説明

放射性ダストモニタ及び放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法

【課題】 放射性物質測定用の濾紙を高い使用効率で無駄なく使用することによって放射能濃度測定のためのランニングコストを低くすること。
【解決手段】 濾紙13のセット時にマーカー金具32の前辺にペンを当接しながら濾紙13にライン32aをマーキングする。この後起動すると、サクションヘッド18によって吸引が規定時間行われ、この吸引後、濾紙13が搬送ピッチの長さ搬送される。この吸引と搬送の繰り返しで、濾紙13に集塵領域が、当該集塵領域の幅と同一な間隔を開けて形成されてゆく。濾紙13が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、ライン32aをマーカー金具32の後辺に合わせてセットすると、サクションヘッド18が既に使用済みの集塵領域同士間の未使用領域に配置される。この後の起動でも吸引後に濾紙13が搬送ピッチ長ずつ搬送されるので、搬送の都度、サクションヘッド18を未使用領域に合わせて吸引が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所などで空気中の放射性物質の濃度を監視するため、モニタリングポイントの空気を放射性物質測定用の濾紙を介して吸引することにより空気中のダストを集塵し、この濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出器で検出することによって、モニタリングポイントの空気中に存在する放射性物質の濃度(放射能濃度)を測定する放射性ダストモニタ及び放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来の放射性ダストモニタの内部の構成を示す平面図である。この放射性ダストモニタ10は、本体11の内部に配設された気密ボックス12の内部に、放射性物質測定用の長尺状の濾紙13を巻き取る濾紙供給スプール14及び濾紙巻取スプール15と、ガイドローラ16,17と、サクションヘッド18と、濾紙駆動ローラ19と、テンションプーリ20と、ベルト21と、濾紙切れ検出光電スイッチ22と、吸引口23と、放射線検出器24とを備えて構成されている。
【0003】
濾紙13は、JIS Z 4601(放射性ダストサンプラ)に規定されている濾紙で、一般に全長が90mであり、濾紙供給スプール14、ガイドローラ16、濾紙切れ検出スイッチ22、サクションヘッド18、濾紙駆動ローラ19、ガイドローラ17、濾紙巻取スプール15の順にセットされる。
このようにセットされた濾紙13は、図示せぬモータに結合されて駆動される濾紙駆動ローラ19によって連続的又は間欠的に矢印Y1で示す方向に搬送される。濾紙供給スプール14には常時ブレーキがかけられており、また、濾紙巻取スプール15はテンションプーリ20を介してベルト21で濾紙駆動ローラ19と連結されており、これによって所定の速度で弛まないように搬送される。
【0004】
濾紙供給スプール14側に配置されたガイドローラ16と、濾紙巻取スプール15側に配置された濾紙駆動ローラ19との中間位置には、濾紙13を挟んで、サクションヘッド18と放射線検出器24とが対向して配置されている。サクションヘッド18は、濾紙13に接触し、放射線検出器24と濾紙13との間には、濾紙13に空気を供給するための隙間が取られている。
また、図7に示すように、サクションヘッド18での吸引によって、サクションヘッド吸引口18aと同形状の正方形状にダストが集塵され、これによって集塵領域13aが濾紙13面に形成されるようになっている。
【0005】
集塵領域13aの一辺、隣り合う集塵領域13a相互の間隔などの寸法は、ダストモニタ毎に好適な数値に設定されている。一例として、従来装置においては、集塵領域13aの一辺は52.5mmの寸法を成し、集塵領域13aと集塵領域13aとの間には、22.5mmの間隔が開けられるようになっている。この間隔は、前回の集塵領域13aに残留する放射線が、今回の集塵領域13aでの集塵に干渉しないように開けられるものであり、濾紙駆動ローラ19によって75mmのピッチで濾紙13が搬送されることによって開けられる。
【0006】
吸引口23は、放射性物質取扱い室などのモニタリングポイントに吸引ポンプ(図示せず)を介して接続された配管の開口であり、モニタリングポイントの空気が吸引ポンプで吸引されて吸引口23から気密ボックス12内に導かれる。
サクションヘッド18には、空気を吸引するための吸引ポンプ(図示せず)が配管接続されており、その吸引ポンプでの吸引によって気密ボックス12内に導かれた空気中のダストが濾紙13に集塵される。この集塵されたダストからの放射線が放射線検出器24で検出されることによって、モニタリングポイントの空気中に存在する放射能濃度が測定される。
【0007】
更に説明すると、その放射能濃度の測定が行われる場合、まず、濾紙13の集塵に使われていない部分が放射線検出器24とサクションヘッド18との間に配置される。この後、サクションヘッド18から吸引が規定時間行われ、この吸引後、濾紙駆動ローラ19による搬送制御によって濾紙13が75mm搬送される。つまり、前回の集塵領域13aの後ろ側の辺から22.5mm離れた位置に、今回の集塵領域13aの前側の辺が来るように搬送され、放射線検出器24とサクションヘッド18との間に配置される。この配置後、規定時間吸引が行われ、濾紙13が75mm搬送されるといった動作が繰り返されることによって、放射能濃度が測定される。
【0008】
なお、上述の説明における各部寸法や数値などは、すべて一例を記載したものである。
この種の従来の装置として、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。
【特許文献1】特開2003−315461号公報
【特許文献2】特開2002−162320号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、従来の放射性ダストモニタにおいては、ダストを集塵するために全長90mの濾紙13を用いているが、一辺が52.5mmの正方形状の集塵領域13aと集塵領域13aとの間に、前回の集塵領域13aに残留する放射線が、今回の集塵領域13aでの集塵に干渉しないように22.5mmの間隔を開けるようになっている。このことから、濾紙13の使用率は約70%(52.5mm÷75mm=0.7)であり、約30%の未集塵領域を残したまま廃棄処分されることになる。
【0010】
しかし、濾紙13は非常に高価であり、このような濾紙13が約30%の未集塵領域を残したまま廃棄処分されているので、放射能濃度測定のためのランニングコストが非常に高くなるという問題がある。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、放射性物質測定用の濾紙を高い使用効率で無駄なく使用することによって放射能濃度測定のためのランニングコストを低くすることができ、さらには、濾紙の未集塵部分を使うことで従来の測定条件を変えずに新品の濾紙を用いた場合と同じ測定を行なうことのできる放射性ダストモニタ及び放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1による放射性ダストモニタは、放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおいて、前記濾紙の面に対向して配置固定され、当該濾紙の搬送方向の直線と直交する平行な2辺を有する板状を成し、前記2辺の幅が、前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な寸法とされたマーカー手段と、前記集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる搬送手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、まず、第1及び第2の巻取り手段に濾紙がセットされた後に、マーカー手段の2辺のうち一方の辺にペンを当接しながら濾紙にラインをマーキングする。この後、放射性ダストモニタを起動すると、吸引手段によって吸引が所定時間行われ、この吸引後、搬送手段によって濾紙が1ピッチ長搬送される。この吸引と搬送の繰り返しによって、濾紙に集塵領域が、当該集塵領域の幅と同一な間隔を開けて形成されてゆく。そして、濾紙が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、濾紙にマーキングされたラインを、マーカー手段の他方の辺に合わせて、第1及び第2の巻取り手段にセットすると、吸引手段の吸引口が、既に使用済みの集塵領域と集塵領域との間の未使用領域に配置される。この後、放射性ダストモニタを起動すると、吸引後に搬送手段によって濾紙が1ピッチ長ずつ搬送されるようになるので、搬送の都度、吸引手段の吸引口を未使用領域に合わせて吸引を行うことができる。このように濾紙の集塵領域と集塵領域との間に未使用領域を形成し、この未使用領域を使用することができるので、濾紙を無駄なく効率良く使用することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2による放射性ダストモニタは、請求項1において、前記マーカー手段の2辺の幅を、前記濾紙のダストの集塵領域における前記搬送方向の幅に濾紙搬送誤差を加算した寸法とし、前記1ピッチ長を、前記搬送方向の幅の2倍の長さに濾紙搬送誤差を加算した長さとしたことを特徴としている。
この構成によれば、最初の濾紙の使用時に、濾紙の集塵領域と集塵領域との間に、当該集塵領域の幅に濾紙搬送誤差を加算した長さの未使用領域が形成される。このように濾紙搬送誤差を加味した幅の未使用領域を形成すれば、搬送誤差があっても、再使用時の濾紙の搬送時に、吸引手段の吸引口が確実に未使用領域に入るように濾紙を搬送することができる。
【0014】
また、本発明の請求項3による放射性ダストモニタは、放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおいて、前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる搬送手段と、前記濾紙の面に対向して配置固定され、当該濾紙の面にマークを付けるマーカー手段と、前記濾紙に付けられたマークを検知する検知手段と、前記マーカー手段が濾紙にマークを付けるように制御し、当該濾紙が全て使用された後に前記検知手段で検知されたマークの情報をもとにマーク位置を求め、このマーク位置から前記集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な長さだけ当該濾紙が搬送されてセットされるように前記搬送手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、請求項1において人が行っていた濾紙へのマーキングや、再使用時の位置合わせを自動で行うことができる。
【0015】
また、本発明の請求項4による放射性ダストモニタは、請求項3において、前記濾紙を測定時と逆方向に搬送する濾紙巻き戻し手段を備え、前記濾紙が全て使用された後の濾紙の巻き戻し時に前記検知手段によりマークの情報を検知するようにしたことを特徴としている。
この構成によれば、濾紙へのマーキングや、再使用時の位置合わせに加え、専用の巻き戻し機により行っていた再使用時の濾紙の巻き戻しまでも自動で行うことができる。
【0016】
また、本発明の請求項5による放射性ダストモニタは、請求項3または請求項4において、前記1ピッチ長を、前記搬送方向の幅の2倍の長さに濾紙搬送誤差を加算した長さとし、前記制御手段によって制御される濾紙のマーク位置からの搬送の長さを、前記集塵領域における前記搬送方向の幅に濾紙搬送誤差を加算した長さとしたことを特徴としている。
この構成によれば、再使用時に濾紙をセットする際に、搬送誤差があっても、吸引手段の吸引口が確実に未使用領域に入るように濾紙を搬送してセットすることができる。このセット後の搬送手段による搬送時にも、搬送誤差があっても、吸引手段の吸引口が確実に未使用領域に入るように濾紙を搬送することができる。
【0017】
また、本発明の請求項6による放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法は、放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法において、前記第1及び第2の巻取り手段への濾紙のセット時に、当該濾紙にマークを付ける第1のステップと、前記第1のステップにて前記マークが付けられた後、前記吸引手段による吸引後の濾紙の搬送時に、前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる第2のステップと、濾紙が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、前記第1のステップにて付けられたマークの位置から、前記集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な長さだけ当該濾紙を搬送してセットする第3のステップとを含むことを特徴としている。
【0018】
この方法によれば、まず、第1及び第2の巻取り手段に濾紙がセット時に、人が濾紙にマークを付ける。この後、放射性ダストモニタの起動によって、吸引手段による吸引と、搬送手段による1ピッチ長の搬送とが交互に繰り返される。この繰り返しによって、濾紙に集塵領域が、当該集塵領域の幅と同一な間隔を開けて形成されてゆく。そして、濾紙が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、測定者が、濾紙のマークの位置から、集塵領域における搬送方向の幅と少なくとも同一な長さだけ当該濾紙を搬送してセットすることによって、吸引手段の吸引口が、既に使用済みの集塵領域と集塵領域との間の未使用領域に配置されるようにセットされる。この後の起動時に、上記同様に濾紙が1ピッチ長ずつ搬送されるので、搬送の都度、吸引手段の吸引口を未使用領域に合わせて吸引を行うことができる。このように濾紙の集塵領域と集塵領域との間に未使用領域を形成し、この未使用領域を使用することができるので、濾紙を無駄なく効率良く使用することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、放射性物質測定用の濾紙を高い使用効率で無駄なく使用することによって放射能濃度測定のためのランニングコストを低くすることができ、また、新品の濾紙を用いるのと同じ測定を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
本発明の実施の形態に係る放射性ダストモニタの構成を図1に示し、(a)は放射性ダストモニタの内部の構成を示す平面図、(b)は放射性ダストモニタに配設されたマーカー金具を紙面において下から見た図である。
【0021】
図1に示す放射性ダストモニタ30が、図6に示した従来の放射性ダストモニタ10と異なる点は、気密ボックス12内に濾紙13の面に間隙を介して対向する板状のマーカー金具32を配設したことと、濾紙駆動ローラ19の搬送制御による濾紙13の搬送ピッチを、図2に示すように(52.5×2+α)mmとしたことにある。
その搬送ピッチは、濾紙13の集塵領域13aの幅と同じ52.5mmに、濾紙13が搬送される際の濾紙搬送誤差αを加算した長さの52.5mm+αの間隔を、集塵領域13aと集塵領域13aとの間に開けるためのピッチである。
【0022】
この搬送ピッチで濾紙13を送ることによって、集塵領域13aと集塵領域13aとの間に、再度集塵を行うための52.5mm+αの幅の再使用領域13bが形成されるようにした。
再使用領域13bは、濾紙13を一旦全て使用した後に巻き戻して使用するようになっている。この際、再使用領域13bは、最初に使用した集塵領域13aと隣接することになるが、次の理由によって問題なく使用することができるようになっている。
【0023】
集塵領域13aに付着した放射線は短期間で大きく減衰するので、使用した濾紙13を巻き戻し再使用する際、再使用領域13bでの集塵を終えて放射線の測定を開始するまでには、集塵領域13aに付着した前回分の放射線は再使用領域13bに干渉しないレベルまで減衰しているからである。
マーカー金具32は、更に説明すると、濾紙13の搬送方向の直線と直交する平行な2辺を有する四角形状の板であり、濾紙13の面との間に濾紙13の搬送を妨げないようにするための間隙を介して当該面に対向して配置され、気密ボックス12内にビス止め等で固定されている。
【0024】
また、マーカー金具32の平行な2辺の幅は、上記の52.5mm+αとしてある。以降、その平行な2辺の内、濾紙供給スプール14側の辺を前辺、濾紙巻取スプール15側の辺を後辺と称す。なお、マーカー金具32の材料は、金属材料、プラスチック材料など硬い材質のものであればよく、色も透明、着色など何れでも良い。
更に、マーカー金具32は、各スプール14,15への濾紙13の初回セット時に、その前辺にペンを当接しながら濾紙13にマーキングライン32aを引くために用いられる。また、濾紙13が全て使用されて一旦巻き戻された後に2回目のセッティングが行われる際に、図3に示すように、マーカー金具32の後辺にマーキングライン32aを一致させてセットするために用いられる。
【0025】
但し、ここではマーキングの一例としてマーキングライン32aとしたが、人が認識して位置決め可能なマークであれば、点やキャラクタ並びに小さな穴等どのようなものでも良い。
上記のように濾紙13をセットすることによって、サクションヘッド吸引口18aが、再使用領域13bと一致する位置に配置され、以降も上記の搬送ピッチで濾紙13が搬送されるので、その搬送ピッチでの搬送の都度、サクションヘッド吸引口18aが再使用領域13bと一致する位置に配置されるようになっている。
【0026】
次に、このような構成の放射性ダストモニタ30による放射能濃度の測定処理を説明する。但し、濾紙搬送誤差αが5mmであるとする。これによって搬送ピッチは(52.5×2+5)=110mmとなる。
まず、測定者によって、濾紙供給スプール14に巻かれている濾紙13が、ガイドローラ16、濾紙切れ検出光電スイッチ22、サクションヘッド18、マーカー金具32、濾紙駆動ローラ19、ガイドローラ17を介して、濾紙巻取スプール15に巻き取られてセットされる。
このセット後に、測定者が、マーカー金具32の前辺にペンを当接しながら濾紙13にマーキングライン32aを引く。
【0027】
この後、放射性ダストモニタ30を起動して放射能濃度の測定を開始すると、サクションヘッド18によって吸引が規定時間行われ、この吸引後、濾紙駆動ローラ19の搬送制御によって濾紙13が110mmの搬送ピッチだけ搬送される。このように吸引と搬送とが繰り返され、濾紙13が濾紙巻取スプール15に最後まで使用されて巻き取られると、測定者が、濾紙13を濾紙供給スプール14に最初のセット状態と略同じとなる様に巻き戻す操作を行う。従来の搬送機構を組み込んでいる放射性ダストモニタ30の巻取りスプール15側に巻き取られた濾紙13は、端面の不揃い等の要因により、そのままでは再使用できないためにこの操作が必要となる。なお、濾紙13の巻き戻しは、濾紙巻き戻し機を用いて行う。このとき、濾紙巻き戻し機を1台用意し、所有する複数の放射性ダストモニタ30で共通使用するようにすれば、個々のダストモニタに巻き戻し機能を追加する場合と比較して低コストで実現できる。
【0028】
この操作後、測定者は、マーカー金具32の後辺に濾紙13のマーキングライン32aを一致させてセットする。これによって、サクションヘッド吸引口18aが、再使用領域13bと一致する位置に配置される。
この後、測定者が放射性ダストモニタ30を起動すると、濾紙13は搬送時に搬送ピッチの110mmずつ搬送されるので、その都度、再使用領域13bがサクションヘッド吸引口18aに一致する位置に配置されてサクションヘッド18によって吸引される。
【0029】
以上説明したように本実施の形態の放射性ダストモニタ30によれば、濾紙13をセットする際に、マーカー金具32の前辺にペンを当接しながら濾紙13にマーキングライン32aをマーキングする。この後、放射性ダストモニタ30を起動すると、サクションヘッド18によって吸引が規定時間行われ、この吸引後、濾紙13が搬送ピッチの長さ搬送される。この吸引と搬送の繰り返しによって、濾紙13に集塵領域13aが、当該集塵領域13aの幅と同一な間隔を開けて形成されてゆく。
【0030】
そして、濾紙13が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、濾紙13にマーキングされたマーキングライン32aを、マーカー金具32の後辺に合わせてセットすると、サクションヘッド吸引口18aが、既に使用済みの集塵領域13aと集塵領域13aとの間の未使用領域である再使用領域13bに配置される。この後、放射性ダストモニタ30を起動すると、吸引後に濾紙13が搬送ピッチ長ずつ搬送されるようになるので、搬送の都度、サクションヘッド吸引口18aを再使用領域13bに合わせて吸引を行うことができる。
【0031】
このように濾紙13の集塵領域13aと集塵領域13aとの間に再使用領域13bを形成し、この再使用領域13bを使用することができるので、濾紙13を無駄なく効率良く使用することができる。
本実施の形態の場合は、濾紙13を再利用した場合、濾紙13の使用率は、(集塵領域13aの52.5mm+再使用領域13bの52.5mm)÷搬送ピッチ長の110mm=0.955の計算から約95.5%となる。つまり、従来の使用率の約70%よりも大幅に使用率が向上している。
【0032】
この他、図4に示す放射性ダストモニタ40のように、マーカー部42と、マーク検知部43と、濾紙再使用制御部44とを備え、上記で説明したマーカー金具32を用いて測定者が行う濾紙13の再使用と同等の処理を自動的に行うようにしてもよい。
マーカー部42は、濾紙13の面との間に濾紙13の搬送を妨げないようにするための間隙を介して当該面に対向して配置され、固定されている。また、マーカー部42は、各スプール14,15への濾紙13の初回セット時に、濾紙再使用制御部44のマーキング制御によって濾紙13にマーキングを行う。このマーキングは、インクジェット、レーザー、パンチング等によって濾紙13にマークを付けることである。
【0033】
マーク検知部43は、カメラなどの撮像手段が用いられて実現され、濾紙再使用制御部44のマーク検知制御によって、濾紙13に付けられたマークを撮像することによりマークを検知し、このマーク検知情報を濾紙再使用制御部44へ出力する。
濾紙再使用制御部44は、各スプール14,15への濾紙13の初回セット時に、マーキング制御を行い、また、濾紙13が全て使用された後に、マーク検知制御によってマーク検知部43にマークを検知させる。この検知によりマーク検知部43から入力されるマーク検知情報を用いてマークの位置を求め、このマーク位置から上述した52.5mm+αの長さだけ、濾紙13を濾紙巻取スプール15の方向に搬送する制御を行う。この制御は、濾紙駆動ローラ19の動力源であるステッピングモータを制御することによって行われる。その搬送制御によって、サクションヘッド吸引口18aが、濾紙13の再使用領域13bと一致する位置に配置される。
【0034】
これ以降は、上記実施の形態で説明したと同様に、(52.5×2+α)mmの搬送ピッチで濾紙13が搬送されるので、その搬送ピッチでの搬送の都度、サクションヘッド吸引口18aが再使用領域13bと一致する位置に配置される。
このように濾紙再使用制御を行うようにすれば、測定者によるマーキングや、再使用時の位置合わせが無くなるので、その分、放射能濃度の測定を行う工数を削減することができる。
【0035】
さらに、図5に示す放射性ダストモニタ50のように、放射性ダストモニタ40に濾紙巻き戻しのための機構を付加し、測定者が行なっていた濾紙13の再使用に伴う一連の処理を自動的に行うようにしてもよい。
この実施の形態では、濾紙駆動ローラ19の回転軸に第1のクラッチ25を介して順方向搬送用のモータ26が結合され、濾紙供給スプール14の回転軸に第2のクラッチ27を介して濾紙巻き戻し用のモータ28が結合されている。
【0036】
濾紙再使用制御部45は、各スプール14,15への濾紙13の初回セット時にマーキング制御を行なった後、初回の測定で濾紙13が全て使用されると、第1のクラッチ25によって濾紙駆動ローラ19の回転軸とモータ26を切り離し、第2のクラッチ27によって濾紙供給スプール14の回転軸とモータ28とを結合して濾紙13の巻き戻しを行うように搬送手段の制御を行う。
【0037】
さらに、濾紙再使用制御部45は、この濾紙13の巻き戻し時に、上述の実施形態と同様、マーク検知制御によってマーク検知部43にマークを検知させ、マークの位置が求められると、濾紙13の巻き戻しを停止し、第1、第2のクラッチ25、27によって、濾紙供給スプール14の回転軸とモータ28を切り離し、濾紙駆動ローラ19の回転軸とモータ26とを結合して濾紙13の搬送方向を測定時と同方向に切り替える。そうして、マーク位置から上述した52.5mm+αの長さだけ、濾紙13を濾紙巻取スプール15の方向に搬送する。なお、位置合わせのための濾紙送り量の制御は、例えば、濾紙駆動ローラ19の回転軸に設けたスリット付円盤とその回転を検出する光電センサとで送り量を計測することによって行うようにしても良い。この搬送制御によって、サクションヘッド吸引口18aが、濾紙13の再使用領域13bと一致する位置に配置される。
【0038】
これ以降は、上記実施の形態で説明したと同様に、(52.5×2+α)mmの搬送ピッチで濾紙13が搬送されるので、その搬送ピッチでの搬送の都度、サクションヘッド吸引口18aが再使用領域13bと一致する位置に配置されることになる。
このようにすれば、測定者によるマーキングや、濾紙の巻き戻し、再使用時の位置合わせが無くなるので、さらに、放射能濃度の測定を行う工数を削減することができる。
【0039】
また、上記実施の形態の放射性ダストモニタ30にマーカー金具32を配設しないで測定者が物差などでマーキングライン32aを引くようにしてもよい。
この場合、濾紙13のセット時に測定者が物差でマーキングライン32aを引く。この後、上記実施の形態と同様に、サクションヘッド18による吸引と濾紙駆動ローラ19による搬送ピッチ長=(52.5×2+α)mmの搬送とを繰り返して放射能濃度の測定を行う。そして、濾紙13が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、マーキングライン32aの位置から、集塵領域13aの幅の52.5mm+αの長さだけ移動(搬送)してセットする。
このような方法によっても、上記実施の形態同様に濾紙13を無駄なく効率良く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射性ダストモニタの構成を示し、(a)は放射性ダストモニタの内部の構成を示す平面図、(b)は放射性ダストモニタに配設されたマーカー金具を紙面において下から見た図である。
【図2】上記実施の形態に係る放射性ダストモニタに用いられる濾紙の集塵領域及び再使用領域並びにそれら領域の搬送方向の幅を示す図である。
【図3】上記実施の形態に係る放射性ダストモニタにおいて濾紙の再使用時の位置合わせを説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る放射性ダストモニタの濾紙再使用を自動化した際の内部の構成を示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る放射性ダストモニタの濾紙再使用を自動化した際の内部の構成を示す平面図である。
【図6】従来の放射性ダストモニタの内部の構成を示す平面図である。
【図7】従来の放射性ダストモニタに用いられる濾紙の集塵領域及び各集塵領域間の搬送方向の幅を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10,30,40,50 放射性ダストモニタ
11 本体
12 気密ボックス
13 濾紙
13a 集塵領域
13b 再使用領域
14 濾紙供給スプール
15 濾紙巻取スプール
16,17 ガイドローラ
18 サクションヘッド
18a サクションヘッド吸引口
19 濾紙駆動ローラ
20 テンションプーリ
21 ベルト
22 濾紙切れ検出スイッチ
23 吸引口
24 放射線検出器
25,27 第1、第2のクラッチ
26,28 モータ
32 マーカー金具
32a マーキングライン
42 マーカー部
43 マーク検知部
44,45 濾紙再使用制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおいて、
前記濾紙の面に対向して配置固定され、当該濾紙の搬送方向の直線と直交する平行な2辺を有する板状を成し、前記2辺の幅が、前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な寸法とされたマーカー手段と、
前記集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる搬送手段と
を備えたことを特徴とする放射性ダストモニタ。
【請求項2】
前記マーカー手段の2辺の幅を、前記濾紙のダストの集塵領域における前記搬送方向の幅に濾紙搬送誤差を加算した寸法とし、
前記1ピッチ長を、前記搬送方向の幅の2倍の長さに濾紙搬送誤差を加算した長さとした
ことを特徴とする請求項1に記載の放射性ダストモニタ。
【請求項3】
放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおいて、
前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる搬送手段と、
前記濾紙の面に対向して配置固定され、当該濾紙の面にマークを付けるマーカー手段と、
前記濾紙に付けられたマークを検知する検知手段と、
前記マーカー手段が濾紙にマークを付けるように制御し、当該濾紙が全て使用された後に前記検知手段で検知されたマークの情報をもとにマーク位置を求め、このマーク位置から前記集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な長さだけ当該濾紙が搬送されてセットされるように前記搬送手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする放射性ダストモニタ。
【請求項4】
前記濾紙を測定時と逆方向に搬送する濾紙巻き戻し手段を備え、前記濾紙が全て使用された後の濾紙の巻き戻し時に前記検知手段によりマークの情報を検知するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の放射性ダストモニタ。
【請求項5】
前記1ピッチ長を、前記搬送方向の幅の2倍の長さに濾紙搬送誤差を加算した長さとし、
前記制御手段によって制御される濾紙のマーク位置からの搬送の長さを、前記集塵領域における前記搬送方向の幅に濾紙搬送誤差を加算した長さとした
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の放射性ダストモニタ。
【請求項6】
放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントの空気を気密空間に吸引し、この吸引された空気を、第1及び第2の巻取り手段の間で何れか一方に巻き取られて搬送される長尺状の濾紙を介して吸引手段で所定時間吸引し、この吸引により濾紙に集塵されたダストからの放射線を放射線検出手段で検出する放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法において、
前記第1及び第2の巻取り手段への濾紙のセット時に、当該濾紙にマークを付ける第1のステップと、
前記第1のステップにて前記マークが付けられた後、前記吸引手段による吸引後の濾紙の搬送時に、前記濾紙の集塵領域における前記搬送方向の幅の2倍の長さと少なくとも同一な長さを1ピッチ長とし、この1ピッチ長当該濾紙を搬送させる第2のステップと、
濾紙が最後まで使用された後に巻き戻して使用する際に、前記第1のステップにて付けられたマークの位置から、前記集塵領域における前記搬送方向の幅と少なくとも同一な長さだけ当該濾紙を搬送してセットする第3のステップと
を含むことを特徴とする放射性ダストモニタにおける濾紙使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−17349(P2007−17349A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200689(P2005−200689)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】