説明

排ガス浄化装置

【課題】排ガス除去用繊維状フィルターに水膜状の水フィルターを形成して、排ガスを水フィルターと効率良く接触させ、水フィルターと、排ガス除去用繊維状フィルターに形成される水膜状の水フィルターとによって、排ガスの浄化効率を高めることができる排ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】 排ガスの流路の中途に水フィルターを設ける排ガス浄化装置において、前記水フィルターよりも下流に、排ガス除去用繊維状フィルターを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉等から出る排ガスによる悪影響が問題となっている。
【0003】
このような排ガスには、黒煙、粒子状物質(Particulate Matter)、二酸化硫黄(SOx)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質が含まれており、これらの有害物質は人間の呼吸器に悪影響を与えるほか、発ガン性のおそれが指摘されたりするなど人体に悪い影響をおよぼすおそれがある。さらには、酸性雨や光化学オキシダントの原因になったりするなど環境にも悪い影響をおよぼすおそれがあることから、例えばディーゼルエンジン車における排出量を規制する法律が制定されるなど、有害物質の排出量の減少が求められている。
【0004】
ここで、黒煙とは、1nm〜100nm程度の微粒子炭素等の集合体をいう。
【0005】
また、粒子状物質(Particulate Matter)とは、サルフェート(硫酸塩)及びSOF(Soluble Organic Fraction:可溶有機成分)とに大別されるものであり、サルフェートとは、燃料中の硫黄分が酸化されて生成した硫酸化合物の総称をいい、エンジンの高負荷時や酸化力の強い触媒がある場合に多量に生成される。SOFとは、比較的低沸点で溶媒抽出が可能な有機成分のことをいい、具体的には軽油や潤滑油の未燃焼分をいう。
【0006】
また、病院の手術室からのホルムアルデヒドや亜酸化窒素等の有機薬剤を含む排ガスについても、シックハウスの原因となったり、地球温暖化の原因となるなど、人体や環境への悪影響が問題となっている。
【0007】
そこで、これらの排ガス中の有害物質を浄化するため、フィルターに排ガスを通過させて有害物質を捕集するとともに、このフィルターを加熱することによって、粒子状物質を酸化させ減少させる排ガス浄化装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平2002−70534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の浄化装置では、排ガスを加熱する際、高熱を発することから、高熱による悪影響、例えばディーゼルエンジン車の場合、エンジンに負担がかかってしまうといった問題点があった。
【0009】
また、排ガスを捕集したフィルターを加熱することによって炭素、粒子状物質を減少させるものの、フィルターによる排ガスの捕集効率が悪く、しかも、黒煙や粒子状物質と、窒素酸化物とは、トレードオフの関係にあるため、加熱され高温になると排ガス中に含まれる窒素酸化物の成分である窒素と酸素の反応が促進されてしまう等、窒素酸化物の除去については、ほとんど考慮されておらず、排ガスの浄化効率が悪いという問題点があった。
【0010】
さらに、二酸化硫黄の除去についてもほとんど考慮されておらず、エンジンの燃料中の二酸化硫黄を減らすことによって対処しているのが現状であった。
【0011】
このように排ガスの浄化効率が悪いという問題点があった
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、排ガスの流路の中途に水フィルターを設ける排ガス浄化装置において、前記水フィルターよりも下流に、排ガス除去用繊維状フィルターを設けたことを特徴とする排ガス浄化装置を提供するものである。
【0013】
また、前記排ガス除去用繊維状フィルターを、親水性を有するように構成するとともに、前記水フィルターに近接させて配置したことにも特徴を有する。
【0014】
また、前記排ガス除去用繊維状フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングして構成したことにも特徴を有する。
【0015】
また、前記排ガス除去用繊維状フィルターは、凸状接触面及び/又は凹状接触面を具備することにも特徴を有する。
【0016】
また、前記水フィルターよりも上流に、排ガスの温度を下げるインタークーラーを設けたことにも特徴を有する。
【0017】
また、前記水フィルターの温度を調整するラジエーターを取り付けたことにも特徴を有する。
【0018】
また、前記排ガスは、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、手術室のいずれかの排ガスであることにも特徴を有する。
【0019】
また、前記排ガスの流路に活性炭素繊維を配置したことにも特徴を有する。
【0020】
また、前記水フィルターに、尿素を添加したことにも特徴を有する。
【0021】
また、前記水フィルターに、炭酸カルシウムを添加したことにも特徴を有する。
【0022】
また、前記水フィルターに、炭酸カルシウムと尿素とを添加したことにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0023】
(1)請求項1記載の本発明では、排ガスの流路の中途に水フィルターを設ける排ガス浄化装置において、前記水フィルターよりも下流に、排ガス除去用繊維状フィルターを設けたので、水フィルターと排ガス除去用繊維状フィルターとで排ガスをより確実に浄化することができる。
【0024】
(2)請求項2記載の本発明では、前記排ガス除去用繊維状フィルターを、親水性を有するように構成するとともに、前記水フィルターに近接させて配置したので、排ガスによる水フィルターの爆起を利用して排ガス除去用繊維状フィルター表面に水膜状の水フィルターを形成して、排ガスを水フィルターと効率良く接触させ、排ガス中の有害物質を捕捉することができる。
【0025】
従って、水フィルターと、排ガス除去用繊維状フィルターに形成される水膜状の水フィルターとによって、排ガスをより確実に、しかも効率良く浄化することができる。
【0026】
(3)請求項3記載の本発明では、前記排ガス除去用繊維状フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングして構成したので、前記排ガス除去用繊維状フィルターに高い親水性を持たせることができるとともに、光触媒機能を持たせることができる。
【0027】
従って、排ガス中の有害物質を、水フィルター及び排ガス除去用繊維状フィルターの表面の水フィルターで捕捉することができるとともに、排ガス中の有害物質を、排ガス除去用繊維状フィルターで分解することができる。
【0028】
(4)請求項4記載の本発明では、前記排ガス除去用繊維状フィルターは、凸状接触面及び/又は凹状接触面を具備することとしたので、排ガスと排ガス除去用繊維状フィルター上の水フィルターとの接触面積をより広くして、排ガスの浄化効率を向上することができる。
【0029】
(5)請求項5記載の本発明では、前記水フィルターよりも上流に、排ガスの温度を下げるインタークーラーを設けたので、水フィルターを通過させる排ガスの温度を下げることができる。
【0030】
従って、水フィルターの蒸発を防止することができ、水の損失を防止することができる。
【0031】
(6)請求項6記載の本発明では、前記水フィルターの温度を調整するラジエーターを取り付けたので、水フィルターの水温を一定に保つことができる。従って、水フィルターでの排ガスの浄化を安定して行うことができる。
【0032】
(7)請求項7記載の本発明では、前記排ガスは、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、手術室のいずれかの排ガスであることとしたので、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、手術室のいずれかの排ガスを、より確実に、しかも効率良く浄化することができる。
【0033】
(8)請求項8記載の本発明では、前記排ガスの流路に活性炭素繊維を配置したので、活性炭素繊維で排ガス中の有害物質を吸着・還元することができる。従って、より確実に排ガスを浄化することができる。
【0034】
(9)請求項9記載の本発明では、前記水フィルターに、尿素を添加したので、排ガス中に黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物が含まれる場合に、排ガス中の黒煙、粒子状物質を水によって捕捉することができるとともに、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を、尿素から発生するアンモニア(NH)の作用によって、窒素(N)と水(HO)に分解することができる。
【0035】
従って、排ガス中の有害物質である黒煙、粒子状物質、窒素酸化物を無害化することができる。
【0036】
(10)請求項10記載の本発明では、前記水フィルターに、炭酸カルシウムを添加したので、排ガス中に黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物が含まれる場合に、排ガス中の黒煙、粒子状物質を水によって捕捉することができるとともに、排ガス中の二酸化硫黄(SOx)を硫酸カルシウム(CaSO)に石膏化することができる。
【0037】
従って、排ガス中の有害物質である黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄を無害化することができる。
【0038】
(11)請求項11記載の本発明では、前記水フィルターに、炭酸カルシウムと尿素とを添加したので、排ガス中に黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物が含まれる場合に、排ガス中の黒煙、粒子状物質を水によって捕捉することができるとともに、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を、尿素から発生するアンモニア(NH)の作用によって、窒素(N)と水(HO)に分解することができる。
【0039】
また、排ガス中の二酸化硫黄(SOx)を硫酸カルシウム(CaSO)に石膏化することができる。
【0040】
さらには、酸化窒素(NOx)を水中の金属イオンの作用によって酸化させ、水フィルター中に溶解させた後、炭酸カルシウムを触媒として中和させ塩基とすることができる。
【0041】
従って、排ガス中の有害物質である黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物を無害化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明に係る排ガス浄化装置は、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、手術室のいずれかの排ガスの流路の中途に水フィルターを設け、この水フィルターよりも下流に、排ガス除去用繊維状フィルターを設けるものであり、水フィルターと排ガス除去用繊維状フィルターとで排ガスをより確実に浄化するものである。
【0043】
特に、前記排ガス除去用繊維状フィルターを、アルミナ繊維をチタニアコーティングして構成して、高い親水性を持たせるとともに、光触媒機能を持たせるようにしている。
【0044】
さらには、この排ガス除去用繊維状フィルターを、前記水フィルターに近接させて配置しており、排ガスによる水フィルターの爆起を利用して排ガス除去用繊維状フィルター表面に水膜状の水フィルターを形成して、排ガスを水フィルターと効率良く接触させ、排ガス中の有害物質を捕捉するようにしている。
【0045】
従って、水フィルターと、排ガス除去用繊維状フィルターに形成される水膜状の水フィルターとの両水フィルターによって、排ガス中の有害物質をより確実に、しかも効率良く捕捉することができるとともに、排ガス除去用繊維状フィルターによって、排ガス中の有害物質を分解することができる。
【0046】
しかも、前記排ガス除去用繊維状フィルターは、凸状接触面及び/又は凹状接触面を具備することとしたので、排ガスと排ガス除去用繊維状フィルター上の水フィルターとの接触面積をより広くして、排ガスの浄化効率を向上するようにしている。
【0047】
また、本発明に係る排ガス浄化装置は、前記水フィルターよりも上流に、排ガスの温度を下げるインタークーラーを設けるとともに、前記水フィルターの温度を調整するラジエーターを取り付けて、水フィルターを通過させる排ガスの温度を下げるとともに、水フィルターの水温を一定に保つようにしており、水フィルターでの排ガスの浄化を安定させ、水フィルターの蒸発を防止して、水の損失を防止することができるようにしている。
【0048】
そして、前記排ガスの流路に活性炭素繊維を配置して、活性炭素繊維で排ガス中の有害物質を吸着・還元させ、より確実に排ガスを浄化することができるようにしている。
【0049】
ここで、排ガス中に黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物が含まれる場合には、前記水フィルターに、炭酸カルシウムと尿素とを添加して、排ガス中の有害物質である黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物を無害化するようにしてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、本発明に係る排ガス浄化装置の実施例を図面を用いて具体的に説明する。
【0051】
なお、本実施例では、排ガス浄化装置を、ディーゼルエンジン車のマフラーの代わりに取り付けて、黒煙、粒子状物質、二酸化硫黄、窒素酸化物を含む排ガスを浄化する場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、病院の手術室からの排ガス等、排ガスを発生させるものに適用して幅広く適用することができるものである。
【0052】
本実施例に係る排ガス浄化装置Aは、図1に示すように、タンク1に連結管2と排気筒3とを取り付けて構成しており、ディーゼルエンジンから出た黒煙、粒子状物質(以下PMともいう)、二酸化硫黄(以下SOxともいう)、窒素酸化物(以下NOxともいう)を含む排ガスを連結管2によってタンク1内に送り込み、このタンク1内で排ガスを浄化し、浄化された気体を排気筒3によって排気するものである。
【0053】
タンク1は、その側面に取り付けられた給水口10から水を所定量(ここではタンク1の高さの半分程度)給水して、タンク1内に水フィルターWを形成している。
【0054】
従って、排ガスを、タンク1内の水フィルターWに接触させて、排ガス中の有害物質を捕捉することができる。
【0055】
連結管2は、図1に示すように、一端をディーゼルエンジンの排気口(図示しない)と接続する一方、図3に示すように、他端を二股に分岐させてタンク1内部の底面近傍に配設する排出部24,24にそれぞれ接続している。
【0056】
排出部24には、図1及び図3に示すように、直径2mm程度の比較的小さな排出穴20を多数(例えば8000個)形成している。
【0057】
従って、ディーゼルエンジンから排出された排ガスは、排出部24の多数の排出穴20,20,20・・・・によって、細かい多数の気泡となり水フィルターWへ送り込まれる。その結果、大きな気泡が水フィルターWを通過する場合に比べて、排ガスをタンク1内全体に拡散させて噴出させることができる。すなわち、水フィルターWとの接触効率をより高めることができて、水フィルターWによる有害物質の捕捉効率をより向上することができる。
【0058】
また、連結管2の中途部には、排気ガスを冷却するインタークーラー21を設けて、前記タンク1内の水フィルターWを構成する水の蒸発を防止するようにしている。
【0059】
また、タンク1の天井部に形成する排気口3aには、排気筒3を取り付けて、タンク1内部で浄化した排ガスをタンク1から排気筒3に送るようにしている。
【0060】
ここで、排気筒3は中途より分岐させて、一端を浄化した排ガスを大気中に排気する排気路31とするとともに、他端を排ガスをタンク1内に再び循環する排ガス循環路32としている。
【0061】
排ガス循環路32は、その先端をタンク1内部の底面近傍に配設する循環排ガス排出部33,33,33に接続している。
【0062】
循環排ガス排出部33には、上述した前記排出部24と同様に、直径2mm程度の比較的小さな排出穴を多数(例えば8000個)形成している(図示しない)。図中、34は循環手段であり、例えばファン等によって構成して、排気筒3からの排ガスをタンク1内に再び循環させるようにしている。
【0063】
従って、タンク1内で浄化した排ガスを、再び細かい多数の気泡として水フィルターWへ送り込み再浄化することができ、排ガスをより確実に浄化することができる。
【0064】
そして、図1に示すように、連結管2の中途に設けたインタークーラー21の上流、すなわち、インタークーラー21とディーゼルエンジンの排気口との間、及び排気路31の中途部には、活性炭素繊維を収容した炭素繊維収容部30をそれぞれ設けている。
【0065】
このようにして、インタークーラー21の上流に炭素繊維収容部30を設けることで、活性炭素繊維を触媒・吸着剤として、前記タンク1でNOxを捕捉する前にNOxをできるだけ還元・分解するとともに、排気路31の中途部に炭素繊維収容部30を設けることで、活性炭素繊維を触媒・吸着剤として、前記タンク1で捕捉できなかったNOxを還元・分解することができる。
【0066】
また、図1に示すように、タンク1側面下部には、水循環管35を取り付けている。
【0067】
水循環管35の基端近傍には、ポンプPを設けて、タンク1内の水を水循環管35に吸水できるようにしている。
【0068】
一方、水循環管35の先端は、送水切替装置36を介してタンク1内の天井部近傍に配置する散水管37と、タンク1側面中部に設ける循環排水管38とに接続しており、ポンプPを駆動させ水循環管35に吸水した水を、送水切替装置36によって、散水管37と循環排水管38とのいずれかに適宜切り替えて給水して、散水管37又は循環排水管38からタンク1内に水を循環できるようにしている。
【0069】
散水管37は、例えば散水バルブ等を備えて構成し、ポンプPによって吸水した水をタンク1の天井部近傍からタンク1内に散水できるようにしている。
【0070】
このように、水をタンク1の天井部近傍から散水できるように構成することで、後述する両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’が汚れた際、タンク1の天井部近傍からの散水によって洗浄することができる。
【0071】
また、水循環管35の中途部には、ラジエーター13を取り付けており、ポンプPによって吸水したタンク1内の水を冷却し、その後、散水管37と循環排水管38とのいずれかから再びタンク1内に給水できるようにしている。従って、タンク1内の水温を一定に保って、タンク1内での排ガスの浄化処理を安定して行うことができる。
【0072】
なお、水循環管35の適宜位置に、酸化チタンを設けるとともに、この酸化チタンに紫外線を照射して、排ガス中の有害物質を捕捉することによる水の汚れを取り除くようにしてもよい。
【0073】
また、ポンプPとラジエーター13との間には、排水ドレン12を設けて、排ガス中の有害物質を捕捉することによって汚れた水フィルターWを構成する水を適宜排水できるようにしており、排水された水は、遠心分離機(図示しない)によって、液層と固体層とに分離させ、液層は、給水口10から再びタンク1内に給水する一方、固体層は容易に焼却処理できるようにしている。
【0074】
図中、11は水が収容されたサブタンクであり、運転中など、給水口10からタンク1内に水を給水できない場合や、タンク1内の水が蒸発などにより減少した場合に、タンク1にサブタンク11から給水できるようにしている。
【0075】
なお、このサブタンク11に貯蔵される水を、炭酸カルシウム(CaCO)の含有量の多い水としたり、過酸化水素水としたり、あるいは光触媒によって殺菌した水としたりすることによって、水フィルターWによる排ガス中の有害物質の捕捉効率を向上するようにしてもよい。
【0076】
ここで、前記タンク1の内部構成について詳説する。
【0077】
タンク1内の水フィルターWには、尿素を添加している。
【0078】
このようにして、水フィルターWに尿素を添加することによって、排ガス中の黒煙、PMを水によって捕捉できるとともに、酸化窒素(NOx)を、尿素から発生するアンモニア(NH)の作用によって、無害な窒素(N)と水(HO)とに分解することができる。
【0079】
また、タンク1の底面上には、例えば焼成珊瑚や琉球石灰岩等の炭酸カルシウム(CaCO)を含む炭酸カルシウム含有材23を配設して、タンク1内部の水フィルターWを炭酸カルシウム水溶液としている。
【0080】
従って、前記連結管2によってタンク1内部に送り込まれた排気ガスに含まれるSOxを、炭酸カルシウムと反応させて石膏化することにより無害化することができる。
【0081】
このように、タンク1内の水フィルターWに尿素を添加するとともに、炭酸カルシウム水溶液とすることで、黒煙、PM、NOx、SOxをタンク1内の水フィルターWによって無害化することができる。
【0082】
また、タンク1内には、図1及び図2に示すように、第1の排ガス除去用繊維状フィルター22と第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’とを収容している。
【0083】
両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’は、図1に示すように、それぞれタンク1の前壁1aと後壁1bとの間に、凸状接触面22aと凹状接触面22bとを山と谷の形状で交互に連設することによって上下にV字状のジグザグ形状に構成している。
【0084】
また、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’は、図3に示すように、その左右幅をタンク1の左右側壁1c,1dと同じにしており、タンク1内の排ガスを確実に両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’を通過させるようにしている、
第1の排ガス除去用繊維状フィルター22は、タンク1の高さの半分程度までに収納された前記水フィルターWの中に浸漬されているとともに、水フィルターWの喫水位置に第1の排ガス除去用繊維状フィルター22のジグザグ状の頂部が位置するようにしている。
【0085】
また、第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’は、タンク1内の水フィルターWの上方の気相K中に、水フィルターWと近接させて配置している。
【0086】
しかも、各フィルター22と22’とは、V字状のジグザグ形状が互いに同一方向に相対して配設されており、各フィルター22と22’との間には、水フィルターWと気相Kとが二層に介在されている。
【0087】
両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’は、例えば約100μmの極めて目の細かな熱伝導率が高く、また熱変性および酸による腐蝕に強いアルミナ繊維等の親水性を有する繊維状物質で構成するとともに、その表面をチタニアコーティング加工している。
【0088】
また、図中25,25,25・・・・は光源であり、例えばブラックライトなどの紫外線ランプを左・右壁1c,1d間に架設するとともに、前記両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’の凸状接触面22aと凹状接触面22bのそれぞれの間に配設して、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’に光を照射するようにしている。
【0089】
なお、タンク1を透明にして構成し、タンク1外から光を照射させることもできる。
【0090】
このようにして、アルミナ繊維をチタニアコーティングして両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’を構成するとともに、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’に紫外線を照射することで、光が照射された際に超親水性(例えば、水と排ガス除去用繊維状フィルター表面との接触角が10°以下)を有する光触媒機能をもたせることができるとともに、酸化チタンの光触媒機能によって、排ガス中の有害物質(例えば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、キシレン、トルエン、スチレン、硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、トリメチルアミン、イソ吉草酸、アンモニア、窒素酸化物、硫黄酸化物等)を分解・酸化できるようにしている。
【0091】
このようにして、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’をタンク1内に配設することで、前記排出穴20,20,20・・・・から水フィルターWへ送り込まれた気泡を、水フィルターW中に配置された第1の排ガス除去用繊維状フィルター22によって、水フィルターW内に滞留させ、その後、通過させることができる。
【0092】
すなわち、排ガスと水フィルターWとの接触時間をより長くすることができ、排ガス中の有害物質の捕捉効率をより高めることができる。
【0093】
さらには、水フィルターWへ送り込まれた多数の細かな気泡同士が、水フィルターW内で結合して集合化し、大きな気泡となった際、水フィルターW内に配置した繊維状の第1の排ガス除去用繊維状フィルター22を通過させることで、再び細かな気泡とすることができ、水フィルターWとの接触効率を高めることができる。
【0094】
一方、前記第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’は、上述したように、気相K中に前記水フィルターWに近接させて配置しているので、排出穴20,20,20・・・・から水フィルターWに送り込まれた排ガスの爆起によって水フィルターWの表面から飛散した水が、第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’の表面上に付着する。
【0095】
ここで、排ガス除去用繊維状フィルター22’は、極めて目の細かな繊維で構成するとともに、紫外線光照射により親水化する光触媒加工を施しているので、排ガスの爆起により水フィルターWの表面から飛散した水は、第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’を構成する繊維のそれぞれの線表面に、平らに張り付いたような形となる。
【0096】
すなわち、排ガス除去用繊維状フィルター22’の表面には、極めて目の細かな繊維表面に張り付いた水によって、数ミクロンから数十ミクロンの小さな隙間を有した薄い水膜状の水フィルターW’が形成される。
【0097】
従って、この小さな隙間を有した水フィルターW’に排ガスを通過させることによって、液中では泡状の排ガスの表面のみが水フィルターWと接触するのに比べ、気相K中に拡散された排ガスを排ガス除去用繊維状フィルター22’の表面の水フィルターW’とムラなく接触させることができ、有害物質の捕捉効率をより大きくすることができる。
【0098】
しかも、排ガス除去用繊維状フィルター22’は、前記水フィルターWよりも下流である気相K中に配置しているので、水フィルターWで処理されずに水フィルターWの表面から飛散した排ガスを、排ガス除去用繊維状フィルター22’に確実に接触させることができる。すなわち、排ガスを水フィルターWと水フィルターW’とにそれぞれ接触させることができ、排ガスをより確実に浄化処理してタンク1外に排出できる。
【0099】
さらには、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’は上下にV字状のジグザグ状に形成しているので、排ガスと両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’との接触面積をより大きくすることができる。
【0100】
このようにして、より効率の良い気液接触を行うことにより、黒煙、PM、NOx、SOxをより効率良く捕捉することができるようにしている。
【0101】
また、両排ガス除去用繊維状フィルター22,22’は、上述したように熱伝導率の高いアルミニウム繊維などによって構成している。
【0102】
従って、浄化された排ガス中の水蒸気は、気相K中の熱伝導率の高い第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’によって冷却されて復水され、再びタンク1内に戻る。その結果、タンク1内の水フィルターWの減少を可及的に防止することができる。
【0103】
なお、本実施例では、タンク1内に配設する排ガス除去用繊維状フィルターを上述したように、水フィルターW中と、気相K中にそれぞれ配置したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、水フィルターW中に複数配設したり、気相K中に複数配設したりするなど、複数段配設することもでき、また、気相K中にのみ配設するなど、様々な態様で配設することができる。
【0104】
また、本実施例では、タンク1、連結管2、排気筒3、排水ドレン12、排出部24、排気路31、排ガス循環路32、循環排ガス排出部33、水循環管35、散水管37、循環排水管38のそれぞれをアルミニウムによって構成して、焼却、リサイクルを容易にするようにしている。
【0105】
本実施例における排ガス浄化装置Aは、以上のように構成されており、以下には、上記排ガス浄化装置Aを用いて排ガスを浄化する行程について説明する。
【0106】
(1)活性炭素繊維収容部30を通過させNOxをできるだけ還元・分解するとともに、インタークーラー21によって温度を下げた排ガスを、水フィルターWが形成されたタンク1内に送り込み、排ガス中の黒煙、PMの大部分を水フィルターW中の水によって捕捉する。その後、捕捉された黒煙、PMは、タンク1の底部に沈殿する。
【0107】
このとき、タンク1内部の排出部24には、多数の排出穴20,20,20・・・・を形成しているので、排ガスは排出穴20,20,20・・・・からタンク1の水フィルターW内に細かな気泡状態で送り込まれ、水フィルターWとの接触効率を高めることができ、水フィルターWによる排ガス中の黒煙、PMの捕捉効率をより向上させることができる。
【0108】
(2)また、水フィルターWに送り込まれた排ガス中のSOxは、水フィルターW中の炭酸カルシウム(炭酸カルシウム水溶液)に反応し、石膏化する。
【0109】
(3)そして、水フィルターWに送り込まれた排ガス中のNOxは、まず、水フィルターWに添加された尿素から出たアンモニアの作用によって窒素と水に分解される(4NO+4NH+O→4N+6HO)。
【0110】
あるいは、水フィルターW中の金属イオンの作用によって酸化されて(NO+O→NO)、NO、NOとなり、水フィルターW中に溶解した後、水フィルターW中の炭酸カルシウムによって中和され塩基となり無害化する。
【0111】
(4)さらに、水フィルターW中で捕捉されなかったNOxは、尿素が入った水溶液が加熱され分解されることによってできるアンモニア(CO(NH)2+HO→2NH+CO)と気相E中の酸素とに反応して、窒素と水とに分解される(NH+NO+O→N+HO)。
【0112】
(5)また、第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’の表面上には、排出穴20,20,20・・・・から水フィルターWに気泡状態で送り込まれた排ガスの爆起により飛散した水が付着する。
【0113】
このとき、第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’には、光の照射による光励起に応じて親水化される光触媒加工を施しているので、薄い水膜状の水フィルターW’が第2の排ガス除去用繊維状フィルター22’表面に形成される。
【0114】
この水フィルターW’の間に生じる小さな隙間(数ミクロンから数十ミクロン)を排ガスが通過することによって、気泡と水フィルターWとの接触よりも更に効率のよい気液接触を行い、排ガス中の有害物質をより効率良く捕捉する。
【0115】
なお、排ガス中の有害物質を捕捉することによって汚れた水は、排水ドレン12から排水され、その後、遠心分離機(図示しない)によって、尿素及び炭酸カルシウム溶液と、炭素及び石膏とに遠心分離し、尿素及び炭酸カルシウム溶液を、給水口10から再びタンク1内に給水する一方、炭素及び石膏固体層を容易に焼却処理する。
【0116】
このようにして、複数の水フィルターに排ガスを気泡状や気体状など様々な状態で接触させることで、排ガス中の黒煙、PM、NOx、SOxを効率よく無害化することができる。
【0117】
従って、タンク1内で排ガス中の有害物質の大部分を浄化し、その後、排気口3aから排気筒3を介して大気に排気することができ、人体や環境への悪影響を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】排ガス浄化装置の全体説明図。
【図2】図1のI−I矢視線における断面図。
【図3】II−II矢視線の一部切欠断面図
【符号の説明】
【0119】
W 水フィルター
A 排ガス浄化装置
1 タンク
2 連結管
3 排気筒
13 ラジエーター
21 インタークーラー
22,22’ 排ガス除去用繊維状フィルター
22a 凸状接触面
22b 凹状接触面
30 活性炭素繊維収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの流路の中途に水フィルターを設ける排ガス浄化装置において、
前記水フィルターよりも下流に、排ガス除去用繊維状フィルターを設けたことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排ガス除去用繊維状フィルターを、親水性を有するように構成するとともに、前記水フィルターに近接させて配置したことを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排ガス除去用繊維状フィルターは、アルミナ繊維をチタニアコーティングして構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記排ガス除去用繊維状フィルターは、凸状接触面及び/又は凹状接触面を具備することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記水フィルターよりも上流に、排ガスの温度を下げるインタークーラーを設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記水フィルターの温度を調整するラジエーターを取り付けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記排ガスは、ディーゼルエンジン車、船舶、コージェネレーション、建設機械、焼却炉、手術室のいずれかの排ガスであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記排ガスの流路に活性炭素繊維を配置したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記水フィルターに、尿素を添加したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記水フィルターに、炭酸カルシウムを添加したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
前記水フィルターに、炭酸カルシウムと尿素とを添加したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(1)に、排ガスを送気する連結管(2)と、タンク(1)内において浄化された気体を排気する排気筒(3)とをそれぞれ連通連設した排ガス浄化装置において、
タンク(1)内の底部に、連結管2に連通し周面に多数の排出孔(20)を設けた排ガスのための排出部(24)を配設し、
更にその上方には、第1の排ガス除去用繊維状フィルター(22)と第2の排ガス除去用繊維状フィルター(22’)とを二段に配設し、それぞれの各フィルター(22、22’)はタンク(1)の前壁(1a)と後壁(1b)との間に凸状接触面(22a)と凹状接触面(22b)とを山と谷の形状で交互に連設することによって上下にV字状のジグザグ形状に構成し、
しかも、下段の第1の排ガス除去用繊維状フィルター(22)は、タンク(1)の高さの半分程度まで収納された水よりなる水フィルター(W)中に浸漬し、また、上段の第2の排ガス除去用繊維状フィルター(22’)は、上下段の各フィルター(22、22’)のV字状のジグザグ形状が互いに同一方向に相対するようにタンク(1)内の水フィルター(W)の上方の気相(K)中に配置したことを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
水フィルター(W)に、尿素及び/または炭酸カルシウムを添加したことを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
排ガス除去用繊維状フィルター(22、22’)は、光励起可能にアルミナ繊維の表面にチタニアコーティング加工した繊維状物質で構成し、
かつ、タンク(1)を内部に光照射可能に構成することにより、チタニアコーティングに光励起作用を行わせるように構成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−7118(P2006−7118A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188962(P2004−188962)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【特許番号】特許第3694309号(P3694309)
【特許公報発行日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(504246694)有限会社K2R (6)
【出願人】(504165937)
【Fターム(参考)】