説明

携帯機及び通信効率補正方法

【課題】メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機を提供すること。
【解決手段】アンテナ1aを介して無線信号を送受信する送信回路1s又は受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機である。収納部へのメカニカルキーの収納の有無を検出するプッシュスイッチSW2と、プッシュスイッチSW2に電気的に接続され、メカニカルキーの収納の有無に応じて送信回路1s又は受信回路を制御し、アンテナ1aの送信効率又は受信効率を補正する携帯機側制御装置(CPU)1cとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機に関し、詳しくは、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送受信するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機、及び、該携帯機に使用される通信効率補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のユーザに所持され、車両搭載装置の無線通信制御に使用される送受信装置としての携帯機は、通信対象としての当該車両との間で良好な無線通信を行いうるように、インピーダンス整合回路(例えば、特許文献1参照)を備えている。
【0003】
図4に示すように、この種の携帯機1´には、その携帯機側制御装置1cによって送信回路1s´及び受信回路1r´を制御し、双方のアンテナ1a,2aを介して車両2に設けられた車両側制御装置2cと無線通信を行い、当該車両2のドアを遠隔で施解錠制御させるものがある。
【0004】
前記携帯機側制御装置1cには、前記送信回路1s´及び受信回路1r´が接続され、さらに当該装置1cは、前記送信回路1s´及び受信回路1r´を切替信号に基づき切り替える送受信切替回路1e、及び前記送信回路1s´及び受信回路1r´とアンテナ1aの両インピーダンスを整合するインピーダンス整合回路1mを介して当該アンテナ1aに接続されている。
【0005】
そして、前記携帯機側制御装置1cには、さらに、携帯機1´のケース表面(図示略)に設けられた施解錠スイッチSW1が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチSW1が操作されることで、前記送信回路1s´からアンテナ1aを介して車両側制御装置2cに施解錠信号が送信され、さらに該装置2cに制御可能に接続されたドア施解錠制御装置2dに作動指令信号が送信され、車両2のドアを施解錠させる。
【0006】
このような携帯機1´には、何らかの原因で当該携帯機1´による無線通信が車両2のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキーを収納部に収納可能に構成されているものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−304521号公報
【特許文献2】特開2004−308368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、こうした携帯機1´では、当該メカニカルキーが導体である金属により形成されていること等が原因となり、サイズの小型化やデザインの特殊化等の仕様によっては、メカニカルキーを収納することで、アンテナ1aのアンテナ特性、例えば、通信効率(送信効率又は受信効率)、インピーダンスZa[Ω]、指向性が変化し、これにより当該携帯機1´と前記車両側制御装置2c(車両2)との間での無線信号の送受信状態を悪化させる場合がある。
【0008】
上記アンテナ特性の内、アンテナ1aの通信効率については、従来の携帯機1´に設けられた送信回路1s´及び受信回路1r´では、当該携帯機1´の仕様に応じて通信効率が一定とされているため、メカニカルキーを収納することで変化(低下)する当該通信効率を補正できず、前述した無線信号の送受信状態の悪化を抑制できないことがあった。さらに、その他のアンテナ特性の変化について、即ち、メカニカルキーを収納することで、アンテナのインピーダンスZaが見かけ上変化する場合や、アンテナ(無線信号)の指向性が変化する場合についても、従来の携帯機1´では実質的な対応がなされていないのが実情である。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機、及び、該携帯機に使用されるインピーダンス補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記送信回路又は受信回路を制御し、前記アンテナの送信効率又は受信効率を補正する携帯機側制御手段とを備えたこと、を要旨とする。
【0011】
同構成によれば、キー収納有無検出手段によりメカニカルキーの収納部への収納を検知し、携帯機側制御装置により当該収納時に変化するアンテナの送信効率又は受信効率(通信効率)を補正することで、メカニカルキーの収納部への収納の有無に拠らず、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機が開発できるようになる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯機において、前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されていること、を要旨とする。
【0013】
同構成によれば、キー収納有無検出手段が、携帯機の収納部に配設され、メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されているので、当該プッシュスイッチに収納部に収納されたメカニカルキーが接触して操作されることで、メカニカルキーの収納の有無を的確に検知することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の携帯機において、前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにしたこと、を要旨とする。
【0015】
同構成によれば、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチが、携帯機の収納部に沿う複数箇所に配設され、各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、メカニカルキーの収納の有無、及び、当該収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした。このため、メカニカルキーの収納の有無のみならず、メカニカルキーが収納部の中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキーの収納部における収納深さに応じて変化しうるアンテナの通信効率の補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機で複数長さのメカニカルキーを共用することが可能となり、携帯機の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の携帯機において、前記携帯機側制御手段が、前記送信回路を制御し、その送信強度を増大させることで、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送信効率を補償するか、又は、前記受信回路を制御し、その受信感度を高めることで、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの受信効率を補償するようにしたこと、を要旨とする。
【0017】
同構成によれば、携帯機側制御手段により、送信回路を制御し、その送信強度を増大させることで、メカニカルキーの収納時に低下するアンテナの送信効率を補償するか、又は、受信回路を制御し、その受信感度を増大させることで、メカニカルキーの収納時に低下するアンテナの受信効率を補償するようにした。このため、メカニカルキーの収納時にアンテナの送信効率又は受信効率が低下する各場合に応じて、アンテナの通信効率を確実に適正化することができるようになる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の携帯機において、前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段をさらに備え、前記携帯機側制御手段が、前記インピーダンス調整手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて当該インピーダンス調整手段を制御して前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するようにしたこと、を要旨とする。
【0019】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、インピーダンス調整手段を制御し、メカニカルキーの収納時に変化するアンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するようにしたので、アンテナの通信効率を補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の携帯機において、異なる指向特性を有する少なくとも2つのアンテナと、前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにしたこと、を要旨とする。
【0021】
同構成によれば、携帯機側制御装置が、メカニカルキーの収納の有無に応じて、異なる指向特性を有する少なくとも2つのアンテナを切り替えるアンテナ切替手段を制御し、メカニカルキーの収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしたので、アンテナの通信効率やインピーダンスに加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明は、車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送受信する送信回路及び受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナの送信効率又は受信効率を補償する通信効率補正方法であって、前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記送信回路の送信強度又は前記受信回路の受信感度を補正する通信効率補正ステップとを備えたこと、を要旨とする。
【0023】
同構成によれば、キー収納有無検出ステップにより、メカニカルキーの収納部への収納を検知し、通信効率補正ステップにより当該収納時に変化するアンテナの通信効率を補正することで、携帯機による無線信号の送受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、メカニカルキーの収納の有無に拠らず、無線信号の送受信状態を高いレベルで維持しうる携帯機が提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。以下の各実施形態の携帯機1は、図4で示した従来技術の携帯機1と同様な構成及び機能を備えており、以下に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【0026】
<第1実施形態>
図1(a)に示すように、本実施形態の携帯機1において、その携帯機側制御手段としての携帯機側制御装置1c(以下、「CPU1c」という。)には、送信回路1s及び受信回路1rが該CPU1cにより制御可能な状態で接続されている。さらに当該CPU1cは、該送信回路1s及び受信回路1rをCPU1cからの切替信号に基づき切り替える送受信切替回路1e、及び前記送信回路1s及び受信回路1rとアンテナ1aとの間のインピーダンスZを調整するインピーダンス調整手段としてのインピーダンス整合回路1mを介して当該アンテナ1aに接続されている。ここで、インピーダンス整合回路1mは、前記送信回路1s及び受信回路1rとアンテナ1aとの間のインピーダンスZを補正し、携帯機1と車両側制御装置2cとの間での無線信号(電波)の送受信状態を適正化する。詳しくは、このインピーダンス整合回路1mは、アンテナ1a(出力インピーダンス)と送信回路1s及び受信回路1r(入力インピーダンス)の両インピーダンスを整合すべく、送信回路1sに接続されたインダクタLと一端が接地されたコンデンサCとが接続されてなるLC回路網を備えている(図2(a)〜図3(b)参照)。
【0027】
本実施形態の携帯機1では、このように、送信回路1sと受信回路1rとで一つのアンテナ1a及びインピーダンス整合回路1mを共用するようにしているので、送受信で同一の周波数f[Hz]の無線信号が使用される。
【0028】
また、図1(b)に示すように、本実施形態の携帯機1は、ケース1bと、該ケース1bに収容され、電池(直流電源)12により駆動される回路基板11とを備えている。そして、この回路基板11には、上述したCPU1c、送信回路1s及び受信回路1r、送受信切替回路1e、インピーダンス整合回路1m、並びにアンテナ1aが配設されている。
【0029】
本実施形態の携帯機1では、何らかの原因で当該携帯機1による無線通信が車両2のドアの施解錠操作に使用できなくなったときに、当該ドアを手動で施解錠するために用いる非常用のメカニカルキー10がケース1bに設けられた収納部10aに取り出し可能に収納されている。このメカニカルキー10は、導体である金属(例えば、鉄・クロム合金)により直線状に形成されている。また、前記収納部10aは、メカニカルキー10の形状に合わせ、ケース1b内部に向け、直線状に延びるように形成されている。
【0030】
前記CPU1cには、図1(a)を参照して、さらに、携帯機1のケース1bの表面(図示略)に設けられた施解錠スイッチSW1が電気的に接続されている。そして、該施解錠スイッチSW1が操作されることで、前記送信回路1sからアンテナ1a,2aを介して車両2の車両側制御装置2cに施解錠信号が送信され、さらに該装置2cに制御可能に接続された車両搭載装置としてのドア施解錠制御装置2dに作動指令信号が送信され、当該車両2のドアを施解錠させる。
【0031】
本実施形態の携帯機1では、前記メカニカルキー10を収納部10aに収納することで低下するアンテナ1aの送信効率を補正し、車両2の車両側制御装置2cに対して無線信号の送信が良好に行われるようにする。ここで、「(アンテナ1aの)送信効率」とは、送信回路1sから送受信切替回路1e及びインピーダンス整合回路1mを介してアンテナ1aに伝送される電力[W]の内、当該アンテナ1aから送信される無線信号(電波)に変換される電力[W]の占める割合をいう。
【0032】
具体的には、図1(a)及び図1(b)に示すように、前記収納部10aにおいては、キー収納有無検出手段としてのプッシュスイッチSW2がその底部に配設されている。このプッシュスイッチSW2は、前記メカニカルキー10が挿入されていない状態ではオフの状態にあり、メカニカルキー10が収納部10aに収納(挿入)されると、その先端により押圧され、オンの状態となるように構成されている。このようにして、プッシュスイッチSW2に収納部10aに収納されたメカニカルキー10が接触して操作されることで、当該メカニカルキー10の収納の有無が的確に検知される(キー収納有無検出ステップ)。そして、該プッシュスイッチSW2は、前記CPU1cに電気的に接続され、そのオン・オフ状態の情報が入力されるようになっている。以上のようにして、本実施形態の携帯機1では、収納部10aへのメカニカルキー10の収納の有無がCPU1cによって認識されるようになっている。
【0033】
また、前記送受信切替回路1eが切り替えられることで送信回路1sが使用され、アンテナ1aより無線信号が送信される。そして、当該送信回路1sは、前記CPU1cにより制御され、前記メカニカルキー10を収納部10aに収納することで低下するアンテナ1aの送信効率を補正し、携帯機1から車両側制御装置2cへの無線信号の送信状態を適正化する。
【0034】
詳しくは、前記メカニカルキー10が収納部10aに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチSW2はオフ状態となっており、図2(a)を参照して、前記送信回路1sは、CPU1cから制御信号が入力されて制御され、その出力電力(補正前の出力電力)がA[dBm]に設定されている。この状態では、当該送信回路1sから送信強度A[dBm]の電力が前記インピーダンス整合回路1mを介してアンテナ1aに伝送され、該アンテナ1aにおいて、送信効率(メカキー非収納時の送信効率)B[dB]にて車両2に向けて無線信号が送信される。
【0035】
一方、前記メカニカルキー10が収納部10aに収納され、アンテナ1aによる送信効率がC[dB]だけ低下すると、該収納が前記プッシュスイッチSW2により検知され、図2(b)を参照して、前記送信回路1sはCPU1cから制御信号が入力されて制御され、その出力電力(補正後の出力電力)が(A+C)[dBm]に設定(変更)される。そしてこの状態では、その出力電力の増大分C[dBm]により、前記送信効率の低下分C[dB]が補償されるため、前述した図2(a)に示す状態と同様、送信効率(メカキー収納時の送信効率)(B−C)[dB]においては、車両2に向けて送信電力が{(A+C)+(B−C)}=(A+B)[dBm]の無線信号が送信される(通信効率補正ステップ)。この結果、メカニカルキー10の収納部10aへの収納によるアンテナ1aにおける送信効率の低下が補填され、当該送信回路1sによって無線信号の送信が適正な状態で行われるようになる。
【0036】
本実施形態の携帯機1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)プッシュスイッチSW2によりメカニカルキー10の収納部10aへの収納を検知し、CPU1cにより当該収納時に変化するアンテナ1aの送信効率を補正することで、携帯機1による無線信号の送信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機1の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機1が開発できるようになる。
【0037】
(2)CPU1cにより送信回路1sを制御し、その送信強度を増大させることで、メカニカルキー10の収納時に低下するアンテナ1aの送信効率を補償するようにした。このため、メカニカルキー10の収納時にアンテナ1aの送信効率が低下する場合に、該効率を確実に適正化することができるようになる。
【0038】
<第2実施形態>
本実施形態の携帯機1は、上記第1実施形態の携帯機1と同様な構成及び機能を備えており、以下に特に示す場合を除き、共通する箇所には同一又は対応する符号を付す等してその説明を省略する。
【0039】
本実施形態の携帯機1では、前記メカニカルキー10を収納部10aに収納することで低下するアンテナ1aの受信効率を補正し、車両2から携帯機1に送信される無線信号(例えば、携帯機1の存在を確認するためのWAKE信号、携帯機1からの認証用IDコード信号の送信を要求するためのリクエスト信号等)の受信が良好に行われるようにする。ここで、「(アンテナ1aの)受信効率」とは、アンテナ1aにより車両2からの無線信号として受信され、送受信切替回路1e及びインピーダンス整合回路1mを介して受信回路1rに伝送される電力[W]の内、当該受信回路1rにより信号として受信される電力[W]の占める割合をいう。
【0040】
具体的には、前記送受信切替回路1eが切り替えられることで受信回路1rが使用され、アンテナ1aからの無線信号が受信される。そして、当該受信回路1rは、前記CPU1cにより制御され、前記メカニカルキー10を収納部10aに収納することで低下するアンテナ1aの受信効率を補正し、携帯機1において、車両2の車両側制御装置2cからの無線信号の受信状態を適正化する。
【0041】
詳しくは、前記メカニカルキー10が収納部10aに収納されていない状態では、前記プッシュスイッチSW2はオフ状態となっており、図3(a)を参照して、前記受信回路1rは、CPU1cから制御信号が入力されて制御され、その受信感度(補正前の受信感度)がX(≦(D+Y))[dBm]に設定されている。この状態では、前記アンテナ1aにおいて受信効率Y[dB]にて、車両2から送信されたD[dBm]の受信電力の無線信号を受信する。すると、受信回路1rでは、入力電力は(D+Y)[dBm]となるので、前記受信感度X[dBm]がX≦(D+Y)(即ち、D≧(X−Y))の値に設定されておれば、当該受信回路1rで信号の受信が可能となる。そして、受信信号は前記インピーダンス整合回路1mを介して受信回路1rに伝送される。このとき、該受信回路1rにおいて、車両2からのリクエスト信号やIDコード信号として受信され、さらにCPU1cに伝送され、その後に携帯機1から送信される各種の無線信号の契機となる。
【0042】
一方、前記メカニカルキー10が収納部10aに収納され、アンテナ1aによる受信効率がW[dB]だけ低下すると、該収納が前記プッシュスイッチSW2がオン状態となることで検知される。そして、図3(b)を参照して、前記受信回路1rはCPU1cから制御信号が入力されて制御され、その受信感度(補正後の受信感度)がW[dBm]だけ高められる。そしてこの状態では、その受信感度の向上分W[dBm]により、前記受信効率の低下分W[dB]が補償されるため、前述した図3(a)に示す状態と同様、受信感度(補正後の受信感度)(X−W)[dBm]にて車両2からのWAKE信号やリクエスト信号として受信される。つまり、該受信回路1rでは、入力電力は{D+(Y−W)}[dBm]に低下するので、受信回路1rの受信感度が(X−W)[dBm]となっていると、(X−W)≦{(D+Y)−W}、即ち、図3(a)と同様のX≦(D+Y)の関係が成立し、当該受信回路1rにおいて信号の受信が可能となる。該受信信号は、さらにCPU1cに伝送され、その後に携帯機1から送信される各種の無線信号(認証用IDコード信号等)の契機となる(通信効率補正ステップ)。この結果、メカニカルキー10の収納部10aへの収納によるアンテナ1aにおける受信効率の低下が補填され、当該受信回路1rによって無線信号の受信が適正な状態で行われるようになる。
【0043】
本実施形態の携帯機1によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(3)プッシュスイッチSW2によりメカニカルキー10の収納部10aへの収納を検知し、CPU1cにより当該収納時に変化するアンテナ1aの受信効率を補正することで、携帯機1による無線信号の受信状態を高いレベルで維持することができるようになる。そしてこれにより、携帯機1の設計上の自由度が高められ、サイズの小型化やデザインの特殊化等の多様な仕様に柔軟に対応できる携帯機1が開発できるようになる。
【0044】
(4)CPU1cにより受信回路1rを制御し、その受信感度を増大させることで、メカニカルキー10の収納時に低下するアンテナ1aの受信効率を補償するようにした。このため、メカニカルキー10の収納時にアンテナ1aの受信効率が低下する場合に、該効率を適正化することができるようになる。
【0045】
尚、上記各実施形態は以下のように変形してもよい。
・上記各実施形態では、送信回路1sと受信回路1rとで一つのアンテナ1a及びインピーダンス整合回路1mを共用するようにしたが、本発明の技術的思想はこれに限られず、送信回路1sと受信回路1rとでそれぞれ専用のアンテナを使用し、これに伴いインピーダンス整合回路1mも各々独立したものとすることができる。
【0046】
・上記各実施形態では、非常用のメカニカルキー10はケース1bから完全に分離可能に構成したが、本発明の技術的思想には、非常用のメカニカルキー10をケース1bと一体的に構成したもの、例えば、同メカニカルキー10がケース1bに設けられた収納部に対し、同ケース1bの一部に設けた支軸を中心に回転可能に収納されるものも含まれる。
【0047】
・上記各実施形態では、携帯機1の収納部10aへのメカニカルキー10の収納の有無を検出するキー収納有無検出手段としてプッシュスイッチSW2を用いたが、該キー収納有無検出手段としては、その他の機械式スイッチを用いることもできる。さらに、機械式スイッチ以外に、例えば、磁気スイッチを使用することもできる。さらにまた、このようなスイッチに代えて各種のセンサを用いることも可能である。
【0048】
・上記各実施形態では、キー収納有無検出手段としてプッシュスイッチSW2を、携帯機1の収納部10aの一箇所(底部)のみに配設した。しかしこれに限られず、当該プッシュスイッチSW2を、該収納部10aに沿う2箇所以上の複数箇所に配設し、該各プッシュスイッチSW2,…のオン・オフ状態に基づき、メカニカルキー10の収納の有無に加え、前記収納部10aに対するメカニカルキー10の収納深さを検知するようにすることも可能である。このため、メカニカルキー10の収納の有無のみならず、メカニカルキー10が収納部10aの中途に挿入されている状態で無線通信が行われる場合を含め、当該メカニカルキー10の収納部における収納深さに応じて変化しうるアンテナ1aの通信効率の補正を行うことが可能となる。また、一の仕様の携帯機1に複数長さのメカニカルキー10を共用することが可能となり、携帯機1の設計上の自由度が向上するようにもなる。
【0049】
・上記各実施形態では、CPU1cにより送信回路1s又は受信回路1rを制御し、メカニカルキー10の収納により低下するアンテナ1aの送信効率又は受信効率を補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、該アンテナ1aの通信効率の補正に加え、メカニカルキー10の収納時にアンテナ1aのインピーダンスZaの見かけ上の変化が起こる場合、即ち、アンテナ1aと送信回路1s又は受信回路1rとの間のインピーダンスZが変化する場合において、CPU1cによりインピーダンス整合回路1mを制御し、アンテナ1aと送信回路1s又は受信回路1rとの間での電力(信号)の伝送効率の低下を補償することも可能である。これにより、アンテナ1aの送信効率又は受信効率を補正するだけでは対処できない送受信特性の低下を抑制し、携帯機1による無線信号の送受信状態をより広い範囲で適正化することができるようになる。
【0050】
・上記各実施形態では、CPU1cにより送信回路1s又は受信回路1rを制御し、メカニカルキー10の収納により低下するアンテナ1aの送信効率又は受信効率を補正することで、無線信号の送受信状態の悪化を抑制するようにした。しかしこれに限られず、メカニカルキー10の収納時に変化する無線信号の指向性が変化し、これによって携帯機1と車両2との間での無線信号の送受信状態が悪化する場合において、例えば、異なる指向特性を有する2つのアンテナと、該各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段としてのアンテナ切替回路とを携帯機1に具備させるとともに、CPU1cによりメカニカルキー10の収納の有無に応じて当該アンテナ切替回路を制御して前記各アンテナを切り替えさせ、これによりメカニカルキー10の収納時に変化する無線信号の指向性を補正するようにしてもよい。これにより、アンテナ1aの通信効率やインピーダンスに加え、さらに指向性を含めた無線信号の送受信状態を適正化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)は、本発明の各実施形態に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図、(b)は、同携帯機の構成図。
【図2】(a)は、本発明の第1実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のアンテナの送信効率の状態を示すブロック図、(b)は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のアンテナの送信効率の補正状態を示すブロック図。
【図3】(a)は、本発明の第2実施形態に係る携帯機において、メカニカルキーの非収納時のアンテナの受信効率の状態を示すブロック図、(b)は、同携帯機において、メカニカルキーの収納時のアンテナの受信効率の補正状態を示すブロック図。
【図4】従来例に係る携帯機及び車両において、相互の無線通信に使用される電気的構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0052】
1(1´)…携帯機、1a…(携帯機側)アンテナ、1c…CPU(携帯機側制御装置)、1m…インピーダンス整合回路、1s…送信回路、1r…受信回路、10…メカニカルキー、10a…収納部、2…車両、SW2…プッシュスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送信する送信回路又は受信する受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを収納部に取り出し可能に収納した携帯機であって、
前記収納部への前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出手段と、
前記キー収納有無検出手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記送信回路又は受信回路を制御し、前記アンテナの送信効率又は受信効率を補正する携帯機側制御手段とを備えたことを特徴とする携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
前記キー収納有無検出手段が、前記収納部に配設され、前記メカニカルキーの接触・非接触によりオン・オフ状態となるプッシュスイッチにより構成されている携帯機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯機において、
前記プッシュスイッチが、当該収納部に沿う複数箇所に配設され、
前記各プッシュスイッチのオン・オフ状態に基づいて、前記メカニカルキーの収納の有無、及び、前記収納部に対するメカニカルキーの収納深さを検知するようにした携帯機。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記携帯機側制御手段が、前記送信回路を制御し、その送信強度を増大させることで、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの送信効率を補償するか、又は、
前記受信回路を制御し、その受信感度を高めることで、前記メカニカルキーの収納時に低下する前記アンテナの受信効率を補償するようにした携帯機。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の携帯機において、
前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを調整するインピーダンス調整手段をさらに備え、
前記携帯機側制御手段が、前記インピーダンス調整手段に電気的に接続され、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて当該インピーダンス調整手段を制御して前記アンテナと送信回路又は受信回路との間のインピーダンスを補正するようにした携帯機。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の携帯機において、
異なる指向特性を有する少なくとも2つのアンテナと、
前記各アンテナを切り替えるアンテナ切替手段とを備え、
前記携帯機側制御手段が、前記メカニカルキーの収納の有無に応じて前記アンテナ切替手段を制御し、前記各アンテナを切り替えることで前記メカニカルキーの収納時に変化する前記無線信号の指向性を補正するようにした携帯機。
【請求項7】
車両搭載装置の無線通信制御に使用され、アンテナを介して無線信号を送受信する送信回路及び受信回路を有するとともに非常用のメカニカルキーを取り出し可能に収納した携帯機において、前記アンテナの送信効率又は受信効率を補償する通信効率補正方法であって、
前記メカニカルキーの収納の有無を検出するキー収納有無検出ステップと、
前記メカニカルキーの収納の有無に応じて、前記送信回路の送信強度又は前記受信回路の受信感度を補正する通信効率補正ステップとを備えたことを特徴とする通信効率補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−177643(P2009−177643A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15607(P2008−15607)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】