説明

抗炎症剤としての6α,9α−ジフルオロ−17α−[(2−フラニルカルボキシル)オキシ]−11β−ヒドロキシ−16α−メチル−3−オキソ−アンドロスト−1,4−ジエン−17−チオカルボン酸S−フルオロメチルエステル

【課題】アンドロスタン系の新規な抗炎症性および抗アレルギー性化合物、ならびにその調製方法の提供。
【解決手段】式(I)の化合物およびその溶媒和物。また、その化合物を含む組成物、その調製方法、および治療におけるその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロスタン系の新規な抗炎症性および抗アレルギー性化合物、ならびにその調製方法に関する。また、本発明は、その化合物を含む医薬製剤、ならびに治療目的での、特に炎症性およびアレルギー性症状の治療のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗炎症特性を有するグルココルチコイドは公知であり、喘息および鼻炎などの炎症性の障害または疾患の治療に広く用いられている。例えば、米国特許第4335121号には、6α,9α-ジフルオロ-17α-(1-オキソプロポキシ)-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(プロピオン酸フルチカゾンの一般名で知られている)およびその誘導体が開示されている。一般に、グルココルチコイドの使用、特に小児における使用は、副作用の可能性が懸念されるために、一部制限されている。グルココルチコイドで懸念される副作用としては、視床下部−下垂体−副腎(HPA)系の抑制、小児期での骨発育および老年期での骨密度への影響、眼性の合併症(白内障形成および緑内障)、ならびに皮膚萎縮が挙げられる。また、ある特定のグルココルチコイド化合物は複雑な代謝経路を有しており、活性な代謝産物の産生によってそのような化合物の薬力学および薬物動態学は理解し難くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4335121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現代のステロイドは当初紹介されたものよりも安全性が非常に高いが、優れた抗炎症特性、ならびに予測可能な薬物動態学的および薬力学的特性、魅力的な副作用プロフィールおよび簡便な治療処方計画を有する新規な分子を生産するための探索は、今もなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、これらの目的を実質的に満足する新規なグルココルチコイド化合物を同定した。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、非溶媒和型の式(I)の化合物の1型、2型および3型多形のXRPDプロフィールを重ねて示したものである。
【図2】図2は、非溶媒和型の式(I)の化合物の1型、2型、および1型と2型の多形との50:50混合物のXRPDプロフィールを1つに重ねて示したもの、ならびに1型と2型との50:50混合物のプロフィールの時間依存性を示す。
【図3】図3は、非溶媒和型の式(I)の化合物の1型多形のDSCおよびTGAのプロフィールを示す。
【図4】図4は、5箇所の時点で得られる、式(I)の化合物の非溶媒和3型のXRPDプロフィールの温度依存性を示す。
【図5】図5は、図4のXRPD実験についての温度および時間のプロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
したがって、本発明の1つの態様によれば、式(I):
【化1】

の化合物およびその溶媒和物が提供される。
【0008】
式(I)の化合物の化学名は、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルである。
【0009】
以下において、本発明の化合物についての言及は、式(I)の化合物と、その溶媒和物(特に製薬上許容される溶媒和物)との双方を含むものとする。
【0010】
式(I)の化合物は、特に局所投与した際には潜在的に有益な抗炎症性または抗アレルギー性の効果を示し、この効果は、例えば、グルココルチコイド受容体に結合してその受容体を介しての応答を遮断するその能力によって実証されている。したがって、式(I)の化合物は、炎症性および/またはアレルギー性障害の治療に有用である。
【0011】
化合物(I)は、ラットおよびヒトのin vitro系において、非常に効率的な肝代謝を受けて、単一の主要代謝産物として17-βカルボン酸(X)を生じる。この代謝産物は合成されており、in vitro機能的グルココルチコイドアッセイでは、活性が親化合物の1/1000未満であることが実証されている。
【0012】
【化2】

【0013】
この効率的な肝代謝は、ラットにおけるin vivoデータによって反映されており、そこでは、肝血流に近い速度の血漿クリアランスおよび1%未満の経口バイオアベイラビリティが示されており、広範な初回通過代謝と一致する。
【0014】
ヒト肝細胞におけるin vitro代謝研究から、化合物(I)がプロピオン酸フルチカゾンと同一の様式で代謝されること、しかし、(I)から不活性の酸代謝産物への変換はプロピオン酸フルチカゾンの場合の約5倍速く起こることが実証されている。この非常に効率的な肝不活性化は、ヒトにおける全身暴露を最小限に抑えて、安全プロフィールを改善すると期待される。
【0015】
吸入されたステロイドは肺を通じても吸収され、この吸収経路は全身暴露に有意に関与している。したがって、肺での吸収が低下すれば、安全プロフィールが改善されると思われる。式(I)の化合物を用いた研究から、麻酔をかけたブタの肺へ乾燥粉末を送達した後では、式(I)の化合物への暴露がプロピオン酸フルチカゾンの場合よりも有意に低下していることが示された。
【0016】
安全プロフィールが改善されれば、式(I)の化合物は、1日1回投与した場合に所望の抗炎症性効果を示すことができると考えられる。1日1回の投薬は、1日2回の投薬処方計画(プロピオン酸フルチカゾンの場合に通常採用されている)よりも、患者にとって非常に都合が良いと考えられる。
【0017】
本発明の化合物が利用される疾患状態の例としては、湿疹、乾癬、アレルギー性皮膚炎、神経皮膚炎、掻痒症(pruritis)および過敏性反応などの皮膚疾患;喘息(アレルゲン誘発性喘息反応を含む)、鼻炎(枯草熱を含む)、鼻ポリープ、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患および線維症などの鼻、咽喉または肺の炎症性症状;潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸症状;ならびに慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患が挙げられる。
【0018】
また本発明の化合物は、結膜および結膜炎の治療にも使用できる。
【0019】
当業者であれば、本明細書における治療に関する言及が、予防ならびに確立されている症状の治療にも及ぶことが理解されよう。
【0020】
上記で述べたように、式(I)の化合物は、ヒトの医学または獣医学において、特に抗炎症剤および抗アレルギー剤として有用である。
【0021】
したがって、本発明の更なる態様として、ヒトの医学または獣医学、特に炎症性および/またはアレルギー性症状を有する患者の治療において、特には1日1回の治療に使用するための、式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物が提供される。
【0022】
本発明の別の態様によれば、炎症性および/またはアレルギー性症状を有する患者の治療、特に1日1回の治療のための薬剤を製造するための、式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物の使用が提供される。
【0023】
更なるもしくは別の態様によれば、特には1日1回の投与のための、炎症性および/またはアレルギー性症状を有するヒトまたは動物の被験体の治療方法であって、そのヒトまたは動物の被験体に、有効量の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物を投与することを含んでなる前記方法が提供される。
【0024】
本発明の化合物は、あらゆる簡便な方法で投与用に製剤化でき、したがって、本発明はまたその範囲に、式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物を、所望により1種以上の生理学的に許容される希釈剤または担体と混合して含んでなる、医薬組成物も包含する。1日1回の投与に好適な医薬組成物が特に関心が持たれる。
【0025】
更に、上記の成分を混合することを含んでなる、そのような医薬組成物の調製方法が提供される。
【0026】
本発明の化合物は、例えば、経口、頬側、舌下、非経口、局所または直腸投与用、特には局所投与用に製剤化できる。
【0027】
本明細書で用いられる局所投与には、吹送および吸入による投与が含まれる。
種々のタイプの局所投与用製剤の例としては、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、フォーム剤、経皮パッチによる送達のための製剤、粉剤、スプレー、エアロゾル、吸入器もしくは通気器に入れて使用するためのカプセルもしくはカートリッジ、または滴剤(例えば点眼剤もしくは点鼻剤)、噴霧のための溶液剤/懸濁剤、坐剤、ペッサリー剤、保持型浣腸剤、およびチュアブル(chewable)もしくは吸引可能な(suckable)錠剤またはペレット剤(例えばアフタ性潰瘍炎の治療用)、またはリポソーム製剤もしくはマイクロカプセル化製剤が挙げられる。
【0028】
有利なことに、肺への局所投与用の組成物には、乾燥粉末組成物およびスプレー組成物が含まれる。
【0029】
肺への局所送達用の乾燥粉末組成物は、例えば、吸入器または通気器に入れて使用するための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジに入ったものとすることができる。製剤は通常、本発明の化合物の吸入のための粉末混合物および好適な粉末基剤(例えば乳糖またはデンプン)を含む。各カプセルまたはカートリッジは一般に、20μg〜10mgの式(I)の化合物を含み得る。あるいはまた、本発明の化合物は、賦形剤を用いないものとすることもできる。この製剤のパッケージングは、単位用量または複数用量の送達に好適なものとすることができる。複数用量送達の場合、製剤は、前もって計量しておいてもよいし(例えばDiskus(GB 2242134を参照)またはDiskhaler(GB 2178965、2129691および2169265を参照)に記載されているようなもの)、あるいは使用に際して計量して供給してもよい(例えばTurbuhaler(EP 69715を参照)に記載されているようなもの)。単位用量装置の一例はRotahalerである(GB 2064336を参照)。Diskusの吸入装置は、その長さに沿って配置された複数の凹部を有するベースシートで形成される長いストリップと、複数の容器を規定するように密閉するようにしかし剥離可能なように該ストリップに密閉されている覆いシートとを含んでなり、各容器の中には、式(I)の化合物を(好ましくは乳糖と組み合わせて)含有する吸入可能な製剤が収容されている。好ましくは、このストリップは、ロールに巻き取れるのに十分な柔軟性を有する。覆いシートおよびベースシートは、好ましくは、互いに密閉されていない始端部を有し、この始端部の少なくとも一方は巻き取り手段に取り付けられるように構成される。また、好ましくは、ベースシートと覆いシートとの間の密閉シールは、それらの幅全体にわたる。覆いシートは、好ましくは、ベースシートから、ベースシートの第1端部から縦方向に剥離するものとすることができる。
【0030】
非加圧式で、乾燥粉末として口腔を介して肺に局所投与されるように適合された医薬製剤(特に賦形剤を含まないものまたは乳糖もしくはデンプンなどの希釈剤もしくは担体(最も特には乳糖)と共に製剤化されているもの)が、特に関心が持たれる。
【0031】
スプレー組成物は、例えば、水性溶液もしくは懸濁液、または好適な液化噴射剤を用いた加圧パック(例えば計量用量吸入器)から送り出されるエアロゾルとして製剤化できる。吸入に好適なエアロゾル組成物は、懸濁液または溶液とすることができ、通常は、式(I)の化合物と好適な噴射剤とを含むことができ、そうした噴射剤としては、例えばフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンまたはそれらの混合物、特にはヒドロフルオロアルカン、特には1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンまたはそれらの混合物が挙げられる。このエアロゾル組成物は、場合により、界面活性剤(例えば、オレイン酸またはレシチン)および共溶媒(例えば、エタノール)などの当業界で周知である追加の製剤用賦形剤を含むことも可能である。1つの製剤の例は、賦形剤を含有せず、(場合よっては別の治療活性成分と組み合わせた)式(I)の化合物(好ましくは例えば1型などの非溶媒和形態として)と、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンおよびそれらの混合物から選ばれる噴射剤とから本質的になる(例えば、それらのみからなる)ものである。もう1つの製剤の例は、粒子状の式(I)の化合物と、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンおよびそれらの混合物から選ばれる噴射剤と、その噴射剤に可溶性である懸濁剤(例えばWO94/21229に記載されているようなオリゴ乳酸またはその誘導体)とを含んでなる。好ましい噴射剤は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンである。本明細書の別の所で述べているように、式(I)の化合物は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンとは溶媒和物を形成しないと考えられる。加圧製剤は通常、バルブ(例えば計量バルブ)で閉じられている缶(例えばアルミニウム缶)の中で保持され、マウスピースを備えたアクチュエーターに取り付けられる。
【0032】
加圧エアロゾル製剤は、好ましくは、粒子状の薬剤と、噴射剤と、追加水(water addition)(すなわち始めの製剤用の水に加えて添加される水)を含む安定化剤とを含んでなるものではない。加圧エアロゾル製剤はまた、好ましくは、粒子状の薬剤と、噴射剤と、アミノ酸、その誘導体またはそれらの混合物を含む安定化剤とを含んでなるものでもない。
【0033】
吸入により投与される薬剤は、望ましくは、粒径が制御されているものである。気管支系への吸入の場合の最適な粒径は、一般に1〜10μm、好ましくは2〜5μmである。大きさが20μmを超える粒子は、吸入されて小気道(small airway)に到達するには概して大きすぎる。これらの粒径を達成するために、生産された式(I)の化合物の粒子は、例えば微粉状化(micronisation)などの慣用の手段により粒径を小さくすることができる。所望の画分は、空気分級または篩によりにより分別できる。好ましくは、粒子は結晶性であり、例えば、超音波照射の存在下で、連続フローセル内で、薬剤としての式(I)の化合物の流動溶液(液体溶剤中)をその薬剤に対する流動液状抗溶剤と混合することを含んでなる方法(例えば国際特許出願PCT/GB99/04368に記載されているような方法)、または、その物質の溶液(液状溶剤中)の細流およびその物質に対する液状抗溶剤の細流を、わずかに接触する程度に軸上排出口(axial outlet port)を有する円柱状混合チャンバーに通して、それによってそれらの細流がボルテックスの形成により最終的には混合されてその物質の結晶粒子の沈殿が起こるようにすることを含んでなる方法(例えば国際特許出願PCT/GB00/04327に記載されているような方法)により調製される。乳糖のような賦形剤が用いられる場合は、一般にその賦形剤の粒径は、本発明内にある吸入薬剤よりもずっと大きい。賦形剤が乳糖である場合、それは典型的には粉砕乳糖として存在させ、その場合、乳糖粒子の85%以下が60〜90μmのMMDを有し、かつ15%以上が15μm未満のMMDを有する。
【0034】
鼻への局所投与用の製剤(例えば鼻炎の治療のため)としては、加圧エアロゾル製剤および加圧ポンプにより鼻へ投与される水性製剤が挙げられる。非加圧式で、鼻腔へ局所投与されるように適合された製剤は、特に関心が持たれる。この目的のために、製剤は、好ましくは希釈剤または担体として水を含む。肺または鼻への投与のための水性製剤は、緩衝化剤、張性改変剤などの慣用の賦形剤と共に提供することができる。水性製剤はまた、噴霧により鼻へ投与することもできる。
【0035】
他の可能性のある提示としては、次のものが挙げられる:
軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤は、例えば、水性または油性の基剤を用い、好適な増粘剤および/またはゲル化剤および/または溶剤を添加して製剤化できる。
したがって、そのような基剤としては、例えば、水および/または油(流動パラフィンまたは落花生油もしくはヒマシ油のような植物油など)または溶剤(ポリエチレングリコールなど)が挙げられうる。基剤の性質によって使用可能な増粘剤およびゲル化剤としては、ソフトパラフィン、ステアリン酸アルミニウム、セトステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、羊毛脂、蜜ロウ、カルボキシポリメチレンおよびセルロース誘導体、ならびに/またはモノステアリン酸グリセリル、ならびに/または非イオン性乳化剤が挙げられる。
【0036】
ローション剤は、水性または油性の基剤を用いて製剤化でき、通常は、1種以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤または増粘剤も含む。
【0037】
外部適用のための粉剤は、例えばタルク、乳糖またはデンプンなどの任意の好適な粉剤用基剤を利用して形成できる。滴剤は、水性または非水性の基剤を用いて製剤化でき、また1種以上の分散剤、可溶化剤、懸濁剤または防腐剤も含み得る。
【0038】
適切である場合には、本発明の製剤は、好適な緩衝化剤の添加により緩衝化してもよい。
【0039】
本発明の局所用組成物における式(I)の活性化合物の割合は、調製しようとする製剤のタイプそのものに応じて決まるが、通常は0.001〜10重量%の範囲内である。しかし、一般に、ほとんどのタイプの製剤では、有利なことに、用いられる割合は0.005〜1%、好ましくは0.01〜0.5%の範囲内である。しかし、吸入または吹送のための粉剤では、用いられる割合は通常、0.1〜5%の範囲内である。
【0040】
エアロゾル製剤は、好ましくは、エアロゾルのそれぞれの計量された用量すなわち「ひと吹き」が1μg〜2000μg、例えば20μg〜2000μg、好ましくは約20μg〜500μgの式(I)の化合物を含むように前もって決められている。投与は、1日1回または1日数回(例えば2、3、4または8回)を、例えば各回1、2もしくは3用量で行うことができる。好ましくは、式(I)の化合物は、1日1回または2回、より好ましくは1日1回送達される。エアロゾルでの総日用量は、典型的には10μg〜10mg、例えば100μg〜10mg、好ましくは200μg〜2000μgの範囲内である。
【0041】
局所用製剤は、罹患領域に1日当たり1回以上の適用により投与できる。皮膚領域には閉鎖包帯が有利に使用できる。連続的または長期にわたる送達は、粘着性リザバーシステム(reservoir system)により達成できる。
【0042】
内部投与の場合、本発明の化合物は、例えば、慣用の方法で経口、非経口または直腸投与用に製剤化できる。経口投与用の製剤としては、典型的には結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、防腐剤、緩衝塩、香味剤、着色剤および/または甘味剤などの慣用の賦形剤を適宜含むシロップ剤、エリキシル剤、粉剤、顆粒剤、錠剤およびカプセル剤が挙げられる。しかし、以下に記載するような単位剤形が好ましい。
【0043】
内部投与のための製剤の好ましい形態は、単位剤形、すなわち錠剤およびカプセル剤である。そのような単位剤形は、0.1mg〜20mg、好ましくは2.5〜10mgの本発明の化合物を含む。
【0044】
本発明の化合物は、通常、全身副腎皮質治療が指示される場合には、内部投与により供与できる。
【0045】
概して、製剤は、内部投与の場合、関わる製剤のタイプに応じて、0.05〜10%の活性成分を含み得る。日用量は、治療しようとする症状および所望の治療期間に応じて0.1mg〜60mg、例えば5〜30mgで様々に変えることができる。
【0046】
叙放性または腸溶性の製剤は、特に炎症性腸障害の治療に有利でありうる。
【0047】
本発明の医薬組成物はまた、別の治療活性物質、例えばβ2-アドレナリン受容体(adrenoreceptor)アゴニスト、抗ヒスタミン剤または抗アレルギー剤と組み合わせても使用できる。したがって、本発明は、更なる態様において、式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物と別の治療活性物質(例えばβ2-アドレナリン受容体アゴニスト、抗ヒスタミン剤または抗アレルギー剤)とを含んでなる組合せを提供する。
【0048】
β2-アドレナリン受容体アゴニストの例としては、サルメテロール(例えばラセミ体またはR-エナンチオマーなどの単一エナンチオマーとして)、サルブタモール、フォルモテロール、サルメファモール(salmefamol)、フェノテロールまたはテルブタリン、ならびにそれらの塩、例えばサルメテロールのキシナホ酸塩、サルブタモールの硫酸塩もしくは遊離塩基またはフォルモテロールのフマル酸塩が挙げられる。抗ヒスタミンの例としては、メタピリレンまたはロラタジンが挙げられる。
【0049】
他の好適な組合せとしては、例えば、他の抗炎症剤、例えばNSAID(例えばクロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、PDE4インヒビター、ロイコトリエンアンタゴニスト、iNOSインヒビター、トリプターゼおよびエラスターゼインヒビター、β-2インテグリンアンタゴニストならびにアデノシン2aアゴニスト)または抗感染剤(例えば抗生物質、抗ウイルス剤)が挙げられる。
【0050】
特に関心が持たれるのは、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)インヒビターと組み合わせた式(I)の化合物の使用である。本発明のこの態様において有用なPDE4特異的インヒビターは、PDE4酵素を抑制することが判っているか、またはPDE4インヒビターとして作用することが判明しており、かつPDE4のみに対するインヒビターである(PDE4だけでなくPDEファミリーの他のメンバーも抑制する化合物ではない)任意の化合物とすることができる。一般に、約0.1以上のIC50比(高い親和性でロリプラムに結合するPDE4触媒形態についてのIC50を、低い親和性でロリプラムに結合する形態についてのIC50で除算したもの)を有するPDE4インヒビターを使用することが好ましい。この開示の目的のために、低い親和性でRおよびSロリプラムに結合するcAMP触媒部位を「低親和性」結合部位(LPDE4)と呼び、高い親和性でロリプラムに結合するこの触媒部位の他の形態を「高親和性」結合部位(HPDE4)と名づける。この「HPDE4」という用語は、ヒトPDE4を示すのに用いられる「hPDE4」という用語とは混同してはならない。最初の実験は、[3H]-ロリプラム結合アッセイを確立し確認するために行った。この作業の詳細は下記で詳細に記載されている結合アッセイに示されている。
【0051】
本発明での使用に好ましいPDE4インヒビターは、有益な治療率を有する化合物、すなわち選択的にcAMP触媒活性を抑制することにより(この場合、その酵素は低い親和性でロリプラムに結合する形態である)、高い親和性でロリプラムに結合する形態の抑制と明らかに関連する副作用を低減する化合物である。この状態を言い換えると、好ましい化合物とは、約0.1以上のIC50比(高い親和性でロリプラムに結合するPDE4触媒形態についてのIC50を低い親和性でロリプラムに結合する形態についてのIC50で除算したもの)を有するものである、ということになる。
【0052】
この基準を更に厳密にすると、PDE4インヒビターは約0.1以上のIC50比を有する。但し、この比は、高い親和性でロリプラムに結合するPDE4の形態への1nMの[3H]R-ロリプラムの結合との競合についてのIC50値の、1μMの[3H]-cAMPを基質として用いた場合に低い親和性でロリプラムに結合する形態のPDE4触媒活性の抑制についてのIC50値に対する割合である、ということになる。
【0053】
有用なPDE4インヒビターの例は次のとおりである:
(R)-(+)-1-(4-ブロモベンジル)-4-[(3-シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-2-ピロリドン; (R)-(+)-1-(4-ブロモベンジル)-4-[(3-シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]-2-ピロリドン;
3-(シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)-1-(4-N’-[N2-シアノ-S-メチル-イソチオウレイド]ベンジル)-2-ピロリドン;
cis 4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸;
cis-[4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール];
(R)-(+)-エチル[4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)ピロリジン-2-イリデン]アセテート;および
(S)-(-)-エチル[4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)ピロリジン-2-イリデン]アセテート。
【0054】
最も好ましいものは、0.5を超えるIC50比を有するPDE4インヒビターであり、特には1.0を超える比を有する化合物である。好ましい化合物は、cis 4-シアノ-4-(3-シクロペンチルオキシ-4-メトキシフェニル)シクロヘキサン-1-カルボン酸、2-カルボメトキシ-4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オンおよびcis-[4-シアノ-4-(3-シクロプロピルメトキシ-4-ジフルオロメトキシフェニル)シクロヘキサン-1-オール]である。
これらは、選択的に低親和性結合部位に結合し、かつ0.1以上のIC50比を有する化合物の例である。
【0055】
関心が持たれる他の化合物としては次のものが挙げられる:米国特許第5,552,438号(1996年9月3日発行)(この特許およびそれが開示する化合物は参照により完全に本明細書に組み入れられる)に述べられている化合物。米国特許第5,552,438号に開示されている特に関心が持たれる化合物は、cis-4-シアノ-4-[3-(シクロペンチルオキシ)-4-メトキシフェニル]シクロヘキサン-1-カルボン酸[シロマラスト(cilomalast)としても知られる]およびその塩、エステル、プロドラッグまたは物理的形態;AstraのAWD-12-281(Hofgen, Nら, 15th EFMC Int Symp Med Chem (9月6〜10日, Edinburgh) 1998, Abst. P.98);NCS-613と命名された9-ベンジルアデニン誘導体(INSERM);Chiroscience and Schering-PloughのD-4418;C1-1018として識別されているベンゾジアゼピンPDE4インヒビター(PD-168787;Parke-Davis/Warner-Lambert);ベンゾジオキソール誘導体(協和発酵, WO 9916766に開示されている);NappのV-11294A(Landells, L.J.ら, Eur Resp J [Annu Cong Eur Resp Soc (9月19〜23日, Geneva) 1998] 1998, 12 (Suppl. 28): Abst P2393);ロフルミラスト(CAS参照No. 162401-32-3);およびByk-Guldenのファラジノン(phalazinone)(WO 9947505):またはT-440として識別されている化合物(田辺製薬;Fuji, K.ら, J Pharmacol Exp Ther, 1998, 284(1): 162)である。
【0056】
ホスホジエステラーゼおよびロリプラム結合アッセイ
アッセイ方法1A
単離したヒト単球のPDE4およびhrPDE(ヒト組換え型PDE4)は、主に低親和性形態として存在することが明らかになった。したがって、この低親和性形態のPDE4に対する試験化合物の活性は、1μM [3H]cAMPを基質として用いるPDE4触媒活性についての標準的アッセイ(Torphyら, J. of Biol. Chem., 第267巻, No.3 pp1798-1804, 1992)を用いて評価できる。
【0057】
ラット脳の高速上清(high speed supernatant)をタンパク質供給源として用い、[3H]-ロリプラムの2つのエナンチオマーを25.6Ci/mmolの比活性となるように調製した。標準的アッセイの条件を公表されている手順に変更を加えて、PDE4アッセイの条件と同一にしたが、但し、cAMPの最後の部分は次のようにした:50mM Tris HCl(pH 7.5)、5mM MgCl2, 50μM 5’-AMPおよび1nMの[3H]-ロリプラム(Torphyら, J. of Biol. Chem., 第267巻, No.3 pp1798-1804, 1992)。アッセイは、30℃で1時間行った。反応を停止させ、結合したリガンドをBrandelセルハーベスター(cell harvester)を用いて遊離のリガンドから分離した。高親和性結合部位についての競合は、[3H]-cAMPを存在させない以外は低親和性PDE活性の測定で用いたのと同じ条件下で評価した。
【0058】
アッセイ方法1B
ホスホジエステラーゼ活性の測定
PDE活性は、供給元(Amersham Life Sciences)により記載されているような[3H]cAMP SPAまたは[3H]cGMP SPA酵素アッセイを用いてアッセイした。反応は、96ウェルプレートで、室温にて、次のものを(最終濃度で)含有する0.1mlの反応緩衝液中で行った:50mM Tris-HCl、pH 7.5、8.3mM MgCl2、1.7mM EGTA、[3H]cAMPまたは[3H]cGMP(約2000dpm/pmol)、酵素および各種濃度のインヒビター。アッセイを1時間進行させ、硫酸亜鉛の存在下で50μlのSPAケイ酸イットリウムビーズを添加することにより停止させた。プレートを振盪し、室温で20分間静置した。放射性標識した生成物の形成を、シンチレーションスペクトロメトリーにより評価した。
【0059】
[3H]R-ロリプラム結合アッセイ
[3H]R-ロリプラム結合アッセイは、Schneiderおよび共同研究者らの方法に変更を加えた方法により行った(Nicholsonら, Trends Pharmacol. Sci., 第12巻, pp.19-27(1991)およびMcHaleら, Mol. Pharmacol., 第39巻, 109-113 (1991)を参照)。R-ロリプラムは、PDE4の触媒部位に結合する(Torphyら, Mol. Pharmacol., 第39巻, 376-384 (1991)を参照)。したがって、[3H]R-ロリプラム結合についての競合により、非標識競合物のPDE4インヒビターとしての強度の独立した確認が提供される。このアッセイは、次のものを(最終濃度で)含有する0.5μlの緩衝液中で、30℃で1時間行った:50mM Tris-HCl、pH 7.5、5mM MgCl2、0.05%のウシ血清アルブミン、2nM [3H]R-ロリプラム(5.7×104dpm/pmol)および各種濃度の非放射性標識インヒビター。反応を、2.5mlの氷冷反応緩衝液([3H]-R-ロリプラムは含まず)の添加により停止させ、0.3%のポリエチレンイミンに浸漬しておいたWhatman GF/B濾紙で迅速に減圧濾過した(Brandelセルハーベスター)。この濾紙を更に7.5mlの冷緩衝液で洗浄し、乾燥し、液体シンチレーションスペクトロメトリーによりカウントした。
【0060】
したがって、本発明は、更なる態様において、式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物とPDE4インヒビターとを含んでなる組合せを提供する。
【0061】
上記で述べた組合せは、都合が良いことに、医薬製剤の形態で使用するためのものとすることができ、したがって、上記で規定したような組合せを生理学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる医薬製剤が、本発明の更なる態様として提示される。
【0062】
そのような組合せの個々の化合物は、別個のまたは合わせた医薬製剤で逐次または同時に投与できる。
【0063】
既知の治療剤の適切な用量は、当業者であれば容易に理解される。
【0064】
驚くべきことに、式(I)の化合物は、一般に用いられる有機溶剤との溶媒和物を形成するという、重要な性質を示した。そのような溶媒和物は、本質的に化学量論的(例えば式(I)の化合物と溶剤との比率が1:1に近い)であり、例えば本発明者らの分析によれば、0.95〜1.05:1の範囲であることが判明した。
例えば、本発明者らは、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチル-2-ピロリドン、イソプロパノールおよびメチルエチルケトンなどの溶剤との溶媒和物を調製した。
しかし、式(I)の化合物の溶媒和は予測不可能である。何故ならば、本発明者らは、それはイソプロパノールとの溶媒和物は形成するが、エタノールまたはメタノールとの溶媒和物は形成しないと思われることを見出したからである。更に、それは1,1,1,2-テトラフルオロエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)または水との溶媒和物も形成しないと思われる。しかし、多くの有機溶剤には毒性があるために、式(I)の化合物が非溶媒和形態で生産できるようにするためには、特別な最終段階の処理条件(後記で述べる)を開発することが必要であった。したがって、本発明の別の態様によれば、非溶媒和形態の式(I)の化合物が提供される。
【0065】
驚くべきことに、非溶媒和形態の式(I)の化合物は多数の多形形態で存在し得ることも見い出した。具体的に述べると、本発明者らは、X線粉末回析(XRPD)により区別できる多形形態を同定し、それらを1型、2型および3型と命名した。3型は、2型の不安定でマイナーな多形改変型であると思われる。広義では、これらの形態はそれらのXRPDプロフィールにおいて、次のように特徴付けられる:
1型:18.9°2θ付近のピーク
2型:18.4°および21.5°2θ付近のピーク
3型:18.6°および19.2°2θ付近のピーク
【0066】
21〜23°2θの範囲内で、3型は単一のピークを示し、一方2型は1対のピークを示す。7°2θのピークは全ての場合に存在するが、2型および3型では1型の場合よりもずっと高い強度で現れる。
【0067】
これらの多形のXRPDパターンを図1に重ねて示す。周囲温度における水性スラリー中での経時的な2型から1型への変換を図2に示す。2型から1型への変換では、18.4°2θ付近での2型のピーク特性の喪失(Bで示す)、7°2θ付近でのピーク強度の顕著な低下(Aで示す)、および18.9°2θ付近での1型のピーク特性の様相(Cで示す)が特に注目される。
【0068】
3型の温度依存性を図4に示す。温度は図5に示すプロフィールに従って様々に変化させた。図4から、3型は、まず30〜170℃の温度範囲にわたり2型へと変換され、次に170〜230℃の温度範囲にわたり1型へと変換されることが判る。
3型から2型への変換では、21〜23°2θの範囲にある1つのピークが、同じ範囲内で2つのピークへと分かれること、および18.6°2θ付近にあるピークが左側に向かって18.4°2θ付近へとシフトすることが特に注目される。2型から1型への変換では、上記のパラグラフで述べたものと同様の変化が見られうる。
【0069】
1型の示差走査熱量測定(DSC)および熱重量測定分析(TGA)のプロフィールを図3に示す。これらのプロフィールは、DSCでの吸熱事象およびTGAにおける化学分解に相当する280〜300℃付近(典型的には298℃付近)での転移を特徴とする。2型および3型のDSCプロフィールは、実施された実験条件下ではそれほど異なってはおらず、したがって、DSCは3種の形態の間での区別に好適な技法でない。図3において、約298℃以下でTGAおよびDSCプロフィールにおいて活性が見られないことは、その物質が通常の操作温度において良好な物理的および化学的安定性を示すことを意味する。
【0070】
実施例に示すように、1型および3型の溶解エンタルピーを特定の有機溶剤中で測定したところ、3型から1型への転移エンタルピーは5.1〜6.7KJ/molであると評価された。
【0071】
したがって、本発明者らは式(I)の化合物の非溶媒和1型を好む。何故ならば、この形態は、周囲温度において熱力学的に最も安定であると考えられ、また、望ましくない吸湿を最も受けにくいと考えられるからである(実施例のセクションの結果を参照)。しかし、他の条件下では、2型(または3型)が好ましい場合もある。
【0072】
式(I)の化合物を溶媒和形態で使用することは好ましくないが、それにもかかわらず驚くべきことに、本発明者らは、特定の溶媒和物の形態が特に魅力的な物理化学的特性を有しており、そのために、式(I)の化合物の非溶媒和形態の調製(例えば最終ステップとして溶剤を除去することによる)における中間体として有用なものになることを見出した。例えば、本発明者らは、特定の化学量論的な溶媒和物が、結晶性の高い形態の固体として単離できることを見出した。したがって、本発明者らは本発明の1つの態様として、次のものも提供する:
メチルエチルケトン溶媒和物としての式(I)の化合物;
イソプロパノール溶媒和物としての式(I)の化合物;テトラヒドロフラン溶媒和物としての式(I)の化合物;
アセトン溶媒和物としての式(I)の化合物。
【0073】
特に、本発明者らは上記の溶媒和物を結晶形態の固体として提供する。これらの溶媒和物の更なる特定の利点は、この溶媒和物を(例えば加熱により)脱溶媒和することにより、非溶媒和形態が好ましい1型として形成される、という事実にある。上記の溶媒和物は、比較的毒性が低く、工業的規模の製造における使用に好適である。DMF溶媒和物としての式(I)の化合物(結晶形態の固体としても単離できる)はまた、非溶媒和1型への更なる処理に使用される、という点でも関心が持たれる。
【0074】
式(I)の化合物およびその溶媒和物は、以下に記載する方法により調製でき、その方法も本発明の更なる態様を構成するものである。
【0075】
本発明の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法は、式(II):
【化3】

のチオ酸またはその塩のアルキル化を含んでなる。
【0076】
この方法において、式(II)の化合物は、標準的な条件下で、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物、例えば適当なフルオロメチルハライドと反応させることができる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。
【0077】
後記で述べるように、好ましくは、式(II)の化合物は、塩として、特にジイソプロピルエチルアミンとの塩として用いられる。
【0078】
1つの好ましい式(I)の化合物の調製方法では、式(II)の化合物またはその塩を、ブロモフルオロメタンで、場合によっては相間移動触媒の存在下で処理する。好ましい溶媒は、(場合によっては水の存在下での)酢酸メチル、更に好ましくは酢酸エチルである。水を存在させると、出発物質および生成物の双方の可溶性が向上し、相間移動触媒を使用すると、反応速度が上がる。使用可能な相間移動触媒の例としては(限定するものではないが)、臭化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、塩化メチルトリブチルアンモニウム、および塩化メチルトリオクチルアンモニウムが挙げられる。THFもまた、この反応の溶剤として成功裏に用いられており、この場合もまた、相間移動触媒を存在させることにより有意により速い反応速度がもたらされる。好ましくは、有機相中に存在する生成物をまず水性酸(例えば希塩酸)で洗浄してアミン化合物(例えばトリエチルアミンおよびジイソプロピルエチルアミン)を除去し、次に水性塩基(例えば重炭酸ナトリウム)で洗浄して、未反応の式(II)の前駆体化合物を除去する。後記で述べるように、こうして酢酸エチル溶液として生産された式(I)の化合物を希釈し、トルエンを添加すれば、非溶媒和1型が結晶化する。
【0079】
式(II)の化合物は、式(III):
【化4】

の対応する17α-ヒドロキシル誘導体から、例えばG.H. Phillippsら, (1994) Journal of Medicinal Chemistry, 37, 3717-3729に記載されている方法を用いて調製できる。例えば、このステップは、典型的には、エステル化を行うのに好適な試薬の添加を含み、例えばその試薬としては、2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)が挙げられる(トリエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、式(III)の化合物に対して少なくとも2倍モル量で用いられる)。もう1モルの2-フロイルクロリドを式(III)の化合物内のチオ酸部分と反応させ、例えばアミン(ジエチルアミンなど)との反応により除去する必要がある。
【0080】
しかし、この方法は、得られる式(II)の化合物が、副生成物2-フロイルジエチルアミドの混入から容易に精製されない、という欠点を負う。したがって、本発明者らは、この変換を行うための幾つかの改良方法を発明した。
【0081】
第1のそのような改良方法において、本発明者らはより極性の高いアミン(例えばジエタノールアミン)を使用すれば、それだけ水溶性が高い副生成物(この場合は2-フロイルジエタノールアミド)が得られ、この副生成物は水による洗浄で効率的に除去できるため、式(II)の化合物またはその塩が高純度で生産できるようになることを見出した。
【0082】
したがって、本発明のこの態様によれば、本発明者らは、式(II)の化合物の調製方法であって、
(a)式(III)の化合物と2-フロン酸の活性化誘導体とを、式(III)の化合物1モル当たり少なくとも2モルの該活性化誘導体の量で反応させて、式(IIA):
【化5】

の化合物を得て;そして
(b)ステップ(a)の生成物を、水溶性2-フロイルアミドを形成できる有機性第一級または第二級アミン塩基と反応させることにより、式(IIA)の化合物からイオウに結合している2-フロイル成分を除去する
ことを含んでなる、前記方法を提供する。
【0083】
この方法の2つの特に都合のよい実施形態において、また本発明者らは、
(c1)ステップ(b)の生成物が実質的に水非混和性の有機溶剤に溶解する場合は、ステップ(b)で得られるアミド副生成物を水性洗浄液で洗い出すことにより式(II)の化合物を精製するか;または
(c2)ステップ(b)の生成物が水混和性溶剤に溶解する場合は、ステップ(b)の生成物を水性媒体で処理して、純粋な式(II)の化合物またはその塩を沈殿させるようにすることにより、式(II)の化合物を精製する
ことのいずれかを含んでなる、効率的な最終生成物の精製方法を提供する。
【0084】
ステップ(a)において、好ましくは、2-フロン酸の活性化誘導体は、2-フロン酸の活性化エステルであってよく、更に好ましくは2-フロイルハライドであり、特には2-フロイルクロリドである。この反応の好適な溶剤は、(ステップ(c1)に従う場合は)酢酸エチルもしくは酢酸メチル(好ましくは酢酸メチル)、または(ステップ(c2)に従う場合は)アセトンである。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。ステップ(b)において、好ましくは、この有機塩基はジエタノールアミンである。この塩基は、メタノールなどの溶剤に好適に溶解させてもよい。一般に、ステップ(a)および(b)は、低温(例えば0〜5℃)で行われる。ステップ(c1)において、水性洗浄液は水とすることができるが、ブラインを用いるとより高い収率が達成されるので好ましい。ステップ(c)において、水性媒体は、例えば希水性酸(例えば希HCl)である。
【0085】
本発明の1つの関連する態様によれば、本発明者らは式(II)の化合物のもう1つの調製方法であって、
(a)式(III)の化合物と2-フロン酸の活性化誘導体とを、式(III)の化合物1モル当たり少なくとも2モルの活性化誘導体の量で反応させて、式(IIA)の化合物を得て;そして
(b)ステップ(a)の生成物を、更にもう1モルの式(III)の化合物と反応させることにより、式(IIA)の化合物からイオウに結合している2-フロイル成分を除去して、2モルの式(II)の化合物を得ること
を含んでなる前記方法を提供する。
【0086】
ステップ(a)において、2-フロン酸の活性化誘導体は、2-フロン酸の活性化エステルとすることができるが、更に好ましくは2-フロイルハライドであり、特には2-フロイルクロリドである。このステップの好ましい溶剤はアセトンである。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。ステップ(b)において、好適な溶剤はDMFまたはジメチルアセトアミドである。通常、トリエチルアミンなどの有機塩基を存在させる。一般に、ステップ(a)および(b)は、低温(例えば0〜5℃)で行われる。生成物は、酸で処理して水で洗浄することにより単離できる。
【0087】
この上記の方法は、過剰モルのフロイル成分が更に1モルの式(II)の化合物との反応により取り込まれて更に1モルの式(II)の化合物を形成するので、フロイルアミド副生成物を生産しない(つまり、特に環境上の利点を付与する)、という点で非常に有効である。
【0088】
ここで記載した2つの方法における式(III)の化合物から式(II)の化合物への変換の更なる一般的条件は、当業者には周知である。
【0089】
しかし、好ましい条件セットによれば、本発明者らは、式(II)の化合物が有利にも、固体の結晶塩の形態で単離できることを見出した。この好ましい塩は、トリエチルアミン、2,4,6-トリメチルピリジン、ジイソプロピルエチルアミンまたはN-エチルピペリジンなどの塩基と形成された塩である。このような式(II)の化合物の塩形態は、遊離のチオ酸よりも更に安定であり、更に容易に濾過および乾燥され、更に高純度で単離できる。最も好ましい塩は、ジイソプロピルエチルアミンと形成される塩である。トリエチルアミン塩もまた、関心が持たれる。
【0090】
式(III)の化合物は、GB 2088877Bに記載されている手順に従って調製できる。
【0091】
また、式(III)の化合物は、次のステップを含む方法によっても調製できる:
【化6】

【0092】
ステップ(a)には、式(V)の化合物を含有する溶液の酸化が含まれる。好ましくは、ステップ(a)は、メタノール、水、テトラヒドロフラン、ジオキサン、またはジエチレングリコールジメチルエーテルを含む溶剤の存在下で行われる。収量およびスループットを増大させるには、好ましい溶剤はメタノール、水またはテトラヒドロフランであり、更に好ましくは水またはテトラヒドロフランであり、特には溶剤としては水およびテトラヒドロフランである。ジオキサンおよびジエチレングリコールジメチルエーテルもまた好ましい溶剤であり、これらは場合によっては(および好ましくは)水と共に用いることができる。好ましくは、溶剤は、出発物質の量(1重量部)に対して3〜10倍容量、更に好ましくは4〜6倍容量、特には5倍容量の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、出発物質の量に対して1〜9モル当量の量で存在する。例えば、50%w/wの過ヨウ素酸の水溶液が用いられる場合、酸化剤は、出発物質の量(1重量部)に対して1.1〜10重量部、更に好ましくは1.1〜3重量部、特には1.3重量部の量で存在させることができる。好ましくは、この酸化ステップには、化学的酸化剤の使用が含まれる。更に好ましくは、その酸化剤は過ヨウ素酸もしくはヨウ素酸またはそれらの塩である。最も好ましくは、その酸化剤は過ヨウ素酸または過ヨウ素酸ナトリウムであり、特には過ヨウ素酸である。あるいはまた(または加えて)、酸化ステップには、任意の好適な酸化反応、例えば空気および/または酸素を利用する酸化反応が含まれ得ることも理解されよう。この酸化反応が空気および/または酸素を利用する場合、その反応に用いられる溶剤は好ましくはメタノールである。好ましくは、ステップ(a)には、試薬を室温またはそれより少し暖かい温度(すなわち約25℃)で、例えば2時間インキュベートすることが含まれる。式(IV)の化合物は、抗溶剤の添加により反応混合物から再結晶化させることにより単離できる。式(IV)の化合物にとって好適な抗溶剤は水である。驚くべきことに、本発明者らは、抗溶剤(例えば水)の添加により式(IV)の化合物を沈殿させる条件を制御することが非常に望ましいことを見出した。再結晶化が冷水(例えば0〜5℃の温度の水/氷混合物)を用いて行われる場合は、より良好な抗溶剤特性が期待できると思われるが、本発明者らは、生じる結晶性生成物は非常に量が多く、軟質ゲルに似ており、非常に濾過しにくいことを見出した。理論に制約されるものではないが、本発明者らは、この低密度の生成物は結晶格子の中に多量の溶媒和した溶剤を含んでいると考える。これに対して約10℃以上の条件(例えば約周囲温度)が用いられる場合には、非常に容易に濾過される砂のようなコンシステンシーの顆粒状生成物が生産される。これらの条件下で、結晶化は、典型的には約1時間後に開始し、典型的には数時間以内(例えば2時間)に完了させる。理論に制約されるものではないが、本発明者らは、この顆粒状生成物は溶媒和された溶剤を結晶格子内にほとんどまたは全く含んでいないと考える。
【0093】
ステップ(b)は、典型的には、例えば好適な溶剤(例えばジメチルホルムアミド)の存在下で好適なカップリング剤(例えばカルボニルジイミダゾール(CDI))と共に硫化水素ガスを用いてカルボン酸をチオカルボン酸へと変換するのに好適な試薬を添加することを含む。
【0094】
式(II)の化合物のもう1つの調製方法は、例えば好適な溶剤(例えばDMF)の存在下で好適なカップリング剤(例えばCDI)と共に硫化水素ガスを用いてカルボン酸をチオカルボン酸に変換するのに好適な試薬で式(X)の化合物を処理することを含んでなる。式(X)の化合物は、本明細書中に記載されているのと同様の方法により調製できる。
【0095】
式(I)の化合物またはその溶媒和物のもう1つの調製方法は、式(VI):
【化7】

の化合物をフッ素供給源と反応させることを含んでなる。
【0096】
好適なフッ素の供給源の例としては、フッ素(例えばフッ化ナトリウム)が挙げられ、更に好ましくはHFである。好ましい試薬は水性HFである。THFまたはDMFなどの溶剤が使用可能である。
【0097】
式(VI)の化合物は、
(a)式(VII):
【化8】

の化合物またはその塩をアルキル化するか;
(b)式(VIII):
【化9】

の化合物をエポキシド形成試薬と反応させるか;あるいは
(c)式(IX):
【化10】

の化合物をエステル化する
ことを含んでなる方法により調製できる。
【0098】
(a)の方法では、式(II)の化合物から式(I)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の条件を用い得る。典型的には、標準的な条件下で、式(VII)の化合物を、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。
【0099】
(b)の方法は、好ましくは次の2ステップで行う:(i)ハロヒドリン(特にブロモヒドリン)を(例えば、ブロモダン(bromodan)またはそれと同等の試薬との反応により)形成し;その後、(ii)塩基(例えば水酸化ナトリウム)で処理して、閉環するようにする。ステップ(i)の生成物は、新規な中間体である式(IXA):
【化11】

[式中、Xはハロゲン、特にBrを表わす]
の化合物であり、これは所望により単離してもよい。
【0100】
(c)の方法において、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。この反応は、アシル化触媒(例えばジメチルアミノピリジン(DMAP))の存在下で、高温(例えば約60℃)または周囲温度にて行うことができる。
【0101】
式(VII)の化合物は、式(XI):
【化12】

の化合物のエステル化を含んでなる方法により調製できる。
【0102】
式(III)の化合物から式(II)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の条件を用い得る。例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。式(XI)の化合物は公知である(J Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584)。
【0103】
式(VIII)の化合物は、
(a)式(XII):
【化13】

の化合物またはその塩をアルキル化すること;または
(b)式(XIII):
【化14】

の化合物をエステル化すること
を含んでなる方法により調製できる。
【0104】
(a)の方法では、式(II)の化合物から式(I)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の条件を用い得る。典型的には、標準的な条件下で、式(XII)の化合物を、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。
【0105】
(b)の方法では、式(IX)の化合物から式(VI)の化合物への変換に関して上記で用いたものと同様の条件を用い得る。例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0106】
式(IX)および(XIII)の化合物は、対応するチオ酸(XI)および(XIV)(下記に規定されている)を、既に記載されているものと同様の方法を用いて(例えば、標準的な条件下で、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させることによって)アルキル化することにより調製できる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬はブロモフルオロメタンである。チオ酸(XI)は公知の化合物である(J Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584)。
【0107】
式(XII)の化合物は、式(XIV):
【化15】

の化合物またはその塩をエステル化することを含んでなる方法により調製できる。
【0108】
この方法は、既に記載されているのと同様の方法を用いて行うことができる。
例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0109】
式(XIV)の化合物は、対応するカルボン酸から、例えば式(IV)の化合物から式(III)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の方法により調製できる。上記の対応するカルボン酸は公知である(Upjohn, WO 90/15816)。
【0110】
式(I)の化合物またはその溶媒和物のさらにもう1つの調製方法は、11-β-ヒドロキシ基が保護またはマスキングされている式(I)の化合物を脱保護またはアンマスキングすること(unmasking)を含んでなる。このような方法の第1の形態は、式(XV):
【化16】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物を脱保護することを含んでなる。
【0111】
ヒドロキシ保護基Pの例は、Organic Chemistry, JFW McOmie編(Plenum Press 1973)の「保護基(Protective Groups)」またはTheodora W GreenによるOrganic Synthesis (John Wiley and Sons, 1991)の「保護基(Protective Groups)」に記載されている。
【0112】
好適なヒドロキシ保護基Pの例としては、カーボネート、アルキル(例えばt-ブチルまたはメトキシメチル)、アラルキル(例えばベンジル、p-ニトロベンジル、ジフェニルメチルまたはトリフェニルメチル)、複素環基(例えばテトラヒドロピラニル)、アシル(例えばアセチルまたはベンジル)、ならびにトリアルキルシリル(例えばt-ブチルジメチルシリル)などのシリル基から選ばれる基が挙げられる。ヒドロキシ保護基は慣用の技法により除去できる。したがって、例えば、カーボネートは、塩基で処理することにより除去でき、アルキル基、シリル基、アシル基および複素環基は、加溶媒分解、例えば酸性もしくは塩基性の条件下での加水分解により除去できる。トリフェニルメチルなどのアラルキル基は、同様に、加溶媒分解、例えば酸性条件下での加水分解により除去できる。ベンジルまたはp-ニトロベンジルなどのアラルキル基は、貴金属触媒(例えばパラジウム担持炭)の存在下での水素化分解により切断できる。p-ニトロベンジルは、光分解によっても切断できる。
【0113】
11-β-ヒドロキシ基は、カルボニル基としてマスキングできる。したがって、このような方法の第2の形態は、式(XVI):
【化17】

の化合物の還元を含んでなる。
【0114】
式(I)の化合物の還元は、例えば、ボロヒドリド(例えば水素化ホウ素ナトリウム)のような水素化物還元剤による処理によって達成できる。
【0115】
11-ケトン(XVI)もまたマスキングできる。式(XVI)の化合物のマスキングされた誘導体の例としては、(i)例えば式(XVI)の化合物をアルコール(例えばメタノール、エタノールもしくはエタン-1,2-ジオール)で処理することにより形成されるケタールなどのケタール誘導体、(ii)例えば式(XVI)の化合物をチオール(例えばメタンチオール、エタンチオールまたはエタン-1,2-ジチオール)で処理することにより形成されるジチオケタールなどのジチオケタール誘導体、(iii)例えば式(XVI)の化合物を例えば1-ヒドロキシ-エタン-2-チオールで処理することにより形成されるモノチオケタールなどのモノチオケタール誘導体、(iv)式(XVI)の化合物をアルコールアミン(例えばエフェドリン)で処理することにより形成される誘導体、(v)式(XVI)の化合物をアミンで処理することにより形成されるイミン、(vi)式(XVI)の化合物をヒドロキシルアミンで処理することにより形成されるオキシムが挙げられる。本発明者らは、本発明の1つの態様として、このような式(XVI)の化合物の誘導体を権利請求するものである。
【0116】
これらのマスキングされた誘導体は、慣用の手段により変換してケトンに戻すことができる。例えば、ケタール、イミンおよびオキシムは、希酸で処理することによりカルボニルに変換でき、ジチオケタールは、P. C. Bulman Pageら, (1989), Tetrahedron, 45, 7643-7677およびそこで引用されている参考文献に記載されているような種々の方法によりケトンに変換される。
【0117】
式(XV)の化合物は、
(a)式(XVII):
【化18】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物もしくはその塩をアルキル化するか;または
(b)式(XVIII):
【化19】

の化合物をエステル化すること
を含んでなる方法により調製できる。
【0118】
ステップ(a)では、式(II)の化合物から式(I)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の条件を用い得る。典型的には、標準的な条件下で、式(XVII)の化合物を、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。
【0119】
ステップ(b)では、式(IX)の化合物から式(VI)の化合物への変換に関して上記で用いたものと同様の条件を用い得る。例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0120】
式(XVIII)の化合物は、既に記載されているのと同様の方法を用いて(例えば、標準的な条件下で式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させることにより)対応するチオ酸をアルキル化することにより調製できる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。その対応するチオ酸は公知の化合物であるか、または標準的な方法により調製してもよい。あるいはまた、式(XVIII)の化合物は、対応するヒドロキシ誘導体の保護により調製することも可能である。
【0121】
式(XVII)の化合物は、式(XIX):
【化20】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物またはその塩をエステル化することを含んでなる方法により調製できる。
【0122】
この方法は、式(III)の化合物から式(II)の化合物への変換に関して既に記載したものと同様の方法を用いて行うことができる。例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0123】
式(XIX)の化合物は、対応するヒドロキシ誘導体(III)を保護することにより調製でき、まず保護したチオ酸を、次に脱保護する。
【0124】
式(XVI)の化合物は、
(a)式(XX):
【化21】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物またはその塩もしくは誘導体をアルキル化するか;または
(b)式(XXI):
【化22】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物もしくは誘導体をエステル化すること
を含んでなる方法により調製できる。
【0125】
ステップ(a)では、式(III)の化合物から式(II)の化合物への変換に関して上記で記載したものと同様の条件を用い得る。典型的には、標準的な条件下で、式(XX)の化合物を、式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。
【0126】
ステップ(b)では、式(IX)の化合物から式(VI)の化合物への変換に関して上記で用いたものと同様の条件を用い得る。例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0127】
式(XXI)の化合物またはその誘導体(但し、11-ケトン基はマスキングされている)は、既に記載されているのと同様の方法を用いて(例えば標準的な条件下で式FCH2L[式中、Lは脱離基(例えばハロゲン原子、メシルもしくはトシル基など)を表わす]の化合物(例えば適当なフルオロメチルハライド)と反応させることにより)対応するチオ酸をアルキル化することにより調製できる。好ましくは、このフルオロメチルハライド試薬は、ブロモフルオロメタンである。対応するチオ酸は公知の化合物であるか、または先に記載されているのと同様の方法により対応するカルボン酸から調製できる。
【0128】
式(XX)の化合物は、式(XXII):
【化23】

[式中、11-ケトン基はマスキングされている]
の化合物もしくはその誘導体をエステル化することを含んでなる方法により調製できる。
【0129】
この方法は、既に記載されているのと同様の方法を用いて行うことができる。
例えば、好適な試薬は、有機塩基(例えばトリエチルアミン)の存在下での2-フロン酸の活性化誘導体、例えば活性化エステル、または好ましくは2-フロイルハライド(例えば2-フロイルクロリド)である。
【0130】
式(XXII)の化合物およびその誘導体(但し、11-ケトンはマスキングされている)は、対応するヒドロキシ誘導体(IV)を酸化した後、そのケトンをマスキングし、続いてカルボン酸基をチオ酸へと変換すること(例えば式(IV)の化合物から式(III)の化合物への変換を参照)により調製できる。
【0131】
式(I)の化合物またはその溶媒和物の更にもう1つの調製方法は、式(XXIII):
【化24】

[式中、Lは脱離基(例えば塩素、ヨウ素などのフッ素以外のハライド、またはメシレート、トシレート、トリフレートなどのスルホン酸エステル)を表わす]の化合物をフッ素供給源と反応させることを含んでなる。
【0132】
好ましくは、このフッ素供給源は、KFなどのフッ素イオンである。この変換についての更なる詳細は、G.H. Phillippsら, (1994) Journal of Medicinal Chemistry, 37, 3717-3729またはJ Labelled Compd Radiopharm (1997) 39(7) 567-584を参照することにより入手できる。
【0133】
式(XXIII)の化合物は、本明細書中に記載されているのと同様の方法により調製できる。対応する式(VI)、(VIII)、(IX)、(IXA)、(XV)および(XVI)[式中、−CH2F部分は-CH2L部分(式中、Lはフッ素以外の脱離基を表わす)で置換されている]の新規な中間体は、本発明の1つの態様として権利請求される。
【0134】
式(I)の化合物またはその溶媒和物の更にもう1つの調製方法は、式(I)の化合物の誘導体(但し、3-カルボニル基は保護またはマスキングされている)の脱保護またはアンマスキングを含んでなる。
【0135】
この3-カルボニル基は、11-カルボニル位のマスキングに関して上記で記載されれているのと同様にしてマスキングできる。したがって、この3-カルボニルは、例えばケタール、モノチオケタール、ジチオケタール、アルコールアミンとの誘導体、オキシムまたはイミンとしてマスキングできる。カルボニル基は、慣用の手段により回復できる。例えば、ケタールは、希酸で処理することによりカルボニルへと変換され、ジチオケタールは、P. C. Bulman Pageら, (1989), Tetrahedron, 45, 7643-7677およびそこで引用されている参考文献に記載されているような種々の方法によりケトンへと変換される。
【0136】
ある特定の中間体化合物は新規であり、本発明者らは、これらを本発明の1つの態様として、適当である場合にはそれらの塩および溶媒和物と共に提供する。
【0137】
上記で述べたように、本発明者らは、本発明1つの特定の態様として、非溶媒和形態の式(I)の化合物の調製方法であって、
(a)エタノール、メタノール、水、酢酸エチル、トルエン、メチルイソブチルケトンもしくはそれらの混合物などの非溶媒和性溶剤の存在下で、式(I)の化合物を結晶化させるか;または
(b)溶媒和形態の式(I)の化合物(例えば、アセトン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、DMFまたはテトラヒドロフランとの溶媒和の形態で)を、例えば加熱により脱溶媒和する
ことを含んでなる前記方法を提供する。
【0138】
ステップ(b)において、脱溶媒和は通常、50℃を超える温度、好ましくは100℃を超える温度にて行われる。一般に、加熱は減圧下で行われる。
【0139】
また、上記の方法により得ることができる非溶媒和形態の式(I)の化合物も提供される。
【0140】
また、本発明の1つの特定の態様として、非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物の調製方法であって、式(I)の化合物をメチルイソブチルケトン、酢酸エチルまたは酢酸メチルに溶解させ、イソ-オクタンまたはトルエンなどの非溶媒和性抗溶剤の添加により式(I)の化合物を非溶媒和1型として生産することを含んでなる前記方法も提供される。
【0141】
この方法の第1の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物を、酢酸エチルに溶解させ、非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物を、抗溶剤としてトルエンを添加することにより得ることができる。収量を向上させるために、好ましくは、酢酸エチル溶液を温め、トルエンを添加したら、その混合物を蒸留して酢酸エチルの含有量を低減させる。
【0142】
この方法の第2の好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物をメチルイソブチルケトンに溶解させ、非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物を、抗溶剤としてイソオクタンを添加することにより得ることができる。
【0143】
また、上記の方法により得ることができる、非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物も提供される。
【0144】
非溶媒和2型多形としての式(I)の化合物の調製方法は、非溶媒和形態の式(I)の化合物をメタノールまたは無水ジクロロメタンに溶解させ、式(I)の化合物を非溶媒和2型多形として再結晶化させることを含んでなる。典型的には、式(I)の化合物を暖めたメタノールまたは無水ジクロロメタンに溶解し、放置冷却する。
【0145】
また、上記の方法により得ることができる非溶媒和2型多形としての式(I)の化合物も提供される。
【0146】
非溶媒和3型多形としての式(I)の化合物の調製方法は、水(典型的には1〜3容量%の水)の存在下で式(I)の化合物またはその溶媒和物(特にアセトン溶媒和物として)をジクロロメタンに溶解させ、式(I)の化合物を非溶媒和3型多形として再結晶化させることを含んでなる。
【0147】
また、上記の方法により得ることができる非溶媒和3型多形としての式(I)の化合物も提供される。
【0148】
式(I)の化合物および/またはその溶媒和物もしくは多形の利点としては、この物質が優れた抗炎症特性、ならびに予測可能な薬物動態的および薬力学的挙動、および魅力的な副作用プロフィールを示すと考えられ、ヒト患者における慣用の治療処方計画に適合する、という事実を挙げることができる。更なる利点としては、この物質が製造および保存を容易にする望ましい物理的および化学的特性を有する、という事実を挙げることができる。
【0149】
以下の非限定的な実施例により本発明を説明する:
【実施例】
【0150】
概略
1H-NMRスペクトルを400MHzで記録した。化学シフトはテトラメチルシランに対するppmで表わす。次の略語を用いて、シグナルの多重度を記載する:s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、dd(二重項の二重項)、ddd(二重項の二重項の二重項)、dt(三重項の二重項)、およびb(ブロード(broad))。Biotageとは、フラッシュ12iクロマトグラフィーモジュールで実施するKP-Silを含む前もって充填されたシリカゲルカートリッジをいう。LCMSはSupercosil LCABZ+PLUSカラム(3.3cm×4.6mm内径)で実施し、0.1%のHCO2Hと0.01M 酢酸アンモニウムの水溶液(溶剤A)および0.05%のHCO2Hと5%の水とのアセトニトリル中の溶液(溶剤B)で、次の溶出勾配を用い、3ml/分の流速で溶出させた:0〜0.7分は0%のB、0.7〜4.2分は100%のB、4.2〜5.3分は0%のB、5.3〜5.5分は0%のB。質量スペクトルをFisons VG Platformスペクトロメーターで、エレクトロスプレー正/負モード(ES+veおよびES−ve)を用いて記録した。
【0151】
DSCおよびTGAプロフィールは、Netzsch STA449C同時熱分析計を使用し、非密封パンを用い、窒素ガス流下で10℃/分の熱勾配で得た。
【0152】
吸湿特性は、Hiden Igasorb吸水微量天秤を用いて得た。このプログラムは、相対湿度(RH)を0〜90%のRHまで段階的に増大させ、次に0%のRHまで10%のRHずつ段階的に低下させるものである。
【0153】
図1および2に示すXRPD分析は、Phillips X’pert MPD粉末回析計(シリアル番号DY667)で行った。この方法は、0.02°2θずつ段階的に2〜45°2θで、各ステップが1秒の収集時間で行った。図4に示すXRPD分析は、Anton Parr TTKサーマルアクセサリーを備える同じ装置を用い、0.04°2θずつ段階的に2〜35°2θで1秒の収集時間で行う方法を用いた。
【0154】
中間体
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸
6α,9α-ジフルオロ-11β, 17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(GB 2088877Bに記載されている手順に従って調製したもの)(18g、43.64mmol)の無水ジクロロメタン(200ml)およびトリエチルアミン(15.94ml、114mmol)中の溶液を、5℃未満にて、2-フロイルクロリド(11.24ml、114mmol)の無水ジクロロメタン(100ml)中の溶液で約40分間かけて処理した。この溶液を5℃未満にて30分間撹拌した。得られた固体を濾過により回収し、3.5%の炭酸水素ナトリウム水溶液、水、1M 塩酸および水で順次洗浄し、60℃にて減圧乾燥して、クリーム色の固体を得た。ジクロロメタン濾液を、3.5%の炭酸水素ナトリウム溶液、水、1M 塩酸、水で順次洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、蒸発させて、クリーム色の固体を得て、これを上記で単離されたものと合わせた。合わせた固体(26.9g)をアセトン(450ml)に懸濁し、撹拌した。ジエチルアミン(16.8ml、162mmol)を添加し、この混合物を室温で4.5時間撹拌した。この混合物を濃縮し、沈殿物を濾過により回収し、少量のアセトンで洗浄した。洗浄液および濾液を合わせ、濃縮し、シリカゲルBiotageカラム上にローディングし(loaded)、これを24:1のクロロホルム:メタノールで溶出させた。より極性の高い成分を含む画分を合わせ、蒸発させて、クリーム色の固体を得た。これを上記で単離した固体と合わせ、減圧乾燥して、淡ベージュ色の固体(19.7g)を得た。これを温水に溶解し、濃塩酸でpHを2に調整し、この混合物を酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を乾燥し(Na2SO4)、蒸発させ、50℃にて乾燥した後で、表題化合物をクリーム色の固体として得た(18.081g、82%):LCMS保持時間 3.88分、m/z 507MH、NMRδ(CDCl3)は7.61(1H,m), 7.18-7.12(2H,m), 6.52(1H,dd,J4,2Hz), 6.46(1H,s), 6.41(1H,dd,J10,2Hz), 5.47および5.35(1H,2m), 4.47(1H,bd,J9Hz), 3.37(1H,m), 1.55(3H,s), 1.21(3H,s), 1.06(3H,d,J7Hz)を含む。
【0155】
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(第1の別法)
6α,9α-ジフルオロ-11β, 17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(GB 2088877Bに記載されている手順に従って調製したもの)(1重量部、49.5g)のアセトン(10倍容量)中の撹拌懸濁液を0〜5℃に冷却し、トリエチルアミン(0.51重量部、2.1当量)で処理し、その温度を5℃以下に維持し、0〜5℃で5分間撹拌する。次に、2-フロイルクロリド(0.65重量部、2.05当量)を20分間かけて添加し、反応温度を0〜5℃に維持する。この反応物を0〜5℃で30分間撹拌し、次にHPLCによる分析用としてサンプリングする。ジエタノールアミン(1.02重量部、4当量)のメタノール(0.8倍容量)中の溶液を約15分かけて添加した後、メタノール(0.2倍容量)でライン洗浄し、その反応物を0〜5℃で1時間撹拌する。この反応物を、HPLCによる分析用に再度サンプリングし、次に約20℃まで温め、水(1.1重量部)で処理する。次に、反応混合物を、反応温度を25℃以下に維持しながら、HCl(SG1.18(11.5M)、1倍容量)の水(10倍容量)中の溶液で約20分間にわたり処理する。この懸濁液を20〜23℃で少なくとも30分間撹拌した後、濾過する。濾過ケーキを水で洗浄する(3回×2倍容量)。生成物を約60℃で一夜減圧乾燥して、表題化合物を白色固体として得た(58.7g、96.5%)。
【0156】
中間体1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(第2の別法)
6α,9α-ジフルオロ-11β, 17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(GB 2088877Bに記載されている手順に従って調製したもの)(1重量部、49.5g)のアセトン(10倍容量)中の撹拌懸濁液を0〜5℃に冷却し、トリエチルアミン(0.51重量部、2.1当量)で処理し、その温度を5℃以下に維持し、0〜5℃で5分間撹拌する。次に、2-フロイルクロリド(0.65重量部、2.05当量)を20分間かけて添加し、反応温度を0〜5℃に維持する。この反応混合物を少なくとも30分間撹拌し、水(10倍容量)で希釈し、反応温度を0〜5℃の範囲に維持する。得られた沈殿物を濾過により回収し、アセトン/水(50/50 2倍容量)および水(2回×2倍容量)で順次洗浄する。生成物を約55℃で一夜減圧乾燥することで、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-イル S-(2-フラニルカルボニル)チオ無水物が白色固体として残る(70.8g、98.2%)(NMRδ(CD3CN) 0.99(3H,d)(J=7.3Hz), 1.24(3H,s), 1.38(1H,m),(J=3.9Hz), 1.54(3H,s), 1.67(1H,m), 1.89(1H,ブロード d)(J=15.2Hz), 1.9-2.0(1H,m), 2.29-2.45(3H,m), 3.39(1H,m), 4.33(1H,m), 4.93(1H,ブロード s), 5.53(1H,ddd)(J=6.9,1.9Hz; JHF=50.9Hz), 6.24(1H,m), 6.29(1H,dd)(J=10.3,2.0Hz), 6.63(2H,m), 7.24-7.31(3H,m), 7.79(1H,dd)(J=<1Hz), 7.86(1H,dd)(J=<1Hz))。この生成物の一部(0.56g)を6α,9α-ジフルオロ-11β,17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(0.41g)と1:1のモル比でDMF中(総ステロイド投入物に関して10倍容量)で混合する。この反応混合物をトリエチルアミン(約2.1当量)で処理し、この混合物を約20℃で約6時間撹拌する。この反応混合物に過剰な濃HCl(0.5倍容量)を含有する水(50倍容量)を添加し、得られた沈殿物を濾過により回収する。ベッドを水(2回×5倍容量)で洗浄し、約55℃で一夜減圧乾燥することで、表題化合物が白色固体として残る(0.99g、102%)。
【0157】
中間体1A:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸ジイソプロピルエチルアミン塩
6α,9α-ジフルオロ-11β, 17α-ジヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸(GB 2088877Bに記載されている手順に従って調製したもの)(49.5g)の酢酸メチル(500ml)中の撹拌懸濁液をトリエチルアミン(35ml)で処理し、反応温度を0〜5℃の範囲に維持する。2-フロイルクロリド(25ml)を添加し、この混合物を0〜5℃で1時間撹拌する。ジエタノールアミン(52.8g)のメタノール(50ml)中の溶液を添加し、この混合物を0〜5℃で少なくとも2時間撹拌する。希塩酸(約1M、550ml)を添加して、反応温度を15℃以下に維持し、この混合物を15℃で撹拌する。有機相を分離し、水相を酢酸メチル(2回×250ml)で逆抽出する。全ての有機相を合わせ、ブライン(5回×250ml)で順次洗浄し、ジ-イソプロピルエチルアミン(30ml)で処理する。この反応混合物を大気圧での蒸留により約250mlの容量まで濃縮し、25〜30℃まで冷却する(通常なら蒸留/その後の冷却の間に所望の生成物の結晶化が起こる)。第三級ブチルメチルエーテル(TBME)(500ml)を添加し、そのスラリーを更に冷却し、0〜5℃で少なくとも10分間熟成させる。生成物を濾別し、冷TBME(2回×200ml)で洗浄し、約40〜50℃で減圧乾燥する(75.3g、98.7%)。NMR (CDCl3) δ:7.54-7.46(1H,m), 7.20-7.12(1H,dd), 7.07-6.99(1H,dd), 6.48-6.41(2H,m), 6.41-6.32(1H,dd), 5.51-5.28(1H,dddd 2JH-F 50Hz), 4.45-4.33(1H,bd), 3.92-3.73(3H,bm), 3.27-3.14(2H,q), 2.64-2.12(5H,m), 1.88-1.71(2H,m), 1.58-1.15(3H,s), 1.50-1.38(15H,m), 1.32-1.23(1H,m), 1.23-1.15(3H,s), 1.09-0.99(3H,d)。
【0158】
中間体1B:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸トリエチルアミン塩
中間体1(30g)の酢酸エチル(900ml)中の撹拌懸濁液を、トリエチルアミン(1.05モル当量、8.6ml)で処理し、この混合物を約20℃で1.5時間撹拌する。
沈殿物を濾別し、酢酸エチル(2回×2倍容量)で洗浄し、45℃で18時間減圧乾燥して、表題化合物を白色固体として得る(28.8g、80%)。NMR (CDCl3) δ:7.59-7.47(1H,m), 7.23-7.13(1H,dd), 7.08-6.99(1H,d), 6.54-6.42(2H,m), 6.42-6.32(1H,dd), 5.55-5.26(1H, dddd 2JH-F 50Hz), 4.47-4.33(1H,bd), 3.88-3.70(1H,bm), 3.31-3.09(6H,q), 2.66-2.14(5H,m), 1.93-1.69(2H,m), 1.61-1.48(3H,s), 1.43-1.33(9H,t), 1.33-1.26(1H,m), 1.26-1.15(3H,s), 1.11-0.97(3H,d)。
【0159】
実施例
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型
中間体1(2.5g、4.94mmol)の懸濁液を無水N,N-ジメチルホルムアミド(25ml)に溶解し、炭酸水素ナトリウム(465mg、5.53mmol)を添加した。この混合物を-20℃で撹拌し、ブロモフルオロメタン(0.77ml、6.37mmol)を添加し、この混合物を-20℃で2時間撹拌した。ジエチルアミン(2.57ml、24.7mmol)を添加し、この混合物を-20℃で30分間撹拌した。この混合物を2M 塩酸(93ml)に添加し、30分間撹拌した。水(300ml)を添加し、沈殿物を濾過により回収し、水で洗浄し、50℃で減圧乾燥して、白色固体を得て、これをアセトン/水から再結晶化させ(これにより6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのアセトン溶媒和物が得られる)、50℃で減圧乾燥して、表題化合物を得た(2.351g、88%):LCMS保持時間3.66分、m/z 539 MH、NMR δ(CDCl3)は7.60(1H,m), 7.18-7.11(2H,m), 6.52(1H,dd,J4.2Hz), 6.46(1H,s), 6.41(1H,dd,J10,2Hz), 5.95および5.82(2H,dd,J51,9Hz), 5.48および5.35(1H,2m), 4.48(1H,m), 3.48(1H,m), 1.55(3H,s), 1.16(3H,s), 1.06(3H,d,J7Hz)を含む。
【0160】
薬理学的活性
in vitroでの薬理学的活性
薬理学的活性を、グルココルチコイドアゴニスト活性の機能的in vitroアッセイで評価した。これは一般に、in vivoでの抗炎症活性または抗アレルギー活性の予測である。
【0161】
このセクションでの実験では、式(I)の化合物を非溶媒和1型として用いた。
【0162】
機能的アッセイは、K.P. Rayら, Biochem J. (1997), 328, 707-715に記載されているものに基づいた。sPAP(分泌型アルカリホスファターゼ)に連結させたELAM遺伝子プロモーターからのNF-κB応答性エレメントを含むレポーター遺伝子で安定にトランスフェクトしたA549細胞を、適当な用量の試験化合物で37℃にて1時間処理した。次に、この細胞を腫瘍壊死因子(TNF、10ng/ml)で16時間刺激し、この時点にて、産生したアルカリホスファターゼの量を標準的な比色アッセイにより測定する。用量反応曲線を作成し、そこからEC50値を評価した。
【0163】
この試験では、実施例1の化合物は1nM未満のEC50値を示した。
【0164】
グルココルチコイド受容体(GR)は、少なくとも2つの異なる機構で、すなわち、遺伝子プロモーター内にある特定の配列へのGRの直接結合により遺伝子発現をアップレギュレートすること、および別の転写因子(例えばNFκBもしくはAP-1)によって駆動される遺伝子発現をそれら因子とGRとの直接的な相互作用によりダウンレギュレートすることにより機能し得る。
【0165】
上記の方法の変法では、これらの機能をモニターするために、2種のレポータープラスミドを作製して、トランスフェクションによりA549ヒト肺上皮細胞に別個に導入した。第1の細胞系は、TNFαで刺激されると転写因子NFκBの活性化に特異的に応答する合成プロモーターの制御下にホタル・ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を含む。第2の細胞系は、3コピーの共通グルココルチコイド応答エレメントを含んでグルココルチコイドによる直接刺激に応答する合成プロモーターの制御下にウミシイタケ・ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を含む。転写活性化および転写抑制の同時測定は、96ウェルプレートでこれら2種の細胞系を1:1の割合で混合し(40,000個の細胞/ウェル)、37℃で一夜増殖することにより行った。試験化合物をDMSOに溶解し、細胞に0.7%の最終DMSO濃度で添加した。1時間インキュベートした後、0.5ng/mlのTNFα(R&D Systems)を添加し、37℃で更に15時間後に、ホタルおよびウミシイタケ・ルシフェラーゼのレベルをPackard Fireliteキットを用い、製造元の説明書に従って測定した。用量反応曲線を作成し、そこから、EC50値を求めた。
【0166】
転写活性化(GR) 転写抑制(NFκB)
ED50(nM) ED50(nM)
式(I)の化合物 0.06 0.20
代謝産物(X) >250 >1000
プロピオン酸フルチカゾン 0.07 0.16
【0167】
in vivoでの薬理学的活性
in vivoでの薬理学的活性は、オボアルブミン感作Brown Norwayラットの好酸球増加症モデルにおいて評価した。このモデルは、アレルゲン誘導肺好酸球増加症(喘息における肺炎症の主な要素)によく似せるように設計されている。
【0168】
このセクションでの実験では、式(I)の化合物を非溶媒和1型として用いた。
【0169】
化合物(I)は、このモデルにおいて、生理食塩水中の気管内(IT)用懸濁液として投薬した後にオボアルブミンチャレンジを行った後で、肺好酸球増加症の用量依存的な抑制を生じた。30μgの化合物(I)を単回投与した後で有意な抑制が達成され、その応答は、同じ研究で同等用量のプロピオン酸フルチカゾンを用いて見られるよりも有意に(p=0.016)高いものであった(化合物(I)では69%の抑制であるのに対し、プロピオン酸フルチカゾンでは41%の抑制)。
【0170】
胸腺退縮のラットモデルでは、100μgの化合物(I)を1日3回IT投与すると、同じ研究で同等用量のプロピオン酸フルチカゾンを用いた場合よりも有意に小さな胸腺重量の減少を誘導した(p=0.004)(化合物(I)では胸腺重量は67%減少したのに対し、プロピオン酸フルチカゾンでは78%減少した)。
【0171】
これらの結果を合わせて考えると、化合物(I)はプロピオン酸フルチカゾンと比較して優れた治療指数を示す。
【0172】
ラットおよびヒトの肝細胞におけるin vitro代謝
化合物(I)をラットおよびヒトの肝細胞と共にインキュベートすると、この化合物がプロピオン酸フルチカゾンと同じ様式で代謝され、その場合に17-βカボン酸(X)が産生する唯一の重要な代謝産物であることが示される。化合物(I)をヒトの肝細胞と共にインキュベート(37℃、10μMの薬物濃度、3人の被験者からの肝細胞、200,000〜700,000個の細胞/mL)した際の、この代謝産物の出現速度を調べたところ、化合物(I)がプロピオン酸フルチカゾンよりも約5倍速く代謝されることが示される:
【表1】

【0173】
代謝産物産生中央値は、化合物(I)では102〜118pmol/時間であり、プロピオン酸フルチカゾンでは18.8〜23.0pmol/時間である。
【0174】
ラットにおける静脈内(IV)および経口投与後の薬物動態
化合物(I)を、雄性Wistar Hanラットに経口投与(0.1mg/kg)およびIV投与(0.1mg/kg)し、薬物動態パラメーターを測定した。化合物(I)は、ごくわずかな経口バイオアベイラビリティ(0.9%)しか示さず、血漿クリアランスは47.3mL/分/kgであり、肝臓血流に近かった(プロピオン酸フルチカゾンの血漿クリアランス=45.2 mL/分/kg)。
【0175】
ブタにおける気管内乾燥粉末投与後の薬物動態
麻酔したブタ(2頭)に、化合物(I)(1mg)とプロピオン酸フルチカゾン(1mg)との均一な混合物を乳糖(10%w/w)中の乾燥粉末ブレンドとして気管内投与した。投与後8時間まで、一連の血液サンプルを取った。LC-MS/MS法を用いる抽出および分析に従って、化合物(I)およびプロピオン酸フルチカゾンの血漿レベルを求めた(この方法の定量下限は、化合物(I)およびプロピオン酸フルチカゾンについてそれぞれ10pg/mLおよび20pg/mLであった)。これらの方法を用いた場合、化合物(I)は投与の2時間後まで定量可能であり、プロピオン酸フルチカゾンは投与の8時間後まで定量可能であった。最大血漿濃度は、双方の化合物とも投与後15分以内に観察された。IV投与(0.1mg/kg)から得られた血漿半減期のデータを用いて、化合物(I)についてAUC(0〜無限大)値を算出した。これは、IT投与後2時間までにのみ規定される化合物(I)の血漿プロフィールを補い、化合物(I)とプロピオン酸フルチカゾンの間のデータ限界によるバイアスを取り除くものである。
【0176】
maxおよびAUC(0〜無限大)の値から、プロピオン酸フルチカゾンと比較して化合物(I)への全身暴露が著しく低下することが示される:
Cmax(pg/mL) AUC(0〜無限大)(時間・pg/mL)
ブタ1 ブタ2 ブタ1 ブタ2
式(I)の化合物 117 81 254 221
プロピオン酸フルチカゾン 277 218 455 495
【0177】
化合物(I)およびプロピオン酸フルチカゾンの双方についての薬物動態パラメーターは、これら2種の化合物の混合物0.1mg/kgを静脈内投与した後の麻酔したブタでは同じであった。これら2種のグルココルチコイドのクリアランスは、この実験ブタモデルでは類似である。
【0178】
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型(第1の別法)
中間体1A(12.61g、19.8mmol;10gの中間体1と同等)の酢酸エチル(230ml)および水(50ml)中の流動性懸濁液を相間移動触媒(塩化ベンジルトリブチルアンモニウム、10mol%)で処理し、3℃まで冷却し、ブロモフルオロメタン(1.10ml、19.5mmol、0.98当量)で処理し、予め冷却しておいた(0℃)酢酸エチル(EtOAc)(20ml)で洗浄する。懸濁液を一夜撹拌し、放置して17℃まで温かくする。水相を分離し、有機相を1M HCl(50ml)、1%w/vのNaHCO3溶液(3回×50ml)および水(2回×50ml)で順次洗浄する。この酢酸エチル溶液を、蒸留物が約73℃の温度に達するまで大気圧で蒸留し、その時点でトルエン(150ml)を添加する。蒸留は、全ての残留するEtOAcが除去されるまで大気圧で継続する(およその蒸留温度は103℃)。得られた懸濁液を冷却し、10℃未満で熟成し、濾過する。ベッドをトルエン(2回×30ml)で洗浄し、生成物を減圧下で60℃にて一定重量になるまでオーブン乾燥して、表題化合物を得る(8.77g、82%)。
【0179】
実施例1:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型(第2の別法)
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのアセトン溶媒和物(例えば実施例11に従って調製したもの)(50.0g)のアセトン(1500ml)および水(75ml)中の懸濁液を加熱還流した。得られた混合物を温式濾過(Whatman 54濾紙)により清澄にし、その間に、多少の固体が濾液中で結晶化した。追加のアセトン(200ml)を濾液に添加して、還流下で明色の溶液を得た。この溶液を、濁りが認められるまで大気圧で還流中蒸留した(約750mlの溶剤が回収された)。この暖かい溶液にトルエン(1000ml)を添加し、蒸留を大気圧で継続して、約98℃の温度で結晶化させた。溶剤の蒸留を、反応温度が105℃に達するまで継続した(約945mlの溶剤が回収された)。
この混合物を周囲温度まで冷却し、更に冷却して、10℃未満で10分間熟成した。
生成物を濾別し、トルエン(150ml)で洗浄し、吸引乾燥した。生成物を約60℃で16時間減圧乾燥することで、表題化合物が濃白色固体として残った(37.8g、83.7%)。
【0180】
実施例1の生成物のXRPDパターンを図1に示す。DSCおよびTGAのプロフィールを図3に示す。
【0181】
実施例2:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和2型
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(例えば実施例1の第1の方法に従って調製したもの)(6.0g)のジクロロメタン(180ml)中の懸濁液を加熱還流して、明色の溶液を得た。この溶液を温式濾過(Whatman 54濾紙)により清澄し、その溶液を大気圧で蒸留して(約100mlの溶剤が回収された)、還流下で結晶化させた。この混合物を還流下で約30分間保持し、周囲温度までゆっくり冷却した。この混合物を更に冷却し、10〜20℃で2時間熟成した。このスラリーを10℃以下に冷却し、生成物を濾別し、吸引乾燥し、約60℃で一夜減圧乾燥することで、白色固体が残った(4.34g、71%)。
【0182】
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和2型のより純粋なサンプルは、6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(例えば実施例1の第1の方法に従って調製したもの)をメタノール(60倍容量、大気圧で約37.5倍容量にまで蒸留したもの)中で冷却結晶化することにより得られた。この生成物を濾過により単離し、減圧下で60℃にて16時間オーブン乾燥することで、白色の静電固体が残った(4.34g、71%)。
【0183】
実施例2の生成物のXRPDパターンを図1に示す。
【0184】
実施例3:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和3型
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのアセトン溶媒和物(例えば実施例11に従って調製したもの)(20.0g)のジクロロメタン(800ml、40倍容量)および水(10ml、0.5倍容量)中の懸濁液を加熱還流して、明色の溶液を得た。この溶液を温式濾過(Whatman 54濾紙)により清澄にし、その間に、多少の固体が濾液中で結晶化し、これを加熱還流の際に十分に溶解させた。この溶液を大気圧で蒸留し(約400mlの溶剤が回収された)、周囲温度まで放置冷却した。この混合物を更に冷却し、10℃未満で10分間熟成した。生成物を濾別し、吸引乾燥し、約60℃で一夜減圧乾燥することで、白色固体が残った(12.7g、70%)。
【0185】
実施例3の生成物のXRPDパターンを図1および図4に示す。
【0186】
実施例4:1型、2型および3型の非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの相互変換
1型および2型の水中の混合物を周囲温度でスラリー化したところ、これらの成分が経時的に完全に1型へと変換されていくことが判明した。XRPDの結果を図2に示す。1型および2型のエタノール中の混合物を周囲温度でスラリー化することにより、同様の結果が得られた。これらの結果から、1型が、これら2種の形態の中で、熱力学的により安定な多形形態であると判断することができる。
【0187】
3型の熱的XRPD研究を行ったところ、図4に示すようになった。温度および時間のプロフィールを図5に示し、図5に示す平衡点において図4に示す5つのトレースが得られた。これらの結果から、3型が、温度が上昇するにつれて、まず2型へと変換され、次に1型へと変換されることがことが示される。
【0188】
実施例5:1型、2型および3型の非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの吸湿
3種の形態の吸湿特性は、段階的に上昇させ次に低下させた湿度に暴露した際の固体の重量変化をモニターすることにより測定した。得られた結果は次のとおりであった:
1型:25℃にて0〜90%の相対湿度の範囲にわたり、0.18%w/wの水分を取り込む。
2型:25℃にて0〜90%の相対湿度の範囲にわたり、1.1〜2.4%w/wの水分を取り込む。
3型:25℃にて0〜90%の相対湿度の範囲にわたり、1.2〜2.5%w/wの水分を取り込む。
【0189】
実施例6:1型および3型の非溶媒和6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの溶解エンタルピー
DMSOおよびアセトニトリルへの溶解エンタルピーを25℃にて測定した。結果は次のとおりであった:
1型 3型
アセトニトリル +13.74 +8.62
DMSO +1.46 -5.21
(結果はkJ/molで表わす)
【0190】
これらの結果から、3型から1型への転移エンタルピーが約5.1〜6.7kJ/molであることが決定できる。転移エンタルピーが小さいと仮定すると、双方の形態は非溶媒和型であるので、転移エンタルピーは転移自由エネルギーと等しいとすることができる。したがって、これらのデータから、1型が25℃において熱力学的に最も安定な形態であることが示唆される。
【0191】
実施例7:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのメチルエチルケトン溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(例えば実施例1に従って調製したもの)(400mg)のメチルエチルケトン(3.2ml)中の懸濁液を加熱還流して、透明な溶液を得る。溶剤の一部を大気圧にて留去し(約1ml)、混合物を約20℃まで冷却する。結晶化した生成物を濾別し、約20℃で減圧乾燥することで、表題化合物が白色固体として残った(310mg、68%)。NMRδ(CDCl3)は、親化合物について実施例1で記載したピークならびに次の追加の溶剤ピークを含む:2.45(2H,q), 2.14(3H,s), 1.06(3H,t)。
【0192】
実施例8:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのイソプロパノール溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(例えば実施例1に従って調製したもの)(150mg)のイソプロパノール(15ml)中の溶液を約8週間にわたり放置してゆっくりと結晶化させる。得られた塊の結晶を濾過により単離することで、表題化合物が白色固体として残る。NMRδ(CDCl3)は、親化合物について実施例1で記載したピークならびに次の追加の溶剤ピークを含む:4.03(1H,m), 1.20(6H,d)。
【0193】
実施例9:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのテトラヒドロフラン溶媒和物
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステル(例えば実施例1に従って調製したもの)(150mg)のTHF(20倍容量)中の懸濁液を温めて、透明な溶液を得る。溶剤を6日間にわたりゆっくり蒸発させることで、表題化合物が白色固体として残る。あるいはまた、このTHF溶液を、重炭酸カリウム(2%w/w)の水(50倍容量)中の溶液に滴下し、沈殿した生成物を濾過により回収して、表題化合物を白色固体として得る。NMRδ(CDCl3)は、親化合物について実施例1で記載したピークならびに次の追加の溶剤ピークを含む:3.74(4H,m), 1.85(4H,m)。
【0194】
実施例9:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのテトラヒドロフラン溶媒和物(別法)
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸トリエチルアミン塩(例えば中間体1Bに従って調製したもの)(1.2g)のTHF(10ml)中の流動性懸濁液を、相間移動触媒(臭化テトラブチルアンモニウム、典型的には8〜14mol%)で処理し、約3℃まで冷却し、ブロモフルオロメタン(0.98当量)で処理する。この懸濁液を2〜5時間撹拌し、放置して17℃まで温かくする。この反応混合物を水(30倍容量)に注ぎ、約10℃で30分間撹拌し、濾別する。
回収した固体を水(4回×3倍容量)で洗浄し、生成物を減圧下で60℃にて一夜オーブン乾燥して、表題化合物を白色固体として得る(0.85g、87%)。
【0195】
実施例10:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのDMF溶媒和物
中間体1(4.5g、8.88mmol)のDMF(31ml)中の混合物を、重炭酸カリウム(0.89g、8.88mmol)で処理し、この混合物を-20℃まで冷却する。ブロモフルオロメタン(0.95g、8.50mmol、0.98当量)のDMF(4.8ml)中の溶液(0℃)を添加し、混合物を-20℃で4時間撹拌する。次に、この混合物を-20℃で更に30分間撹拌し、2M 塩酸(100ml)に添加し、0〜5℃で更に30分間撹拌する。沈殿物を減圧濾過により回収し、水で洗浄し、50℃で乾燥して、表題化合物を得る(4.47g、82%)。NMRδ(CD3OD)は、親化合物について実施例1で記載したピークならびに次の追加の溶剤ピークを含む:7.98(1H,bs), 2.99(3H,s), 2.86(3H,s)。
【0196】
実施例11:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのアセトン溶媒和物
中間体1(530.1g、1重量部)のジメチルホルムアミド(DMF)(8倍容量)中の溶液を炭酸水素カリウム(0.202重量部、1.02当量)で処理し、この混合物を撹拌しながら-17±3℃まで冷却する。次に、ブロモフルオロメタン(BFM)(0.22重量部、0.99当量)を添加し、この反応物を-17±3℃で少なくとも2時間撹拌する。次に、この反応混合物を水(17倍容量)に5±3℃で約10分かけて添加し、続いて水(1倍容量)でライン洗浄する。懸濁液を5〜10℃で少なくとも30分間撹拌し、次に濾過する。濾過ケーキ(6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルのDMF溶媒和物)を水(4回×4倍容量)で洗浄し、生成物をフィルターで吸引濾過する。湿り気のあるケーキを容器に戻し、アセトン(5.75倍容量)を添加し、2時間加熱還流する。この混合物を52±3℃まで冷却し、水(5.75倍容量)を添加し、温度を52±3℃に維持する。次に、この混合物を20±3℃まで冷却し、濾過し、60±5℃で一夜減圧乾燥して、表題化合物を白色固体として得る(556.5g、89%)。NMRδ(CDCl3)は、親化合物について実施例1で記載したピークならびに次の追加の溶剤ピークを含む:2.17(6H,s)。
【0197】
実施例12:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型を含む乾燥粉末組成物
乾燥粉末製剤は次のようにして調製した:
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型(実施例1、第1の別法に従って調製し、3μmのMMDに微粉状化したもの): 0.20mg
粉砕乳糖(粒子の85%以下が60〜90μmのMMDを有し、粒子の15%以上が15μm未満のMMDを有するもの): 12mg
それぞれここで記載したような製剤で充填されている60のブリスターを含む剥離可能なブリスターストリップを調製した。
【0198】
実施例13:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型を含むエアロゾル製剤
アルミニウム缶に次の製剤:
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型(実施例1、第1の別法に従って調製し、3μmのMMDに微粉状化したもの): 250μg
1,1,1,2-テトラフルオロエタン: 50μlまで
(1作動当たりの量)
を全量で120回の作動に好適な量で充填し、この缶に1作動当たり50μl供給するように適合させた計量バルブを備えた。
【0199】
実施例14:6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型を含む経鼻製剤
鼻腔内送達用の製剤を次のように調製した:
6α,9α-ジフルオロ-17α-[(2-フラニルカルボニル)オキシ]-11β-ヒドロキシ-16α-メチル-3-オキソ-アンドロスタ-1,4-ジエン-17β-チオカルボン酸S-フルオロメチルエステルの非溶媒和1型(実施例1、第1の別法に従って調製し、微粉状化したもの): 10mg
ポリソルベート20: 0.8mg
モノラウリル酸ソルビタン: 0.09mg
リン酸二水素ナトリウム二水和物: 94mg
二塩基性リン酸ナトリウム無水物: 17.5mg
塩化ナトリウム: 48mg
脱塩水: 10mlまで
この製剤を、複数の計量用量を送達可能なスプレーポンプ(Valois)に入れた。
【0200】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈において特にことわらない限り、「含む(comprise)」という言葉、ならびに「含む(comprises)」および「含んでなること(comprising)」などのそのバリエーションは、記載されている整数もしくはステップまたは整数のグループを包含するものであり、それ以外の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを除外しようとするものではないことは理解されよう。
【0201】
本出願に記載されている特許および特許出願は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物、およびその溶媒和物。
【請求項2】
非溶媒和形態である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
1型多形の形態である、請求項2に記載の非溶媒和形態の式(I)の化合物。
【請求項4】
2型多形の形態である、請求項2に記載の非溶媒和形態の式(I)の化合物。
【請求項5】
3型多形の形態である、請求項2に記載の非溶媒和形態の式(I)の化合物。
【請求項6】
本質的にアセトンとの化学量論的な溶媒和物の形態の結晶固体としての、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
本質的にテトラヒドロフランとの化学量論的な溶媒和物の形態の結晶固体としての、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
本質的にイソプロパノールとの化学量論的な溶媒和物の形態の結晶固体としての、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
本質的にメチルエチルケトンとの化学量論的な溶媒和物の形態の結晶固体としての、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
本質的にジメチルホルムアミドとの化学量論的な溶媒和物の形態の結晶固体としての、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項11】
獣医またはヒトの医学において使用するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物。
【請求項12】
炎症性および/またはアレルギー性の症状の治療用の薬剤を製造するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物の使用。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物を、1種以上の生理学的に許容される希釈剤または担体と混合したものを含んでなる、医薬組成物。
【請求項14】
非加圧式であり、乾燥粉末として口腔を介して肺へ局所投与されるように適合された、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項15】
希釈剤または担体として乳糖またはデンプンを含む、請求項13または14に記載の医薬製剤。
【請求項16】
非加圧式であり、鼻腔へ局所投与されるように適合された、請求項13に記載の医薬製剤。
【請求項17】
希釈剤または担体として水を含む、請求項16に記載の医薬製剤。
【請求項18】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物と、噴射剤としてのフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンとを、場合によっては界面活性剤および/または共溶媒と組み合わせて含んでなる、エアロゾル医薬製剤。
【請求項19】
粒子状の薬剤と、噴射剤と、追加水(すなわち始めの製剤用の水に加えて添加される水)を含む安定化剤とを含んでなるものではなく、粒子状の薬剤と、噴射剤と、アミノ酸、その誘導体もしくはその混合物を含む安定化剤とを含んでなるものでもない、請求項18に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項20】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物と、噴射剤としてのフルオロカーボンまたは水素含有クロロフルオロカーボンと、その噴射剤に可溶性である懸濁剤とを含んでなる、請求項18または19に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項21】
懸濁剤がオリゴ乳酸またはその誘導体である、請求項20に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項22】
噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンおよびそれらの混合物から選ばれる、請求項18〜21のいずれか1項に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項23】
本質的に、場合によっては別の治療活性物質と組み合わせた請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物と、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロ-n-プロパンおよびそれらの混合物から選ばれる噴射剤とからなる、請求項18または19に記載のエアロゾル医薬製剤。
【請求項24】
更に、別の治療活性物質を含んでなる、請求項13〜22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
別の治療活性物質がβ2-アドレナリン受容体アゴニストである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物とPDE4インヒビターとの組合せを、生理学的に許容される希釈剤または担体と共に含んでなる医薬組成物。
【請求項27】
抗炎症性および/またはアレルギー性の症状を有するヒトまたは動物の被験体の治療方法であって、そのヒトまたは動物の被験体に、有効量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(I)の化合物またはその生理学的に許容される溶媒和物を投与することを含んでなる前記治療方法。
【請求項28】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法であって、式(II):
【化2】

の化合物またはその塩のアルキル化を含んでなる前記方法。
【請求項29】
アルキル化が、式(II)の化合物またはその塩をフルオロメチルハライドと反応させることにより行なわれる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
請求項3に記載の非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物の調製方法であって、
(a)非溶媒和性溶剤の存在下で、式(I)の化合物を結晶化するか;または
(b)溶媒和形態の式(I)の化合物を脱溶媒和する
ことを含んでなる前記方法。
【請求項31】
請求項3に記載の非溶媒和1型多形としての式(I)の化合物の調製方法であって、式(I)の化合物をメチルイソブチルケトン、酢酸エチルまたは酢酸メチルに溶解し、非溶媒和性抗溶剤の添加により式(I)の化合物を非溶媒和1型として生産することを含んでなる前記方法。
【請求項32】
式(II):
【化3】

の化合物またはその塩。
【請求項33】
固体の結晶性塩の形態である、請求項32に記載の式(II)の化合物。
【請求項34】
ジイソプロピルエチルアミン塩の形態である、請求項33に記載の式(II)の化合物。
【請求項35】
請求項32に記載の式(II)の化合物の調製方法であって、
(a)式(III)の化合物と2-フロン酸の活性化誘導体とを、式(III)の化合物1モル当たり少なくとも2モルの活性化誘導体の量で反応させて、式(IIA):
【化4】

の化合物を得て;そして
(b)ステップ(a)の生成物を、水溶性2-フロイルアミドを形成できる有機性第一級または第二級アミン塩基と反応させることにより、式(IIA)の化合物からイオウに結合している2-フロイル成分を除去する
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項36】
更に、
(c1)ステップ(b)の生成物が実質的に水非混和性の有機溶剤に溶解する場合は、ステップ(b)で得られるアミド副生成物を水性洗浄液で洗い出すことにより式(II)の化合物を精製するか;または
(c2)ステップ(b)の生成物が水混和性溶剤に溶解する場合は、ステップ(b)の生成物を水性媒体で処理して純粋な式(II)の化合物またはその塩を沈殿させるようにすることにより式(II)の化合物を精製する
ステップを含んでなる、請求項35に記載の式(II)の化合物の調製方法。
【請求項37】
請求項32に記載の式(II)の化合物の調製方法であって、
(a)式(III)の化合物と2-フロン酸の活性化誘導体とを、式(III)の化合物1モル当たり少なくとも2モルの活性化誘導体の量で反応させて、請求項35に記載の式(IIA)の化合物を得て;そして
(b)ステップ(a)の生成物を、更にもう1モルの式(III)の化合物と反応させることにより、式(IIA)の化合物からイオウに結合している2-フロイル成分を除去して、2モルの式(II)の化合物を得る
ことを含んでなる、前記方法。
【請求項38】
式(IIA):
【化5】

の化合物。
【請求項39】
式(VI):
【化6】

の化合物。
【請求項40】
式(VII):
【化7】

の化合物またはその塩。
【請求項41】
式(VIII):
【化8】

の化合物。
【請求項42】
式(IX):
【化9】

の化合物。
【請求項43】
式(IXA):
【化10】

[式中、Xはハロゲンを表わす]
の化合物。
【請求項44】
式(XII):
【化11】

の化合物またはその塩。
【請求項45】
式(XV):
【化12】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物。
【請求項46】
式(XVI):
【化13】

の化合物。
【請求項47】
式(XVII):
【化14】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物またはその塩。
【請求項48】
式(XX):
【化15】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物またはその塩もしくは誘導体。
【請求項49】
式(XXIII):
【化16】

[式中、Lはフッ素以外の脱離基を表わす]
の化合物。
【請求項50】
請求項4に記載の非溶媒和2型多形の式(I)の化合物の調製方法であって、非溶媒和形態の式(I)の化合物をメタノールまたは無水ジクロロメタンに溶解し、式(I)の化合物を非溶媒和2型多形として再結晶化させることを含んでなる前記方法。
【請求項51】
請求項5に記載の非溶媒和3型多形の式(I)の化合物の調製方法であって、式(I)の化合物またはその溶媒和物を水の存在下でジクロロメタンに溶解し、式(I)の化合物を非溶媒和3型多形として再結晶化させることを含んでなる前記方法。
【請求項52】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法であって、式(VI):
【化17】

の化合物をフッ素供給源と反応させることを含んでなる前記方法。
【請求項53】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法であって、11-β-ヒドロキシ基が保護またはマスキングされている式(I)の化合物を脱保護またはアンマスキングすることを含んでなる前記方法。
【請求項54】
11-β-ヒドロキシ基が保護されており、かつ、式(XV):
【化18】

[式中、Pはヒドロキシ保護基を表わす]
の化合物を脱保護することを含んでなる、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
11-β-ヒドロキシ基がマスキングされており、かつ、式(XVI):
【化19】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物または誘導体を還元することを含んでなる、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法であって、式(XXIII):
【化20】

[式中、Lは脱離基を表わす]
の化合物をフッ素供給源と反応させることを含んでなる前記方法。
【請求項57】
式(XIII):
【化21】

の化合物。
【請求項58】
式(XIV):
【化22】

の化合物またはその塩。
【請求項59】
式(XXI):
【化23】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物または誘導体。
【請求項60】
式(XXII):
【化24】

[式中、11-カルボニル基はマスキングされている]
の化合物または誘導体。
【請求項61】
式(X):
【化25】

の化合物。
【請求項62】
請求項1に記載の式(I)の化合物またはその溶媒和物の調製方法であって、3-カルボニル基が保護またはマスキングされている式(I)の化合物の誘導体を脱保護またはアンマスキングすることを含んでなる前記方法。
【請求項63】
請求項30に記載の式(II)の化合物の調製方法であって、請求項62に記載の式(X)の化合物を、カルボン酸をチオカルボン酸に変換させるのに好適な試薬で処理することを含んでなる前記方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−77145(P2010−77145A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265248(P2009−265248)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【分割の表示】特願2002−518238(P2002−518238)の分割
【原出願日】平成13年8月3日(2001.8.3)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】