説明

描画装置、描画方法

【課題】従来の描画装置では、コストを軽減することが困難である。
【解決手段】ワークに向けて液状体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに対する前記ワークの相対位置を変位させる変位装置と、前記相対位置の変位方向に沿って並ぶ複数の目盛り75が設けられたリニアスケール71と、前記相対位置の変位にともなって目盛り75を検出し、目盛り75を検出するごとに検出信号を出力するエンコーダー73と、リニアスケール71の一端78a側を支持するビス82と、リニアスケール71の他端78b側からリニアスケール71に張力を付与する引張りばね83と、リニアスケール71から独立した状態で、ビス82から距離Dを隔てた位置に設けられ、他端78b側において、複数の目盛り75のうちの一部の目盛り75をエンコーダー73から隠す隠し部材91と、を有する、ことを特徴とする描画装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置などの描画装置では、従来、無端ベルトの回転駆動量や回転速度を制御するために、無端ベルトに設けられた複数のスケールを光学センサーで検出する方法が知られている。このような複数のスケールを光学センサーで検出する構成では、複数のスケールが光学センサーに対して相対的に変位するときに、光学センサーが各スケールを検出することによって、相対的な変位量が把握され得る。把握された変位量に基づいて、制御対象の速度や位置が制御され得る。
【0003】
複数のスケールを光学センサーで検出する構成においては、2つの光学センサーで複数のスケールの各スケールを互いに異なる位置で検出することによって、スケール同士の間隔(以下、スケール間隔と呼ぶ)の伸縮を把握することができる。把握されたスケール間隔に基づいて、制御対象の速度や位置を補正することによって、制御対象の速度や位置を高精度に制御することができる。
このような2つの光学センサーを有する画像形成装置として、従来、2つの光学センサーが固定された固定部材と、固定部材の周囲温度を検知する温度検知手段と、を有する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−65743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された画像形成装置では、固定部材の周囲の温度の変化と、固定部材の線膨張係数とに基づいて、2つの光学センサー同士間の間隔(以下、センサー間隔と呼ぶ)の伸縮を推測することができる。このため、この画像形成装置によれば、制御対象の速度や位置の補正に、センサー間隔の伸縮も加味することができるので、制御対象の速度や位置を一層高精度に制御することができる。この結果、この画像形成装置では、画像の品位を高めることができる。
しかしながら、この従来の画像形成装置では、温度検知手段にかかるコストが必要である。つまり、従来の描画装置では、コストを軽減することが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]ワークに対向し、前記ワークに向けて液状体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに対する前記ワークの相対位置を変位させる変位装置と、前記相対位置の変位方向に沿って並ぶ複数の目盛りが設けられたスケールと、前記相対位置の変位にともなって前記目盛りを検出し、前記目盛りを検出するごとに検出信号を出力する検出器と、前記複数の目盛りが並ぶ方向における前記スケールの一端側を支持する支持部材と、前記スケールの前記一端側とは反対側の他端側から前記スケールに張力を付与する張力付与部材と、前記スケールから独立した状態で、前記支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられ、前記スケールの前記他端側において、前記複数の目盛りのうちの一部の目盛りを前記検出器から隠す隠し部材と、を有する、ことを特徴とする描画装置。
【0008】
この適用例の描画装置は、吐出ヘッドと、変位装置と、スケールと、検出器と、支持部材と、張力付与部材と、隠し部材と、を有する。
吐出ヘッドは、ワークに対向し、ワークに向けて液状体を吐出する。
変位装置は、吐出ヘッドに対するワークの相対位置を変位させる。
スケールは、複数の目盛りを有する。複数の目盛りは、相対位置の変位方向に沿って並んでいる。
検出器は、相対位置の変位にともなって目盛りを検出し、目盛りを検出するごとに検出信号を出力する。
支持部材は、複数の目盛りが並ぶ方向におけるスケールの一端側を支持する。
張力付与部材は、スケールの一端側とは反対側の他端側からスケールに張力を付与する。
隠し部材は、スケールから独立した状態で、支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられている。隠し部材は、スケールの他端側において、複数の目盛りのうちの一部の目盛りを検出器から隠す。
この描画装置では、スケールは、一端側が支持された状態で、他端側から張力が付与されている。このため、スケールにおいて、温度変化による伸縮は、スケールの他端側に生じる。また、スケールの他端側には、隠し部材が設けられている。隠し部材は、スケールから独立した状態で、支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられている。このため、スケールに伸縮が生じると、隠し部材に隠れる目盛りの個数が変化する。
例えば、スケールが伸びた場合、伸び量に応じて隠し部材に隠れる目盛りの個数が増加する。換言すれば、スケールが伸びた場合、伸び量に応じて検出器が検出できる目盛りの個数が減少する。他方で、スケールが縮んだ場合、縮み量に応じて隠し部材に隠れる目盛りの個数が減少する。換言すれば、スケールが縮んだ場合、縮み量に応じて検出器が検出できる目盛りの個数が増加する。
このため、この描画装置では、検出器で検出できる目盛りの個数に基づいてスケールの伸縮を把握することができる。この結果、この描画装置では、温度検知をしなくても、スケールの伸縮を把握することができるので、温度検知にかかるコストを軽減することができる。
【0009】
[適用例2]上記の描画装置であって、前記支持部材と前記隠し部材との間における前記検出信号の数に基づいて、前記相対位置の変位量を補正する制御部を有する、ことを特徴とする描画装置。
【0010】
この適用例では、制御部によって、支持部材と隠し部材との間における検出信号の数に基づいて、相対位置の変位量が補正される。これにより、相対位置の精度を高めやすくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記の描画装置であって、前記吐出ヘッドでの前記液状体の吐出を制御するヘッド制御部を有し、前記ヘッド制御部は、補正された前記変位量に基づいて、前記吐出ヘッドに前記液状体を吐出させる、ことを特徴とする描画装置。
【0012】
この適用例では、ヘッド制御部によって、補正された変位量に基づいて、吐出ヘッドから液状体が吐出される。これにより、ワークにおける液状体の吐出位置の精度を高めやすくすることができる。
【0013】
[適用例4]上記の描画装置であって、前記検出器は、前記目盛りを光学的に検出する光学センサーを有しており、前記隠し部材は、前記光学センサーへの光の入射を遮ることによって、前記一部の目盛りを前記検出器から隠す、ことを特徴とする描画装置。
【0014】
この適用例では、検出器は、目盛りを光学的に検出する光学センサーを有している。そして、隠し部材は、光学センサーへの光の入射を遮ることによって、一部の目盛りを検出器から隠す。この構成により、光学センサーを有する検出器で検出した目盛りの個数に基づいてスケールの伸縮を把握することができる。
【0015】
[適用例5]上記の描画装置であって、前記変位装置は、前記吐出ヘッドを保持するキャリッジと、前記キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、を有し、前記検出器は、前記キャリッジに設けられている、ことを特徴とする描画装置。
【0016】
この適用例では、変位装置は、吐出ヘッドを保持するキャリッジと、キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、を有する。そして、検出器は、キャリッジに設けられている。この構成により、吐出ヘッドの変位量を検出することができる。
【0017】
[適用例6]液状体を吐出する吐出ヘッドに対するワークの相対位置を変位させるときに、前記相対位置の変位方向に沿って並ぶ複数の目盛りが設けられたスケールの前記目盛りを検出器で検出した結果に基づいて前記相対位置の変位を制御しながら、前記液状体を前記ワークに向けて吐出することによって、前記ワークに前記液状体で描画を行う描画工程の前に、一端側が支持部材によって支持され、前記一端側とは反対側の他端側から張力が付与された前記スケールの前記他端側において、前記スケールから独立し、前記支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられた隠し部材で前記複数の目盛りのうちの一部の目盛りを前記検出器から隠した状態で、複数の前記目盛りを前記検出器で検出し、検出した結果に基づいて、検出した前記目盛りの個数をカウントするカウント工程を有する、ことを特徴とする描画方法。
【0018】
この適用例の描画方法は、描画工程の前に、カウント工程を有する。
描画工程では、複数の目盛りが設けられたスケールの目盛りを検出器で検出した結果に基づいて、吐出ヘッドに対するワークの相対位置の変位を制御しながら、吐出ヘッドから液状体をワークに向けて吐出することによって、ワークに液状体で描画を行う。
スケールは、一端側が支持部材によって支持され、他端側から張力が付与されている。
カウント工程では、スケールの他端側において、複数の目盛りのうちの一部の目盛りを検出器から隠した状態で、複数の目盛りを検出器で検出し、検出した結果に基づいて、検出した目盛りの個数をカウントする。このとき、スケールから独立し、支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられた隠し部材で、複数の目盛りのうちの一部の目盛りを検出器から隠す。
上記により、スケールにおいて、温度変化による伸縮は、スケールの他端側に生じる。このため、スケールに伸縮が生じると、隠し部材に隠れる目盛りの個数が変化する。
例えば、スケールが伸びた場合、伸び量に応じて隠し部材に隠れる目盛りの個数が増加する。換言すれば、スケールが伸びた場合、伸び量に応じて検出器が検出できる目盛りの個数が減少する。他方で、スケールが縮んだ場合、縮み量に応じて隠し部材に隠れる目盛りの個数が減少する。換言すれば、スケールが縮んだ場合、縮み量に応じて検出器が検出できる目盛りの個数が増加する。
このため、この描画方法によれば、カウント工程でカウントした目盛りの個数に基づいてスケールの伸縮を把握することができる。この結果、この描画方法では、温度検知をしなくても、スケールの伸縮を把握することができるので、温度検知にかかるコストを軽減することができる。
【0019】
[適用例7]上記の描画方法であって、前記描画工程では、前記カウント工程でのカウント結果に基づいて、前記相対位置の変位量を補正する、ことを特徴とする描画方法。
【0020】
この適用例では、描画工程において、カウント工程でのカウント結果に基づいて相対位置の変位量を補正するので、相対位置の精度を高めやすくすることができる。
【0021】
[適用例8]上記の描画方法であって、補正された前記変位量に基づいて、前記吐出ヘッドから前記液状体を吐出する、ことを特徴とする描画方法。
【0022】
この適用例では、補正された変位量に基づいて、吐出ヘッドから液状体を吐出するので、ワークにおける液状体の吐出位置の精度を高めやすくすることができる。
【0023】
[適用例9]上記の描画方法であって、前記カウント工程の後、且つ前記描画工程の前に、前記カウント結果に基づいて、前記スケールの伸縮量を把握する伸縮量把握工程を有し、前記描画工程では、前記伸縮量に応じて前記相対位置の変位量を補正する、ことを特徴とする描画方法。
【0024】
この適用例では、カウント工程の後、且つ描画工程の前に、伸縮量把握工程がある。伸縮量把握工程では、カウント工程でのカウント結果に基づいて、スケールの伸縮量を把握する。そして、描画工程では、伸縮量に応じて相対位置の変位量を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態におけるキャリッジ位置検出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図6】本実施形態におけるエンコーダーの概略の構成を示す斜視図。
【図7】本実施形態における隠し部材とリニアスケールとを示す正面図。
【図8】図7中のE視方向における側面図。
【図9】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図10】本実施形態におけるヘッド制御部の概略の構成を示すブロック図。
【図11】本実施形態におけるエンコーダー信号の理想状態での例を示すタイミングチャート。
【図12】本実施形態におけるエンコーダー信号の一例を示すタイミングチャート。
【図13】本実施形態におけるエンコーダー信号と吐出タイミング信号とを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を参照しながら、描画装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0027】
本実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13が設けられている。
図1に示す液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画(記録)することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0028】
このような液滴吐出装置1は、種々のワークWへの描画(記録)に適用され得る。
また、液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などにも適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液体を、基板であるワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出されることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
記録媒体としてのワークWは、上述した基板などに限定されず、樹脂フィルム、紙、布、金属箔など、種々の記録媒体が採用され得る。
【0029】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0030】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0031】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。このとき、ワークテーブル25は、テーブル位置検出装置27による検出結果に基づいて、Y方向における位置が制御される。
【0032】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列するノズル列39を構成している。ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
【0033】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0034】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸長する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小させる。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0035】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
上記により、ワークWには、吐出ヘッド33から機能液53が塗布され得る。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0036】
キャリッジ搬送装置11は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3に対向している。架台61は、一対の支柱67によって支持されている。一対の支柱67は、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。
なお、以下においては、一対の支柱67のそれぞれを識別する場合に、支柱67a及び支柱67bという表記が用いられる。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間には、隙間が保たれている。
【0037】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0038】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターを有している。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。このとき、キャリッジ7は、キャリッジ位置検出装置65による検出結果に基づいて、X方向における位置が制御される。
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWへのパターンの描画(記録)が行われる。本実施形態では、吐出ヘッド33とワークWとの相対的な移動は、ワーク搬送装置3及びキャリッジ搬送装置11によって達成される。
【0039】
ここで、キャリッジ位置検出装置65は、図5に示すように、リニアスケール71と、エンコーダー73と、を有している。
リニアスケール71は、架台61に設けられており、X方向に沿って延在している。リニアスケール71には、X方向に沿って複数の目盛り75が刻まれている。これらの目盛り75は、キャリッジ7のX方向における変位量の指標となる。なお、本実施形態では、架台61は、鋼材で構成されている。
エンコーダー73は、図6に示すように、発光素子73aと、光学センサー73bと、を有している。発光素子73aと光学センサー73bとは、互いに対面している。光学センサー73bは、発光素子73aからの光の明暗を検出することができる。
【0040】
リニアスケール71は、エンコーダー73の発光素子73aと光学センサー73bとの間に位置している。本実施形態において、リニアスケール71は、光透過性を有する樹脂製の本体71aに、光吸収性が高い目盛り75を印刷法で形成した構成を有している。このため、リニアスケール71とエンコーダー73とが互いに相対変位すると、発光素子73aから光学センサー73bに至る光の強さが、複数の目盛り75によって変化する。
エンコーダー73は、発光素子73aからの光の強弱を光学センサー73bによって検出することによって、リニアスケール71の目盛り75を検出することができる。エンコーダー73は、リニアスケール71の目盛り75を検出するたびに、パルス状の信号である検出パルスを出力する。
【0041】
リニアスケール71は、図5に示すように、一端78a側がスペーサー81を介してビス82によって架台61に支持されている。リニアスケール71の他端78b側は、引張りばね83とスペーサー84とを介して、ビス85によって架台61に支持されている。リニアスケール71には、引張りばね83によって、他端78b側からX方向に沿って張力が付与されている。
スペーサー81及びスペーサー84によって、リニアスケール71と架台61との間には、Y方向に隙間が保たれている。この隙間にエンコーダー73が挿入されている。
エンコーダー73は、キャリッジ7に固定されている。このため、キャリッジ7が変位すると、リニアスケール71とエンコーダー73とが互いに相対変位する。
上記の構成を有するキャリッジ位置検出装置65は、エンコーダー73でリニアスケール71の目盛り75を検出することによって、キャリッジ7の変位量を検出することができる。そして、液滴吐出装置1では、キャリッジ位置検出装置65による検出結果に基づいて、キャリッジ7の変位量や位置が制御される。
【0042】
本実施形態では、リニアスケール71の他端78b側に、隠し部材91が設けられている。
隠し部材91は、図7に示すように、リニアスケール71の他端78b側において、リニアスケール71の一部の領域に重なっている。隠し部材91は、リニアスケール71に設けられた複数の目盛り75のうちの一部の目盛り75に重なっている。以下において、複数の目盛り75のうち隠し部材91に重なっている目盛り75を識別する場合、隠し部材91に重なっている目盛り75は、目盛り75aと表記される。
隠し部材91は、熱膨張率が低く発光素子73a(図6)からの光に対する遮光性が高い。このため、エンコーダー73は、隠し部材91に重なっている目盛り75aを検出することができない。つまり、隠し部材91は、目盛り75aをエンコーダー73から隠す機能を有する。
【0043】
隠し部材91の材料としては、リニアスケール71の熱膨張率よりも低い熱膨張率を有する材料が採用され得る。このような材料としては、例えば、金属や、木材、石材、ガラス材などが挙げられる。なお、本実施形態では、隠し部材91の構成として、基板状の石英ガラスにクロムなどの遮光性が高い材料で膜を形成した構成が採用されている。
隠し部材91は、図7中のE視方向における側面図である図8に示すように、スペーサー93を介して架台61に支持されている。スペーサー93によって、隠し部材91と架台61との間には隙間が保たれている。そして、隠し部材91の厚みは、エンコーダー73における発光素子73aと光学センサー73bとの間の隙間量よりも薄い。このため、エンコーダー73の発光素子73aと光学センサー73bとの間に、隠し部材91とリニアスケール71とを挿入することができる。
【0044】
また、隠し部材91は、リニアスケール71の動きを拘束しない状態、すなわちリニアスケール71から独立した状態で設けられている。
上記の構成を有するキャリッジ位置検出装置65では、図5に示すように、ビス82から隠し部材91までの間の距離Dが一定に保たれている。
なお、リニアスケール71と隠し部材91とは、互いに独立した状態であれば、互いに接触していてもかまわない。
また、本実施形態では、隠し部材91と架台61との間にリニアスケール71を介在させる構成としたが、これに限定されず、リニアスケール71と架台61との間に隠し部材91を介在させる構成も採用され得る。
【0045】
液滴吐出装置1は、図9に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121及びワーク搬送モーター123、並びに、エンコーダー73及びテーブル位置検出装置27は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0046】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、吐出ヘッド33も、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0047】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、ヘッド制御部145と、表示制御部151と、を有している。
【0048】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動とを、個別に制御する。
ヘッド制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0049】
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェイス133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、液滴55で形成すべきドットがビットマップ状に表現されている。ワークWに描画されるパターンは、液滴55で形成される複数のドットの集合として表現される。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。本実施形態では、ワークWの搬送を停止させた状態でキャリッジ7をX方向に沿って駆動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWへのパターンの描画が行われる。なお、ワークWへの描画においては、ワークWを改行することがある。ワークWの改行は、吐出ヘッド33からの液滴55の吐出を停止させた状態で、ワークWをY方向に搬送することによって行われる。
【0050】
本実施形態では、ヘッド制御部145は、図10に示すように、吐出タイミング信号生成部171と、駆動制御部173と、ヘッド駆動回路175と、を有している。
吐出タイミング信号生成部171は、吐出タイミング信号TSを出力する。吐出タイミング信号TSには、液滴55の吐出を許可するタイミングで、後述するパルス状の吐出タイミングパルスが出現する。液滴55の吐出は、吐出タイミングパルスの立ち上がりに基づいて許可される。つまり、本実施形態では、CPU113が吐出ヘッド33に対して描画の実行を指示している間において、吐出タイミングパルスの立ち上がりごとに、吐出ヘッド33での液滴55の吐出が許可される。
【0051】
吐出タイミング信号生成部171には、エンコーダー信号EPと、補正信号HSと、が入力される。エンコーダー信号EPは、エンコーダー73から出力される。エンコーダー信号EPには、リニアスケール71の目盛り75が検出されるたびに、パルス状の信号である検出パルスが出現する。
補正信号HSは、エンコーダー信号EPにおいて隣り合う検出パルス同士間の間隔であるパルス間隔に対する補正量を示す信号であり、CPU113から出力される。エンコーダー信号EPは、CPU113にも入力される。CPU113は、入力されるエンコーダー信号EPに基づいて、補正信号HSを生成する。
【0052】
吐出タイミング信号生成部171は、エンコーダー信号EPにおけるパルス間隔を補正信号HSに基づいて補正した補正パルス間隔で、吐出タイミングパルスを出力する。
吐出タイミング信号TSは、駆動制御部173に入力される。駆動制御部173には、吐出タイミング信号TSと、描画指令信号ISと、が入力される。描画指令信号ISは、CPU113から出力される信号であり、吐出ヘッド33に対して描画を実行させるか否かを指示する情報を示す。駆動制御部173は、描画指令信号ISが吐出ヘッド33に対して描画の実行を指示するものである(以下、オン状態と呼ぶ)ときに、吐出タイミング信号TSをヘッド駆動回路175に出力する。
ヘッド駆動回路175は、入力された吐出タイミング信号TSに基づいて、吐出ヘッド33を駆動して、ノズルから液滴55を吐出させる。このとき、吐出ヘッド33は、ビットマップ状の描画データに基づいて、複数のノズルから選択的に、吐出タイミングパルスの立ち上がり(又は、立ち下り)ごとに液滴55を吐出させる。
上記により、ワークWに対する描画が行われ得る。
【0053】
ところで、本来、キャリッジ7を駆動すると、エンコーダー信号EPには、所定の変位量ごとに、目盛り75の検出に対応した検出パルスKPが出現する。このため、本来、検出パルスKPごとに吐出ヘッド33からワークWに向けて液滴55を吐出させれば、このワークWには、図11(a)に示すように、所定の間隔F(距離)でドットDtが形成され得る。
間隔Fは、本来、キャリッジ7の変位速度(搬送速度)によって変化しない。この場合、本来、キャリッジ7を一定の速度で駆動すると、エンコーダー73から出力されるエンコーダー信号EPには、図11(b)に示すように、目盛り75の検出に対応した検出パルスKPが一定の間隔S(時間)で出現する。
なお、間隔Fは、距離に関する間隔である。また、間隔Sは、時間に関する間隔である。以下において、距離に関する間隔と、時間に関する間隔とを区別するため、距離に関する間隔を距離間隔と呼び、時間に関する間隔を時間間隔と呼ぶ。
【0054】
このように、本来、キャリッジ7を一定の速度で駆動すると、目盛り75の検出に対応した検出パルスKPが一定の時間間隔S、且つ一定の距離間隔Fで出現する。しかしながら、例えば環境温度などによって、リニアスケール71が伸縮した場合、検出パルスKPの出現は、時間間隔Sや距離間隔Fからずれる。これは、リニアスケール71の伸縮によって、目盛り75の間隔も伸縮するためである。
例えば、リニアスケール71が伸びた場合、隣り合うドットDt同士の距離間隔Lが、図12(a)に示すように、距離間隔Fよりも大きくなる。逆に、リニアスケール71が縮んだ場合、隣り合うドットDt同士の距離間隔Lは、距離間隔Fよりも小さくなる。
【0055】
本実施形態では、リニアスケール71の伸縮による距離間隔Fに対する距離間隔Lのズレ量ΔLが、図5に示す距離Dにわたって一様であるとする。
図12(a)に示す例では、1番目のドットDt(1)と2番目のドットDt(2)との距離間隔L(1)は、距離間隔FよりもΔLのズレ量だけ大きい。同様に、k番目のドットDt(k)とk+1番目のドットDt(k+1)との距離間隔L(k)も、距離間隔FよりもΔLのズレ量だけ大きい。
また、この場合、キャリッジ7を一定の速度で駆動しても、エンコーダー73から出力されるエンコーダー信号EPにおいて、図12(b)に示すように、隣り合う検出パルスKP同士の時間間隔Tが、時間間隔Sよりも大きくなる。図12(b)に示す例では、1番目の検出パルスKP(1)と2番目の検出パルスKP(2)との時間間隔T(1)は、時間間隔SよりもΔTだけ大きい。同様に、k番目の検出パルスKP(k)とk+1番目の検出パルスKP(k+1)との時間間隔T(k)も、時間間隔SよりもΔTだけ大きい。
【0056】
本実施形態では、図5に示す距離Dにおける目盛り75の個数をカウントした結果に基づいて、ズレ量ΔLを補正することができる。
本実施形態では、常温環境下での距離Dにおける目盛り75の個数と、距離間隔Fとが予め把握されている。このときの目盛り75の個数をN個(Nは、2以上の整数)とする。距離Dにおける距離間隔Fの個数は、目盛り75の個数(N個)よりも1個だけ少なくなるので、N個の目盛り75に対応する総距離Gは、下記(1)式により算出される。
G=(N−1)×F・・・(1)
【0057】
リニアスケール71の伸縮による目盛り75の過不足数を、n個(nは、0を含む正又は負の整数)とすると、補正すべきズレ量ΔLは、下記(2)式により算出される。ズレ量ΔLは、CPU113によって算出される。
ΔL=L−F=(n×F)/(N+n−1)・・・(2)
なお、本実施形態では、架台61が鋼材で構成され、隠し部材91が石英ガラスで構成されているので、距離Dの温度による変化は、リニアスケール71の伸縮量に比較して、極めて小さい。従って、距離Dの変化による過不足数nへの影響はないとみなされ得る。
【0058】
ここで、nは、目盛り75の個数がN個よりも少ないときに負の整数になり、目盛り75の個数がN個よりも多いときに正の整数になり、目盛り75の個数がN個のときに0になる。
なお、距離Dにおける目盛り75の個数の過不足は、距離Dにおける目盛り75をエンコーダー73で検出した結果から把握され得る。つまり、距離Dにおける目盛り75をエンコーダー73で検出したときの検出パルスKP(図11)の数をカウントする(カウント工程)ことによって把握され得る。
【0059】
そして、ズレ量ΔLを補正するには、図12(a)に示すドットDt同士間の距離間隔Lを距離間隔Fにすればよいのだから、図12(b)に示す時間間隔Tを時間間隔Sにすればよい。時間間隔Tを時間間隔Sに補正するには、ズレ量ΔLに対応する時間であるΔTを補正量とすればよい。
リニアスケール71が伸びた例を示す図12では、時間間隔Tから補正量ΔTを減じた時間が時間間隔Sであるから、時間間隔Tから補正量ΔTを減じた時間ごとに液滴55を吐出させればよい。これにより、距離間隔Lを距離間隔Fに補正することができる。なお、補正量ΔTは、下記式(3)によって算出される。補正量ΔTは、CPU113によって算出される。
ΔT=ΔL/V・・・(3)
ここで、式(3)において、Vは、キャリッジ7の搬送速度である。本実施形態では、搬送速度Vが一定であるとする。
【0060】
前述したように、CPU113は、補正信号HSを生成する。補正信号HSには、上記の補正量ΔTを示すデータが含まれる。補正信号HSは、図10に示すように、吐出タイミング信号生成部171に入力される。吐出タイミング信号生成部171には、エンコーダー信号EPも入力される。吐出タイミング信号生成部171は、エンコーダー信号EPにおける時間間隔Tを補正信号HSに基づいて補正した吐出タイミング信号TSを駆動制御部173に出力する。
このとき、吐出タイミング信号TSには、図13に示すように、補正時間間隔Thで吐出タイミングパルスTP(k)が出現する。補正時間間隔Thは、エンコーダー信号EPにおける時間間隔Tを時間間隔Sに補正した時間である。つまり、リニアスケール71が伸びた例では、時間間隔Tから補正量ΔTを減じた時間が補正時間間隔Thである。
【0061】
なお、本実施形態では、1番目の吐出タイミングパルスTP(1)の出力は、1番目の検出パルスKP(1)が出力されてから3番目の検出パルスKP(3)が出力されるまで遅延する。
吐出タイミング信号TSは、図10に示すように、駆動制御部173に入力される。吐出タイミング信号TSが入力される駆動制御部173は、描画指令信号ISがオン状態であるときに、吐出タイミング信号TSをヘッド駆動回路175に出力する。
ヘッド駆動回路175は、吐出タイミング信号TSの吐出タイミングパルスTPの立ち上がりごとに、吐出ヘッド33に液滴55の吐出を許可する。これにより、図13に示すように、距離間隔FでドットDtを形成することができる。
【0062】
本実施形態において、液滴吐出装置1が描画装置に対応し、キャリッジ搬送装置11が変位装置に対応し、リニアスケール71がスケールに対応し、エンコーダー73が検出器に対応し、ビス82が支持部材に対応し、引張りばね83が張力付与部材に対応し、CPU113が制御部に対応している。
本実施形態では、距離Dにおける目盛り75の個数をカウントするカウント工程での結果に基づいて、距離間隔Fからズレ量ΔLを有する距離間隔Lを、距離間隔Fに補正することができる。これにより、キャリッジ7の変位量を補正することができる。そして、本実施形態では、キャリッジ7の補正された変位量に基づいて、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させるので、液滴55によってワークWに形成されるドットDtの位置精度を高めることができる。この結果、リニアスケール71に伸縮が発生していても、ドットDtの位置精度を高めることができるので、ワークWにおける描画品位を向上させることができる。
また、本実施形態では、温度を検出しなくても、リニアスケール71の伸縮に起因するキャリッジ7の変位量のずれを補正することができるので、温度の検出にかかる構成や時間を省略することができる。
【0063】
なお、本実施形態において、補正量ΔTを算出する工程は、適宜に実施され得る。
例えば、1つのワークWに描画を行うたびに補正量ΔTを算出すれば、ワークWごとにドットDtの位置精度を高い状態に維持しやすくすることができる。
また、例えば、キャリッジ7をワークWに交差させるたびに補正量ΔTを算出することにより、1つのワークW内でのドットDtの位置精度のばらつきを低く抑えやすくすることができる。
液滴吐出装置1を稼動したときの経過時間による環境温度の変化や、液滴吐出装置1が置かれている環境における温度変化の特性、気候変動などに応じて、補正量ΔTを算出するタイミングを決定することが好ましい。これにより、補正量ΔTを算出する頻度を適正に設定することができるので、ワークWに対する描画品位を維持しつつ、描画効率の低下を抑えやすくすることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、リニアスケール71の一端78a側をビス82で支持する形態が採用されているが、一端78a側の支持形態は、これに限定されない。一端78a側の支持形態としては、例えば、架台61に鉤状のフックを設け、リニアスケール71の一端78a側に形成した貫通孔をこのフックに引っ掛けることによって支持する形態も採用され得る。この形態では、ビス82を省略できるので、ビス82の締結にかかる手間を省略することができる。一端78a側の支持形態としては、これらの他にも、例えば、架台61にクリップを設け、このクリップでリニアスケール71の一端78a側を挟持する形態や、接着、溶着、カシメなど、種々の支持形態が採用され得る。
また、本実施形態では、引張りばね83でリニアスケール71に張力を付与する形態が採用されているが、張力の付与形態は、これに限定されない。張力の付与形態としては、例えばゴム材などの種々の弾性体で張力を付与する形態も採用され得る。
【0065】
なお、本実施形態では、描画を行う方法としてインクジェット法が採用されている。しかしながら、描画を行う方法は、これに限定されない。描画を行う方法としては、例えば、シリンジやディスペンサーなどを用いて機能液53をワークWに塗布するディスペンス法なども採用され得る。
また、本実施形態では、距離Dにおける目盛り75の個数をカウントするカウント工程での結果に基づいて、距離Dにおける目盛り75の過不足数nを把握し、把握した過不足数nを用いて式(2)によりズレ量ΔLを算出する方法が採用されている。しかしながら、ズレ量ΔLの算出方法は、これに限定されず、カウント工程での結果に基づいて、リニアスケール71の伸縮量を把握してから、この伸縮量を用いてズレ量ΔLを算出する方法も採用され得る。
【0066】
また、本実施形態では、リニアスケール71、エンコーダー73及び隠し部材91の構成をキャリッジ位置検出装置65に適用した例が示されているが、エンコーダー73及び隠し部材91の構成の適用は、キャリッジ位置検出装置65に限定されない。エンコーダー73及び隠し部材91の構成は、テーブル位置検出装置27にも適用され得る。エンコーダー73及び隠し部材91の構成をテーブル位置検出装置27に適用すれば、ワークWの位置精度を高めることができる。
さらに、エンコーダー73及び隠し部材91の構成を、キャリッジ位置検出装置65及びテーブル位置検出装置27の双方に適用すれば、ワークWにおける描画品位を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…液滴吐出装置、3…ワーク搬送装置、7…キャリッジ、11…キャリッジ搬送装置、23a…ガイドレール、23b…ガイドレール、25…ワークテーブル、27…テーブル位置検出装置、33…吐出ヘッド、53…機能液、55…液滴、61…架台、63…ガイドレール、65…キャリッジ位置検出装置、71…リニアスケール、71a…本体、73…エンコーダー、75…目盛り、78a…一端、78b…他端、81…スペーサー、82…ビス、83…引張りばね、84…スペーサー、85…ビス、91…隠し部材、93…スペーサー、111…制御部、113…CPU、115…駆動制御部、121…キャリッジ搬送モーター、123…ワーク搬送モーター、145…ヘッド制御部、171…吐出タイミング信号生成部、173…駆動制御部、175…ヘッド駆動回路、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対向し、前記ワークに向けて液状体を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに対する前記ワークの相対位置を変位させる変位装置と、
前記相対位置の変位方向に沿って並ぶ複数の目盛りが設けられたスケールと、
前記相対位置の変位にともなって前記目盛りを検出し、前記目盛りを検出するごとに検出信号を出力する検出器と、
前記複数の目盛りが並ぶ方向における前記スケールの一端側を支持する支持部材と、
前記スケールの前記一端側とは反対側の他端側から前記スケールに張力を付与する張力付与部材と、
前記スケールから独立した状態で、前記支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられ、前記スケールの前記他端側において、前記複数の目盛りのうちの一部の目盛りを前記検出器から隠す隠し部材と、を有する、
ことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記支持部材と前記隠し部材との間における前記検出信号の数に基づいて、前記相対位置の変位量を補正する制御部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記吐出ヘッドでの前記液状体の吐出を制御するヘッド制御部を有し、
前記ヘッド制御部は、補正された前記変位量に基づいて、前記吐出ヘッドに前記液状体を吐出させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の描画装置。
【請求項4】
前記検出器は、前記目盛りを光学的に検出する光学センサーを有しており、
前記隠し部材は、前記光学センサーへの光の入射を遮ることによって、前記一部の目盛りを前記検出器から隠す、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項5】
前記変位装置は、
前記吐出ヘッドを保持するキャリッジと、
前記キャリッジを搬送するキャリッジ搬送装置と、
を有し、
前記検出器は、前記キャリッジに設けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画装置。
【請求項6】
液状体を吐出する吐出ヘッドに対するワークの相対位置を変位させるときに、前記相対位置の変位方向に沿って並ぶ複数の目盛りが設けられたスケールの前記目盛りを検出器で検出した結果に基づいて前記相対位置の変位を制御しながら、前記液状体を前記ワークに向けて吐出することによって、前記ワークに前記液状体で描画を行う描画工程の前に、
一端側が支持部材によって支持され、前記一端側とは反対側の他端側から張力が付与された前記スケールの前記他端側において、前記スケールから独立し、前記支持部材から所定の距離を隔てた位置に設けられた隠し部材で前記複数の目盛りのうちの一部の目盛りを前記検出器から隠した状態で、複数の前記目盛りを前記検出器で検出し、検出した結果に基づいて、検出した前記目盛りの個数をカウントするカウント工程を有する、
ことを特徴とする描画方法。
【請求項7】
前記描画工程では、前記カウント工程でのカウント結果に基づいて、前記相対位置の変位量を補正する、
ことを特徴とする請求項6に記載の描画方法。
【請求項8】
補正された前記変位量に基づいて、前記吐出ヘッドから前記液状体を吐出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の描画方法。
【請求項9】
前記カウント工程の後、且つ前記描画工程の前に、前記カウント結果に基づいて、前記スケールの伸縮量を把握する伸縮量把握工程を有し、
前記描画工程では、前記伸縮量に応じて前記相対位置の変位量を補正する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−71055(P2013−71055A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212177(P2011−212177)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】