説明

排気ガス触媒およびそれを用いた排気ガス処理装置

【課題】 触媒層における排気ガスのガス拡散性を高めて、触媒効率を向上させる抑制する排気ガス触媒の提供。
【解決手段】 担体と、該担体上に形成された複数層とを少なくとも備えてなる排気ガス触媒であって、前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなり、前記空隙の平均径が0.2μm以上であり、500μm以下である、排ガス浄化触媒により達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体に複数層を形成させた排気ガス触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、とりわけ自動車エンジン用の排気ガス触媒の具体例としては以下のものが挙げられる。排気ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)とを同時に処理する酸化触媒、排気ガス中の炭化水素と一酸化炭素と窒素酸化物(NOx)とを同時に処理する三元触媒、排気ガス中のNOxを空燃比がリーン状態において吸蔵し、このNOxが飽和状態になる前に空燃比を理論空燃比またはリッチ状態に切り替えることによりNOxを還元処理するNOx吸蔵還元型触媒、および排気ガス中のNOxを還元剤により還元処理するNOx選択的還元型触媒等が挙げられる。
【0003】
酸化触媒、三元触媒、NOx吸蔵還元型触媒およびNOx選択的還元型触媒は、これらの触媒成分をスラリーとしたものをセラミック製ハニカム形状等の担体に浸漬し焼成して製造される。
【0004】
しかし、従来の排気ガス触媒は触媒成分が担体に均一に形成されたものが殆どであることから、排気ガスが排気ガス触媒に流入した場合、排気ガスのガス拡散速度が遅く、その結果排気ガスの処理が十分に行われないことがしばしば見受けられた。
【0005】
これに対して、特開平2002−191988号公報(特許文献1)および特開平2002−253968号公報(特許文献2)では、特定の孔径を有する細孔を設けた多孔質構造体からなるコート層に貴金属とNOx吸蔵剤とを担持させることにより、排気ガスのガス拡散性を高めて、NOxの浄化効率を向上させたNOx吸蔵還元型触媒が提案されている。しかしながら、今なお、排気ガス触媒にあっては、触媒成分の層中における排気ガスのガス拡散性を高めて排気ガスの処理効率を向上させることが要求されている。
【0006】
【特許文献1】特開平2002−191988号公報
【特許文献2】特開平2002−253968号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明者等は、本発明時に、排気ガスの処理を向上させる排気ガス触媒の構成を見出した。とりわけ、複数層から形成される触媒にあって、複数層の少なくとも一層が特定の短径と直径とを示す空隙を有するものであり、かつ、触媒成分を含んでなることにより、排気ガスの処理を向上させることができるとの知見を得た。従って、本発明はかかる知見に基づくものである。よって、本発明は、排気ガスのガス拡散性を高めて排気ガスの処理を向上させることができる、排気ガス触媒の提供を目的とする。
【0008】
従って、本発明による排気ガス触媒は、担体と、該担体上に形成された複数層とを少なくとも備えてなる排気ガス触媒であって、
前記複数層の少なくとも一つの層が該層中に空隙を有するものであり、
前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなり、
前記空隙の平均径が0.2μm以上であり、500μm以下であるものである。
【発明の具体的説明】
【0009】
排気ガス触媒
本発明による排気ガス触媒は、複数層の少なくとも一つの層が該層中に空隙を有するものとして構成されてなる。本発明にあっては、複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなることを特徴とする。ここで、層中の「空隙」とは、層中に空間が存在することを意味し、具体的には、空孔、細孔、トンネル状(円柱、角柱)の細長い細孔等が挙げられる。
1.態様
本発明による排気ガス触媒の態様を図1を用いて説明する。図1(A)〜(E)は本発明による排気ガス触媒の一態様の断面図を示すものである。図1(A)は担体1の上に第一層2が形成され、その上に空孔31を有する第二層3が形成されてなる排気ガス触媒を示したものである。図(B)は担体1の上に通貫路22を有する第一層2が凹凸状に形成され、その上に空孔31を有する第二層3が形成されてなる排気ガス触媒を示したものである。図(C)は担体1の上に通貫路22を有する第一層2が海島状に形成され、その上に空孔31を有する第二層3が形成されてなる排気ガス触媒を示したものである。図(D)は担体1の上に空孔21および通貫路22を有する第一層2が凹凸状および海島状に形成され、その上に空孔31および通貫路32を有する第二層3が形成されてなる排気ガス触媒を示したものである。図(E)は担体1の上に空孔21を有する第一層2が凹凸状に形成され、その上に空孔31を有する第二層3が形成されてなる排気ガス触媒を示したものである。この排気ガス触媒は、図1(E)の符号4に示す通り、第一層2が第二層3により一部覆わない部分が存在しているものである。
図1(A)〜(E)で示される通り、排気ガス触媒は、第一層2と第二層3とが相互に隣り合うものであり、これらの層中に空隙として空孔(21または31)または通貫路(22または32)を有する。そして、第一層2と第二層3とは同一または異なる平均空隙率を有するものであってよい。この様な排気ガス触媒は、排気ガスのガス拡散性が向上し、また排気ガスの接触面積が拡大するため、排気ガスを有効に処理することが可能となる。
上記において、第一層2と第二層3とは少なくとも一方または両方が触媒成分を含んでなるものである。また、第一層2と第二層3における空孔または貫通路は、各々の層における空隙の一例であるが、本発明はこれらの形状に限定されるものではない。
【0010】
2.空隙の平均径
本発明にあっては、空隙の平均径が0.2μm以上であり、500μm以下である。好ましくは0.5μm以上であり、300μm以下である。本発明において、「平均径」とは空隙の最大断面積に対して、断面積の4倍を断面の全周長で割ったものをいう。本発明にあっては、複数層における少なくとも一つの層に空隙が存在する場合、その空隙の平均空隙率は5%以上80%以下であり、好ましくは上限が60%以下であり、好ましくは下限が10%以上である。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、形成される複数層の形状はいずれのものであってよいが、好ましくは凹凸状に形成されることが好ましい。また、本発明の別の好ましい態様によれば、複数層の少なくとも一つの層が担体に海島状に形成されてなることが好ましい。これらの形状は担体に複数層を形成させる際に物理的に形成されてよく、成形剤の形状、量を適宜調整することにより形成されることが好ましい。
【0012】
複数層における各層の厚さは、1μm以上、300μm以下であり、好ましくは上限が280μm以下であり、好ましくは250μm以下であり、下限が2μm以上であり、好ましくは5μm以上である。
【0013】
複数層を担体上に形成させる手段の具体例としては以下のようなものが挙げられる。溶媒(例えば水)に、多孔質構造体粉末と、必要に応じて触媒成分(触媒層を形成する場合)と、成形剤とを添加し撹拌しスラリーを調製する。このスラリーを担体に付着し焼成し、担体に一の層を形成させる。次に、他のスラリーを形成させた一つの層に付着し焼成し、この一の層に上記手順により別の層を形成させる。これを繰り返すことにより、本発明による排気ガス触媒が調製される。
【0014】
成形剤は焼成時または乾燥時に燃焼しその化学的特性を排気ガス触媒に残存させないものが好ましい。成形剤は熱分解性または可燃性の球体、円柱体等の形態を有するものが好ましい。このような具体例としては、発泡剤、界面活性剤、発泡性合成樹脂、活性炭、グラファイト粉末、パルプ粉末、有機物繊維、プラスチックファイバー等が挙げられる。発泡剤の具体例としては、La(CO、Al(CO)、Ce(CO)等が挙げられ、触媒成分と同様な元素を含んでなるものが好ましい。界面活性剤の具体例としては、スルホン酸型、カルボン酸型等のアニオン性界面活性剤、アミン型等のカチオン性界面活性剤、脂肪酸エステル型等の両性イオン性界面活性剤等が挙げられる。発泡性合成樹脂の具体例としては、ポリウレタン系、ポリスチレン系、ポリエチレン系、ポリエステル系、アクリル系等の合成樹脂が挙げられる。また、空隙は発泡剤のみによって形成されるものではなく、均一な大きさの気泡(例えば、マイクロバブル)を発生できる装置によって形成されてもよい。
【0015】
成形剤の添加量は、複数層の各層の成分全量に対して、5重量%以上、80重量%以下であり、好ましくは上限が70重量%以下であり、好ましくは60重量%以下であり、下限が5重量%以上であり、好ましくは8重量%以上である。
【0016】
多孔質構造体粉末の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、結晶性ゼオライト等が挙げられる。複数層の少なくとも一の層が触媒成分を含んでなる場合、触媒成分は排気ガス中の成分に応じて適宜選択することができるが、本発明の好ましい態様によれば、三元触媒、酸化触媒、NOx吸蔵還元型触媒、またはNOx選択的還元型触媒の触媒成分を含んでなることが好ましい。複数層の各触媒層は、同一または異なる触媒成分を含んでなるものであってもよい。
【0017】
担体の具体例としては、アルミナからなるペレット型形状(粒状形)、またはコージエライトセラミックスもしくはステンレス等の金属からなるモノリス型形状(ハニカム形)のものが挙げられる。特に、耐熱性、耐熱衝撃性、および機械的強度に優れたモノリス型形状のものが好ましい。
【0018】
排気ガス触媒の活用
本発明による排気ガス触媒は、排気ガス処理用途に合致させて下記のように構成されてよい。
(1)三元触媒
本発明の別の態様によれば、三元触媒が提供され、この場合、複数層の少なくとも一つの層が三元触媒成分として活性金属と、必要に応じて触媒助剤とを含んでなる。
活性金属
活性金属としては貴金属が挙げられ、その具体例としては、白金、パラジウム、ロジウムが挙げられ、好ましくは白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。活性金属の添加量は、三元触媒成分の全量に対して、0.001重量%以上、20重量%以下であり、上限が好ましくは5重量%以下であり、下限が0.002重量%以上であり、好ましくは0.005重量%以上である。
【0019】
触媒助剤
触媒助剤の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化ネオジウム、酸化プラセオジウム、ゼオライトおよびこれらの複合酸化物からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0020】
(2)酸化触媒
本発明の別の態様によれば、酸化触媒が提供され、この場合、複数層の少なくとも一つの層が酸化触媒成分として活性金属と、必要に応じて触媒助剤とを含んでなる。
活性金属
活性金属としては貴金属が挙げられる。貴金属の具体例としては、白金、パラジウム、ロジウムが挙げられ、好ましくは白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
活性金属の添加量は、酸化触媒成分の全量に対して、0.001重量%以上、30重量%以下であり、好ましくは上限が25重量%以下であり、好ましくは下限が0.002重量%以上である。
【0021】
触媒助剤
触媒助剤の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ゼオライト等が挙げられる。
【0022】
(3)NOx吸蔵還元型触媒
本発明の別の態様によれば、NOx吸蔵型触媒が提供され、この場合、複数層のうちの少なくとも一つの層がNOx吸蔵型触媒成分として、NOx吸蔵剤と、活性金属と、必要に応じて触媒助剤とを含んでなる。
【0023】
NOx吸蔵剤
NOx吸蔵剤の具体例としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
アルカリ金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
アルカリ土類金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
希土類元素の具体例としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、およびこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
また、NOx吸蔵剤は、必要に応じて卑金属を含んでなることができ、その具体例としては、ニッケル、銅、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛等が挙げられる。
NOx吸蔵剤の添加量は、NOx吸蔵還元型触媒成分の全量に対して、1重量%以上、80重量%以下であり、好ましくは上限が75重量%以下であり、好ましくは70重量%以下であり、下限が2重量%以上であり、好ましくは5重量%以上である。
【0024】
活性金属
活性金属の具体例としては、貴金属、卑金属が挙げられる。貴金属の具体例としては、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、金、銀およびこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられ、好ましくは、白金、パラジウム、ロジウムおよびこれらの混合物が挙げられる。
卑金属の具体例としては、ニッケル、銅、マンガン、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、亜鉛およびこれらの混合物が挙げられる。
活性金属の添加量は、NOx吸蔵還元型触媒成分の全量に対して、0重量%超過、50重量%以下であり、好ましくは上限が45重量%以下であり、好ましくは40重量%以下である。
【0025】
触媒助剤
触媒助剤の具体例としては、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、シリカおよびこれらの複合酸化物からなる群から選択されるものが挙げられる。触媒助剤の添加量は、NOx吸蔵還元型触媒成分の全量に対して、5重量%超過95重量%以下であり、好ましくは上限が90重量%以下であり、好ましくは60重量%以下である。
【0026】
(4)NOx選択的還元触媒
本発明の別の態様によれば、NOx選択的還元型触媒が提供され、この場合、複数層の少なくとも一つの層がNOx選択的還元型触媒として、活性金属と、触媒助剤とを含んでなる。
活性金属
活性金属の具体例としては、貴金属、遷移金属、希土類金属、これらの混合物およびこれらの酸化物からなる群から選択され、好ましくは、白金、金、銅、バナジウム、タングステン、チタン、およびこれらの酸化物からなる群から選択されるものが挙げられる。
活性金属の添加量は、NOx吸蔵還元型触媒成分の全量に対して、0.001重量%以上、20重量%以下であり、好ましくは上限が15重量%以下であり、好ましくは10重量%以下であり、下限が0.002重量%以上であり、好ましくは0.005重量%以上である。
【0027】
触媒助剤
触媒助剤としては、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、シリカ、ゼオライトおよびこれらの複合酸化物からなる群から選択されるものが挙げられる。触媒助剤の添加量は、NOx選択的還元型触媒成分の全量に対して、1重量%超過、50重量%以下であり、好ましくは上限が45重量%以下であり、好ましくは40重量%以下である。
【0028】
還元剤
NOx選択的還元型触媒は排気ガス中の窒素酸化物を処理する際に還元剤を利用する。還元剤の具体例としては、アンモニアまたはアミン、尿素またはその誘導体、ヒドラジンまたはその誘導体、トリアジンまたはその誘導体、炭化水素、または酸素原子を含む有機化合物が挙げられる。
アミンの具体例としては、炭素数1〜5のアミン、好ましくはメチルアミンが挙げられる。尿素の誘導体の具体例としては、グアニジン、ビウレットが好ましくは挙げられる。ヒドラジンの誘導体の具体例としては、シアヌル酸が好ましくは挙げられる。炭化水素の具体例としては、形質油、ケロセン、またはC−Cのパラフィン等が挙げられる。酸素原子を含む有機化合物の具体例としては、アルコール類(好ましくは、炭素数1〜5のアルコールであり、より好ましくはメタノール、エタノールである)、ケトン類、エーテル類、有機カルボン酸類、脂肪酸類、エステル類が挙げられる。
【0029】
排気ガス処理装置
本発明による別の態様によれば、本発明による排気ガス触媒を備えた排気ガス処理装置が提供される。本発明による排気ガス処理装置の内容を図2を用いて説明する。図2は本発明による排気ガス触媒を備えた排気ガス処理装置の概略図を示す。本発明による排気ガス処理装置50は、排気ガス流入口52と、排気ガス流出口53とが設けられた装置本体に、本発明による排気ガス触媒51が設けられてなるものである。排気ガスが流入口52に流入し、本発明による排気ガス触媒51において、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物の少なくとも一つが処理され、処理された排気ガスは流出口53を経て排出される。
【0030】
本発明の好ましい態様によれば、図2において、排気ガス触媒51が本発明による三元触媒の場合、排気ガス中の炭化水素と、一酸化炭素と、窒素酸化物とがこの排気ガス触媒(三元触媒)により処理され、水と、二酸化炭素と、窒素気体とされる。また、本発明の別の好ましい態様によれば、図2において、排気ガス触媒51が本発明による酸化触媒の場合、排気ガス中の炭化水素と、一酸化炭素とがこの排気ガス触媒(酸化触媒)により処理され、水と、二酸化炭素とされる。本発明の別の好ましい態様によれば、図2において、排気ガス触媒51が本発明によるNOx吸蔵還元型触媒の場合、排気ガス中の窒素酸化物がこの排気ガス触媒(NOx吸蔵還元型触媒)により処理され、水および窒素気体とされる。図2において、排気ガス触媒51が本発明によるNOx選択的還元型触媒の場合、排気ガス中の窒素酸化物が還元剤と伴にこの排気ガス触媒(NOx選択的還元型触媒)により処理され、水および窒素気体とされる。この場合、還元剤は排気ガス触媒51の前方に位置する還元剤導入部から導入される。
【0031】
排気ガス触媒の用途
本発明による排気ガス触媒は、排気ガスの浄化に用いられる。本発明による排気ガス触媒およびそれを用いた装置は、内燃機関、特に、火花点火型エンジン(例えば、ガソリンエンジン)、圧縮着火型エンジン(例えば、ディーゼルエンジン)の排気系に用いられる。また、これらのエンジンは、空燃比を調製して燃料を燃焼するエンジンであってよく、その好ましい具体例として、リーンバーンエンジン、直噴型エンジン、好ましくはこれらを組み合わせたエンジン(即ち、直噴型リーンバーンエンジン)が挙げられる。直噴型エンジンは、高圧縮比化、燃焼効率の向上、さらには排気ガスの低減化を図ることができる燃料供給システムを採用したエンジンである。このため、リーンバーンエンジンと組み合わせることによって、さらに燃焼効率の向上と排気ガスの低減化を図ることが可能となる。
【0032】
本発明による排気ガス触媒は、運搬機、機械等に搭載された内燃機関の排気系に利用される。運搬機、機械の具体例としては、運搬機、機械の具体例としては、例えば、自動車、バス、トラック、ダンプカー、気道車、オートバイ、原動機付き自転車、船舶、タンカー、モーターボート、航空機などの運送機;耕耘機、トラクター、コンバイン、チェンソー、木材運搬機などの農林産業機械;漁船等の水産漁業機械;タンクローリー、クレーン、圧搾機、掘削機等の土木作業機械;発電機;等が挙げられる。本発明による排気ガス触媒は、例えば、車両の排気系の場合、スタートキャタリスト、アンダーフロアー、マニホールドコンバータとして設置することができる。
【実施例】
【0033】
本発明の内容を実施例によってより詳細に説明する。しかしながら、本発明の内容は実施例によって限定して解釈されるものではない。
【0034】
排ガス触媒の調製
例1
γ−Al粉末25重量部、水60重量部、硝酸白金溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が30μm程度から150μm程度(平均的には60μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の10重量%になるようにさらに混合した。そして、高速撹拌器(シルバーソン社製)により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、コージェライト製ハニカム基材(容量1000cc、600セル/in:日本ガイシ(株)社製)を用意し、上記スラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第一層を積層させた。
γ−Al粉末5重量部、水20重量部、硝酸ロジウム溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が0.5μm程度から100μm程度(平均的には20μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の20重量%になるように混合して、上記高速撹拌器により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、第一層が形成されたハニカム基材を、このスラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第二層を積層させて、排気ガス触媒(三元触媒)を得た。
この排気ガス触媒は、ハニカム基材1Lあたり、Pt(白金)の担持量が0.54gであり、Rh(ロジウム)の担持量が0.07gであった。
例2
成形剤を添加せずに第二層を形成した以外は、例1と同様にして排気ガス触媒を得た。
例3
成形剤を添加せずに第一層を形成した以外は、例1と同様にして排気ガス触媒を得た。
【0035】
比較例1
成形剤を添加せずに第一層と第二層とを形成した以外は、例1と同様にして排気ガス触媒を得た。
【0036】
評価試験1
排ガス入出口を有する試験装置(堀場製作所)内に、例1〜3および比較例1の触媒から、直径25.4mm、長さ30mmを切り出したものをそれぞれ配置した。ガス温度900℃で3分毎に交互に、表1に示すリッチ組成ガスとリーン組成ガスとをこの装置の入口部から流入させて20時間熱処理を行った。この後、表2に示すリッチ組成ガスとリーン組成ガスとをこの装置の入口部から1Hzでそれぞれ流入させた後、NOxの浄化率を測定した。測定は、ガス温度280℃と300℃で行った。各温度で5分間の平均浄化率(%)を表3に示した。表1および2中の(%)は体積%を意味する。
【表1】

【表2】

【表3】

【0037】
例4
γ−Al粉末10重量部、酸化セリウムと酸化ジルコニウムの複合酸化物15重量部、水77重量部、硝酸白金溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が30μm程度から150μm程度(平均的には60μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の14重量%になるようにさらに混合した。そして、高速撹拌器(シルバーソン社製)により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、コージェライト製ハニカム基材(容量1000cc、600セル/in:日本ガイシ(株)社製)を用意し、上記スラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第一層を積層させた。
γ−Al粉末5重量部、酸化セリウムと酸化ジルコニウムの複合酸化物5重量部、水76重量部、硝酸ロジウム溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が4μm程度から7μm程度(平均的には5μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の8重量%になるように混合して、上記高速撹拌器により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、第一層が形成されたハニカム基材を、このスラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第二層を積層させて、排気ガス触媒(三元触媒)を得た。
この排気ガス触媒は、ハニカム基材1Lあたり、Pt(白金)の担持量が0.75gであり、Rh(ロジウム)の担持量が0.075gであった。
比較例2
成形剤を添加せずに第一層と第二層とを形成した以外は、例4と同様にして排気ガス触媒を得た。
【0038】
評価試験2
例4および比較例2で得た排気ガス浄化用触媒それぞれを触媒収納缶に収納し、排気量4000CCのガソリンエンジンの排気系に設置し、レギュラーガソリン燃料をA/F変動=14.5(定常)の条件下で燃焼させ、かつ、触媒床内温度900℃で、50時間放置した。
その後、それぞれの触媒を直径15cm、長さ40cmの円筒体に収納し、排気量2200CCのガソリンエンジンの車両に設置し、レギュラーガソリン燃料を燃焼させ、FTPモード(過渡モード排ガス試験)で評価した。評価装置は、商品名「MEXA9000」(堀場製作所社製)を用いた。その評価結果は下記表4に記載した通りであり、数値が小さいほど排気ガス浄化能が高いことを示す。
表4
例/評価試験2
THC CO NOx
例4 0.058 0.28 0.106
比較例2 0.058 0.26 0.120
【0039】
例5
γ−Al粉末16重量部、酸化セリウムと酸化ジルコニウムの複合酸化物8重量部、水65重量部、硝酸パラジウム溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が4μm程度から7μm程度(平均には5μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の8重量%になるようにさらに混合した。そして、高速撹拌器(シルバーソン社製)により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、コージェライト製ハニカム基材(容量635cc、600セル/in:日本ガイシ(株)社製)を用意し、上記スラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第一層を積層させた。
γ−Al粉末6重量部、酸化セリウムと酸化ジルコニウムの複合酸化物6重量部、水80重量部、硝酸ロジウム溶液を混合し、成形剤としてアクリル系樹脂〔平均径が4μm程度から7μm程度(平均的には5μm程度)の樹脂を使用した〕を全体の6重量%になるように混合して、上記高速撹拌器により、大気雰囲気中で30分撹拌し、成形剤が均一に分散したスラリーを得た。次に、第一層が形成されたハニカム基材を、このスラリー中に浸漬し、引き上げて余分なスラリーを吹き払った後、大気中にて500℃で1時間焼成して第二層を積層させて、排気ガス触媒(三元触媒)を得た。
この排気ガス触媒は、ハニカム基材1Lあたり、Pd(パラジウム)の担持量が0.53gであり、Rh(ロジウム)の担持量が0.11gであった。
【0040】
比較例3
成形剤を添加せずに第一層と第二層とを形成した以外は、例5と同様にして排気ガス触媒を得た。
【0041】
評価試験3
例5および比較例3で得た排気ガス浄化用触媒をそれぞれ触媒収納缶に収納し、排気量4000CCのガソリンエンジンの排気系に設置し、レギュラーガソリン燃料をA/F変動を周期6分/回(A/F=14.5を5.5分、A/F=17を0.5分)の条件下で燃焼させ、かつ、触媒床内温度830℃で、8時間放置した。
その後、それぞれの触媒を収納缶に収納し直して、排気量2000CCのガソリンエンジンの排気系に設置し、レギュラーガソリン燃料を燃焼させ、かつ、11Pモード(実車排ガスモード)で評価した。評価装置は、商品名「MEXA9000」(堀場製作所社製)を用いた。その評価結果は下記表5に記載した通りであり、数値が小さいほど排気ガス浄化性能が高いことを示す。
表5
例/評価試験3
THC CO NOx
例4 1.0 4.94 0.311
比較例2 1.0 5.06 0.377
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1(A)〜(E)は、本願発明による排気ガス触媒の概略図を示す。
【図2】図2は、本願発明による排気ガスを処理する装置の概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、該担体上に形成された複数層とを少なくとも備えてなる排気ガス触媒であって、
前記複数層の少なくとも一つの層が該層中に空隙を有するものであり、
前記複数層の少なくとも一つの層が触媒成分を含んでなり、かつ、該層中に空隙を有してなり、
前記空隙の平均径が0.2μm以上であり、500μm以下である、排ガス浄化触媒。
【請求項2】
前記複数層の少なくとも一つの層が該層中に空隙を有する場合、前記層の平均空隙率が5%以上80%以下である、請求項1に記載の排気ガス触媒。
【請求項3】
前記複数層における相互に隣り合う層が、同一または異なる平均空隙率を有するものである、請求項1または2に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記複数層における最下層が、前記担体の上に凹凸状または海島状に形成されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排気ガス触媒。
【請求項5】
前記複数層の少なくとも一つの層に含まれる触媒成分が、三元触媒、酸化触媒、NOx吸蔵還元型触媒およびNOx選択的還元型触媒からなる群より選択されるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス触媒。
【請求項6】
前記三元触媒が、貴金属を含んでなるものである、請求項5に記載の排気ガス触媒。
【請求項7】
前記酸化触媒が、貴金属を含んでなるものである、請求項5に記載の排気ガス触媒。
【請求項8】
前記NOx吸蔵還元型触媒が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素およびこれらの混合物からなる群より選択されるものを含んでなるものである、請求項5に記載の排気ガス触媒。
【請求項9】
前記NOx吸蔵還元型触媒が、貴金属または卑金属を含んでなるものである、請求項5に記載の排気ガス触媒。
【請求項10】
前記NOx選択的還元型触媒が、白金属金属、銅、バナジウム、チタン、タングステン、およびこれらの酸化物ならびにこれらの混合物からなる群より選択されるものを含んでなる、請求項5に記載の排気ガス触媒。
【請求項11】
火花点火型エンジンまたは圧縮着火型エンジンに用いられる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の排気ガス触媒。
【請求項12】
前記エンジンが、リーンバーンエンジン、直噴型エンジンまたはこれらを組み合わせたエンジンである、請求項11に記載の排気ガス触媒。
【請求項13】
排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素または窒素酸化物を処理する装置であって、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の排気ガス触媒を備えてなり、
前記排気ガス触媒において、前記排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素または窒素酸化物を酸化または還元し、二酸化炭素、水、または窒素気体として処理するものである、装置。
【請求項14】
排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物を処理する装置であって、
請求項5または6に記載の三元触媒を備えてなり、
前記三元触媒において、前記排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素および窒素酸化物を酸化または還元し、水、二酸化炭素および窒素気体として処理する、装置。
【請求項15】
排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を処理する装置であって、
請求項5または7に記載の酸化触媒を備えてなり、
前記酸化触媒おいて、前記排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を酸化し、水および二酸化炭素として処理する、装置。
【請求項16】
排気ガス中の窒素酸化物を処理する装置であって、
請求項5、8および9のいずれか一項に記載のNOx吸蔵還元型触媒を備えてなり、
前記NOx吸蔵還元型触媒において、燃料の空燃比がリーンの場合に排気ガス中の窒素酸化物を吸蔵し、燃料の空燃比が理論空燃比またはリッチの場合に前記吸蔵した窒素酸化物を還元し窒素気体として処理する、装置。
【請求項17】
排気ガス中の窒素酸化物を処理する装置であって、
還元剤を導入する導入部と、その後方に設けられた請求項5または10に記載のNOx選択的還元型触媒とを備えてなり、
前記NOx選択的還元型触媒において、前記排気ガス中の窒素酸化物を前記導入部から導入された還元剤により還元し水および窒素気体として処理する、装置。
【請求項18】
前記還元剤が、アンモニアもしくはアミン、尿素もしくはその誘導体、ヒドラジンもしくはその誘導体、トリアジンもしくはその誘導体、炭化水素、または酸素原子を含む有機化合物である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記排気ガスを排気ガス触媒に流入する入口部と、前記排気ガス触媒で処理した前記排気ガスを排出する出口部とをさらに備えてなる、請求項13〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
火花点火型エンジンまたは圧縮着火型エンジンに用いられる、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記エンジンが、リーンバーンエンジン、直噴型エンジン、またはこれらを組み合わせたエンジンである、請求項20に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−110485(P2006−110485A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301597(P2004−301597)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(599114117)ジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY JAPAN, INC.
【Fターム(参考)】