説明

断線検出回路及び断線検出方法

【課題】外部の配線容量に影響されることなく、正確に断線診断を行えるようにする。
【解決手段】本発明に係る断線検出回路1は、S/HコンデンサC1と、フルチャージ部23と、ディスチャージ部22と、S/HコンデンサC1の電位をデジタル信号に変換するA/D変換部24と、A/D変換部24による変換結果を格納する記憶回路部25と、フルチャージ部23によりS/HコンデンサC1へのフルチャージを制御し、ディスチャージ部22によりS/HコンデンサC1のディスチャージを制御し、ディスチャージ前後のA/D変換結果を記憶回路部25に格納するA/D変換制御部28と、記憶回路部25に格納されたディスチャージ前後のA/D変換結果を比較する比較部26と、ディスチャージ前後の電位の差分を検知する差分判定部27と、差分が有ると判定された場合に、断線があると判定する制御部とを備える

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の断線を検出するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、ガスメータ等には、人命に関わる状況を自動的に回避するセーフティ機能が搭載されている。このような機能は、各種センサが接続された半導体装置(以降、マイコンと称す)によって実現される。もしこのようなマイコンの入力信号線に断線が生ずると、重要なセンサからの信号が入力されなくなり、マイコンは異常事態の発生を検知することができなくなる。そして、必要な時にセーフティ機能が実行されないといった大きな問題が発生することとなる。このような、マイコンの誤判定を防止するために、断線を確実に検出する技術が求められている。
【0003】
通常の断線検出方法においては、例えばA/D変換機能を搭載するマイコンの場合、マイコン内で0Vへ初期化後、入力信号線へ接続し、入力信号のA/D変換により生ずる電圧値が、断線と判定するべき設定値の範囲内にある場合に、断線が生じたと判定される。しかしながら、このような検出方法においては、マイコン内のサンプルホールドコンデンサの容量に比べ、マイコン外の配線容量が非常に大きい場合に、マイコン内で0Vへ初期化後、入力信号線へ接続すると、マイコン外の配線容量がマイコン内のサンプルホールドコンデンサ容量をチャージしてしまうため、A/D変換により生ずる電圧値が、断線発生時であるにも関わらず、断線と判定されない電圧値となる可能性がある。
【0004】
図6は、先行技術(特許文献1)に係る半導体装置の構成を示している。同図中VIN1,VIN2は、センサの入力を電圧源に置き換えて表示したものである。これらVIN1,VIN2が、それぞれ端子AIN1,AIN2に接続されている。AD変換器101は、入力Ch選択スイッチ部102、比較器103、AD変換制御部104、比較電圧選択部105、変換レジスタ部106、S/H(Sample Hold)コンデンサ初期化SW(Switch)107、パリティ演算部108、Chレジスタ00〜11を備えるレジスタ格納部109を備え、クロック信号φを基準に動作するアドレスバス、データバス、RD(Read:読み出し要求)、WR(Write:書き換え要求)の信号線によって制御部110に接続されている。尚、制御部110は、通常のコンピュータとして構成されるものであり、図示しない周知のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Road Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路、及びこれらの構成を接続するバスライン等により構成される。CPUは、ROM及びRAMに記憶されたプログラム及びデータにより制御を行う。AD変換器101からのデータの読出し及びAD変換器101の異常判定は、制御部110に含まれるプログラムによって行われる。
【0005】
次に、上記構成の半導体装置における動作を説明する。AD変換器101は、制御部110から供給されるCLK信号を基準として動作する。図6の例では、S/HコンデンサC1の電圧は、下側基準電圧VREF−(0V)となる。S/HコンデンサC1の初期化が終わると、S/Hコンデンサ初期化SW107及びSW3が開いて、AIN2(Ch10)が選択される。AIN2(Ch10)が選択されると、周知のAD変換器と同様に、SW10、SW1、SW3が閉じ、S/HコンデンサC1にVIN2の値に相当する電荷が蓄えられる。電荷が蓄えられると、SW1及びSW3が開き、SW2が閉じて、AD変換が行われる。比較電圧選択部105によって上側基準電圧VREF+と下側基準電圧VREF−を基に生成される比較電圧と、S/HコンデンサC1に蓄えられた電荷の電圧と比較して、その結果を順次変換レジスタ部106に保持する。そして、VIN2と比較電圧とが一致した時点で、変換レジスタ部106に保持されている値を、AD変換値としてレジスタ格納部109(周知技術における変換結果記憶部)のうちのChレジスタ10に格納する。この後、SW10及びSW2を開く。尚、これらの処理は、AD変換制御部104によって制御される。
【0006】
その後、再びS/Hコンデンサ初期化SW107及びSW3が閉じ、S/HコンデンサC1の初期化が行われる。S/HコンデンサC1の初期化が終わると、S/Hコンデンサ初期化SW25及びSW3が開き、次のChが選択されて、次のChのAD変換が実施される。
【0007】
次に、上記半導体装置における異常の検知方法を説明する。AD変換を実施すると、S/HコンデンサC1に蓄積されている電荷は、S/Hコンデンサが初期化された時の電荷、即ちVREF−(0V)をAD変換した結果となる。通常、重要なセンサ入力をAD変換する場合、センサからの入力電圧(VIN1、VIN2)の有効値は、基準電圧の10〜90%の値となり、それ以外の値は断線(短絡等を含む)時の異常値としている。基準電圧を5V(上側基準電圧VREF+を5V、下側基準電圧を0V)とすれば、センサからの入力電圧の有効値は0.5〜4.5Vであり、それ以外(即ち、0.5Vより小さい値、又は4.5Vより大きい値)は、センサが異常であると判定される。選択された各Chからの入力が正常な値(例えば3V)の場合は、S/HコンデンサC1に3Vに相当する電荷が蓄えられてAD変換が行われ、3VのAD変換結果が得られる。しかしながら、S/HコンデンサC1に異常がある場合、又はセンサからの入力系統に断線異常がある場合には、S/HコンデンサC1に電荷が蓄積されないため、S/HコンデンサC1に蓄積されている電荷は、S/HコンデンサC1を初期化した状態(ゼロ)のままである。この時にAD変換を行えば、0Vという変換結果が得られ、制御部110はAD変換器101に異常があると判定することができる。
【0008】
更に、AD変換器101の入力の1つ(例えば入力端子VIN1)を、AD変換器101に供給されるAD電源電圧(例えば5V)、又は基準電圧(VREF+、VREF−)に接続される安定化電源とは異なる安定化電源により生成された任意の電圧(例えば2.5V)としてもよい。この場合、制御部110は、当該電圧の実際の変換結果と、予め制御部110の記憶部に記憶された変換結果の予測値とを比較して、所定値以上の差がある場合に、異常と判定する。これにより、上記と同様にAD電源電圧、基準電圧を含む比較電圧選択部105、入力端子VIN1の異常を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3861874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記先行技術においては、断線の検知において誤判定が発生する危険性がある。なぜなら、入力信号部のマイコン外配線容量が、マイコン内のS/Hコンデンサ容量より大きい場合が想定されていないからである。この場合、マイコン内で0Vに初期化しても、断線している入力信号線に接続を行うと、マイコン外の配線容量がマイコン内のS/Hコンデンサ容量をチャージし、異常と判定できない電圧値に戻ってしまう。またマイコンは、マイコン外へのリーク電流等により、入力電圧が0V付近まで下がらず、電圧値が飽和状態になる場合がある。この場合にも、電圧値に変化がなくなり、誤判定が生ずる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決を図る本発明は、入力端子から入力される電荷を蓄えるサンプルホールドコンデンサと、前記サンプルホールドコンデンサをフルチャージさせるフルチャージ部と、前記サンプルホールドコンデンサをディスチャージさせるディスチャージ部と、前記サンプルホールドコンデンサの電位を示すアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、前記A/D変換部による変換結果を格納する記憶回路部と、前記フルチャージ部により前記入力端子からの入力による前記サンプルホールドコンデンサへのフルチャージを制御し、前記ディスチャージ部により前記サンプルホールドコンデンサのディスチャージを制御し、前記サンプルホールドコンデンサの電位のディスチャージ前後のA/D変換結果を前記記憶回路部に格納するA/D変換制御部と、前記記憶回路部に格納された前記ディスチャージ前後のA/D変換結果を比較する比較部と、前記比較部による比較結果に基づいて、前記ディスチャージ前後の電位の差分を検知する差分判定部と、前記差分判定部により前記差分が有ると判定された場合に、前記入力端子に異常があると判定する制御部とを備える断線検出回路である。
【0012】
上記本発明によれば、先ず、断線診断の対象となる入力端子からの入力信号によるサンプルホールドコンデンサへのフルチャージが行われ、この時のサンプルホールドコンデンサの電位のA/D変換結果が、記憶回路部に格納される。その後、サンプルホールドコンデンサはディスチャージされ、ディスチャージ後のA/D変換結果が記憶回路部に格納される。そして、記憶回路部に格納されたディスチャージ前後のA/D変換結果を比較し、差分が無い場合には、断線していないと判定し、差分が有る場合には、断線していると判定する。断線していない場合には、入力端子に接続されるセンサ等の信号発生源から電荷が供給されるため、サンプルホールドコンデンサの電位が一定に保たれる。そのため、ディスチャージ前後のA/D変換結果に差分は生じない。一方、断線している場合には、信号発生源からの電荷の供給が無い又は不安定なため、ディスチャージ前後のA/D変換結果において、ディスチャージした分の差分が発生する。
【0013】
また、本発明は、サンプルホールドコンデンサをフルチャージする第1のステップと、前記第1のステップ後に入力端子からの入力へ切り替えを行い、前記サンプルホールドコンデンサの電位をA/D変換する第2のステップと、前記第2のステップにおいて得られたA/D変換結果を記憶する第3のステップと、前記サンプルホールドコンデンサをディスチャージさせる第4のステップと、前記ディスチャージされたサンプルホールドコンデンサの電位をA/D変換する第5のステップと、前記第5のステップにおいて得られたA/D変換結果を記憶する第6のステップと、前記第3のステップにおいて得られたA/D変換結果と、前記第6のステップにおいて得られたA/D変換結果とを比較し、前記ディスチャージ前後の電位に差分が有るか否かを判定する第7のステップと、前記第1〜第7までのステップを、所定回数繰り返す第8のステップと、前記差分が有ると判定された場合に、前記入力端子に異常があると判定する第9のステップとを備える断線検出方法である。
【0014】
上記本発明は、上記回路の発明と同様の技術的思想について、方法の面から記述したものであり、その作用効果は同様である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部の配線容量に影響されることなく、正確に断線診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係る断線検知回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る記憶回路部の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る断線検知回路における動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態2に係る記憶回路部の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】実施の形態2に係る断線検知回路における動作を示すフローチャートである。
【図6】先行技術に係る半導体装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、異なる実施の形態において、同一又は同様の作用効果を奏する箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0018】
実施の形態1
図1は、本実施の形態に係る断線検知回路1の構成を示している。信号発生源から出力される信号は、外部配線容量11に接続される。外部配線容量11の出力は、A/D変換マクロ12の入力端子VIN1〜VINnに入力される。外部配線容量11は、入力端子VIN1〜VINnのいずれか、及びコンデンサC2経由でグランドに接続される。
【0019】
制御部13は、CPU14、不揮発性メモリ15、アドレス/データバスADbusを備える。アドレス/データバスADbusは、CPU14、不揮発性メモリ15、A/D変換マクロ12と接続する。
【0020】
A/D変換マクロ12は、入力端子VIN1〜VINn、入力信号選択部21、ディスチャージ部22、フルチャージ部23、サンプルホールド(S/H)コンデンサC1、A/D変換器24、記憶回路部25、比較器26、差分判定部27、A/D変換制御部28を備える。
【0021】
入力信号選択部21は、外部配線容量11から入力端子VIN1〜VINn経由で入力された信号を、入力信号選択スイッチSW3〜SWn+2経由で出力信号T1としてディスチャージ部22に出力する。
【0022】
入力信号選択スイッチSW3〜SWn+2は、A/D変換時に対象入力端子を選択する必要があることから、入力端子と同じ個数存在する。これらのスイッチSW3〜SWn+2を制御するために、A/D変換制御部28から制御信号nが出力される。
【0023】
ディスチャージ部22は、入力信号選択部21から出力された信号T1を、ディスチャージ用制御スイッチSW2経由でグランドへ接続する。ディスチャージ用制御スイッチSW2の開閉制御は、A/D変換制御部28から出力される制御信号mにより行われる。
【0024】
フルチャージ部23は、入力信号選択部21から出力された信号線T1を、フルチャージ用制御スイッチSW1経由で電源Vddへ接続する。フルチャージ用制御スイッチSW1の開閉制御は、A/D変換制御部28から出力される制御信号qにより行われる。
【0025】
S/HコンデンサC1は、入力信号選択部21から出力された信号線T1を、グランドへ接続する。
【0026】
A/D変換器24は、入力信号選択部21から出力された信号T1と、A/D変換制御部28から出力された制御信号uとを入力する。A/D変換器24によるA/D変換結果xは、A/D変換制御部28へ出力される。
【0027】
本実施の形態に係る記憶回路部25は、図2に示すように、断線ステータスを保持する断線ステータスレジスタ31、各入力端子VIN1〜VINnのA/D変換結果を保持するVIN1〜VINn変換結果レジスタ32、A/D変換結果を一時的に保持するテンポラリレジスタ33を備える。この記憶回路部25は、A/D変換制御部28からの制御信号wを入力し、保持しているデータyをA/D変換制御部28と比較器26とにデータ信号線yを経由し出力する。
【0028】
比較器26は、テンポラリレジスタ33が保持する信号と、VIN1〜VINn変換結果レジスタ34が保持する信号とを、A/D変換制御部28を経由して入力し、これら両信号の比較結果zを差分判定部27へ出力する。
【0029】
差分判定部27は、A/D変換制御部28からの制御信号hと、比較部26からの比較結果zとを入力し、A/D変換制御部28への判定終了信号gと、CPU14への断線有無通知信号jとを出力する。
【0030】
図3は、上記構成の断線検知回路1の動作を示している。マイコンは、パワーオン後に入力端子の断線判定シーケンスを開始する。A/D変換制御部28は、入力信号選択部21の入力信号選択スイッチSW3を閉じ、入力端子VIN1から断線判定を開始する(ステップS101)。
【0031】
A/D変換制御部28は、フルチャージ部23のフルチャージ用制御スイッチSW1以外のスイッチを開き、スイッチSW1を閉じることにより、S/HコンデンサC1をフルチャージする(ステップS102)。
【0032】
A/D変換制御部28は、S/HコンデンサC1をフルチャージした後にフルチャージ用制御スイッチSW1を開き、入力信号選択部21の入力信号選択スイッチSW3を閉じ、入力端子VIN1を選択し、入力端子VIN1のA/D変換を行う(ステップS103)。
【0033】
A/D変換制御部28は、A/D変換器24による変換結果である電圧値(断線診断の対象となる入力信号の基準電圧値)を記憶回路部25内のテンポラリレジスタ33へ格納する(ステップS104)。
【0034】
A/D変換制御部28は、入力信号選択部21の入力信号選択スイッチSW3を開き、ディスチャージ用制御スイッチSW2を閉じてディスチャージを行う。次いで、ディスチャージ用制御スイッチSW2を開き、入力信号選択スイッチSW3を閉じ、入力端子VIN1から流入する残存電荷をS/HコンデンサC1へチャージする。この動作を所定回数繰り返す(ステップS105)。
【0035】
A/D変換制御部28は、ディスチャージ用制御スイッチSW2を開き、入力信号選択スイッチSW3を閉じ入力端子を選択し、A/D変換器24により入力端子VIN1のAD変換を行う(ステップS106)。
【0036】
A/D変換制御部28は、A/D変換器24による変換結果である電圧値を記憶回路部25内のVIN1変換結果レジスタ32へ格納する(ステップS107)。
【0037】
A/D変換制御部28は、ステップS104でテンポラリレジスタ35に格納した値と、ステップS107でVIN1変換結果レジスタ32に格納された値とを比較器26へ転送して差分算出を行い、この差分算出結果を差分判定部27へ出力する(ステップS108)。
【0038】
A/D変換制御部28は、差分判定部27における差分算出結果の処理結果により断線判定をする(ステップS109)。このステップS109において、差分が有ると判定された場合(NG)には、記憶回路部25内の断線ステータスレジスタ31に、各入力端子が割り当てられているビットに1をセットする(ステップS110)。そして、ステップS109において、差分が無いと判定された場合(OK)、又はステップS110による処理が完了した後には、全入力信号の診断が終了している否かの判定を行い、診断が終了していない場合(NO)には、ステップS101に移行する(ステップS111)。
【0039】
A/D変換制御部28は、ステップS111において、全入力信号の診断が終了したと判定された場合(YES)には、断線ステータスレジスタ31の全ビットのOR(論理和)をとる。そして、このステップS112において、論理和が1であり、断線有りと判定された場合(YES)には、差分判定部27により上位システムに断線の発生を通知した後、この断線診断処理を終了する(ステップS113)。一方、ステップS112において、論理和が0であり、断線無しと判定された場合(NO)には、この断線診断処理を終了する。
【0040】
上記のように、本実施の形態に係る断線検知回路1においては、入力信号選択部21により断線診断の対象となる入力端子VIN1〜VINnを選択し、フルチャージ部23によりS/HコンデンサC1をフルチャージする。この時のS/HコンデンサC1の電位のA/D変換結果を、一旦記憶回路部25のテンポラリレジスタ33に格納し、これを基準電圧値とする。その後、S/HコンデンサC1を、ディスチャージ部22によりディスチャージし、ディスチャージ後のA/D変換結果を対応するVIN1〜n変換結果レジスタ32に格納する。そして、テンポラリレジスタ33及びVIN1〜n変換結果レジスタ32に格納されているディスチャージ前後のA/D変換結果を比較し、差分が無い場合には、断線していないと判定し、差分が有る場合には、断線していると判定する。断線していない場合には、信号発生源からの電荷の供給により電位が一定に保たれるため、ディスチャージ前後のA/D変換結果に差分は生じない。一方、断線している場合には、信号発生源からの電荷の供給が無い又は不安定なため、ディスチャージ前後のA/D変換値においてディスチャージした分の差分が発生する。これにより、外部配線容量11に影響されることなく、正確に断線診断を行うことが可能となる。
【0041】
実施の形態2
図4は、本実施の形態に係る断線検知回路の記憶回路部55の構成を示している。この記憶回路部55は、図1に示す上記実施の形態1に係る断線検知回路1において、記憶回路部25に替えて用いられるものである。
【0042】
本実施の形態に係る記憶回路部55は、実施の形態1に係る記憶回路部25の構成に加え、ディスチャージ回数を設定するディスチャージ回数レジスタ56と、差分の許容範囲を設定する差分許容範囲設定レジスタ57とを更に備えている。
【0043】
図5は、本実施の形態に係る断線検知回路の動作を示している。本実施の形態に係るA/D変換制御部28(図1参照)は、先ず、予め不揮発性メモリ15に保持されているディスチャージ回数値及び差分許容範囲設定値を、記憶回路部55のディスチャージ回数レジスタ56及び差分許容範囲設定レジスタ57へ転送する設定値転送処理を行う(ステップS200)。
【0044】
ステップS101〜S104については、上記実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
A/D変換制御部28は、ディスチャージ回数レジスタ56に格納された回数分ディスチャージを繰り返す(ステップS205)。
【0046】
ステップS106〜S108は、上記実施の形態例1と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
A/D変換制御部28は、比較器26により算出された差分値が、差分許容範囲設定レジスタ57に格納された許容範囲内にあるかを判定する(ステップS209)。
【0048】
ステップS110以降は、上記実施の形態1と同様であるため、その説明を省略する。
【0049】
上記のように、本実施の形態においては、ディスチャージステップ前後でのA/D変換値に差分があった場合に、この差分値が設定された許容範囲内であれば断線無しと判断し、許容範囲を超える値であれば断線有りと判定する。これにより、断線の有無を判定する差分値に余裕を持たせることが可能となる。
【0050】
尚、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 断線検知回路
11 外部配線容量
12 A/D変換マクロ
13 制御部
21 入力信号選択部
22 ディスチャージ部
23 フルチャージ部
24 A/D変換器
25,55 記憶回路部
26 比較器
27 差分判定部
28 A/D変換制御部
31 断線ステータスレジスタ
32 VIN1〜n変換結果レジスタ
33 テンポラリレジスタ
56 ディスチャージ回数レジスタ
57 差分許容範囲設定レジスタ
C1 サンプルホールド(S/H)コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子から入力される電荷を蓄えるサンプルホールドコンデンサと、
前記サンプルホールドコンデンサをフルチャージさせるフルチャージ部と、
前記サンプルホールドコンデンサをディスチャージさせるディスチャージ部と、
前記サンプルホールドコンデンサの電位を示すアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記A/D変換部による変換結果を格納する記憶回路部と、
前記フルチャージ部により前記入力端子からの入力による前記サンプルホールドコンデンサのフルチャージを制御し、前記ディスチャージ部により前記サンプルホールドコンデンサのディスチャージを制御し、前記サンプルホールドコンデンサの電位のディスチャージ前後のA/D変換結果をそれぞれ前記記憶回路部に格納するA/D変換制御部と、
前記記憶回路部に格納された前記ディスチャージ前後のA/D変換結果を比較する比較部と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記ディスチャージ前後の電位の差分を検知する差分判定部と、
前記差分判定部により前記差分が有ると判定された場合に、前記入力端子に異常があると判定する制御部と、
を備える断線検出回路。
【請求項2】
前記記憶回路部は、前記サンプルホールドコンデンサの前記フルチャージ後のA/D変換結果を一時的に格納する第1のレジスタと、各入力端子に対応して設けられ前記ディスチャージ後のA/D変換結果を格納する第2のレジスタとを備える、
請求項1記載の断線検出回路。
【請求項3】
前記比較部は、前記第1のレジスタに格納される情報と、前記第2のレジスタに格納される情報とに基づいて、前記ディスチャージ前後のA/D変換結果を比較する、
請求項2記載の断線検出回路。
【請求項4】
前記差分が、設定された許容範囲内にある場合には、異常がないと判定する手段、
を更に備える請求項1〜3のいずれか1つに記載の断線検出回路。
【請求項5】
サンプルホールドコンデンサをフルチャージする第1のステップと、
前記第1のステップ後に入力端子からの入力へ切り替えを行い、前記サンプルホールドコンデンサの電位をA/D変換する第2のステップと、
前記第2のステップにおいて得られたA/D変換結果を記憶する第3のステップと、
前記サンプルホールドコンデンサをディスチャージさせる第4のステップと、
前記ディスチャージされたサンプルホールドコンデンサの電位をA/D変換する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて得られたA/D変換結果を記憶する第6のステップと、
前記第3のステップにおいて得られたA/D変換結果と、前記第6のステップにおいて得られたA/D変換結果とを比較し、前記ディスチャージ前後の電位に差分が有るか否かを判定する第7のステップと、
前記第1〜第7までのステップを、所定回数繰り返す第8のステップと、
前記差分が有ると判定された場合に、前記入力端子に異常があると判定する第9のステップと、
を備える断線検出方法。
【請求項6】
前記差分が、設定された許容範囲内にある場合には、異常がないと判定する第10のステップ、
を更に備える請求項5記載の断線検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237079(P2010−237079A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86354(P2009−86354)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】