説明

攪拌装置及び自動分析装置

【課題】用いる容器の製造が容易であり、分析装置相互間の攪拌性能のバラツキを抑えることが可能な攪拌装置及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】液体Lを保持する容器21と、液体に接触して液体を攪拌する音波を液体に照射すると共に、容器の壁の一部を兼ねる表面弾性波素子22とを備えた攪拌装置20及び分析装置。表面弾性波素子は、圧電基板と、圧電基板上に設けられ、液体を攪拌する音波を発生する振動子とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、攪拌装置及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、音波によって液体を攪拌、混合する音波発生手段を備えた分析装置は、装置毎の攪拌、混合に関する性能のバラツキを少なくするため、前記液体を保持し、音波伝達媒体となる容器の壁の音波伝達方向の厚さを、伝搬する音波の半波長の整数倍を避けた値としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。これは、音波伝達媒体の音波伝達方向の厚さが伝搬する音波の半波長の整数倍であると音波の透過率が最大となるが、厚さが少しでも変化すると、透過率が大きく変動して透過する音波エネルギーが大きく変化してしまうからである。
【0003】
【特許文献1】特開平10−300651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析装置相互間の攪拌性能のバラつきを少なくするため、音波伝達媒体となる容器の壁の音波伝達方向の厚さを、伝搬する音波の半波長の整数倍を避けた値にしようとすると、高周波の音波を使用する場合、容器の壁の厚さを精密に制御することが必要となる。この場合、容器の製造精度上、壁の厚さを音波の半波長の整数倍を避けた値に精密に制御することが難しく、容器の製造が技術的に困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、用いる容器の製造が容易であり、分析装置相互間の攪拌性能のバラツキを抑えることが可能な攪拌装置及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る攪拌装置は、液体を保持する容器と、前記液体に接触して前記液体を攪拌する音波を当該液体に照射すると共に、前記容器の壁の一部を兼ねる音波発生手段音波発生手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、前記液体を攪拌する音波を発生する電極と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る攪拌装置は、上記の発明において、音波発生手段は、前記電極を被覆し、前記電極が発生する音波の波長よりも厚みが薄い保護膜を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波素子であって、前記電極は、櫛歯状電極であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記容器は、前記液体を保持する凹部を有し、前記音波発生手段は、前記容器の底壁をなすことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る攪拌装置は、上記の発明において、前記容器は、内面が複数の平面又は曲面からなる壁から形成され、前記音波発生手段は、前記複数の平面又は曲面からなる壁のうち最小面積の壁をなすことを特徴とする。
【0012】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項7に係る自動分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、前記攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の攪拌装置は、音波発生手段が液体に接触して液体を攪拌する音波を液体に照射すると共に、容器の壁の一部を兼ね、本発明の自動分析装置は、前記攪拌装置を備えているので、音波伝達媒体となる容器の壁の音波伝達方向の厚さを、伝搬する音波の半波長の整数倍を避けた値にする必要がなく、容器の壁の厚さを精密に制御する必要がないので、用いる容器の製造が容易になり、分析装置相互間の攪拌性能のバラツキを抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の攪拌装置の概略構成図であり、自動分析装置で使用する反応容器及びキュベットホイールの一部の斜視図と共に示している。図3は、液体を保持した反応容器の断面図である。図4は、図3の反応容器の底面に取り付けた表面弾性波素子の正面図である。
【0015】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10及び試薬テーブル11が設けられ、攪拌装置20を備えている。
【0016】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0017】
検体分注機構5は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器21に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器21に分注する。
【0018】
キュベットホイール6は、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って複数の凹部6aが等間隔で設けられている。キュベットホイール6は、各凹部6aの半径方向両側に測定光が通過する開口6b(図2参照)が形成されている。キュベットホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4個分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。また、キュベットホイール6は、外周近傍に測光装置8及び洗浄装置9が配置され、下部には攪拌装置20が配置されている。
【0019】
測光装置8は、図1に示すように、キュベットホイール6の外周近傍に配置され、反応容器21に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置8は、前記光源と受光器がキュベットホイール6の凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に配置されている。
【0020】
洗浄装置9は、反応容器21から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置9は、測光終了後の反応容器21から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置9は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器21の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器21は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0021】
試薬分注機構10は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器21に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル11の所定の試薬容器12から試薬を順次反応容器21に分注する。
【0022】
試薬テーブル11は、検体テーブル3及びキュベットホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室11aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室11aは、試薬容器12が着脱自在に収納される。複数の試薬容器12は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示する情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0023】
ここで、試薬テーブル11の外周には、図1に示すように、試薬容器12に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の試薬情報を読み取り、制御部14へ出力する読取装置13が設置されている。
【0024】
制御部14は、検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置8、洗浄装置9、試薬分注機構10、試薬テーブル11、読取装置13、分析部15、入力部16、表示部17及び攪拌装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部14は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体の記録から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0025】
分析部15は、制御部14を介して測光装置8に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器21内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部14に出力する。入力部16は、制御部14へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部17は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0026】
攪拌装置20は、反応容器21に保持された液体を音波によって攪拌する装置であり、図2に示すように、反応容器21と、表面弾性波素子22と、送電体24とを有している。
【0027】
反応容器21は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、測光装置8の光源から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器21は、図2及び図3に示すように、側壁21a,21bと底壁とによって液体を保持する凹部21dが形成され、凹部21dの上部に開口21eを有する四角筒形状のキュベットであり、表面弾性波素子22が底壁を構成している。反応容器21は、凹部21dの内面に検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されており、対向する2つの側壁21aが分析光を透過させて液体の光学的測定に使用される。反応容器21は、側壁21aをキュベットホイール6の半径方向に向けると共に、側壁21bをキュベットホイール6の周方向に向けて、凹部6aに配置される。
【0028】
表面弾性波素子22は、反応容器21が保持する液体に接触して液体を攪拌する音波を液体に照射すると共に、反応容器21の壁の一部を兼ねる音波発生手段である。表面弾性波素子22は、図3及び図4に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板22a上に櫛歯状電極(IDT)からなる振動子22bとアンテナ22cが形成され、上面には振動子22b及びアンテナ22cを覆い、液体による短絡等から保護する保護膜23が形成されている。振動子22bは、RF送信アンテナ21aから発信される駆動信号(電力)をアンテナ22cで受信することによって音波を発生する。このように、表面弾性波素子22は、底部に設けて反応容器21の中で最小面積の底壁を構成するようにすると、他の壁を構成する場合に比べて面積を最小にすることができるため、製造が簡単で、製造コストを抑えることができる利点がある。
【0029】
ここで、保護膜23は、透過する表面弾性波の波長λよりも十分薄く形成する。例えば、保護膜23として二酸化ケイ素(SiO2)を使用する場合、二酸化ケイを透過する縦波の音速Vcは5600m/秒である。このため、周波数100MHzの音波で液体を攪拌する場合、縦波の波長はλ=56μmとなる。従って、保護膜23は、56μmよりも十分薄く形成すれば、音波の透過率に関しては表面弾性波素子22が液体Lと直接接触しているのと同じ状態となって無視することができ、例えば、スパッタ法では1/50λ以下の1μmの厚さに成膜することができる。このため、保護膜23は、スパッタ法等の半導体製造方法を使用すると、膜厚をnm単位で制御して成膜することができ、表面弾性波の周波数に関係なく、透過率の変動を抑えることができるので好ましい。ここで、図3は、保護膜23を図示する目的から厚さを誇張して表現している。
【0030】
送電体24は、表面弾性波素子22に電力を送電するもので、RF送信アンテナ24a、駆動回路24b及び制御回路24cを有している。送電体24は、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力をRF送信アンテナ24aから駆動信号として表面弾性波素子22に発信する。RF送信アンテナ24aは、キュベットホイール6に形成した凹部6aの底部に取り付けた送信基板(図12参照)上に形成されている。
【0031】
駆動回路24bは、制御回路24cからの制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号をRF送信アンテナ24aへ出力する。ここで、RF送信アンテナ24aと駆動回路24bとの間は、キュベットホイール6が回転しても電力が電送されるように、接触電極を介して接続され、キュベットホイール6の回転に伴って電力が供給されるRF送信アンテナ24aが順次切り替わる。制御回路24cは、駆動回路24bの作動を制御し、例えば、表面弾性波素子22が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、制御回路24cは、内蔵したタイマに従って駆動回路24bが発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器21に試薬分注機構10が試薬容器12から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器21は、キュベットホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。そして、検体が分注された反応容器21は、キュベットホイール6によって攪拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が順次攪拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液は、キュベットホイール6が再び回転したときに測光装置8を通過し、光源から出射された分析光が透過する。このとき、反応容器21内の試薬と検体の反応液は、受光部で測光され、制御部14によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器21は、洗浄装置9によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0033】
ここで、反応容器21内の試薬と検体とを含む液体を攪拌する際、攪拌装置20は、制御部14を介して入力部16から予め入力された制御信号に基づき、キュベットホイール6の停止時に制御回路24cが駆動回路24bに駆動信号を入力する。これにより、表面弾性波素子22は、入力される駆動信号の周波数に応じて振動子22bが駆動され、音波(表面弾性波)を誘起する。このとき、反応容器21は、表面弾性波素子22が液体を攪拌する音波を液体に照射すると共に、反応容器21の壁の一部となる底壁を兼ねており、保持した液体と表面弾性波素子22とが接している。このため、反応容器21においては、図3に示すように、誘起された音波に起因する表面弾性波Waが保護膜23を通って音響インピーダンスが近い液体L中へ減衰することなく漏れ出し、試薬と検体とを含む液体Lを攪拌することができる。
【0034】
しかも、保護膜23は、上述のように透過する表面弾性波の波長λよりも十分薄く形成されていることから、表面弾性波の周波数に関係なく、透過率の変動が抑えられる。このため、攪拌装置20は、反応容器21の製造が容易で、反応容器21毎の攪性能のバラツキが抑制されるうえ、自動分析装置1毎の攪拌性能のバラツキも抑えることができる。
【0035】
ここで、攪拌装置20で使用する反応容器21は、図5に示すように、振動子22bを下側に向けて表面弾性波素子22を取り付けて底壁を構成し、振動子22bが誘起するバルク波Wbによって液体Lを攪拌するようにしてもよい。この場合、表面弾性波素子22は、振動子22b及びアンテナ22cを覆って保護する保護膜は設けても、設けなくてもよい。また、図6に示す反応容器21のように、底壁を構成する表面弾性波素子26の容器内面となる基板26aの上面を湾曲面とし、振動子26bが誘起するバルク波Wbによって液体Lを攪拌するようにしてもよい。このように、湾曲面とすることで発生する流れの滞留部を少なくできるため、液体Lの攪拌性能が向上する。ここで、表面弾性波素子26を含め以下に説明する表面弾性波素子は、表面弾性波素子22と同一の構成部分には対応する符号を使用している。
【0036】
一方、図7に示す反応容器21のように、表面弾性波素子27が底壁21cに代えて互いに対向する側壁21aの一方を構成し、振動子27bが誘起するバルク波によって保持する液体を攪拌するようにしてもよい。また、図8に示す反応容器21のように、側壁21aに形成した開口21f部分に表面弾性波素子28を取り付けて側壁を構成し、振動子28bが誘起するバルク波によって保持する液体を攪拌するようにしてもよい。
【0037】
(実施の形態2)
次に、本発明の攪拌装置及び自動分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図9は、実施の形態2の自動分析装置を示す概略構成図である。図10は、図9に示す自動分析装置のキュベットホイールの一部を拡大して示す平面図である。図11は、図10のC−C線に沿った断面図である。ここで、実施の形態2の攪拌装置及び自動分析装置の説明においては、実施の形態1の攪拌装置及び自動分析装置と同一の構成部材には同一の符号を使用している。
【0038】
自動分析装置30は、図9に示すように、攪拌装置20を備えており、キュベットホイール6に代えてキュベットホイール7が設けられている。キュベットホイール7は、図10及び図11に示すように、基板7aと蓋体7cとを有しており、基板7aと蓋体7cとを複数のねじ7iによって組み付けることにより反応容器31と表面弾性波素子22との間に弾性部材25を挟み込んで着脱自在に一体化している。
【0039】
ここで、基板7aは、図10及び図11に示すように、リング形状の部材の幅方向中央に開口7bが形成され、開口7bに送信基板24dが設置されている。送信基板24dは、図12に示すように、上面にRF送信アンテナ24aが形成されている。蓋体7cは、幅方向両側にフランジ7dが形成され、上壁7eと直径方向に対向する側壁7fとを有する逆凹形状の部材であり、全体形状が基板7aに対応してリング形状に成形されている。蓋体7cは、反応容器31を設置する部分の上壁7eに分注開口7gが形成され、2つの側壁7fには直径方向に対向する測光孔7hが形成されている。蓋体7cは、フランジ7dに沿った複数箇所で基板7aの縁部にねじ7iによって着脱自在に固定される。このとき、基板7aと蓋体7cは、周方向に沿った複数箇所で分割し、複数のパーツとしてもよく、弾性部材25も個別であってもよいし、周方向に連続したものとしてもよい。
【0040】
反応容器31は、表面弾性波素子22及び送電体24と共に保持した液体を音波によって攪拌する攪拌装置20を構成している。反応容器31は、図11に示すように、振動子22bを上方に向けた表面弾性波素子22との間に弾性部材25を配置して基板7aと蓋体7cとによって液密に保持され、表面弾性波素子22が反応容器31の一部である底壁を構成している。ここで、表面弾性波素子22は、図11に明示していないが、実施の形態1と同様に、振動子22b及びアンテナ22cが保護膜によって覆われ、保持した液体Lによる短絡等から保護されている。
【0041】
従って、自動分析装置30は、自動分析装置1と同様にして、表面弾性波素子22が底壁を構成する反応容器31に分注される検体の成分濃度等を分析する。このとき、自動分析装置30で使用する攪拌装置20は、実施の形態1の攪拌装置20と同様に、表面弾性波素子22が反応容器31の底壁を構成し、保持した液体と表面弾性波素子22とが接している。このため、反応容器31においては、図11に示すように、誘起された音波に起因する表面弾性波Waが保護膜23を通って音響インピーダンスが近い液体L中へ減衰することなく漏れ出し、試薬と検体とを含む液体Lを攪拌することができる。
【0042】
しかも、保護膜は、実施の形態1で説明したように、透過する表面弾性波の波長λよりも十分薄く形成されていることから、表面弾性波の周波数に関係なく、透過率の変動が抑えられる。このため、攪拌装置20は、反応容器31の製造が容易で、反応容器31毎の攪拌性能のバラツキが抑制されるうえ、自動分析装置30毎の攪拌性能のバラツキも抑えることができる。
【0043】
また、自動分析装置30は、複数のねじ7iを外すことによって基板7aと蓋体7cとを分離すれば、反応容器31と表面弾性波素子22とを個別に分けることができる。このため、例えば、表面弾性波素子22が壊れた場合には壊れた表面弾性波素子22のみを交換することができる他、特定の反応容器31の内面が汚れたような場合には、特定の反応容器31のみを取り出して特別な洗浄を行うことができる等の利点がある。
【0044】
ここで、自動分析装置1,30は、検体テーブルが1つの場合について説明したが、検体テーブルは複数であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の攪拌装置の概略構成図であり、自動分析装置で使用する反応容器及びキュベットホイールの一部の斜視図と共に示している。
【図3】液体を保持した反応容器の断面図である。
【図4】図3の反応容器の底面に取り付けた表面弾性波素子の正面図である。
【図5】攪拌装置で使用する反応容器の第一の変形例を示す断面図である。
【図6】攪拌装置で使用する反応容器の第二の変形例を示す断面図である。
【図7】攪拌装置で使用する反応容器の第三の変形例を示す断面図である。
【図8】攪拌装置で使用する反応容器の第四の変形例を示す断面図である。
【図9】実施の形態2の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図10】図9に示す自動分析装置のキュベットホイールの一部を拡大して示す平面図である。
【図11】図10のC−C線に沿った断面図である。
【図12】実施の形態2の攪拌装置で使用する送信基板とRF送信アンテナを示す平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6,7 キュベットホイール
7a 基板
7c 蓋体
8 測光装置
9 洗浄装置
10 試薬分注機構
11 試薬テーブル
12 試薬容器
13 読取装置
14 制御部
15 分析部
16 入力部
17 表示部
20 攪拌装置
21 反応容器
21d 凹部
22 表面弾性波素子
22a 圧電基板
22b 振動子
22c アンテナ
23 保護膜
24 送電体
25 弾性部材
26 表面弾性波素子
26a 圧電基板
26b 振動子
26c アンテナ
27,28 表面弾性波素子
27a,28a 圧電基板
27b,28b 振動子
30 自動分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を保持する容器と、
前記液体に接触して前記液体を攪拌する音波を当該液体に照射すると共に、前記容器の壁の一部を兼ねる音波発生手段と、
を備えたことを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記音波発生手段は、
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、前記液体を攪拌する音波を発生する電極と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記音波発生手段は、前記電極を被覆し、前記電極が発生する音波の波長よりも厚みが薄い保護膜を有することを特徴とする請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記音波発生手段は、表面弾性波素子であって、
前記電極は、櫛歯状電極である
ことを特徴とする請求項2に記載の攪拌装置。
【請求項5】
前記容器は、前記液体を保持する凹部を有し、
前記音波発生手段は、前記容器の底壁をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項6】
前記容器は、内面が複数の平面又は曲面からなる壁から形成され、
前記音波発生手段は、前記複数の平面又は曲面からなる壁のうち最小面積の壁をなす
ことを特徴とする請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項7】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する自動分析装置であって、請求項1〜6のいずれか一つに記載の攪拌装置を用いて検体と試薬との反応液を光学的に分析することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−145161(P2008−145161A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330303(P2006−330303)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】