説明

成形体およびその製造方法、密封成形体、重合体ならびに光情報記録媒体

【課題】硬化促進剤を添加しなくても、室温付近で短時間のうちに硬化でき、かつ、硬化に伴う体積収縮を抑制することができる成形体を提供する。
【解決手段】成形体は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体およびその製造方法、密封成形体、重合体ならびに光情報記録媒体に関する。詳しくは、エポキシ基を有するシラン化合物を硬化することにより得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ基を有するシラン化合物を硬化させる場合、硬化剤として、アミノ基、チオール基、酸無水物基、およびヒドロキシ基などを有する化合物を配合する。しかし、これらの配合成分を混合しただけでは反応の進行が遅い場合が多く、硬化反応を触媒的に促進させるための硬化促進剤の添加が不可欠である。硬化促進剤としては、有機アミン化合物、有機リン化合物、ほう酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、有機酸金属塩など知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。これらの配合成分を溶解させるため、あるいは相溶性を高めるため、通常は有機溶剤が使われている。
【0003】
硬化性組成物を硬化させる場合、有機溶剤の揮発、体積の収縮や不規則な変形、クラックの発生などを伴うことが多い。このため、フィラーなどの充填剤を使わずに目的寸法の成形品を得るためには、あらかじめ収縮率を求めておき、収縮分を上乗せした大きさで成形する方法が取られる。あるいは、目的とする寸法よりも大きめの成形品を作り、切削加工によって寸法調整を行うなどの方法が取られる。常温硬化による寸法収縮率は、シリコーン樹脂で0.1〜0.2%、エポキシ樹脂で0.3%、ウレタン樹脂で0.3〜0.5%、ポリエステル樹脂やアクリル樹脂で7〜10%程度とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−122947号公報
【0005】
【特許文献2】特開2008−163311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
密封された成形器に硬化性組成物を充填して硬化させようとする場合、硬化に伴う樹脂の体積収縮と揮発物の発生が問題になる。
【0007】
例えば、アクリル系材料は硬化に伴う体積収縮が比較的大きいことが知られており、硬化中に成形器からの樹脂の剥離を起こすことがあるほか、成形器も樹脂製の場合、成形器そのものの変形を引き起こす可能性がある。
【0008】
エポキシ基やオキセタン基を結合基とする材料は、体積変化は比較的小さいものの、通常、硬化促進剤の添加を必要とする。硬化促進剤は単独では硬化性組成物に溶けにくい場合が多く、通常は有機溶剤に溶かして硬化性組成物に配合する方法が取られる。したがって、密封された成形器に硬化性組成物を充填して硬化する場合、有機溶剤が系内に残存することになり、気泡の発生や、硬化後の染み出しなどの問題を生じる虞がある。また、これらの硬化促進剤や有機溶剤は有害物や危険物である場合が多く、環境汚染の原因となるほか、人体に直接触れることがある日用品などで使用する場合は、健康に悪影響を及ぼすことが懸念される。さらに、硬化促進剤は紫外線吸収作用や被酸化作用を有するものが多く、成形体(重合体)の黄変など透過光の波長変化を起こしやすい。
【0009】
したがって、本発明の目的は、硬化促進剤を添加しなくても、室温付近で短時間のうちに硬化でき、かつ、硬化に伴う体積収縮を抑制することができる成形体およびその製造方法、密封成形体、重合体ならびに光情報記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化させることにより得られる成形体である。
【0011】
第2の発明は、
成形空間を内部に有する成形器と、
成形空間に形成された成形体と
を備え、
成形体は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化することにより得られる密封成形体である。
【0012】
第3の発明は、
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を調製する工程と、
硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、成形体を形成する工程と
を備える成形体の製造方法である。
【0013】
第4の発明は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物を、α−ヒドロキシ酸に由来するプロトンを開始剤として重合して得られる重合体である。
【0014】
第5の発明は、
記録層と、
記録層が内部に成形される記録層成形器と
を備え、
記録層は、記録層形成用組成物を硬化させることにより得られ、
記録層形成用組成物は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸と、発泡材料とを含む光情報記録媒体である。
【0015】
本発明において、密封には、成形器により成形体が外気から完全に隔離されている状態のみならず、成形器から成形体の一部が露出して外気と接触している状態も含まれる。例えば、成形器がその内部空間に硬化性組成物を注入およびそこから排出ための開口部を有する場合には、この開口部を介して成形体が外気と接触している状態も含まれる。
【0016】
成形体は重合体の一例であり、金型や成形器などの所定の型などにより成形したものをいう。重合体には、所定の型などにより成形したもののみならず、このような型などを用いて成形していない、任意の形状を有するバルク体や薄膜なども含まれ、さらには無定形の硬化物も含まれる。
【0017】
本発明では、エポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを配合することにより硬化性組成物を調製することで、硬化促進剤を添加しなくても、室温付近で短時間のうちに硬化性組成物を硬化して、成形体または重合体を作製できる。この硬化性組成物ではその配合成分を溶解するための有機溶剤を使わなくてもよいため、有機溶剤よる環境や人体への影響がない。また、硬化性組成物の配合成分は硬化して硬化物の構造に組み込まれ、液体として残存することがないうえ、シリコーンをエポキシ基で結合した構造となるため、硬化に伴う体積変化が小さい。このため、硬化組成物を密封型の成形器内に充填して硬化させても、体積変化に伴う成形器の破損や変形、成形体の成型器からの剥離などを起こしにくいうえ、硬化性組成物からの気泡の発生、成分の染み出しなどを抑制できる。このような性質を利用して、密封型の成形器と成形体との良好な一体化を実現したり、高い寸法制度の成形体を得たりすることができるようになる。特に、硬化性組成物が透明性を有する場合、透明な密封型の成形器内に硬化性組成物を供給し、硬化させることにより、成形器を含めた全体が透明な密封成形体を高寸法精度で製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、有機溶剤や、一般的に知られているような硬化促進剤を使うことなく、低温および短時間で成形体を得ることができる。また、密封した成形器に硬化性組成物を充填して硬化させても、成形体と成形器との剥離や成形器の変形を起こしにくく、さらには、揮発性成分による気泡発生、液状成分の染み出しなどを起こしにくい。したがって、高い寸法精度の成形体や、成形体と成形器とが一体化した密封成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成例を示す断面図である。
【図2】図2Aは、本発明の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の記録層成形器の一構成例を示す断面図である。図2Bは、本発明の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の記録層成形器の一構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(成形体およびその製造方法の例)
2.第2の実施形態(光情報記録媒体およびその製造方法の例)
【0021】
<1.第1の実施形態>
(成形体)
成形体は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化させることにより得られる。具体的には、成形体は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物を、α−ヒドロキシ酸に由来するプロトンを開始剤として重合して得られる重合体である。重合は、シラン化合物のエポキシ基を開環させて重合させる開環重合である。硬化性組成物は、熱反応により硬化する熱硬化性組成物であることが好ましい。ここで、熱反応には、室温付近の温度環境でも自発的に進行する反応も含まれる。室温付近とは、10℃以上40℃以下の温度範囲のことをいう。
【0022】
また、硬化性組成物を成形器内に充填し硬化させることにより、密封成形体としてもよい。具体的には、密封成形体は、成形空間を内部に有する成形器と、この成型器の成形空間に成形された成形体とを備え、成形体は、上述の硬化性組成物を硬化することにより得られる。
【0023】
成形体は、例えばガラス質または弾性ゲルである。硬化性組成物の組成を調整することで、ガラス質および弾性ゲルなどの成形体の性状を選択することができる。成形体は、波長400nm以上800nm以下の範囲内の光に対して透明性を有し、この波長の範囲内における光透過率の最大値Trmaxと最小値Trminの差ΔTr(=Trmax−Trmin)が3%以下であることが好ましい。このような光学特性を有することで、光学部品、光情報記録媒体、オーバーコート材料など、透明性を必要とする部材の原料として利用することができるからである。
【0024】
(成形体の用途)
この成形体または封止成形体の用途は特に限定されるものではないが、例えば、光学部品、光情報記録媒体、電子部品などに適用することができる。例えば、記録用の光ビームの照射に応じて発泡する気化材料を硬化性組成物にさらに含有させることにより、成形体を光情報記録媒体の記録層として用いることができる。この場合、記録層は、例えば、記録用の光ビームに応じた気泡からなる記録マークを形成することによって情報信号を記録することが可能である。光情報記録媒体は、記録層の両面または片面に当該記録層を保護する基板または保護層を有していてもよい。この光情報記録媒体の構成としては、例えば特開2009−140528号公報に記載された構成を用いることができる。
【0025】
(配合成分の特定方法)
成形体または重合体を形成するために用いた硬化性組成物の配合成分は、簡単な分析によって特定することができる。まず、成形体または重合体を粉砕し、適当な有機溶媒に浸して成分を溶出させる。次に、これを減圧濃縮したのち、必要に応じてクロマトグラフなどで成分を分取し、H−NMR(Nuclear Magnetic Resonance)によって構造帰属を行なうことで、硬化剤の種類を特定することができる。シラン化合物についても同様に未反応モノマ、オリゴマを分取し、H−NMRおよびSi−NMRによって構造帰属することができる。
【0026】
(エポキシ基を有するシラン化合物)
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物は、例えば、1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物、および1以上のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物の少なくとも1種からなり、これらの2種のシラン化合物からなることが好ましい。これらの2種のシラン化合物からなることで、硬化性組成物の硬化時におけるクラックの発生を抑制し、かつ、高硬度を得ることができるからである。また、シロキサン化合物とアルコキシシラン化合物との配合量を調整することで、成形体の硬度を広い範囲で制御することができる。
【0027】
1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物は、シロキサン結合による主骨格を有し、この主骨格の側鎖および/または末端基として、1以上のエポキシ基を有する官能基を導入した構造を有することが好ましい。このような構造を有するシロキサン化合物としては、例えば以下の一般式(1)により示すものを用いることができる。
【0028】
【化1】

(但し、式中、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基またはチオエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基またはチオエーテル基である。好ましくは、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基である。nは1以上の整数を示す。)
【0029】
1以上のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物は、アルコキシシラン化合物に、1以上のエポキシ基を有する官能基を導入した構造を有することが好ましい。このような構造を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば以下の一般式(2)により示すものを用いることができる。
【化2】

(但し、式中、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基またはチオエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基またはチオエーテル基である。好ましくは、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基である。nは1以上の整数を示す。)
【0030】
(ヒドロキシ酸)
ヒドロキシ酸とは、分子内に水酸基とカルボキシル基を同時に有する化合物のことであり、ヒドロキシカルボン酸、オキシ酸、アルコール酸とも呼ばれる。脂肪族ヒドロキシ酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、γ−ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバイン酸、バントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸などを挙げることができる。芳香族ヒドロキシ酸としては、例えば、サリチル酸、ホモサリチル酸、ヒドロキシ(メチル)安息香酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸などを挙げることができる。
【0031】
これらの中で、同じ炭素原子に水酸基とカルボキシル基が結合したα―ヒドロキシ酸を用いることが好ましい。α―ヒドロキシ酸は反応性が高いからである。このような高反応性は、水酸基からの誘起効果によるカルボキシル基の活性化に由来すると推測される。また、エポキシ基を有するシラン化合物とα−ヒドロキシ酸とを、溶剤を使わずに相溶させるため、α−ヒドロキシ酸は室温で液体、または低融点の固体であることが望ましい。具体的には、α−ヒドロキシ酸は融点が、100℃以下であることが好ましい。このような融点を有するα−ヒドロキシ酸としては、例えば、乳酸(融点17℃)、グリコール酸(融点70℃)、2−ヒドロキシ酪酸(融点44℃)が挙げられる。この中でも常温で液体である乳酸が特に好ましい。これらのヒドロキシ酸は単独で用いることも、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0032】
(添加剤)
硬化性組成物が、上記の配合成分以外にも、成形体として要求される特性に応じて、添加剤や特性改良剤を適宜含むようにしてもよい。添加剤や特性改良剤の具体例としては、充填剤、顔料、カップリング剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、離型剤、光吸収剤、色素などが挙げられる。
【0033】
(エポキシ基を有するシラン化合物の合成)
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物の合成方法としては、例えば、加水分解性基を有するシラン化合物と、分子内にエポキシ基を有するアルコールまたはチオールとを加水分解縮合する方法を用いることができる。具体的には、加水分解性基を有するシロキサン化合物およびアルコキシシラン化合物の少なくとも1種と、エポキシ基を有するアルコールとを混合してアルコール交換反応させ、遊離してくる低分子量アルコールを留去することで、エポキシ基を有するアルコールを導入する方法を用いることができる。
【0034】
アルコール交換反応には適宜、反応を促進させるための触媒を加えることができる。触媒はエポキシ環を開環させないものから選ぶことができ、例えば、金属、有機金属、塩基などを用いることができる。具体的には、ナトリウム、カリウム、亜鉛などの金属、ジラウリン酸ジブチルスズなどの有機金属、炭酸テトラメチルアンモニウム、炭酸水素テトラメチルアンモニウム、ケイ酸テトラメチルアンモニウム、ナトリウム・メトキシド、ホウ酸テトラメチルアンモニウムなどの塩基性化合物を好適に用いることができる。
【0035】
脱アルコール反応させる方法としては、例えば、特開1987−116673号公報、特開2001−122966号公報などに記載された従来公知の方法を用いることもできるが、本発明では、加水分解性基を有するシロキサン化合物またはアルコキシシラン化合物の、加水分解性基を完全に構造修飾することが好ましいため、以下に説明する独自の方法用いることが好ましい。
【0036】
エポキシ基を有するアルコール、例えばグリシドールは、熱が加わると徐々に重合して高分子量化するため冷蔵保管することが好ましい。アルコキシ基を有するシロキサン化合物またはアルコキシシラン化合物とグリシドールを脱アルコール反応させる際、温度を高く設定するとグリシドール同士が重合する割合が増えるほか、脱アルコール反応で構造修飾したエポキシ基と他のエポキシ基とも反応を起こしやすくなる。これらの副反応を避けるために、反応はできるだけ低温で行なうことが好ましい。脱アルコール反応は平衡反応であるため、温度を下げる代わりに生成系のアルコールを連続的に除外すれば、定量的に反応を進めることができる。本発明では、エバポレータを使って減圧加熱しながら反応させる方法を用いることが好ましい。短時間かつ極めて容易な操作で、定量的に構造修飾した目的物が得られるからである。
【0037】
(加水分解性基を有するシラン化合物)
シラン化合物としては、例えば、シロキサン結合を主骨格に有し、この主骨格の側鎖および/または末端に加水分解性基を有するシロキサン化合物、およびアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を用いることができる。シロキサン化合物の加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基を用いることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などを用いることができる。
【0038】
加水分解性基を有するシロキサン化合物としては、例えば、一般式(3)および一般式(3)に示すシロキサンの少なくとも1種を用いることができる。一般式(3)または一般式(4)に示すシロキサン化合物を用いる場合、その平均重合度(n)は好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。これは平均重合度(n)が12を超えると、分子量分布が均一なオリゴマを得ることが困難になるためである。これらのシロキサン化合物は、長鎖の末端同士が結合した環状構造であっても構わない。
【0039】
【化3】

(但し、式中、Rは置換基を有してもよく、かつ異なる2種類以上であってもよいアルキル基、アリール基を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【0040】
【化4】

(但し、式中、Rは置換基を有してもよく、かつ異なる2種類以上であってもよいアルキル基、アリール基を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【0041】
一般式(3)および一般式(4)に示すシロキサン化合物としては、具体的には例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、メチルポリシリケート、エチルポリシリケートなどを挙げることができる。
【0042】
加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば、以下の一般式(5)に示すシラン化合物を用いることもできる。
【0043】
【化5】

(但し、式中、Rは置換基を有していてもよく、かつ異なる2種類以上であってもよいアルキル基、アリール基を示す。nは0〜3の整数を示す。)
【0044】
加水分解性基を有するシロキサン化合物としては、一般式(3)または一般式(4)に示した市販品をそのまま使うことができるほか、一般式(5)で示したアルコキシシラン化合物を加水分解縮合して得ることもできる。この加水分解縮合の方法としては、例えば特開2009−209260号公報に記載された従来公知の方法を用いることができる。
【0045】
アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトレイソプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどを挙げることができる。
【0046】
これらの、加水分解性基を有するシラン化合物を加水分解縮合する場合、一般式(5)でn=1〜2のものを使って、単独で重合させることも、2種類以上を選んで適宜、配合比を調整したものを重合させることもできる。
【0047】
(エポキシ基を有するアルコール、チオール)
エポキシ基を有するアルコールまたはチオールとしては、例えば、グリシドールなどの含エポキシアルコールを単独で用いることができるほか、多価アルコールやメルカプトアルコールを、常法に従って部分的にエピハロヒドリンと反応させてエーテル結合させたものなども利用することができる。
【0048】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、グリセロール、2,3−ブタンジオールなどを挙げることができる。メルカプトアルコールとしては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジチオールなどを挙げることができる。
【0049】
これらのエポキシ基を有するアルコールまたはチオールは1種類だけを用いることも、2種類以上を同時に用いることもできる。
【0050】
(硬化性組成物の硬化反応)
上述した配合を有する硬化性組成物は、シラン化合物が有するエポキシ基を開環重合することにより硬化する。その際、α−ヒドロキシ酸は硬化剤として作用したのち、ポリマ骨格の末端に結合する。硬化性組成物の硬化反応は、例えば、以下の反応式(6)に示すように進行する。
【0051】
【化6】

(但し、反応式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基またはアリール基、HAはα−ヒドロキシ酸などのプロトン酸を表す。)
【0052】
α−ヒドロキシ酸の配合量が増大すると反応速度が増大し、ある範囲内で成形体(重合体)がガラス質になる傾向がある。これは次のように説明することができる。
原理的にはカチオンが1個あれば、すべてのエポキシ基が消費されるまで、無限に重合反応が進むことになるが、実際には様々な要因によって反応が途中で停止する。カチオン源として用いたα−ヒドロキシ酸の配合比がエポキシ基に対して高くなれば、それだけ重合が起こりやすくなり架橋密度が高くなるため、ある配合比以上でガラス質になると考えられる。
【0053】
エポキシ基を有するシラン化合物とα−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物は、成形体(重合体)の特性や要求する硬度に応じて任意の割合で配合することができる。この配合比は、エポキシ基を有するシラン化合物に含まれるすべてのエポキシ基の数と、α−ヒドロキシ酸に含まれるすべてのカルボキシル基の数の比が、1/1以上であることが好ましい。すなわち、エポキシ基は反応式(6)に示すようにカルボキシル基に由来するプロトンを開始剤として重合の連鎖を起こす。このため、エポキシ基を有するシラン化合物中のエポキシ基の数がα−ヒドロキシル酸中のカルボキシル基の数より多くても、硬化反応は十分に進行する。したがって、高い架橋密度の成形体(重合体)を得るためには、エポキシ基の数がカルボキシル基の数以上になるように配合することが望ましい。
【0054】
エポキシ基を有する官能基を導入したシロキサン化合物と、エポキシ基を有する官能基を導入したアルコキシシラン化合物との配合比には特に制限がなく、所望とする特性に応じて配合比を適宜調整することが可能である。エポキシ基を有する官能基がグリシドールの場合について、グリシドールを導入したシロキサン・オリゴマは、グリシドールを導入したアルコキシシラン化合物よりも、α−ヒドロキシ酸との反応速度が大きい場合が多く、得られる成形体(重合体)はガラス質になりやすい。α−ヒドロキシ酸の配合比が高い場合、硬化性組成物を配合している間に硬化してしまうなどの問題や、硬化に伴う発熱でクラックが発生するなどの問題を引き起こすこともある。グリシドールを導入したシロキサン・オリゴマに対して、グリシドールを導入したアルコキシシラン化合物を配合すると反応速度を低下することができ、硬化開始までの時間を長く取れるようになる。また、例えばエポキシ基を有する官能基と非反応性の官能基を同時に有するアルコキシシラン化合物を配合することで、弾性率や耐クラック性、透過光波長などの物性を制御することができるようになる。
【0055】
α−ヒドロキシ酸の質量αに対する、1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物の質量βの比率(α/β)は、1/40以上1/1以下の範囲であることが好ましい。質量費(α/β)が1/40未満であると、成形体として適切な硬度が得るのに長い時間を要する、または加熱が必須になるなどの問題を生じる傾向がある。質量比(α/β)が1/1を超えると、エポキシ基同士の重合が起こりにくくなり、条件の如何にかかわらず硬化物が得られにくくなるためである。
【0056】
硬化性組成物が、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物として1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物およびアルコキシシラン化合物の両方を含む場合には、両者の質量比を以下のようにすることが好ましい。
【0057】
すなわち、α−ヒドロキシ酸の質量αに対する、1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物β1およびアルコキシシラン化合物β2の質量比(α/(β1+β2))は、1/40以上1/1以下の範囲内であることが好ましい。質量比(α/β)が1/40未満であると、成形体として適切な硬度が得るのに長い時間を要する、または加熱が必須になるなどの問題を生じる傾向がある。質量比(α/β)が1/1を超えると、エポキシ基同士の重合が起こりにくくなり、条件の如何にかかわらず硬化物が得られにくくなるためである。この場合、1以上のエポキシ基を有するシロキサン化合物β1に対する、1以上のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物β2の質量比(β2/β1)は、1/20以上1/1以下の範囲内であることが好ましい。質量比(β2/β1)が1/20未満であると、耐クラック性や耐応力性の改良効果が現れにくくなる傾向がある。質量比(β2/β1)が1/1を超えると、室温付近での硬化に多大の時間を要するようになる傾向がある。
【0058】
(成形体の製造方法)
まず、例えば、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを配合し相溶させて、硬化性組成物を調製する。次に、例えば、調製した硬化性組成物を成形器に充填する。これにより、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物が、α−ヒドロキシ酸に由来するプロトンを開始剤として、カチオン重合し、重合体である成形体が得られる。
【0059】
硬化反応は発熱を伴うため、一旦、反応が開始すれば加速度的に重合が進行する。反応開始までの時間を短縮する目的で、または反応速度を自発的反応よりも、さらに速める目的で、加熱処理を適宜施すようにしてもよい。
【0060】
加熱処理としては、赤外線およびマイクロ波などの活性エネルギー線照射による加熱処理、ヒーター、オーブンおよびホットプレートなどによる加熱処理などが挙げられ、このような加熱処理のうちから成形器の形態などに応じて適宜選択することができる。なお、この加熱温度の方法は特に限定されるものではなく、上述した加熱処理の目的などに応じて適宜選択することができる。例えば反応開始までの時間を短縮することを目的とする場合、硬化性組成物を充填した成形器にマイクロ波を照射して反応を開始させたのち、照射を停止して室温で放置し、あとは自発的な反応で硬化させるなどの方法を取ることができる。ヒーター、オーブンおよびホットプレートなどを使う場合、所定の時間(例えば5分間)、加熱処理を行なって反応を開始させるが、加熱処理の温度は、硬化組成物として配合したα−ヒドロキシ酸など配合成分の沸点を上限とすることが望ましい。
【0061】
成形器が、例えばディスク状のセルで、注入される硬化性組成物が薄く保持されるため、熱容量が小さい場合には、自発的反応による蓄熱量も小さくなるため、硬化に時間がかかるようになる。このような場合は、反応開始後も温度を調整しながら適宜、過熱を続けることができる。通常は室温から150℃までの間でセルを保持することにより、硬化時間を短縮することができる。一方、成形器が大型で注入される硬化性組成物の容量が大きく、熱容量が大きくなる場合、自発的反応による蓄熱量も大きくなり、反応系が高温になり過ぎてしまう場合もある。この場合、急激な温度上昇によってクラックを発生したり、硬化性組成物の揮発を招いたりすることがあるほか、成形器がプラスチックなどの熱可塑性樹脂の場合には熱変形を起こすこともある。これを回避する方法として、反応開始後に成形器を冷却することで熱を逃がし、同時に反応速度を抑える方法を取ることができる。
【0062】
硬化性組成物は成形器に充填して硬化させ、そのまま密封成形体として利用することも、成形器から成形体を取り出して利用することもできる。本実施形態に係る硬化組成物は硬化の際に溶剤の揮発や発泡を起こさず、寸法変化も小さいという特長を有する。このため、完全に密封した成形器に硬化組成物を充填して硬化した場合でも、成形器と成形体の良好な一体化が得られる。また、本実施形態に係る硬化性組成物は近紫外線領域〜可視光線全域〜近赤外線領域にわたって高い透明性を有する。このため、同じように透明な成形器に硬化性組成物を充填して硬化させ、そのまま実用に供することができる。もちろん、硬化性組成物を成形器に充填して硬化させたのち、成形体を成形器から取り出して利用することもできる。この場合、成形器には必要に応じて離型剤を塗布することで生産性の向上を図れる。また、硬化性組成物を金型に注入して硬化させたのち、硬化した硬化性組成物を金型から取り出して用いるようにしてもよい。
【0063】
(効果)
第1の実施形態によれば、エポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化させることにより、成形体および重合体を作製することができる。有機溶剤や、一般的に知られているような硬化促進剤を硬化性組成物に配合していないため、硬化時に揮発物が発生しにくく、環境負荷も小さい。
【0064】
本実施形態に係る硬化性組成物は、その配合を適宜調整することで、近紫外域〜可視光全域〜近赤外域の広範囲な波長領域における高い透明性と、鉛筆硬度10H以上〜10Bの広範囲の硬度を実現することができる。硬化性組成物は、アミン類などの硬化促進剤を含まないため、紫外線などによる成形体および重合体の黄変や、短波長域の光吸収を抑制することができる。また、硬化性組成物は、硬化に伴う体積収縮率が小さく、高い寸法精度で成形物を得ることができる。このため、密封型の成形器で硬化させ、成形器と成形体とを一体で用いる場合に、特に好適に用いることができる。
【0065】
<2.第2の実施形態>
(光情報記録媒体の構成)
図1は、本発明の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の一構成を示す断面図である。図1に示すように、この光情報記録媒体は、記録層1と、この記録層1が内部に成形される記録層成形器2とを備える。光情報記録媒体は、例えばディスク状の形状を有し、その一主面が、情報信号を記録または再生するためのレーザ光が照射される信号面となる。この信号面に対して、照射されるレーザ光の反射を低減するために反射防止層をさらに備えるようにしてもよい。
光情報記録媒体、記録層成形器2、記録層1はそれぞれ、密封成形体、成形器、成形体の一例であり、これらの密封成形体、成形器、および成形体の形状は、本実施形態の例に限定されるものではなく、所望とする形状や特性などに応じて選択可能である。
以下、光情報記録媒体を構成する記録層1および記録層成形器2について順次説明する。
【0066】
(記録層)
記録層1は、記録層形成用組成物を重合などにより硬化してなる。記録層形成用組成物は、硬化性組成物と、この硬化性組成物に分散された発泡材料とを主成分として含んでいる。硬化性組成物としては、上述の第1の実施形態に係る硬化性組成物を用いることができる。発泡材料としては、例えば、1光子吸収によって発泡する1光子吸収材料、または2光子吸収によって発泡する2光子吸収材料を用いることができる。2光子吸収材料としては、例えばシアニン色素、メロシアニン色素、アリーリデン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アゾ色素、フタロシアニン色素などの種々の有機色素、または無機結晶などを用いることができ、これらの材料は単独で用いることも、2種以上混合して用いることもできる。
【0067】
(記録層成形器)
図2Aは、記録層成形器の一構成例を示す断面図である。図2Bは、第2の基材側から記録層成形器を見たときの記録層成形器を示す平面図である。なお、図2Bでは、記録層形成器2の内部構成の把握を容易とするために、第2の基材12の図示を省略している。図2Aおよび図2Bに示すように、記録層成形器2は、中心部に中心孔部3が形成された円環形状を有し、その内部には記録層1を成形するための成形空間15が設けられている。記録層成形器2は、第1の基材11と、第2の基材12と、内周側スペーサ13と、外周側スペーサ14とを備える。第1の基材11と第2の基材12とが、内周スペーサ13および外周スペーサ14を介して対向配置されている。内周側スペーサ13は、第1の基材11と第2の基材12との対向面の内周部に設けられ、外周スペーサ14は、第1の基材11と第2の基材12との対向面の外周部に設けられている。記録成形器2の内周側側面には、記録層形成用組成物を注入するための注入用開口部16が形成されている。記録成形器2の外周側側面には、注入用開口部16から注入された余剰な記録層形成用組成物を排出するための排出用開口部17が形成されている。
【0068】
内周側スペーサ13は、全体として円環形状を有し、その一部が開口されて注入用開口部16が形成されている。外周側スペーサ14は、全体として円環形状を有し、その一部が開口されて排出用開口部17が形成されている。必要に応じて、注入用開口部16および排出用開口部17を封止部材により封止するようにしてもよい。
【0069】
第1の基材11および第2の基材12は、例えば、フィルム状、シート状、基板状を有している。第1の基材11および第2の基材12は両主面を有し、その両主面の形状は、例えば円環形状を有している。第1の基材11および第2の基材12の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料、ガラスなどを主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0070】
ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなど(「化学便覧」基礎編、P.I-537、日本化学会編参照)が用いられる。プラスチック材料としては、透明性、屈折率、および分散などの光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、および耐久性などの諸特性の観点から、ポリメチルメタアクリレート、メチルメタクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレート、スチレンなどといったビニルモノマとの共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR-39)などのポリカーボネート系樹脂;(臭素化)ビスフェノールA型のジ(メタ)アクリレートの単独重合体ないし共重合体、(臭素化)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートのウレタン変性モノマの重合体及び共重合体などといった熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂;ポリエステル特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよび不飽和ポリエステル、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、シクロオレフィンポリマー(商品名:アートン、ゼオノア)などが好ましい。また、耐熱性を考慮したアラミド系樹脂の使用も可能である。
【0071】
(光情報記録媒体の製造方法)
次に、本発明の第2の実施形態に係る光情報記録媒体の製造方法の一例について説明する。
まず、硬化性組成物に対して発泡材料を配合し、記録層形成用組成物を調製する。次に、調製した記録層形成用組成物を記録層形成器2の注入用開口部16から成形空間15内に注入し、余剰な記録層形成用組成物を排出用開口部17から排出する。
【0072】
次に、記録層形成器2に注入した記録層形成用組成物を硬化させる。反応開始までの時間を短縮する目的で、または反応速度を自発的反応よりも、さらに速める目的で、記録層形成用組成物が注入された記録層形成器2に対して加熱処理を施すようにしてもよい。記録層形成器2がプラスチック材料により構成されている場合には、加熱処理の温度は、記録層形成器2をプラスチック材料のガラス転移点以下または融点以下であることが好ましい。記録層形成器2の変形を抑制することができるからである。なお、記録層形成器2を形成する部材に複数種類のプラスチック材料が用いられている場合には、それらの部材のうち最も低いガラス転移点温点または融点の温度以下で熱処理することが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
エポキシ基を有するシロキサン化合物(以下エポキシシロキサン化合物と適宜称する。)Aと、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物(以下エポキシアルコキシシラン化合物と称する。)A〜Dを以下のようにして合成した。
【0075】
(エポキシシロキサン化合物A)
まず、以下の原料を準備した。
エポキシ基を有するアルコール:グリシドール
加水分解性基を有するシロキサン・オリゴマ:メチルポリシリケート(コルコート(株)製、商品名:MS−53A)
アルコール交換反応の触媒:ジラウリン酸ジブチルすず(IV)
【0076】
次に、加水分解性基を有するシロキサン・オリゴマ、1.05〜1.30当量のグリシドールをナスフラスコに秤量し、全質量に対して0.2質量%の触媒を加え、エバポレータに接続した。ナスフラスコを70℃のウォータ・バスに浸して回転させ、大気圧から20mmHgまで、5時間かけて徐々に減圧度を上げ、反応で発生するメタノールを留去した。さらに10mmHgで約1時間、操作を続け、メタノールの留去が無くなったことを確認したところで操作を中止した。JIS K7236に準拠してエポキシ当量を測定し、理論値との誤差が5%以内であることを確認して反応を終了した。エポキシ当量の実測値が理論値よりも5%以上大きかった場合、0.1〜0.3当量のグリシドールを加えて再度、同じ操作で反応させ、誤差を5%以内に収めた。
以上により、メチルポリシリケートのメチル基がエポキシ基で置換されて、エポキシシロキサン化合物Aが合成された。
【0077】
(エポキシアルコキシシラン化合物A)
以下の原料を用いた以外はエポキシシロキサン化合物Aと同様にして合成した。これにより、フェニルトリエトキシシランの加水分解性基がエポキシ基で置換され、エポキシアルコキシシラン化合物Aが合成された。
エポキシ基を有するアルコール:グリシドール
加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物:フェニルトリエトキシシラン
アルコール交換反応の触媒:ジラウリン酸ジブチルすず(IV)
【0078】
(エポキシアルコキシシラン化合物B)
加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物としてジメトキシジフェニルシランを用いた以外はエポキシアルコキシシラン化合物Aと同様にして合成した。これにより、ジメトキシジフェニルシランの加水分解性基がエポキシ基で置換され、エポキシアルコキシシラン化合物Bが合成された。
【0079】
(エポキシアルコキシシラン化合物C)
加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物としてシクロヘキシルトリメトキシシランを用いた以外はエポキシアルコキシシラン化合物Aと同様にして合成した。これにより、シクロヘキシルトリメトキシシランの加水分解性基がエポキシ基で置換され、エポキシアルコキシシラン化合物Cが合成された。
【0080】
(エポキシアルコキシシラン化合物D)
加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物としてヘキシルトリメトキシシランを用いた以外はエポキシアルコキシシラン化合物Aと同様にして合成した。これにより、ヘキシルトリメトキシシランの加水分解性基がエポキシ基で置換され、エポキシアルコキシシラン化合物Dが合成された。
【0081】
次に、上述のようにして合成したエポキシシロキサン化合物A、およびエポキシアルコキシシラン化合物A〜Dを用いて、熱硬化性組成物を調製した。
【0082】
(実施例1−1〜1−5)
シロキサン誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比10:1〜60:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0083】
(実施例2−1〜2−5)
表2に示すように、カルボン酸としてDL−2−ヒドロキシ酪酸を用いた以外は実施例1として熱硬化性組成物を調製した。
【0084】
(実施例3−1〜3−5)
シロキサン誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、アルコキシシラン誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Aと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比7:3:1〜28:12:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0085】
(実施例4−1〜4−5)
シロキサン誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、アルコキシシラン誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Bと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比7:3:1〜28:12:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0086】
(実施例5−1〜5−5)
シロキサン誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、アルコキシシラン誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Cと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比7:3:1〜28:12:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0087】
(実施例6−1〜6−5)
シロキサン誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、アルコキシシラン誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Dと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比7:3:1〜28:12:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0088】
(実施例7)
アルコキシシラン化合物誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Aと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0089】
(実施例8)
アルコキシシラン化合物誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Bと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0090】
(実施例9)
アルコキシシラン化合物誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Cと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0091】
(実施例10)
アルコキシシラン化合物誘導体としてエポキシアルコキシシラン化合物Dと、カルボン酸としてDL−乳酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0092】
(比較例1)
シロキサン化合物誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、カルボン酸として酢酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0093】
(比較例2)
シロキサン化合物誘導体としてエポキシシロキサン化合物Aと、カルボン酸としてDL−3−ヒドロキシ酪酸とを、表2に示すように質量比10:1の割合で配合し相溶させて、熱硬化性組成物を調製した。
【0094】
上述のようにして得られた実施例1−1〜6−5、7〜10および比較例1、2の熱硬化性組成物について、以下の(1)〜(5)の特性評価を行った。
【0095】
(1)性状、硬度
まず、40mm×40mm×0.7mmのスライド・ガラスの縁部に大きさを合わせ、正方形に中央部を打ち抜いた、幅5mm、厚さ0.3mmのシリコーンのスペーサをスライド・ガラスに載置した。次に、スライド・ガラス上に熱硬化性組成物を滴下したのち、同じ大きさで表面離型処理を施したカバー・ガラスを乗せて熱硬化性組成物を挟持して評価サンプルとした。硬化方法について、実施例1〜実施例10では、評価サンプルをホットプレートに載置し、90℃で5分間、加熱した。その後、室温まで冷却してカバー・ガラスを取り外し、硬化物の性状を観察した。さらに、室温で12時間放置したところで硬化した熱硬化性組成物の「ひっかき硬度」(鉛筆法、JIS K5600に準拠)を測定し、最終的な硬度とした。比較例1〜2では、評価サンプルをホットプレートに載置し、100℃で60分間、加熱した。その後、室温まで冷却してカバー・ガラスを取り外し、さらに、室温で48時間放置したところで硬化した熱硬化性組成物の「ひっかき硬度」(鉛筆法、JIS K5600に準拠)を測定し、最終的な硬度とした。
【0096】
(2)硬化収縮率
まず、内面を平滑処理したテフロン・チューブ(内径3mm、外形4mm)の一端に注射筒を接続し、他端から熱硬化性組成物を吸入した。次に、吸入した熱硬化性組成物の長さが500mmになったところで空気を約10mm吸入し、熱硬化性組成物をチューブの奥に移動させた。次に、吸入口をテフロン・キャップで塞ぎ、注射筒を外したのち、90℃で5分間加熱し硬化させた。次に、硬化物の両端部のチューブ上にしるしをつけ、両端間の長さを求めた。次に、これを100℃に加熱したオーブンに入れ、1時間加熱した。硬化前後の樹脂の長さの変化から、熱による体積収縮率を求めた。
【0097】
(3)光透過率
まず、厚さ0.7mmの石英ガラス板を2枚準備し、これらで熱硬化性組成物を挟持する以外のことは、(1)の硬度測定の場合と同様にして評価セルを作製した。次に、日本分光(株)ARM−500Vを使って波長範囲400〜800nmの光透過率を測定した。測定条件は、評価サンプル面に対する光の入射角:90°、光源:タングステンランプ(可視光領域)、重水素ランプ(紫外光領域)、N偏光とした。
【0098】
(4)光透過率変化(耐候性試験)
上述の(3)の評価で作製したものと同じサンプルをウェザーメーター(光源:キセノンランプ)で90,000kJ/m2の光照射を行なったのち、分光光度計で光透過率を測定した。次に、測定データを元に、次の式から波長ごとの光透過率変化を求めた。
【0099】
(光透過率変化)[%]=[(耐候試験前の透過率)−(耐候試験後の透過率)]/(耐候試験前の透過率)×100
【0100】
(5)クラックの発生(耐候性試験)
耐候性試験後のサンプルで、硬化物のクラック発生の有無を観察した。
【0101】
表1は、エポキシシロキサン化合物A、エポキシアルコキシシラン化合物A〜Dの原料成分を示す。
【表1】

【0102】
表2は、実施例1−1〜6−5、7〜10、比較例1、2の熱硬化性組成物の組成、および評価結果を示す。
【表2】

【0103】
上述の評価結果から以下のことが分かる。
比較例1、2のように、カルボン酸がヒドロキシ基を有していない場合、あるいはヒドロキシ基を有している場合でもβ−ヒドロキシ酸の場合、硬化に時間を要するうえ、得られる硬度も低いものとなった。これに対して、実施例1−1〜1−5、2−1〜2−2、実施例3−1〜6−5、実施例7〜10のように、カルボン酸がα−ヒドロキシ酸の場合は90℃、5分間の加熱でガラス質または弾性ゲル(表面タック性なし)が得られた。さらに室温、12時間での反応進行により、熱硬化性組成物の組成に応じて鉛筆硬度10H〜10Bの広い範囲の硬度が得られた。この性質を利用することで、例えば製造プロセス上で短時間の加熱を行ない、その後の工程に支障がない程度の硬度を得て残りの工程を進めたのち、これら工程時間も含めて一定の時間、室温で硬化を進めることにより完全な硬化物を得る、という製造方法を実現することができる。
なお、表2において実施例1−1〜6−5、7−10の熱硬化性組成物のうちで、比較例1、2の熱硬化性組成物に比して低い硬度となっているものがあるのは、上記「(1)性状、硬度」欄で記載したように、硬化条件が異なるからである。同一の硬化条件にて、実施例1−1〜6−5、7−10、比較例1、2の熱硬化性組成物を硬化した場合には、実施例1−1〜6−5、7−10の熱硬化性組成物は、比較例1、2の熱硬化性組成物に比して高い硬度が得られる。
また、性状の評価結果が“液状”となっている実施例2−3〜2−5の熱硬化性組成物でも同様に、同一の硬化条件にて硬化すれば、比較例1、2の熱硬化性組成物に比して高い硬度が得られる。
【0104】
実施例1−1の配合では、ガラス質の硬化物が得られた。それ以外の実施例1−2〜1−5、実施例2−1〜2−2、3−1〜6−5、実施例7〜10の配合ではすべて非ガラス質の弾性ゲルが得られた。また、実施例2−1〜2−5のうち実施例2−1、2−2では低い硬度の弾性ゲルが得られた。このことからα−ヒドロキシ酸のうちでも、DL−乳酸は著しく高い硬化促進作用を示すことが分かる。
【0105】
耐候試験に付した実施例1−1、実施例2−1、実施例3−5、実施例4−5、実施例5−5、実施例6−5、実施例7〜10において、エポキシアルコキシシラン化合物を含まない実施例1−1、実施例2−1ではクラックを生じた。このことから、エポキシアルコキシシラン化合物の配合はクラックの抑制に高い効果を示すことが分かる。
【0106】
実施例3−1〜3−4、4−1〜4−4、5−1〜5−4、6−1〜6−4の評価結果に着目すると、シロキサン誘導体とアルコキシシラン誘導体の合計質量とカルボン酸の質量の比を10/1、および20/1に固定したとき、シロキサン誘導体とアルコキシシラン誘導体の混合比を変えることで、硬化物の硬度を広い範囲で制御できることが分かる。これは実施例7〜10に示すような、硬化物の硬度が低いセグメントを導入したことによる効果である。また、実施例3−1、4−1、5−1、6−1の硬度が実施例1−1よりも大きく測定されたのは、これらのセグメントを導入することで、表面に傷がつきにくくなると同時に、圧痕に対する復元力が増したため、鉛筆硬度としては高硬度と評価されたものと考えられる。
【0107】
耐候性試験において、実施例1−1、2−1、3−5、4−5、5−5、6−5、7〜10のいずれのサンプルでも光透過率の低下、すなわち黄変などの色変化は認められなかった。
【0108】
実施例1−1、2−1、3−5、4−5、5−5、6−5、7〜10の熱硬化性組成物では、エポキシ基を結合基としているので、硬化収縮率が1%未満となっている。
アクリル系材料(紫外線硬化樹脂)の収縮率は、7〜10%程度であるので、実施例1−1、2−1、3−5、4−5、5−5、6−5、7〜10の熱硬化性組成物は、アクリル系材料よりも低い収縮率を得ることができる。したがって、密封型の成形器内に充填して硬化させても、体積変化に伴う成形器の破損や変形、成形体の成型器からの剥離などを起こしにくい。
【0109】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0110】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値などは、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 記録層
2 記録層成形器
3 中心孔部
11 第1の基材
12 第2の基材
13 内周側スペーサ
14 外周側スペーサ
15 成形空間
16 注入用開口部
17 排出用開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化させることにより得られる成形体。
【請求項2】
上記シラン化合物が、シロキサン化合物およびアルコキシシラン化合物の少なくとも1種を含む請求項1記載の成形体。
【請求項3】
上記シラン化合物が、シロキサン化合物およびアルコキシシラン化合物を含む請求項2記載の成形体。
【請求項4】
上記シロキサン化合物が下記の一般式(1)で表され、上記アルコキシシラン化合物が下記の一般式(2)で表される請求項2または3記載の成形体。
【化1】

(但し、式(1)中、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基である。nは1以上の整数を示す。)
【化2】

(但し、式(2)中、Rは置換基を有していてもよく、かつ互いに異なっていてもよいアルキル基、アリール基、アルキロキシ基、アリーロキシ基、1以上のエポキシ基を部分構造として有するエーテル基であり、この中の少なくとも1つは、1以上のエポキシ基を有するエーテル基である。nは1以上の整数を示す。)
【請求項5】
硬化した上記硬化性組成物は、上記シラン化合物が有するエポキシ基を開環重合して得られた重合体を主成分として含んでいる請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
上記硬化性組成物は、熱反応により硬化する熱硬化性組成物である請求項1記載の成形体。
【請求項7】
硬化した上記硬化性組成物は、波長400nm以上800nm以下の範囲内の光に対して透明性を有し、上記波長の範囲内における光透過率の最大値Trmaxと最小値Trminの差ΔTr(=Trmax−Trmin)が3%以下である請求項1記載の成形体。
【請求項8】
硬化した上記成形体は、ガラス質または弾性ゲルである請求項1記載の成形体。
【請求項9】
上記α−ヒドロキシ酸は融点が、100℃以下である請求項1記載の成形体。
【請求項10】
上記α−ヒドロキシ酸が、乳酸、グリコール酸、および2−ヒドロキシ酪酸の少なくとも1種である請求項1記載の成形体。
【請求項11】
成形空間を内部に有する成形器と、
上記成形空間に成形された成形体と
を備え、
上記成形体は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を硬化することにより得られる密封成形体。
【請求項12】
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸とを含む硬化性組成物を調製する工程と、
上記硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、成形体を形成する工程と
を備える成形体の製造方法。
【請求項13】
上記硬化性組成物の調製の工程前に、
シロキサン骨格を有すると共に、該骨格の側鎖および/または末端基として加水分解性基を有するシロキサン化合物、および/または加水分解性基を有するアルコキシシラン化合物と、1以上のエポキシ基を有するアルコールまたはチオールとを、エバポレータを用いて、80℃以下の低温環境下で連続的に減圧しながら、上記1以上のエポキシ基を有するシラン化合物を合成する工程をさらに備える請求項12記載の成形体の製造方法。
【請求項14】
上記成形体の成形工程では、上記硬化性組成物を密封型の成形器に供給して硬化させることにより、上記成形体を成形する請求項12記載の成形体の製造方法。
【請求項15】
上記成形体の成形工程では、上記硬化性組成物を金型に供給して硬化させることにより、上記成形体を成形する請求項12記載の成形体の製造方法。
【請求項16】
1以上のエポキシ基を有するシラン化合物を、α−ヒドロキシ酸に由来するプロトンを開始剤として重合して得られる重合体。
【請求項17】
記録層と、
上記記録層が内部に成形される記録層成形器と
を備え、
上記記録層は、記録層形成用組成物を硬化させることにより得られ、
上記記録層形成用組成物は、1以上のエポキシ基を有するシラン化合物と、α−ヒドロキシ酸と、発泡材料とを含む光情報記録媒体。
【請求項18】
上記記録層は、情報信号記録時に集光される光の吸収により発泡し、記録マークとしての空洞を形成可能である請求項17記載の光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107138(P2012−107138A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258081(P2010−258081)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】