説明

排熱装置

【課題】螺旋翼片がハウジング内で吸気面側に偏寄した位置に組み付けられているボックス型のファンユニットを送風要素とする排熱装置において、簡単な構成でもって、ファンユニットの表裏方向の誤組付けを確実に防ぐことができるようにする。
【解決手段】ダクトケース5の空気排出口3に対するファンユニット7の正逆方向の誤った組み付けを防止するための規制部材59をカバーケース8の内面に突出状に形成する。ファンユニット7の吸気面30の側がカバーケース8に対向するような逆姿勢で組み付けられた場合には、螺旋翼片36の螺旋始端部42の回動軌跡に規制部材59が干渉して、回転翼体34が回転不能となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックス型のファンユニットを送風要素とする排熱装置に関して、ファンユニットの表裏方向の誤組付けを防止する技術に関する。本発明は、コピー装置やファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置の排熱装置として好適である。
【背景技術】
【0002】
例えば、コピー装置やファクシミリ装置などの電子写真方式の画像形成装置においては、定着装置で発生した熱を外部に排出するための送風要素として、ボックス型のファンユニットが広く採用されている。
かかるファンユニットは、吸気面から排気面に至る通風路を有する扁平四角枠状のハウジングと、通風路内に組み付けられた回転翼体と、回転翼体を回転させるモータとからなる軸流ファンであり、モータの回転駆動力を受けて回転翼体が回転されると、吸気面より取り込んだ暖気を排気面から送り出すようになっている。つまり、この種のボックス型のファンユニットでは、モータ軸の伸び方向に表裏面が規定されており、裏側の吸気面から取り込んだ暖気を、表側の排気面から送り出している。このため、ファンユニットの表裏の方向を誤ると、排熱をスムーズに行うことができず、画像形成装置の内部が高温となって、動作不良を引き起こすおそれがある。最悪の場合には内部部品の破損トラブルを招く。
【0003】
このため、従来より、ファンユニットの表裏方向の誤組付けを防止する試みが種々なされており、例えば特許文献1では、ハウジングの外面に形成されている窪みが、吸気面側と排気面側とで非対称であることに着目して、窪みに嵌入される突起部をファン取付部に形成している。これによれば、排気面と吸気面とを取り違えて表裏逆方向にファンユニットを組み付けようとしても、窪みの周囲を囲むハウジングの傾斜面に突起部が先当たりするため、ファン取付部にファンユニットを取付けることは不可能であり、したがって、誤組付けを効果的に阻止することができる。
【特許文献1】特開2002−357997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1では、ファン取付部の一部を切り起こしたり、別部材をねじ止めするなどの方法によって突起部を設けているため、切り起こしやねじ止めのための工程が別途必要となる。このため、装置の組み立て工数が増加して、画像形成装置の製造コストが増加することが避けられない。
また、切り起こしにより突起部を形成した場合には、ファンユニットの取付け時に僅かな力を加えるだけで、突起部が倒れるおそれがあり、誤組付けを完全に阻止できるとは言い切れない。
また、上記特許文献1の構成では、突起部が倒されるなどにより、ファンユニットが誤組付けされた場合でも回転翼体は支障なく回転することができるので、誤組付けされたことを装置側で認識することができず、装置内部が異常高温となるおそれがある。
【0005】
本発明の一の目的は、ボックス型のファンユニットを送風要素とする排熱装置において、簡単な構成でもって、ファンユニットの誤組付けを確実に防ぐことができるようにすることにある。
本発明の他の目的は、ボックス型のファンユニットを送風要素とする排熱装置において、万が一、誤組付けがあったとした場合でも、回転翼体の回転を阻止して、かかる排熱装置が組み込まれる本体装置の内部が異常高温となることを確実に防ぐことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る排熱装置は、空気流入口と空気排出口とを有し、これら空気流入口と空気排出口との間に空気流路を備えるダクトと、ダクトの空気排出口に装着されるボックス型のファンユニットと、ファンユニットの外面を覆うように、空気排出口に装着されるカバーケースとを含むものである。
このファンユニットは、吸気面から排気面に至る通風路を有するハウジングと、通風路内に組み付けられる回転翼体と、回転翼体を回転させるモータとを含む軸流ファンであり、吸気面より吸い込んだ暖気を排気面から送り出すようになっている。回転翼体は、前記ファンユニットの吸気面側を螺旋始端部、排気面側を螺旋終端部として、ファンボスの外周面に螺旋状に連続して形成された複数枚の螺旋翼片を有している。これら螺旋翼片は、ハウジング内で吸気面側に偏寄した位置に組み付けられている。
カバーケースには規制部材が設けられている。
そして、カバーケースに対向する面が排気面となるように、空気排出口に対してファンユニットを正姿勢で組み付けた場合には、螺旋翼片の螺旋終端部の回動軌跡と、前記規制部材との間に対向間隙が確保されて、回転翼体は支障無く回転できるようになっており、カバーケースに対向する面が吸気面となるように、空気排出口に対してファンユニットを逆姿勢で誤って組み付けた場合には、螺旋翼片の螺旋始端部の回動軌跡に、前記規制部材が干渉して、回転翼体が回転不能となるように構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2のように、前記ファンユニットは、モータの回転状態を検知し得るセンサを備えたものとすることができる。かかるセンサの具体例としては、拘束検知式、パルス出力式、回転速度検知式などを挙げることができる。
【0008】
請求項3のように、前記規制部材が、前記ファンユニットに臨むカバーケースの内面から、該ファンユニットに向かって突設された一本の軸体であり、前記カバーケースが、一体突設された軸体を含む樹脂成形品とすることができる。
【0009】
請求項4のように、前記軸体が、突出端から突出基端に近付くにつれて、漸次外形が大きくなるように形成された十字軸とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明においては、螺旋翼片がハウジング内で吸気面側に偏寄した位置に組み付けられているオフセット型のファンユニットを送風要素とする排熱装置において、ダクトの空気排出口に対するファンユニットの正逆方向の誤った組み付けを防止するための規制部材をカバーケースに形成した。そのうえで、ファンユニットの吸気面側がカバーケースに対向するような逆姿勢で組み付けられた場合には、螺旋翼片の螺旋始端部の回動軌跡に規制部材が干渉して、回転翼体が回転不能となるようにした。
【0011】
以上のような形態からなる排熱装置によれば、ファンユニットおよびカバーケースをダクトの空気排出口に対して装着したのちに、回転翼体がモータ軸まわりに正常に回転し得るか否かをチェックするだけで、ファンユニットの組付姿勢の適否を容易に確認することできる。これにより、排熱装置の製造過程におけるファンユニットの誤組付けを確実に阻止することができる。
また、規制部材をカバーケースに設けるだけの簡単な構成でもって、ファンユニットが逆姿勢に組み付けられることを確実に防ぐことができるので、誤組付け防止機能を具備することに伴う、排熱装置の製造コストの上昇、および、当該排熱装置が適用される画像形成装置などの本体装置側の製造コストの上昇を最小限に抑えることができる点でも優れている。
【0012】
請求項2記載の本発明のように、ファンユニットがモータの回転状態を検知し得るセンサを有するものとしてあると、万が一、排熱装置の製造過程においてファンユニットの誤組付けが生じた場合でも、回転翼体が回転不能状態に陥っていることをセンサからの検出信号に基づいて、本体装置側で認識することができる。これにて、本体装置の動作を停止制御することで、本体装置の内部が異常高温となることを防ぐことができるので、本体装置の内部部品の破損トラブルなどの最悪の事態を回避できる。このことは、画像形成装置などの本体装置の信頼性向上に資する。
【0013】
請求項3記載の本発明のように、カバーケースを樹脂成形品とするとともに、規制部材をカバーケースの内面から突出形成された一本の軸体としてあると、雄型と雌型の上下二つの金型だけで、軸体を含むカバーケースの全体を樹脂成形することができる。したがって、軸体を有しないカバーケースを樹脂成形する形態に比べて金型の設計変更は僅かで済み、カバーケースの製造コストの上昇を最小限に抑えることができるので、低コストに排熱装置を提供できる点で優れている。
【0014】
請求項4記載の本発明のように、規制部材である軸体を、突出端から突出基端に近付くにつれて漸次外形が大きくなるように形成された十字軸としてあると、簡単な形態で軸体に回転翼体の回転動力に抗するだけの充分な剛性を与えることができるので、規制部材の破損や変形などを効果的に防いで、排熱装置の信頼性の向上に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明に係る排熱装置を、画像形成装置の排熱装置に適用した実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は排熱装置の分解斜視図、図2は排熱装置の全体斜視図、図3は排熱装置を構成するファンユニットの組み付け状態を示す図、図4は図3のA−A線断面図、図5は排熱装置の横断面図、図6は仮止め手段の側断面図、図7は要部の側断面図、図8はファンユニットのオフセット構造を説明するための図である。
【0016】
図1、図2および図5に示すように、この排熱装置1は、空気流入口2と空気排出口3とを有して、これら空気流入口2と空気排出口3との間に空気流路4を備える中空筒状のダクトケース(ダクト)5と、このダクトケース5の空気排出口3に内嵌状に装着されるボックス型のファンユニット7と、ファンユニット7の外面を覆うように、ダクトケース5の空気排出口3に装着されるカバーケース8とからなる。図2に示すように、この排熱装置1は、画像形成装置を構成する内フレーム9に、ビス10によって取付固定される。なお、この内フレーム9の内側に定着装置が配設されている。図1および図5において、符号11は、ダクトケース5に形成されたビス10用のビス孔を示しており、該ビス孔11と内ケース9に形成されたビス孔(不図示)とを位置合わせしたうえで、ビス10をねじ込むことにより、内フレーム9にダクトケース5を取付固定することができる。
なお、以下の本実施形態においては、ダクトケース5の空気排出口3の側を前方、空気流入口2の側を後方と規定する。また、かかる前後方向と直交する水平方向を左右方向と規定する。
【0017】
ダクトケース5は、画像形成装置内に形成された暖気排出用のダクトの最終端を構成するものであり、画像形成装置の定着装置等で発生した暖気は、ダクトケース5の後方の空気流入口2から吸い込まれて、ファンユニット7の送風作用により空気流路4を通って、空気排出口3からカバーケース8を介して画像形成装置の外部へ排出される。
【0018】
図1においてダクトケース5は、ABS樹脂製の樹脂成形品であり、四角筒状の本体部12と、該本体部12の前端部に連続形成されて、前方に行くに従って漸次上下幅寸法が大きくなるように形成された四角テーパー筒状のテーパー部13と、該テーパー部13の拡形側の前端から前方へ真っ直ぐに延びる正四角枠状の直筒部14とを含み、本体部12およびテーパー部13の内側が、本体部12の後端開口面を空気流入口2、直筒部14の前端開口面を空気排出口3とする空気流路4になっている。
【0019】
図5に示すように、本体部12の空気流入口2からテーパー部13の空気排出口3に至る空気流路4の内部には、左右方向を仕切るように、前後方向に長く仕切壁15が立設されている。かかる仕切壁15により、空気流路4は、その大部分を占める主流路4aと、左右幅寸法の小さな副流路4bとに二分割されている。本体部12の後端の右側面には、副流路4bに暖気を流し込むための延出部16が、右方向に一体的に張出し形成されている。
【0020】
ダクトケース5の空気排出口3の内面には、ファンユニット7を装着固定するための装着部が形成されている。図1に示すように、装着部は、直筒部14の内面四隅に形成されて、ファンユニット7のハウジング33を受け止める前向きの装着面18を有するコーナー片19であり、装着面18の中央にビス止め用のビス孔20を備えている。装着面18にファンユニット7のハウジング33が受け止められるような姿勢形態で、該ファンユニット7を直筒部14に差し込んだうえで、その四隅をビス21でコーナー片19にそれぞれ固定することにより、ファンユニット7はダクトケース5に装着固定される。
【0021】
ファンユニット7は、小型の軸流ファンであり、図3に示すように、後方側の吸気面30から前方側の排気面31に至る通風路32を有するハウジング33と、通風路32内に組み付けられた回転翼体34と、回転翼体34を回転させるモータ35とを含み、吸気面30より吸い込んだ暖気を排気面31から送り出すようになっている。すなわち、ファンユニット7には、回転翼体34を構成する螺旋翼片36の螺旋形態と、モータ35による回転方向とにより、表側(排気面31の側:前方)と裏側(吸気面30の側:後方)とが規定されており、図3に示すように、吸気面30が後方側に位置するような正姿勢で組み付けられたときにのみ、適正な排熱・排気動作が実行されるようになっている。
【0022】
図3および図4に示すように、ハウジング33は、薄型正四角形状の外周枠部材37と、通風路32の中央にモータ35を支持固定するボス部材38と、外周枠部材37とボス部材38とをつなぐ四本のステー部材39とを含み、これらを一体に成形してなる。外周枠部材37の四隅には、ビス21用の貫通孔37aが前後方向に貫通状に形成されている(図1参照)。
【0023】
回転翼体34は、モータ35の回転子側のケースを兼ねるファンボス40と、ファンボス40の外面に一体に形成された7枚の螺旋翼片36とを備える。図3に示すように、各螺旋翼片36は、ファンユニット7の吸気面30側を螺旋始端部42、排気面31側を螺旋終端部43として、ファンボス40の外周面に螺旋状に連続して形成されている。
【0024】
図8に示すように、これら螺旋翼片36は、ハウジング33内で吸気面30側に偏寄した位置に組み付けられている。具体的には、螺旋翼片36の螺旋始端部42の回転軌跡と、後方側の吸気面30との前後の間隔寸法D1は、螺旋終端部43の回転軌跡と前方側の排気面31との前後の間隔寸法D2よりも小さなものとされている。すなわち、本実施形態におけるファンユニット7は、回転翼体34が吸気面30側に偏寄されたオフセット型の軸流ファンである。
【0025】
かかるファンユニット7は、モータ35の回転状態を検知し得る拘束検知式のセンサを備えており、不図示のリード線を介して、画像形成装置の制御部に向けて、モータ35の回転状態にかかる検知信号を送出する。具体的には、モータ35の回転が停止すると、オン信号(H信号)を送出するようになっている。
【0026】
図1、図2および図3に示すように、カバーケース8は、多数個の開口を有する正四角面状の主面部50と、この主面部50の外周縁から後方に向けて張り出し形成された四角枠状のフランジ51とを一体に形成してなる樹脂成形品であり、ファンユニット7の排気面31寄りの外面を覆うように、ダクトケース5の空気排出口3の筒壁(直筒部14の筒壁25)に装着されている。主面部50には、左右方向に長い多数本のスリット52(図3参照)が上下方向に列設されており、本実施形態においては当該スリット52を開口とする。図3に示すように、フランジ51の後端縁の内形寸法は、直筒部25の前端縁の外形寸法よりも僅かに大きく設定されており、カバーケース8をダクトケース5に装着したとき、フランジ51の後端縁が直筒部25の前端縁で受け止められる。
【0027】
カバーケース8は、直筒部14の筒壁25とフランジ51との間に形成された掛止構造S(図1、図3、図4参照)を介して、空気排出口3に対して抜け止め状に掛止保持される。かかる掛止構造Sは、直筒部14の筒壁25の外面に突設状に一体形成された係止爪53と、フランジ51の後端縁から後方に向けて張出し形成されて、係止爪53と係合する係止片54とからなる。
係止爪53は、筒壁25の上面の二箇所と、下面の一箇所に形成されている。これに合わせて、フランジ51の上面には、左右一対の係止片54・54が形成されており、下面の左右の中央には、一個の係止片54が形成されている。各係止片54は四角枠状を呈しており、その中央に形成された開口部が係止爪53に係合することにより、ダクトケース5に対してカバーケース8は抜け止め状に保持固定される。
【0028】
加えて、フランジ51の左右側面には、直筒部14の筒壁25の左右外面を圧接するための係合片55・55が形成されている。各係合片55は、フランジ51からの張出し先端側(後方側)に行くに従って、漸次幅寸法が小さくなるような先窄まりの三角テーパー状を呈している。
【0029】
図5に示すように、各係合片55は、そのフランジ51からの張出し先端側の厚み寸法が、基端側の厚み寸法よりも小さくなるように設定されている。ここでは、係合片55の上下の中央部にリブ56を形成し(図1、図4参照)、かかるリブ56の先端部(後端部)に、外向きに傾斜するガイド面57を形成して、先端側の厚み寸法が小さくなるようにしている。
【0030】
これら係止片54および係合片55は、主面部50やフランジ51とともに、カバーケース8の成形時に一体的に形成されている。つまり、係止片54や係合片55も樹脂成形品であり、僅かではあるが弾性変形が可能である。
【0031】
以上のような構成からなるカバーケース8の装着に際しては、係止片54の弾性を利用して、該係止片54を撓み変形させて係止爪53を乗り越えさせて、図2、図3および図4に示すごとく係止爪53に係止片54を係合させる。これでダクトケース5に対してカバーケース8を抜け止め状に保持固定することができる。かかる保持固定状態において、フランジ51の左右一対の係合片55・55が、ダクトケース5の筒壁25を左右の外方向から圧接状に挟持することにより、カバーケース8のダクトケース5に対する固定はより一層しっかりとしたものとなる。何よりも、このように左右一対の係合片55・55でダクトケース5を圧接状に挟持していると、カバーケース8のがたつきをなくすことができるので、ファンユニット7のモータ35の振動を受けてカバーケース8が共振することに由来する、騒音の発生を確実に防ぐことができる点で優れている。
【0032】
直筒部14の筒壁25に先当たりする各係合片55の張出し先端側(後方側)の厚み寸法を、基端側の厚み寸法よりも小さく設定してあると、その撓み変形性を確保しながら、大きな挟持力を得ることができる。すなわち、係合片55の先端部の撓み変形性を良好に確保できるので、カバーケース8のダクトケース5に対する装着作業をスムーズに進めることができ、しかも装着後は厚み寸法の大きな基端側でダクトケース5の筒壁25をしっかりと挟持することができるので、カバーケース8のがたつきを抑えて、騒音の発生を防ぐことができる。
【0033】
各係合片55を、フランジ51からの張出し先端側に行くに従って、漸次幅寸法が小さくなるような先窄まりのテーパー状とした場合にも、撓み変形性を確保しながら、大きな挟持力を得ることができる。すなわち、先端部の幅寸法を小さくすることで係合片55の先端部の撓み変形性を良好に確保することができるので、カバーケース8の装着作業をスムーズに進めることができ、しかも、装着後は幅寸法の大きな基端側でダクトケース5の筒壁25をしっかりと挟持することができるので、カバーケース8のがたつきを抑えて、騒音の発生を防ぐことができる。
【0034】
本実施形態のように、フランジ51の上下面に掛止構造Sを設けて、左右面に係合片55・55を設けてあると、ダクトケース5の筒壁25を上下左右の全方向から挟持することができる。したがって、この点においてもカバーケース8のがたつきを抑えて、騒音の発生を防ぐことができる。
【0035】
カバーケース8には、ダクトケース5の空気排出口3に対するファンユニット7の正逆方向の誤った組み付けを防止するための規制部材59が設けられている。かかる規制部材59は、ファンユニット7に臨む主面部50の内面から、後方に向かって一体的に突設された一本の軸体であり、前方から見て主面部50の左下位置に存している。本実施形態においては、規制部材59は、突出端から主面部50側の突出基端に近付くにつれて、漸次外形が大きくなるように形成された十字軸とした。
【0036】
規制部材59の後方への突出寸法は、ファンユニット7が表裏の逆姿勢で組み付けられた場合にのみ、回転翼体34に干渉する程度としてある。
すなわち、空気排出口3に対してファンユニット7を正姿勢で組み付けた場合、つまり、図3に示すように、吸気面30側が後方側となるようにファンユニット7を組み付けた場合には、該ファンユニット7の外面を覆うようにカバーケース8を装着しても、螺旋翼片36の螺旋終端部43の回動軌跡と、前記規制部材59との間に対向間隙が確保されて、回転翼体34は支障無く回転できる。
しかし、図7に示すように、カバーケース8に対向する面が吸気面30となるように、空気排出口3に対してファンユニット7を表裏の逆姿勢で組み付けた場合には、その後にカバーケース8を装着すると、螺旋翼片36の螺旋始端部42の回動軌跡に、規制部材59が干渉して、回転翼体34が回転不能となるようにしている。
もっとも、当該作用効果は、ファンユニット7として、回転翼体34が吸気面側に偏寄されたオフセット型の軸流ファン(D1<D2:図8参照)を採用したことに拠る。
【0037】
このようにカバーケース8に規制部材59を設けてあると、ファンユニット7およびカバーケース8をダクトケース5の空気排出口3に対して装着したのちに、回転翼体34が正常に回転し得るか否かをチェックするだけで、ファンユニット7の組付姿勢の適否の状態を容易に確認することできる。これにより、排熱装置1の製造過程におけるファンユニット7の表裏方向の誤組付けを確実に阻止することができる。
また、規制部材59をカバーケース8に設けるだけの簡単な構成でもって、ファンユニット7が逆姿勢に組み付けられることを確実に防ぐことができるので、誤組付け防止機能を具備することに伴う、排熱装置1の製造コストの上昇、および、当該排熱装置1が適用される画像形成装置の製造コストの上昇を最小限に抑えることができる点でも優れている。
【0038】
とくに、本実施形態のように、ファンユニット7がモータ35の回転状態を検知し得るセンサを有するものとしてあると、万が一、排熱装置1の製造過程においてファンユニット7の誤組付けが生じ、この排熱装置1がそのまま画像形成装置に組み付けられた場合でも、回転翼体34が回転不能状態に陥っていることをセンサからの検出信号に基づいて、画像形成装置側で認識することができる。これにて、画像形成装置の画像形成動作等を停止制御することで、画像形成装置の内部が異常高温となることを防ぐことができるので、内部部品の破損トラブルなどの最悪の事態を回避することが可能となる。このことは、画像形成装置の信頼性の向上に資する。
【0039】
カバーケース8を樹脂成形品とするとともに、規制部材59をカバーケース8の内面から突出形成された一本の軸体としてあると、雄型と雌型の上下二つの金型だけで、軸体を含むカバーケース8の全体を樹脂成形することができる。したがって、軸体を有しないカバーケース8を成形する場合に比べて金型の設計変更は僅かで済み、カバーケース8の製造コストの上昇を最小限に抑えることができる。これにて、低コストに排熱装置1を提供することができる。
【0040】
規制部材59である軸体を、突出端から突出基端に近付くにつれて漸次外形が大きくなるように形成された十字軸としてあると、簡単な形態で軸体に回転翼体34の回転動力に抗するだけの充分な剛性を与えることができるので、規制部材59の破損や変形などの不具合の発生を効果的に防いで、信頼性に優れた排熱装置1を得ることができる。
【0041】
以上のような構成からなる排熱装置1は、ダクトケース5の空気排出口3に、ファンユニット7とカバーケース8とが予め組み付けられたアッセンブリ部品とされたうえで、画像形成装置の内フレーム9に、ビス10によって取付固定される。
しかし、このように排熱装置1をアッセンブリ部品とした場合には、ダクトケース5のみを取付固定する場合に比べて、ファンユニット7等の重量分だけ重量が増加するため、組立作業者の重量負担が大きくなって排熱装置1を落としやすい。また、ファンユニット7はダクトケース5の一端側(空気排出口3の側)の偏寄した位置に装着されているために、排熱装置1を動かしたときの回転モーメントが大きくなって重量バランスを崩して排熱装置1を落としやすく、その点にも不利がある。
【0042】
そこで、本実施形態では、図1、図2、図6に示すように、内フレーム9とダクトケース5との間に、ビス止め固定に先立って排熱装置1を内フレーム9に仮止め保持するための仮止め手段Tを設けている。ここでの仮止め手段Tは、内フレーム9の所定位置に突設状に形成された突起70と、ダクトケース5の所定位置に、一体的に形成されて、該突起70に係合するフック71とからなる。
【0043】
具体的には、図1および図6に示すように、内フレーム9は、左右の水平方向に伸びる係止壁72を有しており、その上面の所定位置に、円柱状の突起70を上向きに突設してある。
【0044】
図6に示すように、かかる内フレーム9に係合するダクトケース5側のフック71は、ダクトケース5の本体部12の上壁から上向きに突設された立壁73と、該立壁73の上端から内フレーム9側の後方に向かって水平方向に伸びる水平壁74とからなる断面L字状を呈しており、水平壁74の盤面中央には、突起70の係入を許す係止孔75が開設されている。ダクトケース5(本体部12)の上壁とフック71の水平壁74との間には、内フレーム9の係止壁72を上下方向から挟持するための対向間隙が形成されている。
【0045】
図6に示すように、水平壁74の後端縁面と下面とのコーナー部には、下向きのガイド面76を有して、前記突起70の係止孔75への係入をガイドするためのガイド溝77が、後端縁面から係止孔75に至って切り欠き形成されている。このガイド面76は、前下がりの傾斜面とされており、したがってガイド溝77の深さ寸法は、後方側が深く、前方向に行くに従って浅く形成されている。
【0046】
以上のような仮止め手段Tを備える排熱装置1の取付構造によれば、フック71の係止孔75に内フレーム9の突起70を係入させることで、排熱装置1を内フレーム9に対して仮止め状態に先組みすることができる。より具体的には、ダクトケース5の上壁とフック71の水平壁74とによって、内フレーム9の係止壁72を上下方向から挟持するように、ダクトケース5を後方へ押し込み、フック71の係止孔70に内フレーム9の突起70を係入させるだけで、排熱装置1を内フレーム9に対して仮止め状態に先組みすることができる。このように排熱装置1を仮止め状態に先組みできるようにしてあると、組立作業者は排熱装置1を下支えることなく、両手でビス止め作業を行うことができる。したがって、排熱装置1の画像形成装置に対する取付作業を正確にしかも少ない手間・時間で合理的に行うことができる。
【0047】
このときフック71の係止孔75に内フレーム9の突起70が係入するようにしてあると、不用意にフック71が内フレーム9から外れて、排熱装置1が内フレーム9から脱落することがなく、安全に作業を進めることができる。
また、フック71を突起70に位置合わせしたうえで、ダクトケース5を後方へ押し込み操作するだけで、最適位置に排熱装置1を仮止めすることができる。したがって、ダクトケース5と内フレーム9のビス孔の位置合わせ作業を完全に廃することができ、ビス止め作業を効率的に進めることができる点でも優れている。
【0048】
水平壁74に下向きのガイド面76を有するガイド溝77を形成してあると、突起70をガイド溝77で受け入れて係止孔75へ案内することができるので、係入動作の容易化を図って、仮止め作業を効率的に進めることができる。このとき、ガイド面76を前下がりの傾斜面として、ガイド溝77の深さ寸法を後方側が深く、前方向に行くに従って浅く形成してあると、仮止め作業時には、深さ寸法の大きな側から突起70をガイド溝77内に受け入れて係止孔75に案内することができるので、突起70と係止孔75との係止操作を軽い力で軽滑に進めることできる。また、仮止め後は、深さ寸法の浅いガイド溝77の前端縁が突起70に係合して、ダクトケース5の前方向へ位置ズレするのを確実に規制することができる。したがって、仮止め状態から排熱装置1が不用意に抜け外れることはなく、安全確実に排熱装置1の取付作業を進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る排熱装置の分解斜視図である。
【図2】排熱装置の全体斜視図である。
【図3】排熱装置を構成するファンユニットの組み付け状態を示す図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】排熱装置の横断面図である。
【図6】仮止め手段の側断面図である。
【図7】要部の側断面図である。
【図8】ファンユニットのオフセット構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0050】
1 排熱装置
2 空気流入口
3 空気排出口
4 空気流路
5 ダクト(ダクトケース)
7 ファンユニット
8 カバーケース
30 吸気面
31 排気面
32 通風路
33 ハウジング
34 回転翼体
35 モータ
36 螺旋翼片
40 ファンボス
42 螺旋始端部
43 螺旋終端部
59 規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流入口と空気排出口とを有し、これら空気流入口と空気排出口との間に空気流路を備えるダクトと、
ダクトの空気排出口に装着されるボックス型のファンユニットと、
ファンユニットの外面を覆うように、空気排出口に装着されるカバーケースとを含む排熱装置であって、
前記ファンユニットは、吸気面から排気面に至る通風路を有するハウジングと、該通風路内に組み付けられる回転翼体と、回転翼体を回転させるモータとを含む軸流ファンであり、吸気面より吸い込んだ暖気を排気面から送り出すようになっており、
前記回転翼体は、前記ファンユニットの吸気面側を螺旋始端部、排気面側を螺旋終端部として、ファンボスの外周面に螺旋状に連続して形成された複数枚の螺旋翼片を有しており、これら螺旋翼片は、ハウジング内で吸気面側に偏寄した位置に組み付けられており、
前記カバーケースには規制部材が設けられており、
前記カバーケースに対向する面が排気面となるように、空気排出口に対してファンユニットを正姿勢で組み付けた場合には、螺旋翼片の螺旋終端部の回動軌跡と、前記規制部材との間に対向間隙が確保されて、回転翼体は支障無く回転できるようになっており、
前記カバーケースに対向する面が吸気面となるように、空気排出口に対してファンユニットを逆姿勢で誤って組み付けた場合には、螺旋翼片の螺旋始端部の回動軌跡に、前記規制部材が干渉して、回転翼体が回転不能となるように構成されていることを特徴とする排熱装置。
【請求項2】
前記ファンユニットが、モータの回転状態を検知し得るセンサを備えたものである請求項1記載の排熱装置。
【請求項3】
前記規制部材が、前記ファンユニットに臨むカバーケースの内面から、該ファンユニットに向かって突設された一本の軸体であり、
前記カバーケースが、軸体を含んで一体的に形成された樹脂成形品であることを特徴とする請求項1又は2記載の排熱装置。
【請求項4】
前記軸体が、突出端から突出基端に近付くにつれて、漸次外形が大きくなるように形成された十字軸であることを特徴とする請求項3記載の排熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−281193(P2007−281193A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105655(P2006−105655)
【出願日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】