説明

接着性に優れた厚物接着品及びその製造法

【課題】敷物など厚物の接着を低コストで、しかも従来の装置を使用して厚物の特性を損なうことなく、かつ強力な剥離性を有して接着する。
【解決手段】目付質量300〜3000g/m2,厚さ2〜25mmの比較的厚さを有する繊維層状物よりなる2種の厚物A,Bを接着するにあたり、一方の厚物Aの上に熱可塑性樹脂からなるランダムループ状の接着シートを載せて加熱溶融する一方、他の厚物Bを予熱して上記溶融した接着シートの上に重ねローラに挟み込んで加圧、接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーマットやカーペットなど厚さが大きく、接着面の状態が粗い厚物に防音用不織布,吸音材などの繊維層状物を接着せしめた厚物接着品ならびにその製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーマットやオプションマット,カーペットは外観の美やクッション性,吸音性,断熱性の良さがあり、広く採用されている。なかでもカーマットには裏面の接着する裏地に様々なものが使用されており、近年では不織布がよく利用されているが、不織布には厚いものから薄いものまで種々の種類があって厚い場合には接着が重要な問題となる。
【0003】
薄いもの同士や、薄いものと厚いものの接着は一度に容易に接着することが出来るが、厚物同士の場合には接着は接着面への熱の伝導が悪いため接着の温度,時間が掛かり、接着体の熱による劣化が懸念される。即ち、カーペットや敷物あるいはカーマットなどに厚物のフェルト等を貼り合わせる場合、従来の方法である、(イ)液状のエマルジョン法,溶剤法、(ロ)ホットメルトフィルム,ホットメルトシートでは夫々、(イ)の場合では厚いものを貼り合わせたとき被接着体に吸収されて有効に接着出来なかったり、乾燥に時間を要する等の非効率な面が大きく、また臭いや排水の処理,溶剤の回収等の問題があり、一方(ロ)の場合では厚手のために内部まで熱を伝えるのに時間がかかるし、また、フィルムや細い繊維からなるシートでは溶けてアンカー効果がなくなって充分な接着を得ることが出来ない難がある。
【0004】
従って、従来の接着に利用されている液状の接着方法や、ホットメルトフィルム,シートによる接着方法は厚物の接着には種々の難点があるため、更に接着材を溶融して直接、被接着体に付与する方法が行なわれている。例えばカーペット本体の裏面にホットメルト接着剤粉末分散液をスプレーし乾燥することによって点状に散在するバッキング材を形成して、該バッキング材に他のシートを接着すること(例えば特許文献1参照)やカーペット表層部と、裏面に位置するバッキング部を一方向に間隔をあけて筋状に配列した熱可塑性樹脂接着剤を介して接合すること(例えば特許文献2参照)、更に表皮材層と不織布とからなる吸音層を通気性のある接着樹脂層を介して一体化すること(例えば特許文献3参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2000−319615号公報
【特許文献2】特開2003−225153号公報
【特許文献3】特開2003−341406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カーペットと厚物不織布を直接、接着材を溶融押し出して貼る方法は、接着方向に異方性が懸念され、また、樹脂粉末による方法は装置コストがかかり好ましくなく、未だ良好な厚地の接着手段を見出すに至っていない。
【0006】
本発明は上述の如き実状に鑑み、これに対処し、特に厚さが大きく、かつ接着面の状態が粗い材料同士を容易に貼り合わせるに好適な接着シートを見出すことにより、厚物の接着を低コストで、かつ従来の装置を使用して被接着体の特性を損なうことなく接着を達成することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、上記目的を達成する本発明は、先ず1つは厚さを有する繊維層状物よりなる2種の厚物を接着シートにより接着してなる厚物接着品であって、前記接着シートが熱可塑性樹脂からなるランダムループ状の接着シートであり、かつ接着された製品の剥離強力が60N/5cm以上で、縦横の剥離強力比が1.1以下である構成にある。
【0008】
ここで、上記接着される2種の繊維層状物よりなる厚物は目付質量が300g/m2〜3000g/m2で、厚さが2mm〜25mmの範囲のものであり、また熱可塑性樹脂からなる接着シートはランダムループ状の接着シートで目付質量が80g/m2〜1000g/m2の範囲にあって、構成繊維径が0.15〜1.5mmであることが重要である
ランダムループ状の接着シートとは紡糸ノズルより糸条が多数、ストランド状をなして紡出され、下部に位置する冷却水浴に直下降するとき、冷却水浴直前で冷却水内の冷却水との関係で多数の糸条が夫々、旋回し、ループ状を呈して冷却水浴に入り、ランダムに上記旋回によるループ状で不定円形孔を形成し、その状態でシートとして巻かれたもので、従来、慣用されているくもの巣状ホットメルト接着材に比べ繊維径が0.15〜1.5mmと太く、しかも目付質量が80〜1000g/m2と重厚であり、厚物の接着に必要な接着力が充分、確保されるものである。
【0009】
なお、接着シートを構成する熱可塑性樹脂としては変性ポリエステル,変性ポリプロピレン,ポリエチレン,エチレンビニルアセテート(EVA)から選ばれた樹脂が有効である。また、本発明は上記厚物接着品の製造法も他の特徴であり、敷物などの厚さが大きく、かつ接着面の状態が粗い材料同士を接着する場合において前述した所定の目付質量,厚さをもつ厚物被接着体A(例えば絨毯,マット等)の裏面に接着シートを載せて加熱溶融し、その上に予熱した厚物被接着体B(例えば不織布,吸音材等)を載せてローラに挟んで加圧接着したのち、冷却して製品とする方法である。
【0010】
予め両厚物被接着体AとBの間に接着シートを挟み込んで全体を加熱して樹脂を溶融し、加圧接着することも可能であるが、厚さの大きな被接着体は一般には熱伝導率が低く内部の接着樹脂を溶融するためには長時間を要したり、加熱温度を高くしたりする必要があるため、生産性が極めて悪いものになる。このように三層を一度に加熱して処理する方法は、内層にある接着シートがなかなか溶融せず加熱に時間が掛かり、また、接着面の繊維間に樹脂が流入しにくいため層間の裏面に留まり接着が不十分となる。そのため、接着樹脂を加熱流動させることがポイントとなる。その場合、樹脂が層表面に留まり、毛細管による流入はないが圧入による繊維間内部への進入は起こる。そのためには、接着シート形成の樹脂は、感温性がよくないもの、つまり溶融粘度の温度依存性が少ないものがよい。とりわけ、接着シートの繊維構成と樹脂のメルトインデックスが重要であるから、接着シートは前述したランダムループ形状が好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による厚物接着品は厚物同士の接着状態がよく、従って接着剥離特性が良好であり、困難視されていた厚物同士を低コストで厚物の特性を損なうことなく接着することが容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、更に本発明の具体的態様について詳述する。
【0013】
本発明は前述の如く所定の目付質量と厚さを有し、接着面の状態が粗い敷物等の繊維層状物よりなる2種の厚物を熱可塑性樹脂よりなるランダムループ状接着シートを介して接着し、剥離強力が60N/5cm以上で、縦横の剥離強力比が1.1以下である接着性に優れた厚物接着品を提供するものである。
【0014】
ここで被接着体となる2種の厚物としては、その1つAはループタフトカーペット,カットタフトカーペット,短繊維不織布,スパンボンド不織布等で所定の目付質量,厚さの物が含まれ、他の1つBは略同様な吸音防音用不織布などが含まれる。即ち、これら被接着体である2種の厚物A,Bは何れも目付範囲が300g/m2〜3000g/m2の範囲にあるものであり、その厚さは、好ましくは2〜25mmの範囲である。
【0015】
上記厚物の範囲としては、接着のために三層構造を一体処理する場合に、処理が困難な場合の加工方法であり、その結果、クッション性,断熱や吸音性能に優れる。厚さが2mm未満ではクッション性や断熱,吸音性に劣るので好ましくない。厚さが25mmを越えるとクッション性や断熱,吸音性に優れるが、品質過剰になると共にコストの点からも好ましくない。
【0016】
また、接着シートを構成する熱可塑性樹脂としてはホットメルト樹脂が使用され、具体的には変性ポリエステル(L−PET),PP変性ポリプロピレン,ポリエチレン(PE)エチレンビニルアセテート(EVA)などが含まれる。
【0017】
ホットメルト樹脂の融点は60〜140℃の範囲が好適であり、60℃未満では床暖などに曝される限界となり、耐熱不足となるので好ましくない。140℃を超えると接着材を溶融するに必要な温度が高くなり、高温が要求されるため被接着体を傷める恐れがある。なお、流動特性(メルトインデックス)としては10〜100の範囲が好ましい。10未満であると接着材の溶融粘度が高いため被接着体の表面の繊維を充分に包み込むことができず、アンカー効果が得られず接着の弱いものとなるので好ましくない。また、100を越えると接着材の溶融粘度が低いため被接着体の表面に樹脂が留まらず中まで浸透し有効接着量が少なくなり、接着の弱いものとなるので好ましくない。
【0018】
このホットメルト樹脂からなる接着シートは形状としては前述の如くランダムループ状のものであって、糸の太さが0.15mmφ〜3.0mmφ、好ましくは0.15mmφから1.5mmφの範囲で目付質量が80〜1000g/m2、好ましくは80〜500g/m2である。糸の太さが0.15mmφ未満では接着糸径が細いため被接着体表面の繊維を取り込むのが弱く、アンカー効果が少ないため所望の接着強力が得られない。糸の太さが3.0mmφを越えると接着糸が太いため溶融するために時間が掛かり、また高い温度が必要になるので被接着体を傷める。目付質量が80g/m2未満では被接着体の接着材が不足し、接着力が不充分となる。一方、目付質量が1000g/m2を越えると被接着体の接着量が十分であるが、通気度がなくなると共に風合いが硬くなり、また接着量としては過剰品質となるのでコストの面からも好ましくない。
【0019】
次に以上のような2種の厚物被接着体A,Bを接着シートを用いて接着するにあたっては、厚物被接着体Aの上にホットメルト樹脂からなるランダムループ状の接着シートを重ね、ホットメルト接着シートを加熱溶融する一方、厚物の被接着体Bを重ねる前に予熱しておいて、前記溶融したホットメルト接着シートの上に該被接着体Bを重ねてニップロールに挟んで加圧接着し冷却する。
【0020】
厚物Aがカーペットであり、その裏面のバッキング層に対し防音,吸音用不織布を厚物Bとして接着するときは接着シートの溶融したホットメルトが厚物Aのバッキング面と厚物Bの不織布面との間にあって両者を接着する。
【0021】
なお、厚物を十分に接着するには剥離強力で60N/5cm以上が必要である。60N/5cm未満であると接着が不充分でカーペットに折れ曲がりやズレ応力を受けた時に容易に剥離を起こすので製品として好ましくない。また、縦横の剥離強力の比率が1.1以下が好ましく、1.1を越えると製品の異方性のために取扱いの方向が限定されるので好ましくない。そのため、製品において剥離強力は60N/5cm以上であることが求められ、縦横の剥離強力比が1.1以下であることが求められる。
【実施例】
【0022】
以下、更に本発明の実施例を掲げる。
【0023】
実施例中、目付質量,厚さ,繊維径,メルトフロー,通気度,及び剥離強力は夫々、下記に準拠した。
(イ)目付質量(単位当たりの質量g/m2
50cm×50cmの大きさを切り出し、そのときの重さを測定し、1m2当たりの重量に換算する。
(ロ)厚さ(mm)
15cm×15cmの大きさを切り出し、初荷重0.05g/m2を掛けて4隅の高さを測定し、その平均値で示す。
(ハ)繊維径(mm)
マイクロスコープ(株式会社キーエンス製)によって糸を150倍に拡大して糸の直径を計測した。測定本数はn=10平均値で示した。単位はmmである。
(ニ)メルトフロー(MF)
JIS−K−6862に準じた。但し測定温度は160℃である。
(ホ)通気度
JIS L1096の6.27.1に記載のフランジール形試験機で測定した。
(ヘ)剥離強力(N/5cm)
試料は5×20cmの試料片を取り、短片から表皮/不織布を長片に平行に約5cm剥がす。剥がした表皮と不織布をテンシロンの引っ張り試験機に取り付け速度20cm/minで引き剥がす。このときの剥離強力を求める。
【0024】
実施例1
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリプロピレン(PP)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量が600g/m2)のパイル面を下にして反対面の上に接着シート(変性ポリエチレン(PE)樹脂、融点120℃、メルトインデックス21、目付質量が200g/m2、ランダムループ状の繊維径0.5mmφ)を載せて加熱装置で速度4m/分、処理温度180℃の処理をしてランダムループ状の繊維を溶融し、引き続き予め予熱(140℃)していた不織布(ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長さ52mmからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2)を出口で上に重ね加圧ローラ線圧10Kg/cmで接着処理し冷却して巻き取った。
【0025】
実施例2
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリプロピレン(PP)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量%が600g/m2)のパイル面を下にして反対面の上に接着シート(エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂、融点90℃、メルトインデックス25、目付質量が200g/m2、ランダムループ状の繊維径0.9mmφ)を載せて加熱装置で速度4m/分、処理温度160℃の処理をしてランダムループ状の繊維を溶融し、引き続き予め予熱(100℃)していた不織布(ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長さ52mmからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2)を出口で上に重ね加圧ローラ線圧10Kg/cmで接着処理し冷却して巻き取った。
【0026】
実施例3
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリエステル(PET)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量が600g/m2)のパイル面を下にして反対面の上に接着シート(変性ポリエチレンテレフタレート(L−PET)樹脂、融点110℃、メルトインデックス20、目付質量が200g/m2、ランダムループ状の繊維径0.4mmφ)を載せて加熱装置で速度4m/分、処理温度160℃の処理をしてランダムループ状の繊維を溶融し、引き続き予め予熱(100℃)していた不織布(ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長52mmφからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2)を出口で上に重ね加圧ローラ線圧10Kg/cmで接着処理し冷却して巻き取った。
【0027】
比較例1
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリプロピレン(PP)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量が600g/m2)のパイル面を下にして反対面の上に接着シート(変性ポリエチレン(PE)樹脂、融点120℃、メルトインデックス21、目付質量が200g/m2、ランダムループの繊維径0.5mmφ)を載せ、次いでその上に不織布(ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長52mmからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2)を載せて三層として加熱装置(速度2m/分、処理温度で180℃)に供給して熱処理し、さらに連続して加圧処理して接着処理をした。
【0028】
比較例2
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリプロピレン(PP)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量が600g/m2)のパイルの裏面と不織布(ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長52mmからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2))の間に熱可塑性樹脂(エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂、融点90℃、メルトインデックス25)を溶融押し出して糸状(目付質量が200g/m2、繊維径1.0mmφ)で13本/10cmの筋状に押し出して接着して、重ね合わせたシートをニップローラで圧押し(線圧:10Kg/cm)して接着した後、冷却して巻き取った。
【0029】
比較例3
ポリエステル(PET)繊維からなる目付質量が100g/m2の不織布にポリプロピレン(PP)繊維からなるパイル(目付質量500g/m2)をタフティングしてなるカーペット材(目付質量が600g/m2)のパイル面を下にして反対面の上に接着フィルム(変性ポリエチレン(PE)樹脂、融点90℃、メルトインデックス70、目付質量が100g/m2、厚さ150μ)を載せて加熱装置で速度4m/分、処理温度180℃の処理をして表面にある接着フィルムを溶融し、引き続き予め予熱(140℃)していた不織布ポリエステル(PET)繊維、繊度4.4デシテックス、繊維長52mmからなるニードルパンチ加工した目付質量500g/m2)を出口で上に重ね加圧ローラ線圧10Kg/cmで接着処理し冷却して巻き取った。
【0030】
そして、上記実施例及び比較例より得られた各製品について吸音性能,剥離強力,その剥離異方性及び樹脂の接着状態について夫々評価を行なった。その結果を下記表1に示す。層間の接着の状態は接着している層間を剥がして樹脂の浸透状態を評価した。
【0031】
樹脂が両層の表面繊維に充分食い込んでしっかり接着されている。 ○
樹脂が両層の表面繊維に食い込んでいるが樹脂量が少なく接着不十分。 △
樹脂が両層の表面繊維に充分食い込んでおらず、接着していない。 ×
また、吸音性の評価は実際に測定が出来ないので、それに替わる評価で代替した。
【0032】
一般に吸音性能はその基材の通気性で表わすことができ、その効果は通気度が1〜50cc/cm2/secの範囲にあればよいと云う文献もある。そこで、製品の通気度を測定し吸音性能の代用として評価した。
【0033】
【表1】

上記表1より実施例1,2,3共に接着は良好で剥離強力は縦,横安定して高い値を示し、接着の状態も均一に繊維間に十分食い込んでいた。通気度も50cc/cm2/secの範囲にあり、吸音性能は損なわれていないことが分かる。
【0034】
これに対し、比較例1は三層一度に処理したため処理速度を半分にしたにも拘わらず、接着シートに充分に熱が伝わらず剥離強力も弱く、接着状態も繊維表面に染み込んでいない不充分なものであった。
【0035】
また、比較例2は接着性樹脂を溶融押し出ししてカーペット層と不織布層の間に吐出させ、重ね合わせて接着したが、接着の状態はよいが、縦と横の剥離強力に異方性が認められた。比較例3は接着フィルムによるカーペット層と不織布層の接着は接着フィルムを加熱すると巾収縮を起こし、よい接着が得られなかった。接着状態は殆ど繊維に接着していなく、好ましくないものであった。従って上記の対比より本発明が優れていることは明白と云える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維層状物よりなる2種の厚物を接着してなる厚物接着品であって、前記厚物は夫々、目付質量300〜3000g/m2,厚さ2〜25mmの繊維層状体であり、熱可塑性樹脂からなり目付質量が80〜1000g/m2で、構成繊維径が0.15〜1.5mmであるランダムループ状接着シートを溶融することによって前記2種の厚物は接着されており、かつ、接着された製品の剥離強力が60N/5cm以上で、縦横の剥離強力比が1.1以下であることを特徴とする接着性に優れた厚物接着品。
【請求項2】
接着する厚物A,Bの一方はカーペットであり、他方は吸音,防音用不織布である請求項1記載の接着性に優れた厚物接着品
【請求項3】
接着シートを構成する熱可塑性樹脂が変性ポリエステル,変性ポリプロピレン,ポリエチレン,EVA(エチレンビニルアセテート)から選ばれた1種以上のホットメルト樹脂である請求項1または2記載の接着性に優れた厚物接着品。
【請求項4】
目付質量が300g/m2〜3000g/m2で、厚さが2mm〜25mmの繊維層状物よりなる2種の厚物Aと厚物Bを熱可塑性樹脂からなる目付質量が80g/m2〜1000g/m2の範囲であり、構成繊維径が0.15〜1.5mmであるランダムループ状に形成された接着シートで接着する方法であって、前記被接着体厚物Aの上に接着シートを載せて該シートを加熱溶融すると共に、被接着体厚地Bを別途予熱して該予熱した厚地Bを前記溶融シートの上に載せてローラで挟んで加圧接着して後、冷却することを特徴とする接着性に優れた厚物接着品の製造法。

【公開番号】特開2007−7891(P2007−7891A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188362(P2005−188362)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(391021570)呉羽テック株式会社 (57)
【Fターム(参考)】