説明

操作ノブおよびその製造方法

【課題】安価で意匠性に優れた操作ノブを提供する。
【解決手段】第1および第2の凸部4a,4bを有する雄型4と、内面全体にシボが形成された雌型5とで構成された成形金型6を準備し、インサートフィルム3を雌型5にセットした後、両凸部4a,4bの型締め力によってインサートフィルム3の表面の一部に雌型5のシボを転写すると共に、キャビティ内に射出充填する不透明樹脂7の射出圧によってインサートフィルム3の表面の残部に雌型5のシボを転写するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用エアコン装置等の操作パネルに備えられる操作ノブとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に車載用の操作ノブにおいては、自身の機能を示す表示部やオン/オフの切替動作を示す表示部が設けられており、これら表示部を操作ノブの背面側に配置した光源の光によって照光するようになっている。この種の操作ノブでは表示部を明るく照光させる必要があるため、従来より、成形金型を用いて射出成形された樹脂ベースの一部に薄肉部を設けると共に、予め表示部が印刷されたインサートフィルムを樹脂ベースの表面に積層し、光源の光が薄肉部を透過して表示部に照射されるように構成した操作ノブが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−97026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来の操作ノブでは、光源の光が樹脂ベースの薄肉部を透過してインサートフィルムの表示部に照射されるようになっているため、光透過性樹脂を用いて樹脂ベースを成形した後に、樹脂ベースの非表示部分に光漏れ処理としての遮光性塗料を塗布する必要があり、このことが製造コストを上昇させる大きな要因となっていた。また、前述した従来の操作ノブでは、予め成形金型に形成した凹凸を樹脂ベースに転写することにより、薄肉部を含めた樹脂ベースの裏面に光拡散用のシボ加工を施すことができるが、樹脂ベースの外表面を覆うインサートフィルムにシボ加工を施すことができないため、インサートフィルムのツルツルな外表面によって操作ノブの意匠性が悪くなるという問題もあった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、安価で意匠性に優れた操作ノブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の操作ノブは、貫通孔を有する不透明樹脂からなる樹脂ベースと、この樹脂ベースの表面に積層されたインサートフィルムとを備え、前記インサートフィルムの表面に、前記樹脂ベースの射出圧によるシボ加工と、前記貫通孔に対応する金型の型締め力によるシボ加工とが施されている構成にした。
【0006】
このように構成された操作ノブでは、不透明樹脂を用いて成形された樹脂ベースに貫通孔が設けられ、この貫通孔を含めて樹脂ベースの表面全体がインサートフィルムで覆われているので、光源からの光は貫通孔を通過してインサートフィルムに照射され、それ以外の部分では樹脂ベースによって遮断される。したがって、光漏れ処理が不要な不透明樹脂を使用することができ、その分、操作ノブの低コスト化を図ることができる。また、成形金型を用いて操作ノブを成形する際に、貫通孔を除く樹脂ベースを覆う部分のインサートフィルムの表面には射出圧によるシボ加工を施すことができると共に、貫通孔を覆う部分のインサートフィルムの表面には金型の型締め力によるシボ加工を施すことができるため、インサートフィルムの表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブを実現することができる。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明による操作ノブの製造方法は、インサートフィルムを成形金型に挟み込み、この成形金型に備えられる凸部の型締め力によって前記インサートフィルムの表面の一部にシボ転写を行うと共に、キャビティ内に射出充填する不透明樹脂の射出圧によって前記インサートフィルムの表面の残部にシボ転写を行うようにした。
【0008】
本発明による操作ノブの製造方法では、インサートフィルムを成形金型に挟み込んだ時の凸部の型締め力によってインサートフィルムの表面の一部にシボ転写を行うと共に、キャビティ内に不透明樹脂を射出充填した時の射出圧によってインサートフィルムの表面の残部にシボ転写を行うようにしたので、インサートフィルムの表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブを実現することができる。また、このような方法で製造された操作ノブにおいては、成形金型の凸部に対応する貫通孔が樹脂ベースに形成され、この貫通孔を含めて樹脂ベースの表面全体がインサートフィルムで覆われることになるので、光源からの光は貫通孔を通過してインサートフィルムに照射され、それ以外の部分では樹脂ベースによって遮断される。したがって、光漏れ処理が不要な不透明樹脂を用いて樹脂ベースを成形することができ、その分、操作ノブの低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の操作ノブは、樹脂ベースの貫通孔を含めた表面全体がインサートフィルムで覆われており、光源からの光は貫通孔を通過してインサートフィルムに照射され、それ以外の部分では樹脂ベースによって遮断されるため、光漏れ処理が不要な不透明樹脂を用いて樹脂ベースを成形することができ、その分、操作ノブの低コスト化を図ることができる。また、成形金型を用いて操作ノブを成形する際に、貫通孔を除く樹脂ベースを覆う部分のインサートフィルムの表面には射出圧によるシボ加工を施すことができると共に、貫通孔を覆う部分のインサートフィルムの表面には金型の型締め力によるシボ加工を施すことができるため、インサートフィルムの表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブを実現することができる。
【0010】
本発明による操作ノブの製造方法は、インサートフィルムを成形金型に挟み込んだ時の凸部の型締め力によってインサートフィルムの表面の一部にシボ転写を行うと共に、キャビティ内に不透明樹脂を射出充填した時の射出圧によってインサートフィルムの表面の残部にシボ転写を行うようにしたので、インサートフィルムの表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブを実現することができる。また、成形金型の凸部に対応する貫通孔が樹脂ベースに形成され、この貫通孔を含めた樹脂ベースの表面全体がインサートフィルムで覆われることになり、光源からの光は貫通孔を通過してインサートフィルムに照射され、それ以外の部分では樹脂ベースによって遮断されるため、光漏れ処理が不要な不透明樹脂を用いて樹脂ベースを成形することができ、その分、操作ノブの低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施形態例に係る操作ノブの平面図、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3〜図5は該操作ノブの製造工程を示す説明図である。
【0012】
図1と図2に示すように、本実施形態例に係る操作ノブ1は、不透明樹脂を用いて成形された樹脂ベース2と、この樹脂ベース2の表面全体を覆うように積層・一体化されたインサートフィルム3とで構成されている。樹脂ベース2はポリカーボネイト等の熱可塑性樹脂で殆ど光を透過しない遮光性材料からなり、その天面の所定位置には第1の貫通孔2aと第2の貫通孔2bが形成されている。インサートフィルム3はポリカーボネイト等の無色透明または有色透過性のフィルムからなり、その下面の所定位置には第1の表示部3aと第2の表示部3bが印刷形成されている。第1の貫通孔2aの開口端に位置し、第2の表示部3bは第2の貫通孔2bの開口端に位置している。また、インサートフィルム3の外表面の第1および第2の貫通孔2a,2bを覆う部分には梨地やヘアーライン等の第1のシボ加工3cが施されており、インサートフィルム3の外表面の他の部分には同様の第2のシボ加工3dが施されている。なお、第1の表示部3aは操作ノブ1の機能を示す機能表示部であり、本実施形態例の場合、車載用エアコン装置の車内気と車外気の切替機能を示す絵柄が印刷されている。一方、第2の表示部3bは操作ノブ1のオン/オフの切替動作を示す動作表示部であり、本実施形態例の場合、円形のマークが印刷されている。
【0013】
次に、上記の如く構成された操作ノブ1の製造方法を主として図3〜図5を参照して説明する。
【0014】
図3に示すように、まず、雄型4と雌型5とで構成された成形金型6を準備し、これら雄型4と雌型5を型開き状態とする。ここで、雄型4は第1の凸部4aと第2の凸部4bを有し、雌型5の内面全体にはシボとしての微細な凹凸が形成されている。
【0015】
次に、第1の表示部3aと第2の表示部3bが印刷形成されたインサートフィルム3を準備し、このインサートフィルム3を予め所望形状にフォーミングした後、図4に示すように、このインサートフィルム3を型開き状態の雌型5の内面にセットする。なお、インサートフィルム3を樹脂ベース2の上面にのみ積層した操作ノブ1とすることも可能であり、その場合は、所望形状にフォーミングされていないインサートフィルム3を雄型4と雌型5間のパーティング面にセットすれば良い。
【0016】
次に、図5に示すように、この状態で雄型4と雌型5を型締めした後、雄型4に設けた図示せぬゲートを介して両型4,5間のキャビティ内に不透明樹脂7を射出充填する。このとき、第1および第2の凸部4a,4bの型締め力によってインサートフィルム3の表面の一部(領域Sの部分)に雌型5のシボが転写されると共に、不透明樹脂7の射出圧によってインサートフィルム3の残部(領域Sを除く部分)に雌型5のシボが転写される。しかる後、雄型4と雌型5を型開きし、図示せぬイジェクトピンを用いて冷却・固化した不透明樹脂7を雄型4から離型することにより、図1と図2に示すような操作ノブ1を得ることができる。
【0017】
このような方法によって製造された操作ノブ1は、雄型4の両凸部4a,4bに対応する第1の貫通孔2aと第2の貫通孔2bが樹脂ベース2に形成され、これら貫通孔2a,2bを含めて樹脂ベース2の表面全体がインサートフィルム3で覆われているので、図2に示すように、ランプやLED等の光源8からの光は貫通孔2a,2bを通過してインサートフィルム3の第1の表示部3aと第2の表示部3bに照射され、それ以外の部分では不透明樹脂7からなる樹脂ベース2によって遮断されることになる。したがって、光漏れ処理が不要な不透明樹脂7を用いて樹脂ベース2を成形することができ、その分、操作ノブ1の低コスト化を図ることができる。また、インサートフィルム3を成形金型6に挟み込んだ時の両凸部4a,4bの型締め力によってインサートフィルム3の表面の一部に第1のシボ加工3cを施すことができると共に、キャビティ内に不透明樹脂7を射出充填した時の射出圧によってインサートフィルム3の表面の残部に第2のシボ加工3dを施すことができるので、インサートフィルム3の表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブ1を実現することができる。
【0018】
図6は本発明の第2実施形態例に係る操作ノブの断面図であり、本実施形態例に係る操作ノブ9は、遮光性樹脂よりも光透過性が高いスモークと呼ばれる不透明樹脂を用いて成形された樹脂ベース10と、この樹脂ベース10の表面全体を覆うように積層・一体化されたインサートフィルム11とで構成されている。樹脂ベース10の天面の所定位置には薄肉部10aと貫通孔10bが形成されており、図示省略されているが、インサートフィルム11の下面には薄肉部10aに対応する機能表示部と貫通孔10bに対応する動作表示部が印刷形成されている。また、インサートフィルム11の外表面の貫通孔10bを覆う部分には第1のシボ加工11aが施されており、インサートフィルム11の外表面の他の部分には第2のシボ加工11bが施されている。
【0019】
このように構成された操作ノブ9においては、光源からの光が貫通孔10bを通過してインサートフィルム3の動作表示部に照射されると共に、光源からの光が薄肉部10aを透過してインサートフィルム3の機能表示部に照射され、それ以外の部分ではスモークと呼ばれる不透明樹脂(有色光透過性樹脂)からなる樹脂ベース10によってほぼ遮断されることになる。したがって、光漏れ処理が不要な不透明樹脂を用いて樹脂ベース10を成形することができ、その分、操作ノブ9の低コスト化を図ることができる。また、本実施形態例に係る操作ノブ9も前述した第1実施形態例と基本的に同様の方法によって製造されるが、成形金型の凸部の型締め力によってインサートフィルム11の表面の一部に第1のシボ加工11aを施すことができると共に、キャビティ内に不透明樹脂を射出充填した時の射出圧によってインサートフィルム11の表面の残部に第2のシボ加工11bを施すことができるので、インサートフィルム11の表面全体に施されたシボ加工によって意匠性に優れた操作ノブ1を実現することができる。
【0020】
なお、上記各実施形態例では、機能表示部(第1の表示部)と動作表示部(第2の表示部3)を有する操作ノブについて説明したが、本発明は機能表示部のみを有する操作ノブについても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態例に係る操作ノブの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】該操作ノブの製造工程を示す説明図である。
【図4】該操作ノブの製造工程を示す説明図である。
【図5】該操作ノブの製造工程を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態例に係る操作ノブの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 操作ノブ
2 樹脂ベース
2a 第1の貫通孔
2b 第2の貫通孔
3 インサートフィルム
3a 第1の表示部
3b 第2の表示部
3c 第1のシボ加工
3d 第2のシボ加工
4 雄型
4a 第1の凸部
4b 第2の凸部
5 雌型
6 成形金型
7 不透明樹脂
8 光源
9 操作ノブ
10 樹脂ベース
10a 薄肉部
10b 貫通孔
11 インサートフィルム
11a 第1のシボ加工
11b 第2のシボ加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有する不透明樹脂からなる樹脂ベースと、この樹脂ベースの表面に積層されたインサートフィルムとを備え、前記インサートフィルムの表面に、前記樹脂ベースの射出圧によるシボ加工と、前記貫通孔に対応する金型の型締め力によるシボ加工とが施されていることを特徴とする操作ノブ。
【請求項2】
インサートフィルムを成形金型に挟み込み、この成形金型に備えられる凸部の型締め力によって前記インサートフィルムの表面の一部にシボ転写を行うと共に、キャビティ内に射出充填する不透明樹脂の射出圧によって前記インサートフィルムの表面の残部にシボ転写を行うことを特徴とする操作ノブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−94869(P2010−94869A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266375(P2008−266375)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】