説明

投影光学系

【課題】構成レンズの枚数の増加を抑制しながら、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度及び光学特性が得られるコンパクトな投影光学系を提供する。
【解決手段】紫外線を用いてレティクル上のパターンの像を基板上に投影露光する投影光学系であって、物体側から像側の順に、正屈折力の第1レンズ群と、正屈折力の第2レンズ群と、開口絞りと、正屈折力の第3レンズ群と、正屈折力の第4レンズ群を備え、第2レンズ群は、最も開口絞りに近く配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズと、該レンズL25よりも第1レンズ群側に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズを有し、第3レンズ群は、最も開口絞りに近く配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズと、該レンズよりも第4レンズ群側に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズとを有し、全光学系の倍率をβとするとき、0.41<|β|<2.4の条件を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レティクル上のパターンの像を基板上に投影露光する投影光学系に関し、特に、プリント基板等を製造するための投影光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント回路基板、液晶基板等の製造において、投影露光機が広く用いられており、この投影露光機に用いられる投影光学系も広く知られている。この投影光学系では、特に、歪曲収差や像面湾曲を始めとする収差を補正して、高い解像度及び良好な光学特性を有することが重要となる。この場合、構成レンズの枚数を抑制しようとすると、露光するための像の領域が小さくなる。そこで、これに対処するため、主に液晶基板の製造を対象として、開口数NA(numerical aperture)を大きく取ることにより、十分な大きさの像の領域が得られるようにした投影光学系が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−1999850号
【特許文献2】特開2002−72080号
【特許文献3】特開2006−267383号
【特許文献4】特開2007−79015号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜4に記載された投影光学系においては、製品の製造に十分な解像度及び光学特性を備え、かつ実用上十分な大きさの像の領域(露光領域)が得られる。しかし、何れの投影光学系においても、構成レンズとして、30枚を超える多数のレンズを要するため、投影光学系の全長が長くなり、重量も増加し、製造コストも高騰する問題を有する。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。
【0005】
従って、本発明の目的は上述の問題を解決して、構成レンズの枚数の増加を抑制しながら、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性が得られるコンパクトな投影光学系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上術の問題を解決するため、本発明の投影光学系の1つの実施態様は、紫外線を用いて、レティクル上のパターンの像を基板上に投影露光する投影光学系であって、物体側から像側の順に、正屈折力の第1レンズ群と、正屈折力の第2レンズ群と、開口絞りと、正屈折力の第3レンズ群と、正屈折力の第4レンズ群と、を備え、前記第2レンズ群は、最も前記開口絞りに近い位置に配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズ1と、前記レンズ1よりも前記第1レンズ群側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズとを有し、前記第3レンズ群は、最も前記開口絞りに近い位置に配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズ2と、前記レンズ2よりも前記第4レンズ群側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズとを有し、全光学系の倍率をβとするとき、
0.41 < |β| < 2.4(条件式A)
の条件を満たすことを特徴とする。
【0007】
ここで、「レンズ群」は、複数のレンズから構成される場合も、1枚のレンズから構成される場合も含まれる。また、「物体」とは、具体的には、レティクル上の(面上に描かれた)パターンを意味し、「像」とは、基板上に投影されたこのパターンの像を意味する。
本実施態様では、紫外線を用いて、レティクルの面上のパターンの像を、レジストが塗布された基板面上に投影する。所謂フォトリソグラフィーにより、レティクル上のパターンと同一、または相似するパターンを基板上に形成することができる。更に波長の短い紫外線を用いることによって、より微細なパターンを形成することができる。
特に、第2レンズ群の最も開口絞りに近い(つまり、最も第3レンズ群に近い)位置と、第3レンズ群の最も開口絞りに近い(つまり、最も第2レンズ群に近い)位置に、凹レンズ(レンズ1とレンズ2)を配置することによって、像面湾曲を補正して、像の広い範囲における平坦性を確保することができる。
【0008】
また、条件式Aに示すように、物体と像との倍率を適切に選択することによって、像の広い範囲における収差を良好に補正することができる。
仮に、|β|の値が2.4以上の場合には、拡大倍率が大きくなり過ぎて、歪曲収差と像面湾曲とをバランスよく補正することが困難になる。一方、仮に、|β|の値が0.41以下の場合には、拡大倍率が小さくなり過ぎて、歪曲収差と像面湾曲とをバランスよく補正することが困難になる。
【0009】
以上のように、本実施態様によれば、上記のような凹レンズ(レンズ1とレンズ2)の配置や条件式Aによって、構成レンズの枚数に比較して、従来より広い露光領域において、収差を良好に補正することができるので、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、かつ全長が抑えられたコンパクトな投影光学系を、低いコストで実現することができる。なお、全光学系の倍率βが、0.7 < |β| < 2.0の範囲にある場合、更に良好な収差の補正を実現できる。
【0010】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、光学系の構成レンズとして、貼り合わせレンズを含まないことを特徴とする。
【0011】
本発明のように、紫外線域の波長の光を用いて露光する場合に、接着剤により貼り合わられたレンズを用いた場合、通常、接着剤は紫外線によって劣化を起こし、光学系の経時変化を起こして、解像力低下や透過率低下の原因となる。従って、本実施態様においては、構成レンズとして、貼り合わせレンズを含まないので、そのような問題を解消することができる。
【0012】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、前記レンズ1は、前記開口絞りに凹面を向けたメニスカス形状を有し、前記レンズ2は、前記開口絞りに凹面を向けたメニスカス形状を有することを特徴とする。
【0013】
上述のように、第2レンズ群の最も開口絞りに近い位置と、第3レンズ群の最も開口絞りに近い位置に、それぞれ凹レンズを配置することによって、像面湾曲を補正しているが、本実施態様のように、各々の凹レンズを、開口絞りに凹面を向ける方向に配置することによって、更に、非点収差を良好に補正することができる。
【0014】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、前記投影光学系の物体面から像面までの距離をL、前記レンズ1の前記開口絞りに向けた凹面の曲率半径をr1、前記レンズ2の前記開口絞りに向けた凹面の曲率半径をr2としたとき、r1、r2はそれぞれ、
0.025 < r1/L < 0.1(条件式B1)
−0.025> r2/L > −0.1(条件式B2)
の条件を満たすことを特徴とする。
【0015】
本実施態様において、もし、条件式B1及び条件式B2の両方の条件を満たさない場合には、下記のような問題が生じる。例えば、r1/Lが0.1以上で、r2/Lの値が−0.1以下の場合には、像面湾曲が補正不足となり、像の広い領域における平坦性を得ることができない。一方、r1/Lが0.025以下で、r2/Lの値が−0.025以上の場合には、像面湾曲が補正オーバーとなり、同様に、像の広い領域における平坦性を得ることができない。
また、上記の条件式B1及び条件式B2のどちらか一方の条件だけを満たした場合には、像面湾曲を補正することができるが、非点収差を補正することが困難である。また、倍率が1倍(等倍)の場合を除き、コマ収差を補正することも困難である。
以上のように、本実施態様において、レンズ1の曲率半径r1及びレンズ3の曲率半径r2について、条件式B1及びB2の条件を満たすことによって、像面湾曲、非点収差、コマ収差を適切に補正することができ、球面収差も補正できる。
【0016】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、光学系の構成レンズの総枚数が、12枚以上22枚以下であることを特徴とする。
【0017】
特許文献1〜4に記載の投影光学系のように、レンズ枚数を多くすれば、開口数NAを大きくとれ露光面積を大きくすることができるが、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。
一方、構成レンズの枚数を12枚を下回る場合には、プリント回路基板等の露光に必要なレベルまで収差を補正することができない。
よって、プリント回路基板等を露光する投影光学系においては、構成レンズの総枚数を12枚以上22枚以下にすることが好ましいと考えられる。
【0018】
従って、本実施態様によれば、構成レンズの総枚数を12枚以上22枚以下にすることによって、プリント回路基板等の露光に必要なレベルの収差補正が可能であって、かつ全長が短いコンパクトな投影光学系を、低い製造コストで実現できる。
【0019】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、物体側及び像側共にテレセントリック光学系であることを特徴とする。
【0020】
本実施形態では、投影光学系の物体側及び像側の両側において、光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系を形成している。
投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
【0021】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、物体と像との間の倍率が−1であることを特徴とする。
【0022】
本実施態様では、上記の全光学系の倍率βの範囲のうち、等倍で投影する場合を示す。露光領域が比較的大きな場合に、歪曲収差を良好に補正するには、等倍で投影することが好ましい。また、光学系の構成としては、開口絞りを挟んで対称形に形成することが好ましい。
【0023】
従って、本実施態様によれば、物体側及び像側共にテレセントリック光学系なので、設定された任意の倍率で、倍率誤差や位置誤差が生じず、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することができる。
【0024】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、前記第4レンズ群の焦点をF4、像の最大像高をYとしたとき、
0.05 < Y/F4 < 0.25(条件式C)
の条件を満たすことを特徴とする。
【0025】
仮に、Y/F4の値が0.25以上の場合には、大きな歪曲収差と瞳の球面収差は発生するため、露光領域全体で良好なテレセントリックな状態を保てず、デフォーカスによる歪曲収差発生の恐れがある。一方、仮に、Y/F4の値が0.05以下の場合には、開口絞りから出た主光線を光軸に平行にまで曲げることができず、像側テレセントリックを得ることができない。
従って、条件式Dを満たすことによって、像側をテレセントリックにするために配置された正屈折力の第4レンズ群のパワーを最適化して、露光領域全体で良好なテレセントリックを得ることができる。
【0026】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、前記投影光学系の物体面から像面までの距離をL、像の最大像高をYとしたとき、
0.06 < Y/L < 0.15(条件式D)
の条件を満たすことを特徴とする。
【0027】
仮に、Y/Lの値が0.15以上の場合には、露光範囲に対して光学系の全長が短かすぎて、歪曲収差や像面湾曲等の収差を適正に補正することができない。一方、仮に、Y/Lの値が0.06以下の場合には、光学系の全長が長すぎるため、光学系の肥大化、製造コストの上昇を招き、延いては、露光装置全体の肥大化、製造コストの上昇の原因になる。
従って、本実施態様によれば、物体から像までの距離を適正な範囲に収めることによって、良好な収差補正でき、かつコンパクトで低いコストで製造可能な投影光学系を得ることができる。
【0028】
本発明の投影光学系のその他の実施態様は、更に、前記第1レンズ群の最も物体に近い位置の正の屈折力を有する両凸レンズの物体側の曲率半径をr3、像側の曲率半径をr4とし、
前記第4レンズ群の最も像に近い位置の正の屈折力を有する両凸レンズの像側の曲率半径をr5、物体側の曲率半径をr6とする場合において、
−1 < (r3+r4)/(r3−r4) < 0.25(条件式E1)
−0.25 < (r5+r6)/(r5−r6) < 1(条件式E2)
の条件を満たすことを特徴とする。
【0029】
仮に、(r3+r4)/(r3−r4)の値が0.25以上の場合には、瞳の球面収差が良好に補正されなくなり、露光領域全体で良好な物体側テレセントリック状態を保つことが困難となり、微小な像側のデフォーカスにより歪曲収差を生じる恐れがある。一方、仮に、(r3+r4)/(r3−r4)の値が−1以下の場合には、非点収差の補正が困難となり、露光領域全体で良好な像を得ることが困難になる。
よって、条件式E1を満たすことによって、第1レンズ群の最も物体に近いレンズのシェイプファクターを最適化することができる。
【0030】
また、仮に、(r5+r6)/(r5−r6)の値が1以上の場合には、瞳の球面収差が良好に補正されなくなり、露光領域全体で良好な物体側テレセントリック状態を保つことが困難となり、微小な像側のデフォーカスにより歪曲収差を生じる恐れがある。一方、仮に、(r5+r6)/(r5−r6)の値が−0.25以下の場合には、非点収差の補正が困難となり、露光領域全体で良好な像を得ることが困難になる。
よって、条件式E2を満たすことによって、第4レンズ群の最も像に近いレンズのシェイプファクターを最適化することができる。
【0031】
以上のように、本実施態様によれば、条件式E1、E2を満たすことによって、最も物体に近いレンズ、及び最も像に近いレンズにおけるシェイプファクターを最適化することができるので、物体側及び像側共に、露光領域全体で良好なテレセントリック状態を保つことができる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように、本発明の投影光学系においては、構成レンズの枚数に比較して、従来より広い露光領域において、収差を良好に補正することができるので、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、かつ全長が抑えられたコンパクトな投影光学系を、低いコストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の投影光学系について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
(本発明の投影光学系を備えた投影露光装置の説明)
始めに、図1を用いて、本発明の投影光学系を備えた投影露光装置の1つの実施形態の説明を行なう。
図1は、投影露光装置2の基本構成を示す概略図であり、投影露光装置2は、照明装置20、レティクル30を載置するレティクルステージ32、本発明に係る投影光学系10、及び基板40を載置する基板ステージ42から主に構成される。また、図示されていないが、投影露光装置2には、その他、ステージ移動機構、基板搬送装置、付帯設備等が備えられている。
【0034】
投影露光装置2は、紫外線を用いて、レティクル30の面に描かれたパターンの像を、レジストが塗布された基板40の面上に投影、露光することにより、所謂フォトリソグラフィーにより、レティクル30上のパターンと同一、または相似するパターンを基板40上に形成することができる。なお、図2以降の投影光学系10の構成を示す図においては、レティクル30の面上に描かれたパターンを「物体」として示し、基板40上に投影されたこのパターンの像を、「像」として示してある。
【0035】
光線が進む順に更に詳細に述べれば、照明装置20から出力された紫外線波長域の光線が、レティクルステージ32に載置されたレティクル30に入射し、レティクル30を透過して、光学投影系10に入射する。そして、投影光学系10を透過した光は、基板40へ入射し、レティクル30の面状に描かれたパターンの像が基板40の面状に投影、露光され、このパターンと同一、または相似するパターンを基板40上に形成することができる。基板40の用途としては、例えば、プリント回路基板に用いることを例示できるが、必要とされる解像度、光学特性等によっては、液晶基板や半導体を始めとするその他の任意の用途に適用可能である。
【0036】
図示されていないが、照明装置20の内部には、光源が備えられており、この光源としては、短波長から長波長を含む比較的広波長帯域の紫外線を出射する光源を用いることができる。具体的には、例えば、70〜405nmといった広波長帯域の紫外線を同時に出射可能な水銀ランプ、フラッシュランプ等を用いることができる。
また、レティクルステージ32及び基板ステージ42は、移動機構により移動可能になっており、レティクル30上のパターンと基板40と間で、正確な位置合わせ行うことができる。
【0037】
(投影光学系の説明)
次に、図2〜図4を用いて、本発明に係る投影光学系10の詳細な説明を行なう。
図2〜図4に示す本発明に係る投影光学系10の第1〜第3の実施形態は、何れも、物体側から像側の順(つまり、光線が通過する順)に、正屈折力の第1レンズ群L1と、正屈折力の第2レンズ群L2と、開口絞り12と、正屈折力の第3レンズ群L3と、正屈折力の第4レンズ群L4とを備えている。なお、「レンズ群」は、複数のレンズから構成される場合も、1枚のレンズで構成される場合も含まれる。
【0038】
<投影光学系の第1の実施形態の説明>
始めに、図2を参照して、本発明に係る投影光学系10の第1の実施形態のレンズ構成を説明する。本実施形態では、レティクル30(物体)側から基板40(像)側の順に、1枚のレンズL11から構成される正屈折力の第1レンズ群L1と、5枚のレンズL21〜L25から構成される正屈折力の第2レンズ群L2と、開口絞り12と、5枚のレンズL31〜L35から構成される正屈折力の第3レンズ群L3と、1枚のレンズL41から構成される正屈折力の第4レンズ群L4とが備えられている。
以上のように、投影光学系の第1の実施形態では、計12枚のレンズから構成されている。次に、本投影光学系の諸元の値を下表に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
図2及び表1に示すように、第1レンズ群L1は、両凸レンズL11から構成されている。第2レンズ群L2は、物体側から像側の順に、像側に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズL21と、正屈折力の3枚のレンズL22、L23、L24と、像側(つまり開口絞り12)に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズL25とから構成されている。
つまり、第2レンズ群L2は、最も開口絞り12に近い位置に負屈折力のメニスカス形状のレンズL25(「レンズ1」と称する場合もある)と、レンズL25よりも第1レンズ群L1側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズ(本実施形態では、レンズL22〜L24の3枚)とを有している。また、凸レンズに凹レンズを組み合わせることにより、像の平坦性に寄与し、光学系の全長を短くすることにも寄与する。
【0041】
第3レンズ群L3は、物体側から像側の順に、物体側(つまり開口絞り12)に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズL31と、正屈折力の3枚のレンズL32、L33、L34と、物体側に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズL35とから構成される。
つまり、第3レンズ群L3は、最も開口絞り12に近い位置に負屈折力のメニスカス形状のレンズL31(「レンズ2」と称する場合もある)と、レンズL31よりも第4レンズ群L4側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズ(本実施形態では、レンズL32〜L34の3枚)とを有している。また、凸レンズに凹レンズを組み合わせることにより、像の平坦性に寄与し、光学系の全長を短くすることにも寄与する。
第4レンズ群L3は、両凸レンズL41から構成されている。図2及び表1から明らかなように、本実施形態では、光学系10では、開口絞り12を中心に対称形に配置されたレンズ構成を有している。
【0042】
特に、第2レンズ群L2の最も開口絞り12に近い位置と、第3レンズ群L3の最も開口絞り12に近い位置に、凹レンズ(レンズL25とレンズL31)を配置することによって、像面湾曲を補正して、像の広い範囲における平坦性を確保することができる。特に、各々の凹レンズ(レンズL25、L31)を、開口絞り12に凹面を向ける方向に配置することによって、更に、非点収差を良好に補正することができる。
【0043】
ここで、本実施形態の投影光学系10の全光学系の倍率をβ、物体側の開口数をNA、投影光学系10の物体面から像面までの距離をL、像の最大像高をY、第2レンズ群L2のレンズL25の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr1、第3レンズ群L3のレンズL31の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr2、第1レンズ群L1の両凸レンズL11の物体側の曲率半径をr3、像側の曲率半径をr4、第4レンズ群L4の両凸レンズL41の像側の曲率半径をr5、物体側の曲率半径をr6、第4レンズ群L4の焦点をF4とすると、下表のような結果が得られる。
【0044】
【表2】

【0045】
上記の表2によれば、全光学系の倍率の絶対値|β|は1であり、
0.41 < |β| < 2.4(条件式A)
の条件を満たし、更に好ましい条件である。
0.7 < |β| < 2.0
の条件も満たしている。
物体と像との間の倍率を、上記の条件式に示すような範囲にすることによって、像の広い範囲における収差を良好に補正することができる。
仮に、|β|の値が2.4以上の場合には、拡大倍率が大きくなり過ぎて、歪曲収差と像面湾曲とをバランスよく補正することが困難になる。一方、仮に、|β|の値が0.41以下の場合には、拡大倍率が小さくなり過ぎて、歪曲収差と像面湾曲とをバランスよく補正することが困難になる。
【0046】
以上のように、本実施態様によれば、上記のような凹レンズ(レンズL25とレンズL31)の配置や上記の条件式によって、構成レンズの枚数に比較して従来より広い露光領域において、収差を良好に補正することができるので、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、かつ全長が抑えられたコンパクトな投影光学系を、低いコストで実現することができる。
【0047】
また、紫外線を用いて露光する場合に、接着剤により貼り合わられたレンズを用いると、通常、接着剤は紫外線によって劣化を起こし、光学系の経時変化を起こして、解像力低下や透過率低下の原因となる。しかし、本実施形態では、構成レンズとして、貼り合わせレンズを用いていないので、そのような問題は生じず、長期間に渡り高い光学性能を発揮することができる。
【0048】
上記の表2によれば、r1/Lの値が0.0484であり、r2/Lの値が−0.0484である。従って、本実施形態では、
0.025 < r1/L < 0.1(条件式B1)
−0.025 > r2/L > −0.1(条件式B2)
の条件を満たす。
【0049】
仮に、上記の条件式B1及び条件式B2の両方の条件を満たさない場合には、下記のような問題が生じる。例えば、r1/Lが0.1以上で、r2/Lの値が−0.1以下の場合には、像面湾曲が補正不足となり、像の広い領域における平坦性を得ることができない。一方、r1/Lの値が0.025以下でr2/Lの値が−0.025以上の場合には、像面湾曲が補正オーバーとなり、同様に、像の広い領域における平坦性を得ることができない。
また、上記の条件式B1及び条件式B2のどちらか一方の条件だけを満たした場合には、像面湾曲を補正することができるが、非点収差を補正することが困難である。また、倍率が1倍(等倍)の場合を除き、コマ収差を補正することも困難である。
従って、レンズL25の曲率半径r1及びレンズL31の曲率半径r2について、r1/L及びr2/Lの絶対値が0.025から0.1の間の値となるようにすることによって、像面湾曲、非点収差、コマ収差を適切に補正することができ、球面収差も補正できる。
【0050】
また、本実施形態の投影光学系10は、構成レンズの総枚数が12枚であって、10枚以上22枚以下の条件を満たす。構成レンズの枚数が12枚であれば、投影系が表1に示すような適切な諸元を得ることによって、プリント回路基板の露光に必要なレベルまで収差を補正することができる。このことは、後述するように、本実施形態の投影光学系の諸収差を示す図(図5、6参照)から明らかである。
【0051】
本実施形態においては、構成レンズの枚数が12枚であるが、レンズ枚数を多くすれば(例えば、30枚以上)、開口数NAを大きくとれて露光面積を大きくすることができる。しかし、この場合、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。
一方、第1レンズ群L1及び第4レンズ群L4にそれぞれ1枚のレンズを備え、第2レンズ群L2及び第3のレンズ群L3にそれぞれ5枚のレンズを備えた本実施形態の構成が、プリント回路基板の露光に必要なレベルの収差補正を実現できる最小レンズ構成であると考えられる。もし、構成レンズの枚数を12枚より少なくする場合には、第2レンズ群L2及び第3のレンズ群L3の構成レンズを減らす必要があるが、この場合には、プリント回路基板の露光に必要なレベルまで収差を補正することが非常に困難である。
【0052】
従って、プリント回路基板等を露光する投影光学系においては、構成レンズの総枚数を12枚以上22枚以下にすることが好ましいと考えられる。これにより、プリント回路基板等の露光に必要なレベルの収差補正が可能であって、全長が短いコンパクトな投影光学系を、低い製造コストで得ることができる。
【0053】
<テレセントリック光学系に関する説明>
更に、投影光学系が、物体側及び像側共に、光軸と主光線が平行とみなせるテレセントリック光学系であることが望ましい。
投影露光装置では、設定された任意の倍率で、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することが要求され、特に、倍率誤差が生じることを防止する必要がある。一方、一般に光学系では、焦点深度の範囲内において良好な像を結ぶので、仮に、像側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、倍率誤差が発生する恐れがある。また、物体側がテレセントリック光学系でない場合には、常に、レティクル上のパターンの位置誤差の恐れが生じる。
従って、物体側及び像側共にテレセントリック光学系にすることによって、設定された任意の倍率においても倍率誤差や位置誤差が生じず、レティクル上のパターンの像を基板上に忠実に投影することができる。
【0054】
以上のように、物体側及び像側共にテレセントリック光学系にすることが重要であるが、上記の表2によれば、Y/F4の値が0.1969であり、本実施形態では、
0.05 < Y/F4 < 0.2(条件式C)
の条件を満たす。
仮に、Y/F4の値が0.2以上の場合には、大きな歪曲収差と瞳の球面収差は発生するため、露光領域全体で良好なテレセントリックな状態を保てず、デフォーカスによる歪曲収差発生の恐れがある。一方、仮に、Y/F4の値が0.05以下の場合には、開口絞りから出た主光線を光軸に平行にまで曲げることができず、像側テレセントリックを得ることができない。
【0055】
従って、Y/F4を0.05から0.2の間の値にすることによって、像側をテレセントリックにするために配置された正屈折力の第4レンズ群のパワーを最適化して、露光領域全体で良好なテレセントリックを得ることができる。
【0056】
更に、上記の表2によれば、Y/Lの値が0.1052であり、本実施形態では、
0.06 < Y/L < 0.15(条件式D)
の条件を満たす。
仮に、Y/Lの値が0.15以上の場合には、露光範囲に対して光学系の全長が短かすぎて、歪曲収差や像面湾曲等の収差を適正に補正することができない。一方、仮に、Y/Lの値が0.06以下の場合には、光学系の全長が長すぎるため、光学系の肥大化、製造コストの上昇を招き、延いては、露光装置全体の肥大化、製造コストの上昇の原因になる。
従って、物体から像までの距離を適正な範囲に収める(Y/Lの値を0.06から0.15の間にする)ことによって、良好な収差補正でき、かつコンパクトで低いコストで製造可能な投影光学系を得ることができる。
【0057】
上記の表2によれば、(r3+r4)/(r3−r4)値が0であり、(r5+r6)/(r5−r6)も0である。従って、本実施形態では、物体側及び像側共にテレセントリック光学系にするための条件式である
−1 < (r3+r4)/(r3−r4) < 0.25(条件式E1)
−0.25 < (r5+r6)/(r5−r6) < 1(条件式E2)
を満たす。
【0058】
仮に、(r3+r4)/(r3−r4)の値が0.25以上の場合には、瞳の球面収差が良好に補正されなくなり、露光領域全体で良好な物体側テレセントリック状態を保つことが困難となり、微小な像側のデフォーカスにより歪曲収差を生じる恐れがある。一方、仮に、(r3+r4)/(r3−r4)の値が−1以下の場合には、非点収差の補正が困難となり、露光領域全体で良好な像を得ることが困難になる。
よって、条件式E1を満たすことによって、第1レンズ群の最も物体に近いレンズL11のシェイプファクターを最適化することができる。
【0059】
また、仮に、(r5+r6)/(r5−r6)の値が1以上の場合には、瞳の球面収差が良好に補正されなくなり、露光領域全体で良好な物体側テレセントリック状態を保つことが困難となり、微小な像側のデフォーカスにより歪曲収差を生じる恐れがある。一方、仮に、(r5+r6)/(r5−r6)の値が−0.25以下の場合には、非点収差の補正が困難となり、露光領域全体で良好な像を得ることが困難になる。
よって、条件式E2を満たすことによって、第4レンズ群の最も像に近いレンズL41のシェイプファクターを最適化することができる。
これにより、物体側及び像側共に、露光領域全体で良好なテレセントリック状態を保つことができる。
【0060】
また、図2及び表1に示すように、 第1の実施形態では、光学系を、開口絞り12を挟んで対称形に形成しており、更に、物体と像との間の倍率を−1(等倍)にしているが、このことは、露光領域が比較的大きな場合に、歪曲収差を良好に補正するのに好ましい。
【0061】
以上のように、本発明に係る第1の実施形態により、光学系の収差を良好に補正することが可能となるが、このことは、露光波長が365nm及び405nmの露光光に対する諸収差を示す図5及び図6から明らかである。ここで、図5(a)は、投影光学系10の像面湾曲を示す図であり、図5(b)は投影光学系10の歪曲収差図を示し、図6は投影光学系10のコマ収差図を示す。各図において、露光波長365nmに対する収差を実線で示し、露光波長405nmに対する収差を破線で示す。
なお、図5(a)、(b)の縦軸は物体高を示し、図5(a)のTで示す線は、タンジェンシャル像面の像面湾曲を示し、図5(a)のSで示す線はサジタル像面の像面湾曲を示す。また、図6の縦軸及び横軸のスケールは、5目盛分で50ミクロンを示す。
本発明に係る投影光学系の第1の実施形態においては、投影光学系の収差を良好に補正することが可能であって、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、かつ全長が抑えられたコンパクトな投影光学系を、低いコストで実現することができる。
【0062】
次に、構成レンズの総枚数が22枚の投影光学系10を、投影光学系の第2の実施形態2として図3に示し、構成レンズの総枚数が14枚の投影光学系10を、投影光学系の第3の実施形態3として図4に示す。
【0063】
<投影光学系の第2の実施形態の説明>
図3に示す投影光学系10の第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、物体側から像側の順(つまり、光線が通過する順)に、正屈折力の第1レンズ群L1と、正屈折力の第2レンズ群L2と、開口絞り12と、正屈折力の第3レンズ群L3と、正屈折力の第4レンズ群L4とを備えている。次に、第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点にポイントを絞って、以下に説明する。
【0064】
レンズ構成の概要について、第1の実施形態と第2の実施形態との間で異なる点を説明する。第2レンズ群L2において、開口絞り12に最も近い位置に像側(つまり開口絞り12)に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズ(第1の実施形態:L25、第2の実施形態:レンズL28)と、このレンズよりも第1レンズ群L1側の位置に、3枚の正屈折力のレンズ(第1の実施形態:レンズL22〜L24、第2の実施形態:レンズL25〜L27)とが配置されている点では、第1の実施形態及び第2の実施形態で同一である。しかし、第1実施形態においては、3枚の正屈折力のレンズよりも第1レンズ群L1側の位置に、1枚の負屈折力のレンズ(レンズL21)が配置されているが、第2実施形態においては、負屈折力のレンズを含む4枚のレンズ(レンズL21〜L24)が配置されている点で異なる。
【0065】
同様に、第3レンズ群L3において、開口絞り12に最も近い位置に物体側(つまり開口絞り12)に凹面を向けた負屈折力のメニスカス形状のレンズL31と、このレンズL31よりも第4レンズ群L4側の位置に、3枚の正屈折力のレンズL32〜L34とが配置されている点では、第1の実施形態及び第2の実施形態で同一である。しかし、第1実施形態においては、3枚の正屈折力のレンズよりも第4レンズ群L4側の位置に、1枚の負屈折力のレンズ(レンズL35)が配置されているが、第2実施形態においては、負屈折力のレンズを含む4枚のレンズ(レンズL35〜L38)が配置されている点で異なる。
【0066】
第4レンズ群L4において、第1の実施形態では、1枚の両凸レンズ(レンズL41)のみから構成されているが、第2実施形態においては、1枚の両凸レンズ(レンズL45)の物体側に、凹レンズ及び凸レンズを含む4枚のレンズ(レンズL41〜L44)が配置されている点で異なる。
【0067】
第1レンズ群L1については、第1の実施形態及び第2の実施形態共に、1枚の両凸レンズ(レンズL11)から構成されており同一である。また、第2の実施形態においても、構成レンズとして、貼り合わせレンズを用いていない。以上のような、構成レンズの総枚数が22枚の投影光学系10の諸元の値を下表に示す。
【0068】
【表3】

【0069】
また、本実施形態の投影光学系10の全光学系の倍率をβ、物体側の開口数をNA、投影光学系10の物体面から像面までの距離をL、像の最大像高をY、第2レンズ群L2のレンズL25の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr1、第3レンズ群L3のレンズL31の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr2、第1レンズ群L1の両凸レンズL11の物体側の曲率半径をr3、像側の曲率半径をr4、第4レンズ群L4の両凸レンズL41の像側の曲率半径をr5、物体側の曲率半径をr6、第4レンズ群L4の焦点をF4とすると、下表のような結果が得られる。
【0070】
【表4】

【0071】
上記の表4によれば、全光学系の倍率の絶対値|β|は1.45であり、
0.41 < |β| < 2.4(条件式A)
の条件を満たし、更に好ましい条件である
0.7 < |β| < 2.0
の条件も満たしている。
上記の表4によれば、r1/Lの値が0.0428であり、r2/Lの値が−0.0428であって、
0.025 < r1/L < 0.1(条件式B1)
−0.025 > r2/L > −0.1(条件式B2)
の条件を満たす。
上記の表4によれば、Y/F4の値が0.1443であって、
0.05 < Y/F4 < 0.2(条件式C)
の条件を満たす。
上記の表4によれば、Y/Lの値が0.1169であって、
0.06 < Y/L < 0.15(条件式D)
の条件を満たす
上記の表4によれば、(r3+r4)/(r3−r4)値が0.2247であり、(r5+r6)/(r5−r6)が0であって、
−1 ≦ (r3+r4)/(r3−r4) ≦ 0.25(条件式E1)
−0.25 ≦ (r5+r6)/(r5−r6) ≦ 1(条件式E2)
の条件を満たす。
【0072】
表2及び表4の比較から明らかなように、第2の実施形態では、第1の実施形態に比べてより大きなNA値を取ることができ、よって更に高い解像度が得られる。ここで、第2の実施形態の投影光学系10の像面湾曲を示す図を図7(a)に示し、投影光学系10の歪曲収差図を図7(b)に示し、投影光学系10のコマ収差図を図8は示す。各図において、露光波長365nmに対する収差を実線で示し、露光波長405nmに対する収差を破線で示す。これらの図から、第2の実施形態では、光学系の収差を、第1の実施形態に比べて更に良好に補正することが可能であるこが実証された。
また、光学系の構成レンズの総枚数が22枚を超える場合には、光学系の全長が長くなり、重量も増し、非常に製造コストの高い光学系となる。また、レンズ枚数が多いことで製造誤差の発生も大きく、高いレンズ製造精度を要するため、更なるコストアップの要因となる。また、光学系全体の透過率も低下し、レンズから発熱の問題も生じる。
従って、本発明に係る第2の実施形態においては、第1の実施形態と比べて、更に大きな露光領域や、更に優れた解像度及び光学特性を期待でき、光学系の全長についても、30枚を超えるレンズで構成された従来の光学系に較べて、十分にコンパクトな投影光学系を実現できる。
【0073】
<色消しレンズの説明>
光には波長によって屈折率が異なる性質があるため、複数の波長を含む光線の場合に、波長により屈折率が異なることにより生じる色収差が生じる。この色収差を抑制するため、屈折率と色分散の異なる2枚のレンズ、例えば凸レンズと凹レンズを組み合わせた色消しレンズを用いることが有効である。第1の実施形態であれば、レンズL34及びレンズL35の組み合わせが色消しレンズに該当し、第2の実施形態であれば、レンズ43及びレンズ44の組み合わせが色消しレンズに該当する。
図5〜図8に、露光波長が365nm及び405nmの露光光に対する諸収差図が示されているが、波長による収差の差異が抑制されており、上記の色消しレンズが機能していると考えられる。なお、このような色消しレンズでは、アッベ数の大きな硝子材料を用いることが望ましい。これにより波長帯域の広い紫外線でも良好な色収差の補正が実現できる。
【0074】
<投影光学系の第3の実施形態の説明>
次に、図4に示す投影光学系10の第3の実施形態を説明すると、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、物体側から像側の順(つまり、光線が通過する順)に、正屈折力の第1レンズ群L1と、正屈折力の第2レンズ群L2と、開口絞り12と、正屈折力の第3レンズ群L3と、正屈折力の第4レンズ群L4とを備えている。次に、第3の実施形態において、第1の実施形態と異なる点にポイントを絞って、以下に説明する。
【0075】
レンズ構成の概要について、第1の実施形態と第3の実施形態との間で異なる点を説明する。第4レンズ群L4において、第1の実施形態では、1枚の両凸レンズ(レンズL41)のみから構成されているが、第3実施形態においては、1枚の両凸レンズ(レンズL43)の物体側に、色収差を補正可能なレンズL41〜L42が配置されている点で異なる。第1レンズ群L1、第2レンズ群L2、及び第3レンズ群L3の基本的なレンズ構成については、第1の実施形態と第3の実施形態とでは基本的に同一である(ただし、構成レンズの諸元は異なる)。また、第3の実施形態においても、構成レンズとして、貼り合わせレンズを用いていない。
以上のような、構成レンズの総枚数が14の投影光学系10の諸元の値を下表に示す。
【0076】
【表5】

【0077】
本実施形態の投影光学系10の全光学系の倍率をβ、物体側の開口数をNA、投影光学系10の物体面から像面までの距離をL、像の最大像高をY、第2レンズ群L2のレンズL25の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr1、第3レンズ群L3のレンズL31の開口絞り12に向けた凹面の曲率半径をr2、第1レンズ群L1の両凸レンズL11の物体側の曲率半径をr3、像側の曲率半径をr4、第4レンズ群L4の両凸レンズL41の像側の曲率半径をr5、物体側の曲率半径をr6、第4レンズ群L4の焦点をF4とすると、下表のような結果が得られる。
【0078】
【表6】

【0079】
上記の表6によれば、全光学系の倍率の絶対値|β|は1.2であり、
0.41 < |β| < 2.4(条件式A)
の条件を満たし、更に好ましい条件である
0.7 < |β| < 2.0
の条件も満たしている。
上記の表6によれば、r1/Lの値が0.0447であり、r2/Lの値が−0.0447であって、
0.025 < r1/L < 0.1(条件式B1)
−0.025 > r2/L > −0.1(条件式B2)
の条件を満たす。
上記の表6によれば、Y/F4の値が0.1489であって、
0.05 < Y/F4 < 0.2(条件式C)
の条件を満たす。
上記の表6によれば、Y/Lの値が0.1152であって、
0.06 < Y/L < 0.15(条件式D)
の条件を満たす。
上記の表6によれば、(r3+r4)/(r3−r4)値が0であり、(r5+r6)/(r5−r6)も0であって、
−1 ≦ (r3+r4)/(r3−r4) ≦ 0.25(条件式E1)
−0.25 ≦ (r5+r6)/(r5−r6) ≦ 1(条件式E2)
の条件を満たす。
【0080】
ここで、第3の実施形態の投影光学系10の像面湾曲を示す図を図9(a)に示し、投影光学系10の歪曲収差図を図9(b)に示し、投影光学系10のコマ収差図を図10は示す。これらの図から、第3の実施形態においても、光学系の収差を良好に補正することが可能であるこが実証された。
従って、本発明に係る第3の実施形態においても、プリント回路基板等を製造するのに十分な露光領域、解像度、及び光学特性を備え、かつ全長が抑えられたコンパクトな投影光学系を、低いコストで実現することができ、特に、本実施形態は、収差を補正する性能と、光学系の大きさ(全長)において、程よくバランスのとれた投影光学系であるといえる。
【0081】
(本発明の投影光学系のその他の実施形態の説明)
なお、本発明の投影光学系は、上述の実施形態だけでなく、その他の様々な実施形態が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の投影光学系を備えた投影露光装置の1つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の投影光学系の第1の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の投影光学系の第2の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の投影光学系の第3の実施形態を示す概略図である。
【図5】本発明の投影光学系の第1の実施形態の光学系の(a)像面湾曲を示す図、及び(b)歪曲収差図である。
【図6】本発明の投影光学系の第1の実施形態の光学系のコマ収差図である。
【図7】本発明の投影光学系の第2の実施形態の光学系の(a)像面湾曲を示す図、及び(b)歪曲収差図である。
【図8】本発明の投影光学系の第2の実施形態の光学系のコマ収差図である。
【図9】本発明の投影光学系の第3の実施形態の光学系の(a)像面湾曲を示す図、及び(b)歪曲収差図である。
【図10】本発明の投影光学系の第3の実施形態の光学系のコマ収差図である。
【符号の説明】
【0083】
2 投影露光装置
10 投影光学系
12 開口絞り
20 照明装置
30 レティクル
32 レティクルステージ
40 基板
42 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を用いて、レティクル上のパターンの像を基板上に投影露光する投影光学系であって、
物体側から像側の順に、正屈折力の第1レンズ群と、正屈折力の第2レンズ群と、開口絞りと、正屈折力の第3レンズ群と、正屈折力の第4レンズ群と、を備え、
前記第2レンズ群は、最も前記開口絞りに近い位置に配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズ1と、前記レンズ1よりも前記第1レンズ群側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズとを有し、
前記第3レンズ群は、最も前記開口絞りに近い位置に配置された負屈折力のメニスカス形状のレンズ2と、前記レンズ2よりも前記第4レンズ群側の位置に配置された少なくとも1枚の正屈折力のレンズとを有し、
全光学系の倍率をβとするとき、
0.41 < |β| < 2.4
の条件を満たすことを特徴とする投影光学系。
【請求項2】
光学系の構成レンズとして、貼り合わせレンズを含まないことを特徴とする請求項1に記載の投影光学系。
【請求項3】
前記レンズ1は、前記開口絞りに凹面を向けたメニスカス形状を有し、
前記レンズ2は、前記開口絞りに凹面を向けたメニスカス形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の投影光学系。
【請求項4】
前記投影光学系の物体面から像面までの距離をL、
前記レンズ1の前記開口絞りに向けた凹面の曲率半径をr1、
前記レンズ2の前記開口絞りに向けた凹面の曲率半径をr2としたとき、
r1、r2はそれぞれ、
0.025 < r1/L < 0.1
−0.025 > r2/L > −0.1
の条件を満たすことを特徴とする請求項3に記載の投影光学系。
【請求項5】
光学系の構成レンズの総枚数が、12枚以上22枚以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の投影光学系。
【請求項6】
物体側及び像側共にテレセントリック光学系であることを特徴とする請求項5に記載の投影光学系。
【請求項7】
物体と像との間の倍率が−1であることを特徴とする請求項6に記載の投影光学系。
【請求項8】
前記第4レンズ群の焦点をF4、像の最大像高をYとしたとき、
0.05 < Y/F4 < 0.25
の条件を満たすことを特徴とする請求項6または7に記載の投影光学系。
【請求項9】
前記投影光学系の物体面から像面までの距離をL、像の最大像高をYとしたとき、
0.06 < Y/L < 0.15
の条件を満たすことを特徴とする請求項6から8の何れか1項に記載の投影光学系。
【請求項10】
前記第1レンズ群の最も物体に近い位置の正の屈折力を有する両凸レンズの物体側の曲率半径をr3、像側の曲率半径をr4とし、
前記第4レンズ群の最も像に近い位置の正の屈折力を有する両凸レンズの像側の曲率半径をr5、物体側の曲率半径をr6とする場合において、
−1 < (r3+r4)/(r3−r4) < 0.25
−0.25 < (r5+r6)/(r5−r6) < 1
の条件を満たすことを特徴とする請求項6から9の何れか1項に記載の投影光学系。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−139839(P2010−139839A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316840(P2008−316840)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】