整形電子ビーム描画のための電子ビームカラム
電子ビームカラムは電子ビームを生成する熱電界放出電子源と、電子ビームブランカと、ビーム整形モジュールと、複数の電子ビームレンズを含む電子ビーム光学系とを備える。1バージョンでは、電子ビームブランカ、ビーム整形モジュール、および電子ビーム光学系の光学パラメータは、約1/4から約3mradの受容半角βを達成するように設定される。受容半角βとは、描画面で電子ビームによって張られる角度の半分である。ビーム整形モジュールはまた、上部および下部投影レンズを使用して単レンズとして動作することもできる。電子ビームカラム用の多機能モジュールについても記載する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、整形電子ビームで基材上に回路設計パターンを描画することに関する。
【背景技術】
【0002】
パターン発生器は、半導体製造、半導体ウェハ、ディスプレイ、および回路基板、磁気バブル製造、ならびに光データ記憶媒体製造用のマスクのような基材上にパターンを描画するために使用される。パターン化されたリソグラフィックマスクは、回路設計パターンを半導体ウェハまたは誘電体のような基材に転写して、集積回路、プリント回路(PCB)、ディスプレイ、および他のパターン化基板を製造するために使用される。リソグラフィックマスクを製造するための典型的なプロセスは、例えば(i)放射線透過板上に1層の金属含有材料層を形成し、(ii)電子またはイオンビームのような荷電ビームに感応するレジスト層を金属含有材料層上に形成してリソグラフィックマスクを作成し、(iii)当該リソグラフィックマスクを変調電子ビームに選択的に露光させることによって、マスク上にパターンを描画し、(iv)露光された材料を現像してパターンを現出させ、(v)レジスト間の金属含有材料の現出部分をエッチングして、レジストに捕捉されたパターンを金属含有材料に転写し、(vi)リソグラフィックマスクから残留レジストを剥離することを含む。
【0003】
電子ビームパターン生成では、基材上の電子感応レジストを変調電子ビームに選択的に露光させることによって、回路設計パターンが描画される。電子ビームは、基材上にパターンを描画するために電子を発生、集束、ブランキング、および偏向させるディスクリート部品を有するビームカラムで形成される。従来の電子ビームカラムは、例えばRishtonらの米国特許第6,262,429号、Veneklasenらの第5,876,902号、Collierらの第3,900,737号、およびPfeifferらの第4,243,866号に記載されており、それら全ての内容全体を本書に援用する。変調電子ビームは、例えばラスタ、ベクタ、またはラスタ‐ベクタ混合スキャンのようなスキャンシステムを使用して、基材を横切るように移動してフラッシングする。ビームおよび基材は、ビームが帯状に直線的に移動しながら(例えばラスタビームスキャン)、ベクタベースで段階的に(ベクタスキャン)、またはベクタおよびラスタスキャンを組み合わせて、例えばラスタガウスビームスキャン(RGB)と呼ばれる1つのラスタスキャン法で、基材を横切るように、互いに相対移動する。
【0004】
整形ビーム描画として一般的に知られる好適な描画方法では、ラスタスキャンに沿って独立に導出または特定することのできるベクタ座標によって指定される基材上の位置に可変整形ビームが直接移動し、これらの位置の上で1回フラッシングされる。この技術では、回路設計パターンは一連の幾何学的要素に分割され、それらは次に、位置座標に関連付けられた矩形、平行四辺形、および三角形の形状に洗練される。次いで電子ビームは、ラスタスキャン内に含まれる位置座標に直接移動し、所望の形状に整形された電子ビームにより当該位置部位を露光するようにフラッシングする。ビームは、一般的に1μmより大きいアパーチャを備えるビーム整形器を用いて、各フラッシュ用に整形される。整形されたビームは、ガウスビームのガウス曲線よりも先鋭なエッジを有し、より高い分解能およびより良好な臨界寸法均一性をもたらすフラッシュプロファイルを与える。また、非描画領域/描画領域の百分率に応じて全露光時間を短縮するため、ビームは非露光領域を飛び越し、描画される領域に直接移動する。微小化する寸法の回路設計パターンを描画するため、高速の描画速度を伴った高い分解能を有することが望ましい。
【0005】
整形電子ビームカラムにおいて、電子ビームは電子源から生成される。従来の整形ビームカラムは一般的に六ホウ化ランタン(LaB6)を含む熱電子源を使用する。その一例を図1Aに示す。熱電子源10は丸みを帯びたチップ12を含む。チップ12は、電子がLaB6導体の仕事関数障壁を克服して先端から脱出するのに充分なエネルギーを持つ温度まで加熱される。放出された電子は、一般的に数ミリの距離にあるウェーネルトアノード11によって加速される。丸みを帯びたチップ12は例えば約5μmの比較的大きい半径を有し、ビームを整形するために使用されるアパーチャを照射するのに適切な輝度の、大きくかつ均一な電子分布14を生成する。大きな照射面積はまた、アパーチャがビームの中心領域だけを選択的に通過させて、より均一な電子密度を与え、かつガウス曲線のエッジを排除することをも可能にする。しかし、熱電子源10は従来の整形電子ビーム描画を行うためによく機能するが、今は90nmより小さい寸法であるずっと小さい形状を描画するのに最適である。
【0006】
一般的に、整形ビーム電子カラムには熱電界放出(TFE)電子源15を使用しない。TFE電子源15の一例は、図1Bに示すように、一般的に約0.3から1μmの半径(熱電子源10の半径の約1/10)を有するタングステンの細い針状のチップ16を有する。チップ16は約1800Kの温度まで加熱される。この際、数百ミクロンの間隔(熱電子源のミリメートル単位とは対照的に)で配置されたサプレッサ20および引出電極22を用いて、電子に障壁をトンネリングさせ、細いビーム18として放出させるのに充分な強さの電界が印加される。タングステンのチップ16は通常、仕事関数障壁を低減するように、酸化ジルコニウムの一層がコーティングされ、加熱された酸化ジルコニウム(図示せず)のリザーバは、チップ16から蒸散する材料を連続的に補給する。TFE源16は、熱電子源より高い輝度および被写界深度、小さな仮想源サイズ、および適度なエネルギーの広がりを特徴とする。また、小さな形状を効率的に描画するための必要な高いビーム電流を達成するように構成することがより望ましい。TFE源16のもつ小さな角強度は、特定の総電流を捕捉するために銃からの比較的大きい放出角を受け入れなければならないことを意味する。大きい形状(>100μm)のアパーチャ126を使用しない限り、この大きい角度は上部カラムにおける高倍率Mによって低減されなければならない。大きい銃角度および大きいMの組合せは、上部の形状の照射均一性に対する球面収差の影響を増大させる。
【0007】
熱電子源10は、例えば、その内容全体を本書に援用する、Komagataら、SPIE2096(1997)、125〜136頁に開示されているように、ケーラー照射モード光学系を用いて整形電子ビームを生成するために使用されてきた。TFE源16はより高い照射輝度をもたらし、小さな整形ビームでより高いビーム電流の可能性が見込まれるので、TFE源16をケーラー照射と共に使用することができることが望ましい。しかし、TFE源16からの細い電子ビーム18は、ケーラー照射モード光学系と共に使用されるビーム整形アパーチャよりもかなり大きくなるように拡大しなければならない。TFE源16を使用する従来の静電集束型粒子銃は大きい球面収差係数を有し、倍率に関して言えば、球面収差はその係数と照射角の3乗と倍率の積で増大する。したがって、従来の光学系におけるビーム整形アパーチャの臨界照射またはケーラー照射によるTFE源16の使用は、拡大が必要になるために過度に大きな球面収差につながる。上記のRishtonの米国特許第6,262,429号は、小さいTFE源の拡大を防止するために、影投影整形ビーム光学系を記載している。しかし、影投影光学系は像面上のビームスポットの焦点欠如をはじめ、望ましくない特性を有する。したがって、TFE電子源16をケーラー照射光学系と組み合わせて使用することのできる整形電子ビームカラムを持つことが望ましい。
【0008】
整形電子ビームカラムでは、基材上に投射される電子ビーム像は、所望のビーム形状を有した合成像を形成するように、異なる形状を有する下部アパーチャ上に上部アパーチャの像を偏向させることによって形成される。ビーム整形モジュールは、アパーチャに照射し、ビーム電流を選択し、下部アパーチャの上に上部アパーチャを結像し、アパーチャの縮小像を基材面上に投影し、かつ基材面の適切なビームアパーチャを選択する。従来の電子ビームシステムでは、これらのパラメータは結合される。例えば、第1アパーチャを第2アパーチャ上に結像し、両アパーチャ間に固定されたクロスオーバー(それはアパーチャの照射角を画定する)を有する条件は、ビーム電流および最終アパーチャ角を決定する。しかし、ビーム照射特性の変化および関連するクロスオーバー点の変化を補償するため、基材面の異なる照射要件に適応する、異なった電子ビーム経路の選択が可能であることが望ましい。
【0009】
従来の整形ビームカラムには別の問題が生じる。すなわち、偏向点から平坦な物体までの距離が角度によって変化するので、集束荷電ビームを基材全体に亘って大きい角度に偏向させながら、カラムの集束レンズの励起を動的に変化させなければならないからである。ラスタまたはベクタスキャンシステムの場合はビーム偏向速度が通常は非常に高いので、通常は磁気レンズである主対物レンズは、その高い誘導性および渦電流の発生のために充分高速に適応させることができない。したがって、良好な動的集束制御のために、付加的な小型磁気コイルが対物レンズに挿入される。しかし、これらの小型磁気コイルの上側周波数も、それらを例えばフェライトシールドによってそれらの周囲から磁気的かつ電気的に分離しない限り、渦電流および誘導性によって制限される。
【0010】
動的集束についての別の解決策は、例えばその内容全体を本書に援用するT.Hosokawaら、JVST B1(4)、1983、P1293ffに記載されているように、静電集束レンズの使用を含む。静電レンズは一般的に、小型磁気コイルよりも良好な高周波挙動性を有する。しかし、静電集束レンズは一般的に3つの同心円筒電極から構成され、必要とする空間を増大させるので、全カラム長が増加する。カラム長が増加すると、電子ビームは電子‐電子相互作用およびノイズ感受性のためにビームを広げる効果を受け、それが今度はパターン描画分解能を低下させる。したがって、電子ビームカラム長を低減する一方で、電子ビームを急速に偏向させることのできる、より小型の静電集束レンズシステムを持つことが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、整形ビーム描画法でパターンを描画する電界放出源を用いることが可能なパターン生成システムを持つことが望ましい。さらに、過度の球面収差または拡大の問題を生じることなく、アパーチャに照射するための広範囲なビームを生成する電界放出源が使用可能であることが望ましい。また、ビーム整形アパーチャのケーラー照射と共に電界放出源を使用することも望ましい。また、ビームスポットの分解能を維持するため、電子ビームカラムの長さを低減しながら、電子ビームを迅速に偏向させることのできる、より小型の静電集束レンズシステムを持つことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、電子ビームカラムは、電子ビームを生成する熱電界放出電子源、電子ビームをブランキングする電子ビームブランカ、電子ビームを整形するビーム整形モジュール、ならびに1つまたはそれ以上の集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、および対物レンズをはじめ、複数の電子ビームレンズを含む電子ビーム光学系を備える。1バージョンでは、電子ビームブランカ、ビーム整形モジュール、および電子ビーム光学系の光学パラメータは、約1/4から約3mradの受光半角βを達成するように設定される。受光半角βとは、描画面で電子ビームによって張られる角度の半分である。
【0013】
別の態様では、電子ビームカラム用のビーム整形モジュールは、上部投影レンズと、上部アパーチャを有する上部ビーム整形器であって、上部投影レンズの下流に配置された上部ビーム整形器と、電子ビーム間隙程度の間隔を置いて配置された複数の偏向板を含む偏向器であって、少なくとも1対の偏向板が相互に対面しており、電子ビーム間隙内のクロスオーバー点に集束する電子ビームを偏向させるために偏向板を静電帯電させることができるようにした偏向器と、複数の下部アパーチャを有する下部ビーム整形器と、下部投影レンズとを備える。ビーム整形モジュールは、物体および像の長さが上部および下部投影レンズによってそれぞれ画定される単レンズとして動作する。
【0014】
さらなる態様では、電子ビームカラム用の多機能モジュールは、多極を含む上部および下部電極を備え、該電極は電極を通過する電子ビームの偏向または収差補正のための電圧を受け取ることができる。上部および下部電極に印加される電圧とは独立して電圧を印加することのできる中心リング電極が、電子ビームを基材に集束させるために使用される。
【0015】
本発明のこれらの特徴、態様、および利点は、以下の説明、付属の特許請求の範囲、および本発明の実施例を示す添付図面に関連していっそうよく理解されるであろう。しかし、各々の特徴は単に特定の図面の文脈においてだけでなく、本発明で全般的に使用することができ、本発明はこれらの特徴の任意の組合せを含むことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
電子ビームを生成し、整形し、かつ基材104に描画するための電子ビームカラム100の一例を図2に示す。電子ビームカラム100は、10−7から10−9トルの範囲の真空に維持されたカラムで、電子源110を含むハウジング106を備える。電子源110は、軸114に沿って基材104に向かって進行する電子ビーム112に形成される電子を生成する。一例では、電子源110は、図1Bに示すような熱電界放出電子源(TFE)15である。当該電子源は、ジルコン化タングステン(zirconiated tungsten)、つまりZrO2またはZrH2でコーティングされるタングステンチップ16を含む。なお、チップ16は、電子源15に電界を印加しながら約1800Kの温度に加熱される。適切なTFE源15は、少なくとも1mA/srの、別名角強度として知られる単位立体角当たりの電流dl/dΩをもたらす。熱電界放出源は日本国の電気化学工業社またはオレゴン州ヒルズボロのFEI Co.から入手可能である。適切なTFE源15は例えば、オレゴン州ヒルズボロのFEI Co.に譲渡されたSchwindらの米国特許第6,798,126号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。TFE源が好適であるが、カラム100の態様に他の電子源、例えば六ホウ化ランタンのような熱電子源を使用することもでき、したがって本発明の範囲は熱電界放出源に限定すべきではないことに留意されたい。
【0017】
電子源110から放出された電子ビーム112は、基材104に到達するまで、カラム100内を通過する進行経路に沿った様々な集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、対物レンズ、および他のレンズを含む電子光学系を通過する。電子光学系は電磁レンズまたは静電レンズを含むことができ、一般的に電磁レンズの方が好適である。図示する電子ビームカラムの形態では、最初に電子ビーム112は1対の集光レンズ118、120を通過する。集光レンズ118、120は、鉄製のシュラウド内にコイルを含む電磁レンズであって、シュラウド間の間隙は電子ビーム112が通過するアパーチャとして働く。上部集光レンズ118は下部集光レンズ120の面の前に電子源110の像を集束させ、次に、ブランカ124の面内に位置するクロスオーバー点122に電子ビーム112を集束させる。ブランカ124は、後述する偏向器用の1対の静電偏向板を用いて、ビームをブランキングまたはオン・オフさせる。これら静電偏向板は高速の応答時間をもつ従来のブランキング増幅器に接続されている。電子ビームをオフにするため、電圧がブランキング偏向板に印加され、偏向板の下流にある上部ビーム整形器126の実体部で遮断されるまでビーム112を軸外に掃引する。
【0018】
ビーム整形モジュール128は、電子ビーム112を整形するために使用される。ビーム整形モジュール128は、上部投影レンズ130を含む。上部投影レンズ130は、偏向器138の偏向面136の中心135である軸114に沿った1点で、電子ビームを集束させるように設定された焦点距離を有する。ビーム112は、第1偏向器138に到達する前に上部ビーム整形器126上に投影される。上部ビーム整形器126は矩形断面を持つように電子ビーム112を整形する。上部ビーム整形器126内に形成された上部アパーチャ134は、ビーム112の中心部を通過させる一方、板126を用いてビームエッジを遮断し、アパーチャ形状に整形されたビームだけが整形器126から出現することを可能にする。図3Aは、正方形の電子ビームを形成するための上部アパーチャ134を含む上部ビーム整形器126の一例を示す。上部アパーチャ134は矩形であり、さらに詳しくは正方形である。
【0019】
偏向器138は、正方形に整形された電子ビーム112を偏向させ、様々な電子フラッシュ形状を形成する下部ビーム整形器140の異なる位置に結像させるために使用される。偏向器138はまた、転送レンズとしても機能する。図4を参照すると、偏向器138は、紙面内の2つの板139a、bおよび破線で示す紙面に垂直な2つの板139c、dの4つの静電板を含み、板139a、b、c、dは電子ビームを挟んで互いに間隔を置いて配置される。板139a、bおよび139c、dの各ペアに相補的な電圧が印加された場合、当該ペアは2つの直交方向に沿って電子ビーム112を偏向する。動作中、1対の静電板139a、bおよび139c、d間の電位差はプッシュプル回路をもたらし、ビットコードを1つ以上のDAC142a、bに与えることによって生成される。当該DACはビットコードを相補的なアナログ電圧信号に変換し、該アナログ信号は増幅器143a、bによって増幅され、偏向板139a、bに印加される。板に与えられる信号の電圧レベルおよび相対的な極性は電子ビーム112の偏向の程度を決定する。ここで、偏向の程度は例えば、軸114の中心に位置した初期位置145aから、軸114から外れた最終位置145まで電子ビーム112を偏向する程度である。偏向精度を上げるために、追加偏向器を偏向器138の下流に配置することもできる。適切な偏向器システムは例えば、2005年10月3日に出願された「Electrostatic Particle Beam Deflector」と称するStovallらの米国特許出願第11/424,976号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。
【0020】
下部ビーム整形器140は一般的に多数の異なる下部アパーチャを含む。下部アパーチャには例えば、図3Bに示す4つの直角三角形のアパーチャ148a〜dで囲まれた下部正方形アパーチャ144が含まれる。上部および下部ビーム整形器126、140は、下部ビーム整形器140のアパーチャ144または148a〜d上の正しい位置に上部アパーチャ134の像を投影し、電子ビームのフラッシュ形状を形成する。例えばX/Y軸と平行の辺を持つ矩形のフラッシュ形状は、正方形のビーム112を下部正方形アパーチャ144の隅部の1つに投影することによって形成することができる。この場合、正方形のビーム112は2つの隣接する辺が下部アパーチャによって形成されるように投影される。図3Cは、上部および下部ビーム整形器126、140のアパーチャ134から生成される8つのフラッシュ形状を示す。当該フラッシュ形状は、4種類の矩形1〜4と直角三角形5〜8とを含む。この矩形は4つの隅部により形成される。また、直角三角形5〜8は、X/Y軸と平行な非斜辺と、下部アパーチャによって形成される斜辺とを有する。太線は、下部ビーム整形器140のアパーチャ144、148a〜dによって形成されるこれらの形状の縁を示す。丸点は、下部ビーム整形器140の中心に対して固定された位置を示す基準点である。上部および下部ビーム整形器126、140の2つの構成が示されているが、当業者には明白であるように他の構成も可能である。例えば上部ビーム整形器126は矩形のアパーチャを有してもよく、下部ビーム整形器140もまた矩形のアパーチャまたは他の形状のアパーチャを有してもよい。
【0021】
矩形および三角形タイルのフラッシュ領域は、電子ビームカラム100のパラメータによって制限される。例えば、タイルの一辺の最大寸法は3/2λ未満とすべきであり、最小寸法は少なくとも約1/2λとすべきである。ここでλは、最大フラッシュ領域およびラスタ位置間の間隔に関連する電子ビームカラム100の固定長である。192nmの最大フラッシュ領域およびX方向に約1024nmのラスタ位置間の分離距離を有する電子ビームカラム100の場合、λの値は約128nmである。図3Bで、各矢印は1.5λ´Dの長さを表わし、ここでλ´はλよりわずかに大きい、例えばλより約10%大きい数字と定義され、Dは下部カラム光学系の縮小率である。
【0022】
ビーム整形モジュール128は下部投影レンズ152で完成する。下部投影レンズ152は、縮小レンズ154の入射瞳に対応するクロスオーバー点156に整形ビーム像を集束させるため選択された焦点距離を有する。この選択は、主として縮小レンズの中心部分だけを利用するための偏向に関わりなく、整形ビーム像の中心が軸114付近に来るように成される。これは、像が中心を外れて縮小レンズに投影された場合に生じる、ビームスポットのエッジ分解能の低下を軽減する。整形ビーム像は縮小レンズ154を通して縮小され、対物レンズ160の前の、中心を軸114周辺に合わせた面内に拡大像を形成する。その後、対物レンズ160は集束の半角を画定し、ターゲット基材104上に均一なビーム電流密度を有するビームスポットを形成する。所与のアパーチャサイズに対し、対物レンズ160は最終ビーム集束角を決定し、以って必要な輝度を決定する。
【0023】
カラム100において、ビーム整形モジュール128は上部投影レンズ130と、上部アパーチャ134を有する上部ビーム整形器126と、偏向器138と、正方形アパーチャ144および直角三角形アパーチャ148a〜dを有する下部ビーム整形器140と、下部投影レンズ152とを備える。ビーム整形モジュール128は、電子ビーム112の経路とは無関係に、ビーム形状照射条件の調整が可能であることが有利である。これは、電子ビームが基材104に入射するときの最終角度とは無関係に、ビーム電流の大きさを選択することを可能にする。ビーム整形モジュール128では、上部および下部ビーム整形器126、140は対となる投影レンズ130、152内部に配置される。この配置は、たとえ照射条件が変化しても、例えば上部投影レンズ130の前の電子ビームクロスオーバー点122または下部投影レンズ152の後のクロスオーバー点156の位置が変化しても、電子ビームのクロスオーバー135の位置を一定に維持するように投影レンズ130、152の励起を変化させることを可能にする。したがって、ビーム整形モジュール128は、上部投影レンズ130、152によってそれぞれ定義される物点側焦点距離および像点側焦点距離を有する単レンズとして動作し、先行技術のビーム整形システムに対する顕著な改善を有利にもたらす。
【0024】
電子ビームカラム100の電子光学系は、例えば図5Aおよび5Bに概略的に示すように、TFE源16からの電子ビーム112を処理するため、ケーラービーム照射モードにおいて構成することもできる。TFE源16は一般的に小さく、半径が0.3μmから1μmの間であり、電子放出は限定された放出角の範囲でのみ均一である。TFE源16は、サプレッサ20と引出電極22も含む。これらは、電子ビーム112を規定する電位差に維持される。図5Aは電子ビームカラム100の構成要素の例示的レイアウトである。図5Bは同じ光学系を示す概略図であり、源100からZ軸の原点における基材104までの光線経路をともに示す。電子源110は、約300から約1200mm、または約400から約800mmの距離だけ基材104から離される。本実施形態では、その距離は約750mmである。
【0025】
ケーラー照射モード光学系は、焦点が少し変化しても結像した電子ビーム形状のサイズが変化しない点で好ましい。同光学系は、基材104の垂直方向の変位も結像した形状のサイズを変化させない。電子ビームリソグラフィにおいて、形状のサイズが50から100nm程度と非常に小さい、さらにそれが50nm未満にさえなる場合には、基材104に描画される形状の寸法について精密な制御が特に重要である。形状のサイズの実質的なずれは、リソグラフィマスクとしての基材を使用不能にする。電子ビームカラム100におけるケーラーモード光学系の適用は、結像した電子ビームのサイズがビーム焦点の小さい変化または基材104の垂直方向の変位と実質的に独立するので、基材104に描画される形状の寸法の正確な制御が達成されて有利である。
【0026】
図5Aから参照されるように、電子ビームカラム100は電子源110を備える。電子源110は、照射半角αを有し、1対の上部および下部集光レンズ118、120を通過する電子ビーム112を生成する。ブランカ124は、各々1対の対向する静電偏向板を含む上部および下部ブランキング偏向器125、127ならびにブランキングアパーチャ131を持つブランキング板129を用いて、ビーム112をブランキングまたはオン・オフさせる。電子ビームをオフにするため、1つ以上のブランキング増幅器を用いて、上部および下部ブランキング偏向器125、127の偏向板に電圧が印加される。当該ブランキング偏向器はビーム112をブランキングアパーチャ131から軸外に、ブランキング板129の実体部によって遮断されるまで掃引する。
【0027】
その後、ビーム112は投影レンズ130を通過する。該レンズは電子ビーム112を上部整形偏向器138aの中心に集束させ、該偏向器は、上部ビーム整形器126付近にあるビーム112の偏向を制御する。上部ビーム整形器126は電子ビーム112が矩形断面を持つように該ビームを整形する。下部整形偏向器138bは、ビームを下部ビーム整形器140上の様々な位置に結像させて、様々な電子フラッシュ形状を形成するように、正方形の整形電子ビーム112を偏向させるために使用される。下部投影レンズ152は下部整形偏向器138bの下流にあり、集束半角βを有し、均一なビーム電流密度を有する電子ビームを投影する。電子ビームカラム100はさらに、集束、偏向、および収差補正の組合せを提供する多機能モジュール161を含む。多機能モジュール161はカラム100の対物レンズとして働き、マイクロベクタ偏向器162およびメインスキャン偏向器164をも含み、それらは両方とも、描画中に基材全体にわたって電子ビーム112を偏向させるために使用される。多機能モジュール161が図示されているが、当業者には明白であるように、モジュール161は従来の対物レンズおよびビーム偏向器システムに置き換えることができることを理解されたい。したがって、本発明の請求の範囲は、本書に記載する例示的実施形態に限定されない。
【0028】
図5Bを参照すると、ケーラー光学系は照射半角αの源光線円錐161を有する電子ビームを変換して、受容半角βを有する像形成光線円錐161を形成する。半角αおよびβは正比例する。電子ビーム112は対物レンズ160の後焦点面に源の像を形成するように集束し、その結果、像平面付近の焦点に対する整形ビームサイズの不変性がもたらされる。それは次のように示すことができる。
【0029】
βfinal=(dsource/shapefinal)αsource
したがって、受容半角βは、源のサイズつまり直径dsourceと整形ビームの最終サイズshapefinalとの比に、送光半角αを乗算することによって定義される角度である。受容半角βとは、描画面で、つまり基材104の上面で電子ビームによって張られる角度の半分である。
【0030】
アパーチャ面における照射の球面収差は、Csα3Mによって与えられる。ここでMは電子源110から、アパーチャ面でまたはその下で結像されるまでの倍率であり、Csは球面収差係数であり、αは照射光線円錐の半角である。形状アパーチャを源にほぼ接合する面に置くことが望まれるので、この比例関係は強制される。これは、源の拡大された像を形状アパーチャの下に位置付ける。さらに、この源の像のサイズは、下流の光学系の最終像平面における受光角βを設定する。
【0031】
従来の電子カラム系の場合、次の光学的数値が一般的である。
【表1】
【0032】
従来の光学系によって生じる球面収差の比較的大きい値は、結果的に整形面における実質的な照射の不均一性をもたらす。
【0033】
本発明の電子ビームカラム100の一形態において、球面収差の問題は、受容半角βが約3から約5mrad(ミリラジアン)の範囲である従来の光学設計と比較して、受容半角βを約1/4から約3mrad、または約1から約3mrad、1例では約1.5mrad低減することによって解決される。これは、最終形状サイズおよび照射半角を選択することによって達成される。というのも、特定のTFE源の場合、源サイズは固定されるからである。表1に示すように、本実施形態における電子光学系カラム100のパラメータは、約15から約60の倍率、約32から約128の縮小率、約3から約20μmのアパーチャサイズ、約1/32から約1μmの最終ビーム形状、および約10から約100nmのTFE源のサイズをもたらすように設定される。
【0034】
しかしながら従来の理解では、受容半角βが減少すると、望ましくないとされている電子間斥力に誘発されたビームぼけが増大すると予測されている。例えばKomagata(1997年、126頁)によれば、長さが短くかつ幅広い受容半角βをもつ電子ビームカラムは、高ビーム電流時のクーロン相互作用を低減させ、逆に、受容半角βが低下すると、高ビーム電流時のクーロン相互作用が増大することが予測される。ガウス分布の電子ビームを与える熱電子源によって照射される従来の結像整形ビーム粒子光学系に対して、例えば、その内容全体を本書に援用するJansen、J.Vac.Sci.Tech.B6(6)(1988)1977〜88頁が示すように、上記予測は実験的に実証されている。
【0035】
しかし、予想外に、かつ驚くべきことに、受容半角βを低減しても電子ビームのぼけは増大せず、それどころか実際には低減することを突き止めた。図6は、受光角の増加と共に減少する電気的な電子ビームぼけの予想された関係を破線180で示している。しかし、実線182で示すように、電子対電子ビームぼけは最初に受容半角から1mrad未満まで上昇した後、受容半角βの増加に伴って、予想外に徐々に減少することが突き止められた。受容角を充分に低減すると、ペンシルビームレジームに移行すると考えられる。TFE源16は一般的に、六ホウ化ランタン熱電子源の約1000倍明るい充分な輝度を有し、ペンシルビームレジームの小さな受光角においてでさえも、充分な電流を電子ビームに伝達することができる。熱電子源によって生成されるガウスビームレジームとは対照的に、TFE源16によって生じるペンシルビームレジームは、図示するように、最終的な受容半角βの減少と共に電子間斥力に誘発されたぼけを低減させる。
【0036】
受容半角βの低減は更なる利点を有する。例えば球面収差、色収差、および偏向収差のような殆どの光学的収差は、受容角の正の累乗の関数でもあるので、受容半角βの低減は、球面収差、色収差、および偏向収差の低減によるビームの決定に際しての顕著な改善に結びつくはずである。加えて望ましいことに、受容半角βの低下と共に焦点深度もまた急速に増加する。
【0037】
したがって、受容半角βの下限は、少なくとも約1mradの受容半角βに達した後の電子対電子ビームぼけの予想外の低下によって規定される。受容半角βの上限は、電子ビームカラムの形状および寸法上の制約によって決定される。全長が約300から1200mm、例えば約750mmの電子ビームカラム100の場合、受容半角βの上限は、約3mrad未満となるはずであることが確認された。したがって、様々なレンズのみならず、電子ビームブランカおよびビーム整形モジュールを含むカラムの他の構成要素を備えた電子ビーム光学系の光学パラメータを含む、電子ビームカラム100の光学パラメータは、約1から約3mradの受容半角βの範囲を達成するように設定しなければならない。電子ビーム112の進行方向、形状、およびサイズに影響を及ぼす光学パラメータは、レンズの焦点距離、アパーチャサイズ、およびカラム100の異なる構成要素間の距離のようなパラメータである。
【0038】
電子ビームカラム100の分解能は、カラム100全体の電子光学系の球面収差係数を低下させることによってさらに改善することができると考えられる。前述の通り、球面収差は(係数)×(受容角の3乗)×(倍率)によって与えられる。したがって、受容半角を低減すると(前述の通り)、球面収差係数が低下する。同様に、基材104上にパターン形成される電子ビーム像の分解能をさらに高めるには、カラム100全体の電子光学系の球面収差係数も低減させなければならない。レンズの球面収差係数はレンズの設計に依存する。例えば磁気銃レンズは、従来の静電レンズと比較して、かなり優れた球面収差係数を提供する。磁気銃レンズを使用する電子光学系は、例えば2005年11月22日に出願された「Electron Beam for Electron Gun」と称するSteven J.Coyleらの米国特許出願第11/285,802号に開示されており、その内容全体を本書に援用する。
【0039】
さらに別の形態では、著しく増大した仮想源サイズを有するTFE源16が選択される。この方法では、源16の拡大を低減することによって、カラム100で要求される球面収差が低減される。これは、従来、TFE銃に見られるものよりも源16が大きい場合にのみ達成することができる。熱電界放出源15の源は、電子を放出するチップ16のサイズを拡大することによって拡大することができる。適切な選択サイズは例えば、少なくとも約1.2ミクロン、または約1.2から約2ミクロンもしくはそれ以上である。大きい半径のチップを有するTFE源を使用するためには、より小さいチップの場合と同じアパーチャサイズおよび下部カラムの縮小率を維持することができる。しかし、アパーチャの間にあるクロスオーバーと銃との間の拡大率は、少なくとも約2分の1に、または少なくとも3分の1にさえ、低下しなければならない。これは全体の縮小率を50倍程度から約15倍ないし約25倍に低減させる。
【0040】
3つのアプローチを記載したが、電子ビームの分解能を向上しながら、収差を最も低減するために、これら3つのアプローチは単一の電子ビームカラム100において別々に、又は任意に組み合わせて使用することができる。
【0041】
図5Aに戻って説明すると、電子ビームカラム100はさらに、集束、偏向、および収差補正機能の組合せを提供する多機能モジュール161を含む。多機能モジュール161は、カラム100の対物レンズならびにマイクロベクタ偏向器162およびメインスキャン偏向器164の両方として働く。したがって、多機能モジュール161は、静電集束レンズの機能と静電偏向および/または収差補正多極の機能を結び付けている。
【0042】
多機能モジュール161の例示的実施形態を図7に示す。多機能モジュール161は複数の電極を含み、外部電極の少なくとも1つは、偏向または収差補正のために使用される。図示する実施例では、3電極静電集束レンズの上部および下部電極190、192は多極子であり、偏向または収差補正のいずれかのために使用される。例えば上部電極190は偏向に使用することができ、例えば四極子とすることができる。下部電極192は電子ビーム112の非点補正に使用されるスティグメータとすることができ、例えば八極子とすることができる。
【0043】
中間電極194は、上部および下部電極190、192に印加される電圧とは独立して集束電圧を印加することのできる中心リング電極である。これは、3つの電極190、192、および194のための電子駆動回路構成の複雑さを軽減する。中心リング電極194は、電子ビーム112に集束電圧を印加するために使用される。
【0044】
さらなる利点は、多機能モジュール161が、対物レンズ機能を複数の偏向器の機能と統合することによって、電子ビーム100の全長を効果的に低減することである。一実施例では、多機能モジュールは、先行技術に示される30mm程度の焦点距離と比較して、焦点距離が約6から約12mm、例えば約8mmの対物レンズを有する。多機能モジュール161はまた阻止電場光学系でも使用することができ、その場合、より高い電位に置かれるビームカラムの上部が上部電極190を表す。
【0045】
電子ビーム装置50の例示的実施形態の略図を図8に示す。該電子ビーム装置は、基材上に回路設計パターンを描画するフラッシュを提供するための電子ビームを変調且つ整形可能な電子ビームカラム100を備える。装置50は、整形電子ビーム、すなわち様々な幾何学的フラッシュ形状をもたらすように整形可能な例えば電子ビームまたはイオンビームを提供することができる。装置50は回路パターンデータを処理するプロセッサ52、および電子ビームカラム100を制御するカラム駆動電子機器132を備える。電子ビームカラム100は、単一ビーム、または1本のビームを提供するように編成された1組の電子ビームを提供することができる。電子ビームを用いたこの描画方法を実行することができる例示的電子ビーム装置は例えば、本願と同一出願人に譲渡され、2005年10月3日に出願された、「Beam Exposure Writing Strategy System and Method」と称するBullerらの米国特許出願第11/243,304号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。
【0046】
動作中、電子ビーム112によって基材104に描画される回路設計パターンは、フラッシュを形成するために生成され、かつ処理される。当該生成及び処理は、例えば本願と同一出願人に譲渡され、2005年10月3日に出願され、その内容全体を本書に援用する、「Writing a Circuit Design Pattern with Shaped Electron Beam Flashes」と称するBullerらの米国特許出願第11/243,299号に記載されている。回路設計パターンを基材に描画するために、プロセッサ52は回路設計パターンの少なくとも一部分をメモリ56から読み出し、読み出されたデータは処理されて描画用のフラッシュにされる。なお、読み出されるデータのサイズはそのバッファメモリサイズに依存する。プロセッサ52は、データを処理してデータ信号をカラム駆動電子機器90に送信するのに適した集積回路を含む電子ハードウェアおよび回路構成を備え、カラム駆動電子機器は、電子ビームカラム100およびその周辺部品を作動させるための電子部品を有する。例えばカラム駆動電子機器90は、電子ビームカラム100のブランカ、偏向器、およびレンズに信号を送信し、かつそこから信号を受信して、基材上にパターンを描画するために基板104を動かしながら、選択された順序の整形されたフラッシュで電子ビーム112をフラッシングすることができる。プロセッサ52およびカラム駆動電子機器90を別々のユニットとして記載したが、当業者には明白であるように、それらを1つのユニットに統合するか、あるいはさらなるユニットに分割することもできる。
【0047】
一般的に、プロセッサ52はデータを受信し、認証し、、アルゴリズムを実行し、出力データおよび信号を生成し、検出器および他のチャンバ部品からのデータ信号を検出し、かつ電子ビーム装置を監視または制御するように構成される。例えばプロセッサ52は、(i)例えばインテル社製の従来のマイクロプロセッサのような中央処理装置(CPU)58、(ii)例えばRAIDドライブのようなハードドライブ、ROM、RAMなどの取外し不能な記憶媒体60、および例えばCDまたはフロッピー(登録商標)ディスクのような取外し可能な記憶媒体62を含むメモリ56、(iii)データの検索、データ処理、および電子ビーム装置の特定部品の動作のような、特定のタスク用に設計され事前にプログラムされた特定用途向け集積回路(ASIC)、ならびに(iv)例えばアナログおよびデジタル入出力ボード、通信インタフェースボード、およびモニタコントローラボードを含む、特定の信号処理タスクで使用される様々なインタフェースボード、を備えたコンピュータを含んでもよい。インタフェースボードは、例えばプロセスモニタからの信号を処理し、データ信号をCPUに提供することができる。コンピュータはまた、例えばコプロセッサ、クロック回路、キャッシュ、電源装置、およびCPUと連絡している他の周知の部品を含む支援回路構成をも有する。RAM66は、処理を実行している最中に本発明のソフトウェアで実行されているものを格納するために使用することができる。本発明のコードの命令セットは一般的に記憶媒体に格納され、CPUによって実行されるときにRAMに一時的に格納するために呼び出される。オペレータとコントローラとの間のユーザインタフェースは例えば、ディスプレイ68およびキーボードまたはライトペンのようなデータ入力装置70を介することができる。特定の画面または機能を選択するために、オペレータはデータ入力装置を使用して選択を入力し、選択をディスプレイ上で検討することができる。
【0048】
プロセッサ52はまた、コンピュータによって読出し可能であり、かつメモリ内に、例えば取外し不能な記憶媒体または取外し可能な記憶媒体に格納することのできる、コンピュータプログラムコード80をも含む。コンピュータプログラムコード80は、回路設計パターンをフラッシュに変換し、フラッシュをスキャンに割り当て、電子ビームカラム100およびその構成要素を作動させて、電子ビームを基材104全体にスキャンさせる、1つまたはそれ以上のソフトウェアプログラムおよび/またはプログラムコードの命令のセットを含む。コンピュータプログラムコード80は、例えばアセンブリ言語、C++、パスカル、またはフォートランのような任意の従来のプログラミング言語で書くことができる。適切なプログラムコードは、従来のテキストエディタを用いて単一ファイルまたは複数のファイルに入力され、コンピュータで使用可能なメモリ媒体に格納または具現化される。入力されたコードテキストが高級言語である場合、コードはコンパイルされ、得られたコンパイラコードは事前にコンパイルされたライブラリルーチンのオブジェクトコードにリンクされる。ユーザはオブジェクトコードを呼び出し、プログラムで識別されたタスクを実行するために、CPUにコードを読み出させてリンクされたコンパイル済みオブジェクトコードを実行させる。
【0049】
フラッシュ形状およびサイズの制約を含むプロセッサ52によって生成されるフラッシュデータは、適切な描画方法によって基材に描画するために処理される。プロセッサ52は、使用されるスキャンニングシステムの種類、例えばラスタ、ベクタ、またはラスタ‐ベクタ混合スキャンによって制約される選択順にフラッシュを配列する。ラスタマイクロベクタ(RMV)整形ビームスキャンでは、ラスタ主フィールドスキャンにベクタ副フィールドスキャンを重ね合わせることによって、制御されたフラッシュ形状を持つ電子ビームが基材全体にわたる様々な位置に照射される。この方法で、各ベクタフィールドはせいぜい1回のフラッシュに割り当てられ、ベクタフラッシュフィールドは、パターン密度の変動を局所的に平均するように設定距離だけ偏位されたラスタスキャンに沿って重複される。ラスタスキャン位置に対応する選択順序でフラッシュを割り当てた後、各フラッシュにドーズが割り当てられる。フラッシュドーズは、ラスタ主フィールドスキャンに沿ってベクタ決定位置上で電子ビームがオン状態に維持されるドウェルタイムである。したがって、最終フラッシュデータはフラッシュ形状、位置、およびドーズを含む。
【0050】
スキャンニングの最中で、電子ビームが入射される基材104が動かされている間に、電子ビーム112はブランキングによって変調される。スキャンニングは一連の経路を描画する。各経路は一連のY方向スキャンで構成される。一般的に、4相または2相スキャンを用いた多相描画方法が使用される。4相描画では連続する経路がスキャン長のおおよそ1/4ずつY軸方向にステップアップされ、各領域は合計4回露光される。2相描画では、連続する経路が、スキャン長のおおよそ1/2ずつY軸方向にステップアップされ、各領域は2回露光される。これにより、基材104に描画されるパターンの優れた分解能が達成される。
【0051】
本発明を特定の好適な形態に関してかなり詳細に説明したが、他の形態も可能である。例えばビーム整形モジュールは他の特徴または他の構成レンズを持つことができる。同様に、TFE源の代替的電子源を使用することもできる。したがって、付属の特許請求の範囲は、明細書に含まれる好適なバージョンの記載に限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】(先行技術)六ホウ化ランタン(LaB6)を含む熱電子源の略図である。
【図1B】(先行技術)ZrO2が供給されたタングステンチップを含む熱電界放出電子源の略図である。
【図2】例示的電子ビームカラムの略図である。
【図3A】偏向器を用いて電子ビームを矩形および直角二等辺三角形に整形するために使用可能な上部ビーム整形器の略図である。
【図3B】偏向器を用いて電子ビームを矩形および直角二等辺三角形に整形するために使用可能な下部ビーム整形器の略図である。
【図3C】図3Aおよび3Bのアパーチャから得られる異なるフラッシュ形状を示し、かつフラッシュ形状の上に重ね合わされた下部アパーチャのエッジをも示す略図である。
【図4】電子ビーム偏向器の例示的実施形態の略図である。
【図5A】TFE電子源およびケーラー照射モード光学系を備えた電子ビームカラムの別の例示的実施形態の略図である。
【図5B】電子ビームの光線経路を示す図5Aの電子ビームカラムの略図である。
【図6】電子‐電子ビームぼけの相対強度を受容半角βの関数として示すグラフである。
【図7】静電集束、偏向、および収差をもたらす多機能モジュールの略図である。
【図8】回路設計パターンを処理して電子ビームカラム用のフラッシュデータを生成することのできるプロセッサの略ブロック図である。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、整形電子ビームで基材上に回路設計パターンを描画することに関する。
【背景技術】
【0002】
パターン発生器は、半導体製造、半導体ウェハ、ディスプレイ、および回路基板、磁気バブル製造、ならびに光データ記憶媒体製造用のマスクのような基材上にパターンを描画するために使用される。パターン化されたリソグラフィックマスクは、回路設計パターンを半導体ウェハまたは誘電体のような基材に転写して、集積回路、プリント回路(PCB)、ディスプレイ、および他のパターン化基板を製造するために使用される。リソグラフィックマスクを製造するための典型的なプロセスは、例えば(i)放射線透過板上に1層の金属含有材料層を形成し、(ii)電子またはイオンビームのような荷電ビームに感応するレジスト層を金属含有材料層上に形成してリソグラフィックマスクを作成し、(iii)当該リソグラフィックマスクを変調電子ビームに選択的に露光させることによって、マスク上にパターンを描画し、(iv)露光された材料を現像してパターンを現出させ、(v)レジスト間の金属含有材料の現出部分をエッチングして、レジストに捕捉されたパターンを金属含有材料に転写し、(vi)リソグラフィックマスクから残留レジストを剥離することを含む。
【0003】
電子ビームパターン生成では、基材上の電子感応レジストを変調電子ビームに選択的に露光させることによって、回路設計パターンが描画される。電子ビームは、基材上にパターンを描画するために電子を発生、集束、ブランキング、および偏向させるディスクリート部品を有するビームカラムで形成される。従来の電子ビームカラムは、例えばRishtonらの米国特許第6,262,429号、Veneklasenらの第5,876,902号、Collierらの第3,900,737号、およびPfeifferらの第4,243,866号に記載されており、それら全ての内容全体を本書に援用する。変調電子ビームは、例えばラスタ、ベクタ、またはラスタ‐ベクタ混合スキャンのようなスキャンシステムを使用して、基材を横切るように移動してフラッシングする。ビームおよび基材は、ビームが帯状に直線的に移動しながら(例えばラスタビームスキャン)、ベクタベースで段階的に(ベクタスキャン)、またはベクタおよびラスタスキャンを組み合わせて、例えばラスタガウスビームスキャン(RGB)と呼ばれる1つのラスタスキャン法で、基材を横切るように、互いに相対移動する。
【0004】
整形ビーム描画として一般的に知られる好適な描画方法では、ラスタスキャンに沿って独立に導出または特定することのできるベクタ座標によって指定される基材上の位置に可変整形ビームが直接移動し、これらの位置の上で1回フラッシングされる。この技術では、回路設計パターンは一連の幾何学的要素に分割され、それらは次に、位置座標に関連付けられた矩形、平行四辺形、および三角形の形状に洗練される。次いで電子ビームは、ラスタスキャン内に含まれる位置座標に直接移動し、所望の形状に整形された電子ビームにより当該位置部位を露光するようにフラッシングする。ビームは、一般的に1μmより大きいアパーチャを備えるビーム整形器を用いて、各フラッシュ用に整形される。整形されたビームは、ガウスビームのガウス曲線よりも先鋭なエッジを有し、より高い分解能およびより良好な臨界寸法均一性をもたらすフラッシュプロファイルを与える。また、非描画領域/描画領域の百分率に応じて全露光時間を短縮するため、ビームは非露光領域を飛び越し、描画される領域に直接移動する。微小化する寸法の回路設計パターンを描画するため、高速の描画速度を伴った高い分解能を有することが望ましい。
【0005】
整形電子ビームカラムにおいて、電子ビームは電子源から生成される。従来の整形ビームカラムは一般的に六ホウ化ランタン(LaB6)を含む熱電子源を使用する。その一例を図1Aに示す。熱電子源10は丸みを帯びたチップ12を含む。チップ12は、電子がLaB6導体の仕事関数障壁を克服して先端から脱出するのに充分なエネルギーを持つ温度まで加熱される。放出された電子は、一般的に数ミリの距離にあるウェーネルトアノード11によって加速される。丸みを帯びたチップ12は例えば約5μmの比較的大きい半径を有し、ビームを整形するために使用されるアパーチャを照射するのに適切な輝度の、大きくかつ均一な電子分布14を生成する。大きな照射面積はまた、アパーチャがビームの中心領域だけを選択的に通過させて、より均一な電子密度を与え、かつガウス曲線のエッジを排除することをも可能にする。しかし、熱電子源10は従来の整形電子ビーム描画を行うためによく機能するが、今は90nmより小さい寸法であるずっと小さい形状を描画するのに最適である。
【0006】
一般的に、整形ビーム電子カラムには熱電界放出(TFE)電子源15を使用しない。TFE電子源15の一例は、図1Bに示すように、一般的に約0.3から1μmの半径(熱電子源10の半径の約1/10)を有するタングステンの細い針状のチップ16を有する。チップ16は約1800Kの温度まで加熱される。この際、数百ミクロンの間隔(熱電子源のミリメートル単位とは対照的に)で配置されたサプレッサ20および引出電極22を用いて、電子に障壁をトンネリングさせ、細いビーム18として放出させるのに充分な強さの電界が印加される。タングステンのチップ16は通常、仕事関数障壁を低減するように、酸化ジルコニウムの一層がコーティングされ、加熱された酸化ジルコニウム(図示せず)のリザーバは、チップ16から蒸散する材料を連続的に補給する。TFE源16は、熱電子源より高い輝度および被写界深度、小さな仮想源サイズ、および適度なエネルギーの広がりを特徴とする。また、小さな形状を効率的に描画するための必要な高いビーム電流を達成するように構成することがより望ましい。TFE源16のもつ小さな角強度は、特定の総電流を捕捉するために銃からの比較的大きい放出角を受け入れなければならないことを意味する。大きい形状(>100μm)のアパーチャ126を使用しない限り、この大きい角度は上部カラムにおける高倍率Mによって低減されなければならない。大きい銃角度および大きいMの組合せは、上部の形状の照射均一性に対する球面収差の影響を増大させる。
【0007】
熱電子源10は、例えば、その内容全体を本書に援用する、Komagataら、SPIE2096(1997)、125〜136頁に開示されているように、ケーラー照射モード光学系を用いて整形電子ビームを生成するために使用されてきた。TFE源16はより高い照射輝度をもたらし、小さな整形ビームでより高いビーム電流の可能性が見込まれるので、TFE源16をケーラー照射と共に使用することができることが望ましい。しかし、TFE源16からの細い電子ビーム18は、ケーラー照射モード光学系と共に使用されるビーム整形アパーチャよりもかなり大きくなるように拡大しなければならない。TFE源16を使用する従来の静電集束型粒子銃は大きい球面収差係数を有し、倍率に関して言えば、球面収差はその係数と照射角の3乗と倍率の積で増大する。したがって、従来の光学系におけるビーム整形アパーチャの臨界照射またはケーラー照射によるTFE源16の使用は、拡大が必要になるために過度に大きな球面収差につながる。上記のRishtonの米国特許第6,262,429号は、小さいTFE源の拡大を防止するために、影投影整形ビーム光学系を記載している。しかし、影投影光学系は像面上のビームスポットの焦点欠如をはじめ、望ましくない特性を有する。したがって、TFE電子源16をケーラー照射光学系と組み合わせて使用することのできる整形電子ビームカラムを持つことが望ましい。
【0008】
整形電子ビームカラムでは、基材上に投射される電子ビーム像は、所望のビーム形状を有した合成像を形成するように、異なる形状を有する下部アパーチャ上に上部アパーチャの像を偏向させることによって形成される。ビーム整形モジュールは、アパーチャに照射し、ビーム電流を選択し、下部アパーチャの上に上部アパーチャを結像し、アパーチャの縮小像を基材面上に投影し、かつ基材面の適切なビームアパーチャを選択する。従来の電子ビームシステムでは、これらのパラメータは結合される。例えば、第1アパーチャを第2アパーチャ上に結像し、両アパーチャ間に固定されたクロスオーバー(それはアパーチャの照射角を画定する)を有する条件は、ビーム電流および最終アパーチャ角を決定する。しかし、ビーム照射特性の変化および関連するクロスオーバー点の変化を補償するため、基材面の異なる照射要件に適応する、異なった電子ビーム経路の選択が可能であることが望ましい。
【0009】
従来の整形ビームカラムには別の問題が生じる。すなわち、偏向点から平坦な物体までの距離が角度によって変化するので、集束荷電ビームを基材全体に亘って大きい角度に偏向させながら、カラムの集束レンズの励起を動的に変化させなければならないからである。ラスタまたはベクタスキャンシステムの場合はビーム偏向速度が通常は非常に高いので、通常は磁気レンズである主対物レンズは、その高い誘導性および渦電流の発生のために充分高速に適応させることができない。したがって、良好な動的集束制御のために、付加的な小型磁気コイルが対物レンズに挿入される。しかし、これらの小型磁気コイルの上側周波数も、それらを例えばフェライトシールドによってそれらの周囲から磁気的かつ電気的に分離しない限り、渦電流および誘導性によって制限される。
【0010】
動的集束についての別の解決策は、例えばその内容全体を本書に援用するT.Hosokawaら、JVST B1(4)、1983、P1293ffに記載されているように、静電集束レンズの使用を含む。静電レンズは一般的に、小型磁気コイルよりも良好な高周波挙動性を有する。しかし、静電集束レンズは一般的に3つの同心円筒電極から構成され、必要とする空間を増大させるので、全カラム長が増加する。カラム長が増加すると、電子ビームは電子‐電子相互作用およびノイズ感受性のためにビームを広げる効果を受け、それが今度はパターン描画分解能を低下させる。したがって、電子ビームカラム長を低減する一方で、電子ビームを急速に偏向させることのできる、より小型の静電集束レンズシステムを持つことが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、整形ビーム描画法でパターンを描画する電界放出源を用いることが可能なパターン生成システムを持つことが望ましい。さらに、過度の球面収差または拡大の問題を生じることなく、アパーチャに照射するための広範囲なビームを生成する電界放出源が使用可能であることが望ましい。また、ビーム整形アパーチャのケーラー照射と共に電界放出源を使用することも望ましい。また、ビームスポットの分解能を維持するため、電子ビームカラムの長さを低減しながら、電子ビームを迅速に偏向させることのできる、より小型の静電集束レンズシステムを持つことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様では、電子ビームカラムは、電子ビームを生成する熱電界放出電子源、電子ビームをブランキングする電子ビームブランカ、電子ビームを整形するビーム整形モジュール、ならびに1つまたはそれ以上の集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、および対物レンズをはじめ、複数の電子ビームレンズを含む電子ビーム光学系を備える。1バージョンでは、電子ビームブランカ、ビーム整形モジュール、および電子ビーム光学系の光学パラメータは、約1/4から約3mradの受光半角βを達成するように設定される。受光半角βとは、描画面で電子ビームによって張られる角度の半分である。
【0013】
別の態様では、電子ビームカラム用のビーム整形モジュールは、上部投影レンズと、上部アパーチャを有する上部ビーム整形器であって、上部投影レンズの下流に配置された上部ビーム整形器と、電子ビーム間隙程度の間隔を置いて配置された複数の偏向板を含む偏向器であって、少なくとも1対の偏向板が相互に対面しており、電子ビーム間隙内のクロスオーバー点に集束する電子ビームを偏向させるために偏向板を静電帯電させることができるようにした偏向器と、複数の下部アパーチャを有する下部ビーム整形器と、下部投影レンズとを備える。ビーム整形モジュールは、物体および像の長さが上部および下部投影レンズによってそれぞれ画定される単レンズとして動作する。
【0014】
さらなる態様では、電子ビームカラム用の多機能モジュールは、多極を含む上部および下部電極を備え、該電極は電極を通過する電子ビームの偏向または収差補正のための電圧を受け取ることができる。上部および下部電極に印加される電圧とは独立して電圧を印加することのできる中心リング電極が、電子ビームを基材に集束させるために使用される。
【0015】
本発明のこれらの特徴、態様、および利点は、以下の説明、付属の特許請求の範囲、および本発明の実施例を示す添付図面に関連していっそうよく理解されるであろう。しかし、各々の特徴は単に特定の図面の文脈においてだけでなく、本発明で全般的に使用することができ、本発明はこれらの特徴の任意の組合せを含むことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
電子ビームを生成し、整形し、かつ基材104に描画するための電子ビームカラム100の一例を図2に示す。電子ビームカラム100は、10−7から10−9トルの範囲の真空に維持されたカラムで、電子源110を含むハウジング106を備える。電子源110は、軸114に沿って基材104に向かって進行する電子ビーム112に形成される電子を生成する。一例では、電子源110は、図1Bに示すような熱電界放出電子源(TFE)15である。当該電子源は、ジルコン化タングステン(zirconiated tungsten)、つまりZrO2またはZrH2でコーティングされるタングステンチップ16を含む。なお、チップ16は、電子源15に電界を印加しながら約1800Kの温度に加熱される。適切なTFE源15は、少なくとも1mA/srの、別名角強度として知られる単位立体角当たりの電流dl/dΩをもたらす。熱電界放出源は日本国の電気化学工業社またはオレゴン州ヒルズボロのFEI Co.から入手可能である。適切なTFE源15は例えば、オレゴン州ヒルズボロのFEI Co.に譲渡されたSchwindらの米国特許第6,798,126号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。TFE源が好適であるが、カラム100の態様に他の電子源、例えば六ホウ化ランタンのような熱電子源を使用することもでき、したがって本発明の範囲は熱電界放出源に限定すべきではないことに留意されたい。
【0017】
電子源110から放出された電子ビーム112は、基材104に到達するまで、カラム100内を通過する進行経路に沿った様々な集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、対物レンズ、および他のレンズを含む電子光学系を通過する。電子光学系は電磁レンズまたは静電レンズを含むことができ、一般的に電磁レンズの方が好適である。図示する電子ビームカラムの形態では、最初に電子ビーム112は1対の集光レンズ118、120を通過する。集光レンズ118、120は、鉄製のシュラウド内にコイルを含む電磁レンズであって、シュラウド間の間隙は電子ビーム112が通過するアパーチャとして働く。上部集光レンズ118は下部集光レンズ120の面の前に電子源110の像を集束させ、次に、ブランカ124の面内に位置するクロスオーバー点122に電子ビーム112を集束させる。ブランカ124は、後述する偏向器用の1対の静電偏向板を用いて、ビームをブランキングまたはオン・オフさせる。これら静電偏向板は高速の応答時間をもつ従来のブランキング増幅器に接続されている。電子ビームをオフにするため、電圧がブランキング偏向板に印加され、偏向板の下流にある上部ビーム整形器126の実体部で遮断されるまでビーム112を軸外に掃引する。
【0018】
ビーム整形モジュール128は、電子ビーム112を整形するために使用される。ビーム整形モジュール128は、上部投影レンズ130を含む。上部投影レンズ130は、偏向器138の偏向面136の中心135である軸114に沿った1点で、電子ビームを集束させるように設定された焦点距離を有する。ビーム112は、第1偏向器138に到達する前に上部ビーム整形器126上に投影される。上部ビーム整形器126は矩形断面を持つように電子ビーム112を整形する。上部ビーム整形器126内に形成された上部アパーチャ134は、ビーム112の中心部を通過させる一方、板126を用いてビームエッジを遮断し、アパーチャ形状に整形されたビームだけが整形器126から出現することを可能にする。図3Aは、正方形の電子ビームを形成するための上部アパーチャ134を含む上部ビーム整形器126の一例を示す。上部アパーチャ134は矩形であり、さらに詳しくは正方形である。
【0019】
偏向器138は、正方形に整形された電子ビーム112を偏向させ、様々な電子フラッシュ形状を形成する下部ビーム整形器140の異なる位置に結像させるために使用される。偏向器138はまた、転送レンズとしても機能する。図4を参照すると、偏向器138は、紙面内の2つの板139a、bおよび破線で示す紙面に垂直な2つの板139c、dの4つの静電板を含み、板139a、b、c、dは電子ビームを挟んで互いに間隔を置いて配置される。板139a、bおよび139c、dの各ペアに相補的な電圧が印加された場合、当該ペアは2つの直交方向に沿って電子ビーム112を偏向する。動作中、1対の静電板139a、bおよび139c、d間の電位差はプッシュプル回路をもたらし、ビットコードを1つ以上のDAC142a、bに与えることによって生成される。当該DACはビットコードを相補的なアナログ電圧信号に変換し、該アナログ信号は増幅器143a、bによって増幅され、偏向板139a、bに印加される。板に与えられる信号の電圧レベルおよび相対的な極性は電子ビーム112の偏向の程度を決定する。ここで、偏向の程度は例えば、軸114の中心に位置した初期位置145aから、軸114から外れた最終位置145まで電子ビーム112を偏向する程度である。偏向精度を上げるために、追加偏向器を偏向器138の下流に配置することもできる。適切な偏向器システムは例えば、2005年10月3日に出願された「Electrostatic Particle Beam Deflector」と称するStovallらの米国特許出願第11/424,976号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。
【0020】
下部ビーム整形器140は一般的に多数の異なる下部アパーチャを含む。下部アパーチャには例えば、図3Bに示す4つの直角三角形のアパーチャ148a〜dで囲まれた下部正方形アパーチャ144が含まれる。上部および下部ビーム整形器126、140は、下部ビーム整形器140のアパーチャ144または148a〜d上の正しい位置に上部アパーチャ134の像を投影し、電子ビームのフラッシュ形状を形成する。例えばX/Y軸と平行の辺を持つ矩形のフラッシュ形状は、正方形のビーム112を下部正方形アパーチャ144の隅部の1つに投影することによって形成することができる。この場合、正方形のビーム112は2つの隣接する辺が下部アパーチャによって形成されるように投影される。図3Cは、上部および下部ビーム整形器126、140のアパーチャ134から生成される8つのフラッシュ形状を示す。当該フラッシュ形状は、4種類の矩形1〜4と直角三角形5〜8とを含む。この矩形は4つの隅部により形成される。また、直角三角形5〜8は、X/Y軸と平行な非斜辺と、下部アパーチャによって形成される斜辺とを有する。太線は、下部ビーム整形器140のアパーチャ144、148a〜dによって形成されるこれらの形状の縁を示す。丸点は、下部ビーム整形器140の中心に対して固定された位置を示す基準点である。上部および下部ビーム整形器126、140の2つの構成が示されているが、当業者には明白であるように他の構成も可能である。例えば上部ビーム整形器126は矩形のアパーチャを有してもよく、下部ビーム整形器140もまた矩形のアパーチャまたは他の形状のアパーチャを有してもよい。
【0021】
矩形および三角形タイルのフラッシュ領域は、電子ビームカラム100のパラメータによって制限される。例えば、タイルの一辺の最大寸法は3/2λ未満とすべきであり、最小寸法は少なくとも約1/2λとすべきである。ここでλは、最大フラッシュ領域およびラスタ位置間の間隔に関連する電子ビームカラム100の固定長である。192nmの最大フラッシュ領域およびX方向に約1024nmのラスタ位置間の分離距離を有する電子ビームカラム100の場合、λの値は約128nmである。図3Bで、各矢印は1.5λ´Dの長さを表わし、ここでλ´はλよりわずかに大きい、例えばλより約10%大きい数字と定義され、Dは下部カラム光学系の縮小率である。
【0022】
ビーム整形モジュール128は下部投影レンズ152で完成する。下部投影レンズ152は、縮小レンズ154の入射瞳に対応するクロスオーバー点156に整形ビーム像を集束させるため選択された焦点距離を有する。この選択は、主として縮小レンズの中心部分だけを利用するための偏向に関わりなく、整形ビーム像の中心が軸114付近に来るように成される。これは、像が中心を外れて縮小レンズに投影された場合に生じる、ビームスポットのエッジ分解能の低下を軽減する。整形ビーム像は縮小レンズ154を通して縮小され、対物レンズ160の前の、中心を軸114周辺に合わせた面内に拡大像を形成する。その後、対物レンズ160は集束の半角を画定し、ターゲット基材104上に均一なビーム電流密度を有するビームスポットを形成する。所与のアパーチャサイズに対し、対物レンズ160は最終ビーム集束角を決定し、以って必要な輝度を決定する。
【0023】
カラム100において、ビーム整形モジュール128は上部投影レンズ130と、上部アパーチャ134を有する上部ビーム整形器126と、偏向器138と、正方形アパーチャ144および直角三角形アパーチャ148a〜dを有する下部ビーム整形器140と、下部投影レンズ152とを備える。ビーム整形モジュール128は、電子ビーム112の経路とは無関係に、ビーム形状照射条件の調整が可能であることが有利である。これは、電子ビームが基材104に入射するときの最終角度とは無関係に、ビーム電流の大きさを選択することを可能にする。ビーム整形モジュール128では、上部および下部ビーム整形器126、140は対となる投影レンズ130、152内部に配置される。この配置は、たとえ照射条件が変化しても、例えば上部投影レンズ130の前の電子ビームクロスオーバー点122または下部投影レンズ152の後のクロスオーバー点156の位置が変化しても、電子ビームのクロスオーバー135の位置を一定に維持するように投影レンズ130、152の励起を変化させることを可能にする。したがって、ビーム整形モジュール128は、上部投影レンズ130、152によってそれぞれ定義される物点側焦点距離および像点側焦点距離を有する単レンズとして動作し、先行技術のビーム整形システムに対する顕著な改善を有利にもたらす。
【0024】
電子ビームカラム100の電子光学系は、例えば図5Aおよび5Bに概略的に示すように、TFE源16からの電子ビーム112を処理するため、ケーラービーム照射モードにおいて構成することもできる。TFE源16は一般的に小さく、半径が0.3μmから1μmの間であり、電子放出は限定された放出角の範囲でのみ均一である。TFE源16は、サプレッサ20と引出電極22も含む。これらは、電子ビーム112を規定する電位差に維持される。図5Aは電子ビームカラム100の構成要素の例示的レイアウトである。図5Bは同じ光学系を示す概略図であり、源100からZ軸の原点における基材104までの光線経路をともに示す。電子源110は、約300から約1200mm、または約400から約800mmの距離だけ基材104から離される。本実施形態では、その距離は約750mmである。
【0025】
ケーラー照射モード光学系は、焦点が少し変化しても結像した電子ビーム形状のサイズが変化しない点で好ましい。同光学系は、基材104の垂直方向の変位も結像した形状のサイズを変化させない。電子ビームリソグラフィにおいて、形状のサイズが50から100nm程度と非常に小さい、さらにそれが50nm未満にさえなる場合には、基材104に描画される形状の寸法について精密な制御が特に重要である。形状のサイズの実質的なずれは、リソグラフィマスクとしての基材を使用不能にする。電子ビームカラム100におけるケーラーモード光学系の適用は、結像した電子ビームのサイズがビーム焦点の小さい変化または基材104の垂直方向の変位と実質的に独立するので、基材104に描画される形状の寸法の正確な制御が達成されて有利である。
【0026】
図5Aから参照されるように、電子ビームカラム100は電子源110を備える。電子源110は、照射半角αを有し、1対の上部および下部集光レンズ118、120を通過する電子ビーム112を生成する。ブランカ124は、各々1対の対向する静電偏向板を含む上部および下部ブランキング偏向器125、127ならびにブランキングアパーチャ131を持つブランキング板129を用いて、ビーム112をブランキングまたはオン・オフさせる。電子ビームをオフにするため、1つ以上のブランキング増幅器を用いて、上部および下部ブランキング偏向器125、127の偏向板に電圧が印加される。当該ブランキング偏向器はビーム112をブランキングアパーチャ131から軸外に、ブランキング板129の実体部によって遮断されるまで掃引する。
【0027】
その後、ビーム112は投影レンズ130を通過する。該レンズは電子ビーム112を上部整形偏向器138aの中心に集束させ、該偏向器は、上部ビーム整形器126付近にあるビーム112の偏向を制御する。上部ビーム整形器126は電子ビーム112が矩形断面を持つように該ビームを整形する。下部整形偏向器138bは、ビームを下部ビーム整形器140上の様々な位置に結像させて、様々な電子フラッシュ形状を形成するように、正方形の整形電子ビーム112を偏向させるために使用される。下部投影レンズ152は下部整形偏向器138bの下流にあり、集束半角βを有し、均一なビーム電流密度を有する電子ビームを投影する。電子ビームカラム100はさらに、集束、偏向、および収差補正の組合せを提供する多機能モジュール161を含む。多機能モジュール161はカラム100の対物レンズとして働き、マイクロベクタ偏向器162およびメインスキャン偏向器164をも含み、それらは両方とも、描画中に基材全体にわたって電子ビーム112を偏向させるために使用される。多機能モジュール161が図示されているが、当業者には明白であるように、モジュール161は従来の対物レンズおよびビーム偏向器システムに置き換えることができることを理解されたい。したがって、本発明の請求の範囲は、本書に記載する例示的実施形態に限定されない。
【0028】
図5Bを参照すると、ケーラー光学系は照射半角αの源光線円錐161を有する電子ビームを変換して、受容半角βを有する像形成光線円錐161を形成する。半角αおよびβは正比例する。電子ビーム112は対物レンズ160の後焦点面に源の像を形成するように集束し、その結果、像平面付近の焦点に対する整形ビームサイズの不変性がもたらされる。それは次のように示すことができる。
【0029】
βfinal=(dsource/shapefinal)αsource
したがって、受容半角βは、源のサイズつまり直径dsourceと整形ビームの最終サイズshapefinalとの比に、送光半角αを乗算することによって定義される角度である。受容半角βとは、描画面で、つまり基材104の上面で電子ビームによって張られる角度の半分である。
【0030】
アパーチャ面における照射の球面収差は、Csα3Mによって与えられる。ここでMは電子源110から、アパーチャ面でまたはその下で結像されるまでの倍率であり、Csは球面収差係数であり、αは照射光線円錐の半角である。形状アパーチャを源にほぼ接合する面に置くことが望まれるので、この比例関係は強制される。これは、源の拡大された像を形状アパーチャの下に位置付ける。さらに、この源の像のサイズは、下流の光学系の最終像平面における受光角βを設定する。
【0031】
従来の電子カラム系の場合、次の光学的数値が一般的である。
【表1】
【0032】
従来の光学系によって生じる球面収差の比較的大きい値は、結果的に整形面における実質的な照射の不均一性をもたらす。
【0033】
本発明の電子ビームカラム100の一形態において、球面収差の問題は、受容半角βが約3から約5mrad(ミリラジアン)の範囲である従来の光学設計と比較して、受容半角βを約1/4から約3mrad、または約1から約3mrad、1例では約1.5mrad低減することによって解決される。これは、最終形状サイズおよび照射半角を選択することによって達成される。というのも、特定のTFE源の場合、源サイズは固定されるからである。表1に示すように、本実施形態における電子光学系カラム100のパラメータは、約15から約60の倍率、約32から約128の縮小率、約3から約20μmのアパーチャサイズ、約1/32から約1μmの最終ビーム形状、および約10から約100nmのTFE源のサイズをもたらすように設定される。
【0034】
しかしながら従来の理解では、受容半角βが減少すると、望ましくないとされている電子間斥力に誘発されたビームぼけが増大すると予測されている。例えばKomagata(1997年、126頁)によれば、長さが短くかつ幅広い受容半角βをもつ電子ビームカラムは、高ビーム電流時のクーロン相互作用を低減させ、逆に、受容半角βが低下すると、高ビーム電流時のクーロン相互作用が増大することが予測される。ガウス分布の電子ビームを与える熱電子源によって照射される従来の結像整形ビーム粒子光学系に対して、例えば、その内容全体を本書に援用するJansen、J.Vac.Sci.Tech.B6(6)(1988)1977〜88頁が示すように、上記予測は実験的に実証されている。
【0035】
しかし、予想外に、かつ驚くべきことに、受容半角βを低減しても電子ビームのぼけは増大せず、それどころか実際には低減することを突き止めた。図6は、受光角の増加と共に減少する電気的な電子ビームぼけの予想された関係を破線180で示している。しかし、実線182で示すように、電子対電子ビームぼけは最初に受容半角から1mrad未満まで上昇した後、受容半角βの増加に伴って、予想外に徐々に減少することが突き止められた。受容角を充分に低減すると、ペンシルビームレジームに移行すると考えられる。TFE源16は一般的に、六ホウ化ランタン熱電子源の約1000倍明るい充分な輝度を有し、ペンシルビームレジームの小さな受光角においてでさえも、充分な電流を電子ビームに伝達することができる。熱電子源によって生成されるガウスビームレジームとは対照的に、TFE源16によって生じるペンシルビームレジームは、図示するように、最終的な受容半角βの減少と共に電子間斥力に誘発されたぼけを低減させる。
【0036】
受容半角βの低減は更なる利点を有する。例えば球面収差、色収差、および偏向収差のような殆どの光学的収差は、受容角の正の累乗の関数でもあるので、受容半角βの低減は、球面収差、色収差、および偏向収差の低減によるビームの決定に際しての顕著な改善に結びつくはずである。加えて望ましいことに、受容半角βの低下と共に焦点深度もまた急速に増加する。
【0037】
したがって、受容半角βの下限は、少なくとも約1mradの受容半角βに達した後の電子対電子ビームぼけの予想外の低下によって規定される。受容半角βの上限は、電子ビームカラムの形状および寸法上の制約によって決定される。全長が約300から1200mm、例えば約750mmの電子ビームカラム100の場合、受容半角βの上限は、約3mrad未満となるはずであることが確認された。したがって、様々なレンズのみならず、電子ビームブランカおよびビーム整形モジュールを含むカラムの他の構成要素を備えた電子ビーム光学系の光学パラメータを含む、電子ビームカラム100の光学パラメータは、約1から約3mradの受容半角βの範囲を達成するように設定しなければならない。電子ビーム112の進行方向、形状、およびサイズに影響を及ぼす光学パラメータは、レンズの焦点距離、アパーチャサイズ、およびカラム100の異なる構成要素間の距離のようなパラメータである。
【0038】
電子ビームカラム100の分解能は、カラム100全体の電子光学系の球面収差係数を低下させることによってさらに改善することができると考えられる。前述の通り、球面収差は(係数)×(受容角の3乗)×(倍率)によって与えられる。したがって、受容半角を低減すると(前述の通り)、球面収差係数が低下する。同様に、基材104上にパターン形成される電子ビーム像の分解能をさらに高めるには、カラム100全体の電子光学系の球面収差係数も低減させなければならない。レンズの球面収差係数はレンズの設計に依存する。例えば磁気銃レンズは、従来の静電レンズと比較して、かなり優れた球面収差係数を提供する。磁気銃レンズを使用する電子光学系は、例えば2005年11月22日に出願された「Electron Beam for Electron Gun」と称するSteven J.Coyleらの米国特許出願第11/285,802号に開示されており、その内容全体を本書に援用する。
【0039】
さらに別の形態では、著しく増大した仮想源サイズを有するTFE源16が選択される。この方法では、源16の拡大を低減することによって、カラム100で要求される球面収差が低減される。これは、従来、TFE銃に見られるものよりも源16が大きい場合にのみ達成することができる。熱電界放出源15の源は、電子を放出するチップ16のサイズを拡大することによって拡大することができる。適切な選択サイズは例えば、少なくとも約1.2ミクロン、または約1.2から約2ミクロンもしくはそれ以上である。大きい半径のチップを有するTFE源を使用するためには、より小さいチップの場合と同じアパーチャサイズおよび下部カラムの縮小率を維持することができる。しかし、アパーチャの間にあるクロスオーバーと銃との間の拡大率は、少なくとも約2分の1に、または少なくとも3分の1にさえ、低下しなければならない。これは全体の縮小率を50倍程度から約15倍ないし約25倍に低減させる。
【0040】
3つのアプローチを記載したが、電子ビームの分解能を向上しながら、収差を最も低減するために、これら3つのアプローチは単一の電子ビームカラム100において別々に、又は任意に組み合わせて使用することができる。
【0041】
図5Aに戻って説明すると、電子ビームカラム100はさらに、集束、偏向、および収差補正機能の組合せを提供する多機能モジュール161を含む。多機能モジュール161は、カラム100の対物レンズならびにマイクロベクタ偏向器162およびメインスキャン偏向器164の両方として働く。したがって、多機能モジュール161は、静電集束レンズの機能と静電偏向および/または収差補正多極の機能を結び付けている。
【0042】
多機能モジュール161の例示的実施形態を図7に示す。多機能モジュール161は複数の電極を含み、外部電極の少なくとも1つは、偏向または収差補正のために使用される。図示する実施例では、3電極静電集束レンズの上部および下部電極190、192は多極子であり、偏向または収差補正のいずれかのために使用される。例えば上部電極190は偏向に使用することができ、例えば四極子とすることができる。下部電極192は電子ビーム112の非点補正に使用されるスティグメータとすることができ、例えば八極子とすることができる。
【0043】
中間電極194は、上部および下部電極190、192に印加される電圧とは独立して集束電圧を印加することのできる中心リング電極である。これは、3つの電極190、192、および194のための電子駆動回路構成の複雑さを軽減する。中心リング電極194は、電子ビーム112に集束電圧を印加するために使用される。
【0044】
さらなる利点は、多機能モジュール161が、対物レンズ機能を複数の偏向器の機能と統合することによって、電子ビーム100の全長を効果的に低減することである。一実施例では、多機能モジュールは、先行技術に示される30mm程度の焦点距離と比較して、焦点距離が約6から約12mm、例えば約8mmの対物レンズを有する。多機能モジュール161はまた阻止電場光学系でも使用することができ、その場合、より高い電位に置かれるビームカラムの上部が上部電極190を表す。
【0045】
電子ビーム装置50の例示的実施形態の略図を図8に示す。該電子ビーム装置は、基材上に回路設計パターンを描画するフラッシュを提供するための電子ビームを変調且つ整形可能な電子ビームカラム100を備える。装置50は、整形電子ビーム、すなわち様々な幾何学的フラッシュ形状をもたらすように整形可能な例えば電子ビームまたはイオンビームを提供することができる。装置50は回路パターンデータを処理するプロセッサ52、および電子ビームカラム100を制御するカラム駆動電子機器132を備える。電子ビームカラム100は、単一ビーム、または1本のビームを提供するように編成された1組の電子ビームを提供することができる。電子ビームを用いたこの描画方法を実行することができる例示的電子ビーム装置は例えば、本願と同一出願人に譲渡され、2005年10月3日に出願された、「Beam Exposure Writing Strategy System and Method」と称するBullerらの米国特許出願第11/243,304号に記載されており、その内容全体を本書に援用する。
【0046】
動作中、電子ビーム112によって基材104に描画される回路設計パターンは、フラッシュを形成するために生成され、かつ処理される。当該生成及び処理は、例えば本願と同一出願人に譲渡され、2005年10月3日に出願され、その内容全体を本書に援用する、「Writing a Circuit Design Pattern with Shaped Electron Beam Flashes」と称するBullerらの米国特許出願第11/243,299号に記載されている。回路設計パターンを基材に描画するために、プロセッサ52は回路設計パターンの少なくとも一部分をメモリ56から読み出し、読み出されたデータは処理されて描画用のフラッシュにされる。なお、読み出されるデータのサイズはそのバッファメモリサイズに依存する。プロセッサ52は、データを処理してデータ信号をカラム駆動電子機器90に送信するのに適した集積回路を含む電子ハードウェアおよび回路構成を備え、カラム駆動電子機器は、電子ビームカラム100およびその周辺部品を作動させるための電子部品を有する。例えばカラム駆動電子機器90は、電子ビームカラム100のブランカ、偏向器、およびレンズに信号を送信し、かつそこから信号を受信して、基材上にパターンを描画するために基板104を動かしながら、選択された順序の整形されたフラッシュで電子ビーム112をフラッシングすることができる。プロセッサ52およびカラム駆動電子機器90を別々のユニットとして記載したが、当業者には明白であるように、それらを1つのユニットに統合するか、あるいはさらなるユニットに分割することもできる。
【0047】
一般的に、プロセッサ52はデータを受信し、認証し、、アルゴリズムを実行し、出力データおよび信号を生成し、検出器および他のチャンバ部品からのデータ信号を検出し、かつ電子ビーム装置を監視または制御するように構成される。例えばプロセッサ52は、(i)例えばインテル社製の従来のマイクロプロセッサのような中央処理装置(CPU)58、(ii)例えばRAIDドライブのようなハードドライブ、ROM、RAMなどの取外し不能な記憶媒体60、および例えばCDまたはフロッピー(登録商標)ディスクのような取外し可能な記憶媒体62を含むメモリ56、(iii)データの検索、データ処理、および電子ビーム装置の特定部品の動作のような、特定のタスク用に設計され事前にプログラムされた特定用途向け集積回路(ASIC)、ならびに(iv)例えばアナログおよびデジタル入出力ボード、通信インタフェースボード、およびモニタコントローラボードを含む、特定の信号処理タスクで使用される様々なインタフェースボード、を備えたコンピュータを含んでもよい。インタフェースボードは、例えばプロセスモニタからの信号を処理し、データ信号をCPUに提供することができる。コンピュータはまた、例えばコプロセッサ、クロック回路、キャッシュ、電源装置、およびCPUと連絡している他の周知の部品を含む支援回路構成をも有する。RAM66は、処理を実行している最中に本発明のソフトウェアで実行されているものを格納するために使用することができる。本発明のコードの命令セットは一般的に記憶媒体に格納され、CPUによって実行されるときにRAMに一時的に格納するために呼び出される。オペレータとコントローラとの間のユーザインタフェースは例えば、ディスプレイ68およびキーボードまたはライトペンのようなデータ入力装置70を介することができる。特定の画面または機能を選択するために、オペレータはデータ入力装置を使用して選択を入力し、選択をディスプレイ上で検討することができる。
【0048】
プロセッサ52はまた、コンピュータによって読出し可能であり、かつメモリ内に、例えば取外し不能な記憶媒体または取外し可能な記憶媒体に格納することのできる、コンピュータプログラムコード80をも含む。コンピュータプログラムコード80は、回路設計パターンをフラッシュに変換し、フラッシュをスキャンに割り当て、電子ビームカラム100およびその構成要素を作動させて、電子ビームを基材104全体にスキャンさせる、1つまたはそれ以上のソフトウェアプログラムおよび/またはプログラムコードの命令のセットを含む。コンピュータプログラムコード80は、例えばアセンブリ言語、C++、パスカル、またはフォートランのような任意の従来のプログラミング言語で書くことができる。適切なプログラムコードは、従来のテキストエディタを用いて単一ファイルまたは複数のファイルに入力され、コンピュータで使用可能なメモリ媒体に格納または具現化される。入力されたコードテキストが高級言語である場合、コードはコンパイルされ、得られたコンパイラコードは事前にコンパイルされたライブラリルーチンのオブジェクトコードにリンクされる。ユーザはオブジェクトコードを呼び出し、プログラムで識別されたタスクを実行するために、CPUにコードを読み出させてリンクされたコンパイル済みオブジェクトコードを実行させる。
【0049】
フラッシュ形状およびサイズの制約を含むプロセッサ52によって生成されるフラッシュデータは、適切な描画方法によって基材に描画するために処理される。プロセッサ52は、使用されるスキャンニングシステムの種類、例えばラスタ、ベクタ、またはラスタ‐ベクタ混合スキャンによって制約される選択順にフラッシュを配列する。ラスタマイクロベクタ(RMV)整形ビームスキャンでは、ラスタ主フィールドスキャンにベクタ副フィールドスキャンを重ね合わせることによって、制御されたフラッシュ形状を持つ電子ビームが基材全体にわたる様々な位置に照射される。この方法で、各ベクタフィールドはせいぜい1回のフラッシュに割り当てられ、ベクタフラッシュフィールドは、パターン密度の変動を局所的に平均するように設定距離だけ偏位されたラスタスキャンに沿って重複される。ラスタスキャン位置に対応する選択順序でフラッシュを割り当てた後、各フラッシュにドーズが割り当てられる。フラッシュドーズは、ラスタ主フィールドスキャンに沿ってベクタ決定位置上で電子ビームがオン状態に維持されるドウェルタイムである。したがって、最終フラッシュデータはフラッシュ形状、位置、およびドーズを含む。
【0050】
スキャンニングの最中で、電子ビームが入射される基材104が動かされている間に、電子ビーム112はブランキングによって変調される。スキャンニングは一連の経路を描画する。各経路は一連のY方向スキャンで構成される。一般的に、4相または2相スキャンを用いた多相描画方法が使用される。4相描画では連続する経路がスキャン長のおおよそ1/4ずつY軸方向にステップアップされ、各領域は合計4回露光される。2相描画では、連続する経路が、スキャン長のおおよそ1/2ずつY軸方向にステップアップされ、各領域は2回露光される。これにより、基材104に描画されるパターンの優れた分解能が達成される。
【0051】
本発明を特定の好適な形態に関してかなり詳細に説明したが、他の形態も可能である。例えばビーム整形モジュールは他の特徴または他の構成レンズを持つことができる。同様に、TFE源の代替的電子源を使用することもできる。したがって、付属の特許請求の範囲は、明細書に含まれる好適なバージョンの記載に限定すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1A】(先行技術)六ホウ化ランタン(LaB6)を含む熱電子源の略図である。
【図1B】(先行技術)ZrO2が供給されたタングステンチップを含む熱電界放出電子源の略図である。
【図2】例示的電子ビームカラムの略図である。
【図3A】偏向器を用いて電子ビームを矩形および直角二等辺三角形に整形するために使用可能な上部ビーム整形器の略図である。
【図3B】偏向器を用いて電子ビームを矩形および直角二等辺三角形に整形するために使用可能な下部ビーム整形器の略図である。
【図3C】図3Aおよび3Bのアパーチャから得られる異なるフラッシュ形状を示し、かつフラッシュ形状の上に重ね合わされた下部アパーチャのエッジをも示す略図である。
【図4】電子ビーム偏向器の例示的実施形態の略図である。
【図5A】TFE電子源およびケーラー照射モード光学系を備えた電子ビームカラムの別の例示的実施形態の略図である。
【図5B】電子ビームの光線経路を示す図5Aの電子ビームカラムの略図である。
【図6】電子‐電子ビームぼけの相対強度を受容半角βの関数として示すグラフである。
【図7】静電集束、偏向、および収差をもたらす多機能モジュールの略図である。
【図8】回路設計パターンを処理して電子ビームカラム用のフラッシュデータを生成することのできるプロセッサの略ブロック図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)電子ビームを生成する熱電界放出電子源と、
(b)電子ビームをブランキングする電子ビームブランカと、
(c)電子ビームを整形するビーム整形モジュールと、
(d)1つまたはそれ以上の集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、および対物レンズを含む複数の電子ビームレンズを有する電子ビーム光学系と、
を備えた電子ビームカラムであって、
前記電子ビームブランカ、前記ビーム整形モジュール、および前記電子ビーム光学系の光学パラメータは、描画面において前記電子ビームによって張られる角度の半分である受光半角βが約1/4から約3mradを達成するように、設定された、
電子ビームカラム。
【請求項2】
前記電子ビームブランカ、前記ビーム整形モジュール、および前記電子ビーム光学系の前記光学パラメータは、前記受容半角βが約1から約3mradを達成するように設定される、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記電子ビーム光学系は約300から約1200mmの長さを有するカラムに配置される、請求項1に記載のカラム。
【請求項4】
前記受光半角βがβfinal=(dsource/shapefinal)αsourceによって定義される角度であり、ここでdsourceはビーム源の直径であり、shapefinalは整形ビームの最終サイズであり、αsourceは送光半角である、請求項1に記載のカラム。
【請求項5】
電子ビームカラムが次の特徴、すなわち
(a)約15から約60の倍率、
(b)約32から約128の縮小率、
(c)約3から約20μmのアパーチャサイズ、
(d)約1/32から約1μmの最終ビーム形状、および
(e)約10から約100nmの源サイズ、
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項6】
前記熱電界放出電子源が次の特徴、すなわち
(a)少なくとも約1.2ミクロンの直径を有するチップ、
(b)約1.2から約2ミクロンの直径を有するチップ、
(c)ジルコン化タングステンを含む、
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項7】
電子ビームカラム用のビーム整形モジュールであって、
(a)上部投影レンズと、
(b)上部アパーチャを有し、前記上部投影レンズの下流に位置する上部ビーム整形器と、
(c)電子ビーム間隙を中心に間隔を置いて配置された複数の偏向板を含み、少なくとも1対の偏向板が相互に対向し、電子ビーム間隙内のクロスオーバー点で集束する電子ビームを偏向させるように偏向板を帯電させることができる偏向器と、
(d)複数の下部アパーチャを有する下部ビーム整形器と、
(e)下部投影レンズと、
を備え、以って、当該ビーム整形モジュールが、前記上部および下部投影レンズによって物体および像の長さが定義された単レンズとして働く、
ビーム整形モジュール。
【請求項8】
前記上部投影レンズは、前記偏向器の偏向面の中心に位置する軸に沿った点に前記電子ビームを集束させるように設定される焦点距離を有する、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項9】
前記下部投影レンズは、下流の縮小レンズの入射瞳に対応するクロスオーバー点に、整形されたビーム像を集束させるように選択された焦点距離を有する、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項10】
前記上部ビーム整形器の上部アパーチャが正方形である、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項11】
前記下部ビーム整形器の複数の下部アパーチャは、1つの正方形アパーチャおよび複数の直角三角形アパーチャを含む、請求項10に記載のビーム整形モジュール。
【請求項12】
電子ビームカラム用の多機能モジュールであって、
(a)多極子を含み、通過する電子ビームの偏向または収差補正を行うことが可能な上部および下部電極と、
(b)電子ビームを基材上で集束させるために、上部および下部電極に印加される電圧とは独立して電圧を印加することができる中心リング電極と、
を備えた多機能モジュール。
【請求項13】
前記上部および下部電極が、電子ビームの偏向および収差補正の両方を行うことが可能な請求項12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記上部、下部、および中央リング電極が、静電偏向および収差補正機能を持つ静電集束レンズを画定する、請求項12に記載のモジュール。
【請求項15】
前記上部電極は、電子ビームを偏向させるのに充分な電圧が印加される四極子を含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項16】
前記下部電極は、電子ビームの非点収差補正を生じさせるに充分な電圧が印加されるスティグメータを含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項17】
前記スティグメータが八極子である、請求項16に記載のモジュール。
【請求項18】
約6から約12mmの焦点距離を有する対物レンズを含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項1】
(a)電子ビームを生成する熱電界放出電子源と、
(b)電子ビームをブランキングする電子ビームブランカと、
(c)電子ビームを整形するビーム整形モジュールと、
(d)1つまたはそれ以上の集光レンズ、投影レンズ、拡大レンズ、縮小レンズ、および対物レンズを含む複数の電子ビームレンズを有する電子ビーム光学系と、
を備えた電子ビームカラムであって、
前記電子ビームブランカ、前記ビーム整形モジュール、および前記電子ビーム光学系の光学パラメータは、描画面において前記電子ビームによって張られる角度の半分である受光半角βが約1/4から約3mradを達成するように、設定された、
電子ビームカラム。
【請求項2】
前記電子ビームブランカ、前記ビーム整形モジュール、および前記電子ビーム光学系の前記光学パラメータは、前記受容半角βが約1から約3mradを達成するように設定される、請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記電子ビーム光学系は約300から約1200mmの長さを有するカラムに配置される、請求項1に記載のカラム。
【請求項4】
前記受光半角βがβfinal=(dsource/shapefinal)αsourceによって定義される角度であり、ここでdsourceはビーム源の直径であり、shapefinalは整形ビームの最終サイズであり、αsourceは送光半角である、請求項1に記載のカラム。
【請求項5】
電子ビームカラムが次の特徴、すなわち
(a)約15から約60の倍率、
(b)約32から約128の縮小率、
(c)約3から約20μmのアパーチャサイズ、
(d)約1/32から約1μmの最終ビーム形状、および
(e)約10から約100nmの源サイズ、
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項6】
前記熱電界放出電子源が次の特徴、すなわち
(a)少なくとも約1.2ミクロンの直径を有するチップ、
(b)約1.2から約2ミクロンの直径を有するチップ、
(c)ジルコン化タングステンを含む、
の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のカラム。
【請求項7】
電子ビームカラム用のビーム整形モジュールであって、
(a)上部投影レンズと、
(b)上部アパーチャを有し、前記上部投影レンズの下流に位置する上部ビーム整形器と、
(c)電子ビーム間隙を中心に間隔を置いて配置された複数の偏向板を含み、少なくとも1対の偏向板が相互に対向し、電子ビーム間隙内のクロスオーバー点で集束する電子ビームを偏向させるように偏向板を帯電させることができる偏向器と、
(d)複数の下部アパーチャを有する下部ビーム整形器と、
(e)下部投影レンズと、
を備え、以って、当該ビーム整形モジュールが、前記上部および下部投影レンズによって物体および像の長さが定義された単レンズとして働く、
ビーム整形モジュール。
【請求項8】
前記上部投影レンズは、前記偏向器の偏向面の中心に位置する軸に沿った点に前記電子ビームを集束させるように設定される焦点距離を有する、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項9】
前記下部投影レンズは、下流の縮小レンズの入射瞳に対応するクロスオーバー点に、整形されたビーム像を集束させるように選択された焦点距離を有する、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項10】
前記上部ビーム整形器の上部アパーチャが正方形である、請求項7に記載のビーム整形モジュール。
【請求項11】
前記下部ビーム整形器の複数の下部アパーチャは、1つの正方形アパーチャおよび複数の直角三角形アパーチャを含む、請求項10に記載のビーム整形モジュール。
【請求項12】
電子ビームカラム用の多機能モジュールであって、
(a)多極子を含み、通過する電子ビームの偏向または収差補正を行うことが可能な上部および下部電極と、
(b)電子ビームを基材上で集束させるために、上部および下部電極に印加される電圧とは独立して電圧を印加することができる中心リング電極と、
を備えた多機能モジュール。
【請求項13】
前記上部および下部電極が、電子ビームの偏向および収差補正の両方を行うことが可能な請求項12に記載のモジュール。
【請求項14】
前記上部、下部、および中央リング電極が、静電偏向および収差補正機能を持つ静電集束レンズを画定する、請求項12に記載のモジュール。
【請求項15】
前記上部電極は、電子ビームを偏向させるのに充分な電圧が印加される四極子を含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項16】
前記下部電極は、電子ビームの非点収差補正を生じさせるに充分な電圧が印加されるスティグメータを含む、請求項12に記載のモジュール。
【請求項17】
前記スティグメータが八極子である、請求項16に記載のモジュール。
【請求項18】
約6から約12mmの焦点距離を有する対物レンズを含む、請求項12に記載のモジュール。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2009−510798(P2009−510798A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534584(P2008−534584)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/038332
【国際公開番号】WO2007/041444
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/038332
【国際公開番号】WO2007/041444
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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