説明

放射線検出素子

【課題】欠陥画素を分離してリペアしつつ、欠陥画素を分離するための切断箇所を保護した放射線検出素子を提供する。
【解決手段】欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外でかつ保護部32で覆われた部分で切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出素子に係り、特に、放射線検出素子の欠陥画素のリペアに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線検出素子が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。
【0003】
この種の放射線検出素子は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、X線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、X線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。
【0004】
この放射線検出素子は、例えば、複数の走査配線及び複数の信号配線が互いに交差して配設され、当該走査配線及び信号配線の各交差部に対応して電荷蓄積部及びTFTスイッチなどのスイッチ素子が設けられ、各交差部の電荷蓄積部及びスイッチ素子を覆うように半導体層が設けられている。
【0005】
このような放射線検出素子を用いた放射線画像撮影装置では、放射線画像を撮影する場合、X線が照射される間、各走査配線に対してOFF信号を出力して各スイッチ素子をオフにして半導体層に発生した電荷を各電荷蓄積部に蓄積し、画像を読み出す場合、各走査配線に対して1ラインずつ順にON信号を出力して各電荷蓄積部に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号をデジタルデータへ変換することにより、放射線画像を得ている。
【0006】
ところで、放射線検出素子は、絶縁性基板上に、各種の材料を堆積させ、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、レジスト剥離などの各工程が行われて形成される。
【0007】
この放射線検出素子の製造プロセスにおいて、欠陥画素が生じる場合がある。この欠陥画素はリークが発生して正常なデータが得られない場合や、欠陥画素と同じ信号配線に接続された他の画素のデータにもリークにより影響を与えてしまう場合がある。
【0008】
このような欠陥画素を補正する技術として、特許文献1には、欠陥画素のスイッチ素子に対してレーザ光を照射してスイッチ素子部分の配線を切断し、欠陥画素を電気的に分離する技術が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、欠陥画素のスイッチ素子に対してレーザ光を照射して欠陥画素を分離すると共に、欠陥画素が接続された信号配線に対してもレーザ光を照射して欠陥画素が接続された信号配線を切断して電気的に分離する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許4311693号
【特許文献2】特開2001−15514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1、2に記載の技術のように、欠陥画素のスイッチ素子に対してレーザ光を照射してスイッチ素子部分の配線を切断し、その上層に半導体層を形成した場合、切断されたスイッチ素子部分の配線の側面に半導体が堆積され、切断されたスイッチ素子部分の配線部分でリークが発生する場合がある。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術のように、レーザ光を照射して信号配線を切断する場合、切断箇所において信号配線を保護する上層の保護層もなくなり、信号配線にリークや腐食が発生する場合がある。
【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、欠陥画素を分離してリペアしつつ、欠陥画素を分離するための切断箇所を保護した放射線検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の放射線検出素子は、放射線が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及び当該センサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素がマトリクス状に複数設けられ、各画素に備えられた各スイッチ素子をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線と前記各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて前記画素に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線とが設けられた基板と、前記基板の前記画素がマトリクス状に設けられた検出領域を覆うように形成され、当該検出領域を保護する保護部と、を備え、欠陥画素のスイッチ素子に接続された前記走査配線と前記信号配線の少なくとも一方が前記検出領域外でかつ前記保護部で覆われた部分で切断されている。
【0015】
本発明の放射線検出素子は、基板に放射線が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及びセンサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素がマトリクス状に複数設けられ、当該基板にさらに各画素に備えられた各スイッチ素子をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線と各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて画素に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線とが設けられている。また、基板の画素がマトリクス状に設けられた検出領域を覆うように検出領域を保護する保護部が形成されている。
【0016】
そして、本発明では、欠陥画素のスイッチ素子に接続された走査配線と信号配線の少なくとも一方が検出領域外でかつ保護部で覆われた部分で切断されている。ここで、欠陥画素とは、絶縁膜を介した2つの金属層間で絶縁膜を破るような静電破壊が発生した画素や、異物が混入したり、異物の混入後、当該異物が剥離して欠陥部が発生した画素、絶縁膜の堆積時にピンホールが発生した画素などである。異物とは、画素を構成する構成物質と異なる物質、及び画素を複数の物質で複数層により構成する際に本来とは異なる層、位置に混入した物質をいう。
【0017】
このように、本発明の放射線検出素子は、欠陥画素のスイッチ素子に接続された走査配線と信号配線の少なくとも一方を検出領域外でかつ保護部で覆われた部分で切断しているので、欠陥画素を分離してリペアしつつ、欠陥画素を分離するための切断箇所を保護できる。
【0018】
なお、本発明は、請求項2に記載の発明のように、スイッチ素子を覆うようにセンサ部を形成してもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項3に記載の発明のように、センサ部に、放射線が照射されることにより電荷を発生する半導体層が各画素毎に個別に形成され、欠陥画素のスイッチ素子に接続された走査配線が少なくとも切断されることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、請求項4に記載の発明のように、センサ部に、放射線が照射されることにより電荷を発生する半導体層が各画素で連続的に形成され、欠陥画素のスイッチ素子に接続された信号配線が切断されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明によれば、欠陥画素を分離してリペアしつつ、欠陥画素を分離するための切断箇所を保護できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の1画素単位の構成を示す平面図である。
【図3】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の1画素単位の構成を示す線断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の全体構成を示す断面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る異物が混入した画素の一例を示す線断面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の切断箇所の一例を示す平面図である。
【図7】第2の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図8】第2の実施の形態に係る放射線検出素子の1画素単位の構成を示す平面図である。
【図9】第2の実施の形態に係る放射線検出素子の1画素単位の構成を示す線断面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る放射線検出素子の全体構成を示す断面図である。
【図11】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の切断箇所の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、本発明を、放射線画像撮影装置100に適用した場合について説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1には、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100の全体構成が示されている。
【0024】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、放射線を直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出素子10Aを備えている。
【0025】
放射線検出素子10Aは、照射された放射線を受けて電荷を発生するセンサ部103と、センサ部103で発生した電荷を蓄積する電荷蓄積容量5と、電荷蓄積容量5に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素7が放射線を検出する検出領域S(図4参照)にマトリクス状に複数設けられている。電荷蓄積容量5の一方の電極は後述する蓄積容量配線102を介して接地されて電圧レベルがグランドレベルとされている。
【0026】
また、放射線検出素子10Aには、上記TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記電荷蓄積容量5に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。
【0027】
各信号配線3には、当該信号配線3に接続された何れかのTFTスイッチ4がONされることにより電荷蓄積容量5に蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力するスキャン信号制御装置104が接続されている。
【0028】
信号検出回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号検出回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、画像を構成する各画素の情報として、各電荷蓄積容量5に蓄積された電荷量を検出する。
【0029】
この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号検出回路105において検出された電気信号に所定の処理を施すとともに、信号検出回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、スキャン信号制御装置104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する信号処理装置106が接続されている。
【0030】
図2及び図3には、本実施形態に係る放射線検出素子10Aの構成の一例が示されている。なお、図2には、本実施形態に係る放射線検出素子10Aの1つの画素7の構造を示す平面図が示されており、図3には、図2のA−A線断面図が示されている。
【0031】
図3に示すように、放射線検出素子10Aは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101、蓄積容量下部電極18、ゲート電極2及び蓄積容量配線102(図2参照。)が形成されている。ゲート電極2は走査配線101に接続され、蓄積容量下部電極18は蓄積容量配線102に接続されている。この走査配線101、蓄積容量下部電極18、ゲート電極2及び蓄積容量配線102が形成された配線層(以下、この配線層を「第1配線層」ともいう。)は、例えば、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成される。
【0032】
この第1配線層上には、一面に絶縁膜15が形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15は、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0033】
絶縁膜15上のゲート電極2に対応する位置には、半導体活性層8が形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0034】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成され、また、絶縁膜15上の蓄積容量下部電極18に対応する位置に蓄積容量上部電極16が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続され(図2参照。)、ドレイン電極13は蓄積容量上部電極16に接続されている。ソース電極9、ドレイン電極13、蓄積容量上部電極16及び信号配線3が形成された配線層(以下、この配線層を「第2配線層」ともいう。)は、例えば、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成される。
【0035】
本実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、ゲート電極2やゲート絶縁膜15、ソース電極9、ドレイン電極13によりTFTスイッチ4が構成されており、蓄積容量下部電極18やゲート絶縁膜15、蓄積容量上部電極16により電荷蓄積容量5が構成されている。
【0036】
この第2配線層を覆い、基板1上の画素7が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT保護膜層11が形成されている。このTFT保護膜層11は、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0037】
このTFT保護膜層11上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。本実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層11には、蓄積容量上部電極16と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0038】
層間絶縁膜12上には、各画素7毎に、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うように下部電極18が形成されおり、この下部電極18は、非晶質透明導電酸化膜(ITO)からなり、コンタクトホール17を介して蓄積容量上部電極16と接続されている。
【0039】
下部電極18上の基板1上の画素7が設けられた検出領域Sのほぼ全面には、非晶質のa−Se(アモルファスセレン)からなる半導体層20が一様に形成されている。この半導体層20は、X線などの放射線が照射されることにより、内部に電荷(電子−正孔)を発生する。
【0040】
この半導体層20上には、上部電極22が形成されている。本実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、上部電極22や半導体層20、下部電極18によりセンサ部103が構成されている。
【0041】
上部電極22は、不図示のバイアス電源に接続されており、バイアス電源からバイアス電圧が供給される。半導体層20内に発生した電荷は、上部電極22から印加されるバイアス電圧による電界により、電荷の極性に応じて上部電極22又は下部電極18へ移動する。
【0042】
この半導体層20に用いられるアモルファスセレン等の光電変換材料は、熱、湿度、汚染等の環境変化により劣化しやすいために何らかのカバーが必要である。また、上部電極22には、1〜10kVの高圧電圧が印加されるため、十分な耐圧を確保する必要がある。
【0043】
このため、本実施の形態に係る直接変換方式の放射線検出素子10Aには、図4に示すように上部電極22上のデバイス上部に、上部電極22を覆う上部基板としてのカバーガラス30が設けられている。本実施の形態では、カバーガラス30として、基板1と同じ材質の無アルカリガラスを採用している。
【0044】
基板1には、カバーガラス30を支持するリブ材31が設けられている。リブ材31は、例えば、アクリル樹脂等の樹脂材料で形成されており、半導体層20が形成された検出領域Sの周囲を囲んでいる。
【0045】
カバーガラス30は、その外周部がリブ材31に接合されており、リブ材31により支持されている。
【0046】
カバーガラス30とリブ材31と基板1とに囲まれた空間には、充填部材としての硬化性樹脂32が充填され、検出領域Sが保護されている。なお、硬化性樹脂32としては、例えば、エポキシ、シリコン等の常温硬化性樹脂が用いられる。
【0047】
ところで、放射線検出素子10Aは、基板1上に各層を形成する製造プロセスにおいて、欠陥画素7Aが生じる場合がある。
【0048】
図5には、TFTスイッチ4部分に異物40が混入した場合の例が示されている。このように異物40が混入した場合、TFTスイッチ4からリークが発生して欠陥画素7Aとなる。
【0049】
そこで、本実施の形態では、図6に示すように、基板1上への各層の形成が終了した段階で各画素7のリークの発生、異物付着の少なくとも一方の検査することにより欠陥画素7Aの検出を行う。そして、欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外でかつ硬化性樹脂32によって覆われる部分(図4の矢印T部分)でレーザ光を照射して切断し、欠陥画素7Aを電気的に分離してリペアを行う。走査配線101を切断した場合は、当該走査配線101に対してスキャン信号制御装置104から制御信号が流れず、欠陥画素7Aからの電荷の読み出しが行われなくなり、欠陥画素7Aを含んだ走査配線方向の画素列が線欠陥となる。信号配線3を切断した場合は、欠陥画素7Aから読出された電気信号が信号検出回路105に伝わらなくなり、欠陥画素7Aを含んだ走査配線方向の画素列が線欠陥となる。
【0050】
なお、本実施の形態に係る放射線検出素子10Aのように、半導体層20が各画素7で連続している場合、欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された走査配線101を切断すると、欠陥画素7Aの下部電極18に蓄積された電荷が放出されずに蓄積され、欠陥画素7Aの下部電極18に蓄積された電荷によって半導体層20内の電界が歪んで欠陥画素7Aの周辺の画素7のデータに影響を及ぼす場合がある。このような場合、信号配線3側のみを切断する方が好ましい。
【0051】
このリペア後、基板1にリブ材31を形成してカバーガラス30を固定し、硬化性樹脂32が充填する。
【0052】
このように、本実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外でかつ保護部としての硬化性樹脂32で覆われた部分で切断することにより、欠陥画素7Aを分離してリペアしつつ、欠陥画素7Aを分離するための切断箇所を保護できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、半導体層20が各画素7で連続しているため、例えば、欠陥画素7Aのみを電気的に分離して点欠陥としてリペアしようとした場合、半導体層20も切断することになり、半導体層20とリペアによって露出した配線の端面でリークが発生する。このため、本実施の形態のように半導体層20が各画素7で連続している放射線検出素子10Aでは、走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外で切断して欠陥画素7Aのリペアを行うことが好ましい。
【0054】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10Aは、検出領域Sを保護する硬化性樹脂32により欠陥画素7Aを分離するための切断箇所も保護できるため、切断箇所を保護するための保護部材を別に設ける必要がない。これにより、放射線検出素子10Aを製造する際の製造工程も増加しない。
【0055】
なお、第1の実施の形態に係る放射線検出素子10Aでは、切断された走査配線101及び信号配線3に接続された各画素7のデータが得られず線欠陥となるが、例えば、信号処理装置106に線欠陥となる各画素7の位置を示す位置情報を予め記憶させておき、信号処理装置106において位置情報に基づいて線欠陥の各画素7の位置を求め、線欠陥となる各画素7のデータを、線欠陥となる各画素7に隣接する正常な画素7のデータから補間処理を行うことにより生成できる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態として、放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出素子10Bに本発明を適用した場合について説明する。
【0056】
図7には、第2の実施の形態に係る放射線検出素子10Bを用いた放射線画像撮影装置100の全体構成が示されている。なお、上記第1の実施形態(図1)と対応する部分には第1の実施形態と同一の符号を付して説明する。また、放射線を光に変換するシンチレータは省略されている。
【0057】
放射線検出素子10Bは、光を受けて電荷を蓄積するセンサ部103と、センサ部103に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素7が検出領域Sにマトリクス状に多数設けられている。
【0058】
また、放射線検出素子10Bには、上記TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記センサ部103に蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。
【0059】
各信号配線3には、信号検出回路105が接続されており、各走査配線101には、スキャン信号制御装置104が接続されている。この信号検出回路105及びスキャン信号制御装置104には、信号処理装置106が接続されている。
【0060】
図8には、本実施形態に係る間接変換方式の放射線検出素子10Bの1画素単位の構造を示す平面図が示されており、図9には、図8のA−A線断面図が示されている。
【0061】
図9に示すように、放射線検出素子10Bは、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板1上に、走査配線101、ゲート電極2が形成されており、走査配線101とゲート電極2は接続されている(図8参照。)。
【0062】
この走査配線101及びゲート電極2上には、走査配線101及びゲート電極2を覆い一面に絶縁膜15が形成されている。
【0063】
絶縁膜15上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。
【0064】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3が形成されている。ソース電極9は信号配線3に接続されている(図8参照。)。
【0065】
このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(不図示)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。
【0066】
これら半導体活性層8、ソース電極9、ドレイン電極13、及び信号配線3を覆い、基板1上の画素7が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT保護膜層11が形成されている。
【0067】
このTFT保護膜層11上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。本実施の形態に係る放射線検出素子10Bでは、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層11のドレイン電極13と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0068】
層間絶縁膜12上には、コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極18が形成されており、この下部電極18は、TFTスイッチ4のドレイン電極13と接続されている。この下部電極18は、後述する半導体層21が1μm前後と厚い場合には導電性があれば材料に制限がほとんどない。このため、Al系材料、ITOなど導電性の金属を用いて形成すれば問題ない。
【0069】
一方、半導体層21の膜厚が薄い場合(0.2〜0.5μm前後)、半導体層21で光が吸収が十分でないため、TFTスイッチ4への光照射によるリーク電流の増加を防ぐため、遮光性メタルを主体とする合金、若しくは積層膜とすることが好ましい。
【0070】
下部電極18上には、フォトダイオードとして機能する半導体層21が形成されている。本実施の形態では、半導体層21として、n層、i層、p層(nアモルファスシリコン、アモルファスシリコン、pアモルファスシリコン)を積層したPIN構造のフォトダイオードを採用しており、下層からn層21A、i層21B、p層21Cを順に積層して形成する。i層21Bは、光が照射されることにより電荷(自由電子と自由正孔のペア)が発生する。n層21A及びp層21Cは、コンタクト層として機能し、下部電極18及び後述する上部電極22とi層21Bをと電気的に接続する。
【0071】
また、本実施の形態では、下部電極18を半導体層21よりも大きくしており、また、TFTスイッチ4の光の照射側を半導体層21で覆っている。これにより、画素領域内での光を受光できる面積の割合(所謂、フィルファクタ)を大きくしており、また、TFTスイッチ4への光入射を抑制している。
【0072】
各半導体層21上には、それぞれ個別に上部電極22が形成されている。この上部電極22には、例えば、ITOやIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いている。本実施の形態に係る放射線検出素子10Bでは、上部電極22や半導体層21、下部電極18によりセンサ部103が構成されている。
【0073】
層間絶縁膜12、半導体層21及び上部電極22上には、上部電極22に対応する一部で開口27Aを持つように保護絶縁膜23が形成されている。保護絶縁膜23はTFT保護膜層11と同じく、例えば、SiNx等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0074】
この保護絶縁膜23上には、共通電極配線25がAl若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした合金あるいは積層膜で形成されている。共通電極配線25は、開口27A付近にコンタクトパッド27が形成され、保護絶縁膜23の開口27Aを介して上部電極22と電気的に接続される。
【0075】
このように形成された放射線検出素子10Bには、必要に応じてさらに光吸収性の低い絶縁性の材料により保護膜24が形成されて、図10に示すように、その表面に光吸収性の低い接着樹脂を用いてGOS等からなるシンチレータ29が貼り付けられる。
【0076】
ところで、放射線検出素子10Bも、基板1上に各層を形成する製造プロセスにおいて、欠陥画素7Aが生じる場合がある。
【0077】
そこで、本実施の形態においても、基板1上への各層の形成が終了した段階で各画素7のリークの発生、異物付着の少なくとも一方の検査することにより欠陥画素7Aの検出を行い、欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外でかつシンチレータ29によって覆われる部分でレーザ光を照射して切断し、欠陥画素7Aを電気的に分離してリペアを行う。
【0078】
なお、本実施の形態に係る放射線検出素子10Bのように、半導体層20が各画素7で分離している場合、走査配線101と信号配線3の何れを切断してもよく、両方切断してもよい。
【0079】
図11には、欠陥画素7AのTFTスイッチ4に接続された信号配線3を切断した例が示されている。
【0080】
また、走査配線101を切断した場合は、当該走査配線101に対してスキャン信号制御装置104から制御信号が流れず、欠陥画素7Aに対して電圧が印加されなくなるため、制御信号が流れることによる欠陥画素7Aでのリークを防止できる。
【0081】
このリペア後、基板1にシンチレータ29を貼り付けて検出領域Sを保護する。
【0082】
このように、本実施の形態に係る放射線検出素子10Bにおいても、欠陥画素7Aのスイッチ素子に接続された走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外でかつ保護部としてのシンチレータ29で覆われた部分で切断することにより、欠陥画素7Aを分離してリペアしつつ、欠陥画素7Aを分離するための切断箇所を保護できる。
【0083】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10Bでも、シンチレータ29により欠陥画素7Aを分離するための切断箇所も保護できるため、切断箇所を保護するための保護部材を別に設ける必要がない。これにより、放射線検出素子10Bを製造する際の製造工程も増加しない。
【0084】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10Bでは、TFTスイッチ4の光の照射側を半導体層21が覆っているため、例えば、欠陥画素7Aのみを電気的に分離して点欠陥としてリペアしようとした場合、半導体層21も切断することになり、半導体層21とリペアによって露出した配線の端面でリークが発生する。このリークの発生を防ぐため、例えば、半導体層21とTFTスイッチ4とが重ならないように形成した場合、画素領域内でのフィルファクタが低下する。このため、本実施の形態のようにTFTスイッチ4の光の照射側を半導体層21で覆った放射線検出素子10Bでは、走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外で切断して欠陥画素7Aのリペアを行うことが好ましい。
【0085】
なお、第2の実施の形態に係る放射線検出素子10Bにおいても、切断された走査配線101及び信号配線3に接続された各画素7のデータが得られず線欠陥となるが、例えば、信号処理装置106に線欠陥となる各画素7の位置を示す位置情報を予め記憶させておき、信号処理装置106において位置情報に基づいて線欠陥となる各画素7の位置を求め、線欠陥となる各画素7のデータを、線欠陥となる各画素7に隣接する正常な画素7のデータから補間処理を行うことにより生成できる。
【0086】
なお、上記各実施の形態では、欠陥画素7Aのリペア後に、リペアによる切断箇所を硬化性樹脂32やシンチレータ29などの保護部により保護する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、硬化性樹脂32やシンチレータ29がリペアの際のレーザ光により切断できないほど厚く、配線の切断箇所を保護できる場合には、先に硬化性樹脂32やシンチレータ29により基板1を保護した後に、基板1の裏面(センサ部103が形成されていない面)側からレーザ光を照射して欠陥画素7Aのリペアを行うようにしてもよい。
【0087】
また、上記第2の実施の形態では、センサ部103(半導体層21)がTFTスイッチ4の光の照射側(基板1の上面側)を覆っている場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、センサ部103をTFTスイッチ4よりも下層側にTFTスイッチ4を覆うように形成した場合において、レーザ光を照射して欠陥画素7Aのみを電気的に分離して点欠陥としてリペアしようとした場合、センサ部103も切断することになり、センサ部103とリペアによって露出した配線の端面でリークが発生する。すなわち、センサ部103がTFTスイッチ4を覆うように形成され、センサ部103とTFTスイッチ4の領域が重なる場合には、走査配線101と信号配線3の少なくとも一方を検出領域S外で切断して欠陥画素7Aのリペアを行うことが好ましい。
【0088】
また、上記各実施の形態では、基板1として無アルカリガラスを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ポリイミド等の絶縁体を用いて絶縁性の基板1を形成してもよい。基板の材料はこれに限定されるものではない。
【0089】
また、上記第1の実施の形態では、直接変換方式の放射線検出素子10Aにおいて半導体層20が各画素7で連続している場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、フォトダイオード層が各画素で連続している場合に本発明を適用してもよい。特表2008−505496号公報の図5、図6には、各画素でフォトダイオード層が連続している例が示されている。
【0090】
また、放射線検出素子10A、10Bは、センサ部103が設けられた表側から放射線が照射されてもよく、基板1側(裏側)から放射線が照射されてもよい。ここで、間接変換方式の放射線検出素子10Bでは、表側から放射線が照射された場合、シンチレータ29の上面側(基板1の反対側)でより強く発光し、裏側から放射線が照射された場合、基板1を透過した放射線がシンチレータ29に入射してシンチレータ29の基板1側がより強く発光する。半導体層21には、シンチレータ29で発生した光により電荷が発生する。このため、間接変換方式の放射線検出素子10Bは、表側から放射線が照射された場合の方が裏側から放射線が照射された場合よりも、放射線が基板1を透過しないため、放射線に対する感度を高く設計することが可能であり、また、裏側から放射線が照射された場合の方が表側から放射線が照射された場合よりも各半導体層21に対するシンチレータ29の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0091】
また、上記各実施の形態では、X線を検出することにより画像を検出する放射線画像撮影装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象とする電磁波は可視光や紫外線、赤外線等いずれであってもよい。
【0092】
その他、上記各実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100の構成(図1、図7参照。)及び放射線検出素子10A、10Bの構成(図2〜図6、図8〜図11)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0093】
1 基板
3 信号配線
4 TFTスイッチ
7 画素
7A 欠陥画素
10A、10B 放射線検出素子
20、21 半導体層
29 シンチレータ
32 硬化性樹脂
40 異物
101 走査配線
103 センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線が照射されることにより電荷を発生するセンサ部及び当該センサ部に発生した電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素がマトリクス状に複数設けられ、各画素に備えられた各スイッチ素子をスイッチングする制御信号が流れる複数の走査配線と前記各スイッチ素子のスイッチング状態に応じて前記画素に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる複数の信号配線とが設けられた基板と、
前記基板の前記画素がマトリクス状に設けられた検出領域を覆うように形成され、当該検出領域を保護する保護部と、を備え、
欠陥画素のスイッチ素子に接続された前記走査配線と前記信号配線の少なくとも一方が前記検出領域外でかつ前記保護部で覆われた部分で切断された
放射線検出素子。
【請求項2】
前記センサ部は、前記スイッチ素子を覆うように形成された
請求項1記載の放射線検出素子。
【請求項3】
前記センサ部は、放射線が照射されることにより電荷を発生する半導体層が各画素毎に個別に形成され、
欠陥画素のスイッチ素子に接続された前記走査配線が少なくとも切断された
請求項1又は請求項2記載の放射線検出素子。
【請求項4】
前記センサ部は、放射線が照射されることにより電荷を発生する半導体層が各画素で連続的に形成され、
欠陥画素のスイッチ素子に接続された前記信号配線が切断された
請求項1又は請求項2記載の放射線検出素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−108890(P2011−108890A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263178(P2009−263178)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】