説明

接続基板

【課題】集積回路デバイスの読出回路を放射線から保護し、且つ寄生容量の増加を抑制することが可能な放射線検出器モジュール用の接続基板を提供する。
【解決手段】接続基板13は、複数の誘電体層130a〜130fが積層されて成る基材130と、互いに隣接する誘電体層130c〜130fを貫通して設けられた複数の貫通導体20とを備える。複数の貫通導体20それぞれと一体に形成されると共に互いに離間された複数の放射線遮蔽膜21a〜23aが、誘電体層130c〜130fにおける二以上の層間部分に設けられている。一の層間部分において一の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21a(21b)を所定方向に垂直な仮想平面に投影した領域PR1と、他の層間部分において他の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜22b又は22c(22c)を仮想平面に投影した領域とは互いに重ならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出器モジュールに用いられる接続基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、X線検出装置におけるX線検出素子搭載用の配線基板が記載されている。この配線基板は、複数の絶縁層が積層されてなる基体と、基体の上面のX線検出素子の実装領域に形成された複数の接続パッドと、基体の外面に形成された複数の端子電極とを備える。また、この配線基板は、複数の接続パッドと複数の端子電極とを接続するために基体の内部に形成された複数の内部配線を備える。複数の内部配線は、実装領域の下方に配置された複数の貫通導体を含む。複数の貫通導体は、複数の絶縁層にわたって絶縁層の積層方向に対して異なる方向に傾斜して形成されており、それら全ての貫通導体による基体の上面への投影領域に、実装領域が含まれている。この貫通導体によって反射X線を遮蔽する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−32936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、X線検査装置等に用いられる放射線検出器として、二次元状に配列された複数の光電変換領域を有する光電変換デバイス(例えばフォトダイオードアレイ)の上にシンチレータが配置されたものが実用化されている。このような放射線検出器は、従来のX線感光フィルムを用いたものと比べ、現像の必要がなく、またリアルタイムに画像を確認することができるなど利便性が高く、データの保存性や取扱いの容易性の面でも優位である。
【0005】
このような放射線検出器において、多くの場合、光電変換デバイスは基板上に実装される。そして、光電変換デバイスから出力された微小信号を増幅する必要があるため、複数の光電変換領域に対応する複数の読出回路(例えば積分回路)を内蔵する集積回路デバイスが用いられる。この集積回路デバイスは、装置の小型化のため基板の裏側に実装されることが好ましい。
【0006】
しかし、このように基板の一方の板面上に光電変換デバイスを実装し、他方の板面上に集積回路デバイスを実装した場合、次の問題が生じる。すなわち、シンチレータに入射する放射線の一部がシンチレータに吸収されずに透過した場合、この放射線が基板を透過して集積回路デバイスに到達するおそれがある。集積回路デバイスの読出回路には、例えばオペアンプやコンデンサ、或いはスイッチ用のMOSトランジスタといった放射線の影響を受けやすい回路要素が含まれており、集積回路デバイスに到達した放射線によってこれらの回路要素に異常が発生する等の問題が生じる。したがって、何らかの方策により読出回路を放射線から保護することが望まれる。
【0007】
なお、特許文献1に記載された装置では、複数の貫通導体が、複数の絶縁層にわたって異なる方向に傾斜して形成されており、これらの貫通導体の基板面への投影領域に含まれるように実装領域を配置することによって、反射X線を遮蔽している。しかし、このような構成では複数の貫通導体が互いに対向し、貫通導体相互間の寄生容量が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、集積回路デバイスの読出回路を放射線から保護し、且つ寄生容量の増加を抑制することが可能な放射線検出器モジュール用の接続基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明による第1の接続基板は、所定方向から入射する放射線を光に変換するシンチレータからの光を二次元状に配列された複数の光電変換領域に受ける光電変換デバイスを一方の板面上に搭載し、光電変換デバイスの複数の光電変換領域それぞれから出力される電気信号を複数の読出回路により個別に読み出す集積回路デバイスを他方の板面上に搭載するための接続基板であって、(a)複数の誘電体層が積層されて成る基材と、(b)複数の誘電体層のうち、互いに隣接する少なくとも三つの誘電体層を貫通して設けられ、電気信号の経路の一部となる金属製の複数の貫通導体とを備える。この第1の接続基板では、複数の貫通導体それぞれと一体に形成されると共に互いに離間された金属製の複数の放射線遮蔽膜が、少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられている。そして、一の層間部分において一の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を所定方向に垂直な仮想平面に投影した領域と、他の層間部分において他の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を仮想平面に投影した領域とは互いに重ならない。
【0010】
また、本発明による第2の接続基板は、放射線を光に変換するシンチレータからの光を二次元状に配列された複数の光電変換領域に受ける光電変換デバイスを一方の板面上に搭載し、光電変換デバイスの複数の光電変換領域それぞれから出力される電気信号を複数の読出回路により個別に読み出す集積回路デバイスを他方の板面上に搭載するための接続基板であって、(a)複数の誘電体層が積層されて成る基材と、(b)複数の誘電体層のうち、互いに隣接する少なくとも三つの誘電体層を貫通して設けられ、電気信号の経路の一部となる金属製の複数の貫通導体とを備える。この第2の接続基板では、複数の貫通導体それぞれと一体に形成されると共に互いに離間された金属製の複数の放射線遮蔽膜が、少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられている。そして、一の層間部分において一の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を一方の板面に平行な仮想平面に投影した領域と、他の層間部分において他の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を仮想平面に投影した領域とは互いに重ならない。
【0011】
上述した第1及び第2の放射線検出器モジュールにおいて、接続基板には、少なくとも三つの誘電体層を貫通する複数の貫通導体、および複数の貫通導体のそれぞれと一体に形成された金属製の複数の放射線遮蔽膜が設けられている。そして、これら複数の放射線遮蔽膜は、少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられている。このような構成により、接続基板の内部に形成された複数の放射線遮蔽膜が、集積回路デバイスの読出回路を放射線から保護する。
【0012】
また、上記第1及び第2の放射線検出器モジュールにおいては、複数の放射線遮蔽膜が互いに離間されており、一の層間部分において一の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を仮想平面に投影した領域と、他の層間部分において他の貫通導体と一体に形成された放射線遮蔽膜を仮想平面に投影した領域とは互いに重ならない。ここで、仮想平面とは、放射線入射方向(所定方向)に垂直な面、或いは、放射線入射方向が接続基板の板面に垂直である場合には、接続基板の一方の板面に平行な面である。これにより、一の貫通導体及び他の貫通導体のそれぞれと一体に形成された各放射線遮蔽膜が互いに対向しないので、一の貫通導体と他の貫通導体との間に生じる寄生容量を低減できる。
【0013】
以上説明したように、上述した第1及び第2の放射線検出器モジュールによれば、集積回路デバイスの読出回路を放射線から保護し、且つ寄生容量の増加を抑制することができる。
【0014】
また、上記第1及び第2の接続基板においては、複数の誘電体層における層間部分のうち、少なくとも三つの誘電体層に対して一方の板面側に位置する一又は二以上の層間部分に、光電変換デバイスの電極ピッチと複数の貫通導体のピッチとの相違に起因する層間配線が設けられてもよい。
【0015】
また、上記第1及び第2の接続基板においては、各放射線遮蔽膜が、対応する各貫通導体の周囲に延在していることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、集積回路デバイスの読出回路を放射線から保護し、且つ寄生容量の増加を抑制することが可能な放射線検出器モジュール用の接続基板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る接続基板を備える放射線検出器モジュールの構成を示す断面図である。
【図2】接続基板および集積回路デバイスの内部構成を示す断面図である。
【図3】(a)放射線の入射方向から見た集積回路の各構成要素の配置を示している。(b)集積回路デバイスが有する一つの単位回路領域を拡大して示す図である。
【図4】読出回路の構成例を示す等価回路図である。
【図5】放射線遮蔽膜および単位回路領域を仮想平面に投影した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明による接続基板の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る接続基板を備える放射線検出器モジュールの構成を示す断面図である。図1に示す放射線検出器モジュール10Aは、シンチレータ11、フォトダイオードアレイ12、接続基板13、及び集積回路デバイス14を備える。
【0020】
シンチレータ11は、所定方向から入射する放射線R(例えばX線)を光に変換するための板状の部材である。シンチレータ11は、M行N列(N,Mは共に2以上の整数)に配列された複数の画素に分割されており、二次元フォトダイオードアレイ12の光入射面上に配置されている。シンチレータ11は、入射した放射線Rに応じてシンチレーション光を発生して放射線像を光像へと変換し、この光像を二次元フォトダイオードアレイ12へ出力する。シンチレータ11は、例えばCsIによって構成される。シンチレータ11は二次元フォトダイオードアレイ12を覆うように設置されるか、或いは二次元フォトダイオードアレイ12上に蒸着により設けられることができる。
【0021】
二次元フォトダイオードアレイ12は、本実施形態における光電変換デバイスである。二次元フォトダイオードアレイ12は、M行N列といった二次元状に配列された複数のフォトダイオード(光電変換領域)を有し、シンチレータ11からの光を複数のフォトダイオードに受ける。二次元フォトダイオードアレイ12は、いわゆるフリップチップ実装のための複数のバンプ電極(導電性接合材)12aを光入射面とは反対側の裏面上に有しており、これら複数のバンプ電極12aは、二次元フォトダイオードアレイ12の裏面上においてM行N列といった二次元状に配列されている。二次元フォトダイオードアレイ12の平面寸法は、例えば20mm×35mmである。
【0022】
接続基板13は、二次元フォトダイオードアレイ12を一方の板面13a上に搭載し、後述する集積回路デバイス14を他方の板面13b上に搭載する。接続基板13は、複数の誘電体層が積層されて成り、二次元フォトダイオードアレイ12と集積回路デバイス14とを電気的に接続するための内部配線とを有する。また、接続基板13の一方の板面13aには、二次元フォトダイオードアレイ12を実装するための複数のランド状配線がM行N列といった二次元状に配列されており、他方の板面13bには、集積回路デバイス14を実装するための複数のランド状配線が二次元状に配列されている。
【0023】
集積回路デバイス14は、二次元フォトダイオードアレイ12の複数のフォトダイオードそれぞれから出力される光電流といった電気信号を個別に検出する(読み出す)ための素子である。集積回路デバイス14は、二次元フォトダイオードアレイ12の複数のフォトダイオードに対応する複数の読出回路が、纏めて一つのチップに封入された構造を有する。また、これら複数の読出回路への入力端子となる複数のバンプ電極(導電性接合材)14aが、接続基板13と対向する集積回路デバイス14の面上において二次元状に配列されている。
【0024】
また、放射線検出器モジュール10Aは、集積回路デバイス14から出力された電気信号を外部へ出力するためのフレキシブルプリント基板15を更に備える。フレキシブルプリント基板15の一端は、接続基板13の他方の板面13b上に電気的に接続される。
【0025】
また、放射線検出器モジュール10Aは、集積回路デバイス14を冷却するための放熱器(ヒートシンク)16を更に備える。放熱器16は、集積回路デバイス14の接続基板13と対向する面とは反対側の面と接しており、外側へ向けて多数のフィンが突出した形状をしている。
【0026】
図2は、接続基板13および集積回路デバイス14の内部構成を示す断面図である。なお、同図には二次元フォトダイオードアレイ12が図示されているが、シンチレータ11及び放熱器16は図示を省略されている。
【0027】
図2に示すように、集積回路デバイス14は、複数の単位回路領域14bと、回路領域14cとを有する。複数の単位回路領域14bには、複数の読出回路(初段アンプ)がそれぞれ含まれている。これら複数の読出回路は、二次元フォトダイオードアレイ12の複数のフォトダイオードにそれぞれ対応するものであり、それぞれ対応するフォトダイオードから光電流といった電気信号を受ける。なお、回路領域14cには、単位回路領域14bの読出回路から出力された信号を更に増幅するための増幅回路(後段アンプ)が設けられる。
【0028】
ここで、図3(a)は、集積回路デバイス14の構成例を示す図である。図3(a)は、放射線Rの入射方向から見た集積回路デバイス14の各構成要素の配置を示している。また、図3(b)は、集積回路デバイス14が有する一つの単位回路領域14bを拡大して示す図である。この集積回路デバイス14は、例えば9mm×11mmといった大きさを有する。
【0029】
図3(a)に示すように、単位回路領域14bは、集積回路デバイス14の内部においてJ行K列(J,Kは2以上の整数)の二次元状に配列されている。各単位回路領域14bには、図3(b)に示すように入力パッド14eが設けられている。この入力パッド14e上には、図1に示したバンプ電極14aが設けられる。また、これらの単位回路領域14bは互いに離間されており、一の単位回路領域14bと他の単位回路領域14bとの間には、トランジスタやコンデンサ等の回路要素が存在しない領域が行方向および列方向に延びている。但し、この領域には、回路要素を相互に接続するための金属配線は存在してもよい。一つの単位回路領域14bの寸法は、例えば行方向0.5mm、列方向0.5mmであり、隣り合う単位回路領域14b同士の隙間の間隔は例えば0.16mmである。
【0030】
回路領域14cは、単位回路領域14bの各列に対応してK個配置されている。これらの回路領域14cは、行方向に並んで配置されており、各入力端はそれぞれ対応する列の単位回路領域14bと電気的に接続されている。
【0031】
単位回路領域14bに含まれる読出回路(初段アンプ)、及び回路領域14cに含まれる増幅回路(後段アンプ)には、個々にスイッチが設けられる。そして、単位回路領域14bの読出回路のスイッチによって読み出す行の指定を、回路領域14cの増幅回路のスイッチによって読み出す列の指定をそれぞれ行うことができる。
【0032】
K個の回路領域14cの出力端は、A/D変換器14dと電気的に接続されている。A/D変換器14dは、各回路領域14cから出力されたアナログ信号をディジタル信号に変換する。A/D変換器14dから出力されたディジタル信号は、集積回路デバイス14の縁に沿って配列された複数の入出力パッド14fのうち一つを介して集積回路デバイス14の外部へ出力される。なお、他の入出力パッド14fは、電源電圧入力、基準電位(GND)入力、クロック入力等に使用される。
【0033】
図4は、各単位回路領域14bに含まれる読出回路の構成例を示す等価回路である。この等価回路において、読出回路140は積分回路を構成しており、オペアンプ141と、帰還容量としてのコンデンサ142と、リセットスイッチ143とを含む。オペアンプ141の非反転入力端子は基準電圧Vrefに接続されており、オペアンプ141の反転入力端子は、二次元フォトダイオードアレイ12(図1を参照)が有する一つのフォトダイオード12bのアノードに接続されている。なお、フォトダイオード12bのカソードは基準電圧Vrefに接続され、フォトダイオード12bには逆バイアスが印加される。
【0034】
コンデンサ142は、オペアンプ141の反転入力端子と出力端子との間に接続される。コンデンサ142には、フォトダイオード12bから出力された光電流による電荷が蓄積される。リセットスイッチ143は、コンデンサ142に対して並列に接続され、コンデンサ142に蓄積された電荷をリセットする。リセットスイッチ143は、例えばMOSトランジスタによって好適に実現される。
【0035】
再び図2を参照して、接続基板13について詳細に説明する。本実施形態の接続基板13は、複数(図2では六層)の誘電体層130a〜130fが積層されて成る基材130を有する。基材130の誘電体層130a〜130fは、例えば、アルミナといったセラミック材料を主原料とするセラミック基板からなる。各誘電体層130a〜130fの厚さは、例えば100μm以上200μm以下である。
【0036】
また、接続基板13は、複数の貫通導体20を有する。貫通導体20は、誘電体層130a〜130fのうち互いに隣接する少なくとも三つ(本実施形態では4つ)の誘電体層130c〜130fを貫通して設けられている。複数の貫通導体20それぞれは、二次元フォトダイオードアレイ12の複数のフォトダイオードそれぞれと一対一で対応しており、フォトダイオードから出力された光電流の経路の一部となる。貫通導体20は、例えばタングステンといった金属材料からなり、誘電体層130c〜130fに形成された貫通孔に金属材料が埋め込まれることにより形成される。なお、本実施形態では、隣り合う貫通導体20同士の中心間隔(ピッチ)が集積回路デバイス14の単位回路領域14b間のピッチと等しくなっており、各貫通導体20は、対応する単位回路領域14bの直上に位置している。隣り合う貫通導体20同士の中心間隔(ピッチ)は、例えば500μmである。また、貫通導体20の直径は例えば100μmである。
【0037】
また、接続基板13は、少なくとも三層(図2では四層)の誘電体層130c〜130fにおける二以上(図2では三箇所)の層間部分に設けられた複数の放射線遮蔽膜群21〜23を有する。具体的には、放射線遮蔽膜群21は誘電体層130c及び130dの層間部分に設けられており、放射線遮蔽膜群22は誘電体層130d及び130eの層間部分に設けられており、放射線遮蔽膜群23は誘電体層130e及び130fの層間部分に設けられている。
【0038】
放射線遮蔽膜群21〜23のそれぞれは、貫通導体20の本数に対応する金属製の複数の放射線遮蔽膜を含む。すなわち、放射線遮蔽膜群21は貫通導体20と同数の放射線遮蔽膜21aを含み、放射線遮蔽膜群22は貫通導体20と同数の放射線遮蔽膜22aを含み、放射線遮蔽膜群23は貫通導体20と同数の放射線遮蔽膜23aを含む。これら放射線遮蔽膜21a〜23aは、対応する貫通導体20と一体に形成されており、当該貫通導体20の周囲に延在している。
【0039】
各放射線遮蔽膜群21〜23において、放射線遮蔽膜同士は互いに離間されている。すなわち、複数の放射線遮蔽膜21aは一の層間部分において互いに間隔をあけて設けられており、複数の放射線遮蔽膜22aは別の層間部分において互いに間隔をあけて設けられており、複数の放射線遮蔽膜23aは更に別の層間部分において互いに間隔をあけて設けられている。これにより、貫通導体20相互の電気的な分離が図られている。
【0040】
放射線遮蔽膜21aの平面形状は、例えば400μm四方の正方形である。また、隣り合う放射線遮蔽膜21a同士の間隔(隙間)は例えば100μmであり、放射線遮蔽膜21aの厚さは例えば10μmである。これらの形状寸法は、放射線遮蔽膜22a、23aについても同様である。放射線遮蔽膜21a〜23aの構成材料としては、例えばタングステンが好適である。放射線遮蔽膜21a〜23aは、誘電体層130c〜130fの層間部分にいわゆるビアランドを形成する方法と同様の方法によって容易に形成可能である。
【0041】
また、接続基板13は、複数の層間配線24を更に有する。層間配線24は、二次元フォトダイオードアレイ12の電極ピッチと複数の貫通導体20のピッチとの相違に起因する配線である。層間配線24は、複数の誘電体層130a〜130fにおける層間部分のうち、放射線遮蔽膜21a〜23aが設けられた誘電体層130c〜130fに対して一方の板面13a側に位置する一又は二以上(図2では二つ)の層間部分に設けられている。
【0042】
ここで、接続基板13の放射線遮蔽膜21a、22a及び23aと、集積回路デバイス14の複数の単位回路領域14bとの相対的な位置関係について説明する。この説明の為に、放射線遮蔽膜及び単位回路領域を投影するための仮想平面の概念を導入する。仮想平面は、図1に示した放射線Rの入射方向(所定方向)に垂直な面として定義される。或いは、該入射方向が接続基板13の板面13a,13bと略垂直である場合には、仮想平面は、板面13a(又は13b)と平行な面として定義されてもよい。
【0043】
図5は、接続基板13の複数の放射線遮蔽膜21a〜23aと、集積回路デバイス14の複数の単位回路領域14bとを仮想平面VPに投影した様子を示す図である。図5において、PR1は、複数の放射線遮蔽膜21a、22a及び23aを仮想平面VPに投影した領域を示している。また、PR2は、複数の単位回路領域14bを仮想平面VPに投影した領域を示している。また、PR3は、複数の貫通導体20を仮想平面VPに投影した領域を示している。
【0044】
図5に示すように、複数の領域PR1は互いに離間されており、互いに重なっていない。これらの領域PR1は、放射線遮蔽膜21a〜23aについて共通の投影領域である。つまり、一の層間部分において一の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21aについての領域PR1と、他の層間部分において他の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21b又は21cについての領域PR1とは、互いに重ならない。また、一の層間部分において一の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21bについての領域PR1と、他の層間部分において他の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21cについての領域PR1とは、互いに重ならない。これにより、一の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21a〜23aと、他の貫通導体20と一体に形成された放射線遮蔽膜21a〜23aとが互いに対向しないので、複数の貫通導体20の間に生じる寄生容量を低減できる。従って、二次元フォトダイオードアレイ12の複数のフォトダイオードから出力された電気信号(光電流)に重畳されるノイズを低減できる。
【0045】
また、本実施形態の接続基板13においては、複数の放射線遮蔽膜21a〜23aのそれぞれが、対応する各単位回路領域14bを放射線から保護する。また、複数の放射線遮蔽膜21a〜23aの隙間を通過した放射線Rは集積回路デバイス14に達することができるが、その到達箇所には複数の単位回路領域14bは存在せず、放射線Rによる影響は軽微となる。
【0046】
このように、本実施形態の接続基板13によれば、集積回路デバイス14の読出回路を放射線から保護し、且つ寄生容量の増加を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の接続基板13においては、複数の放射線遮蔽膜21aのそれぞれが、対応する貫通導体20と一体に形成されている。複数の放射線遮蔽膜22a及び23aについても同様である。このように、貫通導体20と一体に形成される放射線遮蔽膜21a〜23aは貫通導体20の配置を妨げないので、放射線遮蔽材を迂回するような複雑な配線を形成する必要がない。
【0048】
また、図5に示すように、本実施形態の接続基板13においては、複数の放射線遮蔽膜21a〜23aを仮想平面VPに投影した複数の領域PR1それぞれが、複数の単位回路領域14bを仮想平面VPに投影した複数の領域PR2それぞれを含んでいる。換言すれば、放射線Rの入射方向から見て(または、板面13aに垂直な方向から見て)複数の単位回路領域14bが複数の放射線遮蔽膜21aによって完全に覆われている。複数の放射線遮蔽膜22a、及び複数の放射線遮蔽膜23aに関しても同様である。接続基板13の放射線遮蔽膜21a〜23aはこのように配置されることが好ましく、これによって集積回路デバイス14の読出回路を放射線から更に効果的に保護できる。
【0049】
また、上記実施形態のように、放射線遮蔽膜21a〜23aは、対応する貫通導体20の周囲に延在していることが好ましい。これにより、放射線遮蔽膜21a〜23aのそれぞれが、対応する各単位回路領域14bを放射線から好適に保護することができる。
【0050】
本発明による接続基板は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、放射線遮蔽膜21a〜23aが四つの誘電体層130c〜130fにおける三つの層間部分に設けられているが、本発明の放射線遮蔽膜は、少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられることにより、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0051】
10A…放射線検出器モジュール、11…シンチレータ、12…二次元フォトダイオードアレイ、12a…バンプ電極、12b…フォトダイオード、13…接続基板、13a,13b…板面、14…集積回路デバイス、14a…バンプ電極、14b…単位回路領域、14c…回路領域、14d…A/D変換器、14e…入力パッド、14f…入出力パッド、15…フレキシブルプリント基板、16…放熱器、20…貫通導体、21,22,23…放射線遮蔽膜群、21a,22a,23a…放射線遮蔽膜、24…層間配線、130…基材、130a〜130f…誘電体層、140…読出回路、141…オペアンプ、142…コンデンサ、143…リセットスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向から入射する放射線を光に変換するシンチレータからの光を二次元状に配列された複数の光電変換領域に受ける光電変換デバイスを一方の板面上に搭載し、前記光電変換デバイスの前記複数の光電変換領域それぞれから出力される電気信号を複数の読出回路により個別に読み出す集積回路デバイスを他方の板面上に搭載するための接続基板であって、
複数の誘電体層が積層されて成る基材と、
前記複数の誘電体層のうち、互いに隣接する少なくとも三つの前記誘電体層を貫通して設けられ、前記電気信号の経路の一部となる金属製の複数の貫通導体と
を備え、
前記複数の貫通導体それぞれと一体に形成されると共に互いに離間された金属製の複数の放射線遮蔽膜が、前記少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられており、
一の前記層間部分において一の前記貫通導体と一体に形成された前記放射線遮蔽膜を前記所定方向に垂直な仮想平面に投影した領域と、他の前記層間部分において他の前記貫通導体と一体に形成された前記放射線遮蔽膜を前記仮想平面に投影した領域とが互いに重ならないことを特徴とする、接続基板。
【請求項2】
放射線を光に変換するシンチレータからの光を二次元状に配列された複数の光電変換領域に受ける光電変換デバイスを一方の板面上に搭載し、前記光電変換デバイスの前記複数の光電変換領域それぞれから出力される電気信号を複数の読出回路により個別に読み出す集積回路デバイスを他方の板面上に搭載するための接続基板であって、
複数の誘電体層が積層されて成る基材と、
前記複数の誘電体層のうち、互いに隣接する少なくとも三つの前記誘電体層を貫通して設けられ、前記電気信号の経路の一部となる金属製の複数の貫通導体と
を備え、
前記複数の貫通導体それぞれと一体に形成されると共に互いに離間された金属製の複数の放射線遮蔽膜が、前記少なくとも三つの誘電体層における二以上の層間部分に設けられており、
一の前記層間部分において一の前記貫通導体と一体に形成された前記放射線遮蔽膜を前記一方の板面に平行な仮想平面に投影した領域と、他の前記層間部分において他の前記貫通導体と一体に形成された前記放射線遮蔽膜を前記仮想平面に投影した領域とが互いに重ならないことを特徴とする、接続基板。
【請求項3】
前記複数の誘電体層における層間部分のうち、前記少なくとも三つの誘電体層に対して前記一方の板面側に位置する一又は二以上の前記層間部分に、前記光電変換デバイスの電極ピッチと前記複数の貫通導体のピッチとの相違に起因する層間配線が設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の接続基板。
【請求項4】
各放射線遮蔽膜が、対応する各貫通導体の周囲に延在していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接続基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−226817(P2011−226817A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94234(P2010−94234)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】