説明

撮像装置および電子機器

【課題】光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができることはもとより、絞り径を変化させても深度拡張機能の低下を防止することが可能な撮像装置および電子機器を提供する。
【解決手段】可変絞り214、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御光学系210、撮像素子220、および1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240を含み、収差制御光学系210の収差特性は、光軸を中心に回転対象な特性を有し、可変絞り214も口径を変化させても光軸中心で略円形の形状を形成するように構成され、可変絞り214の口径にかかわらず、当該口径内で球面収差の屈折率における変曲点を少なくとも一つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を用い、光学系を備えた撮像装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面は従来のフィルムに代わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
【0003】
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
【0004】
図25は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
【0005】
撮像レンズ装置1においては、図25に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図26(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
【0006】
また、位相板により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】USP6,021,005
【特許文献2】USP6,642,504
【特許文献3】USP6,525,302
【特許文献4】USP6,069,738
【特許文献5】特開2003−235794号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“Wavefront Coding;jointly optimized optical and digital imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Robert H.Cormack,Scott D.Sarama.
【非特許文献2】“Wavefront Coding;A modern method of achieving high performance and/or low cost imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Gregory E.Johnson.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した各文献にて提案された撮像装置において、通常光学系に上述の位相板を挿入した場合のOTFが物体距離に対してほぼ一定になっていることが前提であり、コントラストが通常の光学系よりも劣化する。
たとえば、コードリーダのようなセンシングカメラの用途において、このようなコントラストの劣化は、読取り率の劣化等を引き起こす。
また、コントラストが必要なカメラ、たとえば、デジタルカメラや携帯端末用カメラにおいては、劣化したコントラストを向上させるためにコンボリューション等の画像処理を加えることにより、ノイズを増大させてしまう。
しかしながら、位相板を用いた光学設計ではこのコントラストの劣化を抑えることは困難である。
【0010】
また、深度拡張光学系において、収差制御素子は、光学系の絞り近傍に配置されて、深度拡張作用を及ぼしている。
ここで、明るさが変化する環境で使用しようとした場合、絞り固定の光学系では、撮像素子や信号処理系が持つ信号コントロールで対応することになるが、大きな光量変化に対しては追従範囲が限られるという欠点がある。
【0011】
そこで、従来の光学系ではレンズを通して取り込む光量を機構的に制御するシステムが組み込まれていることが多い。
その多くは、メカニカルに稼動する遮光を目的とした羽が開閉することで光量を調節している。
【0012】
しかし、上記方法を、深度拡張光学系に対し適用した場合、絞りが可変することによる絞り形状の変化に深度拡張機能が依存するため、深度拡張作用は失われる、もしくは効率が著しく落ちるという不利益がある。
【0013】
本発明は、絞り径を変化させても深度拡張機能の低下を防止することが可能な撮像装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点の撮像装置は、球面収差を発生させる収差制御機能を有する収差制御部を含む収差制御光学系と、光軸を中心とした略円形の口径を形成して前記収差制御光学系を通過する光束を制限し、当該口径を可変とする可変絞りと、前記収差制御光学系および前記可変絞りを通過した被写体像を撮像する撮像素子と、を有し、前記収差制御部は、発生する前記収差が光軸を中心に回転対称で、前記球面収差の変曲点を少なくとも一つ有する。
【0015】
本発明の第2の観点の電子機器は、撮像装置を有し、前記撮像装置は、球面収差を発生させる収差制御機能を有する収差制御部を含む収差制御光学系と、光軸を中心とした略円形の口径を形成して前記収差制御光学系を通過する光束を制限し、当該口径を可変とする可変絞りと、前記収差制御光学系および前記可変絞りを通過した被写体像を撮像する撮像素子と、を有し、前記収差制御部は、発生する前記収差が光軸を中心に回転対称で、前記球面収差の変曲点を少なくとも一つ有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光学系を簡単化でき、絞り径を変化させても深度拡張機能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電子機器としての情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
【図2】情報コードの例を示す図である。
【図3】図1の情報コード読取装置に適用される撮像装置の構成例を示すブロックである。
【図4】本実施形態に係る可変絞りを含む収差制御光学系を形成する撮像レンズユニットの基本構成を示す図である。
【図5】本実施形態に係る開放時および半開放時において開放部を円形状に保持可能な6枚のアイリス可変絞りの構成例を示す図である。
【図6】比較例として半開放時において開放部を円形状に保持できない2枚のアイリス可変絞りの構成例を示す図である。
【図7】本実施形態に係るアイリス可変絞りによるPSFのイメージ図である。
【図8】比較例の可変絞りによるPSFのイメージ図である。
【図9】本実施形態に係る液晶素子による可変絞りを含む収差制御光学系を形成する撮像レンズユニットの基本構成を示す図である。
【図10】本実施形態に係る外部依存型収差制御素子の構成例および機能を説明するための図である。
【図11】可変絞りとして適用可能な液晶デバイスの基本構成を説明するための図である。
【図12】液晶デバイスによる絞り口径の制御動作を説明するための図である。
【図13】本実施形態に係る収差制御光学系の球面収差発生量について説明するための図であって、撮像素子(センサ)を固定したときのセンサとPSFとの関係を示す図である。
【図14】本実施形態に係る収差制御光学系の球面収差発生量について説明するための図であって、収差制御光学系を固定したときのセンサとPSFとの関係を示す図である。
【図15】通常光学系および本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示す図である。
【図16】高周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示す図である。
【図17】低周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示す図である。
【図18】絞り径の違いによる球面収差、およびディフォーカスMTFにおける本光学系と通常光学系の深度を比較して示す図である。
【図19】絞り口径の違いによる通常光学系と本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスMTFを比較して示す図である。
【図20】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を説明するための図である。
【図21】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を具体的に説明するための図である。
【図22】通常の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
【図23】収差制御素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
【図24】本実施形態に係る撮像装置の画像処理後のMTFのレスポンスを示す図である。
【図25】一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
【図26】図25の撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電子機器としての情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
図2(A)〜(C)は、情報コードの例を示す図である。
図3は、図1の情報コード読取装置に適用可能な撮像装置の構成例を示すブロックである。
なおここでは、本実施形態の撮像装置が適用可能な装置として、情報コード読取装置を例示している。
【0020】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、図1に示すように、本体110がケーブル111を介して図示しない電子レジスタ等の処理装置と接続され、たとえば読み取り対象物120に印刷された反射率の異なるシンボル、コード等の情報コード121を読み取り可能な装置である。
読み取り対象の情報コードとしては、たとえば図2(A)に示すような、JANコードのような1次元のバーコード122と、図2(B)および(C)に示すようなスタック式のCODE49、あるいはマトリックス方式のQRコードのような2次元のバーコード123が挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る情報コード読取装置100は、本体110内に、図示しない照明光源と、図3に示すような撮像装置200とが配置されている。
撮像装置200は、後で詳述するように、光学系に収差制御面、または収差制御素子を適用し、収差制御素子により収差(本実施形態においては球面収差)を意図的に発生させ、焦点深度拡張機能を有している。
かつ、撮像装置200は、可変絞りを有し、収差制御光学系は光軸を中心に回転対象な特性を有し、可変絞りも口径を変化させても光軸中心で略円形の形状を形成するように構成された収差制御光学系システムというシステムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
【0022】
また、撮像装置200は、上記構成に加えて、ディフォーカスに対する変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)において、収差制御機能が深度拡張を発現するためには、絞り径が変化してもその開口径内に変曲点を少なくとも一つ有する収差制御光学系システムというシステムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
撮像装置200は、任意の周波数の主像面シフト領域で1つあるいは2つ以上のピークを持たせることで、MTFピーク値の低下を抑えつつ深度拡張を可能にする収差制御光学系システムを採用し、JANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
【0023】
情報コード読取装置100の撮像装置200は、図3に示すように、収差制御光学系210、撮像素子220、アナログフロントエンド部(AFE)230、画像処理装置240、カメラ信号処理部250、画像表示メモリ260、画像モニタリング装置270、操作部280、および制御装置290を有している。
【0024】
図4は、本実施形態に係る可変絞りを含む収差制御光学系を形成する撮像レンズユニットの基本構成を示す図である。
【0025】
収差制御光学系210Aは、被写体物体OBJを撮影した像を撮像素子220に供給する。
また、収差制御光学系210Aは、物体側から順に、第1レンズ211、第2レンズ212、第3レンズ213、可変絞り214、第4レンズ215、第5レンズ216が配置されている。
本実施形態の収差制御光学系210Aは、第4レンズ215と第5レンズ216が接続されている。すなわち、本実施形態の収差制御光学系210Aのレンズユニットは、接合レンズを含んで構成されている。
【0026】
そして、本実施形態の収差制御光学系210Aは、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御部としての収差制御面を適用した光学系として構成されている。
本実施形態においては、球面収差のみを発生させるために、収差制御面を挿入する必要がある。なお、収差制御効果は別素子の収差制御素子を挿入しても良い。
その例を示すと図4のようになり、通常の光学系に収差制御面(第3レンズR2面)を含んだ形となっている。
ここでいう収差制御面とは、収差制御素子の持つ収差制御効果をレンズ面に内包したものをいう。好適には収差制御面213aは可変絞り214に隣接していることが好ましい。
【0027】
本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の口径が変化しても焦点深度拡張効果(機能)を有する。
本実施形態の収差制御光学系210Aにおいては、収差制御機能部は、発生する球面収差が光軸を中心に回転対称で、球面収差の変曲点を少なくとも一つ有する。
換言すると、収差制御面あるいは収差制御素子により形成される収差制御機能部は、可変絞り214の口径にかかわらず、その口径内で球面収差の変曲点を有する。
可変絞り214としては、複数枚の羽を有し、それらの羽を可動とすることにより口径を可変させるアイリス絞り、あるいは、たとえば液晶素子(液晶デバイス)により形成される。
後述するように、液晶デバイスにより形成される可変絞りは、透過部分と遮光部分と変化させて口径を可変させる。
【0028】
このように、本実施形態においては、収差制御光学系210Aは光軸を中心に回転対象な特性を有し、可変絞り214も口径を変化させても光軸中心で略円形の形状を形成するようにする構成される。その理由は以下の通りである。
PSFは絞りの形状が変われば、その分布も変化する。よって光軸を中心に回転対象
な収差制御特性によって得られるPSFをもとに設計された復元フィルタは、絞りの形状が変化すれば、その復元機能を有効に発揮できなくなるおそれがある。
また、収差制御機能が深度拡張を発現するためには、絞り径が変化してもその開口径内に変曲点を少なくとも一つ有する必要がある。
そのため、本実施形態では、収差制御光学系210Aは、基本的に、光軸を中心に回転対象な特性、かつ可変絞りのいずれの開口径においても変曲点を有し、可変絞り214はいずれの開口径においても光軸を中心に略円形の形状を有するように構成される。
【0029】
ここで、収差制御光学系210Aは、可変絞り214の口径を変化させることで複数のF値が選択可能であり、選択可能なF値のいずれにおいても、収差制御素子または収差制御面の効果により深度拡張を行うことが可能である。
本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214の有効径内に少なくとも1つ(1つまたは複数)の変曲点を有する。
さらに、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、可変絞り214が開放の口径の場合に光線が通過する領域から収差制御機能による焦点深度拡張効果を有する最小の絞り径の場合に光線が通過する領域を除く領域で一つ以上の変曲点を有する。
換言すると、本実施形態の収差制御光学系210Aの収差特性は、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、ひとつ以上の変曲点を有する。
【0030】
本実施形態の収差制御光学系210Aにおいては、収差制御機能を有する収差制御面を内包する収差制御光学系を用いてPSFを2画素以上にまたがるようにし、所定の周波数において偽解像しない主像面シフト領域でディフォーカスに対するMTF特性が2つ以上のピークを持つ深度拡張光学系として構成される。
一般的な光波面変調機能を用いた深度拡張光学系ではMTF特性において1つのピークの裾野を広げて深度を拡張するが、これではそれと引き換えにMTF特性のピーク値が下がってしまう。
本実施形態においては、収差制御機能を用いてピークを複数持つようにすることで、ピーク値の低下を抑えつつ深度拡張を実現できる。
球面収差を適切に制御することで画像復元処理を施さなくても深度拡張することができる。
具体的には、本実施形態の収差制御光学系210Aは、主に球面収差を発生させる収差制御素子、または収差制御面によりディフォーカスに対するMTFのピークを複数に分ける(ここでは2分する)ことでアウトフォーカスにおけるOTFの変化を制御でき、深度を拡張することができる。そして、ピークを分割させるために、球面収差に変曲点を持たせる。
【0031】
上述したように、球面収差に1つ以上、好適には2つ以上の変曲点を適切に持たせることで複数の絞り口径の選択に対し、深度拡張を実現することができる。
そして、上述したように、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、ひとつ以上の変曲点を有することが望ましい。
この構成を採用することにより、F値を変化させた場合でも効率よく深度拡張作用を得られる。
【0032】
ここで、可変絞り214の具体的な構成例について説明する。
図5(A)および(B)は、本実施形態に係る開放時および半開放時において開放部を円形状に保持可能な6枚のアイリス可変絞りの構成例を示す図である。
図5(A)が開放時を示し、図5(B)が半開放時を示している。
図6(A)および(B)は、比較例として半開放時において開放部を円形状に保持できない2枚のアイリス可変絞りの構成例を示す図である。
図6(A)が開放時を示し、図6(B)が半開放時を示している。
【0033】
本実施形態に係りアイリス可変絞り214Aは、6枚のアイリス羽214−1〜214−6を有する。
各アイリス羽214−1〜214−6は、図示しない駆動制御系の制御の下、それぞれ回転軸AX1〜AX6を中心に回転可能に構成されている。
そして、各アイリス羽214−1〜214−6の回転範囲は、アイリス羽214−1〜214−6の長孔に挿入されたピンBS1〜BS6の移動範囲が各長孔HL1〜HL6により規制される範囲である。
これにより、図5(A)の開放時の状態と、最小絞りの状態との間で、その口径が連続的もしくは、段階的に可変される。
【0034】
比較例として図6(A)および(B)に示す可変絞り214Bは、2枚の羽214−7,214−8を有している。
この比較例は、開放状態から絞っていくと、その絞り形状が三角形にすぼまっていくタイプの可変絞りである。
【0035】
図7(A)および(B)は、本実施形態に係るアイリス可変絞りによるPSFのイメージ図である。
図7(A)は図5(A)の絞り状態におけるPSFを、図7(B)は図5(B)の絞り状態におけるPSFをそれぞれ示している。
図8(A)および(B)は、比較例の可変絞りによるPSFのイメージ図である。
図8(A)は図6(A)の絞り状態におけるPSFを、図8(B)は図6(B)の絞り状態におけるPSFをそれぞれ示している。
【0036】
比較例の可変絞りにおいて、開放状態ではPSFが円形となるが、半開放状態では、絞りで三角形に光線がカットされる。そのため絞り近傍の収差制御面を通る光線も必然的にカットされることになる。
結果として、深度拡張作用を有していた光線は、主光線に対し不均一にカットされる。
すなわち、図8(A)に示すように、開放時に円形状だったPSF(図7)が、半開放時には図8(B)に示すように、三角形になってしまうため、同様の深度拡張作用を生じさせられなくなる。
【0037】
一方、本実施形態の可変絞り214Aでは、半開放時に円形状を保った絞りによるPSFは、図7(B)示すように、図7(A)に示す開放時同様の円形のPSFとなるため、開放時同様の深度拡張作用を保持可能である。
【0038】
次に、可変絞りに液晶素子により形成される外部依存型収差制御素子を適用した例を説明する。
【0039】
図9は、本実施形態に係る液晶素子を含む収差制御光学系を形成する撮像レンズユニットの基本構成を示す図である。
【0040】
図9の収差制御光学系210Bが、図4の収差制御光学系210Aは、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御素子を適用した光学系として構成されている。
具体的には、第3レンズ213および収差制御部213aの代わりに、液晶素子により形成される外部依存型収差制御素子217が適用されている。
そして、後述するように、可変絞り214bとして、応答性の関係等から液晶デバイス(液晶素子)により形成される。
【0041】
本収差制御光学系210Bの収差特性は、可変絞り214bの口径が変化に応じて収差制御光学系の収差制御機能を変化させることが可能に構成されている。
本実施形態の収差制御光学系210Bは、可変絞り214bの口径にかかわらず、当該口径内で球面収差の屈折率における変曲点を少なくとも一つ有する。
そして、屈折率の変曲点における中心部との屈折率の差分量が、光軸OXの中心部から周辺部に向かって増加する。
また、変曲点と光軸中心部との屈折率の差分量が、可変絞り214bの口径が小さくなるほど大きくなる。
【0042】
上述したように、収差制御光学系210Bにおいて、可変絞り214の口径変化に応じて収差制御光学系の収差制御機能を変化させることが可能な素子として、外部依存型収差制御素子217を適用している。
外部依存型収差制御素子217は、結像レンズによる撮像素子220の受光面への結像の収差を変化させる機能を有する収差制御機能の発現およびその発現度合い、並びに非発現が外部に依存する。
外部依存型収差制御素子217は、制御装置290により収差制御機能が非発現状態に制御されているときは、収差制御光学系210Bがピントが合った状態となって良好な結像性能を有し、発現状態に制御されているときは収差制御光学系210Bが深度が拡張した状態となる。
そして、外部依存型収差制御素子217は、この収差制御機能が発現されているときは、制御装置200の制御の下、収差制御機能の発現の度合いが可変絞り214bの変化に合わせて変化する。
【0043】
図10(A)および(B)は、本実施形態に係る外部依存型収差制御素子の構成例および機能を説明するための図である。
【0044】
外部依存型収差制御素子217は、図10(A),(B)に示すように、たとえば液晶素子(液晶レンズ)217aにより構成することが可能である。
この液晶レンズ217aは、素子に与える電圧を切り替えることで、光線の集光状態を変化させることができる。
たとえば、制御装置290により電圧を印加されると、図10(A)に示すように、液晶レンズ217aは収差制御機能が発現状態に制御され、収差制御光学系210Bが複数焦点状態となる。
一方、制御装置200により電圧印加が停止(あるいは発現状態より低レベルに設定)されると、図10(B)に示すように、液晶素子217aは収差制御機能が非発現状態に制御され、収差制御光学系210Bが1焦点状態となる。
本実施形態においては、液晶レンズ217aは、発現状態にあるとき、制御装置200の制御の下、収差制御機能の発現の度合いが可変絞り214bの変化に合わせて変化する。
この収差制御機能の発現の度合いの制御においては、液晶レンズ217aへの印加電圧を、たとえばリニアに、あるいは段階的に変化させる。
これにより、液晶レンズ217aは、印加電圧の変化に応じて複数焦点状態が変化する。
【0045】
なお、本実施形態において、可変絞り214bは、前述した図5のアイリス羽可変絞りを採用することも可能であるが、本例のように、外部依存型収差制御素子217を液晶レンズ217aで形成する場合、応答性の関係等から可変絞りを液晶デバイスで形成することが望ましい。
以下に液晶デバイスにより形成される可変絞り214について説明する。
【0046】
たとえば図11に示すように、液晶デバイス300は、基本的にスイッチングトランジスタTSW、液晶素子LQD、および蓄積容量CSにより形成される画素がマトリクス状に配列される。
スイッチングトランジスタTSWのソースが信号線LSGに接続され、ゲートが走査線LSCNに接続される。
そして、制御装置200により図示しない信号線ドライバおよび走査線ドライバを駆動し、複数の画素PXLにおける光の透過、遮光を制御することにより、図12に示すように、略円形の必要に応じた口径を得ることができる。
【0047】
以上に述べた収差制御機能とは、意図的に収差を発生させる機能を意味する。
収差は、特に球面収差を適切に制御することで画像復元処理を施さなくても深度拡張することができる。
具体的には、本実施形態においては、ディフォーカスMTFのピントを分割することでアウトフォーカスにおけるOTFの変化を制御できる。ピントを分割させるために、球面収差に変曲点を持つようにする。
収差制御を行う外部依存型収差制御素子217を液晶レンズ217aで構成し、可変絞り214bとのハイブリット構成とすることで、球面収差の制御がより容易になる。
【0048】
ここで、上記構成による収差制御光学系210Bは、絞り口径を変化させることで複数のF値が選択可能であり、選択可能なF値のいずれにおいても、収差制御機能の効果により深度拡張を行う。
そのために、深度拡張を行っているときの液晶レンズ217aの屈折率は、中心部(光軸OXとの交点)から周辺部に向かい、絞り口径内で、ひとつ以上の屈折率の変曲点を有するようにする。
本実施形態においては、この屈折率の変曲点における中心部との屈折率の差分量は、中心部から周辺部に行くに従い大きくなるように構成される。
通常、絞りを通過した光線は、周辺部を通過した光線ほど、中心部を通過した光線との像面上における角度の開きが大きくなる(NAが大きい)。
すなわち、通常の光学系では、NAが大きい光線束ほど、焦点深度は浅くなるため、これを相殺するために、発生する収差量(球面収差量)を大きくする方が望ましい。
また、本実施形態においては、屈折率の変曲点における中心部との屈折率の差分量は、F値が暗くなるほど大きくなるように構成される。F値が暗いほど、焦点深度が長くなるため、相応の深度拡張を図るためには、大きな収差量を必要とするためである。
【0049】
さらに、収差制御光学系210Bにおいては、収差制御光学液210Aと同様に、収差制御機能を有する収差制御面を内包する収差制御光学系を用いてPSFを2画素以上にまたがるようにし、所定の周波数において偽解像しない主像面シフト領域でディフォーカスに対するMTF特性が2つ以上のピークを持つ深度拡張光学系として構成される。
一般的な光波面変調機能を用いた深度拡張光学系では物体距離に対するMTF特性をほぼ一定にすることによって深度を拡張するが、これではそれと引き換えにMTF特性のピーク値が下がってしまう。
本実施形態においては、収差制御機能を用いてピークを複数持つようにすることで、ピーク値の低下を抑えつつ深度拡張を実現できる。
球面収差を適切に制御することで画像復元処理を施さなくても深度拡張することができる。
具体的には、本実施形態の収差制御光学系210Bは、主に球面収差を発生させる収差制御素子、または収差制御面によりディフォーカスに対するMTFのピークを複数に分ける(ここでは2分する)ことでアウトフォーカスにおけるOTFの変化を制御でき、深度を拡張することができる。そして、ピークを分割させるために、球面収差に変曲点を持たせる。
上述したように、球面収差に2つ以上の変曲点を適切に持たせることで複数の絞り口径の選択に対し、深度拡張を実現することができる。
そして、上述したように、深度拡張作用を期待されるF値の中で、最も明るいF値の時に光線が通過する収差制御面の領域と最も暗いF値の時に光線が通過する収差制御面の領域の間で、ひとつ以上の変曲点を有することが望ましい。
この構成を採用することにより、F値を変化させた場合でも効率よく深度拡張作用を得られる。
【0050】
以下、本実施形態に係る収差制御光学系210A,210Bの特徴的な構成、機能についてさらに詳述する。
【0051】
図13(A)、(B)および図14(A),(B)は、本実施形態に係る収差制御光学系の球面収差発生量について説明するための図である。図13は撮像素子(センサ)を固定したときのセンサとPSFとの関係を示し、図14は収差制御光学系を固定したときのセンサとPSFとの関係を示している。
【0052】
たとえば、撮像素子220はある画素ピッチを有するセンサであるとする。その場合に、本実施形態では、球面収差を発生させてPSFを1画素PXLより大きくする必要がある。
図13(A)および図14(A)に示すように、1画素PXLの中にPSFが納まってしまうサイズで球面収差を発生させてもそれは通常の光学系と同じである。通常光学系では一般的にピント位置の中心PSFのサイズが最小となる。
これに対して、本実施形態に係る収差制御光学系210A、210Bでは、図13(B)に示すように、PSFはアウトフォーカスに限らずピント位置までも1画素PXLに収まらないサイズに制御される。
【0053】
次に、収差制御光学系に適した撮像素子(センサ)選定について説明する。
たとえばあるPSFサイズを持った収差制御光学系があるとすると、図14(B)に示すように、センサの画素ピッチがPSFのサイズより小さいものを選ぶことが好ましい。
仮に画素ピッチがPSFより大きいものを選んだとすると通常光学系と同じとなってしまい、そこがピントとなってしまう。よって、その場合、収差制御光学系の球面収差の効果を有効に得ることができない。
【0054】
図15(A)〜(C)は、通常光学系および本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示す図である。
図15(A)は通常光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示し、図15(B)は本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示し、図15(C)は物体距離に対するMTF特性をほぼ一定にした深度拡張光学系のディフォーカスに対するMTFの状態を示している。
【0055】
通常の光学系では、図15(A)に示すように、ピント位置が一つで中心にある。両サイドにある二つ目の山は落ちきって反転しているため、偽解像となる。
そのため、解像する領域は網掛けで示す主像面シフト領域MSARとなる。通常光学系の1つのピークを深度拡張すると、図15(C)に示すように、MTFは大きく劣化してしまう。
【0056】
そこで、本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスに対するMTFでは、図15(B)に示すように、通常光学系において一つのピークPK1であったのを2つのピークPK11、PK12に分割させている。
MTFは若干劣化するが、深度は2つに分割したことによって2倍程度に伸びていて、さらにひとつのピークを深度拡張するより劣化を抑えていることがわかる。
【0057】
図16(A)〜(C)および図17(A)〜(C)は、本実施形態の収差制御光学系において、球面収差曲線(カーブ)によって任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを説明する図である。
【0058】
図16(A)〜(C)は、高周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示しており、図16(A)が球面収差カーブを示し、図16(B)が低周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示し、図16(C)が高周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示している。
【0059】
図17(A)〜(C)は、低周波のOTF変動を抑えた収差制御光学系における任意の周波数でディフォーカスに対するMTFが2分できることを示しており、図17(A)が球面収差カーブを示し、図17(B)が低周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示し、図17(C)が高周波での主像面シフト領域エリアMSARのMTFのピークの状態を示している。
【0060】
図17(A)〜(C)からわかるように、低周波の深度を伸ばすためには、球面収差の振幅を大きくすれば良い。
振幅の大きさをコントロールすることによって任意の周波数のディフォーカスMTFを2分割することができる。つまり任意の周波数の深度を拡張することができる。
【0061】
なお、本実施形態において、ディフォーカスに対する低周波および高周波とは次のように定義する。
使用する固体撮像素子(撮像素子220)の画素ピッチから決まるナイキスト周波数の半分以上の周波数を高周波、半分より低い周波数を低周波とする。
ただし、ナイキスト周波数は下記の通りに定義する。
ナイキスト周波数=1/(固体撮像素子の画素ピッチ×2)
【0062】
図18(A)〜(C)は、絞り径の違いによる球面収差とディフォーカスMTF、および本光学系と通常光学系と深度を比較して示す図である。
図18(A)は絞りを開放した状態を示し、図18(B)は絞りを中間に絞った状態を示し、図18(C)は絞りを絞った状態を示している。
【0063】
絞りを最も開放した状態では、図18(A)に示すように、複数の変曲点を持つ絞り近傍の収差制御面において光線が通過するために、球面収差カーブにおいても複数の変曲点を持つ。
そこから絞りを狭めても、図18(B)および(C)に示すように、変曲点が少なくともひとつ以上残る状態まで深度拡張作用を持続できる。
【0064】
図19(A)〜(C)は、絞り口径の違いによる通常光学系と本実施形態に係る収差制御光学系のディフォーカスMTFを比較して示す図である。
図19(A)は可変絞りを開放した状態を、図19(B)は可変絞りを中間的に絞った状態を、図19(C)は可変絞りを絞った状態を示している。
【0065】
図19(A)〜(C)において、網掛け部は深度領域を示す。
図19(A)〜(C)からわかるように、選択可能なF値(絞り口径)によらず同等レベルの深度拡張効果をもたせるためには、絞り口径が小さくなるに従い、その中心から離れた同じ位置での光学変調量は大きい方が良い。
【0066】
以上、本実施形態に係る光学系の特徴的な構成、機能、効果について説明した。
以下に、撮像素子、画像処理部等の他の構成部分の構成、機能について説明する。
【0067】
撮像素子220は、たとえば図4に示すように、第4レンズ216側から、ガラス製の平行平面板(カバーガラス)221と、CCDあるいはCMOSセンサ等からなる撮像素子の撮像面222が順に配置されている。
収差制御光学系210Aを介した被写体OBJからの光が、撮像素子220の撮像面222上に結像される。
なお、撮像素子220で撮像される被写体分散像は、収差制御面213aあるいは外部依存型収差制御素子217により撮像素子220上ではピントが合わず、深度の深い光束とボケ部分が形成された像である。
【0068】
そして、図3に示すように撮像素子220は、収差制御光学系210で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、アナログフロントエンド部230を介して画像処理装置240に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図3においては、撮像素子220を一例としてCCDとして記載している。
【0069】
アナログフロントエンド部230は、タイミングジェネレータ231、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ232と、を有する。
タイミングジェネレータ231では、撮像素子220のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ232は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像処理装置240に出力する。
【0070】
信号処理部の一部を構成する画像処理装置240は、前段のAFE230からくる撮像画像のデジタル信号を入力し、エッジ強調等の画像処理を施し、収差制御光学系201の収差により低下したコントラストを向上させ、後段のカメラ信号処理部(DSP)250に渡す。
【0071】
カメラ信号処理部(DSP)250は、カラー補間、ホワイトバランス、YCbCr変換処理、圧縮、ファイリング等の処理を行い、メモリ260への格納や画像モニタリング装置270への画像表示等を行う。
【0072】
制御装置290は、露出制御を行うとともに、操作部280などの操作入力を持ち、それらの入力に応じて、システム全体の動作を決定し、AFE230、画像処理装置240、DSP250、外部依存型収差制御素子217、可変絞り214,214b等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
【0073】
以下、本実施形態の光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的に説明する。
【0074】
本実施形態においては、収差制御光学系を採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
【0075】
画像処理装置240は、上述したように、撮像素子220による1次画像FIMを受けて、エッジ強調等の画像処理を施し、収差制御光学系210A、210Bの収差により低下したコントラストを向上させる処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
【0076】
画像処理装置240のMTF補正処理は、たとえば図20の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、図20中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図20中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、収差制御面または収差制御光学素子を用いずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
【0077】
本実施形態においては、図20に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、図21に示すようにエッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、図20のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、図21に示すようになる。
【0078】
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
【0079】
このように、実施形態に係る撮像装置200は、基本的に、1次画像を形成する収差制御光学系210および撮像素子220と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240からなり、光学系システムの中に、収差制御素子を新たに設けるか、またはガラス、プラスチックなどのような光学素子の面を収差制御用に成形したものを設けることにより、球面収差を意図的に発生させて焦点深度を拡張した像を生成し、そのような像をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子220の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置240を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子220による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置240で行う。
【0080】
次に、本実施形態および通常光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
【0081】
図22は、通常の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図23は、収差制御素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、図24は、本実施形態に係る撮像装置の画像処理後のMTFのレスポンスを示す図である。
【0082】
図からもわかるように、収差制御面または収差制御素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が収差制御面または収差制御素子を挿入してない光学系よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像を、後段の画像処理装置240によって画像処理することにより、MTFのレスポンスを向上させることができる。
ただし、画像処理を行うとノイズが増加してしまう場合には、好適にはMTFのレスポンスを向上させるような画像処理は行わないようにすることも可能である。
上述したように、目的に応じて意図的に収差を発生させる光学系を収差制御光学系という。
【0083】
図23に示した、収差制御光学系のOTFの絶対値(MTF)はナイキスト周波数において0.1以上であることが好ましい。
なぜなら、図24に示した復元後のOTFを達成するためには画像処理でゲインを上げることになるが、センサのノイズも同時に上げることになる。そのため、ナイキスト周波数付近の高周波ではできるたけゲインを上げずに画像処理を行うことが好ましい。
通常の光学系の場合、ナイキスト周波数でのMTFが0.1以上あれば解像する。
したがって、画像処理前のMTFが0.1以上あれば、画像処理でナイキスト周波数でのゲインを上げずに済む。画像処理前のMTFが0.1未満であると、画像処理後の画像がノイズの影響を大きく受けた画像になるため好ましくない。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、可変絞り214、収差を意図的に発生させる収差制御機能を有する収差制御光学系210、撮像素子220、および1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置240を含み、可変絞り214の口径の変化に応じて収差制御光学系の収差制御機能を変化させることが可能に構成されている。
そして、本実施形態の収差制御光学系210は、光軸を中心に回転対象な特性を有し、可変絞り214も口径を変化させても光軸中心で略円形の形状を形成するように構成される。
本実施形態の収差制御光学系210は、可変絞り214の口径にかかわらず、当該口径内で球面収差の屈折率における変曲点を少なくとも一つ有する。
そして、屈折率の変曲点における中心部との屈折率の差分量が、光軸OXの中心部から周辺部に向かって増加する。
また、前記変曲点と光軸中心部との屈折率の差分量が、可変絞り214の口径が小さくなるほど大きくなる。
【0085】
したがって、本実施形態によれば、絞り径を変化させても深度拡張機能の低下を防止することが可能で、広い範囲の被写体輝度においても良好な深度拡張機能を実現することができる。
【0086】
また、本実施形態によれば、収差制御光学系は、収差を意図的に発生させる収差制御機能を持つ収差制御素子を含む、もしくは収差制御機能を有する収差制御面を内包する収差制御光学系を用いてPSFを2画素以上にまたがるようにし、所定の周波数において偽解像しない主像面シフト領域でディフォーカスに対するMTF特性が2つ以上のピークを持つ深度拡張光学系として形成されていることから、以下の効果を得ることができる。
【0087】
本実施形態においては、収差制御機能を用いてディフォーカスに対するMTF特性において2つ以上のピークを複数持つようにすることで、ピーク値の低下を抑えつつ、収差制御素子を持たない一般的な光学系よりも深度を拡張できる。
すなわち、本実施形態によれば、球面収差を適切に制御することで、画像復元処理を施さなくても深度を拡張することができ、適切な画質の、ノイズの影響が小さい良好な画像を得ることが可能となる。
【0088】
そして、本実施形態に係る撮像装置200は、デジタルカメラやカムコーダー等の民生機器の小型、軽量、コストに考慮が必要な光学システムに使用することが可能である。
また、収差制御光学系210の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0089】
なお、本実施形態に係る撮像装置200が適用可能な電子機器としては、デジタルスチルカメラの他に、情報読み取り装置、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0090】
200・・・撮像装置、210・・・収差制御光学系、211・・・第1レンズ、212・・・第2レンズ、213・・・第3レンズ、213a・・・収差制御面、214,214b・・・可変絞り、215・・・第4レンズ、216・・・第5レンズ、217・・・外部依存型収差制御素子、217a・・・液晶素子(液晶レンズ)、220・・・撮像素子、230・・・アナログフロントエンド部(AFE)、240・・・画像処理装置、250・・・カメラ信号処理部、280・・・操作部、290・・・制御装置、MSAR・・・主像面シフト領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球面収差を発生させる収差制御機能を有する収差制御部を含む収差制御光学系と、
光軸を中心とした略円形の口径を形成して前記収差制御光学系を通過する光束を制限し、当該口径を可変とする可変絞りと、
前記収差制御光学系および前記可変絞りを通過した被写体像を撮像する撮像素子と、を有し、
前記収差制御部は、
発生する前記収差が光軸を中心に回転対称で、前記球面収差の変曲点を少なくとも一つ有する
撮像装置。
【請求項2】
前記可変絞りは、
複数枚の羽を有し、当該羽を可動とすることにより前記口径を可変させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記可変絞りは、
液晶素子によって構成され、前記光束の通過部分と遮光部分を変化させて前記口径を可変させる
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記収差制御部は、
前記可変絞りの口径にかかわらず当該口径内で前記球面収差の変曲点を有する
請求項1から3のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記収差制御光学系は、
前記収差制御機能を有する収差制御部が前記絞りに隣接して配置されている
請求項1から4のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記収差制御部は、
球面収差を発生させることによって深度を拡張させる機能を含む
請求項1から5のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子で得られた画像信号に対して画像処理を施し、前記収差制御光学系の収差により低下した画像特性を向上させる画像処理部を有する
請求項1から6のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像装置を有し、
前記撮像装置は、
球面収差を発生させる収差制御機能を有する収差制御部を含む収差制御光学系と、
光軸を中心とした略円形の口径を形成して前記収差制御光学系を通過する光束を制限し、当該口径を可変とする可変絞りと、
前記収差制御光学系および前記可変絞りを通過した被写体像を撮像する撮像素子と、を有し、
前記収差制御部は、
発生する前記収差が光軸を中心に回転対称で、前記球面収差の変曲点を少なくとも一つ有する
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−114722(P2011−114722A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270781(P2009−270781)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】