説明

成形可能な熱可塑性積層体を製造する方法

【課題】
レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含む第1表面層と、基材に接合するのに適した第2表面層とを含む積層材を作成する方法。
【解決手段】
第1表面層ポリマー材料及び第2表面層ポリマー材料を、ダイを通して、第1のニップを定める第1の表面ロール及び第2の表面ロールからなるカレンダーロールスタックの第1のニップ中に共押出して積層材を形成する。第1のニップで約400N/cm以上のニップ荷重を積層体にかけることができ、そのロールスタックから積層材を回収することができる。第1のロールと第2のロールは、各々、約5マイクロメートル以下の表面平滑度及び約40〜約150℃の温度を有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材、殊に発泡基材に対する良好な接着力を有する多層熱可塑性積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの自動車部品及び車両本体パネルは熱硬化性ポリマー組成物のような熱成形可能な組成物から成形される。しかし、自動車産業では、一般に、消費者の目に見える全ての表面が「クラスA」の表面品質を有することが要求される。少なくとも、かかる表面は滑らかで光沢があり、しかも耐候性でなければならない。熱成形可能な組成物から作成された部品は、許容できる品質と外観の表面を得るために、広範な表面処理をし、かつ硬化性のコーティングを施す必要があることが多い。かかる表面を調製するのに必要な工程は高価で時間がかかることがあり、しかも熱硬化した物質の機械的性質に影響することがある。
【0003】
熱成形可能な部品の成形したままの表面品質は改良され続けているが、露出したガラス繊維、ガラス繊維の突き破り(read-through)、などに起因する表面の欠陥が生じることが多い。これらの表面欠陥はさらに、かかる表面に設けたコーティングに欠陥を生じ得る。熱成形可能な組成物の表面における欠陥及び熱成形可能な組成物の表面に設けた硬化したコーティングにおける欠陥は、ペイントポッピング、高い長期及び短期波スキャン値(high long- and short-term wave scan value)、ミカン肌、光沢の変動などとして現れ得る。
【0004】
許容できる外観と品質の熱成形可能な表面を得るために、幾つかの技術が既に提案されている。例えば、薄い予備成形された塗膜のオーバーモールディングにより、所望のクラスA表面を得ることができる。しかし、かかるオーバーモールディングは、普通、二次的な表面処理操作を全く必要としない初めて(virgin)成形した表面を提供することができる組成物にしか適用できない。「成形したままの」表面品質は改良されるが、構成部品の成形したままの表面は相変わらず塗装の前に、殊に縁部では研磨と、それに続くシール(sealing)及びプライミングが必要である。金型内のコーティングにより、これらの作業を省略することができるが、その代償としてサイクル時間とコストが大幅に増大せざるを得ない。かかるプロセスでは、その部品表面に塗布し得る高価な塗料系を使用し、一方金型を少しだけ再度開いた後閉じてそのコーティングを分配し硬化させる。
【0005】
表面の改良はまた、低収縮剤の添加によっても得られている。かかる添加剤は、高い応力に起因する極めて小さい内部空隙を生ずることにより表面における「リードスルー」を低下させ、より滑らかな表面を提供する。しかし、その空隙が表面に生じると、仕上がりに欠陥が生じ得る。これらの空隙は、また応力集中剤としても機能し、追加の応力下で早期(premature)故障を起こしたり、又は一般的な研磨中に表面に現れ、塗装プロセスで隠すことができない程度のピットが残ることがある。
【0006】
熱成形可能な多層積層体は、車両分野で、各種の自動車部品に応用したとき、その下にある表面又は基材の品質を損なうことなく許容できる表面処理を提供することが知られている。しかし、従来技術の積層体は、その積層体に接合した基材からの分離を始めとして層間又は層内分離を示すことが知られている。さらにまた、多層積層体組成物の各種の層は、互いに対して、及び/又はそれらの層を付けた表面又は基材に対して不均一に接着することがある。そのため、完成した自動車部品の表面品質が許容できないことになり得る。
【0007】
多層積層体は従来、共射出成形、オーバーモールディング、マルチショット射出成形、シートモールディング、共押出、基材層の表面上へのコーティング層材料のフィルムの配置、などを始めとする種々の方法で形成されている。共押出法が殊に望ましい。共押出によって形成される多層積層体は、経済的に有利であり、一般に多層積層体を構成する各種の層に対する凝集・粘着力と接着力の点で改良されている。しかし、ある種の多層積層体組成物は共押出で形成するのが困難である。このように、基材に対する接着力と表面品質に関して望ましいバランスのとれた性質を有するが共押出することもできる成形可能な多層積層体を提供することは困難であった。
【特許文献1】米国特許第4695239号明細書
【特許文献2】米国特許第4731213号明細書
【特許文献3】米国特許第5009952号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0197438号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0008164号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/0175488号明細書
【特許文献7】国際公開第02/090109号パンフレット
【特許文献8】国際公開第96/07541号パンフレット
【特許文献9】国際公開第99/02339号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、基材表面により有効に接着すると共に望ましい表面品質を提供する熱成形可能な多層積層体組成物を製造する方法が求められ続けている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書には、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含む第1表面層と、基材に接合するのに適した第2表面層とを含む積層材の生産方法が開示されている。一実施形態では、本方法は、第1表面層ポリマー材料と第2表面層ポリマー材料とを、ダイを通して、第1の表面ロールと第2の表面ロールを含むカレンダーロールスタックの第1のニップに共押出して積層材を形成し、その積層材をロールスタックから回収することを含んでおり、ここで第1表面層は、積層体の第1表面層内に1平方フィート当たり約190個以下の粒状物(1平方メートル当たり約2050個以下の粒状物)を生じる清浄度レベルを有する材料からなり、欠陥は約350μmの平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定)を有しており、第1のロールと第2のロールは各々約5マイクロメートル(200マイクロインチ)以下の表面平滑度と約40〜約150℃(約100〜約300°F)の温度を有しており、第1のニップにおいて約400N/cm(約230ポンド/インチ)以上のニップ荷重をかける。
【0010】
上記及びその他の特徴は以下の図及び詳細な説明によって裏付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下で図を参照するが、これらの図は代表的な実施形態であり、類似の要素には類似の番号が付与されている。
【0012】
本明細書に開示されている方法は、2つの対向する積層体表面を定める材料の2以上の層、すなわち、第1表面層と第2表面層を含む積層体を製造するのに使用することができる。この積層体は、この積層体を貼り付けることができる基材に対して所望の表面を提供するのに使用できる。場合により、この方法は、第2表面層と第1表面層との間に1以上の中央層を含む積層体を提供するのに使用することができる。本明細書で「第1」、「第2」などの用語は、何らかの量、順序、又は重要性を意味するのではなく、むしろ1つの要素を別のものから区別するのに使用されており、また単数形の用語は本明細書中で量の制限を意味するのではなく、むしろ言及されているものが1以上存在することを意味している。さらに、本明細書に開示されている範囲は全て包括的であり、組合せ可能である(例えば、「約25wt%以下であり、約5〜約20wt%が望ましい」という範囲は端点を含み、「約5〜約25wt%」などの範囲のあらゆる中間の値を含む)。
【0013】
第1表面層により、優れた品質の表面、すなわち、基材上に積層体を熱成形する前後で、他の方法に従って作成した積層体で達成されるものより少ないブラシライン、ダイラインその他あらゆるライン、及び/又はより少ないピンホール、空隙(ボイド)、ゲル、ブラックスペック、などのような点欠陥を有するものが得られる。第2表面層は、基材に接合される表面を提供し、「繋ぎ層」ということができる。一実施形態では、本明細書に記載されている方法は、基材に対してクラス「A」表面を提供する積層体を製造するのに使用することができる。本明細書で使用する場合、用語「クラスA表面」とは、ヘアライン、ピンホール、などのような目に見える欠陥を実質的に含まない表面をいう。一実施形態では、クラスA表面は、約20度又は約60度で約100単位以上の光沢、約5単位以下の波スキャン値(長い及び短い)、及び約95単位以上の像明瞭性(DOI)を提供し得る。BYK corp.により作成された波スキャン機器は、当技術分野でこれらの測定をするのに広く使用されている。
【0014】
基材に対して設置した際、多層積層体は、基材の表面品質を維持し、望ましい表面外観と品質を有する物品を提供する。一実施形態では、この積層体は、積層体1平方メートル当たり(37平方フィート当たり)約500以下の表面欠陥(すなわち、粒状物、ピンホール、空隙、ゲル、ブラックスペック、など)を含んでおり、それらの欠陥は約2ミリメートル(mm)以下の平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定する)を有している。一実施形態では、積層体は、積層体1平方メートル当たり約400以下の表面欠陥を有しており、この欠陥は0.3mm以下(各欠陥の主軸に沿って測定)の平均の大きさを有し、場合により、積層体1平方メートル当たり約54以下の表面欠陥を有し、この欠陥は約0.3〜約2mm(各欠陥の主軸に沿って測定)の平均の大きさを有し、さらに具体的には、2mmより大きい平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定)の表面欠陥を有する。最も望ましくは、第1の層はブラシライン、ダイライン及び/又はその他あらゆるラインを含まず、及び/又は点欠陥を含まない。
【0015】
本方法は、単一マニフォルド又は多重マニフォルド設計とすることができるシート又はフィルムダイオリフィスを通して積層体の2以上の層を同時に押し出す共押出プロセスとして実施することができる。まだ溶融状態にあるうちに、層を互いに積層し、次いでカレンダーロールスタックの一対のロールのニップに通すことによって一緒に圧縮してフィルムにする。このロールスタックは、2−ロール又は3−ロールの構成をとり得、1、2、又はそれ以上のニップを提供するL−形状、垂直又は傾いたロールスタックとして構成し得る。溶融フィルムを第1のロール上に止める(pin)のに用いる装置(例えば、エアナイフ、真空箱、又はエアジェット)をロールスタックに取り付けることができよう。場合により、フィルムをカレンダーからマスク設置ステーションへ、そして仕上げステーションへと通し、そこで積層フィルムを回収する。第2表面層を他の層と共に共押出しない場合、積層体を仕上げステーションに送る前に二次作業として第2表面層を他の層に積層する。仕上げステーションは場合により、スリッター、ギロチンシヤー、コロナ、及び/又は火炎処理、並びにフィルム移送機構を含んでいてもよい。
【0016】
一般に、そして本明細書に開示したより広い記載に従って、第1表面層、及び場合により第2表面層の幾つかの実施形態は、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含むポリカーボネート若しくはポリカーボネートコポリマー又はブレンドからなり、場合によりイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマーを含んでいてもよい。
【0017】
また、第2表面層は、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマー(例えば、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS))とブレンドしたポリカーボネート、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの2種以上のブレンド、又はその他本明細書中のどこかに記載されている材料からなっていてもよい。
【0018】
場合により、第1と第2表面層の間に1以上の中央層を押し出してもよい。任意の中央層の厚さと組成は、場合により、第2表面層を第1表面層に結合する(又は、第1及び第2表面層及び/又は別の中央層に結合する)、積層体に所望の機械的特性、例えば剛性を付与する、顔料の担体として働く、及び/又は積層体に像深度外観(image depth appearance)を付与するといったような1以上の機能を果たす能力に関して選択すればよい。この中央層は、第1の層に使用できる1種以上の材料を含み得るポリカーボネート若しくはポリカーボネートブレンド、及び/又は本明細書のどこかに開示されている1種以上の他の材料からなり得る。
【0019】
場合により、積層体の1以上の層は着色されている。特定の実施形態では、第1表面層は透明(着色されてない)であってもよいし、又は金属顔料で着色されていてもよく、その他の層、殊にポリカーボネートを含む層は、場合により金属又は非金属顔料を含有し得る。
【0020】
ここで、図1を参照すると、この方法の一実施形態により製造された3層積層体10の断面図が示されている。この3層積層体10は、第1表面層2、第1表面層2と対向する第2表面層6、及び第1表面層2と第2表面層6の間に配置され、これらと接触している中央層4からなる。
【0021】
一例の実施形態では、第1表面層2はイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマーからなり得る。第1表面層2は、その後の加工処理の際にその完全性を維持するために、例えば、積層体を基材上に成形するときに亀裂の生成又はチャンネルの形成を回避するのに充分な厚さを有することができる。例えば、第1表面層2は、約0.08〜約0.51mm(約0.003〜約0.02インチ)、場合により約0.1〜約0.25mm(約0.004〜0.010インチ)、例えば、0.175mm(0.0069インチ)の厚さを有し得る。(本明細書に開示されている範囲は全て包括的で組合せ可能である(例えば、約0.08〜約0.51mm及び約0.1〜約0.25mmは約0.08〜約0.25mm及び約0.1〜約0.51mm、などの範囲を含む))。同じことが厚さ、温度、圧力、などの範囲にも当てはまる。)。一実施形態では、第1表面層内のイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマーの重量平均分子量は約19000〜約30000g/モルであり得る。第1表面層材料のメルトフローインデックスは約20〜約2立方センチメートル/10分(cm/10min)であり得る(300℃/1.2kgで測定)。
【0022】
第2表面層6は、図2と図6に示されているように多層積層体10と基材8の間の接着を提供する。代表的な実施形態では、第2表面層6はポリカーボネートとアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)のブレンドからなる。かかる材料はGeneral Electric Advanced Materials社(米国ウェストヴァージニア州ワシントン)から商標GELOY(商標)ポリカーボネート/ASAとして市販されている。第2の代表的な実施形態では、第2表面層6は、ポリカーボネートとアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマー及びアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)とのブレンドからなる。かかる材料は、General Electric Advanced Materials社(米国インディアナ州マウントバーノン)から商標CYCOLOY(商標)として市販されている。
【0023】
第2表面層6は積層体を基材に結合するのに充分な厚さをもっている。一実施形態では、第2表面層6は通例約0.08〜約0.8mm(約3〜約30ミル)の厚さであるが、別の実施形態では第2表面層6の厚さは約0.08〜0.3mm(約3〜12ミル)の厚さである。別の実施形態では、第2表面層6は約0.08〜約0.15mm(約3〜約6ミル)の厚さであるが、別の実施形態ではこの厚さは約0.23〜約0.3mm(約9〜約12ミル)の厚さである。さらに別の実施形態では、この厚さは約0.13〜約0.8mm(約0.005〜約0.03インチ)であり得る。
【0024】
ある例示的な実施形態では、任意の中央層4は、GE Advanced Materials社から市販されているLEXAN(登録商標)ポリカーボネートのようなポリカーボネート材料からなり得る。中央層4は約0.25〜約1ミリメートル(mm)(約0.01〜約0.04インチ)の厚さでよい。別の実施形態では、中央層4はポリカーボネート材料と、例えばポリフタレートカーボネート(PPC)のようなポリエステルとのブレンドからなり得る。
【0025】
多層積層体の押出加工処理に適切なポリカーボネート組成物としては、約20000〜約36000グラム/モル(/モル)の重量平均分子量を有するものがある。
【0026】
例えば、第2表面層6に使用するポリカーボネートは、約21000〜約31000g/モルの重量平均分子量を有し得る。第2表面層材料のメルトフローインデックスは、ISO 1133又はASTM D1238に従って260℃/5kgで測定して約2〜約50cm/10minであり得るが、別の実施形態ではメルトフローインデックスは約3〜約40cm/10minであり得る。別の実施形態では、第2表面層樹脂のメルトフローインデックスはISO 1133又はASTM D1238に従って260℃/5kgで測定して約3〜約30cm/10min、又は場合により約4〜約12cm/10minであり得る。
【0027】
幾つかの具体的な実施形態では、適切なカーボネートポリマー組成物は約3〜約30cm/10minのメルトフロー粘度(300℃/1.2kgで測定)を有するが、他の実施形態では、カーボネートポリマー組成物は約3〜約26cm/10minのメルトフロー粘度を有する。
【0028】
共押出したポリマーのメルトフローインデックスは、約2〜約20g/10分(1.2kgf/300℃)、例えば約4〜約15g/10minであり得る。平均溶融温度は、約200〜約290℃(約400〜約550°F)、例えば約200〜約260℃(約400〜約500°F)であり得る。
【0029】
前述のように、材料をダイ43中に押し出す2、3、4、5、又はそれ以上の押出機があり得る。メルトパイプを用いて樹脂を押出機からダイに送り出す場合、可能な最短のメルトパイプ長さが好ましい。メルトパイプ中の樹脂の滞留時間は1分未満〜約20分でよく、短めの滞留時間が好ましい。
【0030】
図3に示されているように、多層積層体10は、層2、4、及び6(図1)を、ホッパー/押出機32/38、34/40、及び36/42を有する押出機構30からそれぞれ共押出積層することによって形成することができる。押出機構30は、材料をそれぞれ対応する第1の押出機38、第2の押出機40、及び第3の押出機42に移送するための第1のホッパー32、第2のホッパー34、及び第3のホッパー36を有している。各々のホッパー及び各々の押出機は異なる押出温度及び粘度の組成物を加工処理するように適合させることができる。押出機はベントを設けても設けなくてもよく、単軸又は二軸設計とすることができる。押出機のスクリューは単一若しくは二段階設計でもよく、又は場合により、単一フライト、バリヤーフライト、3段波及びMaddockミキサー設計の任意の組合せでよい。いわゆる「攻撃的」押出機スクリュー(例えば、3段波スクリュー(triple wave screw))を用いても完成品の表面の品質は改良されなかったが、より簡単なスクリューでクラスA表面を有する積層体の製造が可能であった。例えば、バリヤーセクションを有する単一フライトスクリューで、許容できる第1表面層が生成することが判明した。ベント付きの単一フライト二段スクリューは第2表面層材料にとって有用であり、第2表面層材料のゴム部分からの揮発性成分の放出が可能になることが判明した。
【0031】
ある特定の2層実施形態では、第1表面層はイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ビスフェノール−A−ポリカーボネートコポリマーからなり、第2表面層はポリカーボネートからなる。
【0032】
特定の3層実施形態では、第1表面層はイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ビスフェノール−A−ポリカーボネートからなり得、中央層はブレンドの重量を基準にして20〜60wt%のポリフタレートカーボネート(PPC)を含み得るポリカーボネート/ポリエステルブレンドからなり得、第2表面層はGELOY(商標)ポリカーボネート/ASAブレンド又はCYCOLOY(商標)ポリカーボネート/ABSブレンドからなり得る。積層体に有用な1つの適切なPPC材料は約27500〜29500グラム/モルの重量平均分子量を有する。
【0033】
押出機構30は、異なる溶融温度を有する材料の階層化された層を3層積層体10に押し出すことができる。1つの代表的な実施形態では、機構30は第1表面層材料のレゾルシノールアリーレートポリエステルを約200〜約290℃(約400〜約550°F)、又はさらに具体的には約200〜約225℃(約440〜約510°F)、さらに一段と具体的には約230〜約260℃(約450〜約500°F)の溶融温度で押し出す。この溶融押出された第1表面層材料は、透明、すなわち、顔料を含まなくてもよいし、又は顔料及び/又は染料添加剤及び/又は金属添加剤を含有していてもよく、第1の表面の点欠陥を最小にするために押し出されたモノリシックフィルムの第1表面層で1平方フィート当たり約190個以下の粒状物(1平方メートル当たり約2050個以下の粒状物)を生じる清浄度レベル(リボンカウント押出機で測定)を有するべきであり、これらの欠陥は各欠陥の主軸(長軸)に沿って測定して約350マイクロメートル(μm)以下の平均の大きさを有する。
【0034】
一実施形態では、第2の押出機40は、中央層のポリカーボネート組成物からなる熱可塑性ポリマーを約200〜約290℃(約400〜約550°F)、又はさらに具体的には約215〜約275℃(約420〜約530°F)、さらに一段と具体的には約221〜約260℃(約430〜約500°F)の溶融温度で加工処理するように作動する。
【0035】
第2表面層用の押出機、この場合第3の押出機42は、約200〜約275℃(約400〜約530°F)、又は約215〜約260℃(約420〜約500°F)、又は場合により約225〜約250℃(約440〜約480°F)の溶融温度を有する第2表面層用の材料を押し出すように作動する。ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーのブレンドは約225〜約260℃(約440〜約500°F)の溶融温度を有し得る。図3に示されているように、積層体の最上層は第2表面層からなり、積層体の最下層は第1の表面材料からなる。
【0036】
ダイ43は、フィルム構成に応じて必要なときはセレクターハウジング及びフィードブロックを有する多重マニフォルド又は単一マニフォルドのダイからなり得る。生成するフィルムの表面品質に悪影響を及ぼす摩擦及び汚れ(の付着)を低減するために、ダイの幾つか又は全ての部品及びチャンネルをシリコーン系又は代わりの化学コーティングで被覆することができる。このダイ43は樹脂の複数の層をシート形態に形成する。ダイのフィードブロック温度プロフィールは一般に約255〜約290℃(約490〜約550°F)であり得る。場合により、ダイ43の第1表面層側の温度は、クラスA表面の達成を推進する約260℃(約500°F)以上、又はさらに具体的には約290℃(約550°F)以下である。第2表面層がポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマーのブレンドからなる場合、ダイのその面の温度は約260℃(約500°F)以上とすることができる。というのは、かかる温度が第2表面層のポリウレタン基材に対する接着力を増進することが分かっているからである。
【0037】
均一なダイゲージプロフィールは均一な幅の積層体を生成することが判明した。第1表面層が積層体の底にある場合、しかめ面(frown-face、皺)のプロフィールが完成した積層体の表面の点欠陥を低減する。ダイリップ開口は一般に約0.8mm(約0.03インチ)以上の幅である。厚さが約1.3mm(約0.05インチ)の積層体の場合、ダイリップ開口は約0.8〜約3mm(約0.03〜約0.12インチ)の幅であり得る。
【0038】
階層化された押出材料の積層体10をダイ43からカレンダーロールスタック44へ送って圧縮する。ダイは、1又は2の相互に垂直の方向においてカレンダーロールスタックの第1のニップから間隔を置くことができる。「ラインin/out距離」は、第1の方向、すなわち、最初の2つのロールの長手方向軸を含む平面に垂直の方向におけるダイリップから第1のカレンダーニップまでの距離である。このラインin/out距離は場合により約10インチ以下であり、約5〜約25cm(約2〜約10インチ)であり得、場合により約5〜約13cm(約2〜約5インチ)でよい。「ライン高さ」は第2の方向における距離であり、この第2の方向は最初の2つのロールの長手方向軸を含む平面に対して平行で、第1の方向に対して垂直である。ライン高さは、第2の方向においてダイリップから、ニップを通って第1の方向に伸びる平面までの距離である。場合により、このライン高さは約1.3〜約5cm(約0.5〜約2インチ)であり得る。ダイは場合により、積層体の第1表面層が底にある(すなわち、第1表面層が第2の(下側)ロールと接触する)とき、ダイと上側ロール(すなわち、第1のロール)とが一線に並んで配置されて、積層体がそのニップに入る前に第1表面層と第2のロールとの接触を低減するようなライン高さとすることができる。
【0039】
積層体の層をカレンダーロールスタック44で圧縮して多層積層体10として適切な形態にする。図示した実施形態では、ロールスタック44は2つのカレンダーニップを提供する3−ロールL−形状ロールスタックである。第1のニップの、積層体の第1表面層と接触するロールを本明細書中では「第1の表面ロール」という。図3に示されているように、第1の表面ロールは第1のニップにおいて2つのロールの下側にある。第1のニップの、第2表面層と接触するロールは第2の表面ロール(図3の上側ロール)である。
【0040】
第1のカレンダーニップは金属又は軟質ロールのいかなる組合せにより画成してもよく、第2のカレンダーニップは金属又は軟質ロールのいかなる組合せで画成してもよい。金属ロールを使用する場合、それらは磨いた(艶だし)又は艶消しスチールロールのいずれであることもでき、場合によってはクロムメッキされていてもよいし、場合により約0.013未満〜約5マイクロメートル(約0.5〜約200マイクロインチ)の表面平滑度を有する。スチールロールはクラスA表面を有する積層体を得ることができるが、軟らかめのロールではそうできないことが多い。使用する場合、軟質ロールはスチールより軟らかい種々の材料(例えば、シリコーンゴム)で作成することができ、表面平滑度は約5マイクロメートル(約200マイクロインチ)以下、例えば約0.013〜約5マイクロメートル(約0.5〜約200マイクロインチ)である。
【0041】
ロールスタック44のロールは、重量及び荷重に起因する撓みを補正するために冠状(crown)であることもできるし、又は平坦であってもよい。平坦なロールは約1.3mm(約0.05インチ)以上の厚さを有する積層体を作成するのに使用できる。より薄い積層体には冠状ロールが好ましい。一般に、冠状にすることで、約1.3mm(約0.05インチ)以下のロール撓みを補正できる。通例、ロールは約0.05〜約0.25mm(約0.002〜約0.01インチ)だけ冠状になっている。ニップを形成するロールは互いに異なる冠状としてもよい。例えば、約0.8mm(約0.03インチ)の厚さを有する積層体の場合、第1のロールは約1mm(約0.04インチ)の冠撓みを有することができ、第2の冠は約0.25mm(約0.01インチ)の冠撓みを有することができる。
【0042】
第1のカレンダーニップのロールによって積層体にかけられる圧力(すなわち、ニップ荷重)は約400〜約2600ニュートン/センチメートル(N/cm)(約230〜約1500ポンド力/インチ(lb/in)であり得、第2のカレンダーニップの線圧は0N/cm(オープンニップ)〜約2600N/cm(約0〜約1500lb/in)であり得る。驚くべきことに、第1のニップにおけるニップ荷重が積層体の表面品質に対して大きな影響を及ぼすことが判明した。クラスA表面を達成するには、約875〜約1750N/cm(約500〜約1000lb/in)の荷重が必要である。特定の実施形態では、ニップ荷重は約875〜1050N/cm(約500〜約600lb/in)であり得る。第3のロールを用いて第2のニップを提供する場合、第2のニップでのニップ荷重は0(オープンニップ)〜約2600N/cm(約1500lb/in)であり得る。
【0043】
一実施形態では、第2の表面ロール(すなわち、図3に示したように最も上側のロール)は約30cm(約12インチ)の直径を有し得、第1の表面ロール(すなわち、第2の表面ロールと協働して第1のニップを画成するロール)は約40cm(約16インチ)の直径を有し得る。ラインスピードは約1〜約3.5メートル/分(m/min)(約3〜約11フィート/分(ft/min)、場合により約1〜約1.5m/min(約3〜約5ft/min)であり得、押出物の流速は約300〜約1000lbs/時(約110〜約375kg/時)、場合により約400〜約600lbs/時(約150〜約225kg/時)である。一実施形態では、約1.3mm(約0.05インチ)の厚さを有する積層体が、ラインスピード約1.2m/分(約4フィート/分)、押出物流速約450lbs/hr(179kg/hr)で作成され得る。
【0044】
ロールは場合により1:1〜1.2:1、場合により1.03:1〜1.06:1の相対速度比で作動(回転)し得る。ロールスピードが同じでない場合、いずれがより速いロールであってもよく、又はさらに具体的には第2の表面ロールがより速いロールであることができる。このスピードの差により、第1の表面の光沢とクラスA品質が推進される。3ロールスタックの場合、第3のロールは自由に回転し得、ウェブによって回転するか又はモーターによって駆動する。
【0045】
積層体がロールスタックから引き出されるときのウェブ張力は、積層体がロールスタックから出るときの積層体中の収縮を受け入れるために、第1のニップでより遅いロールに対して約0.9:1の引張速度比に基づくことができる。これにより、熱成形後の部品のブラシラインが低減する。一実施形態では、1以上の赤外線(IR)ヒーターをカレンダースタックの出口に配置して、積層フィルムをアニーリングすると共にフィルム応力を解放し得、こうしないとダイライン及びブラシライン並びにシートの反りが熱成形後に出現し得る。1つの適切な種類のヒーターは、積層体1平方メートル当たり約8700ジュール以下を提供することができるIRヒーターである。一実施形態では、定格240ワット出力のIRヒーターを積層体から約3〜約7インチ(約7.6〜約17.8cm)に配置し、その定格出力の約10〜約70パーセントのヒーター負荷で作動させることができる。
【0046】
一般に、多層積層体10の全厚は約0.5〜約5mm(約20〜約200ミル)である。1つの代表的な実施形態では、多層積層体10は約0.8〜約1.4mm(約30〜約55ミル)の厚さである。
【0047】
ロールスタック44のロール温度は約40〜約150℃(約100〜約300°F)であり得る。特定の実施形態では、第1の表面ロールは第1表面層材料のガラス転移温度(T)未満、例えば第1表面層中のイソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマーのT未満の温度であり得る。例えば、第1の表面ロールは約130℃(約265°F)以下、場合により約115℃(約240°F)以下の温度を有し得る。
【0048】
第2の表面ロールは第2表面層と接触し、場合により約90℃(約200°F)以下の温度を有する。これより高いと、積層体にブラシラインが現れ、その積層体を基材に貼り付けたときにその他の欠陥が生じる。従って、第2の表面ロールは従来技術で使用されていたものより冷たい。
【0049】
いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、第1のニップのロールが熱く、すなわち接触する材料のガラス転移温度より高いと、その積層体はウェブに張力がかかる前に冷却できないと考えられる。熱い積層体に張力がかけられると、その中の分子は並んだ構造、例えばラメラ、房の付いた(fringed)ミセル、局在化結晶領域、などを強制させられ得、これらの構造は冷却の際に維持され得る。後に、ウェブ張力にかけられることなく積層体が基材に貼り付けられるときに加熱され、積層体中の並んだ領域が緩和され、第1表面層の中又はそれを通して目に見える表面欠陥が生じる。しかし、1以上のロールをそれが接触している材料のガラス転移温度未満の温度にすることによって、第2表面層材料の少なくとも一部分が、ウェブの張力によって分子が強制的に実質的によりよく並んだ状態にされる前に急速に冷却されてより緩和された分子構造になり、積層体がその後ロールスタックを出るときにウェブがより熱いロールと接触して加熱されるなどにもかかわらず、緩和された構造が少なくとも部分的に維持される。従って、積層体が後に基材に貼り付けられるときに、積層材は表面欠陥が生じる程には緩和されない。
【0050】
任意の第3のロールは、一実施形態では、約115〜約165℃(約240〜約330°F)、例えば、約150℃(約300°F)以下の温度を有し得る。場合により、第3のロールは約105〜約130℃(約220〜約260°F)の温度を有し得る。一実施形態では、第3のロールはゴムロールからなり、これは金属ロールと比べて積層体への熱伝達を抑制する。
【0051】
カレンダーロールスタック44を出た後、積層体は任意のマスキングステーションに送られる。場合により、マスキングステーション46の入口にヒーターを配置して、均一なマスキングフィルムの貼り付けと接着を容易にすることができる。1つの適切な種類のヒーターは積層体の1平方メートル当たり約8700ジュール以下を提供することができるIRヒーターである。一実施形態では、定格240ワットの出力のIRヒーターを積層体から約3〜約7インチ(約7.6〜約17.8cm)に配置し、その定格出力の約10〜約70パーセントのヒーター負荷で作動させることができる。マスキングステーション46では、熱成形後の部品でクラスA表面を維持するために、ゲルを含まず縞を含まない単位であり均一なゲージであるマスキング材料を貼り付ける。一実施形態では、マスク材料はポリオレフィン材料、例えば、ポリエチレン及び/又はメタロセン−重合したポリエチレンの単層又は多層積層体からなり得る。図3に示されているように、積層体10はロールスタックから引き出され、そして引張ロール48によりマスキングステーション46から引き出される。本方法の最終工程において、積層体は引張ロール48から仕上げステーション50へ送られることによって回収される。この仕上げステーションは、積層体を選択されたサイズのセグメント又は「シート」に 切断するための剪断装置からなり得る。仕上げステーションは場合により、セグメントを積み重ねるスタッキングパレット52を含み得る。
【0052】
代わりの実施形態では、第1表面層を積層体の最上層として押し出してもよい。かかる場合、図3のカレンダースタックの「第1の表面ロール」が最も上側のロールになる。
【0053】
本発明に従って製造された積層体は吸湿性であり得、吸収された水は積層体を基材に接着したときに表面欠陥を導入し得ることが判明した。従って、回収された積層体は適切な防湿材料、例えば気密な金属箔含有積層包装材中に密封することができる。例えば、積層体シートのスタックは、このスタックを箔−積層体防湿包装材及び約5ミル(約1mm)の低密度ポリエチレンLDPEシート材料(「ポリラップ」)の外側の保護シート上に置くことによって有効に包み込むことができる。このスタックの側面は、乾燥剤パックを中に入れたストレッチラップの幾つかの層で包み込むことができる。次に、この防湿材をスタック上で折り畳み、真空−密封することができる。その後、保護LDPEを防湿材の上で密封することができる。かかる包装は、積層体の含水率を、積層体プラス湿分の約1重量パーセント(wt%)以下、又はさらに具体的には約0.5wt%以下、さらに一段と具体的には約0.2wt%以下に維持するのに有効である。
【0054】
ここで、図2に戻ると、形成された物品20の断面図を見ることができる。形成された物品20は基材8に接着又は接合した多層積層体10からなる。第2表面層6が基材8に接着すると同時に多層積層体10の中央層4に対する良好な接着力を提供している。
【0055】
使用する基材8は、限定されることはないが、熱硬化性材料、熱可塑性材料、発泡材料、強化材料、及びこれらの組合せを始めとする種々の適切な組成物のいずれであってもよい。具体的な例としては、ポリウレタンフォーム及び繊維強化ポリウレタンを始めとするポリウレタン組成物、繊維−強化ポリプロピレンを始めとするポリプロピレン、ポリカーボネート/PBTブレンドなどがある。強化用繊維としては、炭素繊維、ガラスなどがある。
【0056】
各種の実施形態では、基材8は強化熱可塑性ポリウレタン、発泡熱可塑性ポリウレタン、ガラス繊維−強化ポリウレタン、炭素繊維−強化ポリウレタン、発泡熱可塑性ポリウレタン、及び以上のものを1種以上含む組合せからなり得る。
【0057】
第2表面層6と基材8の接合は、成形、接着剤、化学的接合、機械的接合、など、並びにこれらの組合せによって得られる。1つの代表的な実施形態では、第2表面層6と基材8の接合は基材8を直接第2表面層6上に射出成形することによって得られる。
【0058】
各種の実施形態では、本発明に従って作成される熱成形可能な多層積層体10は各種の構造に形成され得る。例えば、図1の多層積層体10は金型62に一致するように積層体60として形成することができる。多層積層体10は、限定されることはないが、熱成形、圧縮成形、真空成形などを始めとする種々の方法のいずれかにより多層積層体60に形成することができる。
【0059】
本明細書に記載したようにして製造された積層体は、その積層体により提供される表面品質を有する物品を形成するのに使用することができる。このためには、図5及び6を参照して、開示された多層積層体10を準備し、その多層積層体10を、多層積層体10の第2表面層6の後ろ又は背後にキャビティー64が形成されるように金型62内に配置し、多層積層体10の後ろのキャビティー64中に基材8を配置するとよい。ここで、多層積層体10の第2表面層6が基材8に接合又は接着されて物品20が形成される。
【0060】
開示された方法はさらに、形成された物品を冷却、及び/又は形成された物品20を金型62から取り出すことを含み得る。一実施形態では、形成された物品20を冷却し、その後金型から取り出す。場合により、離型剤を物品20から除去し、顔料を物品表面から解放した後にその物品を基材に接合する。
【0061】
基材8のキャビティー64内への配置は、射出成形、反応射出成形、長繊維強化射出成形、などを始めとする種々の方法で行うことができる。一実施形態では、反応射出成形によって基材8をキャビティー64内に射出する。一実施形態では、基材8を液体として射出した後成形して半固体又は固体の基材8を形成する。
【0062】
成形された物品20は殊に、限定されることはないがドアパネル、ルーフ、ボンネットパネル、などのような外装自動車パネルを始めとする自動車部品に応用可能である。
【0063】
本明細書中のどこかに述べてあるように、開示された方法は、図面を参照して本明細書中に記載した特定の積層体の製造に限定されることはなく、また積層体の各々の層に各種の材料を使用することができる。積層体の第1表面層は、一般にレゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含んでおり、場合によりポリカーボネートレゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分のブレンドを含んでいてもよい。
【0064】
本明細書で使用する場合、「レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分」とは、1以上の芳香族ジフェノール残基を1以上の芳香族ジカルボン酸残基と組み合わせて含む鎖成分をいう。式Iに示したジフェノール残基は、本明細書を通じて一般にレゾルシノール又はレゾルシノール部分といわれる1,3−ジヒドロキシベンゼン部分から誘導することができる。レゾルシノール又はレゾルシノール部分は、本明細書で使用する場合、特に明記しない限り、非置換1,3−ジヒドロキシベンゼンと置換1,3−ジヒドロキシベンゼンとの両方を包含するものと了解されたい。
【0065】
【化1】

式中、Rは1以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。
【0066】
適切なジカルボン酸残基としては、単環式部分(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、又はこれらの混合物)、及び/又は多環式部分(例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸のようなナフタレンジカルボン酸、及びモルフタレン−2,6−ジカルボン酸のようなモルフタレンジカルボン酸)から誘導された芳香族ジカルボン酸残基がある。一実施形態では、使用するジカルボン酸残基は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸残基である。
【0067】
一実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は、式IIに示すようにイソフタル酸及び/又はテレフタル酸の混合物から誘導される。
【0068】
【化2】

別の実施形態では、第1表面層は式IIIに示すようなポリマーからなり得る。
【0069】
【化3】

式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0070】
別の実施形態では、第1表面層は、式IVに示されているように無水物結合を実質的に含まないレゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を有するポリマーからなり得る。
【0071】
【化4】

さらに別の実施形態では、第1表面層は、水及び水と実質的に不混和性の1種以上の有機溶媒の混合物中で1種以上のレゾルシノール部分と1種以上の触媒とを合わせて混合する第1の工程を含む界面法によって作成されるレゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含むポリマーからなり得る。適切なレゾルシノール部分は式Vの単位を含んでいる。
【0072】
【化5】

式中、Rは1以上のC1−12アルキル又はハロゲンであり、nは0〜3である。アルキル基は、存在する場合、直鎖又は枝分れアルキル基であることができ、両方の酸素原子に対してオルト位に位置することが最も多いがその他の環位置も考えられる。適切なC1−12アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ノニル、デシル、及びアリール−置換アルキル、例えばベンジルがあり、メチルがより適切である。適切なハロゲン基はブロモ、クロロ、及びフルオロである。nの値は0〜3、又はさらに具体的には0〜2、さらに一段と具体的には0〜1であり得る。レゾルシノール部分は2−メチルレゾルシノールであることができ、又はさらに具体的には、レゾルシノール部分はnがゼロである非置換レゾルシノール部分であることができる。
【0073】
1つの代表的な実施形態では、1種以上の触媒を界面重合法に使用する反応混合物と合わせて混合する。前記触媒は、酸塩化物基の総モル量を基準にして約0.1〜約10モルパーセント(モル%)、又はさらに具体的には約0.2〜約6モル%の合計レベルで存在し得る。適切な触媒は第三アミン、第四アンモニウム塩、第四ホスホニウム塩、ヘキサアルキルグアニジニウム塩、及び以上のものを1種以上含む混合物からなる。適切な第三アミンとしては、トリエチルアミン、ジメチルブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及びこれらの混合物がある。その他考えられる第三アミンとしては、N−C〜C−アルキル−ピロリジン、例えばN−エチルピロリジン、N−C〜C−ピペリジン、例えばN−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、及びN−イソプロピルピペリジン、N−C〜C−モルホリン、例えばN−エチルモルホリン及びN−イソプロピル−モルホリン、N−C〜C−ジヒドロインドール、N−C〜C−ジヒドロイソインドール、N−C〜C−テトラヒドロキノリン、N−C〜C−テトラヒドロイソキノリン、N−C〜C−ベンゾ−モルホリン、1−アザビシクロ−[3.3.0]−オクタン、キヌクリジン、N−C〜C−アルキル−2−アザビシクロ−[2.2.1]−オクタン、N−C〜C−アルキル−2−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、及びN−C〜C−アルキル−3−アザビシクロ−[3.3.1]−ノナン、N,N,N’、N’−テトラアルキルアルキレン−ジアミン、例えばN,N,N’,N’−テトラエチル−1,6−ヘキサンジアミンがある。特に適切な第三アミンはトリエチルアミン及びN−エチルピペリジンである。
【0074】
適切なジカルボン酸二塩化物は、単環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸二塩化物、例えばイソフタロイルジクロリド、テレフタロイルジクロリド、若しくはイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物、又は多環式部分から誘導された芳香族ジカルボン酸二塩化物、例えばジフェニルジカルボン酸二塩化物、ジフェニルエーテルジカルボン酸二塩化物、及びナフタレンジカルボン酸二塩化物、例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸二塩化物、又は単環式及び多環式芳香族ジカルボン酸二塩化物の混合物からなる。ジカルボン酸二塩化物は典型的には式VIに示されているようにイソフタロイルジクロリド及び/又はテレフタロイルジクロリドの混合物からなることができる。
【0075】
【化6】

イソフタロイルジクロリド及びテレフタロイルジクロリドの一方又は両方を用いて、第1表面層2に含まれるポリマーを作成することができる。一実施形態では、ジカルボン酸二塩化物は、イソフタロイル対テレフタロイルのモル比が約0.25〜約4.0:1、別の実施形態では約0.4〜約2.5:1、さらに別の実施形態では約0.67〜約1.5:1のイソフタロイルジクロリドとテレフタロイルジクロリドの混合物からなる。
【0076】
レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含むポリマーは、さらに、ジブロック、トリブロック、及びマルチブロックコポリエステルカーボネートを含む。レゾルシノールアリーレート鎖成分を含むブロックと有機カーボネート鎖成分を含むブロックとの間の化学結合は、(a)例えば典型的には下記式XIIに示されているような、アリーレート部分の適切なジカルボン酸残基と有機カーボネート部分の−O−R−O−部分との間のエステル結合、及び(b)下記式XIIIに示されるような、レゾルシノールアリーレート部分のジフェノール残基と有機カーボネート部分との間のカーボネート結合の1種以上からなり得る。
【0077】
【化7】

式中、Rは既に定義した通りである。
【0078】
【化8】

式中、Rとnは既に定義した通りである。
【0079】
タイプ(a)のエステル結合が相当な割合で存在すると、コポリエステルカーボネート中に望ましくない色が生成することがある。本発明は理論によって限定されるものではないが、色は、例えば、式XII中のRがビスフェノールAであり、式XIIの部分がその後の加工処理及び/又は光−曝露の間にフリース転位を起こすときに生じ得ると考えられる。一実施形態では、コポリエステルカーボネートは実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネートブロックとの間にカーボネート結合を有するジブロックコポリマーからなる。別の実施形態では、コポリエステルカーボネートは実質的に、レゾルシノールアリーレートブロックと有機カーボネート末端−ブロックとの間にカーボネート結合を有するトリブロックカーボネート−エステル−カーボネートコポリマーからなる。
【0080】
ある特定の実施形態では、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含む材料はイソ−テレフタル酸レゾルシノール(イソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマー)/ビスフェノールAコポリマーからなる。
【0081】
任意の中央層に使用するのに適切な材料には、第1表面層となり得るあらゆる材料が包含される。代わりに、又はこれに加えて、中央層は、コポリエステルカーボネート、ポリカーボネート、ポリアリールカーボネート、1種以上のポリエステル、例えばポリエチレンフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンフタレート(PCT)、ポリ(1,4−シクロヘキシレンジメチレン−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)、ポリエチレンフタレートグリコール(PETG)、PCTG及びPETG[ポリ(1,4−シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレングリコール)テレフタレート](注:PETGは>50%のエチレングリコールを有し、一方PCTGは>50%の1,4−シクロヘキサンジメタノールを有する)など、ポリカーボネートと、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトポリマー(ASA)及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)のいずれかであるアクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーの1種以上を含む追加の材料との熱可塑性ポリマーブレンド、ポリアミド、アクリレート、例えばポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、など、ポリフタレートカーボネート(PPC)、ポリカーボネートエステル(PCE)、及び/又は以上のものを1種以上含むブレンドからなっていてもよい。場合により、ポリカーボネートと1種以上のかかる追加の材料とのブレンドは、中央層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約50wt%以上の追加の材料を含み得る。通例、ポリカーボネートブレンドは、約5wt%以上の追加の材料、例えば約5〜約50wt%、場合により約10〜約40wt%の追加の材料を含む。
【0082】
PPCとPCEの具体例は、次式を有するポリカーボネート、ビスフェノールAイソフタレート、及びビスフェノールAテレフタレートの第三コポリマーである。
【0083】
【化9】

式中、aはコポリマーの総重量を基準にして約60〜約80wt%の量で存在する芳香族エステルであり、bは約20〜約40wt%の量で存在するBPAカーボネートである。
【0084】
ある特定の実施形態では、中央層4を構成する熱可塑性ブレンドはPPC及びビスフェノール−Aと塩化カルボニル前駆体から製造されたポリカーボネートホモポリマーからなる。例えば、PPCは、中央層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約5wt%以上の量で存在し得る。別の実施形態では、PPCは中央層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約5〜約40wt%の量で存在し、一方1つの代表的な実施形態ではPPCは中央層4の熱可塑性ブレンドの総重量を基準にして約20〜約30wt%の量で存在する。
【0085】
一実施形態では、ポリカーボネート又はカーボネートポリマーは芳香族ポリカーボネート及びこれらの混合物からなる。一般に、芳香族ポリカーボネートは次式(I)の繰返し構造単位を有する。
【0086】
【化10】

式中、Aはポリマー反応に使用したジヒドロキシ化合物の二価芳香族基である。溶融重合で製造されたポリカーボネートはフリース生成物を含有することが多い。フリース生成物はフリース反応の生成物である。用語「フリース反応」及び「フリース転位」は、本明細書中で互換的に使用され、枝分れ点として測定される側鎖枝分れの量をいう。フリース転位は溶融プロセスを用いたポリカーボネートの製造中に起こる望ましくない副反応である。得られるフリース生成物はポリカーボネート鎖の枝分れのための部位としての役割を果たし、これはポリカーボネートの流れその他の性質に影響する。低レベルのフリース生成物はポリカーボネートに許容され得るが、高レベルで存在するとポリカーボネートの強靱性や成形性のような性能特性に悪影響を与えることがある。フリース生成物の量は、メタノーリシスとそれに続く高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって枝分れ点を測定することによって決定することができる。
【0087】
重縮合反応によるポリカーボネートの生産に利用される反応体は一般にジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルである。使用できるジヒドロキシ化合物のタイプに特別な制限はない。例えば、下記一般式(II)で表されるビスフェノール化合物を使用することができる。
【0088】
【化11】

式中、RとRは同じでも異なっていてもよく、各々がハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、pとqは各々が独立して0〜4の整数である。Xは次式(III)の基の1つを表すことができる。
【0089】
【化12】

式中、RとRは各々独立して水素原子又は一価線状若しくは環式炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。式(II)で表され得るタイプのビスフェノール化合物の例としては、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン系列、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(又はビスフェノール−A)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、など、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン系列、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、など、など、並びに以上のビスフェノール化合物を1種以上含む組合せがある。
【0090】
特定の実施形態では、ビスフェノール化合物はビスフェノールAである。また、少なくとも2種以上のビスフェノール化合物を炭酸ジエステルと反応させることによってポリカーボネートコポリマーを製造してもよい。
【0091】
ポリカーボネートを製造するのに利用できる炭酸ジエステルの例は、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、など、並びに以上の炭酸ジエステルを1種以上含む組合せである。特に適切な炭酸ジエステルはジフェニルカーボネートである。
【0092】
適切なジカルボン酸又はエステルの別の例は脂環式ジカルボン酸又はエステルである。本明細書で使用する場合、用語「脂環式」及び「環式脂肪族基」は同じ意味をもっており、環式ではあるが芳香族ではない一並びの原子を含む原子価1以上の基をいう。この並びは窒素、イオウ及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、又は主として炭素と水素で構成されていてもよい。環式脂肪族基の例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、テトラヒドロフラニルなどがある。
【0093】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)グラフトコポリマーは、化学的に結合した異なる組成の2種以上のポリマー部分を含有する。このグラフトコポリマーを製造するには、まず最初に、ブタジエンその他の共役ジエンのような共役ジエンを、これと共重合可能なスチレンのようなモノマーと共に重合させて、ポリマー基幹を得ることができる。このポリマー基幹を形成した後、このポリマー基幹の存在下で1種以上、又はさらに具体的には2種のグラフト用モノマーを重合してグラフトコポリマーを得る。
【0094】
例えば、ABSは1種以上の乳化又は溶液重合プロセス、バルク/塊状、懸濁及び/又は乳化−懸濁プロセス経路で作成することができる。また、ABS材料は、製造経済若しくは生成物の性能のいずれか又は両方の理由から回分式、半回分式及び連続式重合のような他のプロセス技術によって製造してもよい。
【0095】
ポリマー基幹は共役ジエンポリマー、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、又はコポリマー、例えばブタジエン−スチレン、ブタジエン−アクリロニトリル、などであることができる。
【0096】
グラフトコポリマーのポリマー基幹の製造に通常利用される共役ジエンモノマーは次式(XIII)で記述される。
【0097】
【化13】

式中、Xは水素、C〜Cアルキル、塩素、臭素、などである。使用できる共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエン、クロロ及びブロモ置換ブタジエン、例えばジクロロブタジエン、ブロモブタジエン、ジブロモブタジエン、以上の共役ジエンモノマーを1種以上含む混合物、などである。特に適切な共役ジエンモノマーはブタジエンである。
【0098】
ポリマー基幹の存在下で重合し得る1種のモノマー又は1群のモノマーはモノビニル芳香族炭化水素である。利用されるモノビニル芳香族モノマーは次式(XIV)で記述される。
【0099】
【化14】

式中、Xは水素、C〜C12アルキル(例えばシクロアルキル)、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12アリールオキシ、塩素、臭素、などである。モノビニル芳香族モノマーの例としては、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラ−クロロスチレン、以上の化合物を1種以上含む混合物、などがある。特に、モノビニル芳香族モノマーはスチレン及び/又はα−メチルスチレンであることができる。
【0100】
ポリマー基幹の存在下で重合し得る第2の群のモノマーは、アクリルモノマー、例えば、アクリロニトリル、置換アクリロニトリル及び/又はアクリル酸エステル、例えばアクリロニトリル、及びC〜Cアルキルアクリレート、例えばメチルメタクリレート、などである。
【0101】
アクリロニトリル、置換アクリロニトリル、又はアクリル酸エステルは次式(XV)で記述される。
【0102】
【化15】

式中、Xは既に定義した通りであり、Yはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニル、などである。かかるモノマーの例としては、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、β−ブロモアクリロニトリル、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、以上のモノマーを1種以上含む混合物、などがある。特に適切なモノマーとしては、アクリロニトリル、エチルアクリレート、及びメチルメタクリレートがある。
【0103】
場合により、ポリマー基幹は、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、以上のものを1種以上含む混合物、などの重合生成物のようなアクリレートゴムであってもよい。さらに、少量のジエンをアクリレートゴム基幹中に共重合させてマトリックスポリマーとのグラフト化を改良することができる。
【0104】
ガラス転移温度が0℃より低いスチレンブタジエンゴム又はブタジエンゴムのコポリマーが殊に適切である。
【0105】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)グラフトコポリマーは当技術分野で公知であり、例えば、General Electric社からBLENDEX(登録商標)グレード131、336、338、360、及び415として入手可能なハイラバーアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂を始めとして多数市販されている。
【0106】
基材に結合する第2表面層は、第1表面層を構成し得る材料のいずれでもよい。代わりに、又はそれと任意に組み合わせて、第2表面層は、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマー(例えば、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS))のような追加の材料とブレンドしたポリカーボネート、及び/又は2種以上のアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーのブレンド、ポリウレタン、並びにポリアクリレートとポリウレタンのブレンドを含み得る。
【0107】
ある種の実施形態では、第2表面層6の熱可塑性ブレンドは、GE Plasticsから商標CYCOLOY(登録商標)として市販されているもののような1種以上のABSポリマー又は樹脂を含み得る。1つの代表的な実施形態では、ABSポリマーは1種以上のCYCOLOY(登録商標)C1000HF、C1200、MC8800、MC8002、EXCY0076であり、特に代表的な実施形態ではCYCOLOY(登録商標)グレードC1000HF、EXCY0076及びMC8002を使用し、殊に代表的な実施形態ではEXCY0076を使用する。
【0108】
ASAポリマーは、一般にアクリレート、スチレン、及びアクリロニトリルのターポリマーであり、通例グラフト化架橋アルキルアクリレートゴム相を含有する。殆どのASA生成物は、スチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーのガラス状連続マトリックス内に分散したグラフト化エラストマーターポリマー、すなわちアクリレート−スチレン−アクリロニトリルの二相系からなる。グラフトは通例、ポリアルキルアクリレートゴムコアとグラフト化したSANシェルとからなり、少量のスチレンとアクリロニトリルがゴム粒子上にグラフト化していて2つの相を相溶化している。
【0109】
ASAは通例3−工程重合反応で作成される。まず、エラストマー成分、典型的にはポリアルキルアクリレートゴム又はポリアルキルアルキルアクリレートゴムを、水系乳化又は溶液重合プロセスで製造する。第2の段階では、スチレンとアクリロニトリルを、場合により他のモノマーと共に共重合し、エラストマー相上でグラフト化して、所望の相溶性を達成する。この段階は、乳化、バルク/塊状又は懸濁及び/又は乳化−懸濁プロセス経路で行うことができる。第3の段階では、スチレンとアクリロニトリル(及び、場合により他のモノマー)を、第2の(グラフト化)段階と同時に、又は別途独立の操作で共重合して、硬質マトリックスを形成する。ここでも、この工程は以下のプロセス、すなわち乳化重合、塊状重合又は懸濁重合の1以上を含み得る。また、ASA材料は、製造経済若しくは生成物の性能のいずれか又はその両方の理由から、回分式、半回分式及び連続式重合のような他のプロセス技術で製造できる。
【0110】
一実施形態では、適切なASAポリマーは、ポリ(アルキルアクリレート)ゴム系のASAグラフト相と、ビニル芳香族/シアン化ビニル/ビニルカルボン酸エステルマトリックス相との組合せから製造される。1つの代表的な実施形態では、ASAポリマーは二相系である。この二相系は、アクリレートゴム基材、例えば、ポリ(ブチルアクリレート)ゴムと、これに結合したスチレン−アクリロニトリル(SAN)の枝(すなわちグラフト)コポリマーとからなる。この相は一般に、SANが化学反応によってゴムに物理的に結合又はグラフト化しているので、「ゴムグラフト相」といわれる。
【0111】
ある特定の実施形態では、MMASAN(メチルメタクリレートとスチレンとアクリロニトリルのターポリマー)及びPMMA(ポリメチルメタクリレート)の「硬質マトリックス相」又は連続相を使用する。ゴムグラフト相(すなわち分散相)は、ポリマー連続体を形成するPMMA/MMASANのマトリックス相の全体にわたって分散している。ゴム界面は、グラフト相とマトリックス相との間の境界を形成する表面である。グラフト化したSANは、この界面でゴムとマトリックス相PMMA/MMASANとの間の相溶化剤として働き、他の場合には不混和性であるこれら2つの相の分離を防止する。
【0112】
別の実施形態では、ASAポリマーは約10〜約40wt%のポリ(ブチルアクリレート)ゴムを含む。第2の実施形態では、約15〜約30重量パーセント(wt%)である。さらに第3の実施形態では、約15〜約25wt%のゴムを含んでいる。
【0113】
さらに別の実施形態では、ゴムグラフト相は約20〜約70wt%のポリ(ブチルアクリレート)を含む。特定の実施形態では、ゴムグラフト相は約45wt%のポリ(ブチルアクリレート)ゴムと、約55wt%のSANとからなり、このグラフト相のSAN部分は、約65wt%のスチレンと約35wt%のアクリロニトリル〜約75wt%のスチレンと約25wt%のアクリロニトリルからなる。さらに別の実施形態では、SAN部分は約70〜約75wt%のスチレンと約25〜約30wt%のアクリロニトリルからなる。
【0114】
さらに別の実施形態では、MMASANは80wt%のMMA、15wt%のスチレン及び5wt%のアクリロニトリルからなり、別の実施形態では、約60wt%のMMA、30wt%のスチレン及び10wt%のアクリロニトリルからなる。さらに別の実施形態では、MMASANは約45wt%のメチルメタクリレート、40wt%のスチレン及び15wt%のアクリロニトリルからなる。一実施形態では、マトリックス相コポリマー中のPMMA/MMASANの重量比は約20/80〜約80/20、別の実施形態では約25/75〜約75/25、例えば50/50であり得る。
【0115】
ASAポリマーは、一実施形態では、グラフト相対マトリックス相の重量比が約15/85〜約75/25であり、別の実施形態では、約45wt%がグラフト相で、約55wt%がマトリックス相である。グラフトコポリマー相は、当技術分野で周知の各種のブレンド混合プロセスによってマトリックス相のホモポリマー、コポリマー及び/又はターポリマーと共に凝集させ、ブレンドし、及びコロイド形成してASAポリマーブレンドを形成することができる。
【0116】
特定の実施形態では、第2表面層6の熱可塑性ブレンドは、カーボネートポリマー、ASAグラフトコポリマー及びSANコポリマーからなる市販されている熱可塑性組成物である。適切な市販されている熱可塑性組成物はGeneral Electeic Plastics社(米国ウェストヴァージニア州ワシントン)から入手可能なGELOY(商標)ブランド熱可塑性組成物である。一実施形態では、第2表面層6はGELOY(商標)HRA 150、HRA 170、XP7550、及びこれらの混合物の1種以上である。1つの特に代表的な実施形態では、第2表面層6はGELOY(商標)HRA 150である。
【0117】
適切なSANは一般に、重量平均分子量が約60000〜約200000g/モル、一実施形態では約90000〜約190000g/モルである。SANコポリマーの重量を基準にして約15〜約40wt%のアクリロニトリル(AN)含有率を有するSANコポリマーが特に適切であり、別の実施形態では約20〜約35wt%のANを有するSANコポリマーを使用する。
【0118】
一実施形態では、第2表面層6の熱可塑性ポリマーは、第2表面層の総重量を基準にして約25〜約80wt%のポリカーボネート、約10〜約35wt%のASA又はABS、及び約10〜約40wt%のSANからなる。別の実施形態では、第2表面層6の熱可塑性ポリマーは、第2表面層の総重量を基準にして約40〜約80wt%のポリカーボネート、約10〜約30wt%のASA又はABS、及び約10〜約30wt%のSANからなる。1つの代表的な実施形態では、第2表面層6の熱可塑性ポリマーは、第2表面層の総重量を基準にして約40〜約75wt%のポリカーボネート、約12〜約30wt%のASA又はABS及び約12〜約30wt%のSANからなる。
【0119】
ある特定の実施形態では、第2表面層6はポリカーボネートポリマー、ABSグラフトコポリマー、SANコポリマー及びSEENOX安定剤を含む熱可塑性ポリマーからなる。かかる熱可塑性ポリマーブレンドはGE Plastics社からCYCOLOY(登録商標)EXCY0076として入手可能である。
【0120】
別の実施形態では、第2表面層はポリアクリレートとポリウレタンのブレンドからなり得、例えば、ブレンドの重量を基準にして約5〜15wt%のポリアクリレートを含む。特定の実施形態では、ブレンドは約10wt%のポリアクリレートを含み得る。
【0121】
積層体の1以上の層はいずれも、場合により、限定されることはないが、安定剤、色安定剤、熱安定剤、光安定剤、UV遮断剤、UV吸収剤、難燃剤、ドリップ抑制剤、流動助剤、可塑剤、エステル交換抑制剤、帯電防止剤、離型剤、充填材、並びに金属フレーク、ガラスフレーク及びビーズ、セラミック粒子、その他のポリマー粒子、染料及び有機、無機又は有機金属であり得る顔料のような着色剤を始めとして業界で認められている添加剤のような他の成分を含んでいることができる。
【0122】
1つの可能な実施形態では、第2表面層の熱可塑性ポリマーは安定剤又は安定剤系を含む。1つの望ましい実施形態では、安定剤はアルキルチオエステルからなる。場合により、安定剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)を含有する安定剤及び/又はペンタエリトリトールテトラキス(ドデシルチオプロピオネート)を含有する安定剤からなり得る。適切なアルキルチオエステル系又は含有安定剤の具体的な市販されている例はシプロ化成(株)から市販されているSEENOX(商標)安定剤である。
【実施例】
【0123】
以下の実施例により、本発明の実施形態及び製法を例示する。
【0124】
実施例1
一連の3層積層体を生産ラインで調製した。これらの積層体は共通の積層体組成であるが、処理条件を変えて作成した。各積層体は、イソテレフタレートレゾルシノール/ビスフェノールAコポリマーからなる第1表面層、ポリカーボネートからなる中央層、並びにGELOY(商標)ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)のブレンドからなる第2表面層からなっていた。積層体を260〜277℃(500〜530°F)の温度で押し出して厚さ約12.7mm(約0.5インチ)のフィルムとした。第1の表面材料は積層体の底にあり、第2のカレンダーロールと接触し、第2の表面材料は第1のカレンダーロールと接触させた。
【0125】
比較のために、ロールスタックの第1のニップにおけるニップ荷重、カレンダーロール温度、ライン高さ、ダイ高さ、及びニップに対するダイ位置を変化させた。これらのパラメーターの値を以下の表に示す。各々の場合において、ラインスピードは4.1ft/minであった。表で、ニップ荷重についての事項は、第1のニップの長さ52インチ(132cm)のロールの各々の末端にかかる力を示す。例えば、試験1では、6000ポンド(26700N)をロールの各々の末端に合計12000ポンド(53400N)かけたので、約230lb/in(約404N/cm)となった。
【0126】
【表1】

上記表にまとめた試験の結果、試験1、3、4、6〜8、及び10で、ITR−PC表面上に許容できない表面品質を有する積層体が生じた。試験2、5、及び9の結果は許容でき、試験9が最良でクラスA表面が得られた。
【0127】
試験1、4、6及び8を試験2、5及び9と比較すると、不適切なニップ荷重では、積層体上の許容できる品質の表面の形成が妨げられ得ることを示している。試験3及び7を試験2、5及び9と比較すると、過剰なロール温度は積層体の表面の品質を落とし得ることを示しており、試験10と試験9を比較すると、ニップに対するダイの位置も積層体表面の品質に影響し得ることを示している。
【0128】
これらのデータはまた、特定の実施形態では、第2の表面ロール(この場合、スタック内の第1のロール)の温度が130℃(226°F)未満、場合により約90℃(約200°F)未満であるべきであり、例えば、第2の表面ロールの温度が約80℃(約180°F)、例えば約82℃であり得ることを支持している。しかし、第1の表面ロール(この場合、スタック内の第2のロール)の温度は、90℃より高く(約200°Fより高く)、場合により約110〜約120℃(約230〜約250°F)、例えば約115℃(約240°F)であり得るが、約130℃以下である。これらのデータはまた、任意の第3のロールの温度が、幾つかの実施形態では150℃未満、例えば約120℃(約250°F)、例えば場合により約115〜約130℃(約240〜約265°F)でよいことを支持している。さらに、これらのデータは、ニップ荷重が約400N/cm(約230lb/in)以上、場合により約940N/cm(約538lb/in)以上でよいことを示している。
【0129】
第2表面層がCYCOLOY(商標)ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)のブレンドからなることを除いて、前述のようにして別の試料を調製し試験した。その結果は上記結果と一致していた。
【0130】
実施例2
実施例1と類似の別の一連の実験で、各々の場合のニップ荷重は約400N/cm(約2×6000ポンド/52インチ)を超えず、ロール1の温度は約55〜約80℃(約135〜約175°F)であり、ロール2とロール3は約90〜約118℃(約200〜約245°F)であり、ライン高さとラインアウト位置は実施例1の実験と同じにした。この一連の実験の試料はいずれも、許容できる表面品質を有する積層体を生成した。
【0131】
本明細書に記載されている方法を使用して、積層体を基材上に熱成形する前後で、従来技術に従って作成された積層体で達成されるよりも、優れた品質の表面、すなわち、より少ない、又はさらに具体的にはブラシライン、ダイラインその他のラインを全くもたない、またより少ない、又はさらに具体的にはピンホール、空隙、ゲル、ブラックスペック、などのような点欠陥を全くもたない表面を付与し得る第1表面層を有する積層体を製造することができる。一実施形態では、本発明は基材にクラスA表面を付与する積層体を製造し得る。場合により、本方法は、第2表面層と第1表面層との間に1以上の中央層を含む積層体を提供するのに使用することができる。
【0132】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、当業者には了解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく各種の変更なすことができ、またその要素を等価物で置換することができる。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるべく、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、本発明は特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、開示されている多層積層体の一実施形態の断面図である。
【図2】図2は、基材に接合された図1の多層積層体を含む形成された物品の一実施形態の断面図である。
【図3】図3は、多層積層体を形成するための共押出機構の一実施形態の概略図である。
【図4】図4は、成形される多層積層体を例示する連続断面図である。
【図5】図5は、成形される多層積層体を例示する連続断面図である。
【図6】図6は、成形される多層積層体を例示する連続断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含む第1表面層と基材に接合するのに適した第2表面層とを含んでなる積層材を製造する方法であって、
第1表面層ポリマー材料及び第2表面層ポリマー材料を、ダイを通して、第1のニップを画成する第1の表面ロール及び第2の表面ロールを含むカレンダーロールスタックの第1のニップ中に共押出して、積層材を形成し、
第1のニップにおいて約400N/cm以上のニップ荷重を積層体にかけ、
積層材をカレンダーロールスタックから回収する
ことを含んでなり、
第1表面層が、積層体の第1表面層に1平方メートル当たり約2050個以下の粒状物を生じる清浄度レベルを有する材料を含んでなり、
欠陥が、約350μm以下の平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定)を有しており、
第1のロール及び第2のロールが各々約5マイクロメートル以下の表面平滑度及び約40〜約150℃の温度を有する、前記方法。
【請求項2】
第1表面層材料が、ポリカーボネート、ポリカーボネートコポリマー、イソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマー、又は以上のものを1種以上含むブレンドからなり、第2表面層が、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの1種以上を含むブレンドからなる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
第2の表面ロールの温度が約90℃以下である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
第1のニップにおいて約400〜約2600N/cmのニップ荷重をかけることを含む、請求項1載の方法。
【請求項5】
第1のニップにおけるニップ荷重が約876〜約1752N/cmである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
第1表面層材料が約235〜約260℃の平均溶融温度を有しており、第2表面層材料が約225〜約260℃の平均溶融温度を有している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
第1表面層と第2表面層との間に中央層を押し出すことを含んでなり、中央層が、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、並びに、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの2種以上のブレンド、ポリアリールカーボネート、及びポリエステルからなる群からの1種以上の材料からなり、中央層材料が約200〜約260℃の平均溶融温度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
第1表面層ポリマー材料及び第2表面層ポリマー材料を、約255〜約290℃のダイフィードバック温度プロフィールを有する押出ダイを通して共押出することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
第2表面層がアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーのブレンドからなり、ダイの第2表面層側が約260℃より高い温度を有する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
約1.3〜約5センチメートル(cm)の押出ダイライン高さを設定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
第1のニップを画成するカレンダーロールが各々約0.013〜約5マイクロメートルの表面平滑度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
カレンダーロールスタックが第3のロールを含んでいて、0〜約2600N/cmのニップ荷重を積層体にかける第2のニップを画成する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
第1の表面ロールの温度が約130℃以下であり、第3のロールの温度が約150℃以下である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1の表面ロールの温度が第1表面層材料のガラス転移温度より低い、請求項1記載の方法。
【請求項15】
さらに、積層体がカレンダーロールスタックから引き出されるときにその積層体を加熱することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
さらに、積層体をマスキングステーションに通し、第1表面層をマスキングすることを含んでおり、マスクがポリオレフィン材料からなる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
さらに、マスキング前に積層体を加熱することを含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第1の表面ロール及び第2の表面ロールを約1:1〜約1.2:1の相対ロール速度で作動させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
第1の表面ロール及び第2の表面ロールを約1.03:1〜約1.06:1の相対ロール速度で作動させる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ポリカーボネート、ポリカーボネートコポリマー、イソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマー又は以上のものを1種以上含むブレンドを含んでなる第1表面層ポリマー材料、及びポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの1種以上を含むブレンドを含んでなる第2表面層材料、並びに第1表面層材料と第2表面層材料との間の中央層材料を、ダイを通して、少なくとも第1の表面ロール及び第2の表面ロールを含んでなるカレンダーロールスタックの第1のニップ中に共押出して積層体を形成し、ここで、第1表面層材料は積層体中で1平方メートル当たり約2050個以下の粒状物を生じる清浄度レベルを有しており、欠陥は約350マイクロメートル以下の平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定)を有しており、カレンダーロールスタック中のカレンダーロールは約40〜約150℃の温度及び約5マイクロメートル以下の表面平滑度を有しており、
第1のニップにおいて約400N/cm以上のニップ荷重をかけ、
積層材をカレンダーロールスタックから回収する
ことを含んでなる、積層材の製造方法。
【請求項21】
第2表面層が、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの2種以上のブレンドからなる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
中央層が、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分、ポリカーボネート、ポリアリールカーボネート、ポリエステル、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの2種以上のブレンドからなる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
第1のニップにおいて約876〜約1752N/cmのニップ荷重をかけることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
第1表面層材料の平均溶融温度が約235〜約260℃であり、第2表面層材料の平均溶融温度が約225〜約260℃であり、中央層材料の平均溶融温度が約200〜約260℃である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
ダイ温度が約255〜約290℃である、請求項20記載の方法。
【請求項26】
第2表面層が、アクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーのブレンドからなり、ダイの第2表面層側が約260℃(約500°F)より高い温度を有する、請求項20記載の方法。
【請求項27】
押出ダイライン高さを約1.3〜約5センチメートル(cm)に設定することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項28】
第2の表面ロールの温度が約90℃以下である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
第1の表面ロールの温度が約130℃以下であり、第3のロールの温度が約140℃以下である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
第1の表面ロールのロール温度が第1表面層材料のガラス転移温度より低い、請求項20記載の方法。
【請求項31】
さらに、積層体がロールスタックから引き出されるときにその積層体を加熱することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項32】
さらに、積層体をマスキングステーションに通し、第1表面層をマスキングすることを含んでおり、マスキング前に積層体を加熱し、マスクがポリオレフィン層からなる、請求項20記載の方法。
【請求項33】
第1の表面ロール及び第2の表面ロールを約1:1〜約1.2:1の相対ロール速度で作動させることを含む、請求項20記載の方法。
【請求項34】
第1の表面ロール及び第2の表面ロールを約1.03:1〜約1.06:1の相対ロール速度で作動させることを含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分を含む第1表面層ポリマー材料及び基材に接合するのに適した第2表面層ポリマー材料を、ダイを通して、第1の表面ロール及び第2の表面ロールを含むカレンダーロールスタックの第1のニップ中に共押出して、第1表面層及び第2表面層を含む積層材を形成し、
第1のニップにおいて約400N/cm以上のニップ荷重をかけ、ここで、第1表面層が積層体の第1表面層内に1平方メートル当たり約2050個以下の粒状物を生じる清浄度レベルを有する材料を含んでなり、欠陥が約350μm以下の平均の大きさ(各欠陥の主軸に沿って測定)を有しており、ロールスタック内の第1のニップを画成するロールが各々約5マイクロメートル以下の表面平滑度を有し、
積層体をロールスタックから引き出し、積層体がロールスタックから出るときにその積層体を加熱し、
この積層体をマスキングステーションに通し、その積層体をマスキングし、マスクされた積層体を製造し、ここで、マスクはポリオレフィン層を含んでなり、
マスクされた積層体をセグメントに切断する
ことを含んでなる、積層材の製造方法。
【請求項36】
第1表面層材料が、ポリカーボネート、ポリカーボネートコポリマー、イソ−テレフタル酸レゾルシノール/ポリカーボネートコポリマー又は以上のものを1種以上含むブレンドからなり、第2表面層が、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、及び/又はアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの1種以上を含むブレンドからなる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
第1の層と第2の層の間に中央層を共押出することを含んでおり、中央層が、レゾルシノールアリーレートポリエステル鎖成分、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレングラフトコポリマーとブレンドしたポリカーボネート、並びにアクリロニトリル−スチレン−アクリレートグラフトコポリマー(ASA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレングラフトコポリマー(ABS)及びスチレン−アクリロニトリル(SAN)コポリマーの2種以上のブレンド、ポリアリールカーボネート、並びにポリエステルからなる群からの1種以上の材料からなる、請求項36記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2008−507431(P2008−507431A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522591(P2007−522591)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/025191
【国際公開番号】WO2006/020047
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】