説明

放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法

【課題】輝尽性蛍光体層の膜厚と鮮鋭性の分布が均一な放射線画像変換パネルを提供する。
【解決手段】シート状の支持体11に輝尽性蛍光体層を成膜する、放射線画像変換パネルの製造方法において、真空容器2内で、支持体11を保持し、毎分1〜100回転で支持体11を回転させながら輝尽性蛍光体層を成膜することにより放射線画像変換パネルを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法に係り、特に、輝尽性蛍光体層が形成された放射線画像変換パネル及び放射線画像変換パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、病気診断等を目的として、X線画像に代表される放射線画像が用いられている。このような放射線画像を得るための方式として、近年においては、輝尽性蛍光体を採用した放射線画像読取方式が提案され、実用化されている。この方式においては、被写体を透過させた放射線を放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層に照射して、被写体各部の放射線透過度に対応する放射線エネルギーを蓄積させる。そして、この輝尽性蛍光体層を輝尽励起光で走査することによって蓄積させた放射線エネルギーを輝尽発光光として放出させ、光電変換手段を用いてこの輝尽発光光を画像信号に変換して、デジタル画像データとして放射線画像を得ている。
【0003】
このような放射線画像読取方法に用いられる放射線画像変換パネルは、基本構造として、基板となる支持体と、この支持体上に成膜された輝尽性蛍光体を分散含有する輝尽性蛍光体層と、からなる。
【0004】
前記放射線画像読取方法は種々の利点を有する方法であるが、より高画質の放射線画像を得るためには、この方法に用いられる放射線画像変換パネルにおいても、できる限り高感度であってかつ画質(鮮鋭性や輝度)が良好でムラのないものであることが望ましい。
【0005】
放射線画像の感度及び画質を高めることを目的として、輝尽性蛍光体層を気相堆積法により形成することからなる放射線画像変換パネルの製造方法が提案されている。気相堆積法には真空蒸着法(以下、「蒸着法」という)やスパッタ法などがあり、例えば蒸着法は、蛍光体又はその原料からなる蒸発源を抵抗加熱器や電子線の照射により加熱して蒸発源を蒸発、飛散させ、支持体を高速回転させながらその表面に蒸発物を堆積させることにより、輝尽性蛍光体層を成膜するものである。
【0006】
特許文献1に記載の製造方法では、前記の蒸着法において、所定の回転速度(毎分500回転)以上で支持体を超高速回転させて輝尽性蛍光体層を成膜させるため、輝尽性蛍光体層の膜厚分布が均一な放射線画像変換パネルを製造することができる。
【特許文献1】特開2003−344591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1に記載の製造方法で放射線画像変換パネルを製造する場合、得られる放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の膜厚分布は均一化されるものの、鮮鋭性の分布にムラが生じてしまうという問題があった。
【0008】
ここで、放射線画像変換パネルの輝尽性蛍光体層の鮮鋭性の分布は、提供する放射線画像の鮮鋭性の分布と密接に関係するものであり、放射線画像は鮮鋭性が均一であるものほど病変等のより正確な診断が可能である。
【0009】
本発明の課題は、輝尽性蛍光体層の膜厚と鮮鋭性の分布がともに均一であり、より高画質な放射線画像を提供する放射線画像変換パネル及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
支持体を回転させながら、気相堆積法により前記支持体上に輝尽性蛍光体層を成膜させる放射線画像変換パネル製造方法において、
毎分1〜100回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、支持体を毎分1〜100回転で回転させながら気相堆積法により輝尽性蛍光体層を成膜させるので、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とが均一な放射線画像変換パネルを製造することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線画像変換パネル製造方法であって、
毎分1〜50回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、支持体を毎分1〜50回転で回転させながら輝尽性蛍光体層を成膜させるので、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とがより均一な放射線画像変換パネルを製造することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル製造方法であって、
毎分1〜20回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、支持体を毎分1〜20回転で回転させながら輝尽性蛍光体層を成膜させるので、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とがさらに均一な放射線画像変換パネルを製造することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、放射線画像変換パネルであって、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネル製造方法により製造され、
前記輝尽性蛍光体層は、下記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする。
一般式;M1X・aM2X’2・bM3X”3:zA
[式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X’及びX”はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、また、a、b、zはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z≦1.0の範囲の数値を表す。]
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体層は、前記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有する。前記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体は、放射線(X線)吸収率がよいので、輝尽性蛍光体層の感度をより向上させることができる。よって、製造される放射線画像変換パネルをより高感度なものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とが均一な放射線画像変換パネルを製造することができるので、画質が均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる放射線画像変換パネルを得ることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とがより均一な放射線画像変換パネルを製造することができるので、画質がより均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる放射線画像変換パネルを得ることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、輝尽性蛍光体層における膜厚分布と鮮鋭性分布とがさらに均一な放射線画像変換パネルを製造することができるので、画質がさらに均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる放射線画像変換パネルを得ることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明と同様の効果が得られるとともに、輝尽性蛍光体層は、ハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有するので、高感度の輝尽性蛍光体層を有する放射線画像変換パネルとすることができる。よって、より高画質な放射線画像の記録、撮影を行うことができる放射線画像変換パネルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲を以下の例に限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0023】
本発明に係る放射線画像変換パネル10は気相堆積法により製造される。ここで、気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等、如何なる方法を用いてもよいが、特に蒸着法が好ましい。よって、本実施形態における放射線画像変換パネル10は、蒸着法により製造されるものとし、以下、本発明に係る放射線画像変換パネル10の製造に用いられる製造装置である蒸着装置1について説明する。
【0024】
図1に示すように、蒸着装置1は、真空ポンプ6により容器内を真空排気させ、所望の真空度に調節させる真空容器2を備えている。
【0025】
真空容器2には、輝尽性蛍光体を内部に収容しており、その輝尽制蛍光体を加熱により蒸発又は昇華させるようになっている蒸発源3が備えられている。蒸発源3は抵抗加熱法で加熱するため、ヒータを巻いた石英ルツボ又はアルミナルツボ等から構成してもよいし、ボートや、高融点金属からなるヒータから構成してもよい。また、輝尽性蛍光体を加熱する方法は、抵抗加熱法以外に電子ビームによる加熱や、高周波誘導による加熱等の方法でもよいが、本発明では、比較的簡単な構成で取り扱いが容易、安価、かつ、非常に多くの物質に適用可能である点から抵抗加熱法が好ましい。
【0026】
蒸発源3より上方の真空容器2の内面には、蒸発源3からの蒸気が蒸着されるように支持体11を保持する支持体ホルダ4が回転自在に備えられている。支持体ホルダ4には、保持される支持体11を加熱する加熱ヒータ(図示略)が備えられている。また、支持体ホルダ4には、支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させる支持体ホルダ回転機構5が備えられており、支持体ホルダ回転機構5は、支持体ホルダ4を真空容器2に連結するとともに支持体ホルダ4の回転の軸となる回転軸5aと、真空容器2外に配置されて回転軸5aの駆動源となるモータ(図示略)と、から構成されている。
【0027】
以上のように構成された蒸着装置1を使用して、本実施形態の放射線画像変換パネル10を製造する方法について、以下に詳しく述べる。
【0028】
まず、蒸着装置1の蒸発源3に設置する輝尽性蛍光体を製造する。
【0029】
ここで、輝尽性蛍光体について述べると、輝尽性蛍光体は、下記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする。
一般式;M1X・aM2X’2・bM3X”3:zA
[式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X’及びX”はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、また、a、b、zはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z≦1.0の範囲の数値を表す。]
【0030】
前記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体において、M1は、Li、Na、K、Rb及びCs等の各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属原子を表すが、中でもRb及びCsの各原子から選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属原子が好ましく、さらに好ましくはCs原子である。
【0031】
2は、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNi等の各原子から選ばれる少なくとも1種の二価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのは、Be、Mg、Ca、Sr及びBa等の各原子から選ばれる二価の金属原子である。
【0032】
3は、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びIn等の各原子から選ばれる少なくとも1種の三価の金属原子を表すが、中でも好ましく用いられるのはY、Ce、Sm、Eu、Al、La、Gd、Lu、Ga及びIn等の各原子から選ばれる三価の金属原子である。
【0033】
Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgの各原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子である。中でも好ましくはEu原子である。
【0034】
輝尽性蛍光体の輝尽発光輝度向上の観点から、X、X’及びX”はF、Cl、Br及びIの各原子から選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子を表すが、F、Cl及びBrから選ばれる少なくとも1種のハロゲン原子が好ましく、Br原子が更に好ましい。
【0035】
また、前記一般式において、b値は0≦b<0.5であるが、好ましくは、0≦b<10-2である。
【0036】
本発明においては、前記一般式で表される輝尽性蛍光体のいずれを用いてもよいが、高感度性、高鮮鋭性の観点から、特に、CsBr:zEuを用いることが好ましい。このとき、前記一般式において、M1=Cs、X=Br、a=0、b=0、0<z≦0.2である。
【0037】
前記の輝尽性蛍光体は、例えば、蛍光体原料として(a)〜(c)に示されるような化合物を用いて、以下に述べる方法により製造される。
【0038】
(a)NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、RbF、RbCl、RbBr、RbI、CsF、CsCl、CsBr及びCsIから選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化合物が用いられる。
【0039】
(b)MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、SrF2、SrCl2、SrBr2、SrI2、BaF2、BaCI2、BaBr2、BaBr2・2H2O、BaI2、ZnF2、ZnCl2、ZnBr2、ZnI2、CdF2、CdCl2、CdBr2、CdI2、CuF2、CuCl2、CuBr2、CuI、NiF2、NiCl2、NiBr2及びNiI2の化合物から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の化合物が用いられる。
【0040】
(c)前記一般式において、Eu、Tb、In、Cs、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMg等の各原子から選ばれる金属原子を有する化合物が用いられる。
【0041】
製造する輝尽性蛍光体の組成式に応じて、前記(a)〜(c)の中から用いる蛍光体原料を適宜選択し、各原料を前記一般式のa,b,zの範囲を満たすように秤量し、純水にて溶解する。この際、乳鉢、ボールミル、ミキサーミル等を用いて充分に混合してもよい。
【0042】
次に、得られた水溶液のpH値Cを0<C<7に調整するように所定の酸を加えた後、水分を蒸発気化させる。
【0043】
次に、得られた原料混合物を石英ルツボあるいはアルミナルツボ等の耐熱性容器に充填して電気炉中で焼成を行う。焼成温度は500〜1000℃が好ましい。焼成時間は原料混合物の充填量、焼成温度等によって異なるが、0.5〜6時間が好ましい。
【0044】
焼成雰囲気としては少量の水素ガスを含む窒素ガス雰囲気、少量の一酸化炭素を含む炭酸ガス雰囲気等の弱還元性雰囲気、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の中性雰囲気あるいは少量の酸素ガスを含む弱酸化性雰囲気が好ましい。
【0045】
以上のようにして製造した輝尽性蛍光体を、蒸着装置1の蒸発源3に設置させた後に、支持体11上に輝尽性蛍光体層12を形成させる蒸着工程を開始する。
【0046】
まず、支持体ホルダ4に支持体11をその輝尽性蛍光体層12の形成面が蒸発源3に対向されるように取り付ける。
【0047】
次いで、真空容器2内を真空排気させ、所望の真空度に調節しながら、支持体ホルダ回転機構5により支持体ホルダ4を蒸発源3に対して回転させる。この場合において、支持体11と、蒸発源3との間隔は、100mm〜1500mmに設置するのが好ましい。また、支持体11の回転速度は、本発明の効果を得る観点から毎分1〜100回転であることが好ましく、毎分1〜50回転であるとより好ましく、毎分1〜20回転であるとさらに好ましい。
【0048】
この際、必要に応じて、輝尽性蛍光体層12が形成される支持体11を冷却あるいは加熱させる。気相堆積法による輝尽性蛍光体層12の形成にあたり、輝尽性蛍光体層12が形成される支持体11の温度は、室温(rt)〜300℃に設定することが好ましく、さらに好ましくは50〜200℃である。このように、蒸着時に支持体11を加熱させることによって、支持体11表面の吸着物を離脱・除去し、支持体11表面と輝尽性蛍光体との間に不純物層が発生するのを防止し、密着性の強化や輝尽性蛍光体層12の膜質調整を行うことができる。
【0049】
支持体11の温度が調節されて、支持体11と支持体ホルダ4との毎分辺りの回転数が所定の値に達して安定されると、蒸発源3から輝尽性蛍光体を蒸発させて、支持体11の表面に柱状結晶状の輝尽性蛍光体層12を所望の厚さに成長させる。
【0050】
ここで、輝尽性蛍光体層12を形成させた後、必要に応じて、輝尽性蛍光体層12の支持体11とは反対の側に、物理的にあるいは化学的に輝尽性蛍光体層12を保護するための保護層13を設けてもよい。
【0051】
以上のようにして製造された放射線画像変換パネル10は、図2に示すように、基板となる支持体11を備えており、この支持体11上に、輝尽性蛍光体の柱状結晶からなる輝尽性蛍光体層12を備えており、輝尽性蛍光体層12上には必要に応じて輝尽性蛍光体層12を保護する保護層13が設けられている。
【0052】
以下、各層毎に説明する。
【0053】
支持体11は、支持体として従来の公知の材料から任意に選ぶことができるが、気相堆積法により本発明の輝尽性蛍光体層12を形成する観点から石英ガラスシート、アルミニウム、鉄、スズ、クロムなどからなる金属シート及び炭素繊維強化樹脂シートが好ましい。
【0054】
支持体11には、その表面を平滑な面とするために樹脂層を有することが好ましい。樹脂層は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、パラフィン、グラファイト等の化合物を含有することが好ましく、その膜厚は、約5μm〜50μmであることが好ましい。この樹脂層は、支持体11の表面に設けても裏面に設けても両面に設けてもよい。
【0055】
支持体11上に樹脂層を設ける手段としては、貼合法、塗設法等の手段が挙げられる。
貼合法による場合、加熱、加圧ローラを用いて行い、加熱条件としては約80〜150℃が好ましく、加圧条件としては4.90×10〜2.94×102N/cm、搬送速度は0.1〜2.0m/秒が好ましい
【0056】
輝尽性蛍光体層12は、真空容器2内における気相堆積法により成膜されたものであって、毎分1〜100回転で支持体11を回転させながら支持体11上に成膜されたものであり、より好ましくは毎分1〜50回転で支持体11を回転させながら支持体11上に成膜されたものであり、さらに好ましくは、毎分1〜20回転で支持体11を回転させながら支持体11上に成膜されたものである。この輝尽性蛍光体層12は、前記条件で成膜されることにより、膜厚分布を10%以下に抑えつつ、鮮鋭性分布を15%以下に低減させることができるので、膜厚分布と鮮鋭性分布とが均一な放射線画像変換パネル10を製造させることができ、本実施形態における放射線画像変換パネル10を用いて、画質が均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる。
【0057】
ここで、膜厚分布(%)とは、輝尽性蛍光体層12の膜厚の最大値、最小値をそれぞれImax、Iminとしたときに、下記式で示される値とした。
式;[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×2×100
【0058】
輝尽性蛍光体層12の膜厚は、膜厚計(例えば、(株)東京精密製、MINIAX DH−120)を用いて測定した。
【0059】
なお、鮮鋭性分布(%)も膜厚分布と同様に、輝尽性蛍光体層12の鮮鋭性の最大値、最小値をそれぞれImax、Iminとしたときに、下記式で示される値とした。
式;[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×2×100
【0060】
輝尽性蛍光体層12の鮮鋭性は、放射線画像変換パネル10にCTFチャートを貼着させた後に、X線を照射し、CTFチャート像を輝尽発光として読取り、光検出器で光電変換して画像信号を得た。この信号値より画像の変調伝達関数(MTF)を調べ、放射線画像の鮮鋭性を比較例との相対値で求めた。このようにして得られた放射線画像の鮮鋭性をもって輝尽性蛍光体層12の鮮鋭性とした。
【0061】
以上より、本実施形態の放射線画像変換パネル10の製造方法によれば、輝尽性蛍光体層12における膜厚分布と鮮鋭性分布とが均一な放射線画像変換パネル10を製造することができるので、画質が均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる放射線画像変換パネル10を得ることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0063】
(放射線画像変換パネルの作製)
(1)実施例1の作製
アルミニウムを素材とする金属シートからなる支持体11の片面に輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を、図1に示す蒸着装置1を使用して蒸着させ輝尽性蛍光体層12を形成した。
【0064】
まず、前記輝尽性蛍光体(CsBr:Eu)を蒸着材料として抵抗加熱ルツボに充填し、また回転する支持体ホルダ4に支持体11を設置し、支持体11と蒸発源3との間隔を700mmに調節させた。続いて蒸着装置1内を真空排気した後、95rpmの速度で支持体11を回転させながら、支持体11の温度を100℃に保持させた
【0065】
次いで、抵抗加熱ルツボを加熱して輝尽性蛍光体を蒸発、飛散させ、所定回転数で回転される支持体11の表面に蒸着させて、輝尽性蛍光体層12を成膜させた。
さらに、乾燥空気内で輝尽性蛍光体層12を保護層袋に入れ、輝尽性蛍光体層12が密封された構造の本発明に係る実施例1としての放射線画像変換パネル10を得た。
【0066】
(2)実施例2〜実施例5の作製
次に、表1に示すように、支持体11の回転速度を40rpm、19rpm、8rpm、2rpmとした以外は実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを製造し、本発明に係る実施例2〜実施例5とした。
【0067】
(3)比較例1の作製
次に、表1に示すように、支持体11の回転速度を500rpmとした以外は実施例1と同様にして放射線画像変換パネルを製造し、本発明に係る比較例1とした。
【0068】
〔評価〕
以上の様にして得られた実施例1〜5および比較例1のそれぞれについて、輝尽性蛍光体層12の膜厚と鮮鋭性を測定し、それぞれの分布について評価した。
【0069】
(1)膜厚分布
実施例1〜5および比較例1において得られた放射線画像変換パネルにおいて、輝尽性蛍光体層12の膜厚を、膜厚計((株)東京精密製、MINIAX DH−120)を用いて測定し、最大値をImax、最小値をIminとし、下記式により膜厚分布(%)を求めた。結果を表に示す。
式;[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×2×100
【0070】
(2)鮮鋭性分布
実施例1〜5および比較例1において得られた放射線画像変換パネルにそれぞれCTFチャートを貼付けた後、管電圧80kVP‐PのX線を10mR(管球からパネルまでの距離:1.5m)照射し、半導体レーザ光(発振波長:780nm、ビーム径:100μm)で走査して輝尽励起し、CTFチャート像を輝尽性蛍光体層から放射される輝尽発光として読取り、光検出器 (光電子増倍管) で光電変換して画像信号を得た。この信号値により、画像の変調伝達関数 (MTF)を調べ、放射線画像の鮮鋭性を、比較例1で得られた放射線画像変換パネルの平均値を100とした場合の相対値で求めた。なお、MTFは、空間周波数が1サイクル/mmの時の値である。得られた鮮鋭性の最大値をImax、最小値をIminとし、下記式により鮮鋭性分布(%)を求めた。結果を表に示す。
式;[(Imax−Imin)/(Imax+Imin)]×2×100
【表1】

【0071】
表に示すように、実施例1〜5の放射線画像変換パネルは、輝尽性蛍光体を蒸着させる際の支持体11の回転速度を95rpmにすることで、膜厚分布を4%に、鮮鋭性分布を15%に抑えることができる。よって、支持体11の回転速度を100rpm以下にすることで膜厚分布と鮮鋭性分布の均一性が高くなることが分かる。また、40rpmにすることで、膜厚分布を6%に、鮮鋭性分布を10%に抑えることができる。よって、支持体11の回転速度を50rpm以下にすることで膜厚分布と鮮鋭性分布の均一性がより高くなることが分かる。さらに、支持体11の回転速度を19rpmにすることで、膜厚分布を6%に、鮮鋭性分布を7%に抑えることができる。よって、支持体11の回転速度を20rpm以下にすることで膜厚分布と鮮鋭性分布の均一性がさらに高くなることが分かる。
以上のことから、支持体11の回転速度を小さくするほど、輝尽性蛍光体層12における鮮鋭性分布の値が小さくなり、膜厚分布の均一性を保持したまま鮮鋭性の均一性が高くなることが分かる。よって、比較例1に対して実施例1〜5の放射線画像変換パネル10の膜厚分布と鮮鋭性分布はともに均一であり、本発明に係る放射線画像変換パネル10を用いて、画質が均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる。
【0072】
以上より、シート状の支持体11上に輝尽性蛍光体層12を成膜させる、放射線画像変換パネル10の製造方法において、真空容器2内で、支持体11を保持し、毎分1〜100回転で支持体11を回転させながら輝尽性蛍光体層12を成膜させることにより、輝尽性蛍光体層12の膜厚と鮮鋭性の分布が均一な放射線画像変換パネル10を製造させることができ、本発明に係る放射線画像変換パネル10を用いて、画質が均一で良好な放射線画像の記録、撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】蒸着装置の一例の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の放射線画像変換パネルの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0074】
1 蒸着装置
2 真空容器
4 支持体ホルダ
5 支持体ホルダ回転機構
10 放射線画像変換パネル
11 支持体
12 輝尽性蛍光体層
13 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を回転させながら、気相堆積法により前記支持体上に輝尽性蛍光体層を成膜させる放射線画像変換パネル製造方法において、
毎分1〜100回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする放射線画像変換パネルの製造方法。
【請求項2】
毎分1〜50回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする、請求項1に記載の放射線画像変換パネル製造方法。
【請求項3】
毎分1〜20回転で前記支持体を回転させながら前記輝尽性蛍光体層を成膜させることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射線画像変換パネル製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の放射線画像変換パネル製造方法により製造され、
前記輝尽性蛍光体層は、下記一般式で表されるハロゲン化アルカリを母体とする輝尽性蛍光体を含有することを特徴とする放射線画像変換パネル。
一般式;M1X・aM2X’2・bM3X”3:zA
[式中、M1はLi、Na、K、Rb及びCsからなる群から選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり、M2はBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Cu及びNiからなる群から選ばれる少なくとも一種の二価金属であり、M3はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、X、X’及びX”はF、Cl、Br及びIからなる群から選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり、Aは、Eu、Tb、In、Ce、Tm、Dy、Pr、Ho、Nd、Yb、Er、Gd、Lu、Sm、Y、Tl、Na、Ag、Cu及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属元素であり、また、a、b、zはそれぞれ0≦a<0.5、0≦b<0.5、0<z≦1.0の範囲の数値を表す。]

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−90885(P2006−90885A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277608(P2004−277608)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】