説明

曲げ加工装置

【課題】素材Wの複数個所を折り曲げる加工を、素材Wの引き込みを生じることなく同時に行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置12を提供する。
【解決手段】第一の治具13と第二の治具14とは、回動軸15を中心に回動自在に連結される。また、第一の回動曲げ部16及び第二の回動曲げ部17は、両治具13,14の回動に連動して、それぞれの支点P,Qを中心として回動する。該各支点P,Q及び前記第一の治具13に設けた治具側曲げ部19を、曲げ加工の際に、前記素材Wが前記両治具13,14に対し変位しないように、前記回動軸15からオフセットさせて配置する。また、該両治具13,14の回動に連動させて、前記各回動曲げ部16,17を回動させることにより、前記素材Wの複数個所に同時に曲げ加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、回転電機用の巻線(マグネットワイヤ)を構成する断面円形或は矩形の金属線(例えば平角線)や、その他、棒材、パイプ材、板材等の所定の素材に曲げ加工を施す曲げ加工装置に係り、詳しくは、前記素材の複数個所を折り曲げる加工を、素材の引き込みを生じることなく同時に行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、誘導モータ、直流モータ(ジェネレータを含む)等の回転電機は、産業用又は車輌用の動力源として広く用いられており、そのステータのコイルのレイアウトは、比出力が高い分布巻きが多用されている。近時、ハイブリット駆動車輌及び電気自動車に用いられるモータとして、出力/寸法要求等からスロットの占積率の高い平角線をマグネットワイヤとして用いることが提案されている。
【0003】
上述のような回転電機に使用されるマグネットワイヤは、複数個所を折り曲げることによりコイルを構成するが、従来、マグネットワイヤ等の素材の曲げ加工は、一方向にのみ曲げ加工が可能な曲げ加工装置により、素材を治具に引き込みつつ行っていた(特許文献1参照)。
【0004】
また、マグネットワイヤ等の素材に2個所の曲げ加工を同時に行う場合には、素材の2個所をクランプで固定し、素材を引っ張りつつ曲げていた(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−104841号公報
【特許文献2】実開昭55−122924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に記載された構造の場合、素材の複数個所に曲げ加工を行うためには、素材の先頭から曲げ加工をし、その後、素材をずらして再度加工するという作業を、順次繰り返す必要がある。このため、加工時間が長くなることが避けられない。また、曲げ加工時に素材の引き込みが生じるため、素材の複数個所を同時に曲げる加工を行えない。
【0007】
一方、特許文献2に記載された構造の場合、素材の2個所に同時に曲げ加工を施しているが、素材が引き込みを生じないように、素材を曲げるための両クランプが離れる方向に大きなバックテンション(引っ張り力)を作用する必要がある。この為、曲げ加工の際に、素材の寸法管理が難しく、正確な曲げ加工を行いにくい。
【0008】
そこで、本発明は、素材の複数個所を折り曲げる加工を、素材の引き込みを生じることなく同時に行え、加工精度を良好にできる曲げ加工装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、所定の素材(W)に複数個所の曲げ加工を施す曲げ加工装置(12)において、
回動軸(15)を中心に回動自在に連結される第一の治具(13)及び第二の治具(14)と、
前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)との回動に連動して、それぞれの支点(P,Q)を中心として回動し、前記素材(W)を曲げる複数の回動曲げ部(16,17)と、を備え、
前記第一の治具(13)は、回動方向と反対側に前記素材(W)の変位を抑える抑え部(18)と、前記両治具(13,14)の回動により前記素材(W)を曲げる治具側曲げ部(19)と、を有し、
前記第二の治具(14)は、回動方向と反対側に前記素材(W)の変位を抑える抑え部(18)を有し、
前記各回動曲げ部(16,17)のそれぞれの支点(P,Q)及び前記治具側曲げ部(19)を、前記素材(W)に複数個所の曲げ加工を施す際に、該素材(W)が前記両治具(13,14)に対し変位しないように、前記回動軸(15)からそれぞれオフセットさせて配置し、
前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)との回動に連動させて、前記各回動曲げ部(16,17)を回動させることにより、前記素材(W)の複数個所に同時に曲げ加工を施すことを特徴とするものである。
【0010】
前記回動軸(15)の回動中心(O)は、
前記治具側曲げ部(19)と前記素材(W)とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部(19)の中心とを通る仮想線が、該素材(W)の中立線(N)と交差する点を始点(R)とし、
前記始点(R)から、曲げ加工の際に前記治具側曲げ部(19)及び前記各回動曲げ部(16,17)により曲げられる部分を含む、前記素材(W)の中立線(N)の長さが、該素材(W)の曲げ加工前の状態と曲げ加工後の状態とで同じである長さ離れた、該中立線(N)上の位置を基準点(O1,O2)とした場合に、
該基準点(O1,O2)までの距離が、曲げ加工前と曲げ加工後とで同じで、
前記回動中心(O)と曲げ加工前の基準点(O1)とを結ぶ直線(O−O1)と、該回動中心(O)と曲げ加工後の基準点(O2)とを結ぶ直線(O−O2)とが成す角度が、前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)との回動角度に応じた角度となるように定める。
【0011】
前記各回動曲げ部(16,17)のそれぞれの支点(P,Q)は、
前記治具側曲げ部(19)と前記素材(W)とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部(19)の中心とを通る仮想線が、該素材(W)の中立線(N)と交差する点を始点(R)とし、
前記各回動曲げ部(16,17)と前記素材(W)とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該回動曲げ部(16,17)の中心とを通る仮想線が、該素材(W)の中立線(N)と交差するそれぞれの点を終点(P1,P2,Q1,Q2)とした場合に、
前記始点(R)と終点(P1,P2,Q1,Q2)との間の中立線(N)の長さが、曲げ加工前と曲げ加工後とで同じとなるように、前記各回動曲げ部(16,17)がそれぞれ配置されるように定める。
【0012】
前記終点(P1,P2,Q1,Q2)は、曲げ加工後に前記各回動曲げ部(16,17)によりそれぞれ曲げられた素材(W)の各曲げ部分の、それぞれ中立線(N)上の中央とする。
【0013】
前記回動軸(15)の軸方向にそれぞれ重ねて配置され、該回動軸(15)から偏心した位置を支点(P,Q)として回転する複数の回転部材(21,22)を備え、
前記各回転部材(21,22)は、それぞれ前記回動曲げ部(16,17)を有し、前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)との回動と連動して、それぞれの支点(P,Q)を中心に回転可能に互いに係合されている。
【0014】
前記素材(W)の曲げ個所が3個所であって、
前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)とは、該第一の治具(13)に設けた回動軸(15)と同心の第一の円筒部(24)に、該第二の治具(14)に設けた回動軸(15)と同心の円孔(25)を嵌合することにより回動自在に連結され、
前記第一の治具(13)は、前記第一の円筒部(24)に互いの中心軸が偏心した第二の円筒部(26)及び第三の円筒部(27)を軸方向に重ねて配置し、
前記各回転部材である第一の回転部材(21)及び第二の回転部材(22)は、それぞれに設けた前記各回動曲げ部(16,17)の支点(P,Q)と同心の円孔(28a,28b)を、前記第二の円筒部(26)及び第三の円筒部(27)に嵌合することにより、それぞれ、該第二の円筒部(26)及び第三の円筒部(27)に回転自在に支持され、
前記第二の治具(14)及び前記第一の回転部材(21)は、それぞれ軸方向に突出する突起部(29a、29b)を有し、
前記第一の回転部材(21)及び第二の回転部材(22)は、それぞれ軸方向に凹み或は貫通し周方向に対し傾斜した方向に長い凹溝或は長孔(30a,30b)を有し、
前記各突起部(29a、29b)を前記凹溝或は長孔(30a,30b)に係合することにより、前記第一の治具(13)と前記第二の治具(14)との回動に連動して、前記第一の回転部材(21)及び前記第二の回転部材(22)を回転させる。
【0015】
前記第二の回転部材(22)は、前記第一の回転部材(21)と該第二の回転部材(22)との相対的な回動量よりも大きい周方向長さの切り欠き(31)を有し、前記第一の回転部材(21)に設けた回動曲げ部(17)を前記切り欠き(31)内に配置する。
【0016】
前記所定の素材(W)が、回転電機のコイルの巻線を構成する、断面矩形状の平角線からなる。
【0017】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより各請求項の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る本発明によると、第一の治具と第二の治具との回動に連動して、複数の回動曲げ部も回動することにより、複数個所の曲げ加工を同時に行っているため、加工時間を短くできる。また、曲げ加工時に、素材が前記第一の治具及び第二の治具に対し変位しない(引き込みが生じない)ため、該素材と治具との間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材に損傷が生じることを防止できる。また、曲げ加工時に該素材に引っ張り力が作用しないため、該素材の曲げ加工を正確に行える。
【0019】
請求項2に係る本発明によると、曲げ加工時に素材の引き込みが生じることを、より確実に防止できる。
【0020】
請求項3に係る本発明によると、より確実に曲げ加工時の素材の引き込みを防止できると共に、該素材と回動曲げ部及び治具側曲げ部との間で摺れ合いが生じることを、確実に防止できる。
【0021】
請求項4に係る本発明によると、回動曲げ部により付与する曲げ力を、効率良く素材に伝達でき、曲げ加工をより容易に行える。
【0022】
請求項5に係る本発明によると、各回動曲げ部を設けた各回転部材を、第一の治具と第二の治具との回動に連動させて回転させるように係合しているため、簡単な構成で、素材の複数個所に曲げ加工を行える。
【0023】
請求項6に係る本発明によると、各部材を偏心させた状態で重ね合わせると共に、該各部材に設けた突起部と凹溝或は長孔とを係合させることにより、該各部材を容易に連動させることができ、素材の3個所に同時に曲げ加工を行える。
【0024】
請求項7に係る本発明によると、第一の回転部材に設けた回動曲げ部と第二の回転部材とを干渉させることなく、これら各部材を連動して回動させることができる。
【0025】
請求項8に係る本発明によると、平角線の複数個所に行う曲げ加工を、短時間で精度良く行える。また、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがない為、良質な回転電機用コイルを得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明により製造されるコイルを組み込んだステータを示す斜視図。
【図2】そのコイル(U相)を示す斜視図。
【図3】本発明の実施の形態に係る曲げ加工装置の概略を示す図。
【図4】各回動曲げ部の支点を説明するために素材と各曲げ部とを抜き出して示す、図3の部分拡大図。
【図5】本発明の実施の形態に係る曲げ加工装置の斜視図。
【図6】同じく平面図。
【図7】図6の下側から見た図。
【図8】図7の右側から見た図。
【図9】第一の治具を示す、斜視図及び平面図。
【図10】第一の治具に第二の治具を組み付けた状態を示す、斜視図及び平面図。
【図11】図10の状態に更に第一の回転部材を組み付けた状態を示す、斜視図及び平面図。
【図12】図11の状態に更に第二の回転部材を組み付けた状態を示す、斜視図及び平面図。
【図13】本発明の実施の形態に係る曲げ加工装置による加工工程を順番に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。まず、本発明により製造されるコイルを組み込んだ回転電気(モータ、ジェネレータ等)のステータについて、図1及び図2に沿って説明する。本ステータ1は、ロータと共に電気モータ(ジェネレータを含む)を構成し、該電気モータは、電気自動車及びハイブリッド車輌の駆動源となる電気モータ(含むジェネレータ)、特にブラシレスDCモータに適用して好適である。ステータ1は、図1に示すように、多数の珪素鋼板の薄板を積層したステータコア2、及び、所定の素材であるマグネットワイヤ(導体、巻線)3を巻回したコイル4からなる。ステータコア2は、リング状からなり、内径側に開口するスロット5及びティース6が交互に多数形成されている。そして、所定ピッチ離れた2個のスロット5の間を分布巻きにて3相U,V,Wの各コイル4(4U,4V,4W)が巻かれている。
【0028】
マグネットワイヤ3は、断面矩形状の平角線からなり、銅等からなる導体部の全周に絶縁樹脂等の絶縁被膜が形成されている。上記ワイヤ3からなる3相のコイル4U,4V,4Wは、同相のスロット5内においては、同相の複数本(例えば4本)のワイヤ3がステータコア2の径方向に並んで配置されており、かつステータコア2の軸方向Lの一端面7から突出した一端側コイルエンド部8においては、同相の複数本のワイヤ3がステータコア2の径方向(又は軸方向)に並んで配置され、ステータコア2の軸方向Lの他端面9から突出した他端側コイルエンド部10においては、同相の複数本のワイヤ3がステータコア2の径方向内径側に屈曲すると共にステータコア2の径方向に並んで配置されている。
【0029】
代表してU相のコイル4Uを示すと、コイル4Uは、図2に示すように、隣接する2個のスロット5,5を占めるように、2組4U1,4U2がセットとなって、隣接する2個のスロット5,5の近い方同士、遠い同士が所定間隔隔てて連結するようかつ上記2組が交互に連結するように構成されている。各組のコイル4U1,4U2は、スロット5内に配置されるスロット導体部11と、ステータコア2の一端面7から突出して、所定間隔隔てたスロット導体部11を連結するように、周方向Mに延びる一端側コイルエンド部8と、ステータコア2の他端面9から突出して、所定間隔離れたスロット導体部11と連結するように、内径方向R1に屈曲して周方向Mに延びる他端側コイルエンド部10と、からなる。両コイルエンド部8,10は、それぞれが軸方向L又は径方向Rに互に干渉することなく並ぶように、周方向に(例えばY)又は軸方向に(例えばX)複数に屈曲して(折り曲げて)いる。
【0030】
上述のように、コイル4は、コイルエンド部8、10等で複数個所に折り曲げている。また、これらコイルエンド部8,10では、互いに曲げ方向を異ならせて略S字状に形成している。このようなコイルエンド部8,10を成形する曲げ加工装置12の概略について、図3により説明する。
【0031】
曲げ加工装置12は、第一の治具13と第二の治具14とを回動軸15により相対的に回動自在に連結し、更に、該第一の治具13と第二の治具14との回動に連動して、それぞれの支点を中心として回動する、第一の回動曲げ部16及び第二の回動曲げ部17を備えてなる。なお、図3では、回動軸15は、その中心Oのみを示している。
【0032】
このうちの第一の治具13は、抑え部18と、治具側曲げ部19とを備える。該抑え部18は、第一の治具13に断面矩形の平角線等の素材Wを配置した状態で、該素材Wの回動方向と反対側(図3の上側)に配置される。該素材Wを配置した状態では、前記抑え部18の抑え面20が該素材Wに当接する。
【0033】
また、前記治具側曲げ部19は、外周面を円筒状に形成し、その中心が前記回動軸15の回動中心Oから前記素材Wの回動側に、所定量オフセットした位置に配置されている。前記素材Wを配置した状態では、前記治具側曲げ部19の外周面が該素材Wの回動側の側面に当接し、該素材Wが前記抑え部18の抑え面20と該治具側曲げ部19の外周面とで挟持される。
【0034】
また、前記第二の治具14は、前記第一の治具13と同様の抑え部18を備える。但し、該第一の治具13と異なり、治具側曲げ部19は備えていない。
【0035】
また、前記第一の回動曲げ部16及び第二の回動曲げ部17は、外周面を円筒状に形成し、その回動中心となる支点P,Qを、前記回動軸15の回動中心Oから所定量オフセットして(偏心して)配置している。そして、例えばカム機構等により、前記第一の治具13と前記第二の治具14との回動に連動させて、それぞれの支点P,Qを中心に、図3の実線部分と破線部分との間を回動自在としている。
【0036】
また、前記各支点P,Q及び前記治具側曲げ部19をオフセットする位置は、前記曲げ加工装置12により素材Wに複数個所の曲げ加工を施す際に、該素材Wが前記両治具13,14に対し変位しない位置とする。また、前記素材Wに曲げ加工を施す場合には、前記第一の治具13と前記第二の治具14との回動に連動させて、前記各回動曲げ部16,17を回動させることにより、前記素材Wの複数個所に同時に曲げ加工を施す。
【0037】
上述のような曲げ加工を可能とするために、回動軸15の回動中心O、及び、各回動曲げ部16,17の各支点P,Qを、次のように設定する。この点について、図3、4を用いて説明する。まず、素材Wの曲げ加工前の直線状態(図3、4の実線)と、所望の曲げ加工後の状態(図3、4の鎖線)とをそれぞれ想定する。本実施の形態の場合、所望の曲げ加工後の状態は、全体として90°曲げつつ、曲げた部分をS字状とする。即ち、前記素材Wの曲げ個所は、3個所である。
【0038】
このように素材Wの曲げ加工前と曲げ加工後との状態を想定したら、前記回動軸15の回動中心Oを、次のように定める。まず、前記治具側曲げ部19と前記素材Wとが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部19の中心とを通る仮想線が、前記素材Wの中立線と交差する点を、始点Rとする。図示の例の場合、前記始点Rは、前記治具側曲げ部19により前記素材Wが曲がり始める位置の中立線上の点となる。
【0039】
次に、前記始点Rから、曲げ加工の際に前記治具側曲げ部19及び前記各回動曲げ部16,17により曲げられる部分を含む、前記素材Wの中立線Nの長さが、該素材の曲げ加工前の状態と曲げ加工後の状態とで同じである長さ離れた、該中立線上の位置を、基準点O1,O2とする。本実施の形態の場合、図3に示すように、曲げ加工前と曲げ加工後とで、前記素材Wの中立線Nの前記第二の治具14の先端に相当する位置にそれぞれ存在する点を、基準点O1,O2とする。
【0040】
そして、該基準点O1,O2までの距離が同じとなる位置を、前記回動中心Oとする。即ち、距離O−O1と距離O−O2とは、同じ長さとなる。また、該回動中心Oの位置は、前記両治具13,14の回動角度に応じて定める。即ち、該回動中心Oと曲げ加工前の基準点O1とを結ぶ直線O−O1と、該回動中心Oと曲げ加工後の基準点O2とを結ぶ直線O−O2とが成す角度が、前記第一の治具13と前記第二の治具14との回動角度に応じた角度となるように定める。本実施の形態の場合、回動角度が90°であるため、直線O−O1と直線O−O2との成す角度が90°となる位置に、前記回動中心Oを配置する。
【0041】
なお、前記治具側曲げ部19と前記回動軸15とのオフセット量は、次のような点を考慮して定めることもできる。まず、素材Wが各曲げ部16,17,19により曲げられることにより、曲げ加工後の、前記始点Rから前記基準点O2までのy方向(図3の上下方向)の距離が、曲げ加工前の該始点Rから前記基準点O1までの距離よりも縮むため、この縮む量を考慮する。また、治具側曲げ部19に沿って折り曲げ、それ以上折り曲げないとした場合(各回動曲げ部16,17がないとした場合)の素材Wの先端位置に対する、実際の素材Wの先端位置のx方向(図3の左右方向)の変位量を考慮する。そして、これらの点を考慮して、曲げ加工の前後で素材Wが前記両治具13,14に対し変位しないように、前記治具側曲げ部19と前記回動軸15との位置関係(オフセット量)を定める。
【0042】
次に、前記各支点P,Qについて、図4も参照しつつ説明する。該各支点P,Qを求める場合にも、同様に、素材Wの曲げ加工前の直線状態と、所望の曲げ加工後の状態とをそれぞれ想定する。また、同様に、前記治具側曲げ部19と前記素材Wとが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部19の中心とを通る仮想線が、前記素材Wの中立線と交差する点を、始点Rとする。
【0043】
更に、前記各回動曲げ部16,17と前記素材Wとが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該回動曲げ部16,17の中心とを通る仮想線が、該素材Wの中立線Nと交差するそれぞれの点を終点P1,P2,Q1,Q2とする。
【0044】
そして、曲げ加工前の前記始点Rと前記終点P1,Q1との間の中立線Nの長さX,Yが、曲げ加工後の該始点Rと前記終点P2,Q2との間の中立線Nの長さとが同じとなるように、前記各回動曲げ部16,17がそれぞれ配置されるように、前記支点P,Qの位置を定める。
【0045】
例えば、まず、曲げ加工後の位置に各回動曲げ部16,17を配置し、終点P2,Q2を求める。これにより、前記始点Rから該終点P2,Q2までの素材Wの中立線の長さを求めることができる。この中立線の長さが分かれば、曲げ加工前の終点P1,Q1も分かるため、曲げ加工前の各回動曲げ部16,17の位置を定めることができる。各回動曲げ部16,17の曲げ加工前と曲げ加工後との位置が定まれば、これら曲げ加工前と曲げ加工後とでそれぞれ同じ距離となる位置に、前記支点P,Qが存在することになる。即ち、支点Pと曲げ加工前の第一の回動曲げ部16の中心との距離と、支点Pと曲げ加工後の第一の回動曲げ部16の中心との距離とは、同じ長さとなる。同様に、支点Qと曲げ加工前の第二の回動曲げ部17の中心との距離と、支点Qと曲げ加工後の第二の回動曲げ部17の中心との距離とは、同じ長さとなる。
【0046】
そして、各回動曲げ部の回動角度に応じて、前記支点P,Qの位置を定める。本実施の形態の場合、前記各回動曲げ部16,17を90°回動させるため、各支点P,Qと、曲げ加工前と曲げ加工とのそれぞれ位置の各回動曲げ部16,17の中心とを結ぶ角度が90°となるように、前記支点P,Qを定めている。
【0047】
なお、本実施の形態の場合、曲げ加工後の終点P2,Q2は、前記素材Wの前記各回動曲げ部16,17による曲げ部分の、それぞれの中立線Nの中央とする。即ち、各回動曲げ部16,17は、曲げ加工後の曲げ部分の中央となる部分を中心に、前記素材Wを押す。これにより、各回動曲げ部16,17により付与する曲げ力を、効率良く該素材Wに伝達でき、曲げ加工をより容易に行える。
【0048】
但し、前記終点P1,P2,Q1,Q2の位置は、曲げ加工前と曲げ加工後との何れの場合も、前記各回動曲げ部16,17と前記素材Wとが当接している点から定めれば良く、上述の位置に限定されない。例えば、曲げ加工後の各回動曲げ部16,17と素材Wの曲げ部分の当接している範囲であれば、任意に設定可能である。この場合、曲げ加工前の各回動曲げ部16,17の位置を、図示の例の位置から前記曲げ加工後に当接している長さの範囲の中で、図4の左右方向に移動させられる。なお、これに伴い、支点P,Qの位置も図示の例からずれる。何れにしても、素材Wの中立線Nの長さが、各曲げ部16,17,19による曲げ加工の前後でも変わらないように、前記支点P,Qを定めれば良い。
【0049】
このように、回動中心O、各支点P,Qを定めることにより、該素材Wの中立線Nの、曲げ加工後に前記各回動曲げ部16,17及び前記治具側曲げ部19により曲げられた部分を含む所定の長さを、曲げ加工前と曲げ加工後とで同じすることができる。即ち、曲げ加工前の前記始点Rから前記基準点O1までの前記中立線Nの長さZと、曲げ加工後の該始点Rから前記基準点O2までの該中立線Nの長さとが、同じとなる。
【0050】
なお、本実施の形態の場合、第一の治具13と第二の治具14とを90°相対回転させると共に、第一の回動曲げ部16及び第二の回動曲げ部17を各支点P,Qを中心に90°回動させているが、曲げ形状によっては、両治具13,14の回動角度と、前記各回動曲げ部16,17の回動角度とを変えても良い。例えば、S字形状を図示の例よりも緩やかにする場合には、前記両治具13,14の回動角度よりも、前記各回動曲げ部16,17の回動角度を小さくする。本実施の形態の構造の場合、回動角度θを0°<θ≦90°に設定できる。
【0051】
上述のように構成し作用する曲げ加工装置12のより具体的な構造の1例について、図5ないし図12により説明する。曲げ加工装置12は、第一の治具13と第二の治具14との回動軸15の軸方向にそれぞれ重ねて配置され、該回動軸15から偏心した位置を支点として回転する第一の回転部材21及び第二の回転部材22を備える。該各回転部材21、22は、前記第一の治具13と前記第二の治具14との回動と連動して、それぞれの支点を中心に回転可能に互いに係合されている。
【0052】
即ち、前記第一の治具13と前記第二の治具14とは、図10に示すように、該第一の治具13の端部で肉厚が薄い薄肉部23aに設けた、前記回動軸15と同心の第一の円筒部24に、該第二の治具14の端部で肉厚が薄い薄肉部23bに設けた、該回動軸15と同心の円孔25を嵌合することにより回動自在に連結されている。
【0053】
また、前記第一の回転部材21は外周面が円筒面状の第二の回動曲げ部17を、第二の回転部材22は外周面が円筒状の第一の回動曲げ部16を、それぞれ有する。該各回動曲げ部16,17の円筒面の曲率半径は、該素材Wの該各回動曲げ部16,17により曲げられた部分の内周面の曲率半径と、それぞれ同じとしている。また、該各回動曲げ部16,17の位置関係は、前述の図3、4で説明した通りである。したがって、前記第一の回転部材21の回転中心は、前述の図4に示した支点Qに、前記第二の回転部材22の回転中心は、同じく支点Pに、それぞれ相当する。
【0054】
また、前記第一の回転部材21に設けた第二の回動曲げ部17の突出量は、前記第二の回転部材22の板厚に前記第一の回動曲げ部16の突出量を足した量とする。このため、該第二の回転部材22には、後述するように、切り欠き31を形成し、前記第二の回動曲げ部17が突出することを許容している。
【0055】
また、前記第一の治具13は、図9に示すように、前記第一の円筒部24に互いの中心軸が偏心した第二の円筒部26及び第三の円筒部27を軸方向に重ねて配置している。前記第一の回転部材21及び第二の回転部材22は、図11、12に示すように、それぞれに設けた前記各回動曲げ部16,17の支点と同心の円孔28a、28bを、前記第二の円筒部26及び第三の円筒部27に嵌合することにより、それぞれ、該第二の円筒部26及び第三の円筒部27に回転自在に支持されている。
【0056】
また、前記第二の治具14及び前記第一の回転部材21は、円周方向所定位置にそれぞれ軸方向に突出する突起部29a,29bを有する。また、前記第一の回転部材21及び第二の回転部材22は、円周方向所定位置で前記突起部29a,29bに整合する位置に、それぞれ軸方向に貫通し周方向に対し傾斜した方向に長い長孔30a,30bを有する。
【0057】
なお、前記各長孔30a,30bの傾斜方向及び長さは、前記各回転部材21、22の前記回動軸15に対する偏心方向及び偏心量を考慮して、前記両治具13,14の回動に連動して前記各回転部材21,22が円滑に回動するように定める。また、前記各長孔30a,30bは、それぞれの側面(図7、8の下面)に開口し軸方向に凹んだ凹溝としても良い。該各凹溝についても周方向に対し傾斜した方向に長く形成する。また、突起部と長孔或は凹溝との位置関係は、逆であっても良い。
【0058】
そして、前記各突起部29a,29bを前記各長孔30a,30bにそれぞれ係合することにより、前記第一の治具13と前記第二の治具14との回動に連動して、前記第一の回転部材21及び前記第二の回転部材22を回転させる。
【0059】
即ち、両治具13,14が相対的に回動すると、前記第二の治具14に設けた突起部29aが第一の円筒部24(回動中心O)を中心として回動する。該突起部29aは前記第一の回転部材21の長孔30aに係合しており、該第一の回転部材21の回転中心となる第二の円筒部26の中心(支点Q)は前記第一の円筒部24の中心に対し偏心しているため、前記突起部29aが前記長孔30aに沿って移動しつつ回転力を伝達し、前記第一の回転部材21が回転する。
【0060】
また、前記第一の回転部材21が回転すると、該第一の回転部材21に設けた突起部29bが、前記第二の円筒部26(支点Q)を中心として回動する。該突起部29bは前記第二の回転部材22の長孔30bに係合しており、該第二の回転部材22の回転中心となる第三の円筒部27の中心(支点P)は前記第二の円筒部26の中心に対し偏心しているため、前記突起部29bが前記長孔30bに沿って移動しつつ回転力を伝達し、前記第二の回転部材22が回転する。
【0061】
また、前記第二の回転部材22は、周方向に長い切り欠き31を有する。そして、前記第一の回転部材21に設けた第二の回動曲げ部17を、前記切り欠き31内に配置している。前記切り欠き31の周方向長さは、前記第一の回転部材21と前記第二の回転部材22との相対的な回動量よりも大きくする。これにより、前記第一の回転部材21に設けた第二の回動曲げ部17と前記第二の回転部材22とを干渉させることなく、これら各部材21,22を連動して回動させることができる。
【0062】
また、前記第一の治具13及び前記第二の治具14は、薄肉部23a,23bを除く部分を厚肉部32a,32bとし、該各厚肉部32a,32b上に素材Wを配置するようにしている。このために、該各厚肉部32a,32b上に、該素材Wを挟むように抑え部18,18及び保持部33a,33bをそれぞれ配置している。前記両治具13,14に前記素材Wを配置した状態では、前記抑え部18,18の抑え面20と前記保持部33a,33bの保持面34とで、該素材Wを挟持する。そして、該素材Wが前記両治具13,14の回動方向と反対側に変位することを抑えると共に、回動時に、不用意に該素材Wが外れることを防止する。
【0063】
また、図5、7に示すように、前記各厚肉部32a,32bの前記素材Wを配置する側の面は、前記両治具13,14に前記第一の回転部材21及び第二の回転部材22を重ね合わせた状態で、該各回転部材21,22にそれぞれ設けた第一の回動曲げ部16と第二の回動曲げ部17との間部分に、前記素材Wが配置される位置とする。即ち、前記各厚肉部32a,32bの厚さを、薄肉部23a,23b、各回転部材21,22を足し合わせた厚さとほぼ同じとし、前記各厚肉部32a,32b上に配置された素材Wが、前記各回転部材21,22上に配置された各回動曲げ部16,17同士の間に配置されるようにしている。
【0064】
また、前記第一の治具13に設けた保持部33aの、薄肉部23a側の端面と抑え部18と対向する側の面との連続部を部分円筒状に形成し、該連続部を治具側曲げ部19としている。即ち、本実施の形態の場合、治具側曲げ部19を前記保持部33aの一部に形成している。該治具側曲げ部19の位置関係は、前述の図3、4で説明した通りである。
【0065】
また、該治具側曲げ部19は、ほぼ90°の角度を有する部分円筒面として、後述するように、前記両治具13,14の回動により素材Wを曲げる際に、該素材Wを部分円筒面に沿わせて曲げる。したがって、該部分円筒面の曲率半径は、該素材Wの前記治具側曲げ部19により曲げられた部分の内周面の曲率半径と同じとしている。なお、該部分円筒面は、90°ないし95°、好ましくは、92°ないし93°とする。90°よりも大きくすることが好ましいのは、素材Wの曲げ加工の際にスプリングバックを考慮して、該素材Wを90°以上曲げるためである。
【0066】
なお、前記第一の治具13に設けた保持部33aの薄肉部23a側の端面には、切り欠き35を形成している。該切り欠き35は、第一の回転部材21と第二の回転部材22との間の回転伝達のための突起部29bが、長孔30bから突出した場合でも、該突起部29bが前記保持部33aと干渉することを防止するために設けたものである。したがって、干渉の可能性がなければ、切り欠き35を省略しても良い。
【0067】
上述のように構成される曲げ加工装置12により、素材Wに曲げ加工を施す場合には、図13の(A)から(J)に示すように、第一の治具13と第二の治具14との回動に連動させて、第一の回動曲げ部16及び第二の回動曲げ部17を回動させる。該各回動曲げ部16,17は、前記両治具13、14の回動中心と偏心した第一の回転部材21と第二の回転部材22とを回転させることにより、図13の(A)から(J)に示すような軌跡を移動する。これにより、前記素材Wの3個所に同時に曲げ加工を施す事ができる。そして、例えば、前述したようなコイル8のコイルエンド部8,10を得られる。
【0068】
このように、本実施の形態によれば、3個所の曲げ加工を同時に行っているため、加工時間を短くできる。また、曲げ加工時に、素材Wが前記第一の治具13及び第二の治具14に対し変位しない(引き込みが生じない)ため、該素材Wと該両治具13,14との間で摺れ合いが生じることを防止でき、該素材Wに損傷が生じることを防止できる。また、曲げ加工時に該素材Wに引っ張り力が作用しないため、該素材Wの曲げ加工を正確に行える。該素材Wと前記各回動曲げ部16,17及び治具側曲げ部19との間で摺れ合いが生じることも、確実に防止できる。
【0069】
特に、回転電機のコイルを構成する平角線の加工に使用した場合、複数個所の曲げ加工を短時間で精度良く行える。即ち、平角線は、丸線と異なり、曲げ加工の際に方向性を有するため、複数個所に同時に曲げ加工を施しにくい。これに対して、本実施の形態の曲げ加工装置12によれば、このような平角線でも、容易に、且つ、短時間で精度良く曲げ加工を行える。また、曲げ加工の際に絶縁用のエナメル層を傷つけることがない為、良質な回転電機用コイルを得られる。
【0070】
なお、上述した実施の形態では、第一の治具13と第二の治具14との回動に連動して、第一の回転部材21及び第二の回転部材22を回動させる機構を、突起部29a,29bと長孔30a,30bとの係合によるカム機構により行っているが、前記機構は、別の周知のカム機構やリンク機構、歯車機構等としても良い。
【0071】
また、上述した実施の形態では、素材Wを3個所折り曲げる構成について説明したが、本発明の場合、回動曲げ部を備えた回転部材の数を増減させることにより、曲げ部の数を自由に設定できる。また、曲げる角度、曲げる方向等も、治具と回動曲げ部との連動機構を変更する(例えば、偏心位置を変える)等して、自由に設定可能である。
【0072】
更に、上述したような曲げ加工装置を複数連結させて、更に多くの曲げ加工を同時に行うことができる。即ち、本発明の場合、曲げ加工により素材が治具に対して変位しないため、複数の曲げ加工装置を連結して使用しても、曲げ加工時に素材を引っ張ることがなく、円滑に曲げ加工を行える。
【符号の説明】
【0073】
1 ステータ
2 ステータコア
3 マグネットワイヤ
4 コイル
5 スロット
6 ティース
7 一端面
8 一端側コイルエンド部
9 他端面
10 他端側コイルエンド部
11 スロット導体部
12 曲げ加工装置
13 第一の治具
14 第二の治具
15 回動軸
16 第一の回動曲げ部
17 第二の回動曲げ部
18 抑え部
19 治具側曲げ部
20 抑え面
21 第一の回転部材
22 第二の回転部材
23a,23b 薄肉部
24 第一の円筒部
25 円孔
26 第二の円筒部
27 第三の円筒部
28a,28b 円孔
29a,29b 突起部
30a,30b 長孔
31 切り欠き
32a,32b 厚肉部
33a,33b 保持部
34 保持面
35 切り欠き
W 素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の素材に複数個所の曲げ加工を施す曲げ加工装置において、
回動軸を中心に回動自在に連結される第一の治具及び第二の治具と、
前記第一の治具と前記第二の治具との回動に連動して、それぞれの支点を中心として回動し、前記素材を曲げる複数の回動曲げ部と、を備え、
前記第一の治具は、回動方向と反対側に前記素材の変位を抑える抑え部と、前記両治具の回動により前記素材を曲げる治具側曲げ部と、を有し、
前記第二の治具は、回動方向と反対側に前記素材の変位を抑える抑え部を有し、
前記各回動曲げ部のそれぞれの支点及び前記治具側曲げ部を、前記素材に複数個所の曲げ加工を施す際に、該素材が前記両治具に対し変位しないように、前記回動軸からそれぞれオフセットさせて配置し、
前記第一の治具と前記第二の治具との回動に連動させて、前記各回動曲げ部を回動させることにより、前記素材の複数個所に同時に曲げ加工を施すことを特徴とする曲げ加工装置。
【請求項2】
前記回動軸の回動中心は、
前記治具側曲げ部と前記素材とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部の中心とを通る仮想線が、該素材の中立線と交差する点を始点とし、
前記始点から、曲げ加工の際に前記治具側曲げ部及び前記各回動曲げ部により曲げられる部分を含む、前記素材の中立線の長さが、該素材の曲げ加工前の状態と曲げ加工後の状態とで同じである長さ離れた、該中立線上の位置を基準点とした場合に、
該基準点までの距離が、曲げ加工前と曲げ加工後とで同じで、
前記回動中心と曲げ加工前の基準点とを結ぶ直線と、該回動中心と曲げ加工後の基準点とを結ぶ直線とが成す角度が、前記第一の治具と前記第二の治具との回動角度に応じた角度となるように定める、請求項1に記載の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記各回動曲げ部のそれぞれの支点は、
前記治具側曲げ部と前記素材とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該治具側曲げ部の中心とを通る仮想線が、該素材の中立線と交差する点を始点とし、
前記各回動曲げ部と前記素材とが、曲げ加工前と曲げ加工後とで当接している同じ点と、該回動曲げ部の中心とを通る仮想線が、該素材の中立線と交差するそれぞれの点を終点とした場合に、
前記始点と終点との間の中立線の長さが、曲げ加工前と曲げ加工後とで同じとなるように、前記各回動曲げ部がそれぞれ配置されるように定める、請求項1又は2に記載の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記終点は、曲げ加工後に前記各回動曲げ部によりそれぞれ曲げられた素材の各曲げ部分の、それぞれ中立線上の中央とする、請求項3に記載の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記回動軸の軸方向にそれぞれ重ねて配置され、該回動軸から偏心した位置を支点として回転する複数の回転部材を備え、
前記各回転部材は、それぞれ前記回動曲げ部を有し、前記第一の治具と前記第二の治具との回動と連動して、それぞれの支点を中心に回転可能に互いに係合されている、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記素材の曲げ個所が3個所であって、
前記第一の治具と前記第二の治具とは、該第一の治具に設けた回動軸と同心の第一の円筒部に、該第二の治具に設けた回動軸と同心の円孔を嵌合することにより回動自在に連結され、
前記第一の治具は、前記第一の円筒部に互いの中心軸が偏心した第二の円筒部及び第三の円筒部を軸方向に重ねて配置し、
前記各回転部材である第一の回転部材及び第二の回転部材は、それぞれに設けた前記各回動曲げ部の支点と同心の円孔を、前記第二の円筒部及び第三の円筒部に嵌合することにより、それぞれ、該第二の円筒部及び第三の円筒部に回転自在に支持され、
前記第二の治具及び前記第一の回転部材は、それぞれ軸方向に突出する突起部を有し、
前記第一の回転部材及び第二の回転部材は、それぞれ軸方向に凹み或は貫通し周方向に対し傾斜した方向に長い凹溝或は長孔を有し、
前記各突起部を前記凹溝或は長孔に係合することにより、前記第一の治具と前記第二の治具との回動に連動して、前記第一の回転部材及び前記第二の回転部材を回転させる、請求項5に記載の曲げ加工装置。
【請求項7】
前記第二の回転部材は、前記第一の回転部材と該第二の回転部材との相対的な回動量よりも大きい周方向長さの切り欠きを有し、前記第一の回転部材に設けた回動曲げ部を前記切り欠き内に配置する、請求項6に記載の曲げ加工装置。
【請求項8】
前記所定の素材が、回転電機のコイルの巻線を構成する、断面矩形状の平角線からなる、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の曲げ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−207871(P2010−207871A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57466(P2009−57466)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】