説明

搭乗手段用操作装置

【課題】操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの破壊を回避することができる搭乗手段用操作装置を提供する。
【解決手段】車両等の搭乗手段に配設され、操作可能な操作ノブ4と、該操作ノブ4の操作で押圧されて変位する作動部6aa、6baを有し、該作動部6aa、6baの変位によりオンし得るタクトスイッチ6a、6bと、該タクトスイッチ6a、6bがオンすることにより所定の電気回路を形成し、搭乗手段又は搭乗手段が具備する装備を動作させ得る電気回路基板5とを具備した搭乗手段用操作装置において、操作ノブ4の操作力をタクトスイッチ6a、6bの作動部6aa、6baに伝達して変位させるとともに、当該作動部6aa、6baがその変位限界を超えると、操作ノブ4の変位量を吸収し得る操作部Fa、Fbを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、二輪車若しくは産業機械等の車両や小型船舶、スノーモービル等の搭乗手段に配設され、タクトスイッチがオンすることにより所定の電気回路を形成し、搭乗手段又は搭乗手段が具備する装備を動作させ得る搭乗手段用操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械、一例として建設機械(建機)は、土木・建築の作業現場において使用されるもので、ブルドーザやパワーショベル、クレーン車が挙げられる。こうした産業機械の運転席には、一般に、揺動操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備(オプション)に対して所定の一の動作を行わせる操作レバーを具備しており、当該操作レバーの突端側には作業者が把持し得る把持部が形成されている。
【0003】
そして、把持部を作業者が把持しつつ操作レバーを揺動操作することにより、例えば、産業機械の走行制御やスクレーパ等から成るオプションの所定動作を行わせ得るようになっている。然るに、近時においては、作業者が操作可能な操作ノブを把持部に形成したものが提案されるに至っており、作業者は把持部を把持して操作レバーを揺動操作しつつ把持した指を延ばして操作ノブを操作し、他の操作を行い得るようになっている。
【0004】
かかる従来の操作装置においては、操作ノブの操作によりオンして所定の電気回路を形成し得るタクトスイッチを具備し、該タクトスイッチが所定の電気回路を形成することにより、産業機械の他の動作(例えば、装備したスクレーパの向きを変えたり或いは走行時の変速操作を行わせるなどの動作)を行わせるものがある。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の操作装置においては、操作ノブの操作によりオンし得るタクトスイッチを具備しているため、当該操作ノブのストローク(変位量)を大きく設定することができず、ストロークが小さすぎて操作性が悪化してしまうという問題があった。即ち、タクトスイッチは、その作動部が操作ノブの操作により押圧されて変位し、オンするよう構成されているのであるが、当該作動部の変位量は極めて小さく設定されているため、これに対応させて操作ノブのストローク(変位量)も小さくせざるを得ないのである。操作ノブのストロークが小さいと、十分な操作感を得ることができず、操作性が悪化してしまう。
【0006】
一方、操作ノブのストロークを作動部の設定変位量(変位限界)以上に設定すると、当該操作ノブを強く押圧操作等した場合、タクトスイッチを破壊してしまう虞がある。特に、産業機械などの搭乗手段に配設された搭乗手段用操作装置においては、他の操作を行いながら操作される操作ノブが多く、操作感が十分に得られないことは操作性に著しく影響を及ぼしてしまうとともに、操作ノブのストロークを作動部の設定変位量(変位限界)以上に設定した場合であっても当該作動部の変位限界以上で強く押圧操作してしまうケースが多いと考えられる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの破壊を回避することができる搭乗手段用操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、搭乗手段に配設され、操作可能な操作ノブと、該操作ノブの操作で押圧されて変位する作動部を有し、該作動部の変位によりオンし得るタクトスイッチと、該タクトスイッチがオンすることにより所定の電気回路を形成し、搭乗手段又は搭乗手段が具備する装備を動作させ得る電気回路基板とを具備した搭乗手段用操作装置において、前記操作ノブの操作力を前記タクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、前記操作ノブの変位量を吸収し得る伝達手段を具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の搭乗手段用操作装置において、前記伝達手段は、前記タクトスイッチの作動部を押圧し得る第1操作部材と、前記操作ノブと当接して当該操作ノブの操作力を受け得る第2操作部材と、前記第1操作部材及び第2操作部材の間に介装された弾性部材とを有し、前記作動部がその変位限界を超えると前記弾性部材が圧縮して前記第2操作部材が第1操作部材に対して相対的に変位し、前記操作ノブの変位量を吸収することを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の搭乗手段用操作装置において、前記弾性部材は、一端が前記第1操作部材と当接しつつ他端が前記第2操作部材と当接したコイルスプリングから成り、当該コイルスプリングのバネ荷重が前記タクトスイッチの作動部に対する操作荷重より高く設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の搭乗手段用操作装置において、前記搭乗手段は、揺動操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の一の動作を行わせる操作レバーと、該操作レバーの突端側に形成されて作業者が把持して当該操作レバーを揺動操作させ得る把持部とを具備し、前記操作ノブが当該把持部に形成されてその操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作を行わせるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、操作ノブの操作力を前記タクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、前記操作ノブの変位量を吸収し得る伝達手段を具備したので、操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの破壊を回避することができる。即ち、伝達手段により、操作ノブの変位量をタクトスイッチにおける作動部の変位限界より大きく設定することができ、操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの作動部の変位限界を超えると、当該操作ノブの変位を吸収してその操作力がタクトスイッチに伝達されないので、タクトスイッチの破壊が回避されるのである。
【0013】
請求項2の発明によれば、タクトスイッチの作動部がその変位限界を超えると弾性部材が圧縮して第2操作部材が第1操作部材に対して相対的に変位し、操作ノブの変位量を吸収するので、当該第1操作部材、第2操作部材及び弾性部材を操作ノブとタクトスイッチとの間に介在させるという簡易な構成にて、操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの破壊を回避することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、コイルスプリングのバネ荷重がタクトスイッチの作動部に対する操作荷重より高く設定されたので、作動部の変位限界を超えるまで(操作荷重より小さい荷重による操作過程)は、コイルスプリングが圧縮されず、操作ノブの操作力をタクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、コイルスプリングが圧縮して操作ノブの変位量を吸収し得る。従って、タクトスイッチの作動部には、コイルスプリングのバネ荷重以上は付与されず、当該タクトスイッチの破壊を確実に回避することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、操作ノブが操作レバーの把持部に形成されてその操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作を行わせるものであるので、より請求項1〜請求項3の発明の効果を顕著とすることができる。即ち、産業機械における操作レバーの把持部に操作ノブを形成した場合、当該操作レバーに対する揺動操作に加えて操作ノブの操作を行わせることから操作感を十分に持たせる必要があり、且つ、把持部に対する把持力を維持するため操作ノブをより強く操作することが多く、タクトスイッチの破壊を回避する必要があるため、これら必要性を十分に満たすことができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る搭乗手段用操作装置は、土木・建築の作業現場において使用されるブルドーザやパワーショベル、クレーン車などの産業機械(建機)に配設されたものであり、図1〜3に示すように、当該産業機械の運転席に配設された操作レバー1における突端側の把持部2に形成された操作ノブ4、18を有している。
【0017】
操作レバー1は、基端(図中下端側)の揺動軸(不図示)を中心に揺動可能な管状部材2aと、該管状部材2aの外周を覆って形成されたコルゲートチューブ2bとから構成され、作業者が前後又は左右に揺動操作することにより当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の一の動作(例えば、産業機械を走行或いは停止させ、旋回動作させ、又は装備したクレーンやショベルを動作させる等)を行わせ得るよう構成されている。
【0018】
把持部2は、内部に後述する電気回路基板5、12等を収容させ得る例えば樹脂成形品から成るもので、作業者が把持して操作レバー1を揺動操作し得るよう構成されたものである。かかる把持部2の正面側(運転席に着座する作業者に望んだ面側)、及びその反対面(背面側)には、把持部2を把持した作業者が指を延ばして操作し得る操作ノブ4、18(スイッチノブ)が形成されている。
【0019】
このうち、操作ノブ4は、作業者の親指を延ばして左右に揺動操作可能とされた所謂シーソー型のスイッチノブから成るものであり、図4、5に示すように、その周囲がブーツB1にて覆われて防水が図られつつケースC1に形成されている。また、操作ノブ4には、図6、7に示すように、左右それぞれにフランジ部4a、4bが形成されており、当該操作ノブ4の左右何れかの面を押圧操作することによりケースC1に形成された揺動軸Lを中心に揺動させると、フランジ部4a又は4bがケースC1内の伝達手段としての操作部Fa、Fbを選択的押圧するよう構成されている。
【0020】
操作部Faは、タクトスイッチ6aの作動部6aaを押圧し得る第1操作部材8aと、操作ノブ4(具体的には、そのフランジ部4a)と当接して当該操作ノブ4の操作力を受け得る第2操作部材9aと、これら第1操作部材8a及び第2操作部材9aの間に介装されたコイルスプリング10a(弾性部材)とから構成されており、図10に示すように、操作ノブ4が左側に揺動操作されてフランジ部4aが第2操作部材9aの頂部を押圧すると、その押圧力がコイルスプリング10aを介して第1操作部材8aに伝わり、タクトスイッチ6aのパッキン7aにおける被操作部7aaを押圧し得るようになっている。
【0021】
コイルスプリング10aは、一端が第1操作部材8aと当接しつつ他端が第2操作部材9aと当接しており、当該コイルスプリング10aのバネ荷重がタクトスイッチ6aの作動部6aaに対する操作荷重(即ち、タクトスイッチ6a内に配設され、作動部6aaを元の位置まで戻すバネなどの付勢力)より高く設定されている。これにより、操作ノブ4による操作力が作動部6aaの操作荷重以下(限界変位量以下)であれば、コイルスプリング10aは圧縮されず、当該操作力でパッキン7aの被操作部7aaが押圧されることとなる。
【0022】
同様に、操作部Fbは、タクトスイッチ6bの作動部6baを押圧し得る第1操作部材8bと、操作ノブ4(具体的には、そのフランジ部4b)と当接して当該操作ノブ4の操作力を受け得る第2操作部材9bと、これら第1操作部材8b及び第2操作部材9bの間に介装されたコイルスプリング10b(弾性部材)とから構成されており、操作ノブ4が右側に揺動操作されてフランジ部4bが第2操作部材9bの頂部を押圧すると、その押圧力がコイルスプリング10bを介して第1操作部材8bに伝わり、タクトスイッチ6bのパッキン7bにおける被操作部7baを押圧し得るようになっている。
【0023】
コイルスプリング10bは、コイルスプリング10aと同様、一端が第1操作部材8bと当接しつつ他端が第2操作部材9bと当接しており、当該コイルスプリング10bのバネ荷重がタクトスイッチ6bの作動部6baに対する操作荷重(即ち、タクトスイッチ6b内に配設され、作動部6baを元の位置まで戻すバネなどの付勢力)より高く設定されている。これにより、操作ノブ4による操作力が作動部6baの操作荷重以下(限界変位量以下)であれば、コイルスプリング10bは圧縮されず、当該操作力でパッキン7bの被操作部7baが押圧されることとなる。
【0024】
パッキン7a、7bは、軟質樹脂又は合成ゴム等から成るもので、それぞれがタクトスイッチ6a、6bを覆って防水し得るよう構成されたものであり、上述したように各頂部中央に形成された被操作部7aa、7baが第1操作部材8a、8bにて押圧されると弾性変形し、内部のタクトスイッチ6a、6bの作動部6aa、6baを押圧操作して当該タクトスイッチ6a、6bをオンし得るようになっている。即ち、操作ノブ4が左右何れに揺動操作されたのかは、タクトスイッチ6a、6bの何れがオンしたのかにより把握可能とされているのである。
【0025】
ここで、本実施形態においては、伝達手段としての操作部Fa、Fbが操作ノブ4の操作力をタクトスイッチ6a、6bの作動部6aa、6baに伝達して変位させるとともに、当該作動部6aa、6baがその変位限界を超えると(即ち、操作ノブ4による操作力が作動部6baの操作荷重以上となると)、操作ノブ4の変位量を吸収し得るようになっている。
【0026】
すなわち、操作ノブ4が図10で示す状態から更に揺動操作されることにより、作動部6aaがその変位限界を超えると(操作ノブ4による操作力が作動部6baの操作荷重以上となると)、図11で示すように、コイルスプリング10aが圧縮して第2操作部材9aが第1操作部材8aに対して相対的に変位し、操作ノブ4の変位量を吸収することにより、タクトスイッチ6aの作動部6aaに操作ノブ4の操作力が伝達されないよう構成されているのである。尚、コイルスプリング10bの作用についても同様である。
【0027】
上記構成により、操作ノブ4の揺動操作による変位量をタクトスイッチにおける作動部の変位限界より大きく設定することができ、操作ノブ4の操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチ6a、6bの作動部6aa、6baの変位限界を超えると、操作部Fa、Fbが当該操作ノブ4の変位を吸収してその操作力がタクトスイッチ6a、6bに伝達されないので、タクトスイッチ6a、6bの破壊を回避することができる。
【0028】
また、コイルスプリング10a、10bが圧縮して第2操作部材9a、9bが第1操作部材8a、8bに対して相対的に変位した後、当該第2操作部材9a、9bは、図11に示すように、ケースC1に形成された段部に当接するようになっている。これにより、コイルスプリング10a、10bの圧縮限界を超えて更に操作ノブ4が変位し、タクトスイッチ6a、6bの作動部6aa、6baを押圧してしまうのを回避できる。
【0029】
然るに、操作ノブ4に対する押圧操作を止めて作業者が当該操作ノブ4から指を離すと、コイルスプリング10a又は10bが復元して第2操作部材9a、9bが第1操作部材8aaに対して相対的に移動し、元の位置まで戻るとともに、タクトスイッチ6a、6b内に配設されて作動部6aa、6baを元の位置まで戻すバネなどの復元手段(不図示)による付勢力、及び弾性変形されたパッキン7a、7bの復元力により操作ノブ4が初期位置(左右何れにも揺動していない状態)まで戻されることとなる。
【0030】
尚、第1操作部材8aには、図7に示すように、その周面から側方向に一対の鍔部8aaが延設されており、かかる鍔部8aaをケースC1側で支持させることにより操作部Fa全体の抜け止めを図っている。また、第2操作部材9aの胴部は、図8で示すように、異形状(一方向に突出形状を有したもの)とされており、ケースC1に形成されてこの胴部と対応した形状の挿通孔C1a(図6参照)に当該第2操作部材9aを挿通させることにより、操作部Fa全体の回転止めが図られている。かかる構成については、操作部Fbについても同様であり、更には後述する操作部Fcについても同様である。
【0031】
更に、把持部3内に形成されたケースC1内には、電気回路基板5が配設されている。かかる電気回路基板5には、図9に示すように、電気回路を構成する配線Kがプリントされるとともにタクトスイッチ6a、6bが配設されており、産業機械本体側に配設された制御手段(例えばECUなど)とハーネスHを介して電気的に接続可能とされている。しかして、かかる電機回路基板5は、操作ノブ4の揺動操作に対応して所定の電気回路を形成し、産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作(操作レバー1に対する揺動操作による動作とは異なるもので、例えば産業機械が具備するスクレーパの向きを変更させる動作等)を行わせ得るよう構成されている。
【0032】
具体的には、電気回路基板5の表面(上面)には、配線K及びタクトスイッチ6a、6bが形成されており、図15で示す如き電気回路を構成している。即ち、産業機械が搭載するバッテリ等から成る電源から延設された配線L1と、該配線L1から分岐してタクトスイッチ6a、6bが接続された配線L2、L3とを有し、タクトスイッチ6aがオンすると、配線L1、L2を電流が流れる所定の回路が形成されて、例えば産業機械が具備するスクレーパを左側へ向ける一方、タクトスイッチ6bがオンすると、配線L1、L3を電流が流れる所定の回路が形成されて、例えば同スクレーパを右側へ向けるようになっている。
【0033】
尚、電気回路基板5の裏面(下面)には過電流保護素子11が形成されている。かかる過電流保護素子11は、所謂ポリスイッチ(ポリマ系のPTCサ−ミスタ)から成るデバイスを指し、過電流による温度の上昇により抵抗値が増大し回路電流を制限して過電流を抑制し得るとともに、当該抵抗値変化が可逆性とされて当該温度の低下により元の抵抗値に戻り回路電流の制限が解除され得る(自己復帰し得る)よう構成されたものである。
【0034】
一方、操作ノブ18は、図3に示すように、作業者の人差し指又は中指を延ばして押圧操作可能とされた所謂プッシュ型のスイッチノブから成るものであり、操作ノブ4と同様、その周囲がブーツB2にて覆われて防水が図られつつケースC2に形成されている。また、操作ノブ18には、図12に示すように、フランジ部18aが形成されており、当該操作ノブ18の表面を押圧操作することによりケースC側へ没入動作し、当該ケースC2内の伝達手段としての操作部Fcを押圧するよう構成されている。
【0035】
操作部Fcは、タクトスイッチ13の作動部13aを押圧し得る第1操作部材15と、操作ノブ18(具体的には、そのフランジ部18a)と当接して当該操作ノブ18の操作力を受け得る第2操作部材16と、これら第1操作部材15及び第2操作部材16の間に介装された弾性部材としてのコイルスプリング17とから構成されており、図13に示すように、操作ノブ18が没入動作してフランジ部18aが第2操作部材16の頂部を押圧すると、その押圧力がコイルスプリング17を介して第1操作部材15に伝わり、タクトスイッチ13のパッキン14における被操作部14aを押圧し得るようになっている。
【0036】
コイルスプリング17は、一端が第1操作部材15と当接しつつ他端が第2操作部材16と当接しており、当該コイルスプリング17のバネ荷重がタクトスイッチ13の作動部13aに対する操作荷重(即ち、タクトスイッチ13内に配設され、作動部13aを元の位置まで戻すバネなどの付勢力)より高く設定されている。これにより、操作ノブ18による操作力が作動部13aの操作荷重以下(限界変位量以下)であれば、コイルスプリング17は圧縮されず、当該操作力でパッキン14の被操作部14aが押圧されることとなる。
【0037】
パッキン14は、軟質樹脂又は合成ゴム等から成るもので、タクトスイッチ13を覆って防水し得るよう構成されたものであり、上述したように頂部中央に形成された被操作部14aが第1操作部材15にて押圧されると弾性変形し、内部のタクトスイッチ13の作動部13aを押圧操作して当該タクトスイッチ13をオンし得るようになっている。即ち、操作ノブ18が押圧操作されたか否かは、タクトスイッチ13がオンしたことにより把握可能とされているのである。
【0038】
ここで、操作部Fa、Fbと同様、伝達手段としての操作部Fcが操作ノブ18の操作力をタクトスイッチ13の作動部13aに伝達して変位させるとともに、当該作動部13aがその変位限界を超えると(即ち、操作ノブ18による操作力が作動部13aの操作荷重以上となると)、操作ノブ4の変位量を吸収し得るようになっている。すなわち、操作ノブ18が図13で示す状態から更に押圧操作されることにより、作動部13aがその変位限界を超えると、図14で示すように、コイルスプリング17が圧縮して第2操作部材16が第1操作部材15に対して相対的に変位し、操作ノブ18の変位量を吸収することにより、タクトスイッチ13の作動部13aに操作ノブ18の操作力が伝達されないよう構成されているのである。
【0039】
上記構成により、操作ノブ18の押圧操作による変位量をタクトスイッチにおける作動部の変位限界より大きく設定することができ、操作ノブ18の操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチ13の作動部13aの変位限界を超えると、操作部Fcが当該操作ノブ18の変位を吸収してその操作力がタクトスイッチ13に伝達されないので、タクトスイッチ13の破壊を回避することができる。
【0040】
また、コイルスプリング17が圧縮して第2操作部材16が第1操作部材15に対して相対的に変位した後、操作ノブ18のフランジ部18aは、図14に示すように、ケースC1に形成された段部に当接するようになっている。これにより、コイルスプリング17の圧縮限界を超えて更に操作ノブ18が変位してしまうのを防止し、タクトスイッチ13の作動部13aを押圧してしまうのを回避できる。
【0041】
然るに、操作ノブ18に対する押圧操作を止めて作業者が当該操作ノブ18から指を離すと、コイルスプリング17が復元して第2操作部材16が第1操作部材15に対して相対的に移動し、元の位置まで戻るとともに、タクトスイッチ13内に配設されて作動部13aを元の位置まで戻すバネなどの復元手段(不図示)による付勢力、及び弾性変形されたパッキン14の復元力により操作ノブ18が初期位置(ケースC2に対して突出し、押圧操作が可能とされた状態)まで戻されることとなる。
【0042】
更に、把持部3内に形成されたケースC2内には、電気回路基板12が配設されている。かかる電気回路基板12には、ケースC1内の電気回路基板5と同様、電気回路を構成する配線がプリントされるとともにタクトスイッチ13が配設されており、産業機械本体側に配設された制御手段(例えばECUなど)とハーネスHを介して電気的に接続可能とされている。しかして、かかる電気回路基板12は、操作ノブ18の押圧操作に対応して所定の電気回路を形成し、産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作(操作レバー1及び操作ノブ4に対する操作による動作とは異なるもので、例えば産業機械の走行時の変速等)を行わせ得るよう構成されている。
【0043】
具体的には、電気回路基板12には、図15に示すように、ケースC1内の電気回路基板5に形成された配線L3から分岐させた配線L4が形成されており、タクトスイッチ13がオンすると、配線L1、L4を流れる所定の回路が形成されて、例えば産業機械が具備する変速装置を制御してシフトアップ又はシフトダウンさせ得るようになっている。しかして、タクトスイッチ13がオンすることにより形成される所定の回路には、過電流保護素子11が直列に接続されており、当該過電流保護素子11を共用させている。
【0044】
本実施形態によれば、タクトスイッチの作動部がその変位限界を超えると弾性部材が圧縮して第2操作部材が第1操作部材に対して相対的に変位し、操作ノブの変位量を吸収するので、当該第1操作部材、第2操作部材及び弾性部材を操作ノブとタクトスイッチとの間に介在させるという簡易な構成にて、操作ノブの操作感を十分に得ることができるとともに、タクトスイッチの破壊を回避することができる。
【0045】
また、弾性部材としてのコイルスプリングのバネ荷重がタクトスイッチの作動部に対する操作荷重より高く設定されたので、作動部の変位限界を超えるまで(操作荷重より小さい荷重による操作過程)は、コイルスプリングが圧縮されず、操作ノブの操作力をタクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、コイルスプリングが圧縮して操作ノブの変位量を吸収し得る。従って、タクトスイッチの作動部には、コイルスプリングのバネ荷重以上は付与されず、当該タクトスイッチの破壊を確実に回避することができる。
【0046】
更に、操作ノブが操作レバーの把持部に形成されてその操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作を行わせるものであるので、より上記効果を顕著とすることができる。即ち、産業機械における操作レバー1の把持部3に操作ノブを形成した場合、当該操作レバー1に対する揺動操作に加えて操作ノブの操作を行わせることから操作感を十分に持たせる必要があり、且つ、把持部3に対する把持力を維持するため操作ノブをより強く操作することが多く、タクトスイッチの破壊を回避する必要があるため、これら必要性を十分に満たすことができるのである。
【0047】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば産業機械に代えて他の搭乗手段(自動車、二輪車等の車両や小型船舶、スノーモービル等)の操作装置に適用してもよい。また、操作ノブの操作力をタクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、操作ノブの変位量を吸収し得る伝達手段は、本実施形態の操作部Fa、Fb及びFcの如きものに限定されず、種々形態のものとすることができる。
【0048】
また、本実施形態の如く揺動操作可能な操作レバーに適用した場合、当該操作レバーの把持部に操作ノブが1つ形成されたもの、或いは3つ以上形成されたものに適用してもよい。操作ノブの形態は、本実施形態の如くシーソー型或いはプッシュ型のものに限らず、変位により操作可能なもの(例えばスライド型等のスイッチノブ)としてもよい。更に、操作ノブによる操作に基づいて行われる動作は、本実施形態の如き動作に限定されず、搭乗手段又は搭乗手段が具備する装備の動作であれば他の動作であってもよい。本実施形態の如く産業機械に適用する場合、例えばブルドーザ、スクレープドーザ、油圧ショベル(バックホー、パワーショベルなど)、クレーン装置付トラックなど種々のものに適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
操作ノブの操作力を前記タクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、操作ノブの変位量を吸収し得る伝達手段を具備した搭乗手段用操作装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施形態に係る搭乗手段用操作装置が適用される操作レバーを示す正面図
【図2】同操作レバーの把持部を示す側面図
【図3】同把持部の縦断面図
【図4】同搭乗手段用操作装置における操作ノブ及びそのスイッチを示す正面図
【図5】同搭乗手段用操作装置における操作ノブ及びそのスイッチを示す側面図
【図6】図5におけるVI−VI線断面図
【図7】図4におけるVII−VII線断面図
【図8】同搭乗手段用操作装置におけるケースと第2操作部材との関係を示す模式図
【図9】同搭乗手段用操作装置における電気回路基板を示す上面図、側面図及び底面図
【図10】同搭乗手段用操作装置における操作ノブの動作(タクトスイッチの作動部がその変位限界を超える前)を示す断面図
【図11】同搭乗手段用操作装置における操作ノブの動作(タクトスイッチの作動部がその変位限界を超えた後)を示す断面図
【図12】同搭乗手段用操作装置における他の操作ノブを示す断面図
【図13】同他の操作ノブ(タクトスイッチの作動部がその変位限界を超える前)の動作を示す断面図
【図14】同他の操作ノブ(タクトスイッチの作動部がその変位限界を超えた後)の動作を示す断面図
【図15】同搭乗手段用操作装置における電気回路基板に形成された電気回路を示す回路図
【符号の説明】
【0051】
1 操作レバー
2 軸部材
3 把持部
4 操作ノブ
5 電気回路基板
6a、6b タクトスイッチ
6aa、6ba 作動部
7a、7b パッキン
8a、8b 第1操作部材
9a、9b 第2操作部材
10a、10b コイルスプリング(弾性部材)
11 過電流保護素子
12 電気回路基板
13 タクトスイッチ
13a 作動部
14 パッキン
15 第1操作部材
16 第2操作部材
17 コイルスプリング(弾性部材)
18 操作ノブ
Fa、Fb、Fc 操作部(伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗手段に配設され、操作可能な操作ノブと、
該操作ノブの操作で押圧されて変位する作動部を有し、該作動部の変位によりオンし得るタクトスイッチと、
該タクトスイッチがオンすることにより所定の電気回路を形成し、搭乗手段又は搭乗手段が具備する装備を動作させ得る電気回路基板と、
を具備した搭乗手段用操作装置において、
前記操作ノブの操作力を前記タクトスイッチの作動部に伝達して変位させるとともに、当該作動部がその変位限界を超えると、前記操作ノブの変位量を吸収し得る伝達手段を具備したことを特徴とする搭乗手段用操作装置。
【請求項2】
前記伝達手段は、前記タクトスイッチの作動部を押圧し得る第1操作部材と、前記操作ノブと当接して当該操作ノブの操作力を受け得る第2操作部材と、前記第1操作部材及び第2操作部材の間に介装された弾性部材と、を有し、前記作動部がその変位限界を超えると前記弾性部材が圧縮して前記第2操作部材が第1操作部材に対して相対的に変位し、前記操作ノブの変位量を吸収することを特徴とする請求項1記載の搭乗手段用操作装置。
【請求項3】
前記弾性部材は、一端が前記第1操作部材と当接しつつ他端が前記第2操作部材と当接したコイルスプリングから成り、当該コイルスプリングのバネ荷重が前記タクトスイッチの作動部に対する操作荷重より高く設定されたことを特徴とする請求項2記載の搭乗手段用操作装置。
【請求項4】
前記搭乗手段は、揺動操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の一の動作を行わせる操作レバーと、該操作レバーの突端側に形成されて作業者が把持して当該操作レバーを揺動操作させ得る把持部とを具備し、前記操作ノブが当該把持部に形成されてその操作により当該産業機械又は産業機械が具備する装備に対して所定の他の動作を行わせるものであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載の搭乗手段用操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−293898(P2008−293898A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−140467(P2007−140467)
【出願日】平成19年5月28日(2007.5.28)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】