説明

成形品、電子機器及び成形品の製造方法

【課題】転写箔を確実に成形層に保持しておくことができ、転写箔の加飾層または導電層の損傷を防止することができる成形品、電子機器及び成形品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本実施形態に係る成形品では、1次成形層10と2次成形層20との間に、インモールド箔30の一部が挟み込まれている。これにより、インモールド箔30を1次及び2次成形層10及び20との間に保持しておくことができる。そして、加飾層及び端子電極層が、1次及び2次成形層10及び20の間に配置される。これにより加飾層及び端子電極層が損傷を受けたり、粉塵等が端子電極層に付着して電気的導通が阻害されたりすることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド成形により加飾された成形品、電子機器及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、転写箔を用いた射出成形による加飾方法は、電子機器から家庭用品まで広く利用されている。転写箔による導電部を形成する方法として、例えば特許文献1及び2に記載された技術が挙げられる。
【0003】
特許文献1の回路基板の製造方法では、転写箔に回路パターン層が設けられ、この転写箔を用いてインモールド成形が行われる(特許文献1の明細書段落[0015]、図2参照)。
【0004】
特許文献2の表面導電性成形品の製造方法では、加飾絶縁インク層及び導電インク層を備える転写箔を使用し、インモールド転写成形を行うことにより、成形品の一部に表面導電部が形成される(特許文献2の明細書段落[0016]、[0019]、図3及び4参照)。これにより、加飾絶縁インク層と導電インク層が同時に成形層に転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3118276号公報
【特許文献2】特開2007−196501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2の方法では、成形層の表面または裏面のうちいずれか一方に、転写箔である転写箔が転写されるだけであるので、成形層から転写箔が剥がれるおそれがある。したがって、転写箔をしっかりと成形層に保持しておくことができる構造が必要とされている。
【0007】
また、成形層から転写箔が剥がれないまでも、転写箔が露出しているので、その転写箔が転写された成形層を一部品として別の部品と組み合わせて製品を組み立てる時に、転写箔の加飾部または導電部に、傷が付いたり粉塵等が付着したりするおそれもある。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、転写箔を確実に成形層に保持しておくことができ、転写箔の加飾層または導電層の損傷を防止することができる成形品、電子機器及び成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成形品は、1次成形層と、転写箔と、2次成形層とを具備する。
前記転写箔は、加飾層及び導電層を有し、前記1次成形層にインモールド成形により転写される。
前記2次成形層は、前記1次成形層と前記2次成形層との間に、前記転写箔の前記加飾層及び前記導電層のうち少なくとも一方が配置されるように、前記1次成形層上に形成される。
【0010】
この成形品では、1次成形層と2次成形層との間に、加飾層及び導電層を有する転写箔が挟み込まれている。これにより、転写箔を確実に1次及び2次成形層との間に保持しておくことができる。また、転写箔の加飾層及び導電層のうち少なくとも一方が、1次及び2次成形層の間に配置されることにより、加飾層または導電層が損傷を受けたり、粉塵等が導電層に付着して電気的導通が阻害されたりすることを防止することができる。
【0011】
前記転写箔の前記導電層は、センシング用導電層と、前記センシング用導電層に導通し、一部が露出するように設けられ、前記センシング用導電層を外部接続するための端子電極層とを含む。本発明では、センシング用導電層に電気的に接続された端子電極層も、インモールド成形により1次成形層に実質的に同時に転写されるので、生産性を高めることができる。またこれにより、例えばこの成形品が用いられる電子機器に、別途の端子電極を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。さらに、端子電極層が外部に露出するように設けられているので、他の電子部品や電子回路に設けられたコネクタを、成形品の端子電極層に容易に接続することができる。
【0012】
あるいは、後述する発明のように、センシング用導電層に代えて(またはセンシング用導電層も兼ねる)電力供給用導電層が用いられてもよい。あるいは、導電層は、センシング用導電層に代えて、電磁波シールド用導電層を有していてもよい。
【0013】
前記1次成形層または前記2次成形層は、溝部を有してもよい。その場合、前記溝部には、前記露出した前記端子電極層の一部が配置され、前記外部接続のための、外部素子に設けられたコネクタが挿入される。これにより、電源回路や制御回路を構成するIC等の外部素子に設けられたコネクタを溝部に挿入するだけで、センシング用導電層と外部素子とを容易に導通させることができる。したがって、この成形品が用いられかつ外部素子が搭載される電子機器の組み立てが容易になる。
【0014】
前記転写箔の前記導電層は、電源からの電力を、前記成形品を用いた電子機器に搭載される部品素子に供給する電力供給用導電層を含んでもよい。本発明の場合、転写箔は、センシング用導電層と電力供給用導電層とが兼用された導電層を有していてもよい。
【0015】
前記転写箔は、前記加飾層及び前記導電層の間に介在された防御層をさらに有してもよい。これにより、加飾層を構成する物質が導電層内に拡散すること、また、導電層を構成する物質が加飾層内に拡散することを防止することができる。
【0016】
前記成形品は、前記成形品が用いられる電子機器の外観上見える部分の一部または全部を構成する構造体であってもよい。
【0017】
前記構造体は、ディスプレイを有する電子機器の筐体であってもよい。その場合、前記筐体は、前記ディスプレイが配置される窓部を有し、前記転写箔の前記導電層の第1の部分が転写された主面と、前記転写箔の前記導電層の前記第1の部分とは異なる第2の部分が転写された側面とを有する。転写箔がフレキシブルなので、本発明のように導電層の一部を配置させることが可能となる。また、特に導電層の第2の部分が上記端子電極層である場合、外部素子のコネクタを筐体の側面から接続することができるので、この成形品を用いた電子機器の組み立てが容易になる。
【0018】
本発明に係る電子機器は、上記成形品を備えるものである。
【0019】
本発明に係る成形品の製造方法は、加飾層及び導電層を有する転写箔を用いて、インモールド成形により、前記転写箔が転写された1次成形層を形成することを含む。
そして、前記1次成形層と2次成形層との間に、前記加飾層及び前記導電層のうち少なくとも一方を挟み込むように、前記1次成形層上に前記2次成形層が形成される。
【0020】
本発明では、1次成形層と2次成形層との間に、加飾層及び導電層を有する転写箔が挟み込まれるように多色成形が行われ、成形品が形成される。これにより、転写箔を確実に1次及び2次成形層との間に保持しておくことができる。また、転写箔の加飾層及び導電層のうち少なくとも一方が、1次及び2次成形層の間に配置されることにより、加飾層または導電層が損傷を受けたり、粉塵等が導電層に付着して電気的導通が阻害されたりすることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上、本発明によれば、転写箔を確実に成形層に保持しておくことができ、転写箔の加飾層または導電層の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器の外観上見える部分の一部を構成する構造体である成形品として、電子機器の筐体の一部である前面カバーの成形品を示す平面図である。
【図2】図2は、その前面カバーの裏面側(筐体の内部側)を示す平面図である。
【図3】図3は、図2におけるA−A断面図である。
【図4】図4は、インモールド箔の構造を模式的に示す断面図である。
【図5】図5は、図3における破線で囲まれた領域を拡大して示す模式図である。
【図6】図6は、成形品である、筐体の前面カバーの成形方法を説明するための図であり、キャビティプレートと第1のコアプレートとが対面した状態を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す状態から型締めが行われた状態を示す図である。
【図8】図8は、キャビティプレートと第2のコアプレートとが対面した状態を示す図である。
【図9】図9は、図8に示す状態から型締めが行われた状態を示す図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係るインモールド箔の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
(成形品の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る、図示しない電子機器の外観上見える部分の一部を構成する構造体である成形品として、その電子機器の筐体の一部である前面カバーの成形品を示す平面図である。
【0025】
電子機器としては、例えば携帯電話機、携帯型音楽プレーヤー、PDA(Personal Digital Assistant)等、携帯型電子機器が挙げられる。筐体の図示しない本体にこの前面カバー100が装着されて電子機器が構成される。
【0026】
図2は、その前面カバー100の裏面側2(筐体の内部側)を示す平面図である。図3は、図2におけるA−A断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、前面カバー100は、その前面カバー100の表面側1の層を形成する1次成形層10、裏面側2の層を形成する2次成形層20、及びこれらの間に挟み込まれたインモールド箔(転写箔)30を有する。1次成形層10は透明樹脂であり、例えばポリ塩化ビニル、ポリカーボネイト、アクリル等が用いられる。
【0028】
2次成形層20は、筐体の本体との締結用の、図示しないボス構造、スナップフィット、またはプレスフィット等の構造を有する。2次成形層20の材料としては、機械的強度が比較的高いABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、ポリカーボネイトABS等の樹脂が用いられる。
【0029】
前面カバー100の1次成形層10の一部、この例では窓部5を形成するように1次成形層10の裏面側2に2次成形層20が形成される。前面カバー100はこの窓部5を含む主面100aと、その主面100aにほぼ垂直に設けられた側面100bとを有する。
【0030】
後述するように、1次成形層10及び2次成形層20の間には、インモールド箔30の少なくとも加飾層12及び22が配置されるように、インモールド箔30が配置される。電子機器では、液晶ディスプレイやEL(Electro-Luminescence)ディスプレイを構成する図示しないパネルが、その窓部5に前面カバー100の裏面側2から対面するように配置される。つまり、透明樹脂である1次成形層10に窓部5である透明部分が残るように、インモールド箔30及び2次成形層20が形成される。
【0031】
図4は、インモールド箔30の構造を模式的に示す断面図である。
【0032】
インモールド箔30’(ベースフィルム3を含む箔)は、ベースフィルム3側から順に、ベースフィルム3、剥離層4、接着層6、防御層7、透明導電膜層8、端子電極層9、誘電層11、端子電極層19、透明導電膜層18、防御層17、加飾層12及び22、防御層27及び接着層16を備えている。
【0033】
ベースフィルム3は、インモールド箔30が1次成形層10に転写された後、剥離層4から剥離されるフィルムである。ベースフィルム3の材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂が用いられる。
【0034】
剥離層4は、離型性を有していればよく、その材料としては例えばアクリル系、ポリエステル系等の樹脂が用いられる。
【0035】
接着層6は、剥離層4に付着することで剥離層4を介して他の各層を2次成形層20に保持させる。接着層16は、1次成形層10に付着することで他の各層を1次成形層10に保持させる。接着層6及び16の材料として、アクリル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の樹脂が用いられる。
【0036】
防御層7は、接着層6と透明導電膜層8との間に介在されており、つまり、接着層6及び透明導電膜層8に接するようにそれらに挟みこまれている。これにより、例えば接着層6及び透明導電膜層8それぞれの材料が、成形時に互いに拡散して混ざり合うことを防止することができる。他の防御層17及び27も同様の趣旨により、透明導電膜層18と加飾層12との間、加飾層22と接着層16との間にそれぞれ介在されている。防御層7、17及び27の材料としては、メラミン系、ポリイミド系の樹脂が用いられる。
【0037】
透明導電膜層8は、例えばセンシング用として、典型的にはタッチパネルのタッチセンサとして用いられる。そのタッチセンサとしては、静電容量方式、あるいは抵抗膜方式のものが用いられる。透明導電膜層8としては、例えばITO(Indium Tin Oxide)が用いられる。ITOは、例えばスパッタリング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等により形成される。その厚さは20〜40nmであるが、この範囲に限られない。
【0038】
図5は、図3における破線で囲まれた領域Bを拡大して示す模式図である。本実施形態では、透明導電膜層8(及び18)は、窓部5を覆う領域に形成される。すなわち透明導電膜層8(及び18)の一部であるエッジ部が窓部5の領域からその外周側の領域にはみ出すように設けられている。
【0039】
なお、上記したように透明導電膜層8及び18はnmオーダの厚さでなるが、透明導電膜層8及び18以外の層は、μmオーダの厚さでなる。図5では、インモールド箔30の、例えば透明導電膜層8及び18と誘電層11との間、防御層17と防御層27との間などに、図を理解しやすくするために便宜上、空間が描かれている。しかし、実質的にはこのような空間はなく、インモールド箔30全体の厚さは0.2mm以下である。図4も同様の趣旨で模式的に描かれている。
【0040】
端子電極層9は、透明導電膜層8の端部に接続された層であり、図示しない外部素子に接続するための端子である。外部素子とは、本実施形態では例えば検出回路、制御回路等を構成するIC等である。
【0041】
図2及び5に示すように、本実施形態では、端子電極層9の実質的にすべてが、窓部5が配置される領域以外の領域(1次成形層10と2次成形層20との間の領域)に配置される。端子電極層9(及び19)は、図2に示すように複数の配線で構成されている。端子電極層9(及び19)の材料としては、銀、銅、アルミニウム、カーボン等が用いられる。
【0042】
透明導電膜層18は、例えば電磁波シールドを構成する層であり、上記透明導電膜層8と同様にITOが用いられる。例えば透明導電膜層18が電磁波シールドを構成する場合、端子電極層19は、グランド接続をするための端子電極となる。図5に示すように、端子電極層19も端子電極層9と同様に1次成形層10と2次成形層20との間の領域に配置される。
【0043】
誘電層11は、透明導電膜層8及び18同士を絶縁する層であり、その材料としては、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、アクリル系等の樹脂が用いられる。
【0044】
加飾層12及び22は、筐体にデザイン性を付与するための層である。本実施形態では、加飾層12及び22は前面カバー100の窓部5以外の領域に付加される。加飾層12及び22は、例えば、スクリーン、グラビア等により印刷される。本実施形態では、加飾層12が下地のデザインとなり、加飾層22が例えばその下地の上に付加される文字や図形等のデザインとなる。もちろん、加飾層は1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
【0045】
(成形品の成形方法(製造方法))
図6〜9は、前面カバー100の、インモールド成形による製造方法を説明するための図である。
【0046】
1次成形層10を形成するための金型として、図6に示すように、キャビティ51aを有するキャビティプレート51と、第1のコア52aを有する第1のコアプレート52とが用意される。そして、図7に示すように、キャビティプレート51に設けられたランナー51b及びゲート51c(図6参照)を介して、キャビティ51a内に1次成形用樹脂10’が充填されるとともに、キャビティ51a内に第1のコアプレート52の第1のコア52aが挿入されて型締めが行われる。所定の温度及び圧力が1次成形用樹脂10’に加えられるとともに、その樹脂の温度及び圧力によって1次成形用樹脂10’に対してのインモールド箔30’の溶融転写が行われる。
【0047】
次に、2次成形層20を形成するための金型として、図8に示すようにインモールド箔30が転写された1次成形用樹脂10’が貼り付いたキャビティプレート51と、第2のコア53aを有する第2のコアプレート53とが用意される。典型的には、第1のコアプレート52及び第2のコアプレート53は一体的に設けられ、1つのプレートに第1のコア52a及び第2のコア53aが形成されている。そして、第1のコア52aにより1次成形層10が形成された後、第2のコア53aと、キャビティプレート51のキャビティ51aとが対面するようにそのコアプレートが回転する。
【0048】
図9に示すように第2のコアプレート53に設けられたランナー53b及びゲート53c(図8参照)を介して、キャビティプレート51のキャビティ51a内に2次成形用樹脂20’が充填されるとともに、キャビティ51a内に第2のコアプレート53の第2のコア53aが挿入されて型締めが行われる。所定の温度及び圧力が2次成形用樹脂20’に加えられる。
【0049】
この後、離型が行われる。すなわち、金型から成形品が取り外される。これにより、成形品の成形が終了する。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る成形品では、1次成形層10と2次成形層20との間に、インモールド箔30の一部(透明導電膜層8及び18のエッジ部、加飾層12及び22及び端子電極層9及び19)が挟み込まれている。成形品の一部において、言わば1次及び2次成形層10及び20が半導体回路チップのパッケージングのような機能を果たす。これにより、インモールド箔30を1次及び2次成形層10及び20との間に保持しておくことができる。
【0051】
特に、加飾層12及び22、また、端子電極層9及び19が、1次及び2次成形層10及び20の間に配置される。これにより、加飾層12及び22、端子電極層9及び19が損傷を受けたり、粉塵等が端子電極層9及び19に付着して電気的導通が阻害されたりすることを防止することができる。
【0052】
本実施形態では、端子電極層9及び19もインモールド成形により1次成形層10に同時に転写される。したがって、例えばはんだ付け等の端子処理が不要となり、生産性を高めることができる。また、電子機器に別途の端子電極を設ける必要がなく、部品点数を削減することができる。
【0053】
本実施形態では、図5に示すように、端子電極層9(及び19)の一部である端部9aが露出するように設けられている。具体的には、2次成形層20側に近い方に配置された剥離層4、接着層6及び防御層7のそれぞれの端部から端子電極層9の端部9aが露出するように配置されている。このように、透明導電膜層8(及び18)が外部接続できるように、端子電極層9(及び19)が外部に露出するように設けられているので、他の電子部品や電子回路に例えばフレキシブルケーブルを介して接続されたコネクタ(図示せず)を、容易に端子電極層9及び19に接続することができる。
【0054】
特に、本実施形態では、図8に示すように第2のコアプレート53に設けられた突起53eにより、2次成形層20の、端子電極層9及び19の端部に対応する位置に溝部20aがそれぞれ形成される(図2、3及び5参照)。この溝部20aには露出した端子電極層9の端部9aが配置され、この溝部20aに外部素子のコネクタが挿入されるようになっている。これにより、コネクタを溝部20aに挿入するだけで、透明導電膜層8と外部素子とを容易に導通させることができる。したがって、この電子機器の組み立てが容易になる。
【0055】
なお、電磁波シールドとなる透明導電膜層18の端子電極層19には、グランド接続するためのコネクタやその他の部品が接続される。
【0056】
本実施形態では、インモールド箔30がフレキシブルなので、図3及び5等に示すように、前面カバー100の主面100aから側面100bに沿って端子電極層9及び19を配置させることができる。また、前面カバー100の側面100bに端子電極層9及び19が設けられているので、コネクタを筐体の側面100bから接続することができ、電子機器の組み立てが容易になる。
【0057】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態に係るインモールド箔の構造を模式的に示す断面図である。
【0058】
このインモールド箔130’の構造と、上記第1の実施形態に係るインモールド箔30’の構造とで異なる点は、このインモールド箔130’では、上記電磁波シールドを構成する透明導電膜層18、それに接続されたグランド接続のための端子電極層19、及び、誘電層11がない点である。このようなインモールド箔130’でも、上記第1の実施形態に係る製造方法と同様な製造方法により成形品を製造することができ、また、第1の実施形態における作用効果と同様の作用効果が得られる。
【0059】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0060】
上記実施形態では、導電層として透明導電膜層8及び18、端子電極層9及び19を含む導電層を例に挙げた。しかし、導電層はその他の種々の回路パターンであってもよい。また、その回路パターンの実質的にすべてが1次成形層10及び2次成形層20の間に配置されるような構造であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、1次成形層10が透明樹脂であり、2次成形層20が有色(透明ではない)樹脂であったが、両者ともに透明樹脂であってもよい。
【0062】
センシング用の透明導電膜層8として、上記したタッチセンサに限られない。例えばセンシング用の透明導電膜層は、電磁波を検出する、RFID(Radio Frequency IDentification)等に用いられるアンテナであってもよい。
【0063】
あるいは、透明導電膜層8として上記したセンシング用及び電磁波シールド用に限られない。例えば図示しない部品素子に電力を供給するための電力供給用導電膜層がインモールド箔30’または130’に設けられていてもよい。部品素子とは、例えばスピーカや光源(有機ELやLED等)等である。あるいは、上記センシング用の透明導電膜層8がその部品素子に電力を供給する機能を有していてもよい。
【0064】
上記実施形態では、加飾層12及び22、また端子電極層9及び19が、1次成形層10と2次成形層20との間に配置された。しかし、加飾層12及び22のうち少なくとも一方が、例えば1次成形層10上に形成され、2次成形層20に覆われていなくてもよい。
【0065】
上記実施形態では、2次成形層20に溝部20aが形成されていたが、溝部20aは1次成形層10に形成されてもよい。
【0066】
電子機器としては携帯型の電子機器を例に挙げたが、携帯型に限られない。
【符号の説明】
【0067】
5…窓部
7、17、27…防御層
8、18…透明導電膜層
9、19…端子電極層
10…1次成形層
12、22…加飾層
20…2次成形層
20a…溝部
30、30’、130’…インモールド箔
100…前面カバー
100a…主面
100b…側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次成形層と、
加飾層及び導電層を有し、前記1次成形層にインモールド成形により転写された転写箔と、
前記1次成形層との間に、前記転写箔の前記加飾層及び前記導電層のうち少なくとも一方が配置されるように、前記1次成形層上に形成された2次成形層と
を具備する成形品。
【請求項2】
請求項1に記載の成形品であって、
前記転写箔の前記導電層は、
センシング用導電層と、
前記センシング用導電層に導通し、一部が露出するように設けられ、前記センシング用導電層を外部接続するための端子電極層とを含む
成形品。
【請求項3】
請求項2に記載の成形品であって、
前記1次成形層または前記2次成形層は、溝部を有し、
前記溝部には、前記露出した前記端子電極層の一部が配置され、前記外部接続のための、外部素子に設けられたコネクタが挿入される
成形品。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の成形品であって、
前記転写箔の前記導電層は、電源からの電力を、前記成形品を用いた電子機器に搭載される部品素子に供給する電力供給用導電層を含む
成形品。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の成形品であって、
前記転写箔は、前記加飾層及び前記導電層の間に介在された防御層をさらに有する
成形品。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の成形品であって、
前記成形品は、前記成形品が用いられる電子機器の外観上見える部分の一部または全部を構成する構造体である
成形品。
【請求項7】
請求項6に記載の成形品であって、
前記構造体は、ディスプレイを有する電子機器の筐体であり、
前記筐体は、
前記ディスプレイが配置される窓部を有し、前記転写箔の前記導電層の第1の部分が転写された主面と、
前記転写箔の前記導電層の前記第1の部分とは異なる第2の部分が転写された側面とを有する
成形品。
【請求項8】
請求項1に記載の成形品であって、
前記転写箔の前記導電層は、
電磁波シールド用導電層と、
前記電磁波シールド用導電層に導通し、一部が露出するように設けられ、前記電磁波シールド用を外部接続するための端子電極層とを含む
成形品。
【請求項9】
1次成形層と、
加飾層及び導電層を有し、前記1次成形層にインモールド成形により転写された転写箔と、
前記1次成形層との間に、前記転写箔の前記加飾層及び前記導電層のうち少なくとも一方が配置されるように、前記1次成形層上に形成された2次成形層と
を具備する成形品を備える電子機器。
【請求項10】
加飾層及び導電層を有する転写箔を用いて、インモールド成形により、前記転写箔が転写された1次成形層を形成し、
前記1次成形層と2次成形層との間に、前記加飾層及び前記導電層のうち少なくとも一方を挟み込むように、前記1次成形層上に前記2次成形層を形成する
成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−218661(P2011−218661A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90056(P2010−90056)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】