説明

排気管用管継手

【課題】排気管用管継手において、上流側の排気管と下流側の排気管との間の相対的な並進変位を吸収できるようにすることを目的とする。
【解決手段】第1フランジ11と第2フランジ12との間に配設されるガスケット18に、第1フランジ11に対して摺動可能に当接する第1シール18A面と、下流側排気管22(第2排気管)の外周面22Bに対して摺動可能に当接する第2シール面18Bと、第2フランジ12に平行な荷重受け面18Cとが設けられており、第2フランジ12とガスケット18の荷重受け面18Cとの間に配設された板ばね30(付勢手段)により、第1シール面18A及び第2シール面18Bは、第1フランジ11及び外周面22Bに対して夫々弾性的に押圧付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管用管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
接続フランジのフレア部より外側部分を軸方向に対して傾斜させて傘面上に構成し、接続フランジのフレア部の摺動受面をこの外側部分にほぼ平行とし、シールベアリングの摺動面をフレア部の摺動受面に合致する形状にしたが開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平5−83577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、シールベアリングの摺動面に作用する面圧を小さくすることに主眼が置かれており、エンジンのロール振動に基づく上流側の排気管と下流側の排気管との間の相対的な並進変位については特に考慮されていない。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、排気管用管継手において、上流側の排気管と下流側の排気管との間の相対的な並進変位を吸収できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、第1排気管における接続側端部の周囲に設けられ、前記第1排気管の径方向外側に張り出した環状の第1フランジと、第2排気管における接続側端部の周囲に設けられ、前記第1フランジ側かつ前記第2排気管の管軸方向と交差する方向に張り出した環状の第2フランジと、前記第1フランジと前記第2フランジとの間に配設され、該第1フランジに対して摺動可能に当接する第1シール面と、前記第2排気管の外周面に対して摺動可能に当接する第2シール面と、前記第2フランジに平行な荷重受け面とが設けられた円環状のガスケットと、前記第1フランジと前記第2フランジとを弾性的に締結する締結手段と、前記第2フランジと、前記ガスケットの前記荷重受け面との間に配設され、前記第1シール面を前記第1フランジに対して弾性的に押圧付勢すると共に、前記第2シール面を前記第2排気管の前記外周面に対して弾性的に押圧付勢する付勢手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の排気管用管継手では、第1排気管側の第1フランジと第2排気管側の第2フランジとの間に配設されるガスケットに、第1排気管側の第1フランジに対して摺動可能に当接する第1シール面と、第2排気管の外周面に対して摺動可能に当接する第2シール面と、該第2排気管側の第2フランジに平行な荷重受け面とが設けられており、第2フランジとガスケットの荷重受け面との間に配設された付勢手段により、第1シール面は第1フランジに対して弾性的に押圧付勢され、第2シール面は第2排気管の外周面に対して弾性的に押圧付勢される。
【0007】
これにより、第1排気管と第2排気管とが、該第1排気管等の径方向に相対的に変位する際には、ガスケットの第1シール面が第1フランジに対して摺動することで、その変位を吸収することができる。また第1排気管と第2排気管とが、管軸方向に相対的に変位する際には、ガスケットの第2シール面が第2排気管の外周面に対して摺動することで、その変位を吸収することができる。第1シール面及び第2シール面におけるシール性は、付勢手段の付勢力により確保される。このため、請求項1に記載の排気管用管継手では、例えば上流側排気管である第1排気管と、例えば下流側排気管である第2の排気管との間の相対的な並進変位を吸収することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の排気管用管継手において、前記第2フランジは、前記第2排気管の管軸方向に対して45°傾斜していることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の排気管用管継手では、第2フランジが、第2排気管の管軸方向に対して45°傾斜しているので、付勢手段の付勢力は、ガスケットの第1シール面及び第2シール面に対して、夫々均等に作用することとなる。このため、各シール面における排ガスに対するシール性を同等に確保することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の排気管用管継手において、前記ガスケットは、周方向において複数に分割された分割体を円環状に組み合わせて構成され、各々の前記分割体の結合部には、使用初期状態において所定の隙間を有した状態で互いに嵌合可能な凹凸形状が設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の排気管用管継手では、ガスケットが、周方向において複数に分割された分割体を円環状に組み合わせて構成され、各々の分割体の結合部には、使用初期状態において所定の隙間が設けられ、かつガスケットの荷重受け面がばねにより弾性的に押圧付勢されているので、ガスケットが、第2排気管の外周面に対して摺動可能に当接する第2シール面において摩耗した場合、各分割体の結合部に設けられた所定の隙間が詰まって行くことで、ガスケットの内径が縮小する。これにより、ガスケットの第2シール面が摩耗した場合でも、該第2シール面における排ガスに対するシール性を持続させることができる。
【0012】
また各分割体の結合部には、互いに嵌合可能な凹凸形状が設けられており、該結合部が所謂ラビリンス構造となっているので、該結合部におけるシール性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の排気管用管継手によれば、排気管用管継手において、上流側排気管と下流側排気管との間の相対的な並進変位を吸収することができる、という優れた効果が得られる。
【0014】
請求項2に記載の排気管用管継手によれば、ガスケットの各シール面における排ガスに対するシール性を同等に確保することができる、という優れた効果が得られる。
【0015】
請求項3に記載の排気管用管継手によれば、ガスケットの第2シール面が摩耗した場合でも、該第2シール面における排ガスに対するシール性を持続させることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施の形態に係る排気管用管継手10は、エンジン14から排出される排ガスを車両後方へ導く排気系16のうち、第1排気管の一例たる上流側排気管20と第2排気管の一例たる下流側排気管22との接続部に用いられる管継手であり、第1フランジ11と、第2フランジ12と、ガスケット18と、締結手段の一例たるボルト24、ナット26及び圧縮コイルばね28と、付勢手段の一例たる板ばね30とを有している。
【0017】
ここで、エンジン14は、例えば横置きのV型エンジンである。排気系16における上流側排気管20には、エンジン14における前側シリンダの排気ポートに接続される前側エギゾーストマニホールド15と、該エンジン14における後側シリンダの排気ポートに接続される後側エギゾーストマニホールド17とが接続されている。また排気系16における下流側排気管22には、例えば触媒コンバータ30及び消音器31が接続されている。
【0018】
図2,図3において、第1フランジ11は、上流側排気管20における接続側端部の一例たる下流側端部20Aの周囲に環状に設けられ、該上流側排気管20の径方向外側に張り出した、例えば円形フランジである。上流側排気管20と下流側排気管22との間の、該上流側排気管20等の径方向における並進変位を許容するために、上流側排気管20の下流側端部20Aは、第1フランジ11から下流側排気管22側に突出しないように構成されている。
【0019】
第1フランジ11の端縁には、管軸方向に対して例えば45°をなす方向で、かつ上流側に延びる一対の平板部11Bが設けられている。この平板部11Bには、ボルト24を通すための貫通孔11Cが夫々形成されている。第1フランジ11の貫通孔11Cの直径は、ボルト24の外径の例えば1.3倍程度に設定されている。
【0020】
なお図示の例では、第1フランジ11は、上流側排気管20における下流側端部20Aに一体的に設けられているが、これに限られず、該下流側端部20Aに溶接等の手段を用いて接合するようにしてもよい。
【0021】
図2,図3において、第2フランジ12は、下流側排気管22の接続側端部の一例たる上流側端部22Aの周囲に環状に設けられ、第1フランジ11側かつ下流側排気管22の管軸方向と交差する方向に張り出した、例えば傘面状のフランジである。第2フランジ12は、下流側排気管22の管軸方向に対して例えば45°傾斜している。図3に示されるように、下流側排気管22の上流側端部22Aは、第2フランジ12の根元部12Dよりも上流側排気管20側に突出しており、排気管用管継手10による上流側排気管20と下流側排気管22との接続状態において、ガスケット18に差し込まれると共に、該上流側排気管20の下流側端部20Aに近接するように設定されている。上流側排気管20の下流側端部20Aと、下流側排気管22の上流側端部22Aとを当接させないのは、上流側排気管20と下流側排気管22とが互いに接近する方向における並進変位を許容するためである。
【0022】
図2,図3において、第2フランジ12の上流側排気管20側の端縁には、第2フランジ12の傾斜方向に沿って上流側排気管20側に伸びる一対の平板部12Bが設けられている。図3に示されるように、この平板部12Bは、ボルト24の差込み方向において第1フランジ11の平板部11Bと夫々重なるように構成されている。
【0023】
この平板部12Bには、ボルト24を通すための貫通孔12Cが夫々形成されている。この貫通孔12Cの直径は、ボルト24の外径に対応する大きさに設定されている。これにより、第1フランジ11の貫通孔11Cは、第2フランジ12の貫通孔12Cよりも大径となっている。これは、第1フランジ11と第2フランジ12との間の相対的な並進変位についての可動範囲を拡大するためである。
【0024】
なお、図示の例では、第2フランジ12は、下流側排気管22における上流側端部22Aに一体的に設けられているが、これに限られず、該上流側端部22Aに溶接等の手段を用いて接合するようにしてもよい。
【0025】
図2,図3において、ガスケット18は、第1フランジ11と第2フランジ12との間に配設される円環状のシール部材であって、該第1フランジ11に対して摺動可能に当接する第1シール面18Aと、下流側排気管22の外周面22Bに対して摺動可能に当接する第2シール面18Bと、第2フランジ12に平行な荷重受け面18Cとが設けられている。これにより、ガスケット18は、管軸方向断面において、第1シール面18Aと第2シール面18Bとが略直交する2辺をなし、荷重受け面18Cが斜辺となる、略直角三角形に形成されている。図2,図4(A)に示されるように、このガスケット18は、周方向において例えば2分割された分割体32,34を円環状に組み合わせて構成されている。ガスケット18の分割数は、2分割には限られず、3分割以上であってもよい。
【0026】
図3において、ガスケット18の第1シール面18Aの外径は、第1フランジ11の外径よりも小さく設定されている。これは、第1フランジ11上における第1シール面18Aの摺動領域を確保することで、該第1シール面18Aと第1フランジ11との接触面積の変化を抑制し、上流側排気管20と下流側排気管22との間における上流側排気管20等の径方向の並進変位を吸収する際に、第1シール面18Aにおける排ガスに対するシール性を維持できるようにするためである。
【0027】
図2に示されるように、下流側排気管22における上流側端部22Aの外周面22Bは、円筒面として構成されている。このため、第2シール面18Bは、該外周面22Bに対応した曲率を有する円筒内面として形成されている。図3に示されるように、本実施形態では、第2シール面18Bは、上流側排気管20と下流側排気管22との間に相対的な並進変位がない状態において、管軸方向における下流側から例えば3/4程度の領域で、下流側排気管22の上流側端部22Aの外周面22Bと当接している。
【0028】
図2,図4に示されるように、各々の分割体32,34の結合部36には、使用初期状態において所定の隙間S1,S2(図4(B))を有した状態で互いに嵌合可能な凹凸形状が設けられ、所謂ラビンリンス構造となっている。具体的には、図2に示されるように、半円環状に形成された分割体32の一端には、例えば管軸方向に延びる堤状の凸部32Aが設けられ、他端には例えば管軸方向に延びる溝状の凹部32Bが設けられている。一方、同じく半円環状に形成された分割体34の一端には、分割体32の凸部32Aと嵌合するように管軸方向に延びる溝状の凹部34Bが設けられ、他端には分割体32の凹部32Bと嵌合するように管軸方向に延びる凸部34Aが設けられている。
【0029】
ガスケット18を下流側排気管22の上流側端部22Aに取り付けた使用初期状態において、凸部32Aと凹部34Bとの間には、図4(B)に示されるように、ガスケット18の結合部36における接線方向に隙間S1が設定され、径方向に隙間S2が設定されるようになっている。隙間S1,S2の大きさは、ガスケット18における第2シール面18Bの摩耗量を考慮して設定される。
【0030】
なお図示の例では、隙間S1が隙間S2と略等しく設定されているが、これに限られず、例えば隙間S1をある程度確保する一方、隙間S2をなくすことで、凸部32Aが凹部34B内を結合部36の接線方向(凹部34Bの深さ方向)に摺動可能な構成としてもよい。凸部34Aと凹部32Bとの結合部36においても同様である。また分割体32,34の結合部36に設ける凸部32A,34A及び凹部32B,34Bを、夫々複数列設けて、排ガスに対するシール性をより高めるようにしてもよい。
【0031】
図2,図3において、ボルト24、ナット26及び圧縮コイルばね28は、第1フランジ11と第2フランジ12とを弾性的に締結するための締結手段であり、平板部11B,12Bに対応して、一対ずつ用いられている。ボルト24の頭部24Bと第1フランジ11の平板部11Bとの間には、座金38及び圧縮コイルばね40が配設されている。この圧縮コイルばね40を用いることで、ナット26に対するボルト24の締込み量を変化させた際における第1フランジ11と第2フランジ12との締結力の変化を少なくできるようになっている。換言すれば、ボルト24の頭部24Bの位置に配置される座金38と、平板部11Bとの間に圧縮コイルばね40を介在させることで、第1フランジ11と第2フランジ12との締結力を微調整できるようになっている。
【0032】
図2,図3において、板ばね30は、第2フランジ12と、ガスケット18の荷重受け面18Cとの間に配設され、第1シール面18Aを第1フランジ11に対して弾性的に押圧付勢すると共に、第2シール面18Bを下流側排気管22の外周面22Bに対して弾性的に押圧付勢する付勢手段である。この板ばね30は、例えば断面略S字形の円環状に構成され、ガスケット18の荷重受け面18C及び第2フランジ12と略直交する方向に弾性変形可能に構成されている。また板ばね30の直径は、該板ばね30の付勢力がガスケット18の荷重受け面18Cの略中央部に作用するように設定されている。この板ばね30は、排ガスの熱に耐え得る例えば金属ばねである。
【0033】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係る排気管用管継手10は、排気系16における上流側排気管20と下流側排気管22との接続部に設けられており、エンジン14から排出される排ガスを、上流側排気管20から下流側排気管22側へ流すことができる。
【0034】
具体的には、図3に示されるように、排気管用管継手10において、第1フランジ11と第2フランジ12の間にはガスケット18及び板ばね30が配設され、該第1フランジ11と第2フランジ12とは、ボルト24、ナット26及び圧縮コイルばね28により弾性的に締結されている。これに伴い、ガスケット18の第1シール面18Aは、第1フランジ11に対して弾性的に押圧付勢され、第2シール面18Bは、下流側排気管22の外周面22Bに対して弾性的に押圧付勢された状態となっている。
【0035】
本実施形態では、第2フランジ12が、下流側排気管22の管軸方向に対して45°傾斜しており、また板ばね30が円環状に構成されているので、該板ばね30の付勢力は、ガスケット18の第1シール面18A及び第2シール面18Bに対して、夫々均等に作用することとなる。このため、各シール面における排ガスに対するシール性を同等に確保することができる。また上流側排気管20と下流側排気管22との間の相対的な並進変位がない状態において、ガスケット18を中立位置に安定的に保持することができる。
【0036】
図4(A)に示されるように、ガスケット18は分割体32,34に2分割されているが、各分割体32,34の結合部36には、互いに嵌合可能な凹凸形状が設けられており、該結合部36が所謂ラビリンス構造となっているので、該結合部36におけるシール性を確保することができる。
【0037】
次に、図5において、エンジン14のロール振動に基づいて、上流側排気管20と下流側排気管22との間に相対的な並進変位が生じた場合における排気管用管継手10の作用について説明する。エンジン14が横置きのエンジンである場合、クランクシャフト(図示せず)が車幅方向に延びているため、該エンジン14のロール振動は、車幅方向を回転軸として、主に矢印A及び矢印B方向に生ずると考えられる。管軸方向が車両前後方向である場合においてこのようなエンジン14のロール振動が生ずると、上流側排気管20と下流側排気管22との間には、該上流側排気管20等の径方向における相対的な並進変位と、管軸方向における相対的な並進変位とが生じることとなる。
【0038】
このとき、図6に示されるように、本実施形態に係る排気管用管継手10では、ガスケット18の第1シール面18Aが第1フランジ11に対して矢印Uや矢印D方向に摺動することで、上流側排気管20等の径方向(車両上下方向)における相対的な並進変位を吸収することができる。またガスケット18の第2シール面18Bが下流側排気管22の外周面22Bに対して矢印Fや矢印R方向に摺動することで、管軸方向における相対的な並進変位を吸収することができる。このように第1シール面18Aや第2シール面18Bが摺動する際においても、該第1シール面18A及び第2シール面18Bにおける排ガスに対するシール性は、圧縮コイルばね28や板ばね30の付勢力により維持される。
【0039】
更に、図示は省略するが、排気管用管継手10によれば、ガスケット18の第1シール面18Aが第1フランジ11に対して車幅方向に摺動することで、車幅方向における相対的な並進変位を吸収することも可能である。即ち、本実施形態に係る排気管用管継手10は、管軸方向と、該管軸方向と直交する2方向とを合わせた3軸方向における、上流側排気管20と下流側排気管22との間の相対的な並進変位を吸収することができる。またこれによって、エンジン14のロール振動により上流側排気管20に生じた変位が下流側排気管22側に伝達されることを抑制することができる。
【0040】
なお、「並進変位を吸収する」とは、上流側排気管20と下流側排気管22との間の相対的な並進変位が生じた際に、上流側排気管20と下流側排気管22との接続部位に無用な応力が生じたり、一方の変位が他方へ伝達されたりすることがないように、排気管用管継手10がその相対変位を許容することをいう。
【0041】
次に、本実施形態では、図4(A),(B)に示されるように、ガスケット18が、周方向において複数に分割された分割体32,34を円環状に組み合わせて構成され、各々の分割体32,34の結合部36には、使用初期状態において所定の隙間S1,S2が設けられ、かつガスケット18の荷重受け面18Cがばねにより弾性的に押圧付勢されているので、ガスケット18が、下流側排気管22の外周面22Bに対して摺動可能に当接する第2シール面18Bにおいて摩耗した場合、各分割体32,34の結合部36に設けられた所定の隙間S1,S2(図4(B))が詰まって行くことで、ガスケット18の内径が縮小する。これにより、ガスケット18の第2シール面18Bが摩耗した場合でも、該第2シール面18Bにおける排ガスに対するシール性を持続させることができる。即ち、ガスケット18の摩耗による径変化に対応することが可能であり、該ガスケット18を長寿命化させることができる。
【0042】
図6に示されるように、本実施形態に係る排気管用管継手10では、第1フランジ11の平板部11Bにおける貫通孔11Cの直径は、ボルト24のねじ部24Aの外径の例えば1.3倍程度に設定され、第2フランジ12の平板部12Bにおける貫通孔12Cよりも大径となっているので、第1フランジ11と第2フランジ12との間の相対的な並進変位についての可動範囲が大きい。このため、排気管用管継手10による相対変位の吸収を、より円滑に行うことができる。
【0043】
上記実施形態において、ガスケット18の第1シール面18Aと第1フランジ11との当接部の面圧、及びガスケット18の第2シール面18Bと下流側排気管22の外周面22Bとの当接部の面圧は、ボルト24の締込み量と、板ばね30のばね定数とにより調整することが可能である。
【0044】
なお、上記実施形態では、第1排気管を上流側排気管20とし、第2排気管を下流側排気管22としたが、第2排気管を上流側排気管20とし、第1排気管を下流側排気管22としてもよい。即ち、第1フランジ11を下流側排気管22側に設け、第2フランジ12を上流側排気管20側に設ける構成であってもよい。
【0045】
また上記実施形態では、第1フランジ11における平板部11Bの貫通孔11Cが、第2フランジ12における平板部12Bの貫通孔12Cより大径であるものとしたが、第2フランジ12側からボルト24を差し込む場合には、貫通孔12Cが貫通孔11Cよりも大径となる。この場合、座金38及び圧縮コイルばね28も第2フランジ12側に配設される。またナット26は、ボルト24の配置に応じて、予め第1フランジ11の平板部11B又は第2フランジ12の平板部12Bに溶接されていてもよい。
【0046】
更に第1フランジ11において、平板部11Bが一対、即ち2箇所に設けられるものとしたが、これに限られず、3箇所以上であってもよい。第2フランジ12における平板部12Bについても同様であり、平板部11B,12Bは、夫々対応する角度位置に設けられる。
【0047】
また締結手段の一例として、ボルト24、ナット26及び圧縮コイルばね28を挙げたが、締結手段はこれらに限られるものではない。更に板ばね30は、円環状のものに限られず、また個数は1個には限られない。付勢手段の一例として板ばね30を挙げたが、付勢手段は板ばね30に限られず、皿ばねや圧縮コイルばね(何れも図示せず)であってもよい。圧縮コイルばねを用いる場合、該圧縮コイルばねは、第2フランジ12とガスケット18の荷重受け面18Cとの間において、周方向に複数個配設される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】排気管用管継手を備えた排気系を示す模式図である。
【図2】排気管用管継手を示す分解斜視図である。
【図3】排気管用管継手を示す拡大断面図である。
【図4】(A)ガスケットの正面図である。(B)ガスケットの分割体における凸部と凹部との嵌合状態を示す拡大断面図である。
【図5】排気管用管継手を備えた排気系において、排気管用管継手が、上流側排気管と下流側排気管との間の相対的な並進変位を吸収していることを示す模式図である。
【図6】排気管用管継手が、上流側排気管と下流側排気管との間の相対的な並進変位を吸収している状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 排気管用管継手
11 第1フランジ
12 第2フランジ
18 ガスケット
18A 第1シール面
18B 第2シール面
18C 荷重受け面
20 上流側排気管(第1排気管)
20A 下流側端部(接続側端部)
22 下流側排気管(第2排気管)
22A 上流側端部(接続側端部)
22B 外周面
24 ボルト(締結手段)
26 ナット(締結手段)
28 圧縮コイルばね(締結手段)
30 板ばね(付勢手段)
32 分割体
34 分割体
36 結合部
S1 隙間
S2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1排気管における接続側端部の周囲に設けられ、前記第1排気管の径方向外側に張り出した環状の第1フランジと、
第2排気管における接続側端部の周囲に設けられ、前記第1フランジ側かつ前記第2排気管の管軸方向と交差する方向に張り出した環状の第2フランジと、
前記第1フランジと前記第2フランジとの間に配設され、該第1フランジに対して摺動可能に当接する第1シール面と、前記第2排気管の外周面に対して摺動可能に当接する第2シール面と、前記第2フランジに平行な荷重受け面とが設けられた円環状のガスケットと、
前記第1フランジと前記第2フランジとを弾性的に締結する締結手段と、
前記第2フランジと、前記ガスケットの前記荷重受け面との間に配設され、前記第1シール面を前記第1フランジに対して弾性的に押圧付勢すると共に、前記第2シール面を前記第2排気管の前記外周面に対して弾性的に押圧付勢する付勢手段と、
を有することを特徴とする排気管用管継手。
【請求項2】
前記第2フランジは、前記第2排気管の管軸方向に対して45°傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の排気管用管継手。
【請求項3】
前記ガスケットは、周方向において複数に分割された分割体を円環状に組み合わせて構成され、
各々の前記分割体の結合部には、使用初期状態において所定の隙間を有した状態で互いに嵌合可能な凹凸形状が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排気管用管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−250102(P2009−250102A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98109(P2008−98109)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】