説明

方位角推定装置及びプログラム

【課題】マルチパスを適切に判定して、精度良く移動体の方位角を推定する。
【解決手段】複数のGPS衛星の各々から発信されたGPS情報を取得し、方位角推定部30で、GPS情報に基づいて自車両の方位角(推定方位角)を推定する。最適推定部62は、ジャイセンサ14の検出値に基づいて自車両の方位角(観測方位角)を算出し、推定方位角と観測方位角とを統合して最適値を推定する。精度判定部64は、最適値と推定方位角との残差の分散が閾値以下か否かに基づいて、最適値の精度を判定する。速度ベクトル算出部66は、最適値の精度が高いと判定された場合には、最適値を推定する方位角として採用し、最適値及び速度センサ16で検出された速度を用いて速度ベクトルを算出し、精度が低いと判定された場合には、過去に推定された方位角を用いてジャイロセンサ14の検出値を積算して算出した方位角を採用して、速度ベクトルを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位角推定装置及びプログラムに係り、特に、移動体の方位角を推定するための方位角推定装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星信号を利用して、高層ビル街などのマルチパスの影響が大きい環境下でも、移動体の最適な速度ベクトルを算出するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の速度ベクトル決定システムは、衛星信号追尾装置で追尾している複数衛星の中から、衛星軌道情報に基づく衛星仰角情報及び追尾情報に基づく信号レベル情報を利用して、2つの衛星が共通に含まれ且つ他の衛星が含まれ、3以上の衛星信号からなる複数の組み合わせを求める。そして、その複数の組み合わせ毎の速度ベクトル解をそれぞれ演算して速度ベクトル解候補を得、且つそれら各速度ベクトル解候補間の一致度に基づいて、最適速度ベクトルを求めている。
【0003】
また、測位衛星からの複数の擬似距離と、測位航法部と慣性航法部とカルマンフィルタと、により移動体の航法位置を求める移動体測位装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の移動体測位装置は、カルマンフィルタの出力から得られるドップラ推定値とドップラ観測値との差の絶対値を所定の条件で比較してマルチパスを判定している。
【0004】
また、誤差の影響の少ないGPSデータを選択的に用いるGPSナビゲーション装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載のGPSナビゲーション装置では、GPS速度計測部からの移動ベクトルからGPS方位を求め、GPS方位、ジャイロセンサで検出された移動体の回転角速度、及び地図メモリの道路リンク情報から移動体の進行方位し、新たなGPSデータが検出される毎に、当該データに基づいて算出されたGPS方位とその時点で求められている推定方位とを比較することで、当該データに含まれる誤差の影響の大きさを判定し、その影響が大きい場合には当該データを位置推定に用いないように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−208392号公報
【特許文献2】特許第3875714号公報
【特許文献3】特開平8−334338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、都市部などでは、高仰角の衛星からもマルチパスが発生する場合もあるが、この点が考慮されておらず、最適な速度ベクトルを推定することができない場合がある、という問題がある。また、同様に都市部などでは、マルチパスが発生している衛星が受信している衛星群が過半数を超える場合も多く、そのような場合には、組み合わせの変更により最適な速度ベクトルを推定することができない、という問題がある。さらに、衛星信号を受信できない場合には、速度ベクトルを推定することができない、という問題がある。
【0007】
このような問題に対応するために、特許文献2に記載の技術のように、衛星信号と慣性センサの検出値とを統合して移動体に関する物理量を推定することが考えられる。しかし、特許文献2に記載の技術では、カルマンフィルタにより最適推定値を求めてマルチパスの判定に用いているが、カルマンフィルタに入力される衛星信号の情報に多数のマルチパスの影響が含まれている場合には、最適推定値が真値から外れる可能性が高まるため、誤差が発生している状況の観測値と比較したとしても、マルチパス誤差が未検出になる可能性がある、という問題がある。また、推定値に誤差があり、観測値の方が正しい場合においては、正しい観測値がマルチパス誤差として誤判定される可能性が高い、という問題がある。加えて、特許文献2に記載の技術では、擬似距離を用いて速度や位置といった物理量を算出しているため、推定する物理量は擬似距離の精度の影響を大きく受ける、という問題がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の技術では、GPSデータの擬似距離変化率から車両の進行方位を推定し、時系列のデータをジャイロセンサの計測値と併せて比較することで、GPSデータの誤差が少ない地点を判定している。しかし、マルチパス誤差は場所に依存するため、マルチパスが発生している場所において、短い時間で計測された2つの方位角には、同じ傾向の誤差が発生している可能性が高く、マルチパス誤差が未検出になる可能性がある、という問題がある。また、マルチパスが発生しない場所においても、GPSデータにはガウス性の誤差が発生している。そのため、計測した車両の方位角には少なくともランダム性の誤差が生じるため、この計測値と推定値との差を用いてマルチパス誤差を判定したとしても、閾値の設定次第では誤検出や未検出が頻発してしまう可能性がある、という問題がある。誤判定を防ぐために、閾値を小さくしたとしても、前述の理由によりマルチパス誤差の未検出を防ぐことはできない。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、マルチパスを適切に判定して、精度良く移動体の方位角を推定することができる方位角推定装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の方位角推定装置は、移動体に搭載される方位角推定装置であって、複数の情報発信源の各々から発信された前記情報発信源の各々の位置に関する情報、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報を含む発信源情報を取得する取得手段と、前記移動体の方位角に関する物理量を検出する検出手段と、前記取得手段により取得された前記発信源情報に基づいて得られる前記移動体の速度ベクトルから前記移動体の方位角を算出する算出手段と、前記算出手段により算出された方位角、及び前記検出手段により検出された物理量から得られる方位角に基づいて、前記移動体の方位角の最適値を推定する最適値推定手段と、前記最適値推定手段により推定された最適値と前記算出手段により算出された方位角との差の分布に基づいて、前記方位角の最適値の精度を判定する判定手段と、前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定されたときの最適値を用いて前記移動体の方位角を推定する方位角推定手段と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明の方位角推定装置によれば、取得手段が、移動体に搭載される方位角推定装置であって、複数の情報発信源の各々から発信された情報発信源の各々の位置に関する情報、情報発信源の各々と移動体との距離に関する情報、及び情報発信源の各々に対する移動体の相対速度に関する情報を含む発信源情報を取得し、検出手段が、移動体の方位角に関する物理量を検出する。検出手段は慣性センサであり、例えば、自車両の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサや、方位角を検出する磁気方位計を用いることができる。
【0012】
そして、算出手段が、取得手段により取得された発信源情報に基づいて得られる移動体の速度ベクトルから移動体の方位角を算出し、最適値推定手段が、算出手段により算出された方位角、及び検出手段により検出された物理量から得られる方位角に基づいて、移動体の方位角の最適値を推定する。算出手段により算出された移動体の方位角は絶対量であり、検出手段により検出された物理量に基づく移動体の方位角は相対量であり、これらを統合して最適値を推定する場合に、マルチパスなどによる絶対量のばらつきが最適値の精度に影響を与える。そこで、判定手段は、推定した最適値と算出手段により算出された方位角との差の分布に基づいて、方位角の最適値の精度を判定する。そして、方位角推定手段が、判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定されたときの最適値を用いて移動体の方位角を推定する。
【0013】
このように、発信源情報に基づいて算出された絶対量である移動体の方位角と、検出手段の検出値に基づく相対量である移動体の方位角とを統合して移動体の方位角の最適値を推定し、最適値と算出された方位角との差の分布に基づいて最適値の精度を判定するため、マルチパスを適切に判定して、精度良く移動体の方位角を推定することができる。
【0014】
また、前記判定手段は、前記差のばらつきが予め定めた閾値以下か否か、または前記差の分布がガウス分布に適合するか否かを判定することによって、前記方位角の最適値の精度を判定することができる。最適値と算出された方位角との差のばらつきが小さい場合、または差の分布がガウス分布に適合する場合には、最適値の精度が高いと判定することができる。
【0015】
また、前記方位角推定手段は、前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定された場合には、前記最適値を前記移動体の方位角として推定し、前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも低いと判定された場合には、過去に推定された方位角及び前記検出手段により検出された物理量に基づいて、前記移動体の方位角を推定することができる。これにより、絶対量として算出された方位角を相対量として検出された方位角で補間して、精度良く移動体の方位角を推定することができる。
【0016】
また、前記最適値推定手段は、所定の初期値を基準に前記検出手段により検出された物理量を所定時間分積分して前記検出手段により検出された物理量から得られる方位角を算出し、該方位角と前記算出手段により算出された方位角との一定時間における差の和が最小となる前記初期値を探索することで、前記方位角の最適値を推定することができる。
【0017】
また、前記算出手段は、前記情報発信源の各々の位置に関する情報、及び前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報から得られる前記移動体の位置に基づいて、前記移動体から見た前記情報発信源の各々の方向を算出し、時系列の前記情報発信源の各々の位置に関する情報に基づいて、前記情報発信源の各々の速度を算出し、前記移動体から見た前記情報発信源の各々の方向、前記情報発信源の各々の速度、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報に基づいて、前記移動体の情報発信源の各々の方向の速度を算出し、複数の前記移動体の情報発信源の各々の方向の速度に基づいて、前記移動体の速度ベクトルを算出することができる。
【0018】
また、前記情報発信源を、前記情報発信源の各々の位置に関する情報として衛星軌道情報を、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報として擬似距離情報を、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報としてドップラー周波数情報を発信するGPS衛星とすることができる。情報発信源としては、例えば、擬似衛星やビーコンなどのように、発信源情報を発信するものであればよいが、代表的には、GPS衛星とすることができる。
【0019】
また、本発明の方位角推定プログラムは、コンピュータを、移動体に搭載される方位角推定装置の各手段として機能させるための方位角推定プログラムであって、前記コンピュータを、複数の情報発信源の各々から発信された前記情報発信源の各々の位置に関する情報、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報を含む発信源情報を取得する取得手段、前記取得手段により取得された前記発信源情報に基づいて得られる前記移動体の速度ベクトルから前記移動体の方位角を算出する算出手段、前記算出手段により算出された方位角、及び前記移動体の方位角に関する物理量を検出する検出手段により検出された物理量から得られる方位角に基づいて、前記移動体の方位角の最適値を推定する最適値推定手段、前記最適値推定手段により推定された最適値と前記算出手段により算出された方位角との差の分布に基づいて、前記方位角の最適値の精度を判定する判定手段、及び前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定されたときの最適値を用いて前記移動体の方位角を推定する方位角推定手段として機能させるためのプログラムである。
【0020】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明の方位角推定装置及びプログラムによれば、発信源情報に基づいて算出された絶対量である移動体の方位角と、検出手段の検出値に基づく相対量である移動体の方位角とを統合して移動体の方位角の最適値を推定し、最適値と算出された方位角との差の分布に基づいて最適値の精度を判定するため、マルチパスを適切に判定して、精度良く移動体の方位角を推定することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置を示すブロック図である。
【図2】三角測量の原理に従って自車両の位置が推定される様子を示すイメージ図である。
【図3】各GPS衛星の速度ベクトル及び各GPS衛星の方向に基づいて、GPS衛星方向の自車両の速度を算出する様子を示すイメージ図である。
【図4】(a)マルチパスの影響がない場合、及び(b)マルチパスの影響がある場合における最適値の推定を説明するための図である。
【図5】(a)マルチパスの影響がない場合、及び(b)マルチパスの影響がある場合における最適値と推定方位角との残差の分布を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置のコンピュータにおける速度ベクトル推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置のコンピュータにおけるGPS情報に基づく自車両方位角推定処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置のコンピュータにおける速度ベクトル算出処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載され、GPS衛星から発信されたGPS情報を取得して自車両の方位角を推定し、推定した方位角から自車両の速度ベクトルを推定する車載速度ベクトル推定装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置10は、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部12と、自車両のヨーレートを検出するジャイロセンサ14と、自車両の速度を検出する速度センサ16と、GPS受信部12によって受信されたGPS衛星からの受信信号、並びにジャイロセンサ14及び速度センサ16の検出値に基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する処理を実行するコンピュータ18と、を備えている。
【0025】
GPS受信部12は、複数のGPS衛星からの電波を受信して、受信した全てのGPS衛星からの受信信号から、GPS衛星の情報として、GPS衛星の衛星番号、GPS衛星の軌道情報(エフェメリス)、GPS衛星が電波を送信した時刻、受信信号の強度、周波数などを取得し、コンピュータ18に出力する。
【0026】
コンピュータ18は、CPU、後述する速度ベクトル推定処理ルーチンを実現するためのプログラムを記憶したROM、データを一時的に記憶するRAM、及びHDD等の記憶装置で構成されている。
【0027】
コンピュータ18を以下で説明する速度ベクトル推定処理ルーチンに従って機能ブロックで表すと、図1に示すように、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPS擬似距離データ、ドップラー周波数、及びGPS衛星の位置座標を算出して取得するGPS情報取得部20と、取得したGPS情報に基づいて、自車両の方位角を推定する方位角推定部30と、推定された方位角、ジャイロセンサ14の検出値、及び速度センサ16の検出値を対応させて記憶するデータ記憶部40と、データ記憶部40に記憶された各種データに基づいて、自車両の速度ベクトルを推定する速度ベクトル推定部60と、を含んだ構成で表すことができる。
【0028】
GPS情報取得部20は、GPS受信部12から、電波を受信した全てのGPS衛星について、GPS衛星の情報を取得すると共に、GPS衛星が電波を送信した時刻及び自車両で電波を受信した時刻に基づいて、GPS擬似距離データを算出する。また、GPS情報取得部20は、各GPS衛星から送信される信号の既知の周波数と、各GPS衛星から受信した受信信号の周波数とに基づいて、各GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数を各々算出する。なお、ドップラー周波数は、GPS衛星と自車との相対速度による、搬送波周波数のドップラーシフト量を観測したものである。また、GPS情報取得部20は、GPS衛星の軌道情報及びGPS衛星が電波を送信した時刻に基づいて、GPS衛星の位置座標を各々算出する。
【0029】
また、方位角推定部30は、さらに、取得した各GPS衛星のドップラー周波数に基づいて、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する相対速度算出部42と、取得した各GPS衛星の位置座標の時系列データに基づいて、各GPS衛星の速度ベクトルを算出する衛星速度算出部44と、取得した各GPS衛星のGPS擬似距離データに基づいて、自車両の位置を算出する自車位置算出部46と、算出された自車両の位置及び各GPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星の方向(角度の関係)を算出する衛星方向算出部48と、算出された相対速度、各GPS衛星の速度ベクトル、及び各GPS衛星の方向に基づいて、各GPS衛星方向の自車両の速度を算出する衛星方向自車速算出部50と、算出された複数の各GPS衛星方向の自車両の速度に基づいて、自車両の速度ベクトルを算出する自車両速度算出部52と、算出された自車両の速度ベクトルに基づいて自車両の方位角を算出する自車両方位角算出部54と、を備えた構成で表すことができる。
【0030】
相対速度算出部42は、ドップラー周波数とGPS衛星に対する相対速度との関係を表わす以下の(1)式に従って、各GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数から、各GPS衛星に対する自車両の相対速度を算出する。
【0031】
【数1】

【0032】
ただし、vはGPS衛星jに対する相対速度であり、D1はGPS衛星jから得られるドップラー周波数(ドップラーシフト量)である。また、Cは光速であり、Fは、GPS衛星から送信される信号の既知のL1周波数である。
【0033】
衛星速度算出部44は、取得した各GPS衛星の位置座標の時系列データから、ケプラーの方程式の微分を用いて、各GPS衛星の速度ベクトル(3次元速度VX、VY、VZ)を算出する。例えば、非特許文献(Pratap Misra and Per Enge原著 日本航海学会GPS研究会訳:“精説GPS基本概念・測位原理・信号と受信機”正陽文庫,2004.)に記載された方法を用いて、各GPS衛星の速度ベクトルを算出することができる。
【0034】
自車位置算出部46は、以下のように、GPS情報取得部20によって取得された各GPS衛星のGPS擬似距離データを用いて、自車両の位置を算出する。
【0035】
GPSを用いた測位では、図2に示すように、既知であるGPS衛星の位置座標と、各GPS衛星から受信した受信信号の伝播距離である擬似距離とに基づいて、三角測量の原理に従って、自車両の位置が推定される。
【0036】
ここで、GPS衛星までの真の距離rは、以下の(2)式で表され、GPSで観測される擬似距離ρは、以下の(3)式で表される。
【0037】
【数2】

【0038】
ただし、(X,Y,Z)がGPS衛星jの位置座標であり、(x,y,z)が自車両の位置座標である。sは、GPS受信部12の時計誤差による距離誤差である。
【0039】
上記(2)式、(3)式より、4つ以上のGPS衛星のGPS擬似距離データから得られる以下の(4)式の連立方程式を解くことによって、自車両の位置(x、y、z)が算出される。
【0040】
【数3】

【0041】
なお、本実施の形態では、自車両の位置を、GPS衛星の方向(GPS衛星と自車両との角度)を求めるために算出しているが、遠方に存在するGPS衛星の方向であるため、位置決めは大まかでよく、擬似距離を用いた位置決定を行わなくてもよい。時刻の影響が少なく、システム等で許容される推定精度に依存するが、自車の位置決めの誤差も数百mの範囲であれば、速度推定誤差も1m/sec以下程度となり大きな問題はないため、例えば、地図などから位置を決定してもよく、また、過去の位置の測定履歴やビーコンなどの情報などから、自車両の位置を決定してもよい。
【0042】
衛星方向算出部48は、算出された自車両の位置及び各GPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星jの位置と自車両の位置との角度関係(水平方向に対する仰角θ、北方向に対する方位角φ)を、各GPS衛星の方向として算出する。
【0043】
衛星方向自車速算出部50は、図3に示すように、算出された各GPS衛星に対する自車両の相対速度v、各GPS衛星の速度ベクトル(VX、VY、VZ)、及び各GPS衛星の方向R(θ、φ)に基づいて、以下の(5)式に従って、各GPS衛星jの方向の自車両の速度Vvを算出する。
【0044】
【数4】

【0045】
は、GPS衛星jに対する自車両の相対速度(衛星方向におけるGPS衛星との相対速度)である。また、Vsは、自車方向のGPS衛星jの速度であり、Vs=R[VX,VY,VZにより求まる。また、Vvは、GPS衛星jの方向の自車速であり、vCbは、クロックバイアス変動である。
【0046】
上述したように、GPS衛星方向の自車速は、GPS衛星位置の三次元位置ではなく、GPS衛星との方位関係によってのみ算出される。GPS衛星は遥か遠方にあり、1日で地球をほぼ2周するため1分間の角度変化は0.5度である。通常、GPS衛星とGPS受信機との時計誤差は通常1msec以下であるため、GPS衛星との方位関係に大きな影響はない。また、同じくGPS衛星は遥か遠方にあるため、自車の位置決定に数100m程度の誤差が生じていたとしても、GPS衛星との方位関係に大きな影響はない。このため、擬似距離に誤差が乗りやすい状況であったとしても、GPS衛星方向の自車速は、擬似距離に比較して正確に算出され得る。
【0047】
自車両速度算出部52は、以下に説明するように、自車両の速度ベクトルの最適推定を行う。
【0048】
まず、自車の速度ベクトルを(Vx,Vy,Vz)としたとき、GPS衛星方向の自車両の速度Vvとの関係は以下の(6)式で表される。
【0049】
【数5】

【0050】
各GPS衛星jについて得られる上記(6)式より、Vx,Vy,Vz及びCbを推定値とした、以下の(7)式で表される連立方程式が得られる。
【0051】
【数6】

【0052】
電波を受信したGPS衛星が4個以上である場合に、上記(7)式の連立方程式を解くことによって、自車両の速度ベクトル(Vx,Vy,Vz)の最適値を算出する。
【0053】
自車両方位角算出部54は、自車両速度算出部52により算出された自車両の速度ベクトルから三角関数を用いて自車両の方位角を算出し、方位角推定部30での方位角の推定結果としてデータ記憶部40に記憶する。ここで推定された方位角は、GPS情報に基づいて推定された方位角であるので、以下、「推定方位角」という。これに対し、ジャイロセンサ14の検出値から求まる自車両の方位角を「観測方位角」という。ただし、ジャイロセンサ14では、方位角の変化分しか計測できないため、ある初期値を基準に時間経過分を積分することで、ジャイロセンサ14の検出値から観測方位角を算出する。例えば、下記(8)式では、ある時間tの初期値ψinit(t)を基準にk秒前の観測方位角ψ(t−k)を算出している。つまり、データ記憶部40にジャイロセンサ14の検出値ψgyroの微分値を記憶しておくことで、観測方位角が算出可能になる。
【0054】
【数7】

【0055】
なお、データ記憶部40には、所定時間分の推定方位角と共に、対応する所定時間内に検出されたジャイロセンサ14の検出値、及び速度センサ16の検出値が記憶される。
【0056】
また、速度ベクトル推定部60は、さらに、推定方位角と観測方位角とを統合して方位角の最適値を推定する最適推定部62と、推定された最適値と推定方位角との残差の分散に基づいて、推定方位角の精度を判定する精度判定部64と、精度判定部64での判定結果に基づいて自車両の方位角を推定し、推定した方位角を用いて速度ベクトルを算出する速度ベクトル算出部66と、を含んだ構成で表すことができる。
【0057】
最適推定部62は、データ記憶部40から所定期間分のジャイロセンサ14の検出値である自車両のヨーレートを読み出し、観測毎のヨーレートを各々積分して時系列に積算して自車両の観測方位角を算出する。また、対応する所定期間内に推定された推定方位角をデータ記憶部40から読み出す。
【0058】
ここで、GPS情報に基づいて推定された推定方位角は、マルチパスや大気に起因するGPSの誤差要因により、推定結果にばらつきがあるという特徴を持つ。一方、ジャイロセンサ14の検出値に基づく観測方位角は、連続した角度変化は精度よく推定できるが、絶対値の信頼度が不明であるという特徴を持つ。そこで、最適推定部62は、最小二乗法等に代表される最適計算により、推定方位角と観測方位角とを統合した方位角の最適値を推定する。例えば、最小二乗法では、下記(9)式により推定方位角ψgpsと、観測方位角ψとの一定時間における差の和が最小になるように、観測方位角ψの算出の基準となる最適な初期値ψinit(t)を探索することで、方位角の最適値を推定する。
【0059】
【数8】

【0060】
精度判定部64は、最適推定部62で推定された方位角の最適値と推定方位角の各々との残差を算出し、所定期間分の残差のばらつき(分散または標準偏差)が所定の閾値以下か否かにより、方位角の最適値の精度を判定する。
【0061】
ここで、残差のばらつきを用いて方位角の最適値の精度を判定する原理について説明する。図4(a)にマルチパスの影響がない場合、同図(b)にマルチパスの影響がある場合の方位角の最適値を示す。マルチパスの影響がある場合には、残差が大きくなる外れ値が生じ、最適値が真値より外れる可能性が高まる。次に、図5(a)及び(b)に、図4(a)及び(b)の各々の場合における残差のヒストグラムを示す。マルチパスの影響がある場合は、マルチパスの影響がない場合と比較して、分散値が大きくなる傾向にある。従って、分散値を閾値と比較することで、方位角の最適値の精度を判定することができる。
【0062】
速度ベクトル算出部66は、最適推定部62により推定された所定期間分の方位角の最適値が精度判定部64により精度が高いと判定された場合には、その方位角の最適値及び速度センサ16で検出された速度を用いて、速度ベクトルを算出する。一方、精度が低いと判定された最適値については、速度ベクトルの算出に用いない。その間の速度ベクトルは、過去に推定された方位角を用いてジャイロセンサ14の検出値を積算して方位角を算出して、速度センサ16で検出された速度を用いて算出する。速度ベクトル算出部66は、算出した速度ベクトルを速度ベクトルの推定結果として出力する。
【0063】
次に、本実施の形態に係る車載速度ベクトル推定装置10の作用について説明する。
【0064】
GPS受信部12によって、複数のGPS衛星から電波を受信しているときに、コンピュータ18において、図6に示す速度ベクトル推定処理ルーチンが実行される。
【0065】
ステップ100で、GPS受信部12から複数のGPS衛星の情報を取得すると共に、複数のGPS衛星のGPS擬似距離データ、ドップラー周波数、GPS衛星の位置座標を算出して取得する。
【0066】
次に、ステップ102で、ジャイロセンサ14の検出値である自車両のヨーレート、及び速度センサ16の検出値である自車両の速度を取得して、データ記憶部40に記憶する。
【0067】
次に、ステップ104で、後述するGPS情報に基づく自車両方位角処理を実行して、推定方位角を推定し、次に、ステップ106で、後述する速度ベクトル算出処理を実行して、速度ベクトルを推定する。
【0068】
次に、図7を参照して、GPS情報に基づく自車両方位角推定処理ルーチンについて説明する。
【0069】
ステップ1040で、上記(1)式に従って、各GPS衛星からの受信信号のドップラー周波数から、各GPS衛星に対する自車両の相対速度vを算出する。
【0070】
次に、ステップ1042で、取得した各GPS衛星の位置座標の時系列データから、ケプラーの方程式の微分を用いて、各GPS衛星の速度ベクトル(VX、VY、VZ)を算出する。
【0071】
次に、ステップ1044で、各GPS衛星のGPS擬似距離データを用いて、上記(2)〜(4)式に従って、自車両の位置を算出する。なお、ここでは、自車両の位置を、GPS衛星の方向(GPS衛星と自車両との角度)を求めるために算出しており、自車両の位置として大まかな位置が決定できればよく、例えば、地図などから位置を決定してもよく、また、過去の位置の測定履歴やビーコンなどの情報などから、自車両の位置を決定してもよい。
【0072】
次に、ステップ1046で、上記ステップ114で算出された自車両の位置及び取得された各GPS衛星の位置座標に基づいて、各GPS衛星jの位置と自車両の位置との角度関係R(水平方向に対する仰角θ、北方向に対する方位角φ)を、各GPS衛星の方向として算出する。
【0073】
次に、ステップ1048で、上記ステップ1040で算出された各GPS衛星に対する自車両の相対速度v、上記ステップ1042で算出された各GPS衛星の速度ベクトルV(VX、VY、VZ)、及び上記ステップ1046で算出された各GPS衛星の方向R(θ、φ)に基づいて、上記(5)式に従って、各GPS衛星jの方向の自車両の速度Vvを算出する。(5)式における自車方向のGPS衛星jの速度Vsは、Vs=R[VX,VY,VZにより算出する。
【0074】
次に、ステップ1050で、上記(6)式、及び(7)式に従って、自車両の速度ベクトル(Vx,Vy,Vz)の最適値を算出する。
【0075】
次に、ステップ1052で、上記ステップ1050で算出された自車両の速度ベクトルから三角関数を用いて自車両の方位角を算出し、算出した方位角を推定方位角としてデータ記憶部40に記憶して、リターンする。
【0076】
次に、図7を参照して、速度ベクトル推定処理ルーチンについて説明する。
【0077】
ステップ1060で、データ記憶部40から所定期間分のジャイロセンサ14の検出値である自車両のヨーレートを読み出し、観測毎のヨーレートを各々積分して時系列に積算して自車両の観測方位角を算出する。
【0078】
次に、ステップ1062で、データ記憶部40から所定期間内に推定された推定方位角をデータ記憶部40から読み出し、上記ステップ1060で算出した観測方位角の時系列データを平行移動して探索しながら、最小二乗法等に代表される最適計算により、方位角の最適値を推定する。
【0079】
次に、ステップ1064で、上記ステップ1062で推定された方位角の最適値と推定方位角の各々との残差を算出し、所定期間分の残差の分散を算出する。
【0080】
次に、ステップ1066で、上記ステップ1064で算出した残差の分散が予め定めた閾値以下か否可を判定することにより、方位角の最適値の精度を判定する。残差の分散が閾値以下の場合には、方位角の最適値の精度が高いと判断してステップ1068へ移行し、上記ステップ1062で推定された方位角の最適値を、方位角の推定値として採用する。一方、残差の分散が閾値を超える場合には、方位角の最適値の精度が低いと判断して、ステップ1070へ移行し、過去に推定された方位角を用いてジャイロセンサ14の検出値を積算して算出した方位角を、方位角の推定値として採用する。
【0081】
次に、ステップ1072で、データ記憶部40から速度センサ16で検出された速度を読み出し、上記ステップ1068または1070で採用された方位角の推定値及び読み出した速度を用いて速度ベクトルを算出し、算出した速度ベクトルを速度ベクトルの推定結果として出力する。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態の車載速度ベクトル推定装置によれば、GPS情報に基づいて推定した推定方位角と、ジャイロセンサの検出値に基づく観測方位角とを統合して求めた方位角の最適値と推定方位角との残差の分散が閾値以下か否かによって、最適値の精度、すなわちマルチパスの影響が大きいか否かを判定するため、マルチパスを適切に判定して、精度良く自車両の方位角を推定することができる。また、精度の高い所定期間の推定方位角を使用して観測方位角で補間するため、GPS衛星からの衛星信号を受信できない場合や、衛星信号の数が不足する場合でも、精度良く自車両の方位角を推定することができる。
【0083】
なお、上記実施の形態では、GPS情報に基づいて自車両の方位角を推定して精度の判定に用いる場合について説明したが、精度の判定に速度を用いてもよい。具体的には、自車両速度算出部52で算出された速度ベクトルから自車両の速度の絶対値を算出し、最適推定部62において、速度センサ16で検出された速度と算出された速度の絶対値とを統合して、速度の最適値を推定し、この最適値と算出された速度の絶対値との残差の分散に基づいて、精度を判定することができる。そして、精度が高いと判定された所定期間の速度ベクトルから推定方位角を算出して、観測方位角と統合した方位角を推定するようにするとよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、最適値と推定方位角との残差の分散に基づいて、精度を判定する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、残差の分布がガウス分布に適合しているか否かにより精度を判定してもよい。この場合、速度ベクトル推定処理(図8)のステップ1064で、残差の分布を算出し、ステップ1066で、例えばコルモゴロフ−スミルノフ検定等を用いて、残差の分布とガウス分布との適合性を検定すればよい。適合度が高ければ、最適値の精度も高いと判定することができる。
【0085】
また、上記実施の形態では、観測方位角を得るために、ジャイロセンサを用いる場合について説明したが、慣性航法系のセンサであればよく、磁気方位計でもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、GPS衛星のGPS情報を用いる場合について説明したが、情報発信源の位置に関する情報、情報発信源と移動体との距離に関する情報、及び情報発信源と移動体との相対速度に関する情報を含む発信源情報を発信する情報発信源からの情報が取得できればよい。例えば、擬似衛星から発信される情報を受信するようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、推定した方位角から速度ベクトルを推定して出力する場合について説明したが、速度ベクトルを算出することなく推定した方位角を推定結果として出力してもよいし、速度ベクトルからさらに自車両の走行軌跡を推定して出力するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施の形態では、車両に搭載される速度ベクトル装置について説明したが、本発明の方位角推定装置が搭載される移動体は車両に限定されない。例えば、方位角推定装置をロボットに搭載してもよいし、歩行者が携帯できるように方位角推定装置をポータブル端末として構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10 車載速度ベクトル推定装置
12 GPS受信部
14 ジャイロセンサ
16 速度センサ
18 コンピュータ
20 GPS情報取得部
30 方位角推定部
40 データ記憶部
42 相対速度算出部
44 衛星速度算出部
46 自車位置算出部
48 衛星方向算出部
50 衛星方向自車速算出部
52 自車両速度算出部
54 自車両方位角算出部
60 速度ベクトル推定部
62 最適推定部
64 精度判定部
66 速度ベクトル算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される方位角推定装置であって、
複数の情報発信源の各々から発信された前記情報発信源の各々の位置に関する情報、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報を含む発信源情報を取得する取得手段と、
前記移動体の方位角に関する物理量を検出する検出手段と、
前記取得手段により取得された前記発信源情報に基づいて得られる前記移動体の速度ベクトルから前記移動体の方位角を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された方位角、及び前記検出手段により検出された物理量から得られる方位角に基づいて、前記移動体の方位角の最適値を推定する最適値推定手段と、
前記最適値推定手段により推定された最適値と前記算出手段により算出された方位角との差の分布に基づいて、前記方位角の最適値の精度を判定する判定手段と、
前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定されたときの最適値を用いて前記移動体の方位角を推定する方位角推定手段と、
を含む方位角推定装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記差のばらつきが予め定めた閾値以下か否か、または前記差の分布がガウス分布に適合するか否かを判定することによって、前記方位角の最適値の精度を判定する請求項1記載の方位角推定装置。
【請求項3】
前記方位角推定手段は、前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定された場合には、前記最適値を前記移動体の方位角として推定し、前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも低いと判定された場合には、過去に推定された方位角及び前記検出手段により検出された物理量に基づいて、前記移動体の方位角を推定する請求項1または請求項2記載の方位角推定装置。
【請求項4】
前記最適値推定手段は、所定の初期値を基準に前記検出手段により検出された物理量を所定時間分積分して前記検出手段により検出された物理量から得られる方位角を算出し、該方位角と前記算出手段により算出された方位角との一定時間における差の和が最小となる前記初期値を探索することで、前記方位角の最適値を推定する請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の方位角推定装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記情報発信源の各々の位置に関する情報、及び前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報から得られる前記移動体の位置に基づいて、前記移動体から見た前記情報発信源の各々の方向を算出し、時系列の前記情報発信源の各々の位置に関する情報に基づいて、前記情報発信源の各々の速度を算出し、前記移動体から見た前記情報発信源の各々の方向、前記情報発信源の各々の速度、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報に基づいて、前記移動体の情報発信源の各々の方向の速度を算出し、複数の前記移動体の情報発信源の各々の方向の速度に基づいて、前記移動体の速度ベクトルを算出する請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の方位角推定装置。
【請求項6】
前記情報発信源を、前記情報発信源の各々の位置に関する情報として衛星軌道情報を、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報として擬似距離情報を、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報としてドップラー周波数情報を発信するGPS衛星とした請求項1〜請求項5のいずれか1項記載の方位角推定装置。
【請求項7】
コンピュータを、移動体に搭載される方位角推定装置の各手段として機能させるための方位角推定プログラムであって、
前記コンピュータを、
複数の情報発信源の各々から発信された前記情報発信源の各々の位置に関する情報、前記情報発信源の各々と前記移動体との距離に関する情報、及び前記情報発信源の各々に対する前記移動体の相対速度に関する情報を含む発信源情報を取得する取得手段、
前記取得手段により取得された前記発信源情報に基づいて得られる前記移動体の速度ベクトルから前記移動体の方位角を算出する算出手段、
前記算出手段により算出された方位角、及び前記移動体の方位角に関する物理量を検出する検出手段により検出された物理量から得られる方位角に基づいて、前記移動体の方位角の最適値を推定する最適値推定手段、
前記最適値推定手段により推定された最適値と前記算出手段により算出された方位角との差の分布に基づいて、前記方位角の最適値の精度を判定する判定手段、及び
前記判定手段により精度が予め定めた閾値よりも高いと判定されたときの最適値を用いて前記移動体の方位角を推定する方位角推定手段
として機能させるための方位角推定プログラム。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の方位角推定装置の各手段として機能させるための方位角推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−98185(P2012−98185A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246710(P2010−246710)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】