説明

接着剤組成物及び接続構造体

【課題】優れた接着強度と、安定した性能を有する接着剤及びそれを用いた回路部材の接続構造体の提供。
【解決手段】(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)下記一般式(1)で表される化合物を重合してなる分岐高分子、下記一般式(1)、(2a)及び(3b)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、又は、下記一般式(1)、(2b)及び(3a)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、及び、(d)ラジカル重合開始剤、を含有する接着剤組成物。A−R20−(B)…(1)R21−(A)…(2a)、R21−(B)…(2b)R22−(A)…(3a)、R22−(B)…(3b)[式中、R20は(1+x)価の有機基、R21は2価の有機基、R22は3価の有機基、xは2以上の整数、AはBと反応性の官能基、BはAと反応性の官能基、をそれぞれ示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子等の素子を構成する種々の部材を結合させるために、種々の接着剤が使用されている。このような接着剤に対する要求は、接着性をはじめとして、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等多岐に亘る。接着に使用される被着体としては、プリント配線板やポリイミド等の有機基材をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(インジウムとスズの複合酸化物)、SiN、SiO等、多種多様な表面状態を有する基材が用いられており、接着剤には、被着体にあわせた分子設計が求められる。
【0003】
半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、高接着性でかつ高信頼性を示すエポキシ樹脂を用いた熱硬化性樹脂が用いられてきた(例えば、特許文献1参照)。熱硬化性樹脂の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤の反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は、室温等の貯蔵温度では反応せず、加熱の際に高い反応性を示す物質であり、硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっている。接着剤の室温での貯蔵安定性と加熱時の硬化速度の観点から、熱潜在性触媒としては種々の化合物が用いられてきた。実際の工程では、170〜250℃で1〜3時間硬化することにより、所望の接着を得ることが多いが、最近の半導体素子の高集積化や液晶素子の高精細化に伴い、素子間及び配線間ピッチが狭小化し、硬化時の加熱によって、周辺部材に悪影響を及ぼす恐れが出てきた。また低コスト化のためには、より低温でかつ短時間での硬化(低温速硬化)が要求されている。エポキシ樹脂を用いた接着剤で、この低温速硬化を達成するためには、活性化エネルギーの低い熱潜在性触媒を使用する必要がある。しかし、室温付近での貯蔵安定性を兼備することが非常に難しいことが知られている。
【0004】
最近、アクリレート誘導体やメタアクリレート誘導体等のラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤である過酸化物を併用した、ラジカル硬化型接着剤が注目されている。ラジカル硬化は、反応活性種であるラジカルが反応性に富むため、短時間硬化が可能である(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、ラジカル硬化系の接着剤は、加熱時の硬化収縮が大きいために、エポキシ樹脂を用いた場合と比較して、接着強度に劣る。このような問題を解決する方法として、接着剤に液状ゴムを添加し、濡れ性を向上させ、接着強度を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】国際公開第98/44067号
【特許文献3】国際公開第2004/50779号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリイミド等の有機基材は、剛直で平面状の分子構造を有し、かつ分子間で強力な電荷移動錯体を形成しているため、接着剤組成物との共有結合の形成は極めて困難である。さらに、通常ポリイミド表面は平滑であるため、物理的な投錨効果(アンカー効果)による接着効果が小さい。そのため、濡れ性を改善するだけでは、高温高湿条件で長時間曝露(例えば85℃/85%RH)した後にはやはり接着強度が低下してしまう。こうした材料を、高温高湿条件で長時間の曝露後も安定した性能が要求される半導体素子や液晶表示素子の接着剤に使用した場合、信頼性試験後に接着力や接続抵抗等の特性が悪化する。
【0007】
そこで、本発明は、低温且つ短時間の硬化条件において、優れた接着強度を得ることができ、且つ長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においても安定した性能(接着強度や接続抵抗)を維持することができる接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(a)熱可塑性樹脂、(b)ラジカル重合性化合物、(c)下記一般式(1)で表される化合物を重合してなる分岐高分子、下記一般式(1)、(2a)及び(3b)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、又は、下記一般式(1)、(2b)及び(3a)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、
A−R20−(B)…(1)
21−(A)…(2a)、R21−(B)…(2b)
22−(A)…(3a)、R22−(B)…(3b)
[式中、R20は(1+x)価の有機基、R21は2価の有機基、R22は3価の有機基、xは2以上の整数、AはBと反応性の官能基、BはAと反応性の官能基、をそれぞれ示す。]、及び(d)ラジカル重合開始剤、を含有する接着剤組成物を提供する。このような構成によれば、低温速硬化での接着が可能となり、かつ長時間の信頼性試験後にも安定した接着強度を維持することができる。
【0009】
(c)分岐高分子は、ウレタン結合、イミド結合を少なくとも一つ以上有することが好ましい。分岐高分子がこのような結合を少なくとも一つ以上有することにより、耐熱性や、プリント配線板やポリイミド等の有機基材との接着強度がさらに向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0010】
(c)分岐高分子は、イソシアヌレート環を有することが好ましい。このような構造の分岐高分子を用いることにより、プリント配線板やポリイミド等の有機基材との接着強度や、耐熱性がさらに向上させることができ、優れた接続信頼性を得ることが可能になる。
【0011】
(c)分岐高分子の重量平均分子量は、1000以上20000未満とすることができる。このような分子量の分岐高分子を用いることにより、耐熱性がさらに向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0012】
(c)分岐高分子は、ラジカル重合性官能基を有するものであってもよい。分岐高分子がラジカル重合性官能基を有することで、分岐高分子が他の成分と反応して架橋構造が得られ、耐熱性がさらに向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0013】
上記の場合において、(c)分岐高分子が1分子当りラジカル重合性官能基を3以上有することが好ましい。ラジカル重合性官能基の数が上記の数値以上であることにより、高い架橋密度が得られ、耐熱性がさらに向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。
【0014】
(b)ラジカル重合性化合物は、リン酸基を有するビニル化合物と、該化合物以外のラジカル重合性化合物とを、それぞれ1種以上含有するのが好適である。ラジカル重合性化合物がこのような化合物を含有することにより、基材、特に金属に対して優れた接着強度を得ることができるようになる。
【0015】
(a)熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂を含むことが好適である。熱可塑性樹脂として、このような樹脂を用いることにより、耐熱性、接着性がさらに向上し、長時間の信頼性試験(高温高湿試験)後においてもこれらの優れた特性を維持することができる。
【0016】
接着剤組成物は、(e)導電性粒子をさらに含有することが好ましい。導電性粒子を含有することにより、接着剤組成物に良好な導電性又は異方導電性を付与することができ、接着剤組成物を、回路電極を有する回路部材同士の接着剤用途等に特に好適に使用することが可能となる。また、上記接着剤組成物を介して電気的に接続した回路間の接続抵抗をより十分に低減することができる。
【0017】
本発明は、主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材とを備える回路部材の接続構造体であって、第一及び第二の接続端子が対向するように、第一及び第二の回路部材が接続部材を介して配置されるとともに、第一及び第二の接続端子が電気的に接続され、接続部材が本発明の接着剤組成物の硬化物で構成されている、回路部材の接続構造体を提供する。このような接続構造体は、一対の回路部材の接続に、上述した接着剤組成物の硬化物が用いられるため、回路部材間の接着強度を十分に高くすることができるとともに、さらに、長時間の信頼性試験(例えば85℃/85%RH放置)後にも安定した性能を維持することができる。なお、接続部材として用いられる本発明の接着剤組成物は、完全硬化(所定硬化条件で達成できる最高度の硬化)している必要はなく、上記特性を生じる限りにおいて部分硬化の状態であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低温かつ短時間の硬化条件においても優れた接着強度を得ることができるとともに、長時間の信頼性試験(例えば85℃/85%RH放置)後においても安定した性能を維持することが可能であり、さらに取扱性に優れた接着剤組成物及びそれを用いた回路部材の接続構造体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を示し、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はそれに対応するメタアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基又はそれに対応するメタアクリロイル基を意味する。
【0020】
なお、本明細書において、(a)熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)とは、以下で定義される主分散ピーク温度をいう。すなわち、動的粘弾性測定装置(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製粘弾性アナライザー「RSA−3」(商品名))を用いて、(a)熱可塑性樹脂のフィルムについて、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、測定温度−150〜300℃の条件で動的粘弾性を測定し、tanδのピーク温度を主分散ピーク温度とする。
【0021】
また、本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量とは、表1に示す条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0022】
【表1】

【0023】
以下、本発明の接着剤組成物の実施形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明において用いられる(a)熱可塑性樹脂は、室温では固体であり、加熱により液状状態になって外力により自由に変形でき、冷却し外力を取り除くとその形状を保ったままで硬くなり、この過程を繰りかえして行える性質を持つ樹脂(高分子)をいう。また、上記の性質を有する、反応性官能基を有する樹脂(高分子)も含む。(a)熱可塑性樹脂のTgは、0〜190℃が好ましく、20〜170℃がより好ましい。また、上記の熱可塑性樹脂の定義に該当しても、後述する(c)分岐高分子の構造を有する化合物は、(c)分岐高分子に分類する。
【0025】
熱可塑性樹脂は、主鎖が直鎖状であることが好ましい。熱可塑性樹脂が側鎖を有する場合は、当該側鎖が樹枝状形状(先端に向かうにつれて分岐が増えていく形状をいう。)でないことが好ましい。このような熱可塑性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂(ウレタン変性ポリエステル樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂等を用いることができる。これらは単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。さらに、これら熱可塑性樹脂中にはシロキサン結合やフッ素置換基が含まれていても良い。これらは、混合する樹脂同士が完全に相溶するか、若しくはミクロ相分離が生じて白濁する状態であれば好適に用いることができる。接着剤組成物をフィルム状にして利用するとき、上記熱可塑性樹脂の分子量は大きいほどフィルム形成性が容易に得られ、またフィルム状接着剤組成物としての流動性に影響する溶融粘度を広範囲に設定できる。重量平均分子量としては5,000〜150,000が好ましく、10,000〜80,000が特に好ましい。この値が、5,000以上であるとき良好なフィルム形成性が得られ、一方、150,000以下であるとき他の成分との良好な相溶性が得られやすい傾向がある。
【0026】
本発明の接着剤組成物において、(a)熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物全量を基準として、5〜80質量%であることが好ましく、15〜70質量%であることがより好ましい。5質量%以上であると、接着剤組成物をフィルム状にして利用する場合に特に、良好なフィルム形成性が得られやすい傾向があり、80質量%以下であると、良好な接着剤組成物の流動性が得られやすい傾向がある。
【0027】
(b)ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合開始剤の作用でラジカル重合を生じる化合物をいうが、光や熱等の活性化エネルギーを付与することでそれ自体ラジカルを生じる化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレイミド基等の活性ラジカルによって重合する官能基を有する化合物を好適に使用可能である。
【0028】
具体的には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等のオリゴマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンアクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基に(メタ)アクリル酸を付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテルのグリシジル基にエチレングリコールやプロピレングリコールを付加させた化合物に(メタ)アクリロイルオキシ基を導入した化合物、下記一般式(I)及び(II)で示される化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】


(ここでR及びRは、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、a及びbは、各々独立に1〜8の整数を表す。)
【0030】
【化2】


(ここでR及びRは、各々独立に水素原子又はメチル基を示し、c及びdは、各々独立に0〜8の整数を表す。)
【0031】
また、(b)ラジカル重合性化合物として、単独で30℃に静置した場合にワックス状、ろう状、結晶状、ガラス状、粉状等の流動性がなく固体状態を示すものであっても、特に制限することなく使用できる。
【0032】
具体的には、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、N−フェニルマレイミド、N−(o−メチルフェニル)マレイミド、N−(m−メチルフェニル)マレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−(o−メトキシフェニル)マレイミド、N−(m−メトキシフェニル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニル)マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−オクチルマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N−メタクリロキシマレイミド、N−アクリロキシマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、N−メタクリロイルオキシコハク酸イミド、N−アクリロイルオキシコハク酸イミド、2−ナフチルメタクリレート、2−ナフチルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素、2−ポリスチリルエチルメタクリレート、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン、テトラメチルピペリジルメタクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、ペンタメチルピペリジルメタクリレート、ペンタメチルピペリジルアクリレート、オクタデシルアクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロシキメチル)アクリルアミド、下記一般式(III)〜(XII)で示される化合物が挙げられる。
【0033】
【化3】


(eは、1〜10の整数を表す。)
【0034】
【化4】

【0035】
【化5】


(ここでRは、水素原子又はメチル基、Rは、水素原子又はメチル基、fは、15〜30の整数を表す。)
【0036】
【化6】


(ここでRは、水素原子又はメチル基、Rは、水素原子又はメチル基、gは、15〜30の整数を表す。)
【0037】
【化7】


(ここでRは、水素原子又はメチル基を表す。)
【0038】
【化8】


(ここでR10は、水素原子又はメチル基、hは、1〜10の整数を表す。)
【0039】
【化9】


(ここでR11は、水素原子又は下記一般式(i)又は(ii)で示す有機基、iは、1〜10の整数を表す。なお、一般式(i)及び(ii)における*は結合位置を示す。)
【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】


(ここでR12、は水素又は下記一般式(iii)又は(iv)で示す有機基、jは、1〜10の整数を表す。なお、一般式(iii)及び(iv)における*は結合位置を示す。)
【0043】
【化13】

【0044】
【化14】

【0045】
【化15】


(ここでR13は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0046】
【化16】


(ここでR14は、水素原子又はメチル基を表す。)
【0047】
(b)成分に属する化合物である、リン酸基を有するビニル化合物や、N−ビニル化合物及びN,N−ジアルキルビニル化合物からなる群より選ばれるN−ビニル系化合物を、これら以外の(b)成分と併用することができる。リン酸基を有するビニル化合物との併用により、接着剤組成物の金属基材への接着性を向上させることが可能になる。また、N−ビニル系化合物との併用により、接着剤組成物の橋かけ率を向上させることができる。
【0048】
リン酸基を有するビニル化合物としては、リン酸基及ビニル基を有する化合物であれば特に制限はないが、下記一般式(XIII)〜(XV)で示される化合物が好ましい。
【0049】
【化17】


(ここでR15は、(メタ)アクリロイル基を示し、R16は、水素原子又はメチル基、k及びlは、各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R15同士、R16同士、k同士及びl同士は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
【0050】
【化18】


(ここでR17は、(メタ)アクリロイル基を示し、m及びnは各々独立に1〜8の整数を示す。なお、式中、R17同士、m同士及びn同士は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
【0051】
【化19】


(ここで、R18は、(メタ)アクリロイル基を示し、R19は、水素原子又はメチル基を示し、o及びpは各々独立に1〜8の整数を示す。)
【0052】
上記化合物としては、具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシエチルアクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、2,2’−ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルホスフェート、EO変性リン酸ジメタクリレート、リン酸変性エポキシアクリレート、リン酸ビニル、等が挙げられる。
【0053】
リン酸基を有するビニル化合物の添加量は、リン酸基を有するビニル化合物以外の(b)ラジカル重合性化合物の添加量とは独立に、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.2〜300質量部とするのが好ましく、また、1〜200質量部とするのがより好ましい。リン酸基を有するビニル化合物の添加量を0.2質量部以上とすることで、高い接着強度が得られやすくなり、また、300質量部以下とすることで、硬化後の接着剤組成物の物性が低下しにくく、信頼性を確保しやすくなる。
【0054】
N−ビニル系化合物としては、具体的には、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカプロラクタム、4,4’−ビニリデンビス(N,N−ジメチルアニリン)、N−ビニルアセトアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0055】
上述したリン酸基を有するビニル化合物に含まれる化合物を除いた(b)ラジカル重合性化合物の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して、50〜250質量部であることが好ましく、より好ましくは60〜150質量部である。添加量が50質量部以上であると、硬化後に充分な耐熱性が得られやすい。また、250質量部以下であると、フィルムとして使用する場合に、良好なフィルム形成性が得られやすい。
【0056】
また、本発明において用いる分岐高分子は、例えば、1分子中に2種類の置換基を合計3個以上持つAB型モノマー(xは2以上の整数)の自己重合、1分子中に1種類の置換基を2個持つA型モノマーと、1分子中にAとは別の1種類の置換基を3個持つB型モノマーとの重合、又は、AB型、A型及びB型から少なくとも2つ以上選ばれるモノマーの重合により得ることができる。分岐高分子はまた、1分子中に1種類の置換基を2個持つB型モノマーと、1分子中にBとは別の1種類の置換基を3個持つA型モノマーとの重合、又は、AB型、B型及びA型から少なくとも2つ以上選ばれるモノマーの重合により得ることができる。
【0057】
上記モノマーにおいて、AB型はA−R20−(B)、A型はR21−(A)、B型はR22−(B)で示される。また、B型はR21−(B)、A型はR22−(A)で示される。ここで、A及びBは、水酸基(フェノール水酸基を含む)、カルボン酸基(無水カルボン酸を含む)、アミノ基、チオール基、イソシアネート基等から選ばれ、A及びBそれぞれが異なる官能基を示すことが好ましい。A及びBが水酸基(フェノール水酸基を含む)、カルボン酸基(無水カルボン酸を含む)、アミノ基、イソシアネート基の場合、A及びBが反応し、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミド結合を形成でき、これによりプリント配線板やポリイミド等の有機基材に対する相互作用、濡れ性が向上し、高い接着強度が得られる。また、R20、R21、R22は、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ヘテロ原子含有基及び一般式(XVI)〜(XXVII)で表される基等から選択されることが好ましい(式中の*は結合位置を示す。)。柔軟性の観点から、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、脂肪族炭化水素骨格と芳香族炭化水素骨格を有する化合物から誘導される基、脂環式炭化水素骨格と芳香族炭化水素骨格を有する化合物から誘導される基、脂肪族炭化水素骨格と脂環式炭化水素骨格と芳香族炭化水素骨格を有する化合物から誘導される基がより好ましい。ここで「誘導される基」とは、水素原子が除去された構造の基であることを意味する。なお、上述した基は、式(XXVII)で表される基のように、イソシアヌレート環を有していてもよい。R20、R21、R22として上述した基を採用することにより、接着剤組成物の硬化物に適度な柔軟性が付与され、接着強度が向上し、接続信頼性が向上する。
【0058】
【化20】

【0059】
【化21】

【0060】
【化22】

【0061】
【化23】


(式中、qは、1〜10の整数を表す。)
【0062】
【化24】

【0063】
【化25】

【0064】
【化26】

【0065】
【化27】

【0066】
【化28】

【0067】
【化29】


(式中、rは、1〜10の整数を表す。)
【0068】
【化30】

【0069】
【化31】

【0070】
これらのモノマーから得られた分岐高分子は、(c)分岐高分子として単独で用いられる他に、2種以上を混合して用いられても良い。
【0071】
また、本発明の接着剤組成物はポリイミド基材に対する接着強度向上の観点から、分岐高分子が、イソシアヌレート環を含むことが好ましい。分岐高分子がイソシアヌレート環を含むことで、耐熱性並びにプリント配線板及びポリイミド等の有機基材との接着強度が向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。さらに、AとBで示される官能基の反応によって生成される結合が、ウレタン結合及び/又はイミド結合を含むことがより好ましい。分岐高分子がイミド結合を含むことで、耐熱性並びにプリント配線板及びポリイミド等の有機基材との接着強度が向上し、優れた接続信頼性を得ることができる。また分岐高分子がウレタン結合を含むことで、基材との接着強度が向上し、剥がれを抑制する傾向がある。
【0072】
また、本発明において用いる分岐高分子の重合度は、重量平均分子量が、1000以上20000未満であれば、自由に調整し、好適に使用することができる。分岐高分子の重量平均分子量が1000以上の場合、フィルム形成性や物性を向上できる傾向があり、20000未満の場合、分岐高分子を溶媒に溶かして使用する場合の溶解性や、接着剤組成物の流動性が向上する傾向がある。
【0073】
また、本発明における(c)分岐高分子は、すべて又は一部の末端の官能基にラジカル重合性を有することが好ましく、耐熱性の観点から3以上のラジカル重合性官能基を有することがより好ましく、3以上15以下のラジカル重合性官能基を有することがより好ましい。ラジカル重合性官能基数が3以上である場合、十分な架橋密度が得られやすく、耐熱性が向上する傾向がある。
【0074】
また、本発明に用いる(c)分岐高分子の添加量は、(a)熱可塑性樹脂の100質量部に対して、0.2〜100質量部であり、好ましくは0.5〜70質量部である。添加量が0.2質量部以上の場合、耐熱性が向上し、また100質量部未満の場合には、フィルムとして使用する場合にフィルム形成性が向上する傾向がある。
【0075】
本発明において用いる(d)ラジカル重合開始剤としては、従来から知られている有機過酸化物やアゾ化合物等外部からのエネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物を用いることができ、安定性、反応性、相溶性の観点から、1分間半減期温度が90〜175℃で、かつ分子量が180〜1,000の有機過酸化物が好ましい。1分間半減期温度がこの範囲にあることで、貯蔵安定性に優れ、ラジカル重合性も充分に高く、短時間で硬化できる。
【0076】
(d)ラジカル重合開始剤としては、具体的には、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシネオデカノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(3−メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−アミルパーオキシノルマルオクトエート、t−アミルパーオキシイソノナノエート、t−アミルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物;が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0077】
また、本発明の(d)ラジカル重合開始剤としては150〜750nmの光照射によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。このような化合物としては、例えば、Photoinitiation,Photopolymerization,and Photocuring,J.−P. Fouassier,Hanser Publishers(1995年、p17〜p35)に記載されているα−アセトアミノフェノン誘導体やホスフィンオキサイド誘導体が光照射に対する感度が高いためより好ましい。
これらの化合物は、単独で用いる他に、上記有機過酸化物やアゾ化合物と混合して用いても良い。
【0078】
本発明の(d)ラジカル重合開始剤の添加量は、(a)熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜500質量部が好ましく、1〜300質量部がさらに好ましい。(d)ラジカル重合開始剤の添加量を0.1質量部以上とすると、接着剤組成物が充分に硬化しやすく、また、500質量部以下とした場合には、貯蔵安定性がよい傾向にある。
【0079】
(e)導電性粒子は、その全体又は表面に導電性を有する粒子であればよいが、接続端子を有する回路部材の接続に使用する場合は、接続端子間距離より平均粒径が小さいものを用いる。
本発明に用いる(e)導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられる。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものでもよい。(e)導電性粒子が、プラスチックを核とし、この核に上記金属、金属粒子やカーボンを被覆したものや熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に電極との接触面積が増加し信頼性が向上するので好ましい。
【0080】
また、これらの(e)導電性粒子の表面を、さらに高分子樹脂などで被覆した微粒子は、導電性粒子の配合量を増加した場合の粒子同士の接触による短絡を抑制し、電極回路間の絶縁性が向上できることから、適宜これを単独あるいは(e)導電性粒子と混合して用いてもよい。
【0081】
この(e)導電性粒子の平均粒径は、分散性、導電性の点から1〜18μmであることが好ましい。このような(e)導電性粒子を含有する場合、接着剤組成物は異方導電性接着剤として、好適に用いることができる。
【0082】
(e)導電性粒子の使用量は、特に制限は受けないが、接着剤組成物全体積に対して0.1〜30体積%とすることが好ましく、0.1〜10体積%とすることがより好ましい。この値が、0.1体積%以上であると導電性が高くなる傾向があり、30体積%未満であると回路の短絡が生じにくくなる傾向がある。なお、体積%は23℃の硬化前の各成分の体積をもとに決定されるが、各成分の体積は、比重を利用して重量から体積に換算することができる。また、メスシリンダー等にその成分を溶解したり膨潤させたりせず、その成分をよくぬらす適当な溶媒(水、アルコール等)を入れたものに、その成分を投入し増加した体積をその体積として求めることもできる。
【0083】
本発明の接着剤組成物には、硬化速度の制御や貯蔵安定性を付与するために、安定化剤を添加することできる。このような安定化剤としては、特に制限なく公知の化合物を使用することができるが、ベンゾキノンやハイドロキノン等のキノン誘導体;4−メトキシフェノールや4−t−ブチルカテコール等のフェノール誘導体;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルや4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のアミノキシル誘導体;テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体;等が好ましい。
【0084】
安定化剤の添加量は、接着剤組成物100質量部に対して、0.01〜30質量部であり、好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が0.01質量部以上の場合、硬化速度の制御や貯蔵安定性が付与されやすくなり、また、30質量部未満の場合には、他の成分との相溶性に悪影響を及ぼしにくい。
【0085】
本発明の接着剤組成物には、アルコキシシラン誘導体やシラザン誘導体に代表されるカップリング剤、密着向上剤及びレベリング剤などの接着助剤を適宜添加してもよい。具体的には、下記一般式(XXVIII)で示される化合物が好ましく、単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0086】
【化32】


(ここでR23、R24、R25は独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜5のアルコキシカルボニル基又はアリール基、R26は(メタ)アクリロイル基、ビニル基、イソシアナート基、イミダゾール基、メルカプト基、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、モルホリノ基、ピペラジノ基、ウレイド基又はグリシジル基、sは1〜10の整数を示す。)
【0087】
本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的に、ゴム成分を併用しても良い。ゴム成分とは、そのままの状態でゴム弾性(例えばJIS K6200)を示す成分又は反応によりゴム弾性を示す成分をいう。ゴム成分は、室温(25℃)で固形でも液状でもよいが、流動性向上の観点から液状であることが好ましい。ゴム成分としては、ポリブタジエン骨格を有する化合物が好ましい。ゴム成分は、シアノ基、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基を有していてもよい。また、接着性向上の観点から、高極性基であるシアノ基、カルボキシル基を側鎖あるいは末端に含むゴム成分が好ましい。なお、ポリブタジエン骨格を有していても、熱可塑性を示す場合は(a)成分に分類し、ラジカル重合性を示す場合は(b)成分に分類する。
【0088】
ゴム成分としては、具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、水酸基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、水酸基末端スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコールが挙げられる。
【0089】
また、上記高極性基を有し、室温で液状であるゴム成分としては、具体的には、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有する液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、液状カルボキシル化ニトリルゴムが挙げられ、極性基であるアクリロニトリル含有量は10〜60質量%が好ましい。
これらの化合物は単独で用いる他に、2種以上の化合物を混合して用いても良い。
【0090】
また、本発明の接着剤組成物は、応力緩和及び接着性向上を目的に、有機微粒子を併用しても良い。有機微粒子の平均粒径は0.05〜1.0μmである。なお、有機微粒子が上述のゴム成分からなる場合は、有機微粒子ではなくゴム成分に分類し、有機微粒子が上述の(a)熱可塑性樹脂からなる場合は、有機微粒子ではなく熱可塑性樹脂に分類する。
【0091】
有機微粒子としては、具体的には、ポリイソプレン、ポリブタジエン、カルボキシル基末端ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、1,2−ポリブタジエン、カルボキシル基末端1,2−ポリブタジエン、アクリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル基、水酸基、(メタ)アクリロイル基又はモルホリン基をポリマ末端に含有するアクリロニトリル−ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、水酸基末端ポリ(オキシプロピレン)、アルコキシシリル基末端ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール(メタ)アクリル酸アルキル−ブタジエン−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル−シリコーン共重合体又はシリコーン−(メタ)アクリル共重合体若しくは複合体からなる有機微粒子が挙げられる。
これらの有機微粒子は単独で用いる他に、2種以上の化合物を併用して用いても良い。
【0092】
本発明の接着剤組成物は、常温で液状である場合にはペースト状で使用することができる。室温で固体の場合には、加熱して使用する他、溶媒を使用してペースト化してもよい。使用できる溶媒としては、接着剤組成物及び添加剤と反応性がなく、かつ十分な溶解性を示すものが好ましく、常圧での沸点が50〜150℃であるものが好ましい。沸点が50℃以上の場合、室温で放置しても揮発する恐れが少なく、開放系での使用が容易となる。また、沸点が150℃未満だと、溶媒を揮発させることが容易で、接着後の信頼性に悪影響を及ぼすことが少なくなる。
【0093】
本発明の接着剤組成物はフィルム状にして用いることもできる。接着剤組成物に必要により溶媒等を加えるなどした溶液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に上記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶媒等を除去してフィルムとして使用することができる。フィルムの形状で使用すると取扱性等の点から一層便利である。
【0094】
本発明の接着剤組成物は加熱及び加圧を併用して接着させることができる。加熱温度は、100〜250℃の温度が好ましい。圧力は、被着体に損傷を与えない範囲が好ましく、一般的には0.1〜10MPaが好ましい。これらの加熱及び加圧は、0.5秒〜120秒間の範囲で行うことが好ましく、140〜200℃、3MPa、10秒の加熱でも接着させることが可能である。
【0095】
本発明の接着剤組成物は、熱膨張係数の異なる異種の被着体の接着剤として使用することができる。具体的には、異方導電接着剤、銀ペースト、銀フィルム等に代表される回路接続材料、CSP用エラストマー、CSP用アンダーフィル材、LOCテープ等に代表される半導体素子接着材料として使用することができる。
【0096】
以下に、導電性粒子を含む本発明の接着剤組成物及び使用して作製した異方導電フィルムと電極の接続の一例について説明する。異方導電フィルムを、基板上の相対する電極間に存在させ、加熱加圧することにより両電極の接触と基板間の接着を得、電極との接続を行える。電極を形成する基板としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機物、ポリイミド又はポリカーボネート等の有機物、ガラス/エポキシ等のこれら複合の各組み合わせが適用できる。
【実施例】
【0097】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
(熱可塑性樹脂(フェノキシ樹脂)の調製)
フェノキシ樹脂(商品名:YP−50、東都化成株式会社製)は樹脂40質量部を、メチルエチルケトン60質量部に溶解して、固形分40質量%の溶液とした。
【0099】
(熱可塑性樹脂(ポリエステルウレタン樹脂)の準備)
ポリエステルウレタン樹脂(商品名:UR−1400、東洋紡株式会社製)は樹脂分30質量%のメチルエチルケトンとトルエンの1:1混合溶媒溶解品を用いた。
【0100】
(ウレタン樹脂の合成)
重量平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール(Aldrich株式会社製)450質量部と、平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール(Aldrich株式会社製)450質量部、1,4−ブチレングリコール(Aldrich株式会社製)100質量部を、メチルエチルケトン(和光純薬工業株式会社製)4000質量部中で溶解し、ジフェニルメタンジイソシアネート(Aldrich株式会社製)390質量部を加えて70℃にて60分間反応させて、ウレタン樹脂を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量をGPC法によって測定したところ、100000であった。
【0101】
(ゴム成分の準備)
液状ゴム(商品名:Nipol DN601、日本ゼオン株式会社製)を準備した。
【0102】
(分岐高分子の準備)
ハイパーブランチポリイミドポリマー(商品名:V−8000(Mw11500、酸価40.3mgKOH/g)、DIC株式会社製)を準備した。
【0103】
(分岐高分子(HB−1)の合成)
還流冷却器、攪拌機、温度計、温度調節装置及び水分離器を備えた反応器に、V−8000を100gと、反応溶媒としてメチルエチルケトン150ml、安定化剤としてハイドロキノン0.001g、塩基触媒としてテトラブチルアンモニウムクロライド0.053gを仕込み、攪拌しながらメタクリル酸グリシジル(東京化成工業株式会社製)0.7g(0.0049モル)を滴下する。滴下後2時間還流し放冷した後、反応混合物を水に滴下して再沈殿を行い、得られた固体を乾燥して分岐高分子(HB−1)を95g得た。得られた分岐高分子の重量平均分子量は12500であり、酸価は37.9mgKOH/gであった。
【0104】
(分岐高分子(HB−2)の合成)
メタクリル酸グリシジル(東京化成工業社製)の仕込量を1.9g(0.013モル)、テトラブチルアンモニウムクロライドの仕込量を0.14gにする以外はHB−1と同様の操作を行い、分岐高分子(HB−1)を95g得た。得られた分岐高分子の重量平均分子量は12500であり、酸価は33.2mgKOH/gであった。
【0105】
(分岐高分子の準備)
分岐高分子型ウレタンアクリレート(商品名:CN9013、SARTOMER社製)を準備した。
【0106】
(ラジカル重合性化合物の準備)
イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート(商品名:M−215、東亜合成株式会社製)を準備した。
【0107】
(ウレタンアクリレート(UA)の合成)
攪拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を備えた還流冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に数平均分子量860のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(Aldrich株式会社製)860質量部(1.00モル)、ジブチルスズジラウレート(Aldrich株式会社製)5.53質量部を投入する。充分に窒素ガスを導入した後、70〜75℃に加熱し、イソフォロンジイソシアネート(Aldrich株式会社製)666質量部(3.00モル)を3時間で均一に滴下し、反応させた。滴下完了後約10時間反応を継続した。これに2−ヒドロキシエチルアクリレート(Aldrich株式会社製)238質量部(2.05モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(Aldrich株式会社製)0.53質量部を投入し、さらに10時間反応させ、IR測定によりイソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、ウレタンアクリレート(UA)を得た。得られたウレタンアクリレート(UA)の数平均分子量は3700のであった。
【0108】
(リン酸基を有するビニル化合物の準備)
2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート(商品名:ライトエステルP−2M、共栄社化学株式会社製)を準備した。
【0109】
(ラジカル重合開始剤の準備)
ラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーヘキシルO、日油株式会社製)を準備した。
【0110】
(導電性粒子の作製)
ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.02μmの金層を設け、平均粒径4μm、比重2.5の導電性粒子を作製した。
【0111】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
固形重量比で表2に示すように配合し、さらに導電性粒子を1.5体積%配合分散させ、塗工装置を用いて厚み80μmのフッ素樹脂フィルム上にこれを塗布し、70℃、10分の熱風乾燥によって接着剤層の厚みが20μmのフィルム状接着剤組成物を得た。
【0112】
【表2】

【0113】
〔接続抵抗、接着強度の測定〕
実施例1〜7、比較例1〜4のフィルム状接着剤組成物を、ポリイミドフィルム上にライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)と、0.2μmのITOの薄層を形成したガラス(厚み1.1mm、表面抵抗20Ω/□)との間に介在させた。これを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、東レエンジニアリング社製)を用いて、160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続し、接続体を作製した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、接着直後と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗37点の平均で示した。
【0114】
また、この接続体の接着強度をJIS−Z0237に準じて90度剥離法で測定し、評価した。ここで、接着強度の測定装置は東洋ボールドウィン株式会社製テンシロンUTM−4(剥離速度50mm/分、25℃)を使用した。以上のようにして行ったフィルム状接着剤組成物の接続抵抗及び接着強度の測定の結果を下記表3に示した。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例1〜7で得られた接着剤組成物は、加熱温度160℃において、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)で、約3Ω以下の良好な接続抵抗及び700N/m以上の良好な接着強度を示すことが明らかとなった。
これらに対して、本発明における(c)分岐高分子を使用していない比較例1、2では、接着直後には良好な接続抵抗を示すものの、85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)では接続抵抗が高く、接着強度が低くなることが明らかとなった。また、比較例3、4では、接着直後及び85℃、85%RHの高温高湿槽中に240時間保持した後(試験後)の接続抵抗が高く、接着強度も低いことが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性樹脂、
(b)ラジカル重合性化合物、
(c)下記一般式(1)で表される化合物を重合してなる分岐高分子、下記一般式(1)、(2a)及び(3b)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、又は、下記一般式(1)、(2b)及び(3a)で表される化合物のうち少なくとも2種の化合物を重合してなる分岐高分子、
A−R20−(B)…(1)
21−(A)…(2a)、R21−(B)…(2b)
22−(A)…(3a)、R22−(B)…(3b)
[式中、R20は(1+x)価の有機基、R21は2価の有機基、R22は3価の有機基、xは2以上の整数、AはBと反応性の官能基、BはAと反応性の官能基、をそれぞれ示す。]
及び、(d)ラジカル重合開始剤、を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
前記分岐高分子が、ウレタン結合及び/又はイミド結合を有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記分岐高分子が、イソシアヌレート環を有する、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記分岐高分子の重量平均分子量が、1000以上20000未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記分岐高分子が、ラジカル重合性官能基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記分岐高分子が、1分子あたりラジカル重合性官能基を3以上有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
(b)ラジカル重合性化合物が、リン酸基を有するビニル化合物と、該化合物以外のラジカル重合性化合物とを、それぞれ1種以上含有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
(a)熱可塑性樹脂が、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種類以上を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
(e)導電性粒子をさらに含有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
主面上に第一の接続端子を有する第一の回路部材と、主面上に第二の接続端子を有する第二の回路部材と、接続部材と、を備える回路部材の接続構造体であって、
前記第一及び第二の接続端子が対向するように、前記第一及び第二の回路部材が前記接続部材を介して配置されるとともに、前記第一及び第二の接続端子が電気的に接続され、前記接続部材が請求項1〜8のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物で構成されている、回路部材の接続構造体。

【公開番号】特開2011−38080(P2011−38080A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142834(P2010−142834)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】