説明

感放射線性樹脂組成物、表示素子の層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーならびにそれらの形成方法

【課題】低温かつ短時間での加熱・焼成が可能であると共に、高い放射線感度を有し、得られた硬化膜は耐熱性、透明性,耐溶剤性を有することで、フレキシブルディスプレイのスペーサー、保護膜、層間絶縁膜等の形成に好適に用いられ、さらに保存安定性に優れた感放射線性樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】(A)エポキシ基を有する化合物、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、(C)感放射線性重合開始剤、並びに(D)ケチミン及びアルジミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層間絶縁膜、保護膜またはスペーサー形成用感放射線性樹脂組成物、その組成物から形成された層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーならびにそれらの形成方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、表示素子、具体的には、液晶表示素子(LCD)及び電荷結合素子に用いられる層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを1種類の感放射線性樹脂組成物で形成することが可能であり、その組成物から形成された層間絶縁膜、保護膜及びスペーサーまたはそれらの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(以下、「TFT」と記す。)型液晶表示素子や磁気ヘッド素子、集積回路素子、固体撮像素子などの電子部品には、一般に層状に配置される配線の間を絶縁するために層間絶縁膜が設けられている。上記電子部品のうち、例えばTFT型液晶表示素子は、上記の層間絶縁膜の上に、透明電極膜を形成し、さらにその上に液晶配向膜を形成する工程を経て製造される。そのため層間絶縁膜は、透明電極膜の形成工程において高温条件に曝されたり、電極のパターン形成に使用されるレジストの剥離液に曝されることとなるため、これらに対する十分な耐性が必要となる。
【0003】
従来、液晶表示素子用の層間絶縁膜は、パターンニング性能の観点からナフトキノンジアジド等の感放射線性酸発生剤を用いたポジティブ型感放射線性樹脂組成物が用いられている(特許文献1参照)。近年、ネガティブ型感放射線性樹脂組成物の高感度性、得られる硬化膜の高透明性等の性能が注目され、ネガティブ型感放射線性樹脂組成物の適用が進んでいる(特許文献2参照)。
【0004】
一方、液晶表示素子に使用される部材のうち、スペーサー、保護膜なども多くはネガティブ型感放射線性樹脂組成物を用いて形成されている(例えば保護膜につき、特許文献3参照。)。近年、液晶パネルの普及および大型化が急速に進んでいるため、コスト削減および工程時間短縮の観点から、フォトリソグラフィー工程において、放射線の照射時間の短縮、高解像度化や現像時間の短縮が望まれている。
しかしながら従来知られている感放射線性樹脂組成物を用いて照射時間が短縮された、低露光量の放射線照射工程によりスペーサーまたは保護膜を形成すると、高解像度化が達成できず、それが原因で得られるスペーサーパターンの寸法安定性や強度が不足し、パネル不良となる問題がある。
【0005】
液晶テレビ、携帯電話等への液晶表示素子の適用が広くなされており、従来の液晶表示素子より、さらなる高品質化が求められている。近年は、液晶表示素子の大画面化、高輝度化、高精細化、高速応答化、薄型化等の動向にある。これらの要求に応えるために層間絶縁膜、保護膜においては、放射線の照射時間の短縮(以下、高感度化)、低誘電率化、高平坦性、密着性、高透過率化等が求められており、スペーサーには高解像度化、高感度化が求められている(特許文献4参照)。
【0006】
近年、軽量化、小型化などの利便性の向上により、液晶方式の電子ペーパー等のフレキシブルディスプレイが普及している。このようなフレキシブルディスプレイの基板としては、ガラス基板の代わりに、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック基板が検討されている。しかし、これらのプラスチックは、加熱時に僅かに伸張・収縮し、ディスプレーとしての機能を阻害するという問題があり、耐熱性の向上が急務となっている。一方で、プラスチック基板にかかる熱的なストレスを軽減するため、フレキシブルディスプレイの製造プロセスの低温化が検討されている。フレキシブルディスプレイを製造する上で最も高温が要求されるプロセスに、スペーサー、保護膜、層間絶縁膜を加熱により焼成する工程があり、この加熱工程の低温化が求められている。
【0007】
上記事情に鑑み、特開2009−4394号公報には、低温硬化可能なポリイミド前駆体を180℃以下で焼成することによって、耐溶剤性、比抵抗、半導体移動度等の点で優れたフレキシブルディスプレイ用のゲート絶縁膜が得られることが開示されている。しかし、上記文献のポリイミド前駆体を含む塗布液は、化学的な硬化系であって露光現像によるパターン形成能を有しないため、微細なパターン形成は不可能である。また、このようなポリイミド前駆体を含む塗布液を用いた絶縁膜の形成においては、硬化膜を加熱・焼成するまでに1時間以上の時間を有するという不都合があり、さらには硬化膜の電圧保持率の向上など実用上の諸問題を解決するものではなかった。そこで、フレキシブルディスプレイ用の絶縁膜を製造するために好適に用いられるように低温かつ短時間での加熱・焼成が可能であると共に、簡便な製膜及び微細なパターン形成であり、保存安定性が良好な感放射線性を有する樹脂組成物の開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−354822号公報
【特許文献2】特開2000−162769号公報
【特許文献3】特開平6−43643号公報
【特許文献4】特開2009−36858号公報
【特許文献5】特開2009−4394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低温かつ短時間での加熱・焼成が可能であると共に、高い放射線感度を有し、得られた硬化膜は耐熱性、透明性,耐溶剤性を有することで、フレキシブルディスプレイのスペーサー、保護膜、層間絶縁膜等の形成に好適に用いられ、さらに保存安定性に優れた感放射線性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた発明は、第一に、
(A)エポキシ基を有する化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)感放射線性重合開始剤、並びに
(D)ケチミン及びアルジミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する感放射線性樹脂組成物によって達成される。
【0011】
本発明は第二に、前記(D)ケチミン及びアルジミンが、下記一般式(1)で表される化合物を含む感放射線性樹脂組成物によって達成される。
【0012】
【化1】

〔式中、R1は相互に独立に水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は相互に独立に置換又は非置換の1価の炭化水素基を示し、R3は置換又は非置換の2価の炭化水素基を示す。〕
【0013】
本発明は、第三に、前記(A)エポキシ基を有する化合物が、エポキシ基を有する重合体である感放射線性樹脂組成物によって達成される。
【0014】
本発明は、第四に、前記、エポキシ基を有する重合体が、さらにカルボキシル基を有する重合体である感放射線性樹脂組成物によって達成される。
【0015】
また、本発明の層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成方法は、
(1)当該感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱により焼成する工程
を含んでいる。
なお、ここで「焼成」とは、層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーとして要求される表面硬度が得られるまで加熱することを意味する。
【0016】
当該感放射線性樹脂組成物を用い、上記の工程により層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成する場合には、感放射線性を利用した露光・現像によってパターンを形成するため、容易に微細かつ精巧なパターンを形成することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物を用いた露光・現像によって、低温かつ短時間の加熱によって十分な表面硬度を有する層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成することができる。
【0017】
当該層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成方法における工程(4)の焼成温度は、200℃以下であることが好ましい。感放射線性を利用した微細なパターン形成能に加えて、このように低い温度での焼成が可能であることにより、当該方法は、フレキシブルディスプレイのプラスチック基板上への層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成のために好適に用いられる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明の感放射線性樹脂組成物は、高い放射線感度を有し、かつ低温かつ短時間の加熱によって表面硬度等の高い層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成することが可能であり、耐溶剤性及び電圧保持率に優れた層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成することができる。従って、当該感放射線性樹脂組成物は、フレキシブルディスプレイの形成材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<感放射線性樹脂組成物>
以下、本発明の感放射線性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0020】
(A)エポキシ基を有する化合物
本発明における(A)エポキシ基を有する化合物(以下(A)成分とも言う)は、分子中に2個以上のグリシジル基または、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する多官能エポキシ化合物であることが望ましい。
分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル等のビスフェノールのポリグリシジルエーテル類;1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
さらに、分子内に2個以上の3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物の具体例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等を挙げることができる。
【0021】
本発明では、さらに(A)エポキシ基を有する化合物が、エポキシ基を有する重合体であることが望ましく、その具体例としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールの脂肪族ポリグリシジルエーテル類;ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;ポリフェノール型エポキシ樹脂;環状脂肪族エポキシ樹脂;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等を挙げることができる。これらの分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物のうち、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びポリフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0022】
上記、(A)エポキシ基を有する化合物の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、エピコート1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(ジャパンエポキシレジン(株)製);ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、エピコート807(ジャパンエポキシレジン(株)製);フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等)として、エピコート152、同154、同157S65(ジャパンエポキシレジン(株)製)、EPPN201、同202(日本化薬(株)製);クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EOCN102、同103S、同104S、1020、1025、1027(日本化薬(株)製)、エピコート180S75(ジャパンエポキシレジン(株)製);ポリフェノール型エポキシ樹脂として、エピコート1032H60、同XY−4000(ジャパンエポキシレジン(株)製);環状脂肪族エポキシ樹脂として、CY−175、同177、同179、アラルダイトCY−182、同192、184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、ERL−4234、4299、4221、4206(U.C.C社製)、ショーダイン509(昭和電工(株)製)、エピクロン200、同400(大日本インキ(株)製)、エピコート871、同872(ジャパンエポキシレジン(株)製)、ED−5661、同5662(セラニーズコーティング社製);脂肪族ポリグリシジルエーテルとして、エポライト100MF(共栄社化学(株)製)、エピオールTMP(日本油脂(株)製)が挙げられる。
【0023】
(A)エポキシ基を有する化合物は、さらにカルボキシル基を有する重合体であってもよく、当該成分を含む感放射線性樹脂組成物は、現像処理工程において用いられるアルカリ現像液に対して可溶性を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましい。
特に、エポキシ基とカルボキシル基を有する重合体の中でも、(a1)カルボキシル基含有構造単位及び(a2)エポキシ基含有構造単位を有する共重合体がアルカリ現像液に対して可溶性と得られる硬化膜の膜硬度の観点から望ましい。
(a1)カルボキシル基含有構造単位及び(a2)エポキシ基含有構造単位を有する共重合体は、具体的には、(a1)不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物(以下、化合物(a1)とも言う)と(a2)エポキシ基を有するラジカル重合性化合物(以下、化合物(a2)とも言う)および(a3)(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸脂環式エステル、酸素原子を含む不飽和複素五及び六員環(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、マレイミド化合物、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、1,3−ブタジエンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の他のラジカル重合性化合物(以下、化合物(a3)とも言う)との共重合体である(以下、共重合体(A)とも言う)。
【0024】
化合物(a1)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のジカルボン酸;前記ジカルボン酸の酸無水物等を挙げることができる。
【0025】
これらの化合物(a1)のうち、共重合反応性、得られる重合体や共重合体のアルカリ現像液に対する溶解性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、無水マレイン酸等が好ましい。
【0026】
共重合体(A)において、化合物(a1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。共重合体(A)において、化合物(a1)に由来する繰り返し単位の含有率は、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは7〜30質量%、特に好ましくは8〜25質量%である。化合物(a1)に由来する繰り返し単位の含有率が5〜40質量%である時、感放射線感度、現像性および保存安定性等の諸特性がより高いレベルで最適化された感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0027】
化合物(a2)としては、エポキシ基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。エポキシ基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−メチルグリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどのアクリル酸エポキシアルキルエステル;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどのメタクリル酸エポキシアルキルエステル;α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチルなどのα−アルキルアクリル酸エポキシアルキルエステル;o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0028】
また、オキセタニル基含有重合性不飽和化合物の具体例としては、例えば、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−(メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−(アクリロイルオキシエチル)オキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−メチル−2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、4−メチル−2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−(2−(2−メチルオキセタニル))エチルメタクリレート、2−(2−(3−メチルオキセタニル))エチルメタクリレート、2−(メタクリロイルオキシエチル)−2−メチルオキセタン、2−(メタクリロイルオキシエチル)−4−メチルオキセタン、2−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−メチル−2−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−メチル−2−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、4−メチル−2−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、2−(2−(2−メチルオキセタニル))エチルメタクリレート、2−(2−(3−メチルオキセタニル))エチルメタクリレート、2−(アクリロイルオキシエチル)−2−メチルオキセタン、2−(アクリロイルオキシエチル)−4−メチルオキセタンなどの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0029】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、2−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタンなどが、得られる層間絶縁膜、保護膜及びスペーサーの基板に対する密着性が高く、高耐熱性を有し、さらに液晶表示素子における信頼性を高める点から好ましく用いられる。
上記不飽和化合物(a2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0030】
共重合体(A)において、化合物(a2)の共重合割合は、全不飽和化合物に対して、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜65質量%である。化合物(a2)の共重合割合が10〜70質量%の時、特に共重合体の分子量の制御が容易となり、現像性、感度等がより高いレベルで最適化された感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0031】
化合物(a3)としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸脂環式エステル、酸素原子を含む不飽和複素五及び六員環(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、マレイミド化合物、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、1,3−ブタジエンを挙げることができる。
【0032】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレートを挙げることができる。
【0033】
(メタ)アクリル酸脂環式アルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、(メタクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、(メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(以下、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルを「ジシクロペンタニル」と称することもある。)、メタクリル酸−2−ジシクロペンタニルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、アクリル酸−2−ジシクロペンタニルオキシエチル、アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
【0034】
酸素原子を含む不飽和複素五及び六員環メタクリル酸エステルの具体例としては、テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物として、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オンなど;
フラン骨格を含有する不飽和化合物として、例えば2−メチル−5−(3−フリル)−1−ペンテン−3−オン、フルフリル(メタ)アクリレート、1−フラン−2−ブチル−3−エン−2−オン、1−フラン−2−ブチル−3−メトキシ−3−エン−2−オン、6−(2−フリル)−2−メチル−1−ヘキセン−3−オン、6−フラン−2−イル-−ヘキシ-−1−エン-−3−オン、アクリル酸−2−フラン-−2−イル-−1−メチル−エチルエステル、6−(2−フリル)−6−メチル-−1−ヘプテン−3−オンなど;
テトラヒドロピラン骨格を含有する不飽和化合物として、例えば(テトラヒドロピラン−2−イル)メチルメタクリレート、2,6−ジメチル−8−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)−オクト−1−エン−3−オン、2−メタクリル酸テトラヒドロピラン−2−イルエステル、1−(テトラヒドロピラン−2−オキシ)−ブチル−3−エン−2−オンなど;
ピラン骨格を含有する不飽和化合物として、例えば4−(1,4−ジオキサ−5−オキソ−6−ヘプテニル)−6−メチル−2−ピラン、4−(1,5−ジオキサ−6−オキソ−7−オクテニル)-−6−メチル-−2−ピランなどを挙げることができる。
【0035】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2,3−ジヒドロキシプロピル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。また、(メタ)アクリル酸アリールエステルの具体例としては、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。
【0036】
マレイミド化合物として、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミドなどを挙げることができる。
【0037】
共重合体(A)において、化合物(a3)の共重合割合は、全不飽和化合物に対して、好ましくは10〜70質量%、さらに好ましくは15〜65質量%である。化合物(a2)の共重合割合が10〜70質量%の時、特に共重合体の分子量の制御が容易となり、現像性、感度、密着性等がより高いレベルで最適化された感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0038】
次に、共重合体(A)を製造する重合方法について説明する。
前記重合は、例えば、共重合体(A)を構成する化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(a3)を、溶媒中、ラジカル重合開始剤を使用して重合することにより実施することができ、それにより共重合体(A)を得ることができる。
【0039】
前記ラジカル重合開始剤としては、使用される重合性不飽和化合物の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤のうち、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が好ましい。
前記ラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
前記重合において、ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性不飽和化合物100質量%に対して、通常、0.1〜50質量%、好ましくは0.1〜20質量%である。
【0041】
また、分子量制御剤(1)の使用量は化合物(a1)、化合物(a2)、化合物(a3)の合計100質量%に対して、通常、0.1〜50質量%、好ましくは0.2〜16質量%、特に好ましくは0.4〜8質量%である。
【0042】
共重合体(A)を製造するための重合反応においては、分子量を調整するために、分子量調整剤を使用することができる。分子量調整剤の具体例としては、クロロホルム、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類;n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。 また、重合温度は、通常、0〜150℃、好ましくは50〜120℃であり、重合時間は、通常、10分〜20時間、好ましくは30分〜6時間である。
【0043】
共重合体(A)のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という)は、好ましくは2×103〜1×105、より好ましくは5×103〜5×104である。共重合体(A)のMwを2×103以上とすることによって、感放射線樹脂組成物の十分な現像マージンを得ると共に、形成される塗膜の残膜率(パターン状薄膜が適正に残存する比率)の低下を防止し、さらには得られる絶縁膜のパターン形状や耐熱性などを良好に保つことが可能となる。一方、共重合体(A)のMwを1×105以下にすることによって、高度な放射線感度を保持し、良好なパターン形状を得ることができる。また、共重合体(A)の分子量分布(以下、「Mw/Mn」という)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下である。共重合体[A]のMw/Mnを5.0以下にすることによって、得られる絶縁膜のパターン形状を良好に保つことができる。また、上記のような好ましい範囲のMw及びMw/Mnを有する共重合体(A)を含む感放射線性樹脂組成物は、高度な現像性を有するため、現像工程において、現像残りを生じることなく容易に所定パターン形状を形成することができる。
【0044】
共重合体(A)を製造するための重合反応に用いられる溶媒としては、例えばアルコール類、エーテル類、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、芳香族炭化水素類、ケトン類、他のエステル類などを挙げることができる。
【0045】
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物としては、例えばω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイロキシエチル)フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのほか、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し且つ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有しかつ3〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物などを挙げることができる。
【0046】
上記エチレン性不飽和結合の市販品としては、例えばアロニックスM−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050、アロニックスTO−1450、同TO−1382(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同MAX−3510(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)や、ウレタンアクリレート系化合物として、ニューフロンティア R−1150(第一工業製薬(株)製)、KAYARAD DPHA−40H、UX−5000(日本化薬(株)製)、UN−9000H(根上工業(株)製)、アロニックスM−5300、同M−5600、同M−5700、M−210、同M−220、同M−240、同M−270、同M−6200、同M−305、同M−309、同M−310、同M−315(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD HDDA、KAYARAD HX−220、同HX−620、同R−526、同R−167、同R−604、同R−684、同R−551、同R−712、UX−2201、UX−2301、UX−3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、UX−8101、UX−0937、MU−2100、MU−4001(以上、日本化薬(株)製)、アートレジンUN−9000PEP、同UN−9200A、同UN−7600、同UN−333、同UN−1003、同UN−1255、同UN−6060PTM、同UN−6060P(以上、根上工業(株)製)、同SH−500Bビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)などを挙げることができる。
【0047】
本発明において、(B)重合性不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
本発明の感放射線性樹脂組成物における(B)重合性不飽和化合物の使用割合は、(A)成分100質量部に対して好ましくは20〜200質量部であり、より好ましくは40〜160質量部である。
かかる割合で(B)重合性不飽和化合物を含有することにより、本発明の感放射線性樹脂組成物は、密着性に優れ、低露光量においても十分な硬度を有した層間絶縁膜、保護膜及びスペーサーを得ることができる。
【0048】
(C)感放射線性重合開始剤
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(C)感放射線性重合開始剤は、放射線に感応して(B)重合性不飽和化合物の重合を開始しうる活性種を生じる成分である。このような(C)感放射線性重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物が好ましい。
【0049】
上記O−アシルオキシム化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)などを挙げることができる。
【0050】
これらのうちで、好ましいO−アシルオキシム化合物としては、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)またはエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)を挙げることができる。これらO−アシルオキシム化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0051】
上記アセトフェノン化合物としては、例えばα−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物を挙げることができる。
【0052】
α−アミノケトン化合物の具体例としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを挙げることができる。
【0053】
α−ヒドロキシケトン化合物の具体例としては、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどを挙げることができる。
【0054】
これらのアセトフェノン化合物のうちα−アミノケトン化合物が好ましく、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オンまたは2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンが特に好ましい。
【0055】
本発明の感放射線性樹脂組成物に含有される(C)感放射線性重合開始剤は、O−アシルオキシム化合物およびアセトフェノン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましくい。
【0056】
(C)感放射線性重合開始剤におけるO−アシルオキシム化合物およびアセトフェノン化合物の割合としては、(A)成分100質量部に対して、1〜40質量部であり、感より好ましくは5〜30質量部である。(C)感放射線性重合開始剤の使用量が1〜40質量部の時、本発明の感放射線性樹脂組成物は、低露光量の場合でも高い硬度および密着性を有する層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成することができる。
【0057】
(D)ケチミン・アルジミン
(D)ケチミン及びアルジミンは、加水分解により第1級アミンを生成する化合物であり、上記(A)成分を硬化させる潜在性硬化剤として機能する。
通常、アミン化合物とエポキシ基を有する化合物とを共存させることで、アミンのエポキシ基への求核反応により硬化を促進することが可能である。しかしながら、アミンのエポキシ基への求核反応は常温常圧でも進行するため、アミン化合物とエポキシ基を有する化合物とが共存する組成物溶液の粘度が増加するため、感放射線性樹脂組成物の保存安定性が低下する。粘度が増加すると一定条件下で成膜しても、膜厚が一定せず、層間絶縁膜、保護膜、スペーサーの形成する時に支障を来たす。ケチミン・アルジミンは、エポキシ基を有する化合物と混合した時、エポキシ基への求核反応が発生しにくいため、エポキシの硬化反応は非常に遅い。しかし、環境中の水分と接することにより、アミンを再生して常温硬化剤として機能する。
層間絶縁膜、保護膜、スペーサー等の表示素子の製造工程においては、現像工程等、様々な工程で水分の影響を受けるため、ケチミン及びアルジミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有せしめることにより層間絶縁膜、保護膜、スペーサーの硬化性を高めることができる。
【0058】
ケチミンはケトンとアミンとの反応により得ることが可能であり、またアルジミンはアルデヒドとアミンとの反応により得ることができる
【0059】
ケトンとしては、例えば、エチルメチルケトン、イソアミルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、メチルt−ブチルケトン、エチルブチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジプロピルケトン、3−メチル−2−ヘキサノン、2−オクタノン、3−オクタノン、4−オクタノン、メチルシクロヘキシルケトン、メチルシクロヘキサノン等を挙げることができる。
【0060】
アルデヒドとしては、例えば、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、ヘプタナール、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、ベンズアルデヒド等を挙げることができる。
【0061】
アミンとしては、例えば、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン、分子両末端のプロピレン分岐炭素にアミノ基が結合したポリプロピレングリコール、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノプロパン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、H2N(CH2CH2O)2(CH22NH2のようなアミン窒素にメチレン基が結合したポリエーテル骨格のジアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、メタキシリレンジアミン(MXDA)、ポリアミドアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3BAC)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン(NBDA)の他、下記の化合物群z等のポリアミンを挙げることができる。
【0062】
〔化合物群z〕
【0063】
【化2】

【0064】
また、本発明においては、アミンとしてアミノアルコキシシランを使用することができる。アミノアルコキシシランとしては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0065】
【化3】

【0066】
〔式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は1価のシロキサン誘導体を示し、Rは窒素原子を含んでいてもよいアルキレン基を示し、Rはアルコキシ基を示し、mは0〜3の整数を示す。〕
【0067】
は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又は1価のシロキサン誘導体を示すが、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。また、炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。更に、1価のシロキサン誘導体としては、シリルオキシ基が好ましい。これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0068】
は、窒素原子を含んでいてもよいアルキレン基を示すが、炭素数1〜6(以下、炭素数を「C1−6」とも略記する)アルキレン基が好ましい。窒素原子を含まないアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が好ましい。窒素原子を含むアルキレン基としては、上記窒素原子を含まない2価の炭化水素基に例示される炭化水素基中にイミノ基(−NH−)を有する基が好ましい。これらの中でも、Rとしては、メチレン基、プロピレン基、−C24NHC36−がより好ましい。
【0069】
は、アルコキシ基を示すが、アルコキシ基としては、例えば、C1−6アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0070】
上記一般式(2)で表されるアミノアルコキシシランとしては、例えば、下記の化合物群pが挙げられる。
【0071】
〔化合物群p〕
【0072】
【化4】

【0073】
ケトン又はアルデヒドと、アミノアルコキシシランとの反応により得られるケイ素含有ケチミン又はアルジミンとしては、例えば、下記式(3)で表される化合物、下記式(4)で表される構造を主鎖骨格として有する重縮合体が挙げられる。
【0074】
【化5】

【0075】
〔式中、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は置換又は非置換の1価の炭化水素基を示し、R’は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、Rは窒素原子を含んでいてもよいアルキレン基を示し、Rはアルコキシ基を示し、mは0〜3の整数を示す。〕
【0076】
【化6】

【0077】
〔式中、R1は水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は置換又は非置換の1価の炭化水素基を示し、Rは窒素原子を含んでいてもよいアルキレン基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、mは0〜3の整数を示し、nは正数を示す。〕
【0078】
なお、式(4)で表される重縮合体の主鎖末端には、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基等のC1−6アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のC1−6アルコキシ基が結合することができる。
【0079】
これらアミンの中でも、脂環式構造又は芳香環構造を有するジアミンが好ましい。
好適なケチミン及びアルジミンとして、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
【0080】
【化7】

【0081】
〔式中、R1は相互に独立に水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は相互に独立に置換又は非置換の1価の炭化水素基を示し、R3は置換又は非置換の2価の炭化水素基を示す。〕
【0082】
1、R2及びR3における「炭化水素基」とは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念であり、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよく、また飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよく、不飽和結合を分子内及び末端のいずれに有していてもよい。
【0083】
1及びRにおける「1価の炭化水素基」としては、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。1価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、C1−20のアルキル基、C2−20のアルケニル基、C2−20のアルキニル基が挙げられ、また1価の脂環式炭化水素としては、例えば、C3−20のシクロアルキル基が挙げられ、更に1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、C6−20のアリール基が挙げられる。ここで、本明細書において「アリール基」とは、単環〜3環式芳香族炭化水素基をいう。
【0084】
1−20のアルキル基としては、C1−12のアルキル基が好ましく、C1−6のアルキル基がより好ましい。好適な具体例としては、メチル基、エチル基、i−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、へキシル基等が挙げられる。
2−20のアルケニル基としては、C2−10のアルケニル基が好ましく、C2−6のアルケニル基がより好ましい。好適な具体例としては、ビニル基、アリール基、ブテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。
2−20のアルキニル基としては、C2−10のアルキニル基が好ましく、C2−6のアルキニル基がより好ましい。好適な具体例としては、エチニル基、プロピニル基が挙げられる。
【0085】
3−20のシクロアルキル基としては、C3−12のシクロアルキル基が好ましく、C3−8のシクロアルキル基がより好ましい。好適な具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0086】
6−20のアリール基としては、C6−14のアリール基が好ましい。好適な具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基が挙げられる。中でも、フェニル基、2−ナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0087】
1及びR2としては、1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、C1−20のアルキル基が特に好ましい。
【0088】
3における2価の炭化水素基としては、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基、シクロアルキレン−アルキレン−シクロアルキレン基、アルキレン−アリーレン−アルキレン基が挙げられる。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、C1−20のアルキレン基、C2−20のアルケニレン基、C2−20のアルキニレン基が挙げられ、また2価の脂環式炭化水素としては、例えば、C3−20のシクロアルキレン基、C3−20のシクロアルケニレン基が挙げられ、更に2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、C6−20のアリーレン基が挙げられる。
【0089】
1−20のアルキレン基としては、C1−12のアルキレン基が好ましく、C1−6のアルキレン基がより好ましい。好適な具体例としては、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0090】
3−20のシクロアルキレン基としては、C3−12のシクロアルキレン基が好ましく、C3−6のシクロアルキレン基がより好ましい。好適な具体例としては、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられる。また、C3−20のシクロアルケニレン基としては、C3−12のシクロアルケニレン基が好ましく、C3−6のシクロアルケニレン基がより好ましい。好適な具体例としては、シクロブテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基等が挙げられる。なお、当該脂環式炭化水素基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0091】
6−18の2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェナントレン基、アンスリレン基等のアリーレン基等が挙げられる。なお、当該芳香族炭化水素基の結合部位は、芳香環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0092】
アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基としては、C1−6アルキレン−C3−12シクロアルキレン−C1−6アルキレン基が好ましく、C1−6アルキレン−C3−6シクロルアキレン−C1−6アルキレン基が特に好ましい。シクロアルキレン−アルキレン−シクロアルキレン基としては、C3−12シクロアルキレン−C1−6アルキレン−C3−12シクロアルキレン基が好ましく、C3−6シクロアルキレン−C1−6アルキレン−C3−6シクロアルキレン基が特に好ましい。なお、アルキレン基の結合部位は、脂環上のいずれの炭素原子でもよい。
アルキレン−アリーレン−アルキレン基としては、C1−6アルキレン−C6−14アリーレン−C1−6アルキレン基が好ましく、C1−6アルキレン−C6−10アリーレン−C1−6アルキレン基が特に好ましい。なお、アルキレン基の結合部位は、芳香環上のいずれの炭素原子でもよい。
【0093】
としては、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルキレン−シクロアルキレン−アルキレン基、シクロアルキレン−アルキレン−シクロアルキレン基、アルキレン−アリーレン−アルキレン基が好ましく、C3−20のシクロアルキレン基、C6−18のアリーレン基、C1−6アルキレン−C3−12シクロアルキレン−C1−6アルキレン基、C3−12シクロアルキレン−C1−6アルキレン−C3−12シクロアルキレン基、C1−6アルキレン−C6−14アリーレン−C1−6アルキレン基が特に好ましい。
【0094】
1、R及びRの「炭化水素基」における「置換基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等のC1−10(好ましくはC1〜6)アルキル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等のC1−10(好ましくはC1〜6)のアルコキシ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;フェニル基等のC6−14のアリール基等が挙げられる。中でも、置換基としては、C1−10アルキル基、C1−10アルコキシ基が好ましい。なお、置換基の位置及び数は任意であり、当該置換基を2以上有する場合、当該置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0095】
ケチミン及びアルジミンの製造方法は特に限定されないが、例えば、ケトン又はアルデヒドと、アミンとを室温下又は加熱下にて、攪拌して脱水反応させることにより得ることができる。反応温度は20〜150℃が好ましく、50〜110℃がより好ましい。反応時間は、2〜24時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。
【0096】
(D)ケチミン及びアルジミンは商業的にも入手することができ、例えば、H−3,H−30(三菱化学株式会社製)を挙げることができる。
【0097】
本発明における(D)ケチミン及びアルジミンの合計含有量は、(A)成分100質量部に対して、5〜300質量部が好ましく、特に10〜200質量部が好ましい。この場合、(A)エポキシ基を有する重合体に対する含有量少なすぎると、十分な硬化性が得られないおそれがある。
【0098】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の(A)エポキシ基を有する重合体、(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、(C)感放射線性重合開始剤および(D)ケチミン及びアルジミンを必須成分として含有するが、その他任意成分として、必要に応じて(E)接着助剤、(F)界面活性剤、(G)保存安定剤、(H)耐熱性向上剤などを含有することができる。
【0099】
上記(E)接着助剤は、得られる層間絶縁膜、スペーサーまたは保護膜と基板との接着性をさらに向上させるために使用することができる。
このような(E)接着助剤としては、カルボキシル基、メタクリロイル基、ビニル基、イソシアネート基、オキシラニル基などの反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤が好ましく、その例として例えばトリメトキシシリル安息香酸、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
これらの(E)接着助剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(E)接着助剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下である。(E)接着助剤の使用量が20質量部を超えると、現像残りを生じやすくなる傾向がある。
【0100】
上記(F)界面活性剤は、感放射線性樹脂組成物の被膜形成性をより向上させるために使用することができる。
このような(F)界面活性剤としては、例えばフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびその他の界面活性剤を挙げることができる。
上記フッ素系界面活性剤としては、末端、主鎖および側鎖の少なくともいずれかの部位にフルオロアルキル基および/またはフルオロアルキレン基を有する化合物が好ましく、その例としては、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(1,1,2,2−テトラフロロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロ−n−オクチル(n−ヘキシル)エーテル、ヘキサエチレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−ペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロ−n−ブチル)エーテル、パーフロロ−n−ドデカンスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロ−n−デカン、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロ−n−ドデカンや、フロロアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、フロロアルキルリン酸ナトリウム、フロロアルキルカルボン酸ナトリウム、ジグリセリンテトラキス(フロロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フロロアルキルアンモニウムヨージド、フロロアルキルベタイン、他のフロロアルキルポリオキシエチレンエーテル、パーフロロアルキルポリオキシエタノール、パーフロロアルキルアルコキシレート、カルボン酸フロロアルキルエステルなどを挙げることができる。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BM CHEMIE社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F178、同F191、同F471、同F476(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−170C、同−171、同−430、同−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同−113、同−131、同−141、同−145、同−382、サーフロンSC−101、同−102、同−103、同−104、同−105、同−106(以上、旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(以上、新秋田化成(株)製)、フタージェントFT−100、同−110、同−140A、同−150、同−250、同−251、同−300、同−310、同−400S、フタージェントFTX−218、同−251(以上、(株)ネオス製)などを挙げることができる。
【0101】
上記シリコーン系界面活性剤としては、例えばトーレシリコーンDC3PA、同DC7PA、同SH11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH−190、同SH−193、同SZ−6032、同SF−8428、同DC−57、同DC−190(以上、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、TSF−4440、TSF−4300、TSF−4445、TSF−4446、TSF−4460、TSF−4452(以上、GE東芝シリコーン(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)などの商品名で市販されているものを挙げることができる。
上記その他の界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン−n−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−n−ノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアリールエーテル;ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレートなどのポリオキシエチレンジアルキルエステルなどのノニオン系界面活性剤、(メタ)アクリル酸系共重合体ポリフローNo.57、同No.95(以上、共栄社化学(株)製)などを挙げることができる。
これらの(F)界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。(F)界面活性剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以下である。この場合、(F)界面活性剤の使用量が1.0質量部を超えると、膜ムラを生じやすくなる場合がある。
【0102】
上記(G)保存安定剤としては、例えば硫黄、キノン類、ヒドロキノン類、ポリオキシ化合物、アミン、ニトロニトロソ化合物などを挙げることができ、より具体的には、4−メトキシフェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウムなどを挙げることができる。
これらの(G)保存安定剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。(G)保存安定剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以下であり、より好ましくは0.5質量部以下である。(G)保存安定剤の配合量が3.0質量部を超えると、感度が低下してパターン形状が劣化する場合がある。
【0103】
上記(H)耐熱性向上剤としては、例えばN−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物、N−(アルコキシメチル)メラミン化合物などを挙げることができる。
上記N−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物としては、例えばN,N,N’,N’−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(エトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(n−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(i−プロポキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(n−ブトキシメチル)グリコールウリル、N,N,N’,N’−テトラ(t−ブトキシメチル)グリコールウリルなどを挙げることができる。これらのN−(アルコキシメチル)グリコールウリル化合物のうち、N,N,N’,N’−テトラ(メトキシメチル)グリコールウリルが好ましい。
上記N−(アルコキシメチル)メラミン化合物としては、例えばN,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(メトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(エトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(n−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(i−プロポキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(n−ブトキシメチル)メラミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(t−ブトキシメチル)メラミンなどを挙げることができる。これらのN−(アルコキシメチル)メラミン化合物のうち、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(メトキシメチル)メラミンが好ましく、その市販品としては、例えばニカラックN−2702、同MW−30M(以上、(株)三和ケミカル製)などを挙げることができる。
【0104】
(H)耐熱性向上剤の使用量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下であり、より好ましくは30質量部以下である。(H)耐熱性向上剤の配合量が50質量部を超えると、感度が低下してパターン形状が劣化する場合がある。
【0105】
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明の感放射線性樹脂組成物は、上記の(A)エポキシ基を有する重合体、(B)エチレン性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに(D)ケチミン及びアルジミン、上記の如き任意的に添加されるその他の成分を均一に混合することによって調製される。この感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で用いられる。例えば(A)エポキシ基を有する重合体、(B)重合性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤、(D)ケチミン及びアルジミンならびに任意的に添加される(E)接着助剤、(F)界面活性剤、(G)保存安定剤、(H)耐熱性向上剤を、溶媒中において所定の割合で混合することにより、溶液状態の感放射線性樹脂組成物を調製することができる。
【0106】
本発明の感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、(A)エポキシ基を有する重合体、(B)エチレン性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに(D)ケチミン及びアルジミン、任意的に添加されるその他の成分の各成分を均一に溶解し、各成分と反応しないものが用いられる。このような溶媒としては、上述した(A)重合体を製造するために使用できる溶媒として例示したものと同様のものを挙げることができる。
【0107】
このような溶媒のうち、各成分の溶解性、各成分との反応性、被膜形成の容易性などの観点から、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアルコール、3−メトキシブタノールを特に好ましく使用することができる。これらの溶媒は、一種のみを単独で使用することができ、二種以上を混合して使用してもよい。
【0108】
さらに、上記溶媒とともに膜厚の面内均一性を高めるため、高沸点溶媒を併用することもできる。併用できる高沸点溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、1−オクタノール、1−ノナノール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレンなどが挙げられる。これらのうち、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトンまたはN,N−ジメチルアセトアミドが好ましい。
【0109】
本発明の感放射性樹脂組成物の溶媒として、高沸点溶媒を併用する場合、その使用量は、全溶媒量に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることができる。高沸点溶媒の使用量が50質量%以下の時、被膜の膜厚均一性、感度および残膜率が良好となる。
【0110】
本発明の感放射線性樹脂組成物を溶液状態として調製する場合、固形分濃度(組成物溶液中に占める溶媒以外の成分、すなわち上記の、(A)エポキシ基を有する重合体、(B)エチレン性不飽和化合物、および(C)感放射線性重合開始剤ならびに(D)ケチミン及びアルジミン、任意的に添加されるその他の成分の合計量の割合は、使用目的や所望の膜厚の値などに応じて任意の濃度(例えば5〜50質量%)に設定することができる。さらに好ましい固形分濃度は、基板上への被膜の形成法方により異なるが、これについては後述する。このようにして調製された組成物溶液は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタなどを用いて濾過した後、使用に供することもできる。
【0111】
<層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成方法>
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを形成する方法について説明する。
【0112】
本発明の間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成方法は、少なくとも下記の工程(1)〜(4)を下記に記載の順で含むことを特徴とするものである。
(1)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程。
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程。
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程。
(4)現像後の被膜を加熱する工程。
【0113】
以下、これらの各工程について順次説明する。
【0114】
(1)本発明の感放射線性樹脂組成物の被膜を基板上に形成する工程
透明基板の片面に透明導電膜を形成し、該透明導電膜の上に感放射線性樹脂組成物の被膜を形成する。ここで用いられる透明基板としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板などを挙げることができる。より具体的には、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどのガラス基板;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックからなる樹脂基板を挙げることができる。
【0115】
透明基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社の登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを挙げることができる。
【0116】
塗布法により被膜を形成する場合、上記透明導電膜の上に感放射線性樹脂組成物の溶液を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより、被膜を形成することができる。塗布法に用いる組成物溶液の固形分濃度は、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、さらに好ましくは15〜35質量%である。組成物溶液の塗布方法としては、特に限定されず、例えばスプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)、バー塗布法、インクジェット塗布法などの適宜の方法を採用することができる。これらの塗布方法の中でも、特にスピンコート法またはスリット塗布法が好ましい。
【0117】
上記プレベークの条件は、各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、好ましくは70〜120℃で1〜15分間程度である。被膜のプレベーク後の膜厚は、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは1.0〜7.0μm程度である。
【0118】
(2)該被膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
次いで、形成された被膜の少なくとも一部に放射線を照射する。このとき、被膜の一部にのみ照射する際には、例えば所定のパターンを有するフォトマスクを介して照射する方法によることができる。
【0119】
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線などを挙げることができる。このうち波長が250〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0120】
放射線照射量(露光量)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100〜5,000J/m、より好ましくは200〜3,000J/mである。
【0121】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、従来知られている組成物と比較して極めて放射線感度が高く、上記放射線照射量が700J/m以下、さらには600J/m以下であっても所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性および高い硬度の間絶縁膜、保護膜またはスペーサーを得ることができる利点を有する。
【0122】
(3)放射線照射後の被膜を現像する工程
次に、放射線照射後の被膜を現像することにより、不要な部分を除去して、所定のパターンを形成する。
【0123】
現像に使用される現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機アルカリ、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩などのアルカリ性化合物の水溶液を使用することができる。上記アルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒および/または界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0124】
現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、シャワー法などのいずれでもよく、現像時間は、常温で10〜180秒間程度とすることが好ましい。現像処理に続いて、例えば流水洗浄を30〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって所望のパターンを得ることができる。
【0125】
(4)現像後の被膜を加熱する工程
次いで、得られたパターン状被膜を、ホットプレート、オーブンなどの適当な加熱装置により、所定温度、例えば100〜200℃で、特に150〜180℃で、所定時間、例えばホットプレート上では5〜30分間、オーブン中では30〜180分間、加熱(ポストベーク)することにより、所望のスペーサーまたは保護膜を得ることができる。
【0126】
以上のようにして、圧縮強度、液晶配向膜のラビング工程に対する耐性、基板との密着性などの諸性能に優れるスペーサーまたは保護膜を、所望のパターン寸法で得ることができる。
【0127】
<表示素子>
本発明の表示素子は、例えば以下の方法(a)または(b)により作製することができる。
【0128】
(a)まず片面に透明導電膜(電極)を有する透明基板を一対(2枚)準備し、そのうちの一枚の基板の透明導電膜上に、本発明の感放射線性樹脂組成物を用いて、上記した方法に従ってスペーサーもしくは保護膜またはその双方を形成する。続いてこれらの基板の透明導電膜およびスペーサーまたは保護膜上に液晶配向能を有する配向膜を形成する。これら基板を、その配向膜が形成された側の面を内側にして、それぞれの配向膜の液晶配向方向が直交または逆平行となるように一定の間隙(セルギャップ)を介して対向配置し、基板の表面(配向膜)およびスペーサーにより区画されたセルギャップ内に液晶を充填し、充填孔を封止して液晶セルを構成する。そして、液晶セルの両外表面に、偏光板を、その偏光方向が当該基板の一面に形成された配向膜の液晶配向方向と一致または直交するように貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0129】
(b)まず上記方法(a)と同様にして透明導電膜と、間絶縁膜、保護膜またはスペーサーまたはその双方と、配向膜とを形成した一対の透明基板を準備する。その後一方の基板の端部に沿って、ディスペンサーを用いて紫外線硬化型シール剤を塗布し、次いで液晶ディスペンサーを用いて微小液滴状に液晶を滴下し、真空下で両基板の貼り合わせを行う。そして、前述のシール剤部に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して両基板を封止する。最後に、液晶セルの両外表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子を得ることができる。
【0130】
上記の各方法において使用される液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶を挙げることができる。また、液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながら、ヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0131】
以下に製造例、合成例、実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。
【0132】
以下の合成例において、共重合体の重量平均分子量Mwの測定は下記の装置および条件のもと、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によった。
装置:GPC−101(昭和電工(株)製)
カラム:GPC−KF−801、GPC−KF−802、GPC−KF−803およびGPC−KF−804を結合
移動相:テトラヒドロフラン
【0133】
実施例
以下に合成例及び実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例及び実施例に限定されるものではない。
【0134】
<(A)共重合体の合成例>
合成例1
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部を仕込んだ。引き続きスチレン20質量部、メタクリル酸12質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル28質量部およびメタクリル酸グリシジル40質量部を仕込み、窒素置換し、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A3)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度(重合体溶液の全質量に占める重合体質量の割合)は31.3%であり、共重合体(A3)の重量平均分子量Mwは、12,000であった。
【0135】
合成例2
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部およびジエチレングリコールメチルエチルエーテル220質量部を仕込んだ。引き続きスチレン10質量部、メタクリル酸12質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル23質量部およびメタクリル酸グリシジル20質量部、メタクリル酸2−メチルグリシジル20質量部、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル10質量部をしこみ、窒素置換したのち、さらに1,3−ブタジエン5質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を70℃に上昇し、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A4)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は31.5%であり、共重合体(A4)の重量平均分子量Mwは、10,100であった。
【0136】
合成例3
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)5質量部および3−メトキシブチルアセテート220質量部を仕込んだ。引き続きスチレン10重量部、メタクリル酸18重量部、メタクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル36質量部、メタクリル酸ベンジル36質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇し、この温度を5時間保持して重合することにより、共重合体(A5)を含有する溶液を得た。得られた重合体溶液の固形分濃度は30.9%であり、共重合体(A5)の重量平均分子量Mwは9,800であった。
【0137】
<(D)ケチミンの合成>
合成例4
N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)キシレンイミンの合成
p−キシレンジアミン27.2質量部とメチルイソブチルケトン50.2質量部をn−ヘキサン100質量部中、80℃にて乾溜させDean−Starkトラップにて水を除去し、3時間後、n−ヘキサンと過剰量のメチルイソブチルケトンを減圧下、留去し、残渣をエタノールにて再結晶させ、N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)キシレンイミン(D−1)を得た。
【0138】
合成例5
N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)ヘキサメチレンイミンの合成
ヘキサメチレンジアミン23.2質量部とメチルイソブチルケトン50.2質量部をn−ヘキサン100質量部中、80℃にて乾溜させDean−Starkトラップにて水を除去し、3時間後、n−ヘキサンと過剰量のメチルイソブチルケトンを減圧下、留去し、残渣をエタノールにて再結晶させ、N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)ヘキサメチレンイミン(D−2)を得た。
【0139】
<感放射線性樹脂組成物溶液の調製>
実施例1
表1に記載の種類および量の(A)エポキシ基を有する化合物、(B)エチレン性不飽和化合物、(C)感放射線性重合開始剤、(D)ケチミン及びアルジミンを混合し、さらに(E)接着助剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、(F)界面活性剤としてFTX−218(商品名、(株)ネオス製)0.5質量部および(G)保存安定剤として4−メトキシフェノール0.5重量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように、それぞれプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物の溶液をそれぞれ調製した。
なお(A)エポキシ基を有する化合物が、共重合体である場合、表1に記載の共重合体を含有する共重合体の溶液(上記合成例1〜3のいずれかで得たもの)として添加し、その含有する共重合体の量が表1に記載の量になるようにした。
【0140】
<感放射線性樹脂組成物溶液の評価>
上記のようにして調製した感放射線性樹脂組成物の評価を以下のように実施した。評価結果を表2に示した。
【0141】
(1) 評価用基板の作成
無アルカリガラス基板上に、上記で調製した感放射線性樹脂組成物の溶液をそれぞれスピンナーにより塗布した後、100℃のホットプレート上で2分間プレベークすることにより、膜厚4.0μmの被膜を形成した。
次いで、得られた被膜に、直径8〜15μmの範囲の異なる大きさの複数の丸状残しパターンを有するフォトマスクを介して、高圧水銀ランプを用いて露光量を200〜1,000J/mの範囲で変量して放射線照射を行った。
その後、0.40質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて25℃で現像時間を変量として液盛り法により現像した後、純水洗浄を1分間行った。さらにオーブン中180℃にて60分間ポストベークすることにより、パターン状被膜を形成した。
【0142】
(2) 感度の評価
前記(1)において、直径15μmの丸状残しパターンを複数有するフォトマスクを使用し、露光量を変量した以外は、上記「(1)解像度の評価」と同様にして基板上に丸状残しパターンを形成した。この丸状残しパターンの現像前と現像後の高さを、レーザー顕微鏡(キーエンス製VK−8500)を用いて測定した。これら値を下記式へ適用することで残膜率(%)を求めた。
残膜率(%)=(現像後高さ/現像前高さ)×100
この残膜率が90%以上になる露光量を感度とした。露光量が800J/m以下の場合、感度が良好と言える。評価結果を表2に示す。
【0143】
(3)耐熱性の評価
前記(1)でフォトマスクを介さず700J/m露光し得られた被膜ついて、更にオーブン中で230℃で20分加熱する前後での膜厚を触針式膜厚測定機(アルファステップIQ、KLAテンコール社製)で測定し、残膜率(処理後膜厚/処理前膜厚×100)算出した。評価結果を表2に示す。
【0144】
(4)耐薬品性の評価
前記(1)で、フォトマスクを介さず700J/m露光し得られた被膜ついて、60℃に加温した配向膜剥離液ケミクリーンTS−204(三洋化成工業(株)製)中に15分浸漬し、水洗後、更にオーブン中で120℃で15分乾燥させた。この処理前後の膜厚を触針式膜厚測定機(アルファステップIQ、KLAテンコール社製)で測定し、残膜率(処理後膜厚/処理前膜厚×100)算出した。評価結果を表2に示す。
【0145】
(5) 透過率の評価
前記(1)で、フォトマスクを介さず700J/m露光し得られた被膜ついて、波長400nmにおける透過率を、分光光度計(150−20型ダブルビーム(日立製作所(株)製))を用いて測定して評価した。このとき、90%未満の場合に透明性が不良といえる。評価結果を表2に示す。
【0146】
(6) 平坦性の評価
SiOディップガラス基板上に、顔料系カラーレジスト(JSR(株)製の「JCR RED 689」、「JCR GREEN 706」及び「CR 8200B」)を用いて、以下のように、赤、緑及び青の3色のストライプ状カラーフィルタを形成した。すなわち、スピンナーを用いて、上記カラーレジストの1色をSiOディップガラス基板に塗布し、ホットプレート上で90℃、150秒間プレベークして塗膜を形成した。その後、露光機Canon PLA501F(キヤノン(株)製)を用い、所定のパターンマスクを介して、ghi線(波長436nm、405nm、365nmの強度比=2.7:2.5:4.8)をi線換算で2,000J/mの露光量にて照射し、次いで0.05質量%水酸化カリウム水溶液を用いて現像し、超純水にて60秒間リンスした。続いて、更にオーブン中で230℃にて30分間加熱処理することにより、単色のストライプ状カラーフィルタを形成した。この操作を3色につき繰り返すことにより、赤、緑及び青の3色のストライプ状カラーフィルタ(ストライプ幅200μm)を形成した。
測定長2,000μm、測定範囲2,000μm角、測定方向を赤、緑、青方向のストライプライン短軸方向及び赤・赤、緑・緑、青・青の同一色のストライプライン長軸方向の2方向とし、各方向につき測定点数n=5(合計のn数は10)にて、カラーフィルタ基板の表面の凹凸を、接触式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製の「アルファ−ステップ」)で測定したところ、1.0μmであった。このカラーフィルタが形成された基板に、各々の熱硬化性樹脂組成物をスピンナーにて塗布した後、ホットプレート上において90℃にて5分間プレベークして塗膜を形成した後、更にクリーンオーブン中において180℃にて60分間ポストベークすることにより、カラーフィルタの上面からの膜厚が約2.0μmの保護膜を形成した。
このように形成したカラーフィルタ上に保護膜を有する基板について、接触式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製の「アルファ−ステップ」)にて、保護膜の表面の凹凸を測定した。この測定は、測定長2,000μm、測定範囲2,000μm角、測定方向を赤、緑、青方向のストライプライン短軸方向及び赤・赤、緑・緑、青・青の同一色のストライプライン長軸方向の2方向とし、各方向につき測定点数n=5(合計のn数は10)で行い、各測定ごとの最高部と最底部の高低差(nm)の10回の平均値を求め、保護膜の平坦化能(平坦性)の評価として表2に示した。この値が200nm以下のとき、保護膜の平坦化能は良好であると言える。
【0147】
(7) 電圧保持率の評価
調製した液状組成物を、表面にナトリウムイオンの溶出を防止するSiO膜が形成され、さらにITO(インジウム−酸化錫合金)電極を所定形状に蒸着したソーダガラス基板上に、スピンコートしたのち、90℃のクリーンオーブン内で10分間プレベークを行って、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。
次いで、フォトマスクを介さずに、塗膜に500J/mの露光量で露光した。その後、この基板を23℃の0.04重量%水酸化カリウム水溶液からなる現像液に1分間浸漬して、現像したのち、超純水で洗浄して風乾し、さらに180℃で60分間ポストベークを行い塗膜を硬化させて、永久硬化膜を形成した。
次いで、この画素を形成した基板とITO電極を所定形状に蒸着しただけの基板とを、0.8mmのガラスビーズを混合したシール剤で貼り合わせたのち、メルク製液晶MLC6608(商品名)を注入して、液晶セルを作製した。
次いで、液晶セルを60℃の恒温層に入れて、液晶セルの電圧保持率を、(株)東陽テクニカ製液晶電圧保持率測定システム「VHR−1A型」(商品名)により測定した。このときの印加電圧は5.5Vの方形波、測定周波数は60Hzである。ここで電圧保持率とは、(16.7ミリ秒後の液晶セル電位差/0ミリ秒で印加した電圧)の値である。液晶セルの電圧保持率が90%以下であると、液晶セルは16.7ミリ秒の時間、印加電圧を所定レベルに保持できず、十分に液晶を配向させることができないことを意味し、残像などの “焼き付き”を起こすおそれが高い。評価結果を表2に示す。
【0148】
(8)保存安定性の評価
感放射線性組成物溶液を40℃のオーブン中で1週間放置し、オーブンに入れる前後での粘度を測定し、粘度変化率を求めた。このとき、粘度変化率が5%以下である場合に保存安定性が良好といえ、5%を超える場合に保存安定性が不良といえる。粘度は、E型粘度計(商品名「VISCONIC ELD.R」、東機産業(株)製)を用いて25℃で測定した。評価結果を表2に示す。
【0149】
【表1】

なお、欄中の「−」は該当する成分を使用しなかったことを表す。
【0150】
【表2】


【0151】
表1中、(A)、(B)、(C)、(D)成分についての略号は、それぞれ次の化合物を意味する。
(A)エポキシ基を有する化合物
A1:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
A2:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製の「エピコート152」)
A3:合成例1で得られた共重合体
A4:合成例2で得られた共重合体
A5:合成例3で得られた共重合体
(B)重合性不飽和化合物
B−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
B−2:KAYARAD DPHA−40H(日本化薬(株)製)
B−3:1,9−ノナンジオールジアクリレート
B−4:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
B−5:トリメチロールプロパントリアクリレート
B−6:ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート(東亞合成(株)製の「アロニックスM−5300」)
B−7:コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製の「アロニックスTO−756」)
B−8:エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(C)感放射線性重合開始剤
C−1:1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](商品名「イルガキュアOXE01」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
C−2:エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)(商品名「イルガキュアOXE02」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
C−3:2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア907」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
C−4:2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(商品名「イルガキュア379」、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)
(D)成分
D−1:N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)キシレンイミン
D−2:N,N−ビス(1,3−ジメチルブチリデン)ヘキサメチレンイミン

(比較例に使用したアミン)
d−1:トリエチルアミン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ基を有する化合物、
(B)エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、
(C)感放射線性重合開始剤、並びに
(D)ケチミン及びアルジミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする感放射線性樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(D)が下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1記載の感放射線性樹脂組成物。
【化1】

〔式中、R1は相互に独立に水素原子又は置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は相互に独立に置換又は非置換の1価の炭化水素基を示し、R3は置換又は非置換の2価の炭化水素基を示す。〕
【請求項3】
前記(A)エポキシ基を有する化合物が、エポキシ基を有する重合体であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
前記、エポキシ基を有する重合体が、さらにカルボキシル基を有する重合体であることを特徴とする請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
層間絶縁膜、保護膜またはスペーサー形成用である請求項1から4のいずれか一項に記載の表示素子用感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
以下の工程を、以下に記載の順序で含むことを特徴とする層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーの形成方法。
(1)請求項5に記載の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程、
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程、
(3)工程(2)で放射線を照射された塗膜を現像する工程、及び
(4)工程(3)で現像された塗膜を加熱により焼成する工程
【請求項7】
工程(4)の焼成温度が200℃以下である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5に記載の感放射線性樹脂組成物から形成された層間絶縁膜、保護膜またはスペーサー。
【請求項9】
請求項8の層間絶縁膜、保護膜またはスペーサーのうち少なくとも一つを具備する表示素子。

【公開番号】特開2011−237668(P2011−237668A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110102(P2010−110102)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】