説明

映像信号処理装置

【課題】従来は非常に回路が複雑でコストもかかり、しかも色にじみだけを改善するものであり、色ノイズを低減することができないという問題がある。
【解決手段】輝度信号が変化した場合は、輝度信号エッジ検出装置2からエッジ検出信号が出力される。この期間は、係数選択装置3により係数kとして”1”を選択する。これにより、IIRフィルタ1は色差信号に対するノイズ低減効果はなくなるが、入力される色差信号にすぐに応答するため、IIRフィルタ1から取り出される信号処理された色差信号のエッジと、輝度信号のエッジとが揃い、IIRフィルタ1から色にじみの低減された色差信号を出力することができる。輝度信号及び色差信号のエッジがない平坦部では、IIRフィルタ1内の係数kを例えば”0.1”程度の小さな値とする。この結果、IIRフィルタ1の応答が遅いが、ノイズ改善効果が大きいので、ノイズが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は映像信号処理装置に係り、特にMPEG(Moving Picture Experts Group)などの符号化方式により圧縮符号化された画像データを復号化して得られた映像信号に対して、画質改善のための信号処理を行う映像信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MPEGなどの符号化方式では、輝度信号に比較して、色差信号は人間の視覚の分解能が低いため、一般に間引きされ、なお、かつ量子化も粗く行われる。また、MPEGでは符号化対象の映像信号の1フレーム内の特定の矩形範囲で予測、圧縮が行われるため、圧縮率を高くした場合、色差信号はこの矩形範囲内ではあまり変化せず矩形範囲毎に変化する場合が多い。そのため、原画像では矩形範囲内に輝度および色の変化を伴う輪郭が存在しても、復号した映像信号中の色差信号の輪郭は変化せず、矩形範囲の境界で変化することとなり、それが色にじみとなる。
【0003】
これを改善する技術として、色補正装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この色補正装置では、画像を複数の輝度データからなるブロックに分割し、そのブロック内の輝度データを用いてブロックが輪郭を有する輪郭ブロックであるか否かを判別し、輪郭ブロックであれば輪郭ブロック内に色境界を有する色境界ブロックであるか否かを判別する。次に、色境界ブロックと判別されたブロックについてのみ、ブロック内を複数の輝度領域と複数の色領域とに分割し、分割された輝度領域の各領域内に分割された色領域の各領域の色データ数を算出する。
【0004】
更に、上記の色補正装置は、この色データ数によって、輝度領域の各領域が複数の異なる色領域の色データからなる色不一致輝度領域か、あるいは単一の色領域の色データで満たされた色一致輝度領域かを判別し、最終的に色不一致輝度領域と判別された領域内の色データと同じ色データを除き、最も多い色不一致輝度領域の色データで色不一致輝度領域の色データの全てを置換する。これにより、上記の色補正装置によれば、ある輝度領域へ他の輝度領域からの色のはみ出しがあっても、輝度領域の境界に色領域の境界が一致し、輪郭及び輪郭周辺に生じた色にじみを取り除くものである。
【0005】
【特許文献1】特開平8−172640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の色補正装置は、非常に回路が複雑でコストもかかり、しかも色にじみだけを改善するものであり、色ノイズを低減することができないという問題がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、簡単な回路構成で、色にじみを改善すると共に色ノイズも低減し得る映像信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、第1の発明の映像信号処理装置は、所定の矩形ブロック単位で圧縮符号化された画像データを復号して得られた輝度信号と色差信号のうちの、色差信号に対して所定の信号処理を行う映像信号処理装置において、外部から選択された係数に応じた特性により、色差信号に対してフィルタ処理を行って出力する巡回形のフィルタ手段と、輝度信号のエッジを検出して、矩形ブロックのサイズに対応した所定幅のエッジ検出信号を出力する輝度信号エッジ検出手段と、輝度信号エッジ検出手段からのエッジ検出信号の入力の有無に応じて、フィルタ手段の係数として第1の係数又は第2の係数を選択して、フィルタ手段に設定する係数選択手段とを有し、係数選択手段は、エッジ検出信号が入力されない期間は、フィルタ手段の係数としてフィルタ手段を第2の係数選択時よりもノイズ改善効果が大きな特性とする第1の係数を選択し、所定幅の期間であるエッジ検出信号が入力される期間は、フィルタ手段の係数としてフィルタ手段を第1の係数選択時よりも速い応答特性とする第2の係数を選択することを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は上記の目的を達成するため、所定の矩形ブロック単位で圧縮符号化された画像データを復号して得られた輝度信号と色差信号とのうちの、色差信号に対して所定の信号処理を行う映像信号処理装置において、色差信号を第1の時間遅延する色差信号遅延手段と、輝度信号を第1の時間とほぼ同一の時間である第2の時間遅延する輝度信号遅延手段と、輝度信号遅延手段により遅延された輝度信号のエッジを検出して、矩形ブロックのサイズに対応した所定幅の第1のエッジ検出信号を出力する第1のエッジ検出手段と、色差信号のエッジを検出して、第2のエッジ検出信号を出力する第2のエッジ検出手段と、第1のエッジ検出信号が入力されない期間及び第1のエッジ検出信号のみが入力される期間は、色差信号遅延手段から出力された遅延された色差信号を選択し、所定幅の期間である第1のエッジ検出信号が入力される期間内に第2のエッジ検出信号が入力される期間は、色差信号遅延手段の入力色差信号である非遅延色差信号を選択する色差信号選択手段と、外部から選択された係数に応じた特性により、色差信号選択手段により選択された色差信号に対してフィルタ処理を行って出力する巡回形のフィルタ手段と、第1のエッジ検出手段からの第1のエッジ検出信号の入力の有無に応じて、フィルタ手段の係数として第1の係数又は第2の係数を選択して、フィルタ手段に設定する係数選択手段とを有し、係数選択手段は、第1のエッジ検出信号が入力されない期間は、フィルタ手段の係数としてフィルタ手段を第2の係数選択時よりもノイズ改善効果が大きな特性とする第1の係数を選択し、第1のエッジ検出信号が入力される期間は、フィルタ手段の係数としてフィルタ手段を第1の係数選択時よりも速い応答特性とする第2の係数を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な回路構成で色にじみを改善できると共に、色ノイズも低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、発明を実施するための最良の形態について、図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本発明になる映像信号処理装置の実施例1のブロック図を示す。本実施例は、例えばMPEGなどの符号化方式により圧縮符号化された画像データを復号して得られた復号映像信号に対して所定の映像信号処理を行うもので、IIRフィルタ1、輝度信号エッジ検出装置2、及び係数選択装置3から構成される。
【0013】
IIR(Infinite Impulse Response)フィルタ1は復号した色差信号に対して、係数選択装置3から入力される係数に基づいてフィルタリングを行うことで色にじみの改善を行う、後述する巡回形のフィルタである。輝度信号エッジ検出装置2は、復号した輝度信号のエッジを検出する。係数選択装置3は、輝度信号エッジ検出装置2で検出されたエッジ検出結果を基にIIRフィルタ1の係数を選択してIIRフィルタ1に供給する。
【0014】
図2はIIRフィルタ1の一例の構成図を示す。同図に示すように、IIRフィルタ1は、入力信号(図1の色差信号に相当)に対して係数k(ただし、0≦k≦1)を乗算する乗算器11と、加算器12と、加算器12の出力信号を所定のサンプリング周期Tだけ遅延する遅延器13と、遅延器13の出力信号に対して係数k−1を乗算する乗算器14とからなり、乗算器11、14からそれぞれ出力される乗算結果を加算器12で加算して出力信号(図1の処理された色差信号に相当)を出力する構成である。このIIRフィルタ1は、係数kが大きい時は応答が速いがノイズ低減効果は小さく、係数kが小さいときは応答が遅くなるがノイズ低減効果は大きいという特性を持つ。
【0015】
図3は輝度信号エッジ検出装置2の一例の構成図を示す。同図に示すように、輝度信号エッジ検出装置2は、入力信号(図1の輝度信号に相当)をサンプリング周期Tのn倍(nは任意の自然数)の期間遅延する遅延器21と、入力信号から遅延器21の出力遅延信号を減算する減算器22と、減算器22から出力される差分信号のレベルを所定の閾値thと大小比較して、その比較結果に応じた論理値のエッジ検出信号を出力する比較器23とから構成される。遅延器21の遅延時間nTは任意であるが、後述するように16T程度に取ると、誤動作が少なくなる。なお、色差信号には2つの種類の信号(Cb,CrまたはPb,Pr)があり、処理はそれぞれの色差信号に対して行う必要があるが、全く同じ処理を行うため、説明では一方の色差信号について説明を行う。
【0016】
次に、図1に示す本実施例の具体的な動作を図4のタイミングチャートを併せ参照して説明する。図4は同図(b)に示す輝度信号のエッジ位置に対して同図(a)に示す色差信号のエッジ位置がずれており、色にじみが発生している場合のタイミングチャートを表している。
【0017】
まず、色差信号が先に変化してから輝度信号が変化する場合を考える。図4に示す領域#1のように輝度信号のエッジがない平坦部では、前述したIIRフィルタ1内の係数kを例えば”0.1”程度の小さな値とする。この場合、IIRフィルタ1の応答が遅いが、ノイズ改善効果が大きいので、ノイズが低減され、色差信号が変化してもゆっくりと追従していく。
【0018】
次に、図4に示す領域#2のように、輝度信号が色差信号の変化よりも後に変化した場合は、輝度信号エッジ検出装置2から図4(c)に示すようにハイレベルのエッジ検出信号が出力される。この領域#2の期間は、係数選択装置3により係数kとして”1”を選択する。これにより、IIRフィルタ1は色差信号に対するノイズ低減効果はなくなるが、入力される色差信号にすぐに応答する。これにより、領域#2では図4(d)に示すように、IIRフィルタ1から取り出される信号処理された色差信号のエッジと、同図(b)に示す輝度信号のエッジとが揃い、IIRフィルタ1から色にじみの低減された色差信号を出力することができる。
【0019】
また、図4に示す領域#3のように輝度信号及び色差信号のエッジがない平坦部では、前述した領域#1と同様に、IIRフィルタ1内の係数kを例えば”0.1”程度の小さな値とする。この結果、IIRフィルタ1の応答が遅いが、ノイズ改善効果が大きいので、ノイズが低減され、色差信号が変化してもゆっくりと追従していく。従って、領域#1及び#3のように、エッジのない平坦部では、色ノイズの低減を行うことができる。
【0020】
次に、輝度信号が先に変化してから色差信号が変化する場合を考える。図4に示す領域#4で同図(c)に示すように、輝度信号が変化した場合は、輝度信号エッジ検出装置2から図4(c)に示すようにハイレベルのエッジ検出信号が出力される。この領域#4の期間は、係数選択装置3により係数kとして”1”を選択する。これにより、IIRフィルタ1は色差信号に対するノイズ低減効果はなくなるが、入力される色差信号にすぐに応答する。
【0021】
従って、図4(a)に示すように、この領域#4の輝度信号のエッジ検出期間内に色差信号のエッジが入っているときは、同図(d)に示すようにIIRフィルタ1から取り出される信号処理された色差信号のエッジが、同図(b)に示す輝度信号のエッジと揃わないので色にじみは改善しないものの、誤動作も起きない。
【0022】
ここで、図4(c)に示すエッジ検出信号のハイレベル期間(領域#2や#4の期間)について説明する。本実施例の映像信号処理装置に入力される色差信号及び輝度信号は、前述したようにMPEGなどの符号化方式により圧縮符号化された画像データを復号して得られた信号であるが、上記の符号化方式では水平方向16画素、垂直方向16画素の矩形のマクロブロック単位で符号化を行う。圧縮率を上げた場合、高域の情報が無くなるため、マクロブロック内では色は一様な値となる。そのため、マクロブロック内でエッジが存在し、色の変化が起こったとしても、マクロブロック内では変化せず、ブロックの境界で色の変化が起こることが多くなる。しかし、輝度信号は、色差信号と比較すると帯域が広いため、マクロブロック内でもエッジが存在することもあり、その場合には色にじみが生じる。
【0023】
ここで、もし、輝度信号のエッジ検出期間が短く、その輝度信号のエッジ検出期間から色差信号のエッジ発生時点が外れた場合、上記の輝度信号のエッジ検出期間である短期間のみIIRフィルタ1の係数kが”1”に制御されるのに対し、輝度信号のエッジ検出期間から外れた色差信号のエッジ発生時点ではIIRフィルタ1の係数kが”1”より小さく(上記の例ではk=0.1)制御される。そのため、輝度信号のエッジ検出期間から外れた色差信号のエッジ発生時点ではIIRフィルタ1の応答は遅くなり、IIRフィルタ1から出力される色差信号がなかなか変化せず、逆に色にじみがひどくなってしまう。
【0024】
そこで、本実施例では、輝度信号が色差信号よりも先に変化しても、図4(c)の領域#4に示すように、輝度信号のエッジ検出期間内に色差信号のエッジ発生時点を含むように、輝度信号エッジ検出装置2に含まれる遅延器21の遅延時間を1つのマクロブロックの水平方向の16画素に対応する期間である16T程度に取ることで、エッジ検出に幅を持たせ、色にじみがひどくなるという誤動作を防ぐものである。
【0025】
このように、本実施例によれば、非常に簡単な回路構成で、図4の領域#2では色にじみを改善でき、また、図4の領域#1、#3、#5では色ノイズを低減することができる。
【実施例2】
【0026】
図5は本発明になる映像信号処理装置の実施例2のブロック図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。図5に示す実施例は、例えばMPEGなどの符号化方式により圧縮符号化された画像データを復号して得られた復号映像信号に対して所定の映像信号処理を行うもので、図1の実施例1の入力側に輝度信号遅延器5、色差信号遅延器6、色差信号エッジ検出装置7、及び色差信号選択装置8を追加した構成である。
【0027】
輝度信号遅延器5は、復号した輝度信号を所定時間遅延して輝度信号エッジ検出装置2に供給する。色差信号遅延器6は復号した色差信号を所定時間遅延して色差信号選択装置8に供給する。色差信号エッジ検出装置7は復号した色差信号のエッジを検出して、その検出信号を色差信号選択装置8に供給する。色差信号エッジ検出装置7は図3に示した輝度信号エッジ検出装置2と同様の構成である。ただし、色差信号エッジ検出装置7内の遅延器21に相当する遅延器の遅延時間は輝度信号エッジ検出装置2内の遅延器21の遅延時間よりも短くてよい。これは、色差信号のエッジ検出は単にエッジがあることが分かればよく、幅を持たせる必要はないためである。
【0028】
色差信号選択装置8は色差信号遅延器6の入力色差信号及び出力遅延色差信号と、色差信号エッジ検出装置7からのエッジ検出信号と、輝度信号エッジ検出装置2からのエッジ検出信号とに基づいて、所定の条件でIIRフィルタ1に入力する色差信号を選択する。なお、輝度信号遅延器5と色差信号遅延器6の各遅延時間はほぼ等しく、例えば8T程度である。
【0029】
次に、図5に示す本実施例の具体的な動作を図6のタイミングチャートを併せ参照して説明する。図6は同図(b)に示す輝度信号のエッジ位置が同図(a)に示す色差信号のエッジ位置とずれており、色にじみが発生している場合のタイミングチャートを表している。
【0030】
色差信号エッジ検出装置7は復号した図6(a)に示す色差信号のエッジを検出して、同図(c)に示す色差信号エッジ検出信号を出力する。この色差信号エッジ検出信号の幅は、前述した理由から同図(e)に示す輝度信号エッジ検出装置2から出力される輝度信号エッジ検出信号の幅に比べて小さくてよい。一方、輝度信号エッジ検出装置2には、復号した図6(b)に示す輝度信号を、輝度信号遅延器5で所定時間遅延して得られた、同図(d)に示す遅延輝度信号が入力される。
【0031】
色差信号選択装置8は、図6に示す領域#6、#8、#11のように輝度信号のエッジがない平坦部のように、輝度信号エッジ検出装置2からエッジ検出信号が入力されない期間では、色差信号遅延器6から出力される図6(f)に示す遅延色差信号を選択してIIRフィルタ1に供給する。また、係数選択装置3は輝度信号エッジ検出装置2からエッジ検出信号が入力されない期間では、前述したIIRフィルタ1内の係数kを例えば”0.1”程度の小さな値とする。
【0032】
この結果、領域#6、#8、#11では、IIRフィルタ1の応答が遅いが、ノイズ改善効果が大きいので、IIRフィルタ1に入力された遅延色差信号のノイズが図6(g)に示すように低減されて出力されると共に、入力遅延色差信号が変化してもゆっくりと追従していく。
【0033】
次に、図6に示す領域#7のように、輝度信号が色差信号の変化よりも後に変化した場合は、輝度信号エッジ検出装置2から図6(e)に示すようにハイレベルのエッジ検出信号が出力されるが、そのハイレベル期間内には同図(c)に示すように色差信号エッジ検出装置7からはエッジ検出信号が出力されない。これにより、色差信号選択装置8は色差信号遅延器6から出力される図6(f)に示す遅延色差信号を選択してIIRフィルタ1に供給する。
【0034】
また、係数選択装置3は、輝度信号エッジ検出装置2からのエッジ検出信号に基づいて、IIRフィルタ1の係数kとして”1”を選択する。これにより、この領域#7の期間では、IIRフィルタ1は色差信号に対するノイズ低減効果はなくなるが、入力される遅延色差信号にすぐに応答して、図6(g)に示すように、IIRフィルタ1から取り出される信号処理された遅延色差信号のエッジと、同図(d)に示す遅延輝度信号のエッジとが揃い、IIRフィルタ1から色にじみの低減された遅延色差信号を出力することができる。
【0035】
次に、図6に示す領域#9のように、輝度信号が色差信号の変化よりも前に変化し、色差信号のエッジが検出されるまでの期間では、輝度信号エッジ検出装置2から図6(e)に示すようにハイレベルのエッジ検出信号が出力され、領域#7と同様に、色差信号選択装置8は色差信号遅延器6から出力される同図(f)に示す遅延色差信号を選択すると共に、係数選択装置3はIIRフィルタ1の係数kとして”1”を選択する。
【0036】
そして、輝度信号エッジ検出装置2から出力される輝度信号のエッジ検出信号のハイレベル期間内(輝度信号のエッジ検出期間内)において図6(c)に示すように色差信号エッジ検出装置7からもエッジ検出信号が出力される領域#10では、色差信号選択装置8は色差信号遅延器6で遅延されていない図6(a)に示す色差信号を選択してIIRフィルタ1に供給する。また、係数選択装置3は、輝度信号エッジ検出装置2からのエッジ検出信号に基づいて、引き続いてIIRフィルタ1の係数kとして”1”を選択する。
【0037】
これにより、この領域#10の期間では、IIRフィルタ1はそれまで入力されていた遅延色差信号が非遅延色差信号に挿げ替えられ、入力色差信号に対するノイズ低減効果はなくなるが、入力色差信号にすぐに応答して、図6(g)に示すような補正された非遅延色差信号を出力する。
【0038】
このように、本実施例では、領域#10の期間では、IIRフィルタ1から信号処理された非遅延色差信号が直ちに出力されるため、輝度信号のエッジ検出期間から外れた色差信号のエッジ発生時点でIIRフィルタ1の応答は遅くなり、IIRフィルタ1から出力される色差信号がなかなか変化せず、逆に色にじみがひどくなってしまう、という誤動作を防止することができる。また、本実施例では、非常に簡単な回路構成で、図6の領域#7では色にじみを改善でき、また、図6の領域#6、#8、#11では色ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の映像信号処理装置の実施例1のブロック図である。
【図2】IIRフィルタの一例の構成図である。
【図3】図1中の輝度信号エッジ検出装置の一例の構成図である。
【図4】図1の動作説明用タイミングチャートである。
【図5】本発明の映像信号処理装置の実施例2のブロック図である。
【図6】図5の動作説明用タイミングチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 IIRフィルタ
2 係数選択装置
3 輝度信号エッジ検出装置
5 輝度信号遅延器
6 色差信号遅延器
7 色差信号エッジ検出装置
8 色差信号選択装置
11、14 乗算器
12 加算器
13、21 遅延器
22 減算器
23 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の矩形ブロック単位で圧縮符号化された画像データを復号して得られた輝度信号と色差信号のうちの、前記色差信号に対して所定の信号処理を行う映像信号処理装置において、
外部から選択された係数に応じた特性により、前記色差信号に対してフィルタ処理を行って出力する巡回形のフィルタ手段と、
前記輝度信号のエッジを検出して、前記矩形ブロックのサイズに対応した所定幅のエッジ検出信号を出力する輝度信号エッジ検出手段と、
前記輝度信号エッジ検出手段からの前記エッジ検出信号の入力の有無に応じて、前記フィルタ手段の係数として第1の係数又は第2の係数を選択して、前記フィルタ手段に設定する係数選択手段と
を有し、
前記係数選択手段は、前記エッジ検出信号が入力されない期間は、前記フィルタ手段の係数として前記フィルタ手段を前記第2の係数選択時よりもノイズ改善効果が大きな特性とする前記第1の係数を選択し、前記所定幅の期間である前記エッジ検出信号が入力される期間は、前記フィルタ手段の係数として前記フィルタ手段を前記第1の係数選択時よりも速い応答特性とする前記第2の係数を選択することを特徴とする映像信号処理装置。
【請求項2】
所定の矩形ブロック単位で圧縮符号化された画像データを復号して得られた輝度信号と色差信号とのうちの、前記色差信号に対して所定の信号処理を行う映像信号処理装置において、
前記色差信号を第1の時間遅延する色差信号遅延手段と、
前記輝度信号を前記第1の時間と略同一の時間である第2の時間遅延する輝度信号遅延手段と、
前記輝度信号遅延手段により遅延された前記輝度信号のエッジを検出して、前記矩形ブロックのサイズに対応した所定幅の第1のエッジ検出信号を出力する第1のエッジ検出手段と、
前記色差信号のエッジを検出して、第2のエッジ検出信号を出力する第2のエッジ検出手段と、
前記第1のエッジ検出信号が入力されない期間及び前記第1のエッジ検出信号のみが入力される期間は、前記色差信号遅延手段から出力された遅延された色差信号を選択し、前記所定幅の期間である前記第1のエッジ検出信号が入力される期間内に前記第2のエッジ検出信号が入力される期間は、前記色差信号遅延手段の入力色差信号である非遅延色差信号を選択する色差信号選択手段と、
外部から選択された係数に応じた特性により、前記色差信号選択手段により選択された色差信号に対してフィルタ処理を行って出力する巡回形のフィルタ手段と、
前記第1のエッジ検出手段からの前記第1のエッジ検出信号の入力の有無に応じて、前記フィルタ手段の係数として第1の係数又は第2の係数を選択して、前記フィルタ手段に設定する係数選択手段と
を有し、
前記係数選択手段は、前記第1のエッジ検出信号が入力されない期間は、前記フィルタ手段の係数として前記フィルタ手段を前記第2の係数選択時よりもノイズ改善効果が大きな特性とする前記第1の係数を選択し、前記第1のエッジ検出信号が入力される期間は、前記フィルタ手段の係数として前記フィルタ手段を前記第1の係数選択時よりも速い応答特性とする前記第2の係数を選択することを特徴とする映像信号処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−312076(P2008−312076A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−159654(P2007−159654)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】