説明

成形機

【課題】構成を複雑化することなく、高品質の成形品を高能率に成形可能な成形機を提供する。
【解決手段】金型1を開閉する金型開閉装置2と、型閉された金型1内に成形材料を射出する射出装置3と、金型1に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置6と、金型に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置7と、これらの各装置の起動及び停止を制御し、金型1の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを実行する制御装置8とから成形機を構成する。制御手段9は、金型開閉装置2に型開指令信号s5を出力した後、金型開閉手段2に型閉指令信号s6を出力する前に、加熱媒体供給装置6に加熱開始指令信号s8を出力して、金型1の加熱を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機に係り、特に、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを繰り返す成形機における金型の加熱開始タイミングを制御する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラスチック製品を成形する射出成形機、ブロー成形機、熱成形機等は、上述した一連の成形サイクルを繰り返すことによって製品の成形を行っており、金型の加熱及び冷却は、金型への加熱媒体の供給及び金型への冷却媒体の供給を制御することにより行われる。
【0003】
従来、この種の成形機に適用される金型の加熱冷却システムとしては、金型の各部に配置した複数の温度検出部と、金型に蒸気等の加熱媒体を供給する加熱用ユニットと、金型に冷却水等の冷却媒体を供給する冷却用ユニットと、加熱媒体及び冷却媒体が流れる媒体路を切り換えるバルブユニットと、バルブユニットの切り換えを制御する制御手段と、制御手段に具備されたタイマとを有し、制御手段は、前記複数の温度検出部の夫々の検出温度を判定し、この検出温度の判定結果と前記タイマによる時間設定信号とを組み合わせて、バルブユニットの切り換えによる金型の加熱冷却制御、並びに金型内への成形材料の供給制御を行うものが提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この特許文献1に記載の加熱冷却システムによれば、温度検出部の検出温度とタイマによる時間設定信号との組み合わせでバルブユニットの切り換えを行うので、加熱工程における金型への加熱媒体の流入開始タイミング及び流入停止タイミング、射出工程における金型への成形材料の射出開始タイミング、並びに冷却工程における金型への冷却媒体の流入開始タイミング及び流入停止タイミング等を自由に変更することが可能となり、製品の成形に必要な最適な温度域で各工程を実施できて、成形品の品質の安定性を向上させることができる。
【特許文献1】特開2007−83502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の成形機においては、生産性の改善、即ち、1サイクルの成形に要する時間の短縮が強く求められている。1サイクルの成形に要する時間は、金型の加熱及び冷却のタイミングに大きく依存するので、1サイクルの成形時間を短縮し、成形品の生産性を高めるためには、金型からの成形品の取り出しに不都合が生じないことを条件として、なるべく早期に加熱工程が開始される必要がある。
【0006】
しかるに、特許文献1に記載の成形システムは、金型開閉手段への型閉指令信号の出力と同時に、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力を行い、金型の加熱を開始する構成であるため、加熱条件を一定とした場合、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力から金型温度が成形材料の射出開始に適した温度に達するまでの時間が一定となり、成形材料等の成形条件に応じて、金型温度が成形材料の射出開始に適した温度に達するタイミングを調整することができないので、成形条件に応じた成形サイクルの適正化を図ることができず、生産性の改善を図ることが難しい。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、構成を複雑化することなく、高品質の成形品を高能率に成形可能な成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するため、第1に、金型を開閉する金型開閉手段と、型閉された金型内に成形材料を射出する射出手段と、金型に加熱媒体を供給する加熱媒体供給手段と、金型に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段と、前記各手段の起動及び停止を制御し、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを実行する制御手段とを備えた成形機において、前記制御手段は、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した後、前記金型開閉手段に型閉指令信号を出力する前に、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始するという構成にした。
【0009】
このように、金型開閉手段に型閉指令信号を出力する前に、加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、金型の加熱を開始すると、加熱条件を一定とした場合、金型開閉手段への型閉指令信号の出力と同時に、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力を行う場合に比べて、金型温度が成形材料の射出開始に適した温度に達するタイミングを早めることができる。そして、このことは、金型温度が成形材料の射出開始に適した温度に達した後に行われる成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しのタイミングもそれぞれ早めることができるので、1サイクルの成形に要する時間を短縮できて、成形品の生産性を高めることができる。また、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングは、制御手段の設定によって実現できるので、何ら成形機の構成を複雑化することがなく、安価に実施することができる。
【0010】
本発明は第2に、前記第1の成形機において、前記制御手段は、前記金型開閉手段への型開指令信号の出力タイミングからの遅延時間が設定されたタイマを備えており、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した時点から前記タイマによる計時を開始して、前記タイマによる計時が前記設定された遅延時間に達したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始するという構成にした。
【0011】
かかる構成によると、タイマに設定される遅延時間を変更することにより、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを適宜変更できるので、成形材料等の成形条件に応じて、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを最適化することができ、成形機の汎用性を高めることができる。
【0012】
本発明は第3に、前記第1の成形機において、前記金型開閉手段には、前記可動側金型の移動位置を検出する位置検出手段を備えると共に、前記制御手段には、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号を入力する手段と、前記位置信号の特定値を記憶する手段と、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号が前記特定値に達したか否かを判定する手段とを備え、前記制御手段は、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した後、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始するという構成にした。
【0013】
かかる構成によると、制御手段に記憶される特定値を変更することにより、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを適宜変更できるので、成形材料等の成形条件に応じて、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを最適化することができ、成形機の汎用性を高めることができる。
【0014】
本発明は第4に、前記第1の成形機において、前記金型開閉手段には、前記可動側金型の移動位置を検出する位置検出手段を備えると共に、前記制御手段には、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号を入力する手段と、前記位置信号の特定値を記憶する手段と、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号が前記特定値に達したか否かを判定する手段と、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定した時点からの遅延時間が設定されたタイマを備え、前記制御手段は、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定した時点から前記タイマによる計時を開始して、前記タイマによる計時が前記設定された遅延時間に達したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始するという構成にした。
【0015】
かかる構成によると、制御手段に記憶される特定値及びタイマーに設定される遅延時間を変更することにより、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを適宜変更できるので、いずれか一方を変更することにより加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングを制御する場合に比べて、その制御をより正確かつきめ細かく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の成形機は、制御手段により、金型開閉手段に型開指令信号を出力した後、金型開閉手段に型閉指令信号を出力する前に、加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、金型の加熱を開始するので、金型開閉手段への型閉指令信号の出力と同時に加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力を行う場合に比べて、金型温度が成形材料の射出開始に適した温度に達するタイミングを早めることができ、1サイクルの成形に要する時間を短縮できて、成形品の生産性を高めることができる。また、加熱媒体供給手段への加熱開始指令信号の出力タイミングは、制御手段の設定によって実現できるので、何ら成形機の構成を複雑化することがなく、安価に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る成形機の第1実施形態を、図1乃至図5を参照して説明する。図1は第1実施形態に係る成形機のシステム構成図、図2は第1実施形態に係る成形機に備えられる金型開閉装置の構成図、図3は第1実施形態に係る成形機に備えられる射出装置の構成図、図4は第1実施形態に係る成形機に備えられる制御装置のブロック図、図5は第1実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【0018】
これらの図から明らかなように、本例の成形機は、開閉可能に構成された金型1と、金型1を開閉動作させる金型開閉装置2と、型閉された金型1内に成形材料を射出する射出装置3と、金型1の温度を検出する1乃至複数(図2の例では、3個)の金型温度検出センサ4と、射出装置3に備えられたスクリューの前後進方向の位置を検出するスクリュー位置検出センサ5と、金型1に加熱媒体を供給する加熱媒体供給装置6と、金型1に冷却媒体を供給する冷却媒体供給装置7と、加熱媒体供給装置6から金型1に供給される加熱媒体の断続及び冷却媒体供給装置7から金型1に供給される冷却媒体の断続を行うバルブコントロールユニット8と、金型温度検出センサ4から出力される金型温度信号s1,s2,s3及びスクリュー位置検出センサ5から出力される充填量信号s4に基づいて、金型開閉装置2による金型1の開閉、射出装置3による成形材料の計量と射出、及びバルブコントロールユニット8に備えられた各種バルブの開閉を制御する制御装置9とから主に構成されている。
【0019】
金型1は、固定ダイプレート41に取り付けられた固定側金型1aと、可動ダイプレート42に取り付けられた可動側金型1bとから構成されており、金型開閉装置2により可動側金型1bが開閉方向に駆動されるようになっている。金型温度検出センサ4は、固定側金型、可動側金型の所定の位置に設定される。
【0020】
金型開閉装置2は、図2に示すように、一端が可動ダイプレート42に連結され、他端が可動ダイプレート42と対向に配置された固定部(テールストック)43に連結されたトグルリンク機構44と、このトグルリンク機構44を伸縮させるボールネジ機構45とからなる。
【0021】
ボールネジ機構45は、固定部43に回転可能に設置された図示しないナット体と、このナット体に螺合された図示しないネジ軸とからなり、ナット体を型開閉用サーボモータ46にて正転又は逆転することにより、その回転量に応じた直進移動量だけトグルリンク機構44を介して可動ダイプレート42に固定された可動側金型1bを移動させる。型開閉用サーボモータ46は、制御装置9からの指令信号に応じてモータドライバ47から出力されるモータ駆動信号により駆動される。また、型開閉用サーボモータ46には、その回転量及び回転方向を検出するエンコーダ48が付設されており、エンコーダ48にて検出された型開閉用サーボモータ46の回転量及び回転方向は、制御装置9に記憶される。型開閉用サーボモータ46は、ボールネジ機構45、トグルリンク機構44及び可動ダイプレート42を介して可動側金型1bと機械的に連結されているので、型開閉用サーボモータ46の回転量及び回転方向をエンコーダ48にて検出することにより、可動側金型1bの位置を直接的に検出することができる。したがって、エンコーダ48は、可動側金型1bの移動位置を検出する位置検出手段としても機能する。
【0022】
なお、トグルリンク機構44及びボールネジ機構45は、周知に属するものであり、かつ本発明の要旨でもないので、詳細な説明を省略する。
【0023】
射出装置3は、図3に示すように、図示しない射出ユニットベース盤上に所定距離をおいて対向に配設されたヘッドストック11及び支持盤12と、これらヘッドストック11と支持盤12との間に架け渡された連結バー13と、この連結バー13に案内されてヘッドストック11と支持盤12との間を前後進する直動ブロック14と、基端部がヘッドストック11に固定された加熱シリンダ15と、加熱シリンダ15の先端に取り付けられたノズル16と、加熱シリンダ15の外周に巻装されたバンドヒータ17と、加熱シリンダ15内に回転可能かつ前後進可能に配設されたスクリュー18とを備えている。スクリュー18の基端部は、回転体19に保持され、回転体19は、軸受を介して直動ブロック14に回転可能に保持されている。また、回転体19には、被動プーリ20が固定されており、この被動プーリ20には、直動ブロック14に搭載された計量用サーボモータ21の出力軸に固定された駆動プーリ22との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー18は、駆動プーリ22、図示しないタイミングベルト、被動プーリ20及び回転体19を介して計量用サーボモータ21により回転駆動される。
【0024】
支持盤12には、射出用サーボモータ23が搭載されると共に、軸受を介してボールネジ機構25のネジ軸26が回転可能に保持される。ボールネジ機構25は、ネジ軸26と、このネジ軸26に螺合されたナット体27とから構成されており、ナット体27の端部は、ロードセルユニット28を介して直動ブロック14に固定されている。ネジ軸26の端部には、被動プーリ29が固定されており、この被動プーリ29には、射出用サーボモータ23の出力軸に固定された駆動プーリ24との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー18は、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29、ボールネジ機構25、直動ブロック14及び回転体19を介して射出用サーボモータ23により前後進される。
【0025】
なお、図中の符号11a及び15aは、図示しないホッパーから落下・供給される成形材料を加熱シリンダ15の後端部内に供給するために、ヘッドストック11および加熱シリンダ15の対応する位置に穿設された成形材料供給穴を示している。また、符号25aは、制御装置9からの指令に基づいて計量用サーボモータ21を駆動制御するモータドライバ、符号25bは、制御装置9からの指令に基づいて射出用サーボモータ23を駆動制御するモータドライバを示している。
【0026】
このように構成された本例の射出装置3は、計量用サーボモータ21及び射出用サーボモータ23の駆動停止を制御することにより、成形材料供給穴11a,15aを通って供給される成形材料の計量と、計量された成形材料の可塑化及び混練と、可塑化及び混練された成形材料の金型1内への射出とを行う。
【0027】
即ち、計量工程時には、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25aからの出力により、計量用サーボモータ21が所定方向に回転駆動され、駆動プーリ22、図示しないタイミングベルト、被動プーリ20及び回転体19を介して、スクリュー18が所定方向に回転駆動される。このスクリュー18の回転により、図示しないホッパから原料供給穴11a,15aを通して加熱シリンダ15の内部後端側に原料樹脂が供給される。この原料樹脂は、可塑化及び混練されつつスクリュー18のネジ送り作用によって前方に移送され、溶融樹脂となってスクリュー18の前方側に貯えられる。スクリュー18の前方側に溶融樹脂が送り込まれるにつれてスクリュー18は後退するが、この際、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23を圧力フィードバック制御で駆動制御し、スクリュー18の直線移動位置を制御することで、スクリュー18には所定の背圧が付与される。そして、スクリュー18の先端側に1ショット分の溶融樹脂が貯えられた時点で、計量用サーボモータ21によるスクリュー18の回転駆動は停止される。
【0028】
一方、射出工程時には、計量が完了した後の適宜のタイミングで、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23が速度フィードバック制御で駆動制御され、これにより、射出用サーボモータ23の回転が、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29を介してボールネジ機構25に伝えられ、ボールネジ機構25により回転運動が直線運動に変換されて、直線運動がロードセルユニット28、直動ブロック14及び回転体19を介してスクリュー18に伝達されることで、スクリュー18が急速に前進駆動されて、スクリュー18の先端側に貯えられた溶融樹脂が型締状態にある金型1(図1参照)のキャビティ内に射出充填され、一次射出工程が実行される。一次射出工程に引き続く保圧工程では、制御装置9の指令に基づくモータドライバ25bからの出力により、射出用サーボモータ23が圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、設定された保圧力がスクリュー18から金型1内の樹脂に付加される。
【0029】
スクリュー位置検出センサ5は、射出用サーボモータ23内に配置され、射出用サーボモータ23の出力軸の回転を検出する。前述したように、射出用サーボモータ23の出力軸は、駆動プーリ24、図示しないタイミングベルト、被動プーリ29、ボールネジ機構25のネジ軸26、ボールネジ機構25のナット体27、ロードセルユニット28、直動ブロック14及び回転体19を介してスクリュー18に連結されているので、射出用サーボモータ23の出力軸の回転を検出することによって、スクリュー18の移動位置を検出することができる。そして、射出工程におけるスクリュー18の移動位置は、金型1内への成形材料の充填量に対応するので、結局のところ、スクリュー位置検出センサ5により、金型1内への成形材料の充填量を検出することができる。なお、このスクリュー位置検出センサ5としては、射出用サーボモータ23の出力軸に固着されるロータと、ロータに設けられたコード板と、コード板と対向に配置され、コード板に記されたコードを検出する検出器とを有するロータリエンコーダを用いることができる。
【0030】
加熱媒体供給装置6は、防腐剤等の薬剤を注入した軟水を加熱媒体である蒸気に変換するボイラーと、このボイラーにて発生した蒸気を金型1に供給するポンプと、ポンプから吐出される蒸気を金型1に供給する加熱媒体供給配管とから主に構成される。
【0031】
一方、冷却媒体供給装置7は、熱交換により冷却媒体である水温が10℃〜常温の冷却水を生成するクーリングタワーと、クーリングタワーにて冷却された冷却水を金型1に供給するポンプと、ポンプから吐出される冷却水を金型1に供給する冷却媒体供給配管とから主に構成される。
【0032】
コントロールバルブユニット8は、加熱媒体供給装置6と金型1とを繋ぐ加熱媒体供給配管に設けられる加熱媒体切替バルブ、及び冷却媒体供給装置7と金型1とを繋ぐ冷却媒体供給配管に設けられる冷却媒体切替バルブをユニット化したものであって、制御装置9からの制御信号により前記各切替バルブをオンオフ制御して、金型1への加熱媒体の供給及び冷却媒体の供給を断続する。
【0033】
制御手段9は、図4に示すように、金型温度検出センサ4から出力される金型温度信号s1,s2,s3及びスクリュー位置検出センサ5から出力される充填量信号s4の入力部31と、金型開閉装置2に送信される型開指令信号s5及び型閉指令信号s6、射出装置3に送信される計量指令信号及び射出指令信号s7、バルブコントロールユニット8の加熱媒体切替バルブに送信される加熱開始指令信号s8及び加熱停止指令信号s9、並びにバルブコントロールユニット8の冷却媒体切替バルブに送信される冷却開始指令信号s10及び冷却停止指令信号s11の出力部32と、運転条件設定格納部33と、測定値格納部34と、運転プロセス制御部35と、タイマ36と、所要のデータを入力するデータ入力部37とを備えている。
【0034】
運転条件設定格納部33には、データ入力部67から予め入力された成形サイクルの各工程(型閉じ、計量、射出、型開き、加熱、冷却の各工程)の運転制御条件及び各種の設定値が書き換え可能に格納され、測定値格納部34には、成形機の各部に備えられた金型温度検出センサ4及びスクリュー位置検出センサ5を含むセンサ群により検出された成形機各部の計測情報がリアルタイムで取り込まれて格納される。運転プロセス制御部35は、予め用意された各工程の運転制御プログラムと、運転条件設定格納部33に格納された各工程の運転条件の設定値とに基づき、測定値格納部34中の計測情報や各部からの状態確認情報や自身の計時情報を参照しつつ、図示しないドライバ群を駆動制御して、各工程の運転を実行させる。
【0035】
タイマ36には、金型開閉装置2への型開指令信号s5の出力タイミングからの遅延時間が設定される。このタイマ36に設定される遅延時間は、金型開閉装置2への型開指令信号s5の出力から金型開閉装置2への型閉指令信号s6の出力に至る時間よりも短く、かつ金型1からの成形品の取り出しを阻害しない時間に設定される。即ち、タイマ36に設定される遅延時間が、金型開閉装置2への型開指令信号s5の出力から金型開閉装置2への型閉指令信号s6の出力に至る時間と同じであるか、これよりも長くなると、生産性の向上を図ることができず、反対に、タイマ36に設定される遅延時間が極端に短くなると、成形品の取り出し時に金型温度が高くなり過ぎて、金型1と成形品の熱膨張率差から、成形品の取り出しが困難になるからである。タイマ36に設定される遅延時間は、これらの事情を考慮して、実験的に求めることができる。
【0036】
以下、図5に基づいて、制御装置9による成形機各部の駆動制御を説明する。なお、図4は、成形サイクル中の金型温度の変化と各工程の実行タイミングとを示すグラフ図である。
【0037】
まず、制御装置9は、金型温度が型開に適した温度TLになったとき、金型開閉装置2に型開指令信号s5を出力して、可動側金型1bの型開方向への移動を開始する。また、制御装置9は、これと同時に、タイマ36の計時を開始し、タイマ36による計時がタイマ36に設定された遅延時間TD1に達したとき、バルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力して、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体(蒸気)の供給を開始する。これにより、図5に示すように、金型温度が上昇する。
【0038】
制御装置9は、金型温度が成形材料の射出に適した温度、即ち、射出開始温度THに達したと判定すると、射出装置3に射出指令信号s7を出力して、金型1内への成形材料の充填を開始する。なお、金型温度が射出開始温度THに達したか否かの判定は、金型1に複数個の金型温度検出センサ4を備えた場合には、予め定められた特定の金型温度検出センサ4の出力値のみを基準として行うこともできるし、それら複数個の金型温度検出センサ4の出力値の平均値とすることもできる。
【0039】
制御装置9は、射出装置3への射出指令信号s7の出力と同時に、バルブコントロールユニット8に加熱停止指令信号s9を出力し、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体の供給を停止する。
【0040】
所定の保圧工程が終了した後、制御装置9は、バルブコントロールユニット8に冷却開始指令信号s10を出力し、冷却媒体供給装置7から金型1に冷却水を供給して、金型1を強制冷却する。そして、金型温度が型開に適した温度TLになったときに、金型開閉装置2に型開指令信号s5を出力して、型開工程を実行する。
【0041】
上述のように、本例の成形機は、金型開閉装置2に型閉指令信号s6を出力する前に、バルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力して、金型の加熱を開始するので、加熱条件を一定とした場合、金型開閉装置2への型閉指令信号s6の出力と同時に、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力を行う場合に比べて、金型温度が射出開始温度THに達するタイミングを早めることができ、さらには、その後に行われる成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しのタイミングもそれぞれ早めることができるので、1サイクルの成形に要する時間を短縮できて、成形品の生産性を高めることができる。また、タイマ36に遅延時間TD1を設定することによって、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを規制するので、何ら成形機の構成を複雑化することがなく、生産性の高い成形機を安価に実施できる。さらには、タイマ36に設定する遅延時間を変更することにより、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを適宜変更できるので、成形材料等の成形条件に応じて、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを最適化することができ、成形機の汎用性を高めることができる。
【0042】
次に、本発明に係る成形機の第2実施形態を、図6を参照して説明する。図6は第2実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【0043】
本例の成形機は、タイマ36に遅延時間TD1を設定する構成に代えて、図6に示すように、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後、可動側金型1bが予め設定された型開位置に移動したとき、制御装置9からバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力して、金型の加熱を開始することを特徴とする。
【0044】
即ち、本例の成形機においては、制御装置9の運転条件設定格納部33に、制御装置9からバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力するタイミングを規制するための信号として、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後の可動側金型1bの特定の型開位置が記憶されている。勿論、この場合には、タイマ36への遅延時間の設定は、省略される。運転プロセス制御部35は、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後、エンコーダ48から出力される可動側金型1bの移動位置と運転条件設定格納部33に記憶された可動側金型1bの特定の型開位置とを比較し、可動側金型1bの移動位置が特定の型開位置に達したか否かを判定する。そして、可動側金型1bの移動位置が特定の型開位置に達したと判定したときには、出力部32を介してバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力し、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体(蒸気)の供給を開始する。これにより、図6に示すように、金型温度が上昇する。その他については、第1実施形態に係る成形機と同じであるので、説明を省略する。
【0045】
第2実施形態に係る成形機は、運転条件設定格納部33に記憶される可動側金型1bの特定の型開位置を変更することにより、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを適宜変更できるので、第1実施形態に係る成形機と同様に、成形材料等の成形条件に応じて、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号の出力タイミングを最適化することができ、成形機の汎用性を高めることができる。
【0046】
次に、本発明に係る成形機の第3実施形態を、図7を参照して説明する。図7は第3実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【0047】
本例の成形機は、図7に示すように、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後に、可動側金型1bが予め設定された型開位置に移動し、かつタイマ36に設定された遅延時間TD2が経過したとき、制御装置9からバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力して、金型の加熱を開始することを特徴とする。
【0048】
即ち、本例の成形機においては、制御装置9からバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力するタイミングを規制するための信号として、制御装置9の運転条件設定格納部33に、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後の可動側金型1bの特定の型開位置が記憶されると共に、タイマ36には、可動側金型1bが運転条件設定格納部33に記憶された特定の型開位置に達してからバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力するまでの遅延時間TD2が設定されている。運転プロセス制御部35は、制御装置9から型開指令信号s5が出力された後、エンコーダ48から出力される可動側金型1bの移動位置と運転条件設定格納部33に記憶された可動側金型1bの特定の型開位置とを比較し、可動側金型1bの移動位置が特定の型開位置に達したか否かを判定する。そして、可動側金型1bの移動位置が特定の型開位置に達したと判定したタイミングで、タイマ36による計時を開始し、タイマ36に設定された遅延時間が経過した段階で、出力部32を介してバルブコントロールユニット8に加熱開始指令信号s8を出力し、加熱媒体供給装置6から金型1への加熱媒体(蒸気)の供給を開始する。これにより、図7に示すように、金型温度が上昇する。その他については、第1実施形態に係る成形機及び第2実施形態に係る成形機と同じであるので、説明を省略する。
【0049】
第3実施形態に係る成形機は、運転条件設定格納部33に記憶される可動側金型1bの特定の型開位置、及びタイマ36に設定される遅延時間を変更することにより、バルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを変更できるので、いずれか一方を変更することによりバルブコントロールユニット8への加熱開始指令信号s8の出力タイミングを制御する場合に比べて、その制御をより正確かつきめ細かく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態に係る成形機のシステム構成図である。
【図2】第1実施形態に係る成形機に備えられる金型開閉装置の構成図である。
【図3】第1実施形態に係る成形機に備えられる射出装置の構成図である。
【図4】第1実施形態に係る成形機に備えられる制御装置のブロック図である。
【図5】第1実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【図6】第2実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【図7】第3実施形態に係る成形機の加熱冷却サイクルを示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 金型
2 金型開閉装置
3 射出装置
6 加熱媒体供給装置(加熱媒体供給手段)
7 冷却媒体供給装置(冷却媒体供給手段)
8 バルブコントロールユニット(加熱媒体供給手段、冷却媒体供給手段)
9 制御装置(制御手段)
36 タイマ
48 エンコーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を開閉する金型開閉手段と、型閉された金型内に成形材料を射出する射出手段と、金型に加熱媒体を供給する加熱媒体供給手段と、金型に冷却媒体を供給する冷却媒体供給手段と、前記各手段の起動及び停止を制御し、金型の型閉、金型の加熱、成形材料の射出及び保圧、金型の冷却、金型の型開及び成形品の取り出しからなる成形サイクルを実行する制御手段とを備えた成形機において、
前記制御手段は、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した後、前記金型開閉手段に型閉指令信号を出力する前に、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始することを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記金型開閉手段への型開指令信号の出力タイミングからの遅延時間が設定されたタイマを備えており、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した時点から前記タイマによる計時を開始して、前記タイマによる計時が前記設定された遅延時間に達したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記金型開閉手段には、前記可動側金型の移動位置を検出する位置検出手段を備えると共に、前記制御手段には、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号を入力する手段と、前記位置信号の特定値を記憶する手段と、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号が前記特定値に達したか否かを判定する手段とを備え、前記制御手段は、前記金型開閉手段に型開指令信号を出力した後、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始することを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項4】
前記金型開閉手段には、前記可動側金型の移動位置を検出する位置検出手段を備えると共に、前記制御手段には、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号を入力する手段と、前記位置信号の特定値を記憶する手段と、前記位置検出手段から出力される可動側金型の位置信号が前記特定値に達したか否かを判定する手段と、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定した時点からの遅延時間が設定されたタイマを備え、前記制御手段は、前記判定する手段が前記位置検出手段から出力される前記可動側金型の位置信号が前記特定値に達したと判定した時点から前記タイマによる計時を開始して、前記タイマによる計時が前記設定された遅延時間に達したとき、前記加熱媒体供給手段に加熱開始指令信号を出力して、前記金型の加熱を開始することを特徴とする請求項1に記載の成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−274263(P2009−274263A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125948(P2008−125948)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】