説明

携帯端末装置およびその制御方法

【課題】個別ユーザの履物、服装、携行物に応じた歩行ナビゲーション情報を提供する。
【解決手段】携帯端末装置の現在位置を取得する位置取得手段(2)と、物と該物に関連付けられた歩行影響情報を含む物別歩行影響テーブル(5A)を格納する格納手段(5)と、目的地を設定する目的地設定手段(3)と、装置に近接する物を識別する近接物識別手段(4)と、物別歩行影響テーブルを参照して近接物識別手段で識別された物に応じて得られる歩行影響情報、位置検出手段で取得された現在位置、および、目的地設定手段で設定された目的地に基づき生成される歩行ナビゲーション情報を報知する報知手段(6)を備える。ユーザの状況(靴A、ジーパンB、バッグC)に応じた精度の高い歩行ガイドを行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末装置およびその制御方法に関し、特に、携帯端末装置を携帯するユーザが歩行時に、ユーザが着用したり携行したりする物(靴、衣服、バッグなど)に応じた歩行ナビゲーション情報を提示する技法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などで経路を表示し、誘導するカーナビゲーションシステムがよく使われている。カーナビゲーションシステムでは、目的地を入力すると経路を探索し、経路だけでなく、道路状況を考慮した目的地までの所要時間もユーザに知らせる。自動車分野以外では、携帯通信端末向けに、歩行者に対し目的地までの経路や現在位置、所要時間を知らせるシステムが存在する。また、歩行者の標準の歩行速度を取得し、前記歩行速度で到着希望時刻に間に合わないと判断するとユーザにどの程度急ぐ必要があるかを伝える技術(特許文献1、2を参照されたい。)も開示されている。
【特許文献1】特開平10-293038号公報
【特許文献2】特開2003-244767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
歩行者の目的地までの所要時間は、自動車とは全く違った要因で変化する。その一つが、歩行者が履いている履物である。履物の種類や形状、履く頻度によって、歩き易さ、ひいては標準の速度と最高の速度共に大きく変わる場合がある。履物の他にも、大きな鞄や重い鞄を携行するとき、着物・浴衣を代表とする和服などが歩行速度や歩き易さに大きく影響を与える。また、雨や風等の天候、靴擦れ等のケガなどによっても、ユーザの歩行速度は変化し、一様なナビゲーションでは対応出来ない。以上のような要因を考慮せずに一様な最高速度を設定すると、ユーザに無理な速度で歩くまたは走ることを求め、転倒や衝突の危険性が高くなる、または反対に、間に合う可能性があるのに間に合わないという誤った判断を行うことになる。また、このようなユーザの歩行速度に影響を与える要因を考慮しないで到着時刻を予想しても役に立たない場合が多く発生する。
【0004】
ところで、近年、商品のタグを無接触で読み取ることを可能にするRFIDタグが開発されており、RFIDタグの低価格化が進んでいる。RFIDタグにはその商品別に固有のIDが付与されており、その物が何であるかを知ることができる。しかしながら、そのほとんどが商品売買・POS或いは物流上の商品管理の用途であり、これを歩行ナビゲーションに応用する技法は開発されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した諸課題を解決すべく、第1の発明による携帯端末装置は、
前記携帯端末装置の現在位置を取得(測位)する位置取得手段(GPS機能など)と、
物と該物に関連付けられた歩行影響情報(例えば、靴の場合にはその靴で歩行したときの標準速度・最高速度や、その靴が標準速度・最高速度を低下させる、或いは、増加させる割合・数値など)を含む物別歩行影響テーブルを格納する格納手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記携帯端末装置に近接する物(即ち、ユーザが身に着けている服飾、履物、バッグなどの携行物など)を識別する近接物識別手段(RFIDリーダなど)と、
前記物別歩行影響テーブルを参照して前記近接物識別手段で識別された物に応じて得られる歩行影響情報、前記位置検出手段で取得された現在位置、および、前記目的地設定手段で設定された目的地に基づき生成される歩行ナビゲーション情報(例えば、目的地への予想到着時刻、予想移動速度、歩行速度増減指示などをディスプレイ、スピーカなどで)を報知する報知手段(バイブレータ、ディスプレイ、スピーカなど)と、
を備えることを特徴とする。
【0006】
また、第2の発明による携帯端末装置は、
前記目的地設定手段が、前記目的地への希望到着時刻をさらに設定し、
前記位置検出手段で取得された現在位置、前記設定された目的地、および、該目的地への希望到着時刻に基づき、該希望到着時刻に到着するために必要な移動速度を算出する必要移動速度算出手段を、さらに備え、
前記報知手段は、
前記必要移動速度算出手段で算出された必要な移動速度が、前記近接物識別手段で識別された物に応じた歩行影響情報に基づき求められる最高速度以下の場合のみ、前記必要な移動速度で歩行するよう報知する(例えば、必要な移動速度の数値自体を報知する、或いは、「もう少し急いでください」、「現行速度維持」などを音声、振動、視覚情報で提示する)、
ことを特徴とする。
【0007】
また、第3の発明による携帯端末装置は、
(前記位置取得手段によって取得されたある時間内の移動距離を用いて、)前記携帯端末装置(即ち、これを携行するユーザ)の現在移動速度を算出する現在移動速度算出手段をさらに備え、
前記報知手段が、
前記現在移動速度が前記必要な移動速度よりも小さい場合、前記必要な移動速度で歩行するよう報知する、
ことを特徴とする。
【0008】
また、第4の発明による携帯端末装置は、
前記携帯端末装置を携帯しているユーザの歩数をカウントする歩数カウント手段と、
前記歩数カウント手段でカウントされた、所定の距離における歩数に基づき、現在の歩幅を算出し、さらに、該歩幅と前記必要な移動速度とから必要な歩調を算出する歩調算出手段と、をさらに備え、
前記報知手段が、前記歩調算出手段で算出された歩調を(例えば、振動パターン、音声情報、フラッシュパターンや文字などの視覚情報で)報知する、
ことを特徴とする。
【0009】
また、第5の発明による携帯端末装置は、
前記報知手段は、
前記必要な移動速度が、前記近接物識別手段で識別された物に応じた歩行影響情報に基づき求められる最高速度を超える場合、前記希望到着時刻には間に合わない旨を報知する(例えば、3分遅れるなどの数値を提示する)、
ことを特徴とする。
【0010】
また、第6の発明による携帯端末装置は、
前記近接物識別手段で識別された物、および、該物が識別されている間において、前記位置取得手段によって取得された所定の時間あたりの移動距離(例えば、ある靴やある着物を着用しているときの速度に相当する)に基づき、前記物別歩行影響テーブルをカスタマイズ(更新)するカスタマイズ手段、
をさらに備える特徴とする。
【0011】
また、第7の発明による携帯端末装置は、
前記近接物識別手段がRFIDリーダであり、該RFIDリーダが前記物に装着されているRFIDタグに基づき近接する物を識別する、ことを特徴とする。
【0012】
また、第8の発明による携帯端末装置は、
無線通信手段を使って、(ネットワークを介して例えば気象情報提供サーバなどから)現在の天候を取得する天候情報取得手段をさらに備え、
前記格納手段が、
天候と該天候に関連付けられた歩行影響情報(例えば、雨の場合には、歩きやすさが低下するため、雨の中での標準速度や、雨が歩行速度を低下させる割合・数値など)を含む天候別歩行影響テーブルを格納し、
前記報知手段が、
前記天候別歩行影響テーブルをさらに参照して、前記天候情報取得手段で取得された天候に応じて得られる歩行影響情報に基づき、前記計算された予想到着時刻および予想移動速度を補正する(そして、該補正された予想到着時刻および予想移動速度を報知する)、
ことを特徴とする。
なお、前記識別された物に対応する歩行影響情報がない場合は、他の複数の物およびこれに関連付けられた歩行影響情報から、該対応する歩行影響情報を推定する推定手段を設けることが好適である。
【0013】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
例えば、本発明を方法として実現させた第9の発明による携帯端末装置の制御方法は、
測位手段(GPS機能)を使って前記携帯端末装置の現在位置を取得(測位)する位置取得ステップと、
(物と該物に関連付けられた歩行影響情報を含む物別歩行影響テーブルを格納手段(メモリ)に格納する格納ステップと、)
目的地を設定する目的地設定ステップと、
近接物識別手段を使って前記携帯端末装置に近接する物を識別する近接物識別ステップと、
物と該物に関連付けられた歩行影響情報を含む物別歩行影響テーブルを参照して前記近接物識別ステップで識別された物に応じて得られる歩行影響情報、前記位置検出ステップで取得された現在位置、および、前記目的地設定ステップで設定された目的地に基づき生成される歩行ナビゲーション情報(例えば、目的地への予想到着時刻、予想移動速度、歩行速度増減指示、或いは識別された物を持つユーザに適した歩行ルートなどをディスプレイ、スピーカなどで)を報知する報知ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端末を携帯しているユーザの物(履物、衣服、バッグなど)を近接物識別手段によって自動的に識別し、その物による歩行への影響を考慮した歩行ナビゲーション情報を容易に提供することが可能となる。本発明では、ユーザが身に付けている物を自動的に識別・判断し、そのときのユーザの状況に応じた歩行ナビゲーション情報を提供できる。従って、ユーザは目的地を設定するという簡易な操作だけで、従来よりも非常に精度の高い、個別ユーザの履物、服装、携行物に応じた歩行ナビゲーション情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以降、諸図面を参照しながら、本発明の実施態様を詳細に説明する。
<実施例1>
図1は、本発明による携帯端末装置の基本的な構成を示すブロック図である。図に示すように、本発明による携帯端末装置1は、位置取得手段(GPS機能)2、ルート決定手段3、近接物識別手段(RFIDリーダ)4、格納手段5、報知手段6、および、カスタマイズ手段7を備える。位置取得手段2は、ユーザが携行している携帯端末装置の現在位置を測位し、ディスプレイ上(図示せず)に現在位置を表示する。ユーザは、ディスプレイ上で目的地を選択し、ルート決定手段3は、測位した現在位置から目的地までの最適な歩行ルートを決定し、これによって、目的地までの所要距離が決定される。近接物識別手段4は、自端末(即ち、ユーザ)から見て近接エリアAR内(即ち、タグ読み取り可能エリア)に位置する物に装着されているRFIDタグを非接触・無線方式で読み取る。近接エリアARは、RFIDリーダまたはRFIDタグ(トランスポンダ)の性能やその使用規格によるが、RFIDリーダから半径1m程度までのもの、或いは、半径2m程度まで読み取り可能なものを使用することが、自己の所有物と他人の所有物との誤認識を避けるためには好適である。本ケースでは、ユーザの胸ポケットに収容されている端末装置1から半径2mが近接エリアARとなっている。
【0016】
本実施例では、履物として靴AのRFIDタグID1、衣服としてジーパンBのRFIDタグID2、携行物としてキャリーバッグCのRFIDタグID3が近傍にある物、即ち、近接物として識別される。ユーザの着用物、携行物以外も検出される場合もあるが、そのときは例えば、継続的に検出されないもの、或いは、検出される時間が短いものは他人の物であると判定して近接物から除外したり、ユーザ以外の物・人物が周辺に無い状態で予めユーザの近接物だけを識別させ、その際に識別されたものだけに限定したりする操作を行う。
【0017】
報知手段6は、識別された近接物のタグID1、ID2、ID3を検索キーとして格納手段5に格納されている物別歩行影響テーブル5Aを検索して、該当する歩行影響情報を読み出す。この例では、タグID1から物が靴Aであることが分り、靴Aを履いているときに歩き易さ(即ち、歩行速度)が20%低下することを示す歩行影響情報が得られる。同様に、ジーパンBを着用しているときに、歩き易さ(歩行速度)が10%増加することを示す歩行影響情報が得られ、キャリーバッグCを携行しているときに、歩き易さ(歩行速度)が40%低下することを示す歩行影響情報が得られる。報知手段6は、下記の式および演算手段を使って、識別された物を使っているユーザの予想歩行速度、予想到着時刻などを計算し、これらを歩行ナビゲーション情報としてユーザに報知する。或いは、報知手段とは別に上記歩行ナビゲーション情報を算出する計算手段を設けてもよい。
【0018】
予想歩行速度=ユーザ標準歩行速度×(1−(靴Aの影響0.2)+ジーパンBの影響0.1−(キャリーバッグCの影響0.4))
=ユーザ標準歩行速度×0.5
予想到着時刻=現在時刻+予想所要時刻
=現在時刻+設定ルート距離/予想歩行速度
このように、図1の状況では、ユーザの普段の歩行速度の50%の歩行速度になることが推定され、普段の2倍の所要時間がかかることが自動的に算出され、これに基づく歩行ナビゲーション情報がユーザに提供される。
【0019】
RFIDタグには、その商品別に固有ID(一般には固有の商品コード)が格納されており、その固有IDを読み取ることができれば、予め構築してある固有IDデータベース(或いはインターネット上のサーバに構築されてある商品コードデータベース)を参照することによって、その物の属性までほぼ完全に知ることができる。例えば、RFIDタグに収容される固有IDがJANコードである場合には、下の表のような固有IDデータベースを使用する。JANコードの場合には、そのコード自身に国名、メーカ名、商品名を規定するコードまでは格納されているが、物の属性情報である分類、形状情報、重量情報、歩行影響情報などの追加情報はJANコードに含まれていない情報であるため、これらの追加情報をRFIDタグの予備フィールドに含めるか、或いは、予め追加情報を含むデータベースを用意・設定しておく必要がある。
【表1】

【0020】
なお、本発明は、必ずしも識別された物のメーカ、商品名、属性、および、歩行影響情報まで知ることを必須としない。本発明による端末は、その物を保持しているときの歩行への影響を学習するカスタマイズ機能を持っているため、物同士を区別して、物毎に歩行影響情報を測定して、それらの物を使うユーザに特有の物別歩行影響テーブルを構築することが可能であるため、その物の属性(例えば、A社のスニーカXであるなど)または歩行影響情報を入手しなくても、ユーザに適応させた歩行ナビゲーション情報を与えることができる。
【0021】
後で詳細に説明するが、例えば、履物の種類、鞄の種類、鞄の容量、携行物の重量などは歩行速度に大きな影響を与える要因である。商品の詳細な属性まで規定された固有IDデータベース(或いはインターネット上の商品コードデータベース)を参照することができれば(或いは、物の種類、容量、重量などの歩行に影響を与える項目を規定するフラグをRFID自体が持っていてもよい。)、読み取った固有IDから、その物の属性、即ち、履物の種類、鞄の容量、携行物の重量まで知ることが可能である。従って、カスタマイズ機能を使わなくても、例えば、履物の場合には、予め履物の種類・形状などを考慮した履物別歩行影響テーブルを構築しておき、このテーブルを参照することによって、ユーザの現在の履物を考慮した歩行ナビゲーション情報を提供することが可能である。
【0022】
さらに、ユーザの歩行速度には様々な物が影響し、端末を携帯するユーザは、歩行速度に影響を与える物を通常は複数個、着用、または携行している。例えば、図1に記載したように靴A、ジーパンB、キャリーバッグCなどの場合である。図1では、簡易な式で複数の物から総合的な歩行影響情報を計算し、その状況に応じた予想歩行速度を計算したが、図26のような3次元マップ形式の歩行影響情報テーブルを構築して、このようなマップから求めることもできる(これについては後で詳述する)。
【0023】
<実施例2>
本発明を携帯端末装置として、最も普及している携帯電話機に適用した実施例を説明する。図2は、本発明を適用した携帯端末(携帯電話端末)のブロック図である。図に示すように、本発明による携帯端末44は、現在位置を取得する位置取得手段15と、現在時刻を取得する時刻取得手段14と、ユーザ16が移動したい目的地、および目的地までの経路、及び到着希望時刻などの移動条件を設定する移動条件設定手段13と、位置取得手段15によって取得した現在位置、および時刻取得手段14によって取得した現在時刻、および移動条件設定手段13によって設定した移動条件に基づいて、目的地に到着希望時刻までに到着するための適切な歩行速度を決定する必要歩行速度決定手段12と、必要歩行速度決定手段12に基づいて、ユーザ16に必要な歩行速度を知らせる歩行ガイド手段10と、現在のユーザ16の最高歩行速度を推定する最高歩行速度推定手段20とを備える。
【0024】
携帯端末44は、さらに、最高歩行速度推定手段20に基づく最高歩行速度と、必要歩行速度決定手段12に基づく必要歩行速度との比較により前記移動条件の達成が可能か否かを判定する移動条件達成判定手段19と、ユーザ16の歩行速度を取得する歩行速度取得手段28と、天候情報を取得する天候情報取得手段21と、ユーザ16の歩行間隔を取得する歩行間隔取得手段24とを備える。
【0025】
携帯端末44は、さらに、歩行間隔取得手段24により取得した歩行間隔に基づいて、ユーザ16の歩行に異常があるかどうかを判定する第1歩行異常判定手段23と、歩行速度取得手段28により取得した過去の歩行速度に基づいてユーザ16の標準歩行速度を推定する標準歩行速度推定手段26と、歩行速度取得手段28により取得した現在の歩行速度と、標準歩行速度推定手段26により推定した標準歩行速度との比較によりユーザ16の歩行に異常があるかどうかを判定する第2歩行異常判定手段25と、ユーザ16が現在、着用している靴や衣服または携行物(鞄など)の情報を取得する物情報取得手段(近接物取得手段、RFIDリーダ)27と、外部(インターネット上のサーバ)と通信する通信手段22とを備える。
【0026】
必要歩行速度決定手段12は、位置取得手段15によって取得した現在位置、および時刻取得手段14によって取得した現在時刻において、移動条件設定手段13によって設定した移動条件に従い、目的地に到着希望時刻までに到着するために必要な速度を計算する。
【0027】
第1歩行異常判定手段23は、歩行間隔取得手段24によって得られる歩行間隔を記憶し、前記得られた歩行間隔の中で高い頻度で取得される値を統計的に算出する。ユーザが本端末を携帯しているときは、常に歩行間隔のデータの統計をとり、普段のデータがどのように分布するかを記憶する。歩行間隔または速度において、データの統計を調べた結果、普段のデータの分布と明らかに異なる場合は、ユーザ16の歩行に異常があると判断し、最高歩行速度推定手段20に伝える。
【0028】
第2歩行異常判定手段25は、標準歩行速度推定手段26によって得られる標準歩行速度と、歩行速度取得手段28によって得られる歩行速度を比較し、一定時間内の歩行速度の標準値が標準歩行速度よりもある一定以上低い場合には、ユーザ16の歩行に異常があると判断し、最高歩行速度推定手段20に伝える。
【0029】
<移動条件設定手段>
図3は、図2に示した移動条件設定手段13の詳細なブロック図である。図に示すように、移動条件設定手段13は、ユーザ16によって設定されたアラーム時間にアラームを鳴らすアラーム手段31と、アラーム時間と位置取得手段15によって得られる位置情報と時刻取得手段14にて得られる時刻に基づいて、これから向かう目的地及び経路と目的地への到着を希望する時間を推定する経路推定手段29と、経路推定手段29により推定された経路でよいかどうかをユーザ16に確認し、推定された経路で了承が得られない場合にはユーザ16からの変更操作を受付け、経路を確定させる経路登録手段30とから構成される。
【0030】
経路推定手段29は、常時位置情報と時間を組み合わせて記憶する。記憶した前記位置情報と時間の中で、そのアラーム時間の現在位置を出発地とし、アラーム時間を基準に調べて、頻繁かつ同じ方向に歩いて通る一連の場所を取り出す。一定時間以上移動しない場所や交通機関の停車場等、歩行の終わる場所を目的地として設定し、出発地から目的地までの一連の場所を経路とする。速度と目的地到着までに要した時間に基づいて、経路内の何箇所かの地点の目的地までの距離も計算する。また、毎回各地点を通る時間が近ければ、前記経路の最後の場所(目的地)に到着する標準的な時間(到着予定時間)も取り出す。
【0031】
経路登録手段30は、経路推定手段29で推定された経路と目的地の時間を表示し、ユーザ16に確認させ、登録する。また、ユーザ16に経路を表示し、選択された経路と目的地での時間を登録する。
【0032】
図4は、本端末で使用する経路情報のデータフォーマットの一例を示す図である。経路推定手段29において推定され、経路登録手段30によって登録される経路情報の内容は、1経路において図に示すように、「目的地の位置情報と(存在する場合)名称」、「出発地の位置情報と(存在する場合)名称」、「到着希望時刻」、「出発地から目的地までの距離」1つずつと、経路内の何箇所かの地点においての「位置情報(緯度と経度)」、「目的地までの距離」、「信号、階段等の道路状況」である。以上の1ブロックの経路情報が、移動条件として移動条件設定手段13から必要歩行速度決定手段12に渡される。
【0033】
<歩行ガイド手段>
図5は、図2に示した歩行ガイド手段10の詳細なブロック図である。図に示すように、歩行ガイド手段10は、必要歩行速度決定手段12によって得られる必要歩行速度で歩くために必要な歩行間隔を計算する必要歩行間隔計算手段32と、ユーザ16への必要歩行速度の報知の開始と終了や、報知すべき内容の判定を行う報知判定手段34と、報知判定手段34の判定結果に基づき、必要歩行間隔計算手段32によって得られる必要歩行間隔、または間に合わないと判断したということを、振動または音または表示でユーザ16に伝える報知手段33とから構成される。
【0034】
必要歩行間隔計算手段32は、歩行間隔取得手段24によって得られる現在の歩行間隔と、歩行速度取得手段28によって得られる歩行速度に基づいて、現在の歩幅を計算し、必要歩行速度決定手段12にて得られる必要歩行速度を前記歩幅で割り、現在の歩幅のままで必要歩行速度で歩くために必要な歩行間隔を計算する。
【0035】
報知判定手段34は、歩行速度取得手段28によって得られる現在歩行速度と、必要歩行速度決定手段12にて得られる必要歩行速度を比較し、必要歩行速度が現在歩行速度を上回る時、報知手段33に必要速度の報知を指示する。報知判定手段34は、さらに、報知手段33が必要歩行速度を報知している状態で、標準歩行速度推定手段26にて得られる標準歩行速度と、必要歩行速度決定手段12にて得られる必要歩行速度を比較し、標準歩行速度が必要歩行速度を上回る場合には、報知手段33に必要速度の報知を停止するよう指示する。
【0036】
報知判定手段34は、さらに、歩行速度取得手段28にて得られる歩行速度によってユーザ16が歩行停止していると判断した場合には、標準歩行速度推定手段26にて得られる標準歩行速度と、必要歩行速度決定手段12にて得られる必要歩行速度を比較し、必要歩行速度が標準歩行速度を上回る場合に、報知手段33に必要速度の報知を指示する。報知判定手段34は、さらに、移動条件達成判定手段19によって移動条件を達成出来ないことが判定された場合には、報知手段33に間に合わないと判断したことをユーザ16に報知するよう指示する。
【0037】
図6は、本端末で行われる歩行ナビゲーション(ガイド)処理を一例を説明するフローチャートである。アラーム時間の1時間前から、歩行ガイドの処理を始める。図に示すように、アラームの設定にアラームが鳴ると(ステップs1,s2)、一定時間ごとに現在地の情報を取得し、出発地を出たか調べる(ステップs3)。出発地を出たことがわかれば、近接物のRFIDの情報と天候情報を取得する(ステップs4,s7)。RFIDの情報に基づき、その物の属性(種類、形状など)を特定する。例えば、物が靴である場合には、靴の種類と形状の情報に基づいて、標準歩行速度を推定し(ステップs6)、一定時間間隔で現在位置を取得する(ステップs8)。取得した現在位置が目的地であれば歩行ガイドを終了する(ステップs9,s10)。目的地に到着していなければ、現在の歩行速度を取得し、到着希望時刻に目的地へ到着するために必要な速度を計算し、歩行に異常があるかどうかを調べ、最高歩行速度を推定する(ステップs11,s12,s13,s14)。
【0038】
現在の歩行速度と、必要な歩行速度と、最高歩行速度を比較し、現在の速度で間に合ないが、急げば間に合う場合、つまり必要な速度が推定される最高歩行速度より遅ければ、必要な速度の歩行間隔のリズムをユーザ16に伝え(図7(a),(b))、到着予定時間までの残り時間を画面に表示する(図8(a)、ステップs15,s16,s17)。急いでも間に合わない場合には、歩行間隔を合わせることが出来ないリズムをユーザ16に伝える(図7(c)、ステップs16,s19)。
【0039】
図7は、本端末がユーザに報知する歩行リズムの一例を示すタイミングチャートである。図に示すように、図7(a)は、比較的遅い速度での歩行感覚を伝える時の振動または音のリズム、図7(b)は比較的速い速度での歩行間隔を伝える時のリズム、図7(c)は間に合わないと判断した時に伝えるリズムの例である。歩行間隔(1歩の間隔)を表すリズムを、振動や音でユーザ16に伝える。現在必要な速度を、歩行速度取得手段28によって得られる現在の歩幅で割った時間間隔(歩行間隔)を表し、歩幅をそのままに前記歩行間隔で歩くと、必要な速度で歩くことが出来、到着希望時刻に目的地へ到着することが可能となる。(a)は比較的長い間隔をあけて振動する、または音を鳴らすため、歩幅を変えずに(a)の振動、音にあわせて歩くと比較的遅い速度で歩くことになる。また(b)の間隔は短く、歩幅を変えずに(b)の振動、音にあわせて歩くと速くなる。このように、歩幅をそのままで、どの程度の歩行間隔で歩けばよいかを伝えることによって、より正確に速度を伝えることが可能となる。携帯端末の画面を見ずに、最適な速度での歩行を可能にすることで、より最適な歩行ガイドが可能となる。最高歩行速度で走っても到着希望時刻に間に合わないと推定される時には、合わせて歩くことの出来ないリズムをユーザ16に伝える。(c)は長い時間の振動または音と短い時間の音が組み合わされていて、振動、音に1歩1歩を合わせて歩くことが出来ず、ユーザ16に急いでも間に合わないということを伝えることが可能となる。
【0040】
図8は、本端末が歩行ナビゲーション情報としてユーザに提示する画面インターフェイスを示す図である。図に示すように、図8(a)は歩行ガイド中で、現在の速度では間に合わず、より速い速度をユーザ16に伝えている時の表示画面の例である。多摩川駅が目的地、7時20分が到着希望時刻として設定されており、残り時間と急がなければいけないことを表示している。図8(b)は、到着希望時刻に間に合わない(移動条件達成が不可能)と判断したときの表示画面の例であり、間に合わないことを表示している。間に合うために必要な速度や、間に合わないということは、振動や音で伝えるため、ユーザ16は表示画面を見なくても知ることが可能であるが、時間を知ることが出来ない。到着希望時刻までの残り時間等の時間情報は、画面に表示することで、確認を可能とする。
【0041】
<最高歩行速度推定手段>
図9は、図2に示した最高歩行速度推定手段20の詳細なブロック図である。図に示すように、最高歩行速度推定手段20は、通信手段で外部から得た天候情報に基づいて、天候の影響を考慮して最高歩行速度を推定する天候影響速度推定手段36と、物情報(例えば靴)に基づいて、物が歩行に与える影響を考慮して最高歩行速度を推定する物最高歩行速度記憶推定手段37と、天候影響速度推定手段36によって得られる天候影響速度と、物最高歩行速度記憶推定手段37によって得られる物最高歩行速度とに基づいて最高歩行速度を推定する総合最高歩行速度推定手段35とから構成される。
【0042】
天候影響速度推定手段36は、天候情報と歩行速度の組み合わせを記憶し、前記記憶と、推定する際の天候情報に基づいて、天候影響速度を推定する。天候情報において、「雨量、風速、気温」の3項目をそれぞれある一定の値で分け、その値での最高歩行速度の平均を計算する。現在の天候情報の入る範囲での平均の最高歩行速度と一番高い平均の最高歩行速度の差分にある値をかけて、天候により推定最高歩行速度へ影響する分の速度とする。
【0043】
総合最高歩行速度推定手段35は、天候影響速度推定手段36によって得られる天候影響速度にある数をかけて、物最高歩行速度記憶推定手段37によって得られる物(靴)最高歩行速度から引いたものを最高歩行速度とする。また、第1歩行異常判定手段23または第2歩行異常判定手段25において、ユーザ16の歩行に異常があると判断されている場合には、前記推定された最高歩行速度を所定の割合で低くする。
【0044】
<物最高歩行速度記憶推定手段>
図10は、図9に示した物最高歩行速度記憶推定手段37の詳細なブロック図である。図に示すように、物最高歩行速度記憶推定手段37は、物(典型的には靴)のIDと種類と形状と最高歩行速度を記憶する物最高歩行速度記憶手段39と、ユーザ16が着用・携行している物での最高歩行速度を推定する物最高歩行速度推定手段38と、ユーザ16に合うよう物最高歩行速度記憶手段39の記憶内容を修正する物最高歩行速度記憶修正手段40とから構成される。
【0045】
ユーザ16の最高歩行速度と着用・携行している物(典型的には靴)のIDと種類と形状などが物最高歩行速度記憶手段39に記憶される。物最高歩行速度記憶手段39の以前の記憶内容に基づいて、現在ユーザ16が着用・携行している物の最高歩行速度の推定を行う。以前、着用・携行している物、例えば靴である場合、以前に記憶された最高歩行速度を用いる。
【0046】
以下、本明細書では歩行(特に歩行速度)に影響を与える「物」の代表の1つとして靴(履物)を例示して本発明を説明する。初めて履く靴である場合、以前に履いている他の靴の記憶内容を基に最高歩行速度を推測する。初期状態で、靴の情報と最高歩行速度の記憶がない状況でも、初めて履く靴の最高歩行速度を推測するため、靴の種類と形状と速度の一般的な関係の値をデフォルトの値として物最高歩行速度記憶手段39の中に入れておく(図16)。デフォルトの値はユーザ16個人の靴の情報と最高歩行速度の関係と差があるため、推定された最高歩行速度と実際の最高歩行速度の誤差に基づいて、カスタマイズ機能によってデフォルトの値を変動(カスタマイズ)して、よりユーザ16に合った物(靴)最高歩行速度の推測を可能とする。
【0047】
物最高歩行速度記憶手段39では、靴のIDと種類と形状と最高歩行速度とを記憶する。靴の種類、形状として記憶されるのは、靴の種類(図11(a)〜(g)のどれか)、ヒールの高さ(図12(a))、ヒールの太さ(図12の(b)、固定方法(図13、図14)の4つである。靴の種類は、スニーカ、サンダル、ミュール、パンプス、ブーツ、ぺったん靴、げたの7種類(図11)に分類し、一般的な歩きやすさの順番をつける。例えば、最も歩きにくいものを1、歩きやすいものを7とする。ヒールの高さは0cm〜10cmとする。ヒールの太さは1cm〜5cmとする。靴と足との固定方法は、「かかとがあるか」、「かかとがない場合は後ろにベルトがあるか」、「足の甲を固定するものがあるか」で6つに分類し(図13、図14)、一般的な歩きやすさの順番をつける。例えば、最も歩きにくいものを1、歩きやすいものを6とする。
【0048】
靴の種類と形状を4つの項目において数値を前記のように置き換え、靴のID、歩行速度取得手段28によって得られる実際のユーザ16の靴ごとの最高の歩行速度と組み合わせて記憶する。以上の記憶内容は、靴の種類毎に分けて記憶する。取得した最高歩行速度が変われば記憶内容を更新する。ただし、第1歩行異常判定手段23または前記第2歩行異常判定手段25において、ユーザ16の歩行が異常だと判断されている時は、取得した最高歩行速度には更新しない。また、靴の形状と種類が同じでもIDが違えば更新はせず、別に記憶する。初期状態では、実際の記憶数値がないため、一般的な靴の種類と形状と最高歩行速度の関係がデフォルトの値として記憶されている。IDは、デフォルトの値だとわかるIDをつける。デフォルトの値は各項目を一定間隔で変え、全範囲に均等に存在させる(図16)。
【0049】
物最高歩行速度推定手段38は、靴の速度の推定を、靴の種類と形状とIDの記憶に基づいて行う。靴のRFIDの情報から靴の種類と形状とIDの情報を取り出す。物最高歩行速度記憶手段39によって記憶された以前の記憶の中で、同じIDの靴の情報があるかを調べ、存在する場合には前記同じIDの靴の以前の最高歩行速度を、推定される靴の最高歩行速度とする。また、同じIDの記憶はなく、同じ形状と種類の靴の記憶があった場合には、同じ形状と種類の靴の最高歩行速度をある一定の割合で減らして、推定される靴の最高歩行速度とする。以前の記憶に同じIDの記憶も同じ形状と種類の記憶もなければ、他の靴の記憶内容やデフォルトで入っている記憶内容からサンプルとして8つの記憶を取り出し、前記8つのサンプルに基づいて推測を行う。
【0050】
前記サンプルとして推測に用いる記憶は、同じ靴の種類の記憶で、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目において、
・3項目全てが推測対象の靴より歩きやすい記憶のなかで最も近いもの
・3項目全てが推測対象の靴より歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうちヒールの高さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうちヒールの太さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうち固定方法のみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうちヒールの高さとヒールの太さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうちヒールの太さと固定方法のみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
・3項目のうち固定方法とヒールの高さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの
の8つ(図15)とする。
【0051】
最高歩行速度を推測する靴(推測対象の靴)と前記サンプル8つとのそれぞれの近さを調べるために、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目において、どれだけ変わると最高歩行速度が1km/h変化するかで規格化し、2点間の距離を計算する。推測対象の靴の最高歩行速度の計算は、サンプルの最高歩行速度を、サンプルと推測対象の靴との距離でそれぞれ割って、全て合計する。前記合計した数値にサンプル分の距離全てをかけ、サンプルの距離の合計で割り、計算結果を推測対象の靴の最高歩行速度とする。
サンプル1の対象までの距離:l1 速度:v1
サンプル2の対象までの距離:l2 速度:v2
サンプル3の対象までの距離:l3 速度:v3
サンプル4の対象までの距離:l4 速度:v4
サンプル5の対象までの距離:l5 速度:v5
サンプル6の対象までの距離:l6 速度:v6
サンプル7の対象までの距離:l7 速度:v7
サンプル8の対象までの距離:l8 速度:v8

【0052】
物最高歩行速度記憶修正手段40は、推定した最高歩行速度と実際の最高歩行速度が異なった場合に、誤差をデフォルトの値に反映させる。前記誤差の絶対値にある値をかけたものを、実際の最高歩行速度が推測した最高歩行速度より高ければデフォルトの値の最高歩行速度に加算し、実際の最高歩行速度が推測した最高歩行速度より低ければデフォルトの記憶内容の最高歩行速度から減算する。また、物最高歩行速度記憶手段39によって実際の最高歩行速度の記憶を1つ書き加えられるごとに、ある範囲内(デフォルトの値の間隔を一辺とし、加わった実際のデータを中心とする立方体内)にあるデフォルトの値を消す。
【0053】
また、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目のそれぞれにおいて、どれだけ変わると最高歩行速度が1km/h変化するかを調べる。2項目(a,bとする)が同じで1項目(cとする)が異なる同じ種類の2つの靴(A,B)と、前記2つの靴の最高歩行速度をサンプルとして取り出し(図17)、1項目(a)が前記2つの靴(A,B)と同じで、2項目(b,c)が前記2つの靴のどちらとも異なる同じ種類の靴(C)の最高歩行速度を、前記2つの靴(A,B)の最高歩行速度と項目cの差に基づいて推測する(図18)。推測した最高歩行速度と靴Cの実際の最高歩行速度の差を、項目bの差による最高歩行速度の変化として記憶する。前記項目内の差による最高歩行速度の変化の記憶内容を用い、各項目の変化と最高歩行速度の変化の関係のグラフ(図19)を作成し、最高歩行速度は最悪の場合からどれだけ速くなるかで表す。ある項目のある値がどれだけ変わると1km/h速くなるかは、ある値での傾きで1km/hを割ることによって計算する。
【0054】
図11は、靴(履物)の種類7例の形状を示す図である。図に示すように、(a)はスニーカ、(b)はサンダル、(c)はミュール、(d)はパンプス、(e)はブーツ、(f)はぺったん靴、(g)はげたの例である。物最高歩行速度記憶手段39、物標準歩行速度記憶手段42で、靴の種類は、靴のIDとヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法、最高歩行速度または標準歩行速度とともに記憶される。
【0055】
図12は、靴の形状例を示す図である。図に示すように、(a)は靴の側面の写真で、白い矢印の部分がヒールの高さである。(b)は靴の裏のヒールの部分で、白い矢印がヒールの太さである。ヒールの高さとヒールの太さは靴の形状として、靴の速度記憶手段で、靴のIDと種類、最高歩行速度または標準歩行速度と共に記憶される。靴の種類、形状としては、靴の種類(図11(a)〜(g)のどれか、ヒールの高さ(図12(a))、ヒールの太さ(図12(b))、固定方法(図13、図14)、の4つを記憶する。
【0056】
図13は、靴と足との固定方法を説明する図である。図に示すように、かかとがある場合とない場合、後ろにベルトがある場合とない場合、甲を固定するものがある場合とない場合(図14)で靴の固定方法を(a)〜(f)の6つに分類する。6つの固定方法に、歩きやすさを表す数値を割り振り、数値を靴の種類、ヒールの高さ、ヒールの太さ、速度、IDと共に記憶する。
【0057】
図14は、図13に示した固定方法を靴の形状で説明する図である。図に示すように、(a)と(b)はかかとがある場合とない場合、(c)と(d)は後ろにベルトがある場合とない場合、(e)と(f)は甲を固定するものがある場合とない場合の靴の例である。前記3つ場合によって靴の固定方法を6つに分類し、歩きやすさを表す数値を割り振る。前記数値を、靴の種類、ヒールの高さ、ヒールの太さ、速度、IDと共に記憶する。
【0058】
図15は、靴の固定方法、ヒールの高さ、ヒールの太さの3次元マップである。図に示すように、3つの軸はヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法で、黒い点は靴の3つ項目の値と速度の関係の記憶である。白い点は、速度を推測する靴であり、1~8の番号を振られたサンプルの靴の記憶に基づいて速度の推測を行う。サンプルとして推測に用いる8つの記憶は、同じ靴の種類の記憶で、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目において、
・3項目全てが推測対象の靴より歩きやすい記憶のなかで最も近いもの(図15の点1)
・3項目全てが推測対象の靴より歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点2)
・3項目のうちヒールの高さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点3)
・3項目のうちヒールの太さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図154の点4)
・3項目のうち固定方法のみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点5)
・3項目のうちヒールの高さとヒールの太さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点6)
・3項目のうちヒールの太さと固定方法のみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点7)
・3項目のうち固定方法とヒールの高さのみが歩きにくい記憶のなかで最も近いもの(図15の点8)
である。矢印は、各サンプルから速度を推測する靴へのベクトルを表す。前記ベクトルは、白い点の速度を推測する靴とサンプルとの間の距離として、白い点の靴の速度を推測する計算に使用される。即ち、この3次元マップは、靴の場合の物別歩行影響テーブルとして使用されるものである。
【0059】
図16は、靴の固定方法、ヒールの高さ、ヒールの太さのデフォルト3次元マップである。図に示すように、固定方法、ヒールの高さ、ヒールの太さの3つを軸とし、各点は3項目の各値の形状を持つ靴の速度を記憶する。初期状態では、一般的な靴の速度がデフォルトの値として記憶され、デフォルトの値は各項目の値を一定間隔で変え、全範囲に均等に存在する。ユーザ16が歩くときにカスタマイズ機能を作動させると、靴の情報と速度の記憶がたまってゆき、このカスタマイズされた記憶に基づいて靴の速度を推測する。しかし、初期状態では前記記憶が存在せず、また、履く靴によって推測するには記憶の数が足りないという状態もあるため、ユーザ16の実際の歩行の記憶を補うものとしてデフォルトの値を速度の推測に使用する。
【0060】
図17は、各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べるための3点を示す図である。図に示すように、3つの軸a,b,cはヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法のいずれかであり、点A,B,Cは3項目の各値と速度の関係の靴ごとの記憶である。ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べるために、サンプルとして、2項目(a,bとする)が同じで1項目(cとする)が異なる同じ種類の2つの靴(A,B)と2つの靴の速度(標準歩行速度または最高歩行速度)を取り出す。靴(C)の速度を、2つの靴(A,B)の速度と項目cの差に基づいて推測し(図18)、推測した速度と靴Cの実際の速度の差を、項目bの差による速度の変化とし記憶する。項目内の差による速度の変化の記憶内容を用い、各項目の変化と速度の変化の関係のグラフ(図19)を作成し、速度は最悪の場合からどれだけ速くなるかで表す。ある項目のある値がどれだけ変わると1km/h速くなるかは、ある値での傾きで1km/hを割ることによって計算する。
【0061】
図18は、各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べる方法を示す図である。図に示すように、項目b(ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の何れか)と歩行速度を軸とし、項目bの変化による速度を表す。A,B,Cの黒い点は靴ごとの記録であり、白い○は点A,Bに基づいて推測される靴Cの推定速度である。ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べるために、2項目(a,bとする)が同じで1項目(cとする)が異なる同じ種類の2つの靴(A,B)と前記2つの靴の速度(標準歩行速度または最高歩行速度)をサンプルとして取り出し(図17)、1項目(a)が前記2つの靴(A,B)と同じで、2項目(b,c)が前記2つの靴のどちらとも異なる同じ種類の靴(C)の速度を、前記2つの靴(A,B)の速度と項目cの差に基づいて推測する。推測した速度と靴Cの実際の速度の差を、項目bの差による速度の変化とし記憶する。項目内の差による速度の変化の記憶内容を用い、各項目の変化と速度の変化の関係のグラフ(図19)を作成し、速度は最悪の場合からどれだけ速くなるかで表す。ある項目のある値がどれだけ変わると1km/h速くなるかは、ある値での傾きで1km/hを割ることによって計算し、靴と速度の記憶と推測する靴の距離を計算する際に使用する。
【0062】
図19は、3項目の何れかの変化による速度の変化の大きさを表すグラフである。図に示すように、項目b(ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の何れか)とヒールが最高の時よりどれだけ速くなるかを軸とし、前記項目bの変化により最低の速度よりどれだけ速くなるかを表す。ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の各項目内の差による速度の変化の記憶内容を用い、各項目の変化と速度の変化の関係のグラフを作成する。速度は最悪の場合からどれだけ速くなるかで表す。図19のグラフでは、項目bの値が0に近いときと最大値に近いときには傾きが小さく、項目bの変化による速度の変化も小さい。また、項目bが最大値の3分の2くらいの値であるときは傾きが大きいので、前記項目bの変化による速度の変化も大きくなる。ある項目のある値がどれだけ変わると1km/h速くなるかは、ある値での傾きで1km/hを割ることによって計算し、推測する靴とサンプルの記憶との距離を計算する際に使用する。ある項目のある値がどれだけ変わるかを距離の計算に入れることで、ユーザ16にとってヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法のどの項目の変化が、どれくらいの値の時に、速度に大きく影響するかを、速度の推測に反映することが可能となる。
【0063】
図20は、図2に示した標準歩行速度推定手段26の詳細なブロック図である。図に示すように、標準歩行速度推定手段26は、靴(物)のIDと種類と形状と標準歩行速度を記憶する物標準歩行速度記憶手段42と、ユーザ16の着用している靴(物)での標準歩行速度を推定する物標準歩行速度推定手段41と、ユーザ16に合うよう前記物標準歩行速度記憶手段42の記憶内容を修正する物標準歩行速度記憶修正手段43とから構成される。ユーザ16の歩行標準歩行速度と履いている靴のIDと種類と形状が物標準歩行速度記憶手段42に記憶される。
【0064】
物標準歩行速度記憶手段42の以前の記憶内容に基づいて、現在ユーザ16が履いている靴の標準歩行速度の推定を行う。以前履いたことのある靴である場合、以前に記憶された標準歩行速度を用いる。初めて履く靴である場合、以前に履いている他の靴の記憶内容を基に標準歩行速度を推測する。初期状態で靴の情報と標準歩行速度の記憶がない状況でも、初めて履く靴の標準歩行速度を推測するため、靴の種類と形状と標準歩行速度の一般的な関係の値をデフォルトの値として物標準歩行速度記憶手段42の中に入れておく(図16)。デフォルトの値はユーザ16個人の靴の情報と標準歩行速度の関係と差があるため、推定された標準歩行速度と実際の標準歩行速度の誤差に基づいてデフォルトの値を変動させ、よりユーザ16に合った物(靴)標準歩行速度の推測を可能とする。物標準歩行速度記憶手段42では、靴のIDと種類と形状と標準歩行速度などを記憶する。,
【0065】
取得した標準歩行速度が変われば記憶を更新する。ただし、第1歩行異常判定手段23または第2歩行異常判定手段25において、ユーザ16の歩行が異常だと判断されている時は、取得した標準歩行速度には更新しない。また、靴の形状と種類が同じでもIDが違えば更新はせず、別に記憶する。初期状態では、実際の記憶がないため、一般的な靴の種類と形状と、標準歩行速度の関係がデフォルトの値として記憶されている。IDは、デフォルトの値だとわかるIDをつける。デフォルトの値は各項目を一定間隔で変え、全範囲に均等に存在させる(図16)。
【0066】
物標準歩行速度推定手段41は、靴の標準歩行速度の推定を、靴の種類と形状とIDの記憶に基づいて行う。靴のRFIDの情報から靴の種類と形状とIDの情報を取り出す。物標準歩行速度記憶手段42によって記憶された以前の記憶の中で、同じIDの靴の情報があるかを調べ、あれば前記同じIDの靴の以前の標準歩行速度を、推定される靴の標準歩行速度とする。また、同じIDの記憶はなく、同じ形状と種類の靴の記憶があった場合には、同じ形状と種類の靴の標準歩行速度をある一定の割合で減らして、推定される靴の標準歩行速度とする。以前の記憶に同じIDの記憶も同じ形状と種類の記憶もなければ、他の靴の記憶内容やデフォルトで入っている記憶内容からサンプルとして8つの記憶を取り出し、前記8つのサンプルに基づいて推測を行う。
【0067】
前記サンプルとして推測に用いる記憶は、最高歩行速度関連の手法と同様である。また、標準歩行速度を推測する靴(推測対象の靴)と前記サンプル8つとのそれぞれの近さを調べるために、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目において、どれだけ変わると標準歩行速度が1km/h変化するかで規格化し、2点間の距離を計算する。推測対象の靴の標準歩行速度の計算は、サンプルの標準歩行速度を、サンプルと推測対象の靴との距離でそれぞれ割って、全て合計する。前記合計した数値にサンプル分の距離全てをかけ、サンプルの距離の合計で割り、計算結果を推測対象の靴の標準歩行速度とするが、これについても最高歩行速度関連の手法と同様である。
【0068】
物標準歩行速度記憶修正手段43は、推定した標準歩行速度と実際の標準歩行速度が異なった場合に、誤差をデフォルトの値に反映させる。前記誤差の絶対値にある値をかけたものを、実際の標準歩行速度が推測した標準歩行速度より高ければデフォルトの値の標準歩行速度に加算し、実際の標準歩行速度が推測した標準歩行速度より低ければデフォルトの記憶内容の標準歩行速度から減算する。また、物標準歩行速度記憶手段42によって実際の歩行標準歩行速度の記憶を1つ書き加えられるごとに、ある範囲内(デフォルトの値の間隔を一辺とし、加わった実際のデータを中心とする立方体内)にあるデフォルトの値を消す。
【0069】
また、ヒールの高さ、ヒールの太さ、固定方法の3項目のそれぞれにおいて、どれだけ変わると標準歩行速度が1km/h変化するかを調べる。2項目(a,bとする)が同じで1項目(cとする)が異なる同じ種類の2つの靴(A,B)と、前記2つの靴の標準歩行速度をサンプルとして取り出し(図17)、1項目(a)が前記2つの靴(A,B)と同じで、2項目(b,c)が前記2つの靴のどちらとも異なる同じ種類の靴(C)の標準歩行速度を、前記2つの靴(A,B)の標準歩行速度と項目cの差に基づいて推測する(図18)。推測した標準歩行速度と靴Cの実際の標準歩行速度の差を、項目bの差による標準歩行速度の変化とし記憶する。前記項目内の差による標準歩行速度の変化の記憶内容を用い、各項目の変化と標準歩行速度の変化の関係のグラフ(図19)を作成し、標準歩行速度は最悪の場合からどれだけ速くなるかで表す。ある項目のある値がどれだけ変わると1km/h速くなるかは、ある値での傾きで1km/hを割ることによって計算する。
【0070】
図21は、歩行間隔のデータの分布の例である。図に示すように、横軸は歩幅歩行間隔、縦軸はデータの個数であり、歩行間隔の各値のデータがどれだけあったかを表す。図21(a)は山が一つであり、高い頻度で取得される値が1つに集まっている。(a)の分布を普段のデータの分布であるとすると、(a)と同じ形で速度または歩幅が分布している時には正常な状態で歩行ができていると判断し、図21(b)のように山が2つあり、高い頻度で取得される値が2つに分かれて集まっている場合を異常な状態での歩行と判断する。靴擦れ等の異常があり、通常の歩行が出来なくなると左右の足で歩行間隔が違ってくることが多く、歩行間隔の分布を見ることでユーザ16の歩行の異常を検出し、異常を考慮した歩行ガイドが可能となる。
【0071】
図22は、歩行ガイド中の実際の歩行速度と必要歩行速度(歩行ナビゲーション情報)の例を表す図である。図22(a)は、横軸が時間、縦軸が速度で、1km先の目的地行くため10分前に出発した際の、実線が実際の速度、細い破線が伝達される必要歩行速度、太い破線が伝達されない必要歩行速度を表す。図22(b)のグラフは、横軸が時間、縦軸が距離で、各速度で歩いた場合の出発地からの距離を表す。実線が実際の速度、細い破線が伝達される必要歩行速度、太い破線が標準歩行速度である。標準歩行速度は6km/h現時点の速度で間に合うかどうか調べるタイミングを1.25分毎とする。最初(時間0分の時)、物最高歩行速度記憶推定手段37と標準歩行速度推定手段26が履いている靴の種類、形状、IDに基づいて最高歩行速度と標準歩行速度を推定する。必要歩行速度の6km/hで歩いている間は、ユーザ16には何も伝達されない。
【0072】
途中で3km/hの速度に落ちた場合には、3.75分からこのままでは間に合わないと判断し、間に合うよう、約6.6km/hの速さが伝えられる。前記6.6km/hの速さで歩くと目的地に時間通りに着くことが可能となる。そのまま、速度を速めずに3km/hで歩くと、また1.25分後(5分)に必要歩行速度が再計算され、7.5km/hで歩くよう伝えられる。また、5分から12km/hで走り出すと、1.25分後(6.25分)に、標準歩行速度でずっと歩いた場合の位置に到達する。到達した時点でユーザ16への速度の伝達は終わる。そのまま12km/hの速度で走り続けても、ユーザ16には何も伝達されない。このように、急ぐべきであること、どれくらいの速度で歩くかが伝えられ、伝えられる速度で歩くと到着希望時刻に目的地へ到着することが可能となる。
【0073】
図23は、6km先の目的地に1時間で行く時の速度と距離の例を表す図である。この図は、6km先の目的地に向けて、1時間前に出発し、歩きはじめたときの実際の速度と必要歩行速度、距離の関係で、図22(a)はスニーカの場合、図22(b)はヒールの場合を示す。上2つのグラフは横軸が時間、縦軸が速度で、速度の変化を表す。下2つのグラフは横軸が時間、縦軸が距離で、出発地からどれだけ進んだかを表す。実線が実際の速度、破線が必要歩行速度で、○が諦めるべきと判断した点である。最初に、物最高歩行速度記憶推定手段37が履いている靴の種類、形状、IDに基づいて最高歩行速度を推定する。前記推定された最高歩行速度が、スニーカでは12km/h、ヒールでは9km/hとする。6kmを1時間で歩くので、必要歩行速度は6km/hと計算される。最初6km/hで歩いているうちは、何も伝達されない。
【0074】
途中30分経ったところで3km/hにスピードが落ちると、必要歩行速度がユーザ16に伝達される。そのまま3km/hで歩き続けると、スニーカは最高歩行速度が12km/hであるので50分経ったところで、ヒールは最高歩行速度9km/hであるので45分経ったところで、そのまま3km/h以下で歩き続けると間に合わなくなり、間に合わないことがユーザ16に伝達される。このように、靴に応じて最高歩行速度で歩いて(走って)間に合うかどうかの判別が行われ、無理な速度で歩く(走る)ことが必要とされず、転倒などの危険性を低減することが可能となる。また、間に合う可能性があるのに間に合わないという判断をすることも減り、より適切な誘導が可能となる。
【0075】
図24は、物の記憶を修正し、推定をユーザに合わせるための処理の流れを示すフローチャートである。この処理を靴に適用したケースとして説明する。図に示すように、普段歩く際に(ステップs31)、靴の標準歩行速度と最高歩行速度を推定する(ステップs32,s33)。実際に歩いた速度の記憶に基づいて実際の標準歩行速度を算出する(ステップs34)。標準歩行速度と推定した速度との差で、標準の靴速度記憶を修正する(ステップs36)。また、最高歩行速度の実際の記録がなければ、最高の靴速度記憶を修正する。また、普段歩く中で推定された最高歩行速度を超える速度が測定された場合には、超えた速度に記憶を書きかえる(ステップs35)。歩行ガイド処理中では(ステップs41)、履いている靴の最高歩行速度を推定する(ステップs42)。歩く途中で推定速度を超える速度が測定された場合には、歩行ガイド処理中でも随時、前記超えた速度に記憶を書きかえる。また、推定された最高歩行速度で走るように指示し、速度が上がっても推定された速度に届かず、かつ実際の記憶が無い場合には、歩行ガイド処理中の実際の速度の中で最高の値に記憶を書き換える(ステップs43,s44)。以上の処理によって、買って初めて履く靴、初めて速く歩く靴の場合でも、適切な速度の推定が可能となる。
【0076】
図25は、記録の更新とデフォルトの値の修正がどう行われるかを表す図である。図に示すように、横軸は時間、縦軸が距離であり、グラフ内の線は各速度での進んだ距離の例を示す。図25(a)が普段の歩行時の場合で、図25(b)が歩行ガイド中の場合、図25(c)は歩行ガイド中に推定した最高歩行速度で歩くことを要求している場合である。歩行時には最初に、靴の種類と形状と速度との記憶に基づいて、履いている靴での最高歩行速度と標準歩行速度を推定する。(a)普段の歩行の場合では、実際の歩行の標準歩行速度が前記推定した標準歩行速度と違えば、標準歩行速度の記憶を実際の速度の値へ更新し、標準歩行速度の記憶に入っているデフォルトの値を修正する。また、標準歩行速度の修正分にある値(0~1.0)をかけて、最高歩行速度のデフォルトの値も修正する。(b)の歩行ガイド中の場合では、実際の標準歩行速度と推測した標準歩行速度の差による修正と更新は行わない。図24(b)の例では歩行の途中で、推測した最高歩行速度以上の速度で実際に歩いているため、最高歩行速度の記憶更新とデフォルトの値修正を行う。最高歩行速度の修正分にある値(0~1.0)をかけて、標準歩行速度のデフォルトの値も修正する。また、同じように、普段の歩行中の場合でも推定した最高歩行速度を超える速度が出ると、記憶更新とデフォルト修正を行う。(c)は歩行ガイド中に推定した最高歩行速度で歩くことを要求している場合では、要求した最高歩行速度が出ていない。このように、最高歩行速度を要求しており、推定した最高歩行速度に届かないがある一定の割合以上の速度で歩行している場合には、最高歩行速度の記憶更新とデフォルトの値の修正を行い、標準歩行速度もデフォルトの値の修正を行う。
【0077】
歩行ガイド中に初めて履く靴でも、以前歩いたことがあれば標準歩行速度は記憶が存在し、最高歩行速度も修正されたデフォルトの値に基づいて推測が行われる(図25(a))。推測した最高歩行速度以上で歩くことがあれば、以前の記憶が存在する。また、以前に歩いたことのない靴でも、他の靴でのデフォルト修正によって、一般的なデフォルトの値から、よりユーザ16に合ったデフォルトの値に修正され、ユーザ16にあったデフォルトの値に基づいて速度が推測される。歩行ガイド中にも最高歩行速度の記憶更新とデフォルトの値の修正、標準歩行速度の修正が行われ、最初に推測した速度が靴に合っていない場合でも、途中から、より履いている靴に合ったガイドが行われる。このように、普段と歩行ガイド中の記憶更新、デフォルトの値の修正により、初めて履く靴においてもより適切なガイドが可能となる。
【0078】
本発明によれば、ユーザの歩行の靴に関する特性を考慮して履いている靴によって間に合うかどうかの判断をし、ユーザに無理な歩行をさせず、間に合うか間に合わないかの適切な判断を行う歩行ガイドが可能となる。靴の種類・形状だけでなく、以前に靴を履いた時間や、靴擦れ等の歩行の異常、天候も考慮した歩行ガイドが可能となる。また、画面を見ずに、必要な速度を振動や音で正確にユーザに伝える、より急いでいる状況に使いやすい歩行ガイドが可能となる。
【0079】
以上、近接物として靴を対象として発明を説明してきたが、本発明は、近接物として衣服や鞄などの歩行速度への影響も計算した歩行ナビゲーション情報を提供することが可能である。図26は、標準歩行速度推定手段、最高歩行速度推定手段において、速度と靴の情報に加えて記憶する3つの軸を表す図である。標準歩行速度推定手段、最高歩行速度推定手段では、標準歩行速度または最高歩行速度、靴のID、靴の種類、靴のヒールの高さ、靴のヒールの太さ、靴の固定方法、の他に、以下の3項目を加えて記憶する。
・持っている鞄の種類
・持っている鞄の(標準)容積(容積が大きいほど、歩き難くなり、歩行速度が低下する)
・着ている服の種類
【0080】
鞄の種類は、タグ情報そのもの、或いは、タグ情報に基づき商品情報データベースなどから取得して記憶し、
・リュックサック、ランドセル等背負う形の鞄
・ウエストポーチ
・ショルダーバッグ、ポーチ等、肩にかけることの出来る鞄
・手提げ鞄、ハンドバッグ等、手で持つ必要のある鞄
・キャリーバッグ等キャスターがついており、引きずるまたは押して運ぶ鞄
の5つに分類して記憶する。鞄の標準容積は、タグ情報そのもの、或いは、タグ情報に基づき商品情報データベースなどから取得する。また、服の種類もタグ情報そのもの、或いは、タグ情報に基づき商品情報データベースなどから取得し、ズボン(オーバーオール、キュロットを含む)、スカート(ワンピースを含む)、袴、着物または浴衣、の4つに分類する。ただし、スカートにおいては、
裾の幅の長さ×サイズ(ヒップ)×定数α−長さ(ウェストから裾まで)
の値を計算し、所定の数値の幅で複数個に分類する。
【0081】
以上のように、靴の情報の他に3項目の情報を記憶し、靴の3項目と同じように扱う。鞄と服装の3項目を靴の3項目に加えて同様に計算して、最高歩行速度、標準歩行速度を推定する。各項目内の距離についての修正も、靴の3項目の場合と同じように、鞄の種類、鞄の容積、服の種類の3項目を加え6項目において行う。なお、鞄を複数持っている場合には、推定した速度の中で最も遅い値を使用する。以上を追加することによって、靴だけでなく、鞄や服装などによる速度の低下も考慮した歩行ガイドが可能となる。
【0082】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。また、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。例えば、図1、図26に示した物別歩行影響テーブルや3次元歩行影響マップなどは単なる例示に過ぎず、様々な形式、例えば、テーブルやマップのみならず、物に応じた演算式などでも本発明を実現することが可能であることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による携帯端末装置の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した携帯端末(携帯電話端末)のブロック図である。
【図3】図2に示した移動条件設定手段13の詳細なブロック図である。
【図4】本端末で使用する経路情報のデータフォーマットの一例を示す図である。
【図5】図2に示した歩行ガイド手段10の詳細なブロック図である。図に示すよ
【図6】本端末で行われる歩行ナビゲーション(ガイド)処理を一例を説明するフローチャートである。
【図7】本端末がユーザに報知する歩行リズムの一例を示すタイミングチャートである。
【図8】本端末が歩行ナビゲーション情報としてユーザに提示する画面インターフェイスを示す図である。
【図9】図2に示した最高歩行速度推定手段20の詳細なブロック図である。
【図10】図9に示した物最高歩行速度記憶推定手段37の詳細なブロック図である。
【図11】靴の種類7例の形状を示す図である。
【図12】靴の形状例を示す図である。
【図13】靴と足との固定方法を説明する図である。
【図14】図13に示した固定方法を靴の形状で説明する図である。
【図15】靴の固定方法、ヒールの高さ、ヒールの太さの3次元マップである。
【図16】靴の固定方法、ヒールの高さ、ヒールの太さのデフォルト3次元マップである。
【図17】各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べるための3点を示す図である。
【図18】各項目でどれだけ変わると速度が1km/h変化するかを調べる方法を示す図である。
【図19】3項目の何れかの変化による速度の変化の大きさを表すグラフである。
【図20】図2に示した標準歩行速度推定手段26の詳細なブロック図である。
【図21】歩行間隔のデータの分布の例である。
【図22】歩行ガイド中の実際の歩行速度と必要歩行速度(歩行ナビゲーション情報)の例を表す図である。
【図23】6km先の目的地に1時間で行く時の速度と距離の例を表す図である。
【図24】物の記憶を修正し、推定をユーザに合わせるための処理の流れを示すフローチャートである。
【図25】記録の更新とデフォルトの値の修正がどう行われるかを表す図である。
【図26】速度と靴の情報に加えて記憶する3つの軸を表す図である。
【符号の説明】
【0084】
1 携帯端末装置
2 位置取得手段
3 ルート決定手段
4 近接物識別手段
5 格納手段
5A 物別歩行影響テーブル
6 報知手段
7 カスタマイズ手段
AR 近接エリア
10 歩行ガイド手段
12 必要歩行速度決定手段
13 移動条件設定手段
14 時刻取得手段
15 位置取得手段
16 ユーザ
19 移動条件達成判定手段
20 最高歩行速度推定手段
21 天候情報取得手段
22 通信手段
23 歩行異常判定手段
24 歩行間隔取得手段
25 歩行異常判定手段
26 標準歩行速度推定手段
27 物情報取得手段(RFIDリーダ)
28 歩行速度取得手段
29 経路推定手段
30 経路登録手段
31 アラーム手段
32 必要歩行間隔計算手段
33 報知手段
34 報知判定手段
35 総合最高歩行速度推定手段
36 天候影響速度推定手段
37 物最高歩行速度記憶推定手段
38 物最高歩行速度推定手段
39 物最高歩行速度記憶手段
40 物最高歩行速度記憶修正手段
41 物標準歩行速度推定手段
42 物標準歩行速度記憶手段
43 物標準歩行速度記憶修正手段
44 携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末装置であって、
前記携帯端末装置の現在位置を取得する位置取得手段と、
物と該物に関連付けられた歩行影響情報を含む物別歩行影響テーブルを格納する格納手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
前記携帯端末装置に近接する物を識別する近接物識別手段と、
前記物別歩行影響テーブルを参照して前記近接物識別手段で識別された物に応じて得られる歩行影響情報、前記位置検出手段で取得された現在位置、および、前記目的地設定手段で設定された目的地に基づき生成される歩行ナビゲーション情報を報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末装置において、
前記目的地設定手段が、前記目的地への希望到着時刻をさらに設定し、
前記位置検出手段で取得された現在位置、前記設定された目的地、および、該目的地への希望到着時刻に基づき、該希望到着時刻に到着するために必要な移動速度を算出する必要移動速度算出手段を、さらに備え、
前記報知手段は、
前記必要移動速度算出手段で算出された必要な移動速度が、前記近接物識別手段で識別された物に応じた歩行影響情報に基づき求められる最高速度以下の場合のみ、前記必要な移動速度で歩行するよう報知する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯端末装置において、
前記携帯端末装置の現在移動速度を算出する現在移動速度算出手段をさらに備え、
前記報知手段が、
前記現在移動速度が前記必要な移動速度よりも小さい場合、前記必要な移動速度で歩行するよう報知する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯端末装置において、
前記携帯端末装置を携帯しているユーザの歩数をカウントする歩数カウント手段と、
前記歩数カウント手段でカウントされた、所定の距離における歩数に基づき、現在の歩幅を算出し、さらに、該歩幅と前記必要な移動速度とから必要な歩調を算出する歩調算出手段と、をさらに備え、
前記報知手段が、前記歩調算出手段で算出された歩調を報知する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の携帯端末装置において、
前記報知手段は、
前記必要な移動速度が、前記近接物識別手段で識別された物に応じた歩行影響情報に基づき求められる最高速度を超える場合、前記希望到着時刻には間に合わない旨を報知する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の携帯端末装置において、
前記近接物識別手段で識別された物、および、該物が識別されている間において、前記位置取得手段によって取得された所定の時間あたりの移動距離に基づき、前記物別歩行影響テーブルをカスタマイズするカスタマイズ手段、
をさらに備える特徴とする携帯端末装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯端末装置において、
前記近接物識別手段がRFIDリーダであり、該RFIDリーダが前記物に装着されているRFIDタグに基づき近接する物を識別する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の携帯端末装置において、
無線通信手段を使って、現在の天候を取得する天候情報取得手段をさらに備え、
前記格納手段が、
天候と該天候に関連付けられた歩行影響情報を含む天候別歩行影響テーブルを格納し、
前記報知手段が、
前記天候別歩行影響テーブルをさらに参照して、前記天候情報取得手段で取得された天候に応じて得られる歩行影響情報に基づき、前記計算された予想到着時刻および予想移動速度を補正する、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【請求項9】
携帯端末装置の制御方法であって、
測位手段を使って前記携帯端末装置の現在位置を取得する位置取得ステップと、
目的地を設定する目的地設定ステップと、
近接物識別手段を使って前記携帯端末装置に近接する物を識別する近接物識別ステップと、
物と該物に関連付けられた歩行影響情報を含む物別歩行影響テーブルを参照して前記近接物識別ステップで識別された物に応じて得られる歩行影響情報、前記位置検出ステップで取得された現在位置、および、前記目的地設定ステップで設定された目的地に基づき生成される歩行ナビゲーション情報を報知する報知ステップと、
を含むことを特徴とする携帯端末装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2007−263918(P2007−263918A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93110(P2006−93110)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】