側とは反対側の表面;図3参照)に撥インク性(撥油および撥水性を含む)を選択的に付与されると共に、着色領域(画素)となる露出した基板表面や隔壁の側面(図3参照)にはフッ素化処理が行なわれておらず、撥インク性とはならない。
【0142】
−被転写体−
既述の本発明の感光性転写材料を用いて隔壁を転写形成する被転写体としては、例えば透明性の基板が用いられ、表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、あるいはプラスチックフィルム等を挙げることができる。
【0143】
前記被転写体は、予めカップリング処理を施しておくことにより、感光性転写材料の感光性樹脂層との密着を良好に行なうことができる。カップリング処理としては、特開2000−39033号公報に記載の方法が好適である。
なお、基板の厚みは、特に限定されるものではないが、700〜1200μmが一般的に好ましい。
【0144】
−圧着工程−
圧着工程では、既述の本発明の感光性転写材料を、感光性樹脂層の表面が被転写体に接するように被転写体の表面に圧着する。
圧着とは、例えばラミネートのように圧力をかけて接触させることであり、本発明の感光性転写材料を用いて、フィルム状に形成された感光性樹脂層を、加熱及び/又は加圧されたローラー又は平板で圧着又は加熱圧着することによって、被転写体上に感光性転写材料が貼り付けられた積層体とすることができる。
具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネーター及びラミネート方法を用いる方法が挙げられるが、低異物の観点から、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
【0145】
また、ラミネーターとして、多丁ラミネータを用いてもよい。多丁ラミネータの例として、特開2004−333616号公報の段落番号[0007]〜[0039]に記載のものが挙げられる。多丁ラミネータを用いることで、転写エリア幅より狭い幅の転写材料を複数枚並列に供給できるラミネータ(多丁ラミネーター)を用いて樹脂転写材料の塗布幅に依存することなく、広い幅のラミネートが実現できる。
【0146】
−露光・現像工程−
露光工程は、前記圧着工程で被転写体に圧着された感光性転写材料の感光性樹脂層を、少なくとも表面処理層を介してパターン状に露光する。
露光は、例えば、被転写体上に転写された感光性樹脂層の更に上方に、所定のマスクを配置すると共に、該マスクの更に上方に光源を配置し、マスク及び表面処理層を介してマスク上方から照射することにより行なえる。
【0147】
露光の光源としては、感光性樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。露光量としては、通常5〜300mJ/cm2であり、好ましくは10〜200mJ/cm2である。
なお、パターン状の露光は、前記マスクを用いて行なう露光方法以外に、特開2004−240216号公報の段落番号[0061]〜[0205]に記載のレーザー光源による露光によっても行なえる。
【0148】
露光工程においては、被転写体上に設けられた感光性樹脂層の被転写体と接しない露出面をフッ素化する。感光性樹脂層を露光、硬化する過程で、表面処理層中の本発明に係るフッ素系樹脂が感光性樹脂層と化学結合又は物理的に吸着するなどの相互作用を起こし、感光性樹脂層の表面処理層側界面に固定されるので、感光性樹脂層の表面処理層側界面に撥インク性を付与することができる。
【0149】
現像工程は、前記露光工程で露光された感光性樹脂層を現像液を用いて現像し、未露光領域の感光性樹脂層を現像除去する。この現像を行なう工程を経ることにより、露光により形成された潜像を顕在化し、隔壁として得ることができる。
【0150】
このとき、現像により表面処理層を除去することができる。これにより、感光性樹脂層上の表面処理層は除去されるが、感光性樹脂層表面に固定された本発明に係るフッ素系樹脂は残るので、感光性樹脂層の被転写体と接する側と反対側の表面(被転写体上の感光性樹脂層の上面)のみに選択的に撥インク性が付与された隔壁とすることができる。
【0151】
前記現像液としては、特に制約はなく、特開平5−72724号公報に記載のものなど、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は感光性樹脂層が溶解型の現像挙動をするものが好ましく、例えばpKa=7〜13の化合物を0.05〜5mol/Lの濃度で含むものが好ましいが、更に水と混和性を有する有機溶剤を少量添加してもよい。
ここで、「水と混和性を有する有機溶剤」としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、乳酸エチル、乳酸メチル、ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
有機溶剤の濃度は、0.1〜30質量%が好ましい。
【0152】
前記現像液には、更に公知の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の濃度は0.01〜10質量%が好ましい。
【0153】
現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディプ現像等、公知の方法を用いることができる。ここでは、シャワー現像について説明する。
シャワー現像は、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、未硬化部分を除去することができる。なお、現像前に感光性樹脂層の溶解性の低いアルカリ性の液をシャワーなどにより吹き付け、熱可塑性樹脂層、中間層などを除去しておくことが好ましい。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温度は、20〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0154】
−ベーク工程−
ベーク工程では、現像工程で現像して得られた隔壁パターンをベーク(加熱)処理する。ベーク処理は、パターン露光及び現像により形成された画像(隔壁パターン)を加熱して硬化させるものである。
【0155】
ベーク処理の方法としては、従来公知の種々の方法を用いることができる。すなわち、例えば、複数枚の基板をカセットに収納してコンベクションオーブンで処理する方法、ホットプレートで1枚ずつ処理する方法、赤外線ヒーターで処理する方法、等である。
【0156】
また、ベーク温度(加熱温度)としては、通常150〜280℃であり、好ましくは180〜250℃である。加熱時間は、前記ベーク温度によって変動するが、ベーク温度を220℃とした場合には、中間ベーク処理では5〜30分、最終ベーク処理では60〜200分が好ましい。
【0157】
また、隔壁の形成方法におけるベーク工程においては、前記露光、現像工程によって形成された隔壁パターンを、不均一な膜減りを防止し、感光性樹脂層に含まれるUV吸収剤等の成分の析出を防止する観点から、ベーク処理前にポスト露光を行なうようにしてもよい。ベーク処理を施す前にポスト露光を行なうと、ラミネート時にかみこんだ微小な異物が膨れて欠陥となるのを効果的に防止することができる。
【0158】
−ポスト露光−
ここで、前記ポスト露光について略説する。
ポスト露光に用いる光源としては、感光性樹脂層を硬化し得る波長領域の光(例えば、365nm、405nm)を照射できるものであれば適宜選定して用いることができる。
具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が挙げられる。
露光量としては、前記露光を補う露光量であればよく、通常は50〜5000mJ/cm2であり、好ましくは200〜2000mJ/cm2、更に好ましくは500〜1000mJ/cm2である。
【0159】
〜隔壁の形成方法の一例〜
ここで、隔壁の形成方法の一例を以下に示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
i)基板洗浄
無アルカリガラス基板(以下、単に「ガラス基板」ということがある。)を用いる際に、基板表面の汚れを除去するために洗浄を行なう。例えば、25℃に調整したガラス洗浄剤液(商品名:T−SD1、T−SD2、富士写真フイルム(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有す回転ブラシで洗浄し、更に純水シャワー洗浄を行なう。
【0160】
ii)シランカップリング処理
ラミネート時の感光性樹脂層の密着性を増すために、ガラス基板にシランカップリング処理を実施することが好ましい。シランカップリング剤としては、感光性樹脂と相互作用する官能基を有するものが好ましい。例えば、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3質量%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄する。この後、加熱により反応させる。加熱槽を用いてもよいが、ラミネータの基板予備加熱でも反応を進めることができる。
【0161】
iii)ラミネート
続いて、このガラス基板は、基板予備加熱装置により100℃で2分間加熱された後、次工程のラミネータに送られる。これにより、ラミネートを均一に行なうことができる。
そして、既述の本発明の感光性転写材料の保護フィルムを剥離後、ラミネータを用いて、100℃に加熱したガラス基板の表面に、ゴムローラ温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分の条件にてでラミネートする。ゴムローラの温度は、100℃以上150℃以下が好ましい。ガラス基板の温度が前記範囲内であると、転写材料へのシワが抑えられ、感光性樹脂層の密着も良好である。
【0162】
iv)パターン露光
ラミネート後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機を用いて露光する。なお、露光を行なってから仮支持体を剥離してもよいし(この場合、仮支持体と表面処理層とを介して感光性樹脂層を露光)、仮支持体を剥離してから露光してもよい(この場合、表面処理層を介して感光性樹脂層を露光)。
この場合、露光時に表面処理層が感光性樹脂層に密着した状態にあり、仮支持体を剥離するときには表面処理層と同時に剥離してもしなくてもよいが、表面処理層は感光性樹脂層と密着したまま残し、仮支持体のみを剥離することが好ましい。
【0163】
被転写体のサイズが50センチメートル以上の場合は、マスクの撓み防止の観点から、基板とマスク(画像パターンを有する石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、好ましくは表面処理層の上から露光するのが好適である。マスク面と感光性樹脂層の基板側表面との間の距離は短いほど解像はよいが、異物が付着しやすいので、100〜300μmに設定する。露光量は、好ましくは10〜300mJ/cm2の範囲とする。以上のようにして、パターン状に露光される。
【0164】
v)熱可塑性樹脂層、中間層の除去
露光及び仮支持体の剥離除去が終了した後、トリエタノールアミン系現像液(例えば、2.5%のトリエタノールアミン、ノニオン界面活性剤、及びポリプロピレン系消泡剤含有の(商品名)T−PD1、富士写真フイルム(株)製など)等を用いて、熱可塑性樹脂層と中間層とを除去する。このとき、理想的には、感光性樹脂層は全く現像されることがないように条件他が設定される。例えば、30℃で50秒間、フラットノズル圧力0.04MPaでシャワーにて供給される。
なお、熱可塑性樹脂層や中間層が表面処理層に該当しない場合は、仮支持体の剥離時に仮支持体と共に除去してもよい。
【0165】
vi)感光性樹脂層の現像
引き続き、感光性樹脂層をアルカリにて現像してパターン形成する。例えば、炭酸Na系現像液(例えば、0.06モル/リットルの炭酸水素ナトリウム、同濃度の炭酸ナトリウム、1質量%のジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有の(商品名)T−CD1、富士写真フイルム(株)製)が用いられる。
条件としては、例えば35℃で35秒間、コーン型ノズル圧力0.15MPaでシャワー現像する。現像液としては、KOH系、TMAΗ系を用いてもよい。
【0166】
vii)残渣除去
引き続き、洗浄剤(例えば、燐酸塩、珪酸塩、ノニオン界面活性剤、消泡剤、及び安定剤含有の(商品名)T−SD1、富士写真フイルム(株)製又は、炭酸ナトリウム及びフェノキシポリオキシエチレン系界面活性剤含有の(商品名)T−SD2、富士写真フイルム(株)製)等が用いられる。
条件は、33℃で20秒間、コーン型ノズル圧力0.02MPaでシャワーとナイロン毛を有する回転ブラシにより残渣除去を行なう。以上により、未露光部における感光性樹脂層の残成分が除去される。
【0167】
viii)ポスト露光
引き続き、ガラス基板に対してパターン形成面側から超高圧水銀灯で500mJ/cm2程度、ポスト露光される。ポスト露光は両面から実施してもよく、また、100〜800mJ/cm2の範囲で選択することができる。ポスト露光の実施により、その後のベーク処理での重合硬化が高まると共に、ポスト露光時の露光量でベーク後の隔壁の断面形状を調整することができる。
【0168】
ix)ベーク処理
ベーク処理を行なうことで、モノマー又はオリゴマーの反応を促進して硬い膜とすることができる。ベーク処理は、200〜240℃で30〜180分間の熱処理によるのが好ましい。これらの温度及び時間は、生産タクトを落さないように高めの温度で、しかも短めの時間に設定することがより好ましい。
以上の工程を経ることにより、本発明の隔壁を形成することができる。
【0169】
既述のように、本発明の感光性転写材料は感光性樹脂層に接触させて設けられる表面処理層に本発明に係るフッ素系樹脂を含有して構成されるので、所望の被転写体に感光性樹脂層を転写して形成されたブラックマトリクスなどの隔壁の上には少なくとも本発明に係るフッ素系樹脂が存在しており、すなわち被転写体上の隔壁を構成する感光性樹脂層の、被転写体と接する側と反対側の表面(被転写体上の感光性樹脂層の上面)が表面処理層によりフッ素化され、フッ素化された表面が露出した状態にあり、被転写体上に設けられた隔壁により隔離された各着色領域(カラーフィルタ等の光学素子の着色画素など)をインクジェット法によって形成するにあたり、各着色領域間を区画する隔壁の上面に選択的に付与された撥インク性により、インクジェット付与されたインクの混色、はみ出しを防止でき、ひいては付与されたインクが他の着色領域内に流れ込んだり滲んだりするのを防止することができる。
カラーフィルタを作製する場合には、隣接する着色画素間を隔離すると共に遮光する遮光層とすることが好ましく、その場合にはブラックマトリックス、あるいはブラックストライプとすることができる。
【0170】
以下、隔壁が設けられた本発明の光学素子としてカラーフィルタを一例に説明する。
図3は、カラーフィルタを模式的に示す断面図である。なお、図3では、右端の凹部3は説明を分かり易くするために、着色画素が形成されていない状態で示してある。
【0171】
本発明のカラーフィルタは、図3に示すように、ガラス基板6上に、所定の間隔で凹部3が形成されるように隔壁1が設けられており、隔壁間に取り囲まれた凹部3にインクが付与されて着色画素2が形成されている。
ここでは、説明上分かり易くするため、隔壁1を5個、凹部3を4個のみ示したが、隔壁及び凹部は必要に応じて設けることができる。例えばストライプ状のカラーフィルタの場合に画素数が640画素である場合には、1画素当りRGBの3個の着色領域が必要になるので、1921個の隔壁1と1920個の凹部3とが必要になる。液晶表示素子では、基板間隙の精密性から表示を行なわない表示画素の周辺までカラーフィルタパターンを形成することもあり、その場合には更に増えることになる。
【0172】
パターンがストライプ状の場合には、長手方向には隔壁1が形成されなくてもよいが、着色画素2の周囲を完全に隔壁1で囲むこともある。特にモザイク状のカラーフィルタの場合には、着色画素2の周囲は隔壁1で囲まれる。
【0173】
着色画素2を区画するための隔壁1は、ガラス基板6上に線状や格子状に形成される。この隔壁1の形状は、隔壁により区画される凹部3が、形成しようとする着色画素2に対応するように形成されればよい。例えば、ストライプ状のカラーフィルタを形成する場合には線状に形成され、四角の着色画素2に対応させるには格子状に形成される。これは、着色画素2の形状により適宜定められるので、放射状、円周状等種々の形状も考えられる。
【0174】
隔壁1は、液晶表示素子等に構成するときには、ブラックマトリクスとしての機能を兼ねることが有利である。以下では、隔壁1がブラックマトリクスを兼ねる例について説明するが、ブラックマトリクスとして形成しない場合は、黒色の材料等を含まない構成にすればよい。
【0175】
隔壁1は、凹部3をインクジェット法によって着色する際に、打滴されたインクが他の凹部や既設の着色画素に流れ込んだりあるいは滲むのを防止する役割を有するものである。したがって、隔壁1の高さはある程度高いことが好ましいが、カラーフィルタを構成する場合の全体の平坦性が高いことも要求されることを考慮すると、必要な着色画素の厚さに近い高さとするのが好ましい。具体的には、所望の着色画素を得るのに必要なインクの堆積量によっても異なるが、通常は0.1〜3μm程度である。
【0176】
ガラス基板6上の凹部3にインクをインクジェット付与する際に、隔壁1の上面(図3に示す上面4)にインクが残存すると平坦性や着色画素間の厚みや着色の均一性が損なわれるが、本発明の隔壁においては上面が撥インク処理されるので、厚みや着色の不均一を効果的に抑制することができる。一方、本発明の隔壁は、その側面(図3に示す側面5)への撥インク処理は施されていない。すなわち、隔壁1の上面4はインクを弾く性質を有し、側面はインクを弾き難い性質を有している。さらに、着色画素を形成しようとする凹部3にも撥インク処理は施されていないので、凹部3の露出面はインクを弾き難い性質を有しており、したがってインクをインクジェット付与した際には、凹部3において白抜けが起こりにくく、しかもインクのはみ出しや混色をも効果的に防止することが可能である。
【0177】
ここで、カラーフィルタを構成する隔壁1の上面4に付与する撥インク性の程度としては、水の接触角で85〜140°であることが好ましい。この接触角が、85°未満では隔壁の上面にインクが残存しやすくなり、140°を超えると隔壁間の凹部の着色が阻害されやすくなったり、隔壁の上面の平滑性が失われることがある。特に100〜125°の範囲内がより好ましい。
撥インク性の程度(水の接触角の範囲)は、既述の表面処理層における本発明に係るフッ素系樹脂の含有量や、感光性樹脂層に対するパターン露光量等によって制御することができる。
【0178】
ここで、水の接触角の測定は、協和界面科学(株)製の接触角計DM300により行なうことができ、インクの接触角も同様にして求めることができる。
【0179】
本発明において、ブラックマトリクスとは、例えば、ストライプ状のカラーフィルタを形成する場合には線状に形成され、四角の画素に対応させるためには格子状に形成される、遮光性を有する着色画素間に設けられる隔壁である。ブラックマトリクスは、着色画素の形状により適宜定められ、放射状、円周状など種々の形状に構成することができる。
ブラックマトリクスは、感光性樹脂層に遮光性を付与できる着色剤を用いることにより作製することが可能である。
【0180】
<光学素子及びその製造方法>
本発明の感光性転写材料の感光性樹脂層を転写して被転写体上に形成された隔壁により区画された凹部に、インクジェット法により液適を付与して着色領域(例えば着色画素)を形成することによって、本発明の光学素子を作製することができる。
【0181】
本発明の光学素子には、カラーフィルタ、エレクトロルミネッセンス素子など、予め形成された隔壁で取り囲まれた凹状の領域をインクジェット法での液適付与により着色してなる光学素子が含まれる。
【0182】
前記カラーフィルタの例としては、ガラス等の基板上に赤色、緑色、青色等に着色された矩形状の画像をそれぞれマトリックス状に配置し、画像と画像との境界をブラックマトリクス等の隔壁を配して構成された態様などが挙げられる。また、エレクトロルミネッセンス素子の例としては、蛍光性の無機もしくは有機化合物を含む薄膜を陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、前記薄膜に電子、正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子を生成させ、この励起子が失活する際の蛍光あるいは燐光の放出を利用して発光させる態様の素子が挙げられる。エレクトロルミネッセンス素子では、蛍光性材料を例えばTFT等素子が形成された基板上にインクジェット法により液適付与して発光層を形成することにより素子を構成することができる。
【0183】
インクジェット法等の液滴を付与する方法は、製造プロセスの簡略化及びコスト削減を図ることができることから、カラーフィルタやエレクトロルミネッセンス素子といった光学素子の製造へ応用されている。
【0184】
インクジェット法としては、帯電したインクを連続的に噴射し電場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等、各種の方法を採用できる。
【0185】
インクは、油性、水性ともに使用できる。また、インクに含まれる着色剤は、染料、顔料ともに使用でき、耐久性の面からは顔料が好ましい。また、公知のカラーフィルタの作製に用いられている油性の着色インク(着色樹脂組成物)を用いることもできる。
【0186】
インクには、インクジェット付与後の工程を考慮し、加熱によって硬化する又は紫外線などのエネルギー線によって硬化する成分を添加することもできる。加熱によって硬化する成分としては、各種の熱硬化性樹脂が広く用いられ、エネルギー線によって硬化する成分としては、例えばアクリレート誘導体又はメタクリレート誘導体に光反応開始剤を添加したものを用いることができる。特に耐熱性を考慮して、アクリロイル基、メタクリロイル基を分子内に複数有するものがより好ましい。これらのアクリレート誘導体、メタクリレート誘導体は、水溶性のものが好ましく、水に難溶性のものでもエマルション化するなどして用いることができる。
この場合、前記「感光性樹脂層」の項で挙げた顔料などの着色剤を含む感光性樹脂組成物を好適なものとして用いることができる。
【0187】
光学素子として例えばカラーフィルタを構成する場合、赤色の着色画素の画素内段差ΔTR、緑色の着色画素の画素内段差ΔTG、青色の着色画素の画素内段差ΔTBが全て0.5μm以下、好ましくは0.2μm以下であることが好ましい。画素内段差の好ましい着色画素で構成されたカラーフィルタは、光漏れによるコントラストの低下や残像等の表示不良の発生が抑えられ、優れた画質での画像表示が可能である。
画素内段差を好ましい範囲に調整する方法としては、特開平11−218607号公報の段落番号[0038]〜[0042]に記載の方法が挙げられる。
【0188】
また、少なくとも3色から構成されるカラーフィルタ(着色画素)は、各膜の三刺激値「X,Y,Z」に基づいて計算される白色表示座標(u'white,v'white)及び黒色表示座標(u'black,v'black)が、座標P1(0.18、0.52)、座標Q1(0.25、0.52)、座標R1(0.23、0.42)、座標S1(0.15、0.42)の四座標を結ぶ直線の範囲内となるものが好ましい。該カラーフィルタの例として、特開2005−25175号公報の段落番号[0008]〜[0047]に記載のものが挙げられる。カラーフィルタを用いた表示装置は、画素間のバランスを適切にとることができ、表示の色調節が簡便となる。また、とりわけテレビ用のカラーフィルタとして好ましく用いることができる。
【0189】
なお、着色領域を形成するためのインク(感光性樹脂組成物)は、水平に置いた清浄なガラス基板の上に1滴滴下し、ガラス基板を水平から45°傾けて滴下物を流下させ、100℃で3分間ベーク処理した後の感光性樹脂組成物の拡がり部において、拡がり部の膜厚を1μmに換算したときのヘイズ値が2以下となる感光性樹脂組成物であることが好ましい。
感光性樹脂組成物の例として、特開2003−330174号公報の段落番号[0006]〜[0059]に記載の組成物が挙げられる。この組成物を用いると、膜厚の面内均一性が良好でムラのないカラーフィルタを形成することができる。
【0190】
また、インクによって形成される着色画素のコントラストは、2000以上であることが好ましい。コントラストを上げる方法として、特開2005−25206号公報の段落番号[0025]に記載の方法が挙げられる。コントラストが高いカラーフィルタを用いた表示装置は、優れた色再現性を有するEBU規格のTV用液晶表示装置として使用することができる。
【0191】
カラーフィルタを作製するにあたっては、インクジェット法により通常RGB3色のインクを打滴することにより3色のカラーフィルタが形成される。このカラーフィルタは、液晶表示素子、電気泳動表示素子、エレクトロクロミック表示素子、PLZT等と組合せて表示素子として用いられる。カラーカメラやその他のカラーフィルタを用いる用途にも使用できる。
【0192】
カラーフィルタを含む本発明の光学素子は、各色インクの滲み、はみ出し、隣接画素との混色などの欠陥が効果的に抑制されている。
【0193】
本発明の光学素子は、上記のように様々な表示装置に用いられ、対向する一対の基板間に液晶材料が封入された液晶表示素子としても好適である。
【0194】
また、本発明の光学素子がカラーフィルタに構成される場合、例えば、後述の液晶表示装置の対向基板(TFTなどの能動素子がない側の基板)に形成するもの、或いは、TFT基板側に形成するCOA方式、TFT基板側に黒だけを形成するBOA方式、又はTFT基板にハイアパーチャー構造を有するHA方式に適用することができる。
【0195】
カラーフィルタ上には、更に必要に応じて、オーバーコート膜や透明導電膜を形成することができる。
【0196】
<表示装置>
本発明の表示装置は、既述の本発明の表示素子(カラーフィルタを含む。)を備えたものであり、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などが含まれる。
【0197】
例えば、本発明の光学素子であるカラーフィルタと、これとは別に用意した対向基板とを所定の間隙を設けて配向配置し、カラーフィルタと対向基板との間に液晶を封入することによって液晶表示装置が作製される。
【0198】
液晶の表示方式としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択できる。例えば、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、STN(Supper Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、GH(Guest Host)、FLC(強誘電性液晶)、AFLC(反強誘電性液晶)、PDLC(高分子分散型液晶)などの表示方式に適用可能である。
【実施例】
【0199】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0200】
(実施例1)
[感光性転写材料K1の作製]
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、下記処方Cからなる熱可塑性樹脂層用塗布液を塗布、乾燥させて熱可塑性樹脂層を形成した。次に、下記処方P1からなる表面処理層用塗布液を前記熱可塑性樹脂層の表面に塗布し、乾燥させて表面処理層を形成し、形成された表面処理層の表面に更に、下記表1に記載の感光性樹脂組成物K1を塗布、乾燥させて、感光性樹脂層Kを形成した。
このようにして、仮支持体の上に、乾燥膜厚が6.0μmの熱可塑性樹脂層と、乾燥膜厚が1.6μmの表面処理層と、乾燥膜厚が2.5μmのブラック(K)の感光性樹脂層Kとを設け、さらにこの感光性樹脂層上に保護フィルム(厚さ12μmポリプロピレンフイルム)を圧着して、仮支持体/熱可塑性樹脂層/表面処理層(酸素遮断膜)/感光性樹脂層K/保護フィルムの積層構造に構成された感光性転写材料K1を作製した。
【0201】
[塗布性の評価]
ここで、感光性樹脂組成物K1の塗布性を下記評価基準にしたがって評価した。なお、ムラ及びハジキの程度が、Aランク、Bランク、又はCランクの場合が実用上許容可能範囲である。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
Aランク:ムラ・ハジキの発生のない塗布が可能で塗布性は良好であった。
Bランク:若干ムラはあるが、塗布性は良好であった。
Cランク:若干ハジキはあるが、塗布性は良好であった。
Dランク:ムラ・ハジキの発生はあるが、塗布可能であった。
Eランク:塗布が不可能であった。
【0202】
〜熱可塑性樹脂層用塗布液の処方C〜
・メタノール …11.1部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル … 6.36部
・メチルエチルケトン …52.4部
・メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 … 5.83部
(共重合組成比(モル比)=55/11.7/4.5/28.8、重量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
・スチレン/アクリル酸共重合体 …13.6部
(共重合組成比(モル比)=63/37、平均分子量=1万、Tg≒100℃)
・ビスフェノールAにペンタエチレングリコールモノメタクリートを2当量脱水縮合した化合物(BPE−500、新中村化学(株)製) … 9.1部
・界面活性剤1 … 0.54部
【0203】
〜表面処理層用塗布液の処方P1〜
・PVA205 … 32.2部
(ポリビニルアルコール、(株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550)
・ポリビニルピロリドン(BASF社製、K−30) … 14.9部
・蒸留水 …524部
・メタノール …429部
・前記構造式(1)で表される樹脂(既述の例示樹脂a) … 0.59部
【0204】
〜感光性樹脂組成物K1〜
【表1】

【0205】
ここで、前記表1に記載の感光性樹脂組成物K1の調製について説明する。
感光性樹脂組成物K1は、前記表1に記載の量の顔料分散物1、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150r.p.m.で10分間攪拌し、次いで、前記表1に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー1、DPHA液、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチルアミノ)−3’−ブロモフェニル]−s−トリアジン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、及び界面活性剤1をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150r.p.m.で30分間攪拌することによって得たものである。
【0206】
なお、感光性樹脂組成物K1中の顔料分散物1、バインダー1、DPHA液、及び界面活性剤1の組成は下記の通りである。
*顔料分散物1
・カーボンブラック(デグッサ社製、商品名:Special Black 250)…13.1部
・N,N’−ビス−(3−ジエチルアミノプロピル)−5−{4−〔2−オキソ−1−(2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンゾイミダゾール−5−イルカルバモイル)−プロピルアゾ〕−ベンゾイルアミノ]−イソフタルアミド…0.65部
・ポリマー(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=72/28モル比のランダム共重合物、重量平均分子量3.7万)…6.72部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート…79.53部
【0207】
*バインダー1
・ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(=78/22[モル比])のランダム共重合物(重量平均分子量:4.4万)…27部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート…73部
【0208】
*DPHA液
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(重合禁止剤MEHQ500ppm含有、日本化薬(株)製、商品名:KAYARAD DPHA)…76部
・プロピレングリコールモノメチルエーテル…24部
【0209】
*界面活性剤1
・C613CH2CH2OCOCH=CH2(40部)とH(OCH(CH3)CH27OCOCH=CH2(55部)とH(OCH2CH27OCOCH=CH2(5部)との共重合体(重量平均分子量3万)…30部
・メチルエチルケトン…70部
【0210】
[隔壁の形成]
無アルカリガラス基板を、25℃に調整したガラス洗浄剤液をシャワーにより20秒間吹き付けながらナイロン毛を有する回転ブラシで洗浄し、純水シャワー洗浄後、シランカップリング液(N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン0.3%水溶液、商品名:KBM603、信越化学工業(株)製)をシャワーにより20秒間吹き付け、純水シャワー洗浄した。このガラス基板を基板予備加熱装置で100℃で2分間加熱した。
【0211】
前記感光性転写材料K1の保護フィルムを剥離後、露出した感光性樹脂層Kの表面を、ラミネーター(株式会社日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いてゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度2.2m/分の条件にて、100℃で2分間加熱後のガラス基板にラミネートした。
【0212】
仮支持体を剥離後、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング(株)製)を用い、基板とマスク(画像パターンを有する石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層Kとの間の距離を200μmに設定して露光量200mJ/cm2にてパターン露光した。
【0213】
露光後、純水をシャワーノズルにて噴霧して、感光性樹脂層K1の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を純水で100倍に希釈したものを用いて23℃で80秒間、フラットノズル圧力0.04MPaにてシャワー現像し、パターニング画像を得た。引き続き、超純水を超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行ない、マトリックス状に形成されたブラック(K)画像(以下、ブラックマトリクスと称する。)を得た。その後さらに、ブラックマトリクスが形成されたガラス基板に対して、ブラックマトリクス形成面側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm2にてポスト露光し、更にこのガラス基板のブラックマトリクス形成面側とは反対側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm2にてポスト露光した後、220℃で30分間の熱処理を行なった。
【0214】
[撥インク性の評価]
熱処理後のガラス基板上のブラックマトリックス(BM)の上面及び、ガラス基板のガラス面(凹部)について、純水に対する接触角を協和界面科学(株)製の接触角計DM300を用いて測定した。ブラックマトリックスの上面については、微細なマトリックスパターンを取り囲むように周囲に設けられた幅5mmの額縁部分の上面にて測定を行なうようにし、ガラス基板のガラス面については、額縁部分の外側のマトリックスパターンの形成されていない領域にて測定を行なうようにした。評価結果は下記表2に示す。
【0215】
[インクの調製]
(Rインク)
下記組成中の成分のうち、まず顔料、高分子分散剤、及び溶剤を混合し、3本ロールとビーズミルとを用いて顔料分散液を得た。そして、この顔料分散液をディソルバー等で充分に攪拌しながら、残りの成分を少量ずつ添加し、R(赤色)画素用着色インク(Rインク)を調製した。
【0216】
〈Rインクの組成〉
・顔料(C.I.ピグメントレッド254)…5部
・高分子分散剤(AVECIA社製、ソルスパース24000)…1部
・バインダー(グリシジルメタクリレート/スチレン共重合体)…3部
・第一エポキシ樹脂…2部
(ノボラック型エポキシ樹脂;エピコート154、油化シェル社製)
・第二エポキシ樹脂…5部
(ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル)
・硬化剤(トリメリット酸)…4部
・溶剤(3−エトキシプロピオン酸エチル)…80部
【0217】
(Gインク)
次に、前記Rインクの組成中のC.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントグリーン36に代えて同量用いる以外は、R画素用着色インク組成物の場合と同様にして、G(緑色)画素用着色インク組成物(Gインク)を調製した。
【0218】
(Bインク)
次に、前記Rインクの組成中のC.I.ピグメントレッド254をC.I.ピグメントブルー15:6に代えて同量用いる以外は、R画素用着色インク組成物の場合と同様にして、B(青色)画素用着色インク組成物(Bインク)を調製した。
【0219】
次いで、ピエゾ方式、ノズル解像度180dpiのヘッドを搭載したインクジェット記録装置を用意し、これに上記より調製したRインク、Gインク、及びBインクを装填し、ガラス基板に形成されたブラックマトリックス(隔壁)によりマトリックス状に取り囲まれた凹部(ガラス基板の露出部)に、R、G、Bの各インクを所望の濃度になるようにインクジェット法により液滴付与した。
そして、ブラックマトリクス及びR,G,Bインクが設けられたガラス基板に対し、230℃で1時間の熱処理を行なって各色のインクを硬化させ、R、G、B3色の着色領域(画素)と各着色領域を隔離するブラックマトリクス(隔壁)とが設けられてなるカラーフィルタを作製した。
【0220】
[カラーフィルタの評価]
1.インクのはみ出し及び混色
得られたカラーフィルタについて、カラーフィルタの任意の3000個の画素を光学顕微鏡により観察し、インクのはみ出し及び混色の有無を下記評価基準にしたがって評価した。なお、インクのはみ出し及び混色とは、図1に示す現象をいい、下記のAランク、Bランク、又はCランクの場合は実用上許容可能範囲である。評価結果は下記表2に示す。
<評価基準>
Aランク:全くないもの
Bランク:1〜2箇所のもの
Cランク:3〜4箇所のもの
Dランク:5〜10箇所のもの
Eランク:11箇所以上のもの
【0221】
2.平坦性
カラーフィルタの画素内の平坦性、すなわち段差測定(厚みムラの評価)を次のようにして行なった。Tencor社製の表面粗さ計P−10で任意の画素の表面形状を測定し、画素内の最も盛り上がった部分と画素内の最も低い部分との高さの差ΔTを求めた。許容される段差は、0.1μm以下である。
〈評価基準〉
○:ΔT≦0.1μm
△:0.1μm<ΔT≦0.15μm
×:ΔT>0.15μm
【0222】
[液晶表示装置の作製]
−ITOパターンの形成−
上記のように作製したカラーフィルタの、ブラックマトリクス及び着色領域(画素)の形成面にはオーバーコート層を設けず、RGBの画素が形成されたカラーフィルタの上に直接、ITO膜をスパッタリングにより形成して透明電極を設けた。
【0223】
−スペーサの形成−
前記ITO膜形成後のガラス基板に対し、そのITO膜上に、感光性樹脂組成物K1の処方を下記感光性樹脂層用塗布液の処方Sに代えると共に、表面処理層用塗布液の処方P1を下記処方PC1に代えたこと以外は、前記[隔壁の形成]における場合と同様にして、感光性転写材料K2を作製し、スペーサを形成した。但し、露光、現像、及び熱処理は、以下の方法により行なった。
【0224】
所定のフォトマスクを介して超高圧水銀灯により300mJ/cm2でプロキシミティー露光した。露光後、KOH現像液〔CDK−1(商品名)の100倍希釈液(pH=11.8)、富士写真フイルム(株)製〕を用いて未露光部の感光性樹脂層を溶解除去した。続いて、230℃で30分間の熱処理を行ない、ガラス基板上のITO膜の上に直径16μm、平均高さ3.7μmの透明な柱状スペーサパターンを形成した。以下、この柱状スペーサパターンが形成されたガラス基板を「液晶表示装置用基板」と称する。
【0225】
〜感光性樹脂層用塗布液の処方S〜
・メタクリル酸/アリルメタクリレート共重合体 …108部
(モル比=20/80、分子量40000)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート … 64.7部
(重合性モノマー)
・2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−〔4’−(N,N−ビスエトキシカルボニルメチル)−3’−ブロモフェニル〕−s−トリアジン … 6.24部
・ハイドロキノンモノメチルエーテル … 0.0336部
・ビクトリアピュアブルーBOHM(保土ヶ谷化学(株)製) … 0.874部
・メガファックF780F … 0.856部
(大日本インキ化学工業(株)製;界面活性剤)
・メチルエチルケトン …328部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート …475部
・メタノール … 16.6部
【0226】
〜表面処理層用塗布液の処方PC1〜
・PVA205 … 32.2部
((株)クラレ製、鹸化度=88%、重合度550;ポリビニルアルコール)
・ポリビニルピロリドン(BASF社製、K−30) … 14.9部
・蒸留水 …524部
・メタノール …429部
【0227】
上記で得られた液晶表示装置用基板を用いて、特開平11−242243号公報の第一実施例([0079]〜[0082])に記載の方法と同様にして、液晶表示装置を作製した。
【0228】
[液晶表示装置の評価]
得られた液晶表示装置に各種画像を表示させ、通常の液晶ディスプレイとして正常な表示ができるかを目視により評価した。評価結果は下記表2に示す。
【0229】
(実施例2)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂aの量を4.66部に変更したこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0230】
(実施例3)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂aの量を10.3部に変更したこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0231】
(実施例4)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂aの量を15.6部に変更したこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0232】
(実施例5)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂b10.3部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0233】
(実施例6)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂b15.6部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0234】
(実施例7)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂c10.3部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0235】
(実施例8)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂c15.6部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0236】
(実施例9)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂d10.3部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0237】
(実施例10)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を例示樹脂d15.6部に代えたこと以外、実施例1と同様にして評価を行なった。
【0238】
(実施例11)
実施例3の[隔壁の形成]において、プロキシミティー型露光機により行なったパターン露光の露光量を300mj/cm2に変更したこと以外、実施例3と同様にして評価を行なった。
【0239】
(実施例12)
実施例3の[隔壁の形成]において、プロキシミティー型露光機により行なったパターン露光の露光量を300mj/cm2とし、KOH系現像液を純水で100倍に希釈したものでの現像時間を40秒間としたこと以外、実施例3と同様にして評価を行なった。
【0240】
(実施例13)
実施例3において、感光性転写材料K1の作製を、熱可塑性樹脂層を設けず、表面処理層用塗布液の処方P1を下記処方EV1に変更し且つ表面処理層の乾燥膜厚を16μmに変更して行なうと共に(感光性転写材料EV1)、更にこの感光性転写材料EV1を用いて以下のように隔壁を形成するようにしたこと以外、実施例3と同様にして評価を行なった。
【0241】
〜表面処理層用塗布液の処方EV1〜
・エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂 … 10部
(三井−デュポンポリケミカル社製、商品名:EVAFLEX−EEA−709)
・トルエン …100部
・前記構造式(1)で表される樹脂(既述の例示樹脂a) … 4.0部
【0242】
[隔壁の形成]
前記感光性転写材料EV1の保護フィルムを剥離後、その露出面を、ラミネーター(株式会社日立インダストリイズ製(LamicII型))を用いて、100℃で2分間加熱後のガラス基板に、ゴムローラー温度100℃、線圧100N/cm、搬送速度1.2m/分の条件にてでラミネートした。
次いで、超高圧水銀灯を有するプロキシミティー型露光機(日立電子エンジニアリング(株)製)にて、ガラス基板とマスク(画像パターンを有する石英露光マスク)とを垂直に立てた状態で、マスク面と感光性樹脂層との間の距離を200μmに設定して露光量200mJ/cm2でパターン露光した。露光後、表面処理層と共に仮支持体を剥離し、ガラス基板上に感光性樹脂層のみを転写した。
【0243】
次に、純水をシャワーノズルにて噴霧して感光性樹脂層の表面を均一に湿らせた後、KOH系現像液(KOH、ノニオン界面活性剤含有、商品名:CDK−1、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を純水で100倍に希釈したものを用いて23℃で40秒間、フラットノズル圧力0.04MPaにてシャワー現像し、パターニング画像を得た。引き続き、超純水を超高圧洗浄ノズルにて9.8MPaの圧力で噴射して残渣除去を行ない、マトリックス状に形成されたブラック(K)画像(ブラックマトリクス)を得た。その後さらに、ブラックマトリクスが形成されたガラス基板に対して、ブラックマトリクス形成面側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm2にてポスト露光し、更にこのガラス基板のブラックマトリクス形成面側とは反対側から超高圧水銀灯で1000mJ/cm2にてポスト露光した後、220℃で30分間の熱処理を行なった。
【0244】
(実施例14)
実施例3において、Rインク、Gインク、及びBインクを下記のRインク、Gインク、及びBインクに代えたこと以外、実施例3と同様にして評価を行なった。
【0245】
[インクの調製]
下記組成からなるアクリル系共重合体を熱硬化成分として、以下に示す組成のRインク、Gインク、及びBインクの各インクを調製した。
【0246】
*硬化成分
・メチルメタクリレート …50部
・ヒドロキシエチルメタクリレート…30部
・N−メチロールアクリルアミド …20部
【0247】
〈Rインクの組成〉
・C.I.アシッドオレンジ148 … 3.5部
・C.I.アシッドレッド289 … 0.5部
・ジエチレングリコール …30部
・エチレングリコール …20部
・イオン交換水 …40部
・前記硬化成分 … 6部
【0248】
〈Gインクの組成〉
・C.I.アシッドイエロー23 … 2部
・亜鉛フタロシアニンスルホアミド … 2部
・ジエチレングリコール …30部
・エチレングリコール …20部
・イオン交換水 …40部
・前記硬化成分 … 6部
【0249】
〈Bインクの組成〉
・C.I.ダイレクトブルー199 … 4部
・ジエチレングリコール …30部
・エチレングリコール …20部
・イオン交換水 …40部
・前記硬化成分 … 6部
【0250】
(実施例15)
実施例3において、ITOパターンの形成をオーバーコート層の形成後に行なうようにしたこと以外、実施例3と同様にして評価を行なった。
【0251】
−オーバーコート層の形成−
実施例1と同様にして作製したカラーフィルタの、ブラックマトリクス及び着色領域(画素)の形成面を、低圧水銀灯UV洗浄装置(クリーンテック社製)を用いて洗浄して残渣及び異物を除去した後、透明オーバーコート剤を膜厚が1.5μmになるように全面塗布し、230℃で40分間ベークを行なって、透明なオーバーコート層を設けた。このとき、オーバーコート層を形成するために、下記構造式(A)のポリアミック酸と下記構造式(B)のエポキシ化合物とを3:1の質量比にて混合して用いた。
【0252】
−ITOパターン(PVAモード)の形成−
オーバーコート層が形成されたガラス基板をスパッタ装置に入れ、100℃にて厚み1300ÅのITO(インジウム錫酸化物)を全面に真空蒸着した後、240℃で90分間アニールしてITOを結晶化し、フォトリソグラフィ工程によりITO膜のパターンを作り、王水で不要ITOをエッチングしてパターン形成を完了した。
【0253】
【化19】

【0254】
【化20】

【0255】
(比較例1)
実施例1において、表面処理層用塗布液の処方P1の調製に用いた例示樹脂a0.59部を、EF−123A(Jemco社製のEF−123A(リン酸ビス[2−(N−プロピルペルフルオロオクチルスルホニルアミノ)エチル]エステル)10.3部に代えたこと以外、実施例1と同様にして、ブラックマトリクスを形成し、カラーフィルタ等を作製すると共に、評価を行なった。
評価の結果、感光性樹脂層用塗布液の塗布時にハジキが発生し、感光性転写材料の形成ができなかった。
【0256】
(比較例2)
実施例1において、処方P1の表面処理層用塗布液を、実施例1におけるスペーサの形成に用いた処方PC1の表面処理層用塗布液に代えると共に、R,G,及びBインクを実施例14のRインク、Gインク、及びBインクに代えたこと以外、実施例1と同様にして、ブラックマトリクスを形成し、カラーフィルタ等を作製すると共に、評価を行なった。
【0257】
(比較例3)
比較例1と同様にして隔壁を形成し、形成された隔壁を、下記の方法により親水化プラズマ処理を施した後、その隔壁の上面を撥インク化プラズマ処理したこと以外、比較例1と同様にして、ブラックマトリクスを形成し、カラーフィルタ等を作製すると共に、評価を行なった。
【0258】
−親水化プラズマ処理−
プラズマ処理装置(特開2003−344640号公報の図12に記載の装置)を用いて、以下の条件にてプラズマ処理を行なった。
・使用ガス : O2ガス
・圧力 : 25Pa
・RFパワー: 100W
・処理時間 : 60sec
【0259】
−撥インク化プラズマ処理−
前記同様のプラズマ処理装置を用いて、以下の条件にて更にプラズマ処理を行なった。
・使用ガス : CF4ガス
・圧力 : 25Pa
・RFパワー : 100W
・処理時間 : 60sec
【0260】
(比較例4)
実施例1の感光性転写材料K1を、第1層と第2層からなる下記の転写フィルムに代え、さらに露光、現像方法を下記のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、ブラックマトリクスを形成し、カラーフィルタ等を作製すると共に、評価を行なった。
第1層の膜厚は0.5μm、第2層の膜厚は1.5μmの転写フィルムとした。
【0261】
〈転写フィルム〉
75μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(ベースフィルム)の上に、下記組成よりなる第1層、第2層を設けて転写フィルムとした。
−第1層−
・メチルメタクリレート/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体 …30部
(基材樹脂)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(光重合性モノマー) …25部
・イルガキュア907(日本チバガイギー(株)製;光重合開始剤) …10部
・フロラードFC−430(住友3M(株)製;フッ素系化合物) … 5部
−第2層−
・V−259BKレジスト(新日鉄化学(株)製)
【0262】
実施例1と同様にラミネートし、次いで、隔壁形成用のフォトマスクを用いてベースフィルム側からパターン露光を行なった後、ベースフィルムを剥離除去し、アルカリ現像液(新日鉄化学(株)製のV−2401ID)を用いて第1層及び第2層を現像することにより、80μm×220μmの開口部を有する隔壁を形成した。
【0263】
【表2】

【0264】
前記表2に示すように、実施例では、感光性樹脂組成物を塗布したときの弾き(ハジキ)が抑えられ、感光性樹脂層が均一に形成された感光性転写材料が得られた。また、ブラックマトリクスに取
り囲まれた凹部へのインクの打滴の際、BM表面の撥インク性が良好で、インクジェット付与されたインクのはみ出し及び混色の発生を抑制することができた。作製された液晶表示装置に表示された画像は、表示ムラやコントラストの低下がなく、良好な画像であった。
これに対し、比較例では、感光性樹脂組成物の塗布性が悪く、しかもインクの打滴の際のインクのはみ出し及び混色の発生を抑制することができなかった。そのため、作製された液晶表示装置の表示特性も劣っていた。
【0265】
なお、上記の実施例では、フッ素系樹脂としてa〜dを用いた場合を中心に説明したが、本発明に係るフッ素系樹脂の他の化合物を用いた場合や2種以上を組み合わせて用いた場合も本実施例と同様の作用を発揮し得、上記同様に、弾きの抑制、撥インク性、インクのはみ出し及び混色の発生の抑制の効果を奏すると共に、良好な画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0266】
【図1】従来のカラーフィルタにおいてインクのはみ出しや混色、白抜けが発生している様子を説明するための概念図である。
【図2】(a)は3層構成の感光性転写材料の例を示し、(b)は4層構成の感光性転写材料の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係るカラーフィルタ(LCD用)を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0267】
1,51…隔壁
2,53A,53B,53C…着色画素(着色領域)
3…凹部
4…隔壁の上面
5…隔壁の側面
6…基板
10…感光性樹脂層
20…中間層(表面処理層)
30…仮支持体
40…熱可塑性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体上に、感光性樹脂層と、前記感光性樹脂層の前記仮支持体側表面に設けられた表面処理層とを有する感光性転写材料であって、前記表面処理層が少なくとも下記構造式(1)で表される樹脂を含む感光性転写材料。
【化1】


〔構造式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は、各々独立に、水素原子、又は総炭素数1〜5のアルキル基を表し、R6は総炭素数1〜12のアルキル基又は総炭素数6〜20のアリール基を表す。L1、L2、及びL3は、各々独立に、単結合でもよい2価の連結基を表す。X1は、エステル基、アミド基、又はアリーレン基を表し、X2はエーテル基、エステル基、アミド基、アリーレン基、又はヘテロ環残基を表す。Rfは、フッ素を含む置換基を表す。nは、2〜20の整数を表し、a、b、c、及びdはそれぞれ質量比を表し、aは0〜30、bは1〜30、cは1〜30、dは20〜98を表す。〕
【請求項2】
カラーフィルタの作製に用いられることを特徴とする請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
(a)請求項1又は2に記載の感光性転写材料を、感光性樹脂層が被転写体に接するように前記被転写体に圧着する圧着工程と、(b)被転写体に圧着された前記感光性転写材料の感光性樹脂層をパターン状に露光する露光工程と、(c)露光された前記感光性樹脂層を現像する現像工程と、を少なくとも有する隔壁の形成方法。
【請求項4】
前記(b)露光工程は、前記感光性樹脂層の前記被転写体と接する側と反対側の表面をフッ素化することを特徴とする請求項3に記載の隔壁の形成方法。
【請求項5】
前記(c)現像工程は、表面処理層を除去することを特徴とする請求項3又は4に記載の隔壁の形成方法。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載の隔壁の形成方法により形成された隔壁。
【請求項7】
被転写体上の感光性樹脂層の、前記被転写体と接する側と反対側の表面が表面処理層によりフッ素化されており、フッ素化された表面が露出していることを特徴とする請求項6に記載の隔壁。
【請求項8】
遮光性を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の隔壁。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の隔壁が被転写体上を区画し、区画された被転写体上の凹部にインクジェット法により液滴を付与して画像領域を形成する光学素子の製造方法。
【請求項10】
前記液滴が着色剤を含有し、前記画像領域が着色されていることを特徴とする請求項9に記載の光学素子の製造方法。
【請求項11】
基板上に複数の着色領域からなる画素群と前記画素群の各着色領域を離隔する隔壁とを少なくとも有し、請求項10に記載の光学素子の製造方法により作製された光学素子。
【請求項12】
請求項11に記載の光学素子を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−293231(P2007−293231A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165147(P2006−165147)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】