説明

排気ガス浄化装置

【課題】 エンジンの軽負荷運転により排気ガスの温度が下がったときでも、粒子除去手段のフィルタを再生することができるようにする。
【解決手段】 排気管10の下流側に流路切換弁35を介して直列通路部31と短絡通路部34とを設ける。短絡通路部34側では第1酸化触媒装置22を排気管10に短絡させて接続する。直列通路部31側では、第1酸化触媒装置22の上流側となる位置に屈曲パイプ33を介して第2酸化触媒装置28を直列に接続する。エンジン9の軽負荷運転により排気ガスの温度が下がっているときには、流路切換弁35を短絡通路部34から直列通路部31側に切換える。これにより、エンジン9からの排気ガスを第2酸化触媒装置28と第1酸化触媒装置22とに流通させ、排気ガスの温度を高めた状態でフィルタ装置25に導く構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に搭載され、ディーゼルエンジン等の内燃機関による排気ガス中から有害物質を除去するのに好適に用いられる排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。また、上部旋回体は、旋回フレームの後部に油圧ポンプを駆動するためのエンジンを搭載し、前記旋回フレームの前側にキャブ、燃料タンク、作動油タンク等を搭載している。
【0003】
ここで、油圧ショベル等の原動機となるエンジンには、一般的にディーゼルエンジンが用いられている。そして、このディーゼルエンジンから排出される排気ガス中には、例えば粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質が含まれることがある。このため、油圧ショベル等の建設機械には、エンジンの排気ガス通路を形成する排気管に排気ガス浄化装置が設けられている。
【0004】
この排気ガス浄化装置は、例えば排気ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する酸化触媒装置(通常、Diesel Oxdation Catalyst、略してDOCとも呼ばれている)と、該酸化触媒装置の下流側に配置され排気ガス中の粒子状物質を捕集して除去するフィルタ装置(通常、Diesel Particulate Filter、略してDPFとも呼ばれている)等とからなる後処理装置を備えている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−188432号公報
【特許文献2】特開2003−120277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術では、排気ガス中の粒子状物質を捕集して除去するフィルタ装置の上流側に1つの酸化触媒装置を設けているだけであるため、例えばフィルタ装置のフィルタを再生するときに燃焼温度が不足することがあり、この場合には、前記フィルタに付着して堆積した粒子状物質を十分に燃焼することができず、当該フィルタの連続再生作業が難しくなってしまう。
【0007】
特に、所謂標準機と呼ばれる中型の油圧ショベルよりも小型で、コンパクトな構造となった小旋回式(小型)の油圧ショベルの場合は、例えば土砂の掘削力、走行能力等が相対的に小さく、エンジンを軽負荷状態で運転することが多いので、例えば排気ガスの温度が250℃よりも下がってしまう。このため、前記酸化触媒を通過した後にフィルタ装置内に流入する排気ガスの温度を所要の温度まで上昇させるのが難しくなり、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させてフィルタを再生することが困難になるという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、エンジンの軽負荷運転により排気ガスの温度が下がったときでも、フィルタ装置のフィルタに付着し堆積した粒子状物質を燃焼させてフィルタを再生することができ、排気ガスの浄化処理を安定して行うことができるようにした排気ガス浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、建設機械の車体に搭載されたエンジンの排気ガス通路に、排気ガス中の成分を酸化するための一の酸化触媒装置と、該一の酸化触媒装置の下流側に配置され前記排気ガス中の粒子状物質を捕集して除去するフィルタ装置とを設けてなる排気ガス浄化装置に適用される。
【0010】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記排気ガス通路の途中には、前記一の酸化触媒装置の上流側に位置して前記排気ガス中の成分を酸化する他の酸化触媒装置と、該他の酸化触媒装置と前記一の酸化触媒装置とに対する排気ガスの流れを選択的に切換える流路切換弁とを設け、該流路切換弁は、前記エンジンから排出される排気ガスの温度が予め決められた基準温度よりも低いときに排気ガスを前記他の酸化触媒装置を経由して前記一の酸化触媒装置に流通させ、排気ガスの温度が前記基準温度を越えるときには、前記他の酸化触媒装置に対する排気ガスの流れを遮断し前記一の酸化触媒装置に排気ガスを流通させる構成としたことにある。
【0011】
また、請求項2の発明によると、前記排気ガス通路は、前記一の酸化触媒装置と他の酸化触媒装置とが直列に接続される直列通路部と、前記他の酸化触媒装置を介することなく前記一の酸化触媒装置と短絡的に接続される短絡通路部とを有する構成とし、前記流路切換弁は、前記直列通路部と短絡通路部とのいずれか一方に前記エンジンからの排気ガスを流通させる構成としている。
【0012】
さらに、請求項3の発明によると、前記基準温度は、240〜280℃の範囲内にある温度としている。
【発明の効果】
【0013】
上述の如く、請求項1の発明によれば、エンジンから排出される排気ガスの温度が基準温度よりも低いときには、この排気ガスを他の酸化触媒装置を経由して一の酸化触媒装置に流通させるため、2つの酸化触媒装置により排気ガスは大きな絞り抵抗を受けて圧損が増大し、エンジンの負荷が増加する。これにより、エンジンは燃料の噴射量を増やすことになり、これに伴って排気ガスの温度を上昇することができる。しかも、2つの酸化触媒装置による酸化触媒反応によっても排気ガスの温度を上昇することができる。
【0014】
この結果、一の酸化触媒装置の下流側に位置するフィルタ装置に対しては、温度の高い排気ガスを導くことができ、例えばフィルタ装置のフィルタを再生するときの燃焼温度を高くすることができる。これによって、粒子状物質を焼き切ることができ、フィルタの再生を円滑に行うことができる。また、エンジンから排出される排気ガスの温度が基準温度を越えるようなときには、他の酸化触媒装置に対する排気ガスの流れを遮断し、一の酸化触媒装置に排気ガスを直接的に流通させることにより、フィルタ装置においてフィルタの再生を行うことができる。
【0015】
従って、請求項1の発明によれば、エンジンの軽負荷運転により排気ガスの温度が下がったときでも、フィルタ装置のフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼させてフィルタを再生することができ、排気ガスの浄化処理を安定して行うことができ、これにより、排気ガス浄化装置としての信頼性を向上することができる。
【0016】
また、請求項2の発明によれば、排気ガス通路は、一の酸化触媒装置と他の酸化触媒装置とが直列に接続される直列通路部と、一の酸化触媒装置と短絡的に接続される短絡通路部とを有する構成としている。これにより、排気ガスの温度が基準温度よりも低いときには、この排気ガスを直列通路部側に流通させ、2つの酸化触媒により排気ガスの温度を上昇させることができる。また、排気ガスの温度が基準温度を越えるようなときには、排気ガスを短絡通路部側を介して一の酸化触媒装置のみに流通させ、フィルタ装置においてフィルタの再生を行うことができる。
【0017】
さらに、請求項3の発明は、基準温度を、240〜280℃の範囲内にある温度としているので、流路切換弁は、この温度を基準として一の酸化触媒装置と他の酸化触媒装置とに対する排気ガスの流れを選択的に切換えることができ、排気ガスの浄化処理を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態による排気ガス浄化装置を備えた油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】上部旋回体のうちキャブ、外装カバーの一部を取除いた状態で拡大して示す平面図である。
【図3】図2中の排気ガス浄化装置をエンジンに取付けた状態で示す要部拡大の平面図である。
【図4】第1酸化触媒装置、フィルタ装置および第2酸化触媒装置等の内部構造を示す部分断面図である。
【図5】第1の実施の形態による排気ガス浄化装置の制御ブロック図である。
【図6】図5中のコントローラによる流路切換制御処理を示す流れ図である。
【図7】第2の実施の形態による排気ガス浄化装置を示す平面図である。
【図8】図7中の第1酸化触媒装置、フィルタ装置および第2酸化触媒装置等の内部構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態による排気ガス浄化装置を、小型の油圧ショベルに搭載した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0020】
ここで、図1ないし図6は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は土砂の掘削作業等に用いられる小型の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載され、該下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置5とにより大略構成されている。また、上部旋回体4は、後述の旋回フレーム6、外装カバー7、キャブ8およびカウンタウエイト14等により構成されている。
【0021】
6は上部旋回体4の旋回フレームで、該旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2上に取付けられている。そして、旋回フレーム6には、その後部側に後述のエンジン9、カウンタウエイト14が設けられ、左前側には後述のキャブ8が設けられている。また、旋回フレーム6には、キャブ8とカウンタウエイト14との間に位置して外装カバー7が設けられ、この外装カバー7は、旋回フレーム6、キャブ8およびカウンタウエイト14と共に、エンジン9等を内部に収容する空間を画成するものである。
【0022】
8は旋回フレーム6の左前側に搭載されたキャブを示し、該キャブ8は、オペレータが搭乗するものである。また、キャブ8の内部には、オペレータが着座する運転席、各種の操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。
【0023】
9は旋回フレーム6の後側に横置き状態で配置されたエンジンで、該エンジン9は、前述の如く小型の油圧ショベル1に原動機として搭載されるため、例えば小型のディーゼルエンジンを用いて構成されている。また、エンジン9の右側には、図2、図3に示すように、排気ガスを排出する排気ガス通路の一部をなす排気管10が設けられ、該排気管10には後述の排気ガス浄化装置21が取付けられている。
【0024】
また、ディーゼルエンジン9は、高効率で耐久性にも優れているが、粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)等の有害物質が排気ガスと一緒に排出されてしまう。そこで、排気管10に取付けられる排気ガス浄化装置21は、一酸化炭素(CO)等を酸化して除去する後述の酸化触媒装置22,28、粒子状物質(PM)を捕集して除去する後述のフィルタ装置25とを含んで構成されている。
【0025】
11はエンジン9の右側に取付けられた油圧ポンプで、該油圧ポンプ11は、作動油タンク(図示せず)と共に油圧源を構成するものである。ここで、油圧ポンプ11は、図2、図3に示すようにエンジン9の右側に動力伝達装置12を介して取付けられ、この動力伝達装置12によりエンジン9の回転出力が伝えられる。そして、油圧ポンプ11は、エンジン9によって駆動されることにより制御弁(図示せず)に向けて圧油(作動油)を吐出するものである。
【0026】
13はエンジン9の左側に位置して設けられた熱交換器で、この熱交換器13は、例えばラジエータ、オイルクーラ、インタクーラ等を前,後方向に並べて配置する構成となっている。
【0027】
14はエンジン9の後側に位置して旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト14は、作業装置5との重量バランスをとるものである。
【0028】
15はエンジン9からの排気ガスを外部に排出する煙突で、該煙突15は、図1に示す如く上部旋回体4の外装カバー7から上方に突出して設けられている。そして、煙突15は、図2〜図5に示すように後述する排気ガス浄化装置21の下流側に配置され、浄化処理された後の排気ガスを大気中に放出する。また、煙突15の下端側には、消音器筒体(図示せず)等が設けられ、この消音器筒体はエンジン9の排気音を低減する機能を有している。
【0029】
次に、エンジン9の排気ガスに含まれる有害物質を除去して浄化する第1の実施の形態による排気ガス浄化装置21について、図3ないし図6を参照しつつ説明する。即ち、排気ガス浄化装置21はエンジン9の上部右側に位置して排気管10に接続されて設けられている。
【0030】
ここで、排気ガス浄化装置21は、排気管10と共に排気ガス通路を構成し、上流側から下流側に排気ガスが流通する間に、この排気ガスに含まれる有害物質を除去するものである。そして、排気ガス浄化装置21は、後述の第1酸化触媒装置22、フィルタ装置25、第2酸化触媒装置28および流路切換弁35を含んで構成されている。
【0031】
22は排気管10の下流側に設けられた一の酸化触媒装置(以下、第1酸化触媒装置22という)で、該第1酸化触媒装置22は、図4に示すように後述の短絡通路部34を介して流路切換弁35に接続された筒状ケース23と、該筒状ケース23内に収容して設けられた酸化触媒24(通常、Diesel Oxdation Catalyst、略してDOCと呼ばれる)とにより構成されている。
【0032】
ここで、酸化触媒24は、図4に示すように、例えば筒状ケース23の内径寸法と同等の外径寸法をもったセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔24Aが形成され、その内面に貴金属等がコーティングされている。そして、酸化触媒24は、所定の温度下で各貫通孔24Aに排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化し二酸化炭素(CO)として除去し、窒素酸化物(NO)を二酸化窒素(NO2)として除去するものである。
【0033】
25は第1酸化触媒装置22の下流側に配置されたフィルタ装置で、該フィルタ装置25は、図4に示すように第1酸化触媒装置22の筒状ケース23にフランジ接続された他の筒状ケース26と、該筒状ケース26内に収容して設けられた粒子状物質除去フィルタ27(通常、Diesel Particulate Filterと呼ばれるが、以下、「DPF」27という)とにより構成されている。
【0034】
ここで、DPF27は、エンジン9から排出される排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集すると共に、捕集した粒子状物質を燃焼して除去することにより排気ガスの浄化を行うものである。また、DPF27は、例えばセラミックス材料等からなる多孔質な部材に軸方向に多数の小孔27Aを設けたセル状筒体により構成され、各小孔27Aは、隣同士で交互に異なる端部が目封じ部材27Bによって閉塞されている。
【0035】
これにより、DPF27は、一方から小孔27Aに流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質を捕集し、隣の小孔27Aから他方に流出させる。そして、捕集した粒子状物質は、前述の如く燃焼して除去され、これにより、DPF27は再生されるものである。また、フィルタ装置25の筒状ケース26には、その下流側に煙突15が接続して設けられている。そして、フィルタ装置25により浄化処理された後の排気ガスは、煙突15内へと流入して大気中に放出される。
【0036】
28は本実施の形態で採用した他の酸化触媒装置(以下、第2酸化触媒装置28という)を示し、該第2酸化触媒装置28は、後述の連結パイプ32を介して流路切換弁35に接続されたケース筒29と、該ケース筒29内に収容して設けられた他の酸化触媒30(DOC)とにより構成されている。そして、この場合の酸化触媒30は、第1酸化触媒装置22の酸化触媒24と同様に構成されている。
【0037】
即ち、酸化触媒30は、図4に示すように、例えばケース筒29の内径寸法と同等の外径寸法をもったセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔30Aが形成され、内面に貴金属等がコーティングされている。そして、酸化触媒30も、所定の温度下で各貫通孔30Aに排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化し二酸化炭素(CO)として除去し、窒素酸化物(NO)を二酸化窒素(NO2)として除去するものである。
【0038】
31は第1酸化触媒装置22と第2酸化触媒装置28とを直列な状態で接続する直列通路部で、該直列通路部31は、後述の連結パイプ32、屈曲パイプ33および第2酸化触媒装置28のケース筒29を含んで構成される。そして、直列通路部31は、後述の流路切換弁35が図5中の戻り位置(A)から切換位置(B)に切換わったときに、第2酸化触媒装置28と第1酸化触媒装置22とをエンジン9の排気管10に対して直列に接続するものである。
【0039】
32は第2酸化触媒装置28の上流側に接続して設けられた連結パイプで、該連結パイプ32は、図3、図4に示す如く第2酸化触媒装置28のケース筒29を後述の流路切換弁35を介して排気管10に接続する。そして、連結パイプ32は、後述の屈曲パイプ33と共に直列通路部31を構成し、流路切換弁35が図5中の戻り位置(A)から切換位置(B)に切換わったときには、第2酸化触媒装置28のケース筒29を排気管10に連通させるものである。
【0040】
33は第1酸化触媒装置22と第2酸化触媒装置28との間を接続する屈曲パイプで、該屈曲パイプ33は、図4に示すように略U字状に屈曲して形成され、その一側端部33Aが第2酸化触媒装置28のケース筒29に接続されている。また、屈曲パイプ33の他側端部33Bは、後述の短絡通路部34と酸化触媒24との中間になる位置で、第1酸化触媒装置22の筒状ケース23に径方向から接続されている。
【0041】
そして、屈曲パイプ33は、連結パイプ32と共に直列通路部31を構成し、後述の流路切換弁35が図5中の戻り位置(A)から切換位置(B)に切換わったときには、第2酸化触媒装置28と第1酸化触媒装置22とをエンジン9の排気管10に対して直列に接続するものである。
【0042】
34は第1酸化触媒装置22の上流側に接続して設けられた短絡通路部で、該短絡通路部34は、図3〜図5に示す如く第1酸化触媒装置22の筒状ケース23を後述の流路切換弁35を介して排気管10に直接的に短絡させて接続するものである。そして、短絡通路部34は、後述の流路切換弁35が戻り位置(A)となったときに、第1酸化触媒装置22の筒状ケース23を排気管10に直接的に短絡させて連通させる。
【0043】
35は流路の切換えを行う流路切換弁で、該流路切換弁35は、例えば図5に示す如く、後述するコントローラ40からの制御信号により戻り位置(A)と切換位置(B)とに切換制御される。そして、流路切換弁35は、戻り位置(A)となったときに、排気管10からの排気ガスを短絡通路部34を介して第1酸化触媒装置22の筒状ケース23内へと流通させ、連結パイプ32(第2酸化触媒装置28)側に排気ガスが流通するのを遮断する。
【0044】
一方、流路切換弁35は、図5中の戻り位置(A)から切換位置(B)に切換えられたときに、排気管10からの排気ガスを直列通路部31(即ち、連結パイプ32および第2酸化触媒装置28のケース筒29)内に向けて流通させ、短絡通路部34内に向けて排気ガスが流通するのを遮断する。
【0045】
この場合、流路切換弁35は、図3、図4中に点線で示すように内部通路35Aを有し、この内部通路35Aは、例えば点Oを中心にして回動されることにより図3、図4に示す如く流路の切換えを行うものである。即ち、流路切換弁35が図5に示す戻り位置(A)となったときには、内部通路35Aが図3に示す位置に配置され、排気管10は短絡通路部34に接続され、直列通路部31(連結パイプ32)側から遮断される。また、流路切換弁35が図5に示す切換位置(B)に切換わったときには、内部通路35Aが図4に示す位置に配置され、排気管10は短絡通路部34から遮断され、直列通路部31(連結パイプ32)側に接続される。
【0046】
36は排気ガスの温度を検出するための温度センサで、該温度センサ36は、図5に示すように、例えば流路切換弁35と排気管10との間に配置され、排気管10から排出される排気ガスの温度Tを検出する。そして、温度センサ36で検出した温度Tは、検出信号として後述のコントローラ40に出力されるものである。
【0047】
37,38はフィルタ装置25に設けられた圧力センサで、この圧力センサ37,38は、DPF27(図4参照)の上流側と下流側とに離間して配置され、それぞれの検出信号をコントローラ40に出力する。そして、コントローラ40は、圧力センサ37で検出した上流側の圧力P1 (図6参照)と圧力センサ38で検出した下流側の圧力P2 とにより、後述の差圧ΔPを演算し、この演算結果からDPF27(図4参照)に付着した粒子状物質、未燃焼残留物等の堆積量を推定するものである。
【0048】
39はエンジン9の回転数を検出する回転センサで、この回転センサ39は、エンジン回転数Nを検出し、その検出信号をコントローラ40に出力する。そして、コントローラ40は、エンジン回転数Nの検出信号に基づいてエンジン9の運転状態を判別するものである。
【0049】
40はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としてのコントローラで、該コントローラ40は、その入力側が温度センサ36、圧力センサ37,38および回転センサ39等に接続され、その出力側はエンジン9および流路切換弁35等に接続されている。また、コントローラ40は、ROM,RAM等からなる記憶部40Aを有し、この記憶部40A内には、後述の図6に示す流路切換制御用の処理プログラムと、予め決められたエンジン回転数Nの判定値Nt、圧力の判定値Pt、基準温度Ta等とが格納されている。
【0050】
ここで、エンジン回転数Nの判定値Ntとは、例えばエンジン9の定格回転数等から決められる回転数であり、エンジン回転数Nが判定値Nt以下となったときには、エンジン9は軽負荷状態で運転される可能性が高くなるものである。また、圧力の判定値Ptは、フィルタ装置25のDPF27(図4参照)に付着した粒子状物質、未燃焼残留物等の堆積量を推定するための判定値であり、後述の差圧ΔPが判定値Pt以上となったときに、前記堆積量が多くなってフィルタ(DPF27)の再生処理が必要と判定することができる。また、基準温度Taは、Ta=240〜280℃の温度範囲内に設定されるものである。
【0051】
そして、コントローラ40は、後述する図6の処理プログラムに従って排気管10を、直列通路部31と短絡通路部34とのいずれか一方に選択的に接続する流路切換制御を行う。即ち、コントローラ40は、回転センサ39、圧力センサ37,38および温度センサ36からの検出信号により、フィルタ装置25のDPF27(図4参照)に付着した粒子状物質、未燃焼残留物等の堆積量が多くなり、これらを燃焼により焼き切ってDPF27の再生を行う必要があり、しかも排気ガスの温度Tが基準温度Taよりも低いと判定したときに、流路切換弁35を戻り位置(A)から切換位置(B)に切換える制御を行うものである。
【0052】
本実施の形態による小型の油圧ショベル1に搭載された排気ガス浄化装置21は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0053】
まず、油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体4のキャブ8に搭乗し、エンジン9を始動して油圧ポンプ11を駆動する。これにより、油圧ポンプ11からの圧油は、制御弁を介して各種アクチュエータに供給される。そして、キャブ8に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2を前進または後退させることができる。
【0054】
一方、キャブ8内のオペレータが作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置5を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。また、小型の油圧ショベル1は、上部旋回体4による旋回半径が小さいため、例えば市街地等のように狭い作業現場でも、上部旋回体4を旋回駆動しながら側溝堀作業等を行うことができ、このような場合には、エンジン9を負荷の軽い状態で稼働することにより騒音の低減化を図るものである。
【0055】
また、エンジン9の運転時には、その排気管10から有害物質である粒子状物質等が排出される。このときに排気ガス浄化装置21は、例えば第1酸化触媒装置22によって排気ガス中の炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)を酸化除去することができる。そして、フィルタ装置25は、図4に示すDPF27によって粒子状物質を捕集し、捕集した粒子状物質を燃焼して除去(再生)する。これにより、浄化した排気ガスを下流側の煙突15から外部に排出することができる。
【0056】
ところで、小型でコンパクトな構造となった小旋回式(小型)の油圧ショベル1は、大型、中型の機種等に比較して作業装置5による土砂の掘削力、走行能力等が相対的に小さく、エンジン9も比較的小型となっている。しかも、この場合のエンジン9は軽負荷状態で運転することが多いので、例えば排気ガスの温度が前述した基準温度よりも下がってしまう。
【0057】
このため、例えば第1酸化触媒装置22のみを通過した排気ガスを下流側のフィルタ装置25に導いた場合には、フィルタ装置25内に流入する排気ガスの温度を所要の温度まで上昇させるのが難しくなり、DPF27に堆積した粒子状物質を燃焼させてDPF27を再生することが困難になることがある。
【0058】
そこで、第1の実施の形態では、排気管10を基準にして第1酸化触媒装置22よりも上流側となる位置に、第1酸化触媒装置22と第2酸化触媒装置28とを直列に接続する直列通路部31と、第1酸化触媒装置22に短絡して接続される短絡通路部34とを設け、この直列通路部31と短絡通路部34とに対する排気ガスの流れを流路切換弁35により選択的に切換える構成としている。
【0059】
そして、コントローラ40は、図6に示す処理プログラム従って流路切換弁35を、戻り位置(A)と切換位置(B)とのいずれか一方に切換制御し、これにより、フィルタ装置25のDPF27を安定して再生させる構成としたものである。
【0060】
即ち、エンジン9の稼働により図6の処理動作がスタートすると、ステップ1では回転センサ39からエンジン回転数Nを読込む。次に、ステップ2では、エンジン回転数Nが予め決められた判定値Nt以下であるか否かを判定する。そして、ステップ2で「NO」と判定する間は、エンジン回転数Nが十分に高く、エンジン9は高負荷状態で運転される可能性が高くなるものである。
【0061】
そこで、ステップ2で「NO」と判定するときには、次なるステップ3に移って流路切換弁35を戻り位置(A)として短絡通路部34側に切換制御し、排気管10からの排気ガスを第1酸化触媒装置22に直接的に流通させる。そして、次なるステップ4でリターンし、その後はステップ1以降の処理を繰返すようにする。
【0062】
一方、ステップ2で「YES」と判定したときには、エンジン回転数Nが判定値Nt以下となって、エンジン9は軽負荷状態で運転される可能性が高くなっている。そこで、この場合には、次なるステップ5に移って圧力センサ37,38から圧力P1 ,P2 を読込む。即ち、フィルタ装置25のDPF27(図4参照)に対し、その上流側の圧力P1 と下流側の圧力P2 とを読込む。
【0063】
そして、次なるステップ6では、DPF27の上流側の圧力P1 と下流側の圧力P2 との差圧ΔPを、下記の数1式により演算する。そして、次のステップ7では、差圧ΔPが予め決められた判定値Pt以上となっているか否かを判定する。
【0064】
【数1】

【0065】
ここで、ステップ7により「NO」と判定するときには、前記差圧ΔPが小さく、フィルタ装置25のDPF27(図4参照)には粒子状物質、未燃焼残留物等がそれほどには堆積してないと判断することができる。そこで、この場合もステップ3に移って流路切換弁35を戻り位置(A)として短絡通路部34側に切換制御し、排気管10からの排気ガスを第1酸化触媒装置22に直接的に流通させる。そして、次なるステップ4でリターンし、その後はステップ1以降の処理を繰返すようにする。
【0066】
一方、ステップ7で「YES」と判定したときには、差圧ΔPが判定値Pt以上となって、フィルタ装置25のDPF27に付着した粒子状物質、未燃焼残留物等の堆積量が多くなっていると判断することができる。このため、次なるステップ8では、温度センサ36から排気ガスの温度Tを読込む。そして、ステップ9に移って、排気ガスの温度Tが基準温度Ta(例えば、Ta=240〜280℃)よりも低いか否かを判定する。
【0067】
この場合、ステップ9で「NO」と判定するときには、排気ガスの温度Tが基準温度Ta以上となって高いため、フィルタ装置25のDPF27に捕集した粒子状物質等を燃焼して除去する上で、燃焼温度が不足することはないと判断することができる。従って、この場合もステップ3に移って流路切換弁35を戻り位置(A)として短絡通路部34側に切換制御し、排気管10からの排気ガスを第1酸化触媒装置22に直接的に流通させる。そして、次なるステップ4でリターンし、その後はステップ1以降の処理を繰返すようにする。
【0068】
一方、ステップ9で「YES」と判定したときには、排気ガスの温度Tが基準温度Taよりも低いために、フィルタ装置25のDPF27に捕集した粒子状物質等を燃焼して除去する上で、燃焼温度が不足する可能性が高い。そこで、この場合には、ステップ10に移って流路切換弁35を戻り位置(A)から切換位置(B)に切換え、直列通路部31側に切換える制御を行う。
【0069】
これにより、排気管10からの排気ガスは、短絡通路部34内に流通するのが遮断され、連結パイプ32側から第2酸化触媒装置28を経由して第1酸化触媒装置22へと流通する。このため、排気ガス中の成分は、図4中に示すように2つの酸化触媒30,24を通過することにより、それぞれの酸化触媒30,24で反応を繰返し、例えば炭化水素(HC)を酸化するとき等に排気ガスの温度を上昇させることができる。
【0070】
しかも、この場合の排気ガスは、直列状態となった2つの酸化触媒30,24により大きな絞り抵抗を受けて圧損が増大し、エンジン9の負荷が増加する。これにより、エンジン9は燃料の噴射量を増やすことになり、これに伴って排気ガスの温度をさらに上昇することができる。
【0071】
この結果、第1酸化触媒装置22の下流側に位置するフィルタ装置25に対しては、温度の高い排気ガスを導くことができ、例えばDPF27を再生するときの燃焼温度を高くすることができる。これによって、DPF27内に堆積した粒子状物質を焼き切ることができ、DPF27の再生を円滑に行うことができる。
【0072】
また、ステップ10の処理後はステップ8に戻って、これ以降の処理を繰返すようにする。そして、ステップ9で「YES」と判定する間は、流路切換弁35を切換位置(B)に切換えた状態に保ち、排気管10からの排気ガスを連結パイプ32、第2酸化触媒装置28を経由して第1酸化触媒装置22へと流通させる。
【0073】
一方、ステップ9で「NO」と判定したときには、排気ガスの温度Tが基準温度Ta以上となっているため、燃焼温度が不足することはないと判断できる。従って、この場合はステップ3に移って流路切換弁35を戻り位置(A)とし、排気管10からの排気ガスを第1酸化触媒装置22に直接的に流通させ、その後はステップ4でリターンする。
【0074】
かくして、本実施の形態によれば、排気管10の下流側に流路切換弁35を介して直列通路部31と短絡通路部34とを設け、短絡通路部34は第1酸化触媒装置22に直接的に短絡して接続され、直列通路部31側には、第1酸化触媒装置22よりも上流側となる位置に屈曲パイプ33を介して第2酸化触媒装置28を直列に接続して設け、直列通路部31と短絡通路部34とに対する排気ガスの流れを流路切換弁35により選択的に切換える構成としている。
【0075】
そして、エンジン9から排出される排気ガスの温度Tが基準温度Taよりも低いときには、この排気ガスを直列通路部31側に導いて第2酸化触媒装置28と第1酸化触媒装置22とに流通させる。これにより、排気ガスは2つの酸化触媒装置28,22から大きな絞り抵抗を受けて圧損が増大し、エンジン9の負荷が増加するので、エンジン9は燃料の噴射量を増やすようになり、これに伴って排気ガスの温度を上昇することができる。しかも、2つの酸化触媒装置28,22による酸化触媒反応によっても排気ガスの温度を上昇することができる。
【0076】
この結果、第1酸化触媒装置22の下流側に位置するフィルタ装置25に対しては、温度の高い排気ガスを導くことができ、例えばDPF27を再生するときの燃焼温度を高くすることができる。これによって、DPF27内に堆積した粒子状物質を焼き切ることができ、DPF27の再生を円滑に行うことができる。
【0077】
また、エンジン9から排出される排気ガスの温度Tが基準温度Taを越えるようなときには、流路切換弁35を戻り位置(A)に保持することにより、第2酸化触媒装置28に対する排気ガスの流れを遮断でき、第1酸化触媒装置22に排気ガスを直接的に流通させることにより、フィルタ装置25においてDPF27の再生を行うことができる。
【0078】
従って、第1の実施の形態によれば、エンジン9の軽負荷運転により排気ガスの温度が下がったときでも、フィルタ装置25のDPF27に堆積した粒子状物質を燃焼させてDPF27を再生することができ、排気ガスの浄化処理を安定して行うことができ、これにより、排気ガス浄化装置21としての信頼性を向上することができる。
【0079】
次に、図7および図8は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、2つの酸化触媒装置を直接的に突合わせて接続する構成とし、このうち下流側に位置する酸化触媒装置には、屈曲パイプからなる短絡通路部を介して排気ガスを直接的に導ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0080】
図中、51は第2の実施の形態による排気ガス浄化装置を示し、該排気ガス浄化装置51は、第1の実施の形態で述べた排気ガス浄化装置21とほぼ同様に構成され、後述の第1酸化触媒装置52、フィルタ装置55、第2酸化触媒装置58および流路切換弁66を有している。しかし、この場合の排気ガス浄化装置51は、後述する2つの酸化触媒装置52,58が直接的に突合わせるように接続されている点で、第1の実施の形態とは異なっている。
【0081】
52は一の酸化触媒装置(以下、第1酸化触媒装置52という)で、該第1酸化触媒装置52は、第1の実施の形態で述べた第1酸化触媒装置22と同様に構成され、図8に示すように筒状ケース53と、多数の貫通孔54Aを有した酸化触媒54(DOC)とを備えている。しかし、この場合の第1酸化触媒装置52は、筒状ケース53が円筒状の筒体として形成され、その両端が後述の筒状ケース56,59間に挟まれた状態でフランジ接続されている。
【0082】
55は第1酸化触媒装置52の下流側に配置されたフィルタ装置で、該フィルタ装置55は、第1の実施の形態で述べたフィルタ装置25と同様に構成され、図8に示すように第1酸化触媒装置52の筒状ケース53にフランジ接続された他の筒状ケース56と、該筒状ケース56内に収容して設けられ多数の小孔57A、目封じ部材57Bを有したDPF57とを備えている。また、フィルタ装置55の筒状ケース56にも、その下流側に煙突15が接続して設けられている。
【0083】
58は本実施の形態で採用した他の酸化触媒装置(以下、第2酸化触媒装置58という)で、該第2酸化触媒装置58は、後述の連結パイプ62を介して流路切換弁66に接続された別の筒状ケース59と、該筒状ケース59内に収容して設けられた他の酸化触媒60(DOC)とにより構成されている。そして、この場合の酸化触媒60は、第1酸化触媒装置52の酸化触媒54と同様に構成されている。
【0084】
即ち、酸化触媒60は、図8に示すように、例えば筒状ケース59の内径寸法と同等の外径寸法をもったセラミックス製のセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔60Aが形成され、内面に貴金属等がコーティングされている。そして、酸化触媒60も、所定の温度下で各貫通孔60Aに排気ガスを流通させることにより、この排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去し、窒素酸化物(NO)を二酸化窒素(NO2)として除去するものである。
【0085】
61は第1酸化触媒装置52と第2酸化触媒装置58を直列に接続する直列通路部で、該直列通路部61は、後述の連結パイプ62と第2酸化触媒装置58の筒状ケース59とを含んで構成される。そして、直列通路部61は、後述する流路切換弁66の内部通路66Aが図7中に点線で示す位置に切換わったときに、第2酸化触媒装置58と第1酸化触媒装置52とをエンジン9の排気管10に対して直列に接続するものである。
【0086】
62は第2酸化触媒装置58の上流側に接続して設けられた連結パイプで、該連結パイプ62は、図7、図8に示す如く第2酸化触媒装置58の筒状ケース59等と共に直列通路部61を構成するものである。
【0087】
63は第1酸化触媒装置52の筒状ケース53を排気管10に短絡して接続する短絡通路部で、該短絡通路部63は、連結パイプ64と屈曲パイプ65とを含んで構成されている。ここで、屈曲パイプ65は、図7、図8に示すように略U字状またはコ字状に屈曲して形成され、その一側端部65Aが後述の流路切換弁66に連結パイプ64を介して接続されている。また、屈曲パイプ65の他側端部65Bは、図8に示すように第1酸化触媒装置52の酸化触媒54よりも上流側となり、第2酸化触媒装置58の酸化触媒60よりも下流側となる位置で筒状ケース59に径方向から接続されている。
【0088】
そして、屈曲パイプ65は、後述する流路切換弁66の内部通路66Aが図8中に点線で示すように切換わったときに、第1酸化触媒装置52の筒状ケース53を排気管10に直接的に短絡させて接続するものである。これにより、屈曲パイプ65と連結パイプ64とは短絡通路部63を構成し、第1酸化触媒装置52を排気管10側に流路切換弁66を介して直接的に連通させる。
【0089】
66は流路切換弁を構成する流路切換弁で、該流路切換弁66は、第1の実施の形態で述べた流路切換弁35とほぼ同様に構成され、コントローラ(図示せず)からの制御信号により切換制御される。この場合、流路切換弁66は、図7、図8中に点線で示すように内部通路66Aを有し、この内部通路66Aは、例えば点Oを中心にして回動されることにより図7、図8に示す如く流路の切換えを行うものである。
【0090】
即ち、流路切換弁66は、内部通路66Aが図7に示す位置に配置されたときに、排気管10を直列通路部61(連結パイプ62)側に接続し、連結パイプ64側からは遮断する。これにより、排気管10からの排気ガスは、連結パイプ62を介して第2酸化触媒装置58の筒状ケース59内に向けて流通し、その後に第1酸化触媒装置52の筒状ケース53内に向けて流通する。
【0091】
また、流路切換弁66は、内部通路66Aが図8に示す位置に配置されると、排気管10を連結パイプ62に対して遮断し、短絡通路部63(連結パイプ64)側に接続する。これにより、排気管10からの排気ガスは、短絡通路部63を介して第1酸化触媒装置52の筒状ケース53内へと流通し、第2酸化触媒装置58側に排気ガスが流通するのを遮断する。
【0092】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、排気ガス浄化装置51の第1,第2酸化触媒装置52,58を直接的に突合わせるように接続する構成としているので、下記のような効果を得ることができる。
【0093】
即ち、第1酸化触媒装置52の筒状ケース53と第2酸化触媒装置58の筒状ケース59とは直接的にフランジ接続され、流路切換弁66の内部通路66Aが図7中に点線で示す位置に切換わったときには、第2酸化触媒装置58と第1酸化触媒装置52とをエンジン9の排気管10に対して直列に接続することができる。このため、例えば第1酸化触媒装置52内を流通する排気ガスが周囲温度の影響を受けて温度低下するのを抑えることができ、フィルタ装置55側に高い温度の排気ガスを導くことができる。
【0094】
なお、前記第1の実施の形態では、フィルタ装置25の下流側に煙突15を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばフィルタ装置25の下流側に別の酸化触媒装置を設ける構成としてもよい。また、尿素噴射弁、選択還元触媒装置等を組合せて用いる構成としてもよい。そして、この点は第2の実施の形態についても同様である。
【0095】
また、前記第1の実施の形態では、第1酸化触媒装置22の筒状ケース23とフィルタ装置25の筒状ケース26とを互いに突合わせてフランジ接続する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば印籠嵌合等の手段を用いて前,後2つの筒状ケース間を接続する構成としてもよく、要は前,後の筒状ケース間を着脱可能に接続する構成とすればよいものである。そして、この点は、第2の実施の形態についても同様である。
【0096】
さらに、各実施の形態では、排気ガス浄化装置21,51をクローラ式の下部走行体2を備えた小型の油圧ショベル1に搭載した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばタイヤ等からなるホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに搭載する構成としてもよい。それ以外にも、リフトトラック、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く搭載することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 油圧ショベル
2 下部走行体(車体)
4 上部旋回体(車体)
9 エンジン
10 排気管(排気ガス通路)
11 油圧ポンプ
13 熱交換器
14 カウンタウエイト
15 煙突
21,51 排気ガス浄化装置
22,52 第1酸化触媒装置(一の酸化触媒装置)
23,26,53,56,59 筒状ケース
24,30,54,60 酸化触媒(DOC)
25,55 フィルタ装置(フィルタ装置)
27,57 DPF(粒子状物質除去フィルタ)
28,58 第2酸化触媒装置(他の酸化触媒装置)
29 ケース筒
31,61 直列通路部
33,65 屈曲パイプ
34,63 短絡通路部
35,66 流路切換弁
36 温度センサ
37,38 圧力センサ
39 回転センサ
40 コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載されたエンジンの排気ガス通路に、排気ガス中の成分を酸化するための一の酸化触媒装置と、該一の酸化触媒装置の下流側に配置され前記排気ガス中の粒子状物質を捕集して除去するフィルタ装置とを設けてなる排気ガス浄化装置において、
前記排気ガス通路の途中には、前記一の酸化触媒装置の上流側に位置して前記排気ガス中の成分を酸化する他の酸化触媒装置と、該他の酸化触媒装置と前記一の酸化触媒装置とに対する排気ガスの流れを選択的に切換える流路切換弁とを設け、
該流路切換弁は、前記エンジンから排出される排気ガスの温度が予め決められた基準温度よりも低いときに排気ガスを前記他の酸化触媒装置を経由して前記一の酸化触媒装置に流通させ、排気ガスの温度が前記基準温度を越えるときには、前記他の酸化触媒装置に対する排気ガスの流れを遮断し前記一の酸化触媒装置に排気ガスを流通させる構成としたことを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排気ガス通路は、前記一の酸化触媒装置と他の酸化触媒装置とが直列に接続される直列通路部と、前記他の酸化触媒装置を介することなく前記一の酸化触媒装置と短絡的に接続される短絡通路部とを有する構成とし、前記流路切換弁は、前記直列通路部と短絡通路部とのいずれか一方に前記エンジンからの排気ガスを流通させる構成としてなる請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記基準温度は、240〜280℃の範囲内にある温度としてなる請求項1または2に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−236363(P2010−236363A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82156(P2009−82156)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】