支持枠付サスペンション用基板およびその製造方法
【課題】本発明は、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる支持枠付サスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、サスペンション用基板および支持枠が、上記支持枠の内部開口領域で一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記支持枠が、絶縁層を貫通し、導体層および金属支持基板を電気的に接続し、ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板を提供することにより上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、サスペンション用基板および支持枠が、上記支持枠の内部開口領域で一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記支持枠が、絶縁層を貫通し、導体層および金属支持基板を電気的に接続し、ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板を提供することにより上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる支持枠付サスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、HDD(ハードディスクドライブ)に用いられる回路基板として、磁気ヘッドスライダ等の素子を実装するサスペンション用基板が知られている。サスペンション用基板は、例えば図12に示すように、ヘッド部側に形成され、素子を実装する素子実装領域101と、テール部側に形成され、外部回路基板との接続を行う外部回路基板接続領域102と、素子実装領域101および外部回路基板接続領域102の間を電気的に接続する信号用配線層103(103a〜103d)と、を有する。
【0003】
サスペンション用基板の製造では、図13に示すように、まず複数のサスペンション用基板110と支持枠111とが一体化しているシート(支持枠付サスペンション用基板)を作製する。その後、サスペンション用基板110を支持枠111から切り離し、個片のサスペンション用基板110を得る。
【0004】
一方、静電気による素子の特性変化を抑制することや、電気信号のノイズを低減すること等を目的として、サスペンション用基板に、ビアめっき部を形成することが知られている。例えば特許文献1の図1においては、金属パッド6を素子の搭載部5の近傍に設け、金属パッド6および金属薄板1を、開口8を貫通する導通部分(ビアめっき部)により、電気的に接続することが開示されている。
【0005】
なお、特許文献2においては、めっき処理に関し、履歴の特定を容易にすることを目的としたプリント配線基板の製造方法が開示されている。特許文献3においては、内層ランドとビアとの合致精度を、誤判定が生じることなく、正確に高精度で検出することが可能なビルドアップ基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−202359号公報
【特許文献2】特開2006−319067号公報
【特許文献3】特開2008−181988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
支持枠付サスペンション用基板において、サスペンション用基板のビアめっき部を検査する方法としては、サスペンション用基板自体のビアめっき部を検査する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、サスペンション用基板が微細な構造を有するため、検査を安定して精度良く行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる支持枠付サスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記サスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、上記支持枠は、上記金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された上記絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層とを有し、上記サスペンション用基板は、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、上記支持枠は、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持基板を電気的に接続し、上記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板を提供する。
【0010】
本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)を安定して精度良く行うことができる。すなわち、サスペンション用基板のビアめっき部を直接検査するのではなく、ビアめっき部と同じタイミングで形成された検査用ビアめっき部を用いて検査を行うことで、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる。
【0011】
上記発明においては、上記検査用ビアめっき部が上記導体層の開口に形成され、上記ビアめっき部が上記ビア接続配線層の開口に形成され、上記導体層の開口の平面視形状が、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることが好ましい。検査用ビアめっき部とビアめっき部との比較が容易になるからである。
【0012】
上記発明においては、上記導体層の開口の平面視形状が、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さい。より厳しい条件で検査用ビアめっき部を形成することにより、ビアめっき部の検査をさらに高精度に行うことができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記検査用ビアめっき部が複数形成され、隣り合う上記検査用ビアめっき部が上記導体層および上記金属支持基板の一方のみを介して電気的に接続され、上記導体層を介した電気的接続と上記金属支持基板を介した電気的接続とが交互かつ直列的に形成されたデイジーチェーン構造が形成されていることが好ましい。一度の検査で複数のビアめっきの抵抗値を測定することができるからである。
【0014】
上記発明において、上記支持枠は、上記検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を有することが好ましい。検査用ビアめっき部を有するクーポンを容易に得ることができるからである。なお、本明細書でクーポンとは、切り離された個片をいう。
【0015】
また、本発明においては、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、支持枠に検査用ビアめっき部を形成することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に適した支持枠付サスペンション用基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の支持枠付サスペンション用基板は、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明の支持枠付サスペンション用基板を説明する模式図である。
【図3】本発明におけるサスペンション用基板の素子実装領域の周辺を示す模式図である。
【図4】本発明におけるインターリーブ配線層を説明する概略平面図である。
【図5】本発明におけるビアめっき部および検査用ビアめっき部を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の支持枠付サスペンション用基板を説明する概略平面図である。
【図7】本発明におけるデイジーチェーン構造を説明する模式図である。
【図8】本発明における切れ込み部を説明する概略平面図である。
【図9】本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【図11】ビア接続配線層が独立配線である場合を説明する概略平面図である。
【図12】サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図13】支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板、および支持枠付サスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
A.支持枠付サスペンション用基板
本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記サスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、上記支持枠は、上記金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された上記絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層とを有し、上記サスペンション用基板は、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、上記支持枠は、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持基板を電気的に接続し、上記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とするものである。
【0021】
図1は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。なお、便宜上、カバー層の記載は省略している。図1に示される支持枠付サスペンション用基板20は、複数のサスペンション用基板10と支持枠11とを有し、支持枠11の内部開口領域12で、複数のサスペンション用基板10と支持枠11とが一体化しているものである。
【0022】
図2(a)は図1における領域Xの拡大図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B断面図である。図2(a)、(b)に示すサスペンション用基板10は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成され、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bを有する配線層3と、配線層3を覆うカバー層4と、信号用配線層3aの一部である端子部5と、端子部5の表面に形成された配線めっき部6とを有するものである。なお、図2(a)では、グランド用配線層3bが本発明におけるビア接続配線層に該当する(詳細については図3参照)。また、信号用配線層3aは、リード用配線層またはライト用配線層である。また、図2(a)、(c)に示す支持枠11は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された導体層7と、絶縁層2を貫通し導体層7および金属支持基板1を電気的に接続し、後述するビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部8aとを有するものである。
【0023】
一方、図3(a)はサスペンション用基板の素子実装領域の周辺を示す概略断面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。なお、図3(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図3(a)に示すように、サスペンション用基板10は、素子実装領域101に実装される素子と電気的な接続がとれるように、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bが配置されている。さらに、図3(b)に示すように、ビアめっき領域13において、グランド用配線層3bおよび金属支持基板1が、絶縁層2を貫通するビアめっき部8により電気的に接続されている。なお、図3(a)では、グランド用配線層3bのパッド部(局所的に広い部分)の開口にビアめっき部8が形成されている。本発明においては、図2(c)および図3(b)に示すように、ビアめっき部8と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部8aを支持枠に設けることを大きな特徴とする。
【0024】
本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)を安定して精度良く行うことができる。すなわち、サスペンション用基板のビアめっき部を直接検査するのではなく、ビアめっき部と同じタイミングで形成された検査用ビアめっき部を用いて検査を行うことで、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる。
【0025】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、検査の作業性が向上するという利点を有する。抵抗値検査の方法として、サスペンション用基板そのものにテスターのプローブを接触させる方法が考えられるが、この方法では、微細なサスペンション用基板にプローブを接触させる必要があり、検査の作業性が悪いという問題がある。これに対して、検査用ビアめっき部を空間的に余裕のある支持枠に設けることにより、検査の作業性が向上する。
【0026】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、検査によるサスペンション用基板の歩留まり低下を防止することができる。形状検査および密着性検査の方法として、サスペンション用基板そのものを切断して、ビアめっき部の断面を観察する方法が考えられるが、それではサスペンション用基板の歩留まりが低下してしまう。これに対して、検査用ビアめっき部を支持枠に設けることにより、サスペンション用基板そのものではなく、検査用ビアめっき部を切断すれば良く、検査によるサスペンション用基板の歩留まり低下を防止することができる。
【0027】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、製品出荷後の品質管理を行いやすいという利点がある。すなわち、検査用ビアめっき部を、出荷前にクーポンとして切り離し、所定の期間保存しておけば、仮に出荷後の支持枠付サスペンション用基板に不具合が生じた場合に、その原因を特定しやすくなり、品質保証を行いやすいという利点がある。
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板について、支持枠付サスペンション用基板の部材と、支持枠付サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0028】
1.支持枠付サスペンション用基板の部材
まず、本発明の支持枠付サスペンション用基板の部材について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板および支持枠を有するものである。また、サスペンション用基板は、少なくとも金属支持基板、絶縁層、配線層およびビアめっき部を有し、支持枠は、少なくとも金属支持基板、絶縁層、導体層および検査用ビアめっき部を有するものである。
【0029】
サスペンション用基板および支持枠における金属支持基板の材料は、ばね性を有する金属であることが好ましい。具体的にはSUS等を挙げることができる。また、金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0030】
サスペンション用基板および支持枠における絶縁層は、それぞれ、金属支持基板上に形成されるものである。絶縁層の材料としては、例えばポリイミド樹脂(PI)等を挙げることができる。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層の厚さは、例えば5μm〜12μmの範囲内である。
【0031】
サスペンション用基板における配線層は、絶縁層上に形成されるものである。本発明における配線層は、少なくともビア接続配線層を有する。なお、ビア接続配線層の具体例については後述する。配線層の材料としては、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であり、中でも9μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、配線層の一部に配線めっき部が形成されていることが好ましく、中でも、磁気ヘッド等の素子や、外部回路基板との接続を行う端子部に配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線層の劣化(例えば腐食)を防止することができるからである。配線めっき部としては、例えば、Auめっき部、Niめっき部、Agめっき部、Cuめっき部等を挙げることができ、中でも、Auめっき部およびNiめっき部が好ましい。特に、本発明においては、配線層の表面側から、Niめっき部およびAuめっき部が形成されていることが好ましい。また、配線めっき部の厚さは、例えば0.1μm〜4.0μmの範囲内である。
【0033】
支持枠における導体層は、絶縁層上に形成されるものである。導体層の材料は、通常、配線層と同一の材料から構成されるものである。導体層の厚さの好ましい範囲は、配線層の厚さの好ましい範囲と同様である。中でも、本発明においては、導体層の厚さと、配線層の厚さとが同じであることが好ましい。
【0034】
また、本発明におけるサスペンション用基板は、絶縁層を貫通し、ビア接続配線層および金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有する。ビアめっき部としては、例えばNiめっき部、Agめっき部、Auめっき部およびCuめっき部等を挙げることができ、中でもNiめっき部であることが好ましい。導電性および耐腐食性に優れ、かつ、安価だからである。また、ビアめっき部の厚さは特に限定されるものではないが、例えばビア接続配線層上にカバー層が存在する場合は、ビアめっき部がカバー層よりも突出しない厚さであることが好ましい。ビアめっき部がカバー層よりも突出していると、例えば、素子実装領域内にビアめっき部が存在する場合は、素子実装の際に素子が傾く可能性があるからである。また、ビアめっき部の厚さは、ビア接続配線層よりも突出しない厚さであっても良い。
【0035】
本発明における支持枠は、絶縁層を貫通し、導体層および金属支持基板を電気的に接続し、ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有する。検査用ビアめっき部は、通常、ビアめっき部と同時に形成されるものである。
【0036】
本発明におけるサスペンション用基板は、配線層を覆うカバー層を有していることが好ましい。配線層の劣化(例えば腐食)を防止することができるからである。カバー層の材料は、例えば樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂であることが好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。カバー層の厚さは、例えば2μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明における支持枠は、導体層上に、カバー層を有するものであっても良い。
【0037】
2.支持枠付サスペンション用基板の構成
次に、本発明の支持枠付サスペンション用基板の構成について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板と支持枠とを有し、支持枠の内部開口領域でサスペンション用基板および支持枠が一体化しているものである。本発明においては、支持枠が一つの内部開口領域を有するものであっても良く、支持枠が二以上の内部開口領域を有するものであっても良い。また、内部開口領域は、二以上のサスペンション用基板を有することが好ましい。
【0038】
本発明におけるビア接続配線層は、ビアめっき部を介して金属支持基板と電気的に接続されたものであれば特に限定されるものではない。ビア接続配線層の一例としては、上記図3(a)に示したグランド用配線層3bを挙げることができる。
【0039】
ビア接続配線層の他の例としては、インターリーブ配線層を挙げることができる。サスペンション用基板に形成される配線層は、一般的には、一組の配線層からなるリード用配線層と、一組の配線からなるライト用配線層とが、それぞれ絶縁層の同一表面上に形成される。さらに、このような一組の配線層は、通常、差動伝送により電気信号の伝送が行われる差動配線になっているが、一組の配線層間には、分布定数回路としての差動伝送路の特性インピーダンスである差動インピーダンスが存在する。この差動インピーダンスは、磁気ヘッドやプリアンプの低インピーダンス化に伴い、インピーダンスマッチングの観点から、低インピーダンス化することが要求されている。
【0040】
この差動インピーダンスを低インピーダンス化することが可能な差動配線として、第1の電気信号を伝送する配線層と、第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する配線層が交互配置された差動配線(いわゆるインターリーブ配線)が提案されている(例えば特開平10−124837号公報)。インターリーブ配線層は、例えば、図4に示すように、ジャンパー線201で電気的に接続されて環状線路になっている一組の配線202a、202bが、相互に略U字状の部分で挟み合うように配置されており、配線202a、202bが並走する部分においては、2本の配線202aと2本の配線202bとの計4本の配線が、交互に配置された構成となっている。それゆえ、通常の差動配線のように、一組の配線層2本を配置した構成に比べ、差動インピーダンスを低減することができる。
【0041】
このインターリーブ配線の構造をサスペンション用基板に形成する場合には、ジャンパー線として、裏面側の金属支持基板を加工してなる迂回配線を用い、迂回配線と表面側の配線とを電気的に接続するために、上述したビアめっき部を用いることが好ましい。
【0042】
また、本発明におけるビア接続配線層の他の例としては、ノイズシールド用配線層、クロストーク防止用配線層、電源用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層、アクチュエータ用配線層、熱アシスト用配線層等を挙げることができる。本発明におけるビア接続配線層は、上記のように、金属支持基板をジャンパー線として用いるものであっても良い。なお、本発明におけるサスペンション用基板が、機能の異なるビア接続配線層を複数有する場合は、それらのビアめっき部に応じて、複数の検査用ビアめっき部が形成されていることが好ましい。
【0043】
また、ビアめっき部が形成される位置は特に限定されるものではなく、ビアめっき部の機能に応じた位置であれば良い。なお、本発明におけるビア接続配線層は、支持枠の導体層と電気的に接続されたものであっても良く、接続されていないものであっても良い。
【0044】
また、ビアめっき部の形状は、ビア接続配線層および金属支持基板を電気的に接続できるものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、ビアめっき部が、ビア接続配線層の開口に形成されたものであることが好ましい。電気接続性および形状安定性が良好なビアめっき部とすることができるからである。また、ビア接続配線層の開口の平面視形状は、特に限定されるものではないが、円、楕円、矩形、多角形、櫛形等を挙げることができ、中でも円が好ましい。
【0045】
また、本発明における支持枠は、上述した検査用ビアめっき部を有する。検査用ビアめっき部は、通常、導体層の開口に形成されるものである。また、導体層の開口の平面視形状は、特に限定されるものではないが、ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることが好ましい。検査用ビアめっき部とビアめっき部との比較が容易になるからである。なお、上記相似形には、大小双方の相似形が含まれる。
【0046】
特に、本発明においては、導体層の開口の平面視形状が、ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さいことが好ましい。より厳しい条件で検査用ビアめっき部を形成することにより、ビアめっき部の検査をさらに高精度に行うことができるからである。ここで、図5(a)および図5(b)に示すように、ビアめっき領域13におけるビア接続配線層3cの開口の大きさをL1とし、支持枠11における導体層7の開口径の大きさをL2とした場合、L2が、L1の90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。なお、L2がL1よりも大きい場合は、安定した測定再現性が得られるという利点があり、L2がL1と同じである場合は、より正確にビアめっき部の検査を行うことができるという利点がある。また、ビアめっき部を形成するビア接続配線層3cの開口の平面視形状が円である場合、その開口の直径は、例えば20μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜120μmの範囲内であることがより好ましい。同様に、検査用ビアめっき部を形成する導体層の開口の直径は、例えば20μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜80μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明においては、図5(c)に示すように、ビアめっき領域13におけるビア接続配線層3cに、配線めっき部6が形成されていても良い。また、図5(c)では、検査用ビアめっき部8aの近傍にカバー層4が形成されているが、このカバー層4は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば密着性、抵抗値)に大きな影響を与えないと考えられることから、存在していても良く、存在していなくても良い。
【0047】
また、導体層の開口の平面視形状がビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さい検査用ビアめっき部を、「高負荷条件の検査用ビアめっき部」と称する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、高負荷条件の検査用ビアめっき部を複数有していても良い。さらに、複数の高負荷条件の検査用ビアめっき部は、導体層の開口の大きさが各々異なり、導体層の開口を段階的に小さくしたものであっても良い。導体層の開口を段階的に小さくすることにより、不具合が生じる状況をより細かく分析することができるからである。
【0048】
絶縁層の開口の大きさは、通常、ビア接続配線層および導体層の開口の大きさに依存する。これは、絶縁層を形成する際、ビア接続配線層の開口および導体層の開口を介して絶縁層(絶縁部材)をエッチングするからである。また、ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有するカバー層を形成する場合、その開口の大きさは、通常、対応するビア接続配線層および導体層の開口の大きさよりも大きくすることが好ましい。
【0049】
また、本発明において、支持枠は、複数の検査用ビアめっき部を有することが好ましい。例えばビアめっき部のめっき厚のばらつきが大きい場合であっても、検査用ビアめっき部を複数配置することで、ビアめっき部の検査をより確実に行うことができるからである。例えば図6に示すように、支持枠11が複数の内部開口領域12を有し、その複数の内部開口領域12を囲むように、複数の検査用ビアめっき部8aが形成されていることが好ましい。この際、検査用ビアめっき部8aを、給電部14からの位置との関係で、近い位置、中程度の位置、遠い位置のように配置することが好ましい。電流密度の違いによってビアめっき部のめっき厚のばらつきが大きく生じた場合であっても、ビアめっき部の検査をより確実に行うことができるからである。さらに、本発明においては、各々の内部開口領域12の近傍に、検査用ビアめっき部8aが形成されていることが好ましい。
【0050】
また、本発明においては、複数の検査用ビアめっき部が、デイジーチェーン状に接続されていることが好ましい。一度の検査で複数のビアめっきの抵抗値を測定することができるからである。デイジーチェーン構造について図7を用いて説明する。ここで、図7(a)は、デイジーチェーン構造を構成する検査用ビアめっき部の概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。なお、図7(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。
【0051】
図7(a)、(b)に示すように、本発明においては、検査用ビアめっき部8aが複数形成され、隣り合う検査用ビアめっき部8aが導体層7および金属支持基板1の一方のみを介して電気的に接続され、導体層7を介した電気的接続Aと金属支持基板1を介した電気的接続Bとが交互かつ直列的に形成されていることが好ましい。例えばテスター15を用いて検査を行う場合、一度の検査で、各検査用ビアめっき部の抵抗の平均値を測定することができるからである。仮に検査用ビアめっき部8が一つしか存在しない場合、抵抗のばらつきの影響を大きく受ける。これに対して、複数の検査用ビアめっき部をデイジーチェーン状(数珠つなぎ)に接続することにより、一度の検査で抵抗の平均値を得ることができ、抵抗のばらつきの影響を小さくすることができる。デイジーチェーン構造を構成する検査用ビアめっき部の個数は、通常3個以上であり、10個〜50個の範囲内であることが好ましい。
【0052】
また、本発明における支持枠11は、図8に示すように、検査用ビアめっき部8aをクーポンとして切り離すための切れ込み部16を有することが好ましい。検査用ビアめっき部8aを有するクーポンを容易に得ることができるからである。クーポンの大きさは特に限定されるものではなく、作業性が低下しない程度の大きさであることが好ましい。
【0053】
B.支持枠付サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法は、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、を有することを特徴とするものである。
【0054】
図9は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図9における検査用ビアめっき部は、図2(c)に示される断面に相当し、図9におけるビアめっき部は、図3(b)に示される断面に相当し、図9における配線めっき部は、図2(b)に示される端子部5および配線めっき部6の近傍の断面に相当する。図9においては、まず、金属支持部材1Xと、金属支持部材1X上に形成された絶縁部材2Xと、絶縁部材2X上に形成された導体部材3Xとを有する積層部材を準備する(図9(a−1)〜(a−3))。次に、金属支持部材1Xおよび導体部材3Xの両面に、DFRを用いてレジストパターンを作製し、そのレジストパターンから露出する金属支持部材1Xおよび導体部材3Xをウェットエッチングする。これにより、開口を有する導体層7と、開口を有するグランド用配線層3bと、信号用配線層3aとを形成する(図9(b−1)〜(b−3))。この際、配線めっき部を形成する位置の金属支持部材1Xも同時にエッチングする(図9(b−3))。
【0055】
その後、導体層7、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bを覆うカバー層4を形成する(図9(c−1)〜(c−3))。この際、検査用ビアめっき部、ビアめっき部および配線めっき部を形成する位置では、カバー層4に開口を設ける。なお、図9(c−1)では、検査用ビアめっき部を形成する位置の近傍にカバー層4を形成しているが、このカバー層4は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば密着性、抵抗値)に大きな影響を与えないと考えられることから、存在していても良く、存在していなくても良い。
【0056】
次に、絶縁部材2Xをウェットエッチングし、絶縁層2を形成する(図9(d−1)〜(d−3))。この際、検査用ビアめっき部、ビアめっき部および配線めっき部を形成する位置の絶縁部材2Xをエッチングする。次に、グランド用配線層3bおよび信号用配線層3aの表面に、配線めっき部6を形成する(図9(e−1)〜(e−3))。なお、図9(e−1)では、導体層7の表面に配線めっき部6は形成されていない。より正確な検査を行うという観点からは、導体層7の表面に配線めっき部6を形成することもできるが、導体層7の表面における配線めっき部6の有無は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に大きな影響を与えないと考えられることから、必ずしも導体層7の表面に配線めっき部6を形成する必要はない。また、配線めっき部6の形成時に、支持枠に形成される導体層7を治具で覆えば、導体層7の表面に配線めっき部6は形成されない。
【0057】
次に、金属支持部材1Xからの給電によって、絶縁層2を貫通し、グランド用配線層3bおよび金属支持部材1Xを電気的に接続するビアめっき部8と、絶縁層2を貫通し、導体層7および金属支持部材1Xを電気的に接続する検査用ビアめっき部8aとを形成し、さらに、金属支持部材1Xをウェットエッチングし、外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図9(f−1)〜(f−3))。なお、ビアめっき部8および検査用ビアめっき部8aの上部の形状は、カバー層4により規定されたものである。
【0058】
一方、図10は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。なお、図10における検査用ビアめっき部は、図2(c)に示される断面に相当し、図10におけるビアめっき部は、図11におけるA−A断面に相当し、図10における配線めっき部は、図11におけるB−B断面図に相当する。図11は、ビア接続配線層3cが独立配線である場合を示している。図10における製造方法は、基本的には図9と同様であるが、図10(e―2)において、独立配線であるビア接続配線層3cにビアめっき部8を形成する。これにより、図10(e―3)におけるビア接続配線層3cが導通状態になり、図10(f―3)に示すように、ビア接続配線層3cの表面上に、配線めっき部6を形成することができる。
【0059】
本発明によれば、支持枠に検査用ビアめっき部を形成することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に適した支持枠付サスペンション用基板を得ることができる。
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0060】
1.積層部材準備工程
本発明における積層部材準備工程は、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する工程である。
【0061】
本発明に用いられる、金属支持部材、絶縁部材および導体部材の材料等については、それぞれ、上述した金属支持基板、絶縁層および配線層に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、積層部材は、金属支持部材上に、絶縁部材および導体部材を順次形成することにより製造することができる。
【0062】
2.導体部材エッチング工程
本発明における導体部材エッチング工程は、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する工程である。
【0063】
なお、本発明においては、図9(b−3)に示すように、導体部材のエッチングと同時に、配線めっき部を形成する位置の金属支持部材1Xもエッチングすることが好ましい。フライングリード構造を有する端子部を形成することが容易になるからである。また、本工程のエッチングで、金属支持部材1Xに治具孔を同時に形成しても良い。
【0064】
導体部材をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、導体部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、導体部材の材料が銅である場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する導体部材をエッチングすることが好ましい。
【0065】
また、本工程において、金属支持部材のエッチングを同時に行う場合、金属支持部材をエッチングする方法は特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、金属支持部材の材料がSUSである場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する金属支持部材をエッチングすることが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、導体部材エッチング工程の後に、配線層を覆うカバー層を形成するカバー層形成工程を行うことが好ましい。また、カバー層形成工程では、さらに導体層を覆うようにカバー層を形成しても良い。また、カバー層形成工程のタイミングは、導体部材エッチング工程の後であれば特に限定されるものではないが、絶縁部材エッチング工程の前であることが好ましい。
【0067】
カバー層を形成する方法は、カバー層の材料の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合は、カバー層の材料を塗布し、その後、露光・現像を行うことによって、所定のパターンを有するカバー層を形成することができる。一方、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、カバー層の材料を塗布し、その後、レジストパターンを介したエッチングを行うことによって、所定のパターンを有するカバー層を形成することができる。カバー層をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、カバー層の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、カバー層の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。
【0068】
3.絶縁部材エッチング工程
本発明における絶縁部材エッチング工程は、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する工程である。
【0069】
なお、本発明においては、図9(d−3)に示すように、ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を形成すると同時に、配線めっき部を形成する位置に開口を形成することが好ましい。フライングリード構造を有する端子部を形成することが容易になるからである。
【0070】
絶縁部材をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をエッチングすることが好ましい。
【0071】
絶縁部材エッチング工程のタイミングは、通常、導体部材エッチング工程の後であり、ビアめっき部形成工程の前である。また、フライングリード構造を有する端子部を形成する場合は、通常、配線めっき部形成工程の前に絶縁部材エッチング工程が行われる。
【0072】
4.ビアめっき部形成工程
本発明におけるビアめっき部形成工程は、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成する工程である。
【0073】
ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する方法は、通常、金属支持部材からの給電による電解めっき法である。電解めっき法に用いられるめっき浴の種類は、ビアめっき部の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、ビアめっき部がNiめっき部である場合、用いられるNiめっき浴としては、例えばワット浴およびスルファミン酸浴等を挙げることができる。なお、めっき浴には、適宜、添加剤を用いることにより、光沢度や皮膜応力を調整することができる。また、ビアめっき部を形成しない部分は、レジストにより保護することが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、配線層の一部に配線めっき部を形成する配線めっき部形成工程を行うことが好ましい。配線めっき部を形成する方法は、電解めっき法であることが好ましい。また、配線めっき部を形成しない部分は、レジストにより保護することが好ましい。配線めっき部形成工程のタイミングは、特に限定されるものではないが、ビアめっき部形成工程の前であることが好ましい。
【0075】
5.金属支持部材エッチング工程
本発明における金属支持部材エッチング工程は、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する工程である。本工程においては、金属支持部材の外形加工を行い、金属支持基板を形成することが好ましい。また、この外形加工の際に、通常は、支持枠付サスペンション用基板の内部開口領域を形成する。また、金属支持部材エッチング工程のタイミングは、特に限定されるものではないが、ビアめっき部形成工程の後であることが好ましい。なお、金属支持部材をエッチングする方法は、上記「1.導体部材エッチング工程」で記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0076】
6.支持枠付サスペンション用基板
本発明により得られる支持枠付サスペンション用基板については、上記「A.支持枠付サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。上述したデイジーチェーン構造を形成する場合には、導体部材エッチング工程、絶縁部材エッチング工程および金属支持部材エッチング工程で、各部材を所望の形状となるように加工すれば良い。検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を形成する場合も同様である。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1…金属支持基板、 2…絶縁層、 3…配線層、 3a…信号用配線層、 3b…グランド用配線層、 4…カバー層、 5…端子部、 6…配線めっき部、 7…導体層、 8…ビアめっき部、8a…検査用ビアめっき部、 10…サスペンション用基板、 11…支持枠、 12…内部開口領域、 13…ビアめっき領域、 14…給電部、 15…テスター、 16…切れ込み部、 20…支持枠付サスペンション用基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる支持枠付サスペンション用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、HDD(ハードディスクドライブ)に用いられる回路基板として、磁気ヘッドスライダ等の素子を実装するサスペンション用基板が知られている。サスペンション用基板は、例えば図12に示すように、ヘッド部側に形成され、素子を実装する素子実装領域101と、テール部側に形成され、外部回路基板との接続を行う外部回路基板接続領域102と、素子実装領域101および外部回路基板接続領域102の間を電気的に接続する信号用配線層103(103a〜103d)と、を有する。
【0003】
サスペンション用基板の製造では、図13に示すように、まず複数のサスペンション用基板110と支持枠111とが一体化しているシート(支持枠付サスペンション用基板)を作製する。その後、サスペンション用基板110を支持枠111から切り離し、個片のサスペンション用基板110を得る。
【0004】
一方、静電気による素子の特性変化を抑制することや、電気信号のノイズを低減すること等を目的として、サスペンション用基板に、ビアめっき部を形成することが知られている。例えば特許文献1の図1においては、金属パッド6を素子の搭載部5の近傍に設け、金属パッド6および金属薄板1を、開口8を貫通する導通部分(ビアめっき部)により、電気的に接続することが開示されている。
【0005】
なお、特許文献2においては、めっき処理に関し、履歴の特定を容易にすることを目的としたプリント配線基板の製造方法が開示されている。特許文献3においては、内層ランドとビアとの合致精度を、誤判定が生じることなく、正確に高精度で検出することが可能なビルドアップ基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−202359号公報
【特許文献2】特開2006−319067号公報
【特許文献3】特開2008−181988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
支持枠付サスペンション用基板において、サスペンション用基板のビアめっき部を検査する方法としては、サスペンション用基板自体のビアめっき部を検査する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、サスペンション用基板が微細な構造を有するため、検査を安定して精度良く行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる支持枠付サスペンション用基板を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明においては、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記サスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、上記支持枠は、上記金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された上記絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層とを有し、上記サスペンション用基板は、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、上記支持枠は、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持基板を電気的に接続し、上記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板を提供する。
【0010】
本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)を安定して精度良く行うことができる。すなわち、サスペンション用基板のビアめっき部を直接検査するのではなく、ビアめっき部と同じタイミングで形成された検査用ビアめっき部を用いて検査を行うことで、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる。
【0011】
上記発明においては、上記検査用ビアめっき部が上記導体層の開口に形成され、上記ビアめっき部が上記ビア接続配線層の開口に形成され、上記導体層の開口の平面視形状が、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることが好ましい。検査用ビアめっき部とビアめっき部との比較が容易になるからである。
【0012】
上記発明においては、上記導体層の開口の平面視形状が、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、上記ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さい。より厳しい条件で検査用ビアめっき部を形成することにより、ビアめっき部の検査をさらに高精度に行うことができるからである。
【0013】
上記発明においては、上記検査用ビアめっき部が複数形成され、隣り合う上記検査用ビアめっき部が上記導体層および上記金属支持基板の一方のみを介して電気的に接続され、上記導体層を介した電気的接続と上記金属支持基板を介した電気的接続とが交互かつ直列的に形成されたデイジーチェーン構造が形成されていることが好ましい。一度の検査で複数のビアめっきの抵抗値を測定することができるからである。
【0014】
上記発明において、上記支持枠は、上記検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を有することが好ましい。検査用ビアめっき部を有するクーポンを容易に得ることができるからである。なお、本明細書でクーポンとは、切り離された個片をいう。
【0015】
また、本発明においては、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板の製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、支持枠に検査用ビアめっき部を形成することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に適した支持枠付サスペンション用基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の支持枠付サスペンション用基板は、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図2】本発明の支持枠付サスペンション用基板を説明する模式図である。
【図3】本発明におけるサスペンション用基板の素子実装領域の周辺を示す模式図である。
【図4】本発明におけるインターリーブ配線層を説明する概略平面図である。
【図5】本発明におけるビアめっき部および検査用ビアめっき部を説明する概略断面図である。
【図6】本発明の支持枠付サスペンション用基板を説明する概略平面図である。
【図7】本発明におけるデイジーチェーン構造を説明する模式図である。
【図8】本発明における切れ込み部を説明する概略平面図である。
【図9】本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。
【図11】ビア接続配線層が独立配線である場合を説明する概略平面図である。
【図12】サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【図13】支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板、および支持枠付サスペンション用基板の製造方法について詳細に説明する。
【0020】
A.支持枠付サスペンション用基板
本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、上記サスペンション用基板は、金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された絶縁層と、上記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、上記支持枠は、上記金属支持基板と、上記金属支持基板上に形成された上記絶縁層と、上記絶縁層上に形成された導体層とを有し、上記サスペンション用基板は、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、上記支持枠は、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持基板を電気的に接続し、上記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とするものである。
【0021】
図1は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の一例を示す概略平面図である。なお、便宜上、カバー層の記載は省略している。図1に示される支持枠付サスペンション用基板20は、複数のサスペンション用基板10と支持枠11とを有し、支持枠11の内部開口領域12で、複数のサスペンション用基板10と支持枠11とが一体化しているものである。
【0022】
図2(a)は図1における領域Xの拡大図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面図であり、図2(c)は図2(a)のB−B断面図である。図2(a)、(b)に示すサスペンション用基板10は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成され、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bを有する配線層3と、配線層3を覆うカバー層4と、信号用配線層3aの一部である端子部5と、端子部5の表面に形成された配線めっき部6とを有するものである。なお、図2(a)では、グランド用配線層3bが本発明におけるビア接続配線層に該当する(詳細については図3参照)。また、信号用配線層3aは、リード用配線層またはライト用配線層である。また、図2(a)、(c)に示す支持枠11は、金属支持基板1と、金属支持基板1上に形成された絶縁層2と、絶縁層2上に形成された導体層7と、絶縁層2を貫通し導体層7および金属支持基板1を電気的に接続し、後述するビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部8aとを有するものである。
【0023】
一方、図3(a)はサスペンション用基板の素子実装領域の周辺を示す概略断面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A断面図である。なお、図3(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。図3(a)に示すように、サスペンション用基板10は、素子実装領域101に実装される素子と電気的な接続がとれるように、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bが配置されている。さらに、図3(b)に示すように、ビアめっき領域13において、グランド用配線層3bおよび金属支持基板1が、絶縁層2を貫通するビアめっき部8により電気的に接続されている。なお、図3(a)では、グランド用配線層3bのパッド部(局所的に広い部分)の開口にビアめっき部8が形成されている。本発明においては、図2(c)および図3(b)に示すように、ビアめっき部8と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部8aを支持枠に設けることを大きな特徴とする。
【0024】
本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)を安定して精度良く行うことができる。すなわち、サスペンション用基板のビアめっき部を直接検査するのではなく、ビアめっき部と同じタイミングで形成された検査用ビアめっき部を用いて検査を行うことで、ビアめっき部の検査を安定して精度良く行うことができる。
【0025】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、検査の作業性が向上するという利点を有する。抵抗値検査の方法として、サスペンション用基板そのものにテスターのプローブを接触させる方法が考えられるが、この方法では、微細なサスペンション用基板にプローブを接触させる必要があり、検査の作業性が悪いという問題がある。これに対して、検査用ビアめっき部を空間的に余裕のある支持枠に設けることにより、検査の作業性が向上する。
【0026】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、検査によるサスペンション用基板の歩留まり低下を防止することができる。形状検査および密着性検査の方法として、サスペンション用基板そのものを切断して、ビアめっき部の断面を観察する方法が考えられるが、それではサスペンション用基板の歩留まりが低下してしまう。これに対して、検査用ビアめっき部を支持枠に設けることにより、サスペンション用基板そのものではなく、検査用ビアめっき部を切断すれば良く、検査によるサスペンション用基板の歩留まり低下を防止することができる。
【0027】
また、本発明によれば、支持枠が検査用ビアめっき部を有することから、製品出荷後の品質管理を行いやすいという利点がある。すなわち、検査用ビアめっき部を、出荷前にクーポンとして切り離し、所定の期間保存しておけば、仮に出荷後の支持枠付サスペンション用基板に不具合が生じた場合に、その原因を特定しやすくなり、品質保証を行いやすいという利点がある。
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板について、支持枠付サスペンション用基板の部材と、支持枠付サスペンション用基板の構成とに分けて説明する。
【0028】
1.支持枠付サスペンション用基板の部材
まず、本発明の支持枠付サスペンション用基板の部材について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板および支持枠を有するものである。また、サスペンション用基板は、少なくとも金属支持基板、絶縁層、配線層およびビアめっき部を有し、支持枠は、少なくとも金属支持基板、絶縁層、導体層および検査用ビアめっき部を有するものである。
【0029】
サスペンション用基板および支持枠における金属支持基板の材料は、ばね性を有する金属であることが好ましい。具体的にはSUS等を挙げることができる。また、金属支持基板の厚さは、その材料の種類により異なるものであるが、例えば10μm〜20μmの範囲内である。
【0030】
サスペンション用基板および支持枠における絶縁層は、それぞれ、金属支持基板上に形成されるものである。絶縁層の材料としては、例えばポリイミド樹脂(PI)等を挙げることができる。また、絶縁層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。絶縁層の厚さは、例えば5μm〜12μmの範囲内である。
【0031】
サスペンション用基板における配線層は、絶縁層上に形成されるものである。本発明における配線層は、少なくともビア接続配線層を有する。なお、ビア接続配線層の具体例については後述する。配線層の材料としては、例えば金属を挙げることができ、中でも銅(Cu)が好ましい。また、配線層の厚さは、例えば5μm〜18μmの範囲内であり、中でも9μm〜12μmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、本発明においては、配線層の一部に配線めっき部が形成されていることが好ましく、中でも、磁気ヘッド等の素子や、外部回路基板との接続を行う端子部に配線めっき部が形成されていることが好ましい。配線層の劣化(例えば腐食)を防止することができるからである。配線めっき部としては、例えば、Auめっき部、Niめっき部、Agめっき部、Cuめっき部等を挙げることができ、中でも、Auめっき部およびNiめっき部が好ましい。特に、本発明においては、配線層の表面側から、Niめっき部およびAuめっき部が形成されていることが好ましい。また、配線めっき部の厚さは、例えば0.1μm〜4.0μmの範囲内である。
【0033】
支持枠における導体層は、絶縁層上に形成されるものである。導体層の材料は、通常、配線層と同一の材料から構成されるものである。導体層の厚さの好ましい範囲は、配線層の厚さの好ましい範囲と同様である。中でも、本発明においては、導体層の厚さと、配線層の厚さとが同じであることが好ましい。
【0034】
また、本発明におけるサスペンション用基板は、絶縁層を貫通し、ビア接続配線層および金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有する。ビアめっき部としては、例えばNiめっき部、Agめっき部、Auめっき部およびCuめっき部等を挙げることができ、中でもNiめっき部であることが好ましい。導電性および耐腐食性に優れ、かつ、安価だからである。また、ビアめっき部の厚さは特に限定されるものではないが、例えばビア接続配線層上にカバー層が存在する場合は、ビアめっき部がカバー層よりも突出しない厚さであることが好ましい。ビアめっき部がカバー層よりも突出していると、例えば、素子実装領域内にビアめっき部が存在する場合は、素子実装の際に素子が傾く可能性があるからである。また、ビアめっき部の厚さは、ビア接続配線層よりも突出しない厚さであっても良い。
【0035】
本発明における支持枠は、絶縁層を貫通し、導体層および金属支持基板を電気的に接続し、ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有する。検査用ビアめっき部は、通常、ビアめっき部と同時に形成されるものである。
【0036】
本発明におけるサスペンション用基板は、配線層を覆うカバー層を有していることが好ましい。配線層の劣化(例えば腐食)を防止することができるからである。カバー層の材料は、例えば樹脂を挙げることができ、中でもポリイミド樹脂であることが好ましい。また、カバー層の材料は、感光性材料であっても良く、非感光性材料であっても良い。カバー層の厚さは、例えば2μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、2μm〜10μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明における支持枠は、導体層上に、カバー層を有するものであっても良い。
【0037】
2.支持枠付サスペンション用基板の構成
次に、本発明の支持枠付サスペンション用基板の構成について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、サスペンション用基板と支持枠とを有し、支持枠の内部開口領域でサスペンション用基板および支持枠が一体化しているものである。本発明においては、支持枠が一つの内部開口領域を有するものであっても良く、支持枠が二以上の内部開口領域を有するものであっても良い。また、内部開口領域は、二以上のサスペンション用基板を有することが好ましい。
【0038】
本発明におけるビア接続配線層は、ビアめっき部を介して金属支持基板と電気的に接続されたものであれば特に限定されるものではない。ビア接続配線層の一例としては、上記図3(a)に示したグランド用配線層3bを挙げることができる。
【0039】
ビア接続配線層の他の例としては、インターリーブ配線層を挙げることができる。サスペンション用基板に形成される配線層は、一般的には、一組の配線層からなるリード用配線層と、一組の配線からなるライト用配線層とが、それぞれ絶縁層の同一表面上に形成される。さらに、このような一組の配線層は、通常、差動伝送により電気信号の伝送が行われる差動配線になっているが、一組の配線層間には、分布定数回路としての差動伝送路の特性インピーダンスである差動インピーダンスが存在する。この差動インピーダンスは、磁気ヘッドやプリアンプの低インピーダンス化に伴い、インピーダンスマッチングの観点から、低インピーダンス化することが要求されている。
【0040】
この差動インピーダンスを低インピーダンス化することが可能な差動配線として、第1の電気信号を伝送する配線層と、第1の電気信号とは逆位相となる第2の電気信号を伝送する配線層が交互配置された差動配線(いわゆるインターリーブ配線)が提案されている(例えば特開平10−124837号公報)。インターリーブ配線層は、例えば、図4に示すように、ジャンパー線201で電気的に接続されて環状線路になっている一組の配線202a、202bが、相互に略U字状の部分で挟み合うように配置されており、配線202a、202bが並走する部分においては、2本の配線202aと2本の配線202bとの計4本の配線が、交互に配置された構成となっている。それゆえ、通常の差動配線のように、一組の配線層2本を配置した構成に比べ、差動インピーダンスを低減することができる。
【0041】
このインターリーブ配線の構造をサスペンション用基板に形成する場合には、ジャンパー線として、裏面側の金属支持基板を加工してなる迂回配線を用い、迂回配線と表面側の配線とを電気的に接続するために、上述したビアめっき部を用いることが好ましい。
【0042】
また、本発明におけるビア接続配線層の他の例としては、ノイズシールド用配線層、クロストーク防止用配線層、電源用配線層、フライトハイトコントロール用配線層、センサー用配線層、アクチュエータ用配線層、熱アシスト用配線層等を挙げることができる。本発明におけるビア接続配線層は、上記のように、金属支持基板をジャンパー線として用いるものであっても良い。なお、本発明におけるサスペンション用基板が、機能の異なるビア接続配線層を複数有する場合は、それらのビアめっき部に応じて、複数の検査用ビアめっき部が形成されていることが好ましい。
【0043】
また、ビアめっき部が形成される位置は特に限定されるものではなく、ビアめっき部の機能に応じた位置であれば良い。なお、本発明におけるビア接続配線層は、支持枠の導体層と電気的に接続されたものであっても良く、接続されていないものであっても良い。
【0044】
また、ビアめっき部の形状は、ビア接続配線層および金属支持基板を電気的に接続できるものであれば特に限定されるものではない。中でも、本発明においては、ビアめっき部が、ビア接続配線層の開口に形成されたものであることが好ましい。電気接続性および形状安定性が良好なビアめっき部とすることができるからである。また、ビア接続配線層の開口の平面視形状は、特に限定されるものではないが、円、楕円、矩形、多角形、櫛形等を挙げることができ、中でも円が好ましい。
【0045】
また、本発明における支持枠は、上述した検査用ビアめっき部を有する。検査用ビアめっき部は、通常、導体層の開口に形成されるものである。また、導体層の開口の平面視形状は、特に限定されるものではないが、ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることが好ましい。検査用ビアめっき部とビアめっき部との比較が容易になるからである。なお、上記相似形には、大小双方の相似形が含まれる。
【0046】
特に、本発明においては、導体層の開口の平面視形状が、ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さいことが好ましい。より厳しい条件で検査用ビアめっき部を形成することにより、ビアめっき部の検査をさらに高精度に行うことができるからである。ここで、図5(a)および図5(b)に示すように、ビアめっき領域13におけるビア接続配線層3cの開口の大きさをL1とし、支持枠11における導体層7の開口径の大きさをL2とした場合、L2が、L1の90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。なお、L2がL1よりも大きい場合は、安定した測定再現性が得られるという利点があり、L2がL1と同じである場合は、より正確にビアめっき部の検査を行うことができるという利点がある。また、ビアめっき部を形成するビア接続配線層3cの開口の平面視形状が円である場合、その開口の直径は、例えば20μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜120μmの範囲内であることがより好ましい。同様に、検査用ビアめっき部を形成する導体層の開口の直径は、例えば20μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜80μmの範囲内であることがより好ましい。また、本発明においては、図5(c)に示すように、ビアめっき領域13におけるビア接続配線層3cに、配線めっき部6が形成されていても良い。また、図5(c)では、検査用ビアめっき部8aの近傍にカバー層4が形成されているが、このカバー層4は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば密着性、抵抗値)に大きな影響を与えないと考えられることから、存在していても良く、存在していなくても良い。
【0047】
また、導体層の開口の平面視形状がビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さい検査用ビアめっき部を、「高負荷条件の検査用ビアめっき部」と称する。本発明の支持枠付サスペンション用基板は、高負荷条件の検査用ビアめっき部を複数有していても良い。さらに、複数の高負荷条件の検査用ビアめっき部は、導体層の開口の大きさが各々異なり、導体層の開口を段階的に小さくしたものであっても良い。導体層の開口を段階的に小さくすることにより、不具合が生じる状況をより細かく分析することができるからである。
【0048】
絶縁層の開口の大きさは、通常、ビア接続配線層および導体層の開口の大きさに依存する。これは、絶縁層を形成する際、ビア接続配線層の開口および導体層の開口を介して絶縁層(絶縁部材)をエッチングするからである。また、ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有するカバー層を形成する場合、その開口の大きさは、通常、対応するビア接続配線層および導体層の開口の大きさよりも大きくすることが好ましい。
【0049】
また、本発明において、支持枠は、複数の検査用ビアめっき部を有することが好ましい。例えばビアめっき部のめっき厚のばらつきが大きい場合であっても、検査用ビアめっき部を複数配置することで、ビアめっき部の検査をより確実に行うことができるからである。例えば図6に示すように、支持枠11が複数の内部開口領域12を有し、その複数の内部開口領域12を囲むように、複数の検査用ビアめっき部8aが形成されていることが好ましい。この際、検査用ビアめっき部8aを、給電部14からの位置との関係で、近い位置、中程度の位置、遠い位置のように配置することが好ましい。電流密度の違いによってビアめっき部のめっき厚のばらつきが大きく生じた場合であっても、ビアめっき部の検査をより確実に行うことができるからである。さらに、本発明においては、各々の内部開口領域12の近傍に、検査用ビアめっき部8aが形成されていることが好ましい。
【0050】
また、本発明においては、複数の検査用ビアめっき部が、デイジーチェーン状に接続されていることが好ましい。一度の検査で複数のビアめっきの抵抗値を測定することができるからである。デイジーチェーン構造について図7を用いて説明する。ここで、図7(a)は、デイジーチェーン構造を構成する検査用ビアめっき部の概略平面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。なお、図7(a)では、便宜上、カバー層の記載は省略している。
【0051】
図7(a)、(b)に示すように、本発明においては、検査用ビアめっき部8aが複数形成され、隣り合う検査用ビアめっき部8aが導体層7および金属支持基板1の一方のみを介して電気的に接続され、導体層7を介した電気的接続Aと金属支持基板1を介した電気的接続Bとが交互かつ直列的に形成されていることが好ましい。例えばテスター15を用いて検査を行う場合、一度の検査で、各検査用ビアめっき部の抵抗の平均値を測定することができるからである。仮に検査用ビアめっき部8が一つしか存在しない場合、抵抗のばらつきの影響を大きく受ける。これに対して、複数の検査用ビアめっき部をデイジーチェーン状(数珠つなぎ)に接続することにより、一度の検査で抵抗の平均値を得ることができ、抵抗のばらつきの影響を小さくすることができる。デイジーチェーン構造を構成する検査用ビアめっき部の個数は、通常3個以上であり、10個〜50個の範囲内であることが好ましい。
【0052】
また、本発明における支持枠11は、図8に示すように、検査用ビアめっき部8aをクーポンとして切り離すための切れ込み部16を有することが好ましい。検査用ビアめっき部8aを有するクーポンを容易に得ることができるからである。クーポンの大きさは特に限定されるものではなく、作業性が低下しない程度の大きさであることが好ましい。
【0053】
B.支持枠付サスペンション用基板の製造方法
次に、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法について説明する。本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法は、サスペンション用基板と、支持枠とを有し、上記支持枠の内部開口領域で上記サスペンション用基板および上記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、を有することを特徴とするものである。
【0054】
図9は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の一例を示す概略断面図である。なお、図9における検査用ビアめっき部は、図2(c)に示される断面に相当し、図9におけるビアめっき部は、図3(b)に示される断面に相当し、図9における配線めっき部は、図2(b)に示される端子部5および配線めっき部6の近傍の断面に相当する。図9においては、まず、金属支持部材1Xと、金属支持部材1X上に形成された絶縁部材2Xと、絶縁部材2X上に形成された導体部材3Xとを有する積層部材を準備する(図9(a−1)〜(a−3))。次に、金属支持部材1Xおよび導体部材3Xの両面に、DFRを用いてレジストパターンを作製し、そのレジストパターンから露出する金属支持部材1Xおよび導体部材3Xをウェットエッチングする。これにより、開口を有する導体層7と、開口を有するグランド用配線層3bと、信号用配線層3aとを形成する(図9(b−1)〜(b−3))。この際、配線めっき部を形成する位置の金属支持部材1Xも同時にエッチングする(図9(b−3))。
【0055】
その後、導体層7、信号用配線層3aおよびグランド用配線層3bを覆うカバー層4を形成する(図9(c−1)〜(c−3))。この際、検査用ビアめっき部、ビアめっき部および配線めっき部を形成する位置では、カバー層4に開口を設ける。なお、図9(c−1)では、検査用ビアめっき部を形成する位置の近傍にカバー層4を形成しているが、このカバー層4は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば密着性、抵抗値)に大きな影響を与えないと考えられることから、存在していても良く、存在していなくても良い。
【0056】
次に、絶縁部材2Xをウェットエッチングし、絶縁層2を形成する(図9(d−1)〜(d−3))。この際、検査用ビアめっき部、ビアめっき部および配線めっき部を形成する位置の絶縁部材2Xをエッチングする。次に、グランド用配線層3bおよび信号用配線層3aの表面に、配線めっき部6を形成する(図9(e−1)〜(e−3))。なお、図9(e−1)では、導体層7の表面に配線めっき部6は形成されていない。より正確な検査を行うという観点からは、導体層7の表面に配線めっき部6を形成することもできるが、導体層7の表面における配線めっき部6の有無は、検査用ビアめっき部で検査する対象(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に大きな影響を与えないと考えられることから、必ずしも導体層7の表面に配線めっき部6を形成する必要はない。また、配線めっき部6の形成時に、支持枠に形成される導体層7を治具で覆えば、導体層7の表面に配線めっき部6は形成されない。
【0057】
次に、金属支持部材1Xからの給電によって、絶縁層2を貫通し、グランド用配線層3bおよび金属支持部材1Xを電気的に接続するビアめっき部8と、絶縁層2を貫通し、導体層7および金属支持部材1Xを電気的に接続する検査用ビアめっき部8aとを形成し、さらに、金属支持部材1Xをウェットエッチングし、外形加工を行い、金属支持基板1を形成する(図9(f−1)〜(f−3))。なお、ビアめっき部8および検査用ビアめっき部8aの上部の形状は、カバー層4により規定されたものである。
【0058】
一方、図10は、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法の他の例を示す概略断面図である。なお、図10における検査用ビアめっき部は、図2(c)に示される断面に相当し、図10におけるビアめっき部は、図11におけるA−A断面に相当し、図10における配線めっき部は、図11におけるB−B断面図に相当する。図11は、ビア接続配線層3cが独立配線である場合を示している。図10における製造方法は、基本的には図9と同様であるが、図10(e―2)において、独立配線であるビア接続配線層3cにビアめっき部8を形成する。これにより、図10(e―3)におけるビア接続配線層3cが導通状態になり、図10(f―3)に示すように、ビア接続配線層3cの表面上に、配線めっき部6を形成することができる。
【0059】
本発明によれば、支持枠に検査用ビアめっき部を形成することから、ビアめっき部の検査(例えば形状検査、密着性検査、抵抗値検査)に適した支持枠付サスペンション用基板を得ることができる。
以下、本発明の支持枠付サスペンション用基板の製造方法について、工程ごとに説明する。
【0060】
1.積層部材準備工程
本発明における積層部材準備工程は、金属支持部材と、上記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、上記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する工程である。
【0061】
本発明に用いられる、金属支持部材、絶縁部材および導体部材の材料等については、それぞれ、上述した金属支持基板、絶縁層および配線層に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、積層部材は、金属支持部材上に、絶縁部材および導体部材を順次形成することにより製造することができる。
【0062】
2.導体部材エッチング工程
本発明における導体部材エッチング工程は、上記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する工程である。
【0063】
なお、本発明においては、図9(b−3)に示すように、導体部材のエッチングと同時に、配線めっき部を形成する位置の金属支持部材1Xもエッチングすることが好ましい。フライングリード構造を有する端子部を形成することが容易になるからである。また、本工程のエッチングで、金属支持部材1Xに治具孔を同時に形成しても良い。
【0064】
導体部材をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、導体部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、導体部材の材料が銅である場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する導体部材をエッチングすることが好ましい。
【0065】
また、本工程において、金属支持部材のエッチングを同時に行う場合、金属支持部材をエッチングする方法は特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、金属支持部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、金属支持部材の材料がSUSである場合は、塩化鉄系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する金属支持部材をエッチングすることが好ましい。
【0066】
また、本発明においては、導体部材エッチング工程の後に、配線層を覆うカバー層を形成するカバー層形成工程を行うことが好ましい。また、カバー層形成工程では、さらに導体層を覆うようにカバー層を形成しても良い。また、カバー層形成工程のタイミングは、導体部材エッチング工程の後であれば特に限定されるものではないが、絶縁部材エッチング工程の前であることが好ましい。
【0067】
カバー層を形成する方法は、カバー層の材料の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、カバー層の材料が感光性材料である場合は、カバー層の材料を塗布し、その後、露光・現像を行うことによって、所定のパターンを有するカバー層を形成することができる。一方、カバー層の材料が非感光性材料である場合は、カバー層の材料を塗布し、その後、レジストパターンを介したエッチングを行うことによって、所定のパターンを有するカバー層を形成することができる。カバー層をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、カバー層の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、カバー層の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。
【0068】
3.絶縁部材エッチング工程
本発明における絶縁部材エッチング工程は、上記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および上記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する工程である。
【0069】
なお、本発明においては、図9(d−3)に示すように、ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を形成すると同時に、配線めっき部を形成する位置に開口を形成することが好ましい。フライングリード構造を有する端子部を形成することが容易になるからである。
【0070】
絶縁部材をエッチングする方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、ウェットエッチング等を挙げることができる。ウェットエッチングに用いるエッチング液の種類は、絶縁部材の種類に応じて適宜選択することが好ましく、例えば、絶縁部材の材料がポリイミド樹脂である場合は、アルカリ系エッチング液等を用いることができる。また、本発明においては、DFR等を用いてレジストパターンを形成し、そのレジストパターンから露出する絶縁部材をエッチングすることが好ましい。
【0071】
絶縁部材エッチング工程のタイミングは、通常、導体部材エッチング工程の後であり、ビアめっき部形成工程の前である。また、フライングリード構造を有する端子部を形成する場合は、通常、配線めっき部形成工程の前に絶縁部材エッチング工程が行われる。
【0072】
4.ビアめっき部形成工程
本発明におけるビアめっき部形成工程は、上記金属支持部材からの給電によって、上記絶縁層を貫通し、上記ビア接続配線層および上記金属支持部材を電気的に接続する上記ビアめっき部、並びに、上記絶縁層を貫通し、上記導体層および上記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成する工程である。
【0073】
ビアめっき部および検査用ビアめっき部を形成する方法は、通常、金属支持部材からの給電による電解めっき法である。電解めっき法に用いられるめっき浴の種類は、ビアめっき部の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、ビアめっき部がNiめっき部である場合、用いられるNiめっき浴としては、例えばワット浴およびスルファミン酸浴等を挙げることができる。なお、めっき浴には、適宜、添加剤を用いることにより、光沢度や皮膜応力を調整することができる。また、ビアめっき部を形成しない部分は、レジストにより保護することが好ましい。
【0074】
また、本発明においては、配線層の一部に配線めっき部を形成する配線めっき部形成工程を行うことが好ましい。配線めっき部を形成する方法は、電解めっき法であることが好ましい。また、配線めっき部を形成しない部分は、レジストにより保護することが好ましい。配線めっき部形成工程のタイミングは、特に限定されるものではないが、ビアめっき部形成工程の前であることが好ましい。
【0075】
5.金属支持部材エッチング工程
本発明における金属支持部材エッチング工程は、上記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する工程である。本工程においては、金属支持部材の外形加工を行い、金属支持基板を形成することが好ましい。また、この外形加工の際に、通常は、支持枠付サスペンション用基板の内部開口領域を形成する。また、金属支持部材エッチング工程のタイミングは、特に限定されるものではないが、ビアめっき部形成工程の後であることが好ましい。なお、金属支持部材をエッチングする方法は、上記「1.導体部材エッチング工程」で記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0076】
6.支持枠付サスペンション用基板
本発明により得られる支持枠付サスペンション用基板については、上記「A.支持枠付サスペンション用基板」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。上述したデイジーチェーン構造を形成する場合には、導体部材エッチング工程、絶縁部材エッチング工程および金属支持部材エッチング工程で、各部材を所望の形状となるように加工すれば良い。検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を形成する場合も同様である。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1…金属支持基板、 2…絶縁層、 3…配線層、 3a…信号用配線層、 3b…グランド用配線層、 4…カバー層、 5…端子部、 6…配線めっき部、 7…導体層、 8…ビアめっき部、8a…検査用ビアめっき部、 10…サスペンション用基板、 11…支持枠、 12…内部開口領域、 13…ビアめっき領域、 14…給電部、 15…テスター、 16…切れ込み部、 20…支持枠付サスペンション用基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンション用基板と、支持枠とを有し、前記支持枠の内部開口領域で前記サスペンション用基板および前記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、
前記サスペンション用基板は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、
前記支持枠は、前記金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された前記絶縁層と、前記絶縁層上に形成された導体層とを有し、
前記サスペンション用基板は、前記絶縁層を貫通し、前記ビア接続配線層および前記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、
前記支持枠は、前記絶縁層を貫通し、前記導体層および前記金属支持基板を電気的に接続し、前記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板。
【請求項2】
前記検査用ビアめっき部が前記導体層の開口に形成され、前記ビアめっき部が前記ビア接続配線層の開口に形成され、
前記導体層の開口の平面視形状が、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることを特徴とする請求項1に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項3】
前記導体層の開口の平面視形状が、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項4】
前記検査用ビアめっき部が複数形成され、
隣り合う前記検査用ビアめっき部が前記導体層および前記金属支持基板の一方のみを介して電気的に接続され、前記導体層を介した電気的接続と前記金属支持基板を介した電気的接続とが交互かつ直列的に形成されたデイジーチェーン構造が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項5】
前記支持枠は、前記検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項6】
サスペンション用基板と、支持枠とを有し、前記支持枠の内部開口領域で前記サスペンション用基板および前記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、
金属支持部材と、前記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、
前記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、
前記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および前記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、
前記金属支持部材からの給電によって、前記絶縁層を貫通し、前記ビア接続配線層および前記金属支持部材を電気的に接続する前記ビアめっき部、並びに、前記絶縁層を貫通し、前記導体層および前記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、
前記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、
を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板の製造方法。
【請求項1】
サスペンション用基板と、支持枠とを有し、前記支持枠の内部開口領域で前記サスペンション用基板および前記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板であって、
前記サスペンション用基板は、金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に形成され、ビア接続配線層を有する配線層とを有し、
前記支持枠は、前記金属支持基板と、前記金属支持基板上に形成された前記絶縁層と、前記絶縁層上に形成された導体層とを有し、
前記サスペンション用基板は、前記絶縁層を貫通し、前記ビア接続配線層および前記金属支持基板を電気的に接続するビアめっき部を有し、
前記支持枠は、前記絶縁層を貫通し、前記導体層および前記金属支持基板を電気的に接続し、前記ビアめっき部と同じ成分で構成される検査用ビアめっき部を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板。
【請求項2】
前記検査用ビアめっき部が前記導体層の開口に形成され、前記ビアめっき部が前記ビア接続配線層の開口に形成され、
前記導体層の開口の平面視形状が、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状に対して、同一または相似形であることを特徴とする請求項1に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項3】
前記導体層の開口の平面視形状が、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状の相似形であり、かつ、前記ビア接続配線層の開口の平面視形状よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項4】
前記検査用ビアめっき部が複数形成され、
隣り合う前記検査用ビアめっき部が前記導体層および前記金属支持基板の一方のみを介して電気的に接続され、前記導体層を介した電気的接続と前記金属支持基板を介した電気的接続とが交互かつ直列的に形成されたデイジーチェーン構造が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項5】
前記支持枠は、前記検査用ビアめっき部をクーポンとして切り離すための切れ込み部を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の支持枠付サスペンション用基板。
【請求項6】
サスペンション用基板と、支持枠とを有し、前記支持枠の内部開口領域で前記サスペンション用基板および前記支持枠が一体化している支持枠付サスペンション用基板の製造方法であって、
金属支持部材と、前記金属支持部材上に形成された絶縁部材と、前記絶縁部材上に形成された導体部材とを有する積層部材を準備する積層部材準備工程と、
前記導体部材をエッチングし、ビア接続配線層を有する配線層、および、検査用ビアめっき部となる位置に開口を形成する導体部材エッチング工程と、
前記絶縁部材をエッチングし、ビアめっき部および前記検査用ビアめっき部を形成する位置に開口を有する絶縁層を形成する絶縁部材エッチング工程と、
前記金属支持部材からの給電によって、前記絶縁層を貫通し、前記ビア接続配線層および前記金属支持部材を電気的に接続する前記ビアめっき部、並びに、前記絶縁層を貫通し、前記導体層および前記金属支持部材を電気的に接続する検査用ビアめっき部を形成するビアめっき部形成工程と、
前記金属支持部材をエッチングし、金属支持基板を形成する金属支持部材エッチング工程と、
を有することを特徴とする支持枠付サスペンション用基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−18984(P2012−18984A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154185(P2010−154185)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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