説明

改善されたシール座を有する比例弁

【課題】弁座に対するシールを改善する。
【解決手段】ガス状の媒体、特に水素を制御するための比例弁であって、少なくとも1つの通流開口3を備えるノズルボディ2と、通流開口3を弁座21において開閉する閉鎖エレメント4と、弁座21において密閉する弾性的なシールエレメント5とが設けられており、弁座21が、所定の半径Rを有しており、シールエレメント5が、弁座21を起点として半径方向で自由な突出部25を有していて、自由な突出部25が、半径Rの少なくとも2倍の大きさかつ半径Rの最大で5倍の大きさに形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に燃料電池駆動部を備えた車両で使用される、ガス状の媒体、特に水素を制御するための比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両分野では、液状の燃料とならんで、将来的に、ガス状の燃料が益々重要となる。特に燃料電池駆動部を備えた車両では、水素ガス流が制御されなければならない。この場合、このガス流は、液状の燃料の噴射のようにもはや不連続に制御されない。所望の駆動出力に関連して弁の開放横断面を適合させる比例弁が使用されると有利である。
【0003】
ガス状の媒体の場合、液状の燃料の場合に存在する、燃料によるシール座の湿潤がなくなるので、特に閉じられた弁におけるシール問題が生じる。ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005056212号明細書からは、天然ガスのためのガス弁が公知である。このガス弁では、媒体のできるだけ低損失の流れを達成するために、特別なジオメトリ(幾何学形状)がノズルボディに形成されている。しかし、この弁は、比例弁として形成されておらず、インジェクション・タイミング弁(Einblas-Taktventil)として形成されており、弁座に対するシールの改善に関してはなんの記載もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102005056212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、弁座に対するシールを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決した本発明による構成によれば、ガス状の媒体、特に水素を制御するための比例弁において、少なくとも1つの通流開口を備えるノズルボディと、通流開口を弁座において開閉する閉鎖エレメントと、弁座において密閉する弾性的なシールエレメントとが設けられており、弁座が、所定の半径を有しており、シールエレメントが、弁座を起点として半径方向で自由な突出部を有していて、該自由な突出部が、半径の少なくとも2倍の大きさにかつ前記半径の最大で5倍の大きさに形成されているようにした。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の特徴部に記載の特徴を有する、ガス状の媒体を制御する本発明による比例弁は、前述のガス弁に対して、当該比例弁がガス状の媒体の確実かつ信頼性のよいシールを可能にするという利点を有している。さらに、弾性的なシールエレメントの負荷を減じることができるので、この比例弁は、高い耐久性を有している。さらに、本発明による比例弁は、開放力の、ストロークにわたって一様な経過で開放され得る。このことは、本発明によれば、シールエレメントがシールする弁座が所定の半径を有していて、シールエレメントが、シールラインを起点として自由な突出部を有していることにより解決される。この場合、自由な突出部は、シールエレメントの半径方向で、弁座の半径の少なくとも2倍の大きさに、しかし弁座の半径の最大で5倍の大きさに形成されている。これによって、突出部が、不都合なガス漏れをもたらし得るように小さ過ぎたり、開放力の不都合な上昇をもたらし得るように大き過ぎたりしないことが確実にされる。ガス状の媒体として、水素が使用されると有利である。水素は燃料電池に供給される。
【0008】
請求項2以下には本発明の有利な実施形態が記載されている。
【0009】
さらに有利には、自由な突出部が、弁座の半径の少なくとも2.5倍の大きさに、かつ弁座の半径の最大で4倍の大きさに形成されており、特に弁座の半径の3倍の大きさに形成されている。
【0010】
有利には、自由な突出部が、0.20mm〜0.40mmの範囲、特に有利には0.25mm〜0.35mmの範囲であり、さらに有利には約0.30mmである。
【0011】
有利には、自由な突出部が、当該突出部が弁座に沿って一定の幅を有しているように形成されている。これによって、比例弁の一様な開放特性および閉鎖特性が達成され得る。
【0012】
有利には、弁座の半径が、0.05mm〜0.15mmの範囲であり、有利には約0.10mmに形成されている。
【0013】
開放された比例弁において出来るだけ良好な流れを達成するためには、傾斜した領域が設けられていると有利であり、この場合、半径が直接に傾斜した領域に移行しているようにされる。この場合、傾斜した領域が、比例弁の中心軸線に対して垂直な平面に対して、約10°の角度を有していると有利である。
【0014】
本発明の有利な別の実施形態によれば、シールエレメントの厚さに対する自由な突出部の比が、0.40〜0.80の範囲であり、有利には約0.60である。この場合、シールエレメントが、0.50mmの厚さを有していると有利である。
【0015】
本発明は、さらに、燃料電池と、ガス状の水素を制御するための本発明による比例弁とを備える燃料電池アッセンブリに関する。
【0016】
以下に本発明の有利な実施形態を添付の図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態による比例弁の概略的な断面図である。
【図2】図1に示した比例弁の拡大図である。
【図3】比例弁のノズルボディの拡大した断面図である。
【図4】弁座の拡大図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による比例弁の一部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図1から図4に関連して、ガス状の媒体を制御する、第1の実施形態による比例弁1を詳しく説明する。この場合、図面に示した比例弁1は、車両の燃料電池に供給されるガス状の水素を制御するために役立つ。
【0019】
図1から判るように、比例弁1は、弁ケーシング6を、磁石アーマチュア12と、磁石コイル13と、磁石アーマチュア12に結合されたピン11と共に有している。閉鎖ばね14は、ばね受け部15を介してピン11に結合されている。閉鎖ばね14の戻し力を調節するための調節ピンは符号16で示されている。磁石コイル13は、プラスチック射出成形により弁ケーシング6に固着された被覆体17内に固定されている。比例弁1の側方には、電気的なコネクタ接続部18が設けられている。ピン11の、閉鎖ばね14とは反対側の端部には、閉鎖エレメント4が取り付けられている。閉鎖エレメント4は、ノズルボディ2内に形成された通流開口3を閉じる。この場合、通流開口3は、比例弁1の中心軸線X−Xを中心としてキドニ(腎臓)形に配置されている。この場合、3つの通流開口3が設けられていると有利であるが、単に2つ、または4つあるいは5つの通流開口が形成されていてもよい。個別の通流開口3の間には、それぞれウェブ24が形成されている(図3を参照)。
【0020】
さらに図1から判るように、ノズルボディ2には、フィルタ19が設けられている。このフィルタ19を通って、ガス状の媒体の流れ込み(矢印A)が行われる。比例弁を構成部材内に密封するためには、Oリング20が設けられている。ガス状の媒体の流出は半径方向(矢印B)で行われる。
【0021】
閉鎖エレメント4には、特に図2から判るように、鉛直な1つの流過孔9と、水平方向の複数の流過孔10とが設けられている。この実施形態では、水平方向の3つの流過孔10が設けられている。さらに閉鎖エレメント4には、環状の弾性的なシールエレメント5が配置されている。この環状のシールエレメント5は、通流開口3を弁座21において密閉する。弁座21は、それぞれ通流開口3の外周を取り囲んで延びている。
【0022】
図2から判るように、通流開口3の開口領域は、ノズルボディ2の凹部26内に形成されている。
【0023】
さらに、弁ケーシング6内には、半径方向に延びる流出孔7,8が配置されている。比例弁1の開放時に、閉鎖エレメント4は、シールエレメント5と共に、ノズルボディ2に設けられた弁座21から持ち上げられて、閉鎖エレメント4のストロークに相応して開放横断面を開放する。この実施例では、流路が、閉鎖エレメント4内に流過孔9,10を介して形成されているので、ガスは、閉鎖エレメント4を通って流出孔7,8内に流れ、かつ閉鎖エレメント4のすぐ側方を通過して流出孔7,8内に流れる。これによって、閉鎖エレメント4の比較的に小さなストロークの場合でも、より大きなガス量が流出することができる。
【0024】
比例弁1の閉じられた状態を示す図2から判るように、シールエレメント5は、半径方向で見て通流開口3を起点として弁座21の外方に向かってそれぞれ1つの自由な突出部25が設けられているように規定されている。この場合、自由な突出部25の幅は、通流開口3の周方向でそれぞれ一定である。弁座21は、所定の半径R(図4)を有していて、中心軸線の方向X−Xで見た半径Rの最高点において線形のシール部を形成する。突出部25は、弁座21におけるライン状のシール部から半径方向に規定されている。この場合、ライン形のシール部は、通流開口3を完全に取り囲んで延びている。
【0025】
この実施形態では、自由な突出部25の幅は、それぞれ0.30mmである。図4からさらに判るように、弁座21は、R=0.10mmの半径長さを有する半径Rにそれぞれ形成されている。この場合、通流開口3の端領域は、図4から判るように、通流開口3の円筒状の領域を起点として、壁が、半径Rにより形成された円弧状の領域22に移行し、次いで傾斜した領域23に移行するように形成されている。図4から判るように、傾斜した領域23は平面Eに対して約10°の角度αで傾斜している。この場合、平面Eは、比例弁の中心軸線X−Xに対してかつ通流開口3の中心軸線Y−Yに対して垂直である。
【0026】
この場合、突出部25は、当該突出部25が、半径方向で上記半径Rの二倍の大きさに形成されているように選択されている。これによって、一方では、シールエレメント5の、弁座21に対する十分な面圧が可能となるので、弁座21における高いシール性が達成される。さらに、0.10mmの半径Rが、シールエレメントの比較的小さな負荷を保証するので、たとえばエラストマから製造されるシールエレメント5の高い耐久性が達成される。さらに、突出部25は、比例弁のストロークにわたる開放力の一様な経過(直線的な変化)を生ぜしめる。この場合、大き過ぎる突出部25は、シールエレメント5とノズルボディ2との間の圧力上昇に基づいて、比例弁の開放過程時の望ましくない開放力を意味する。小さ過ぎる突出部25は、望ましくないガス漏れにつながり得る。半径Rに対する突出部25の比を維持することにより、必要となる開放力と、ガス状の媒体に対する比例弁の必要なガス密性との間の最適条件が達成され得る。これによって、シールエレメント5のために廉価な材料も使用することができる。
【0027】
さらに、シールエレメント5の厚さDは、当該厚さDに対する自由な突出部の比が0.60となるように選択されている(自由な突出部25:厚さ=0.60)。この比は、弁座21に対する確実なシールを提供する。
【0028】
以下に、図5に関連して、本発明の第2の実施形態による比例弁を詳細に説明する。図5では、第1の実施形態と同一もしくは機能同一な構成部分は、同一の符号で示されている。
【0029】
第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態の比例弁は、キドニ(腎臓)形の複数の通流開口を有しておらず、1つの中央の通流開口30を有している。図5は、やはり比例弁の閉じられた状態を示している。この状態では、シールエレメント5は、環状の弁座21に載置されていてかつ弁座21においてシールしている。さらに、第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態では、閉鎖エレメント4内に流過開口が形成されていない。流過開口は、第2の実施形態では不要である。なぜならば、中央の通流開口30の比較的大きな直径により、十分な媒体流が可能であるからである。
【0030】
第2の実施形態は、特に単純な構成部材を有しているので、このような形式の比例弁のための製造費用を削減することができる。その他の点では、この第2の実施形態は第1の実施形態に対応するので、第1の実施形態に対して成された上記説明を参照することができる。さらに、比例弁は、択一的には、閉鎖エレメント4が弁座に設けられていて、環状のシールエレメントがノズルボディ2に通流開口30を巡って設けられているように形成されていてもよい。
【0031】
したがって、本発明によれば、特に燃料電池へのガス供給のために使用される水素ガス流を制御するための比例弁1が提供される。本発明による構成は、確実なシールと、水素の極めて正確な計量供給とを可能にする。なぜならば、弁座21に対するシールエレメント5の付着による、不正確な開閉を回避することができるからである。
【符号の説明】
【0032】
1 比例弁
2 ノズルボディ
3 通流開口
4 閉鎖エレメント
5 シールエレメント
6 弁ケーシング
7 流出孔
8 流出孔
9 流過孔
10 流過孔
11 ピン
12 磁石アーマチュア
13 磁石コイル
14 閉鎖ばね
15 ばね受け部
16 調節ピン
17 被覆部
18 コネクタ接続部
19 フィルタ
20 Oリング
21 弁座
22 半径
23 傾斜した領域
24 ウェブ
25 突出部
26 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状の媒体、特に水素を制御するための比例弁であって、
少なくとも1つの通流開口(3)を備えるノズルボディ(2)と、
通流開口(3)を弁座(21)において開閉する閉鎖エレメント(4)と、
弁座(21)において密閉する弾性的なシールエレメント(5)とが設けられていて、
弁座(21)が、所定の半径(R)を有しており、
シールエレメント(5)が、弁座(21)を起点として半径方向で自由な突出部(25)を有していて、該自由な突出部(25)が、前記半径(R)の少なくとも2倍の大きさにかつ前記半径(R)の最大で5倍の大きさに形成されていることを特徴とする、ガス状の媒体を制御するための比例弁。
【請求項2】
自由な突出部(25)が、前記半径(R)の少なくとも2.5倍の大きさにかつ前記半径(R)の最大で4倍の大きさに形成されていて、特に前記半径(R)の3倍の大きさに形成されている、請求項1記載の比例弁。
【請求項3】
自由な突出部(25)が、0.20mm〜0.40mmの範囲、有利には0.25mm〜0.35mmの範囲であり、さらに有利には約0.30mmに形成されている、請求項1または2記載の比例弁。
【請求項4】
自由な突出部(25)が、弁座(21)に沿って一定の幅を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の比例弁。
【請求項5】
前記半径(22)が、0.05mm〜0.15mmの範囲であり、特に有利には約0.10mmに形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の比例弁。
【請求項6】
前記半径(22)が、ノズルボディ(2)で傾斜した領域(23)に移行している、請求項1から4までのいずれか1項記載の比例弁。
【請求項7】
傾斜した領域(23)が、中心軸線(X−X)に対して垂直に配置された平面(E)に対して約10°の角度(α)で配置されている、請求項6項記載の比例弁
【請求項8】
シールエレメント(5)の厚さ(D)に対する自由な突出部(25)の比が、0.40〜0.80であり、有利には0.60である、請求項1から7までのいずれか1項記載の比例弁。
【請求項9】
シールエレメント(5)が、0.50mmの厚さ(D)を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の比例弁。
【請求項10】
燃料電池アッセンブリであって、燃料電池への水素供給を制御する、請求項1から9までのいずれか1項記載の比例弁を有していることを特徴とする、燃料電池アッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−102874(P2012−102874A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242201(P2011−242201)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】