説明

曲面印刷装置及び曲面印刷装置の印刷制御方法

【課題】簡易な手法により、人の爪部のような湾曲形状の印刷対象面に対しても高精細な印刷を行うことのできる曲面印刷装置及び印刷制御方法を提供する。
【解決手段】インク噴射方向における印刷部40との距離が幅方向の中央部では小さな距離L1で、幅方向の端部に行くほど大きな距離L2となる湾曲形状をなす爪領域Taを有する爪部Tに対して印刷を行うネイルプリント装置1であって、爪領域Taの幅方向の中央部の印刷ピッチP1よりも幅方向の両端部の方の印刷ピッチP2が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルに応じて、爪領域Taに印刷すべき画像の元画像データから爪領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成し、この印刷用データにしたがって爪領域Taに印刷を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面印刷装置及び印刷制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷手段として、記録ヘッドからインクを噴射して対象物に印刷を施すインクジェット方式の印刷装置が知られている。
インクジェット方式の印刷装置の場合、記録ヘッドを印刷対象物の上方において水平方向に移動させながらで印刷を行うことが一般的である。
【0003】
しかし、印刷対象物の印刷対象面が平面でなく、例えば人の爪部のように一端側から見た場合に左右両端部が低く中心部近傍が高くなっていて全体に丸みを帯びた湾曲形状をしている場合には、記録ヘッドに対して平行に対向していない(傾斜している)面では、その傾斜の角度によって印字濃度が変動したり、印刷すべき画像(デザイン)に伸びや歪み等を生ずる。
すなわち、印刷対象面の端部が傾斜している場合には、印刷対象面を上方から平面的に見た場合の見かけ上の爪幅寸法よりも、傾斜分も含めた実際の爪幅寸法は大きくなる。このため、印刷すべき画像のデータを見かけ上の爪幅寸法にしたがって均等に割り付けると、爪の端部では爪の中央部よりも印字濃度が薄くなり、印刷すべき画像(デザイン)が高さ方向に伸びてしまう。
【0004】
そこで、人の爪部に印刷を施すネイルアート装置において、爪部の輪郭を認識する輪郭認識手段と、爪部の凹凸を認識する凹凸認識手段と、認識された爪部の輪郭・形状を立体的に表示する三次元表示手段とを備え、印刷対象物である爪部の凹凸まで含めた輪郭・形状を正確に把握し、その三次元データを取得して、湾曲している部分についてはその傾斜部分の角度に応じてインクを濃縮して印刷するという構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような構成とすることにより、爪部のような湾曲形状の印刷対象面に対しても全体に均一な印字濃度で印刷することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3016147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成では、爪部等の印刷対象物の形状を正確に測定するために装置が大型化したり、カメラ等により取得した情報を演算処理して数値化するための手段が必要となることから、装置コストが高くなるという問題がある。
また、測定や演算処理に要する処理時間が多く必要となるため、印刷処理に要する時間が長くなり、使い勝手が悪いという問題もあった。
【0007】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な手法により、人の爪部のような曲面形状の印刷対象面に対しても高精細な印刷を行うことのできる曲面印刷装置及び印刷制御方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の曲面印刷装置は、
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影手段と、
前記撮影手段によって得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定手段と、
前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データを記憶する元画像データ記憶手段と、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルを記憶する基本テーブル記憶手段と、
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成手段と、
前記印刷用データ生成手段により生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の曲面印刷装置において、
前記基本テーブル記憶手段は、前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法に応じて前記ピッチ調整基本テーブルを複数種類記憶しており、
前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法を測定する高さ寸法測定手段と、
この高さ寸法測定手段により取得された前記印刷対象物の高さ寸法に応じて、当該印刷対象物に適合する前記ピッチ調整基本テーブルを前記基本テーブル記憶手段に記憶されている複数種類の中から選択するテーブル選択手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記テーブル選択手段により選択された前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴としている。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の曲面印刷装置において、
前記高さ寸法測定手段は、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を測定して、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を取得するものであることを特徴としている。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の曲面印刷装置において、
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて、前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法に対応した当該印刷対象面の印刷に適用される個別のピッチ調整テーブルを作成するピッチ調整テーブル作成手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記ピッチ調整テーブル作成手段により作成された前記ピッチ調整テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴としている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の曲面印刷装置において、
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルは、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際のインクの噴射回数が多くなるように対応付けられた噴射量調整基本テーブル、及び/又は、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が多くの単位画素データが割り付けられるように前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データにおける画素を再配分する画像変換基本テーブルであり、
前記印刷用データ生成手段は、前記噴射量調整基本テーブル及び前記画像変換基本テーブルの少なくともいずれか1つに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成するものであることを特徴としている。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の曲面印刷装置において、
前記印刷対象物は人の指の爪部であり、
前記印刷対象面は爪領域であり、
前記印刷手段は、人の爪部の表面にネイルプリントを施すものであることを特徴としている。
【0014】
また、請求項7に記載の印刷制御方法において、
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置の印刷制御方法であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定ステップと、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルに応じて、前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データから前記幅寸法測定ステップにおいて測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成ステップと、
前記印刷用データ生成ステップにおいて生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、人の爪部のような湾曲形状の印刷対象面に対して印刷を行う場合に、印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように印刷ピッチを調整するピッチ調整基本テーブルを備え、このテーブルに応じて印刷を行うことにより、印刷対象面の端部まで高精細な印刷を行うことのできるとの効果を奏する。
このため、湾曲形状をなす印刷対象面の形状を正確に測定するための特別な装置やカメラ等により取得した情報を演算処理して数値化するための手段を必要とせず、装置コストのかからない簡易な手法により高精細な印刷を実現することができる。
また、測定や演算処理等に要する処理時間が短くて済むため、迅速な印刷処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るネイルプリント装置の一例を概念的に示した斜視図で、蓋体を開いた状態を示している。
【図2】図1のネイルプリント装置の装置本体を概念的に示した斜視図である。
【図3】図1のネイルプリント装置の印刷指固定手段を示した断面図で、印刷指として人差し指から小指を印刷指挿入部に挿入した際の固定態様を示している。
【図4】図1のネイルプリント装置の正面側の断面図である。
【図5】図1のネイルプリント装置の側断面図である。
【図6】爪部の高さ寸法を測定するための手段を説明する平面図である。
【図7】図6の爪部の高さ寸法を測定するための手段を正面から見た要部断面図である。
【図8】本実施形態に係るネイルプリント装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
【図9】爪領域の一例を示す説明図である。
【図10】爪形状パターンの分類例を示す説明図である。
【図11】(A)は、爪形状パターンAにあたる爪部の一例を示す断面図であり、(B)は、爪形状パターンBにあたる爪部の一例を示す断面図であり、(C)は、爪形状パターンCにあたる爪部の一例を示す断面図である。
【図12】(A)は、格子状のネイルデザインが施された爪領域の一例を示す平面図であり、(B)は、(A)に示す爪領域の斜視図である。
【図13】ピッチ調整を行わずに印刷した場合の図12(B)に示す爪領域のA点の拡大図である。
【図14】噴射回数基本テーブルの一例を示す図である。
【図15】爪部の高さと必要濃度率との関係を示すグラフである。
【図16】ライン長さ10000μm部分の噴射回数調整テーブルの一例を示す図である。
【図17】ライン長さ8000μm部分の噴射回数調整テーブルの一例を示す図である。
【図18】ライン長さ5000μm部分の噴射回数調整テーブルの一例を示す図である。
【図19】ライン長さ200μm部分の噴射回数調整テーブルの一例を示す図である。
【図20】(A)は、噴射回数の調整を行って印刷した場合の図12(B)に示す爪領域のA点の拡大図であり、(B)は、噴射回数の調整を行い、間引き印刷をした場合の図12(B)に示す爪領域のA点の拡大図である。
【図21】間引き印刷を説明する概念図である。
【図22】本実施形態における印刷制御処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図23】図22の印刷制御処理における爪印刷処理を示すフローチャートである。
【図24】画像変換基本テーブルの一例を示す図である。
【図25】ライン長さ10000μm部分の画像変換調整テーブルの一例を示す図である。
【図26】ライン長さ10000μm部分の画像変換調整テーブルの一例を示す図である。
【図27】ライン長さ5000μm部分の画像変換調整テーブルの一例を示す図である。
【図28】(A)は、画像変換の概念図であり、(B)は、単位画素データの割り付け例を示す説明図である。
【図29】画像変換調整テーブルを適用して印刷した場合について説明する概念図である。
【図30】画像変換調整テーブルを適用して印刷した場合の図12(B)に示す爪領域のA点の拡大図である。
【図31】(A)は、基準点を示す指の上面図であり、(B)は、(A)に示す指を横から見た側面図である。
【図32】(A)は、基準点を上から撮影する状態を示す断面図であり、(B)は、(A)に示す指を回転させて真横になった状態を示す断面図である。
【図33】爪部の高さ寸法を測定する処理を示すフローチャートである。
【図34】図32に示すおける爪部の高さ寸法を測定する手段の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
先ず、図1から図23を参照しつつ、本発明に係る曲面印刷装置の第1の実施形態について説明する。
ここで、曲面印刷装置とは、印刷手段である記録ヘッドのインク噴射方向における印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う印刷装置である。この印刷装置によって印刷することにより、印刷対象物の印刷対象面が平面でなく、例えば人の爪部のように一端側から見た場合に左右両端部が低く中心部近傍が高く盛り上がっていて全体に丸みを帯びた湾曲形状をしている場合にも、端部まで高精細な印刷を行うことができる。
なお、以下の実施形態においては、曲面印刷装置が、人の指の爪部に印刷を施すネイルプリント装置である場合を例として説明するが、曲面印刷装置は、ネイルプリント装置に限定されず、印刷対象面が湾曲形状を含む曲面形状である対象物に対して印刷を施すものであれば広く適用することが可能である。
【0018】
図1は、本実施形態におけるネイルプリント装置の外観を示す斜視図であり、図2は、ネイルプリント装置の内部構成を示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、このネイルプリント装置1は、ケース本体2及び蓋体4を備えている。このケース本体2及び蓋体4は、ケース本体2の上面後端部に設けたヒンジ3を介して、互いに連結されている。
【0020】
上記ケース本体2は平面視で長円状に形成されている。このケース本体2には前側には開閉板2cが起倒可能に設けられている。この開閉板2cは、ケース本体2の前面下端部に設けたヒンジ(図示せず)を介して、ケース本体2に連結されている。この開閉板2cは、ケース本体2の前面を開閉するためのものである。
また、ケース本体2の天板2fには後述する操作部12が設置されており、天板2fのほぼ中央部には表示部13が設定されている。
なお、ケース本体2及び蓋体4の形状、構成はここに例示したものに限定されない。
【0021】
また、ケース本体2にはネイルプリント装置1の装置本体10が収容されている。この装置本体10は、図2に示す印刷指固定手段を構成している印刷指固定部20、撮影手段を構成している撮影部30、印刷手段を構成している印刷部40及び制御手段を構成している制御装置50(図8参照)を備えている。これら印刷指固定部20、撮影部30、印刷部40及び制御装置50は機枠11に設けられている。
なお、機枠11は下部機枠11a及び上部機枠11bによって構成されている。そして、下部機枠11aは箱状に形成され、ケース本体2の内部下方に設置され、上部機枠11bは下部機枠11aの上方で且つケース本体2の内部上方に設置されている。
【0022】
印刷指固定部20は、機枠11の中の下部機枠11aに設けられている。この下部機枠11aに設けられた印刷指挿入部20a、非印刷指挿入部20b及び掴み部20cによって印刷指固定部20が構成されている。
ここで、印刷指挿入部20aは、印刷しようとする爪部Tに対応する指(以下「印刷指」という。)U1を挿入するめための指挿入部である(図3参照)。印刷指挿入部20aの底面(印刷指載置面)は、印刷指U1を載置する指載置手段として機能する。印刷指U1の撮影や印刷は、印刷指U1がこの指載置手段としての印刷指挿入部20aの印刷指載置面に載置された状態で行われる。
また、非印刷指挿入部20bは、印刷指以外の指(以下「非印刷指」という。)U2を挿入するための指挿入部である(図3参照)。
また、掴み部20cは、印刷指挿入部20aに挿入された印刷指U1と、非印刷指挿入部20bに挿入された非印刷指U2とで挟持することが可能な部分である。本実施形態において、この掴み部20cは印刷指挿入部20aと非印刷指挿入部20bとを仕切る隔壁21によって構成されている。
【0023】
この隔壁21の上面は平坦な印刷指載置面を構成している。この隔壁21の指挿入側端部には膨出部22が形成されている。この膨出部22は、印刷指挿入部20a及び非印刷指挿入部20bに印刷指U1及び非印刷指U2を深く挿入した際に、印刷指U1及び非印刷指U2の付け根U3が当接する部分に形成されている。膨出部22は、印刷指U1の腹全体が印刷指載置面に当接した状態で、印刷指U1と非印刷指U2とで隔壁21(掴み部20c)を強く挟持することができるように、指挿入方向の断面が、隔壁21の下面から下方に向けて膨出するように円形となっている。なお、膨出部22の形状は、断面円形に限定されることなく、断面楕円形,多角形等の非円形であってもよい。
【0024】
例えば、左手の親指以外の4本の指(人差し指、中指、薬指及び小指)が印刷指U1となる場合には、図3に示すように、ユーザは印刷指挿入部20aに4本の印刷指U1を挿入し、非印刷指挿入部20bに非印刷指U2である親指を挿入する。この場合、ユーザが印刷指挿入部20aに挿入された印刷指U1と、非印刷指挿入部20bに挿入された非印刷指U2とで掴み部20cを挟持することにより、印刷指U1が掴み部20cの上で固定される。
また、親指のみが印刷指U1となる場合には、親指(印刷指U1)を印刷指挿入部20aに挿入さし、親指以外の4本の指(非印刷指U2)を非印刷指挿入部20bに挿入する。この場合にも、ユーザが印刷指U1と非印刷指U2とで掴み部20cを挟持することで印刷指U1が固定される。
【0025】
また、図4は、本実施形態に係るネイルプリント装置1の正面側の断面図であり、図5は、ネイルプリント装置1の側断面図である。
図4及び図5に示すように、撮影部30は、機枠11の中の上部機枠11bに設けられている。本実施形態において、撮影部30は、カメラ32、照明灯33及びスリット光照射手段35を備えている。
すなわち、上部機枠11bに設置された基板31の中央部下面には、ドライバーを内蔵した200万画素程度以上の画素を有するカメラ32が設置されている。また、基板31には、カメラ32を囲むように白色LED等の照明灯33が設置されている。
この撮影部30は、指載置手段である印刷指挿入部20aに載置された印刷指U1を照明灯33によって照明し、カメラ32によってその印刷指U1の爪部T(印刷対象物)の爪領域Ta(印刷対象面)を撮影して、印刷対象領域画像である爪領域画像を得る撮影手段として機能する。
また、本実施形態では、図6及び図7に示すように、照明灯33とは別個の照明手段として、印刷指U1の爪部Tに対してスリット光を斜め方向から照射可能に構成されたスリット光照射手段35が設けられている。スリット光を照射することにより爪部Tの表面にスリット像が表出し、これをカメラ32で撮影してスリット像を含む爪領域画像を取得するようになっている。取得されたスリット像は後述する高さ寸法測定部512に送られて分析され、爪部Tの高さが算出される。このように、本実施形態では、撮影部30と高さ寸法測定部512とにより爪部Tの高さ方向の寸法を測定する高さ寸法測定手段(爪形状取得手段)が構成されている。なお、別途スリット光照射手段35を設けずに、照明灯33の少なくとも一部が、爪部Tに対してスリット光を斜め方向から照射可能に構成されていてもよい。
この撮影部30は、後述する制御装置50の制御部51に接続され、該制御部51によって制御されるようになっている。
【0026】
また、印刷部40は、印刷対象物である爪部Tの印刷対象面である爪領域Ta(図6等参照)に対してインクを噴射して色や模様等の印刷を施す印刷手段であり、主に上部機枠11bに設けられている。
すなわち、図4及び図5に示すように、上部機枠11bの両側板には、2本のガイドロッド41が平行に架設されている。このガイドロッド41には、主キャリッジ42が摺動自在に設置されている。また、図5に示すように、主キャリッジ42の前壁42aおよび後壁42bには2本のガイドロッド44が平行に架設されている。このガイドロッド44には、副キャリッジ45が摺動自在に設置されている。この副キャリッジ45の下面中央部には、印刷ヘッド46が搭載されている。
本実施形態において、この印刷ヘッド46は、インクを微滴化し、被印字媒体に対し直接に吹き付けて印刷を行うインクジェット方式の印刷ヘッドである。なお、印刷ヘッド46の記録方式はインクジェット方式に限定されない。
【0027】
主キャリッジ42は動力伝達手段(図示せず)を介してモータ43に連結され、モータ43の正逆回転によって、ガイドロッド41に沿って左右方向に移動ように構成されている。また、副キャリッジ45は動力伝達手段(図示せず)を介してモータ47に連結され、モータ47の正逆回転によって、ガイドロッド44に沿って前後方向に移動するように構成されている。
また、下部機枠11aには、印刷ヘッド46にインクを供給するためのインクカートリッジ48が設けられている。インクカートリッジ48は、図示しないインク供給管を介して印刷ヘッド46と接続されており、適宜印刷ヘッド46にインクを供給するようになっている。なお、印刷ヘッド46自体にインクカートリッジを搭載する構成としてもよい。
【0028】
印刷部40は、これらガイドロッド41、主キャリッジ42、モータ43、ガイドロッド44、副キャリッジ45、印刷ヘッド46、モータ47及びインクカートリッジ48等を備えて構成されている。この印刷部40のモータ43、印刷ヘッド46、モータ47は、後述する制御装置50の制御部51に接続され、該制御部51によって制御されるようになっている。
【0029】
操作部12は、ユーザが各種入力を行うための入力手段である。
操作部12には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、その他各種の入力を行うための操作釦121が配置されている。
【0030】
表示部13は、例えば液晶パネル(液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display))等で構成された表示手段である。
なお、表示部13の表面に、タッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、図示しないスタイラスペンや指先等によるタッチ操作により、表示部13の表面をタッチすることによっても各種の入力を行うことができるように構成される。
【0031】
表示部13には、例えば、印刷指U1を撮影した指爪画像やその中の爪領域Ta、印刷指U1の爪領域Taに印刷すべき画像としてのネイルデザイン画像、デザイン確認用のサムネイル画像等が表示されるようになっている。
【0032】
また、制御装置50は上部機枠11bに設けられている。この制御装置50は、基板31に設置されており、図8に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)等によって構成されている制御部51、記憶手段としてのROM(Read Only Memory)52及びRAM53(Random Access Memory)等を備えるコンピュータである。なお、記憶手段は、制御装置50内のROM52、RAM53に限定されず、他に記憶手段が設けられていてもよい。
【0033】
ROM52には、爪部Tの高さ方向の寸法を測定する爪高さ測定プログラム、爪部Tの幅方向の寸法を測定する爪幅測定プログラム、ユーザの爪部Tの形状をパターン分類して最適なテーブルを選択するテーブル選択プログラム、ユーザの爪部Tの形状に対応したピッチ調整テーブルを生成するテーブル生成プログラム、印刷用のデータを生成するための印刷用データ生成プログラム、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、制御装置50はこれらのプログラムを実行してネイルプリント装置1の各部を制御するようになっている。
また、本実施形態においてROM52は、元画像データ、パターン分類用データ、ピッチ調整基本テーブルを備えている。
【0034】
ここで、元画像データは、印刷対象面である印刷指U1の爪部Tの爪領域Taに印刷すべき画像(ネイルデザイン)の元画像データであり、ROM52は、この元画像データを記憶する元画像データ記憶手段として機能する。
【0035】
また、パターン分類用データは、後述するテーブル選択部51が、印刷対象物である爪部Tを、印刷部40の記録ヘッド46からのインク噴射方向における高さ寸法に応じてパターン分類するために必要なデータである。
本実施形態では、テーブル選択部は、爪部Tの幅方向の端部が指の爪床の皮膚から離れる両サイドの部分(これを「ストレスポイントSp」という。なお、図9においては、左側のストレスポイントをSpL、右側のストレスポイントをSpRとしている。)における爪部Tの幅方向の断面において端部から1000μm中央部に寄った位置(これを以下「基準位置P」とする(図10参照)。)の高さ寸法に応じて爪部Tを3つの爪形状パターンA〜Cに分類するようになっており、パターン分類用データは、この基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法の閾値である。
【0036】
図10は、本実施形態においてテーブル選択部により分類される爪形状パターンの例を示した図である。本実施形態では、3つの爪形状パターンA〜Cの閾値データがパターン分類用データとしてROM52に記憶されている。
すなわち、図10に示すように、爪形状パターンAは、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が2000μmよりも高いか否かが閾値となっており、この高さ寸法が2000μmよりも高い場合には爪形状パターンAと分類される。また、爪形状パターンBは、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が、1000μm以上2000μm以下であることが閾値となっており、この高さ寸法がこの範囲内の値をとる場合には爪形状パターンBと分類される。また、爪形状パターンCは、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が、1000μmよりも低いか否かが閾値となっており、この高さ寸法が1000μmよりも低い場合には爪形状パターンCと分類される。
【0037】
なお、基準位置Pの位置や閾値の値は一例であり、上記数値に限定されない。
また、爪形状パターンの分類のための閾値の設定の仕方は、ここに例示したものに限定されない。例えば、爪部の幅方向の断面の端部同士をつないだ直線と爪部Tの断面端部における立ち上がり角度αに応じて閾値を設定してもよい。
すなわち、図10及び図11に示すように、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が大きい場合には、端部における立ち上がり角度αも大きく、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が小さい場合には端部における立ち上がり角度αも小さくなる。例えば、本実施形態では、爪形状パターンAでは、立ち上がり角度αは60度以上であり(図11(A)参照)、爪形状パターンBでは、立ち上がり角度αは45度以上であり(図11(B)参照)、爪形状パターンCでは、立ち上がり角度αは45度未満となっている(図11(C)参照)。このため、立ち上がり角度αの値を閾値として規定することによって、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法の値を閾値として規定する場合と同様に爪形状のパターン分類を行うことができる。
また、本実施形態では、爪形状パターンをA〜Cの3種類に分類する場合を例としたが、爪形状パターンの数はこれに限定されず、これより少なくてもよいし、さらに多くの爪形状パターンの閾値を設定しておき、より細かく爪部Tの形状を分類することができるようにしてもよい。
【0038】
図11(A)〜(C)に示すように、爪部Tの断面の幅方向に水平に一定間隔Δxを刻んだ場合に、このΔxあたりの爪部Tの表面長さをΔLとすると、ΔLは、ΔL=Δx/cosαとの式で表すことができる。図11(A)は、爪形状パターンAの場合を表しており、図11(B)は、爪形状パターンBの場合を表しており、図11(C)は、爪形状パターンCの場合を表している。
図11(A)に示す爪形状パターンAのように、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が大きく、端部における立ち上がり角度αも大きい場合には、爪部Tの端部の表面長さΔLは長くなる。
他方、図11(C)に示す爪形状パターンCのように、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法が小さく端部における立ち上がり角度αも小さい場合には、爪部Tの端部の表面長さΔLは短くなる。
また、ΔLの値は、爪部Tの幅方向の中央部に行くにしたがって、爪部Tの断面の幅方向に水平に一定間隔を刻んだ長さ寸法であるΔxの値に近づいていく。
【0039】
例えば図12(A)及び(B)に示すように、幅方向(図12(A)及び(B)等においてWt)の中央部が高く盛り上がり、幅方向Wtの端部に行くほど低くなる湾曲形状をなす爪部T(印刷対象物)の爪領域Ta(印刷対象面)全体に格子柄(図12(B)におけるA点部分の拡大図を図13に示す。)を印刷する場合、図13に示すように、ΔLの値が大きいところでは、ΔLの値が小さいところと同じ印刷ピッチで印刷を行うと、爪部Tの長さ方向Htには均一であるが、爪部Tの幅方向Wtの端部に行くに従って印刷濃度が薄くなり、デザインも爪部Tの幅方向(高さ方向)Wtに延びてしまう。
このため、幅方向Wtの端部においても平面部分と同様の印刷濃度で伸びや歪み等のない画像の印刷を行うためには、ΔLの値が大きい部分において、ΔLの値が小さい部分よりも印刷ピッチが細かくなるように調整する必要がある。
【0040】
ピッチ調整基本テーブルは、このような印刷ピッチの調整を行うためのテーブルであり、印刷対象面である爪領域Taの幅方向Wtの中央部よりも幅方向Wtの両端部の方が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたテーブルである。本実施形態において、ROM52は、ピッチ調整基本テーブルを記憶する基本テーブル記憶手段として機能する。
本実施形態では、ピッチ調整基本テーブルとして、爪領域Ta(印刷対象面)の幅方向Wtの中央部よりも幅方向Wtの両端部の方が印刷部40による印刷の際のインクの噴射回数が多くなるように対応付けられた噴射回数基本テーブルが記憶されている。
【0041】
図14は、ピッチ調整基本テーブルとしての噴射回数基本テーブルの一例である。図14に示すように、噴射回数基本テーブルは、上記爪形状パターンA〜Cに応じて3種類用意されている。噴射回数基本テーブルは、幅方向Wtの両端部が低く中央部近傍が高く盛り上がった湾曲形状をなす印刷対象面である爪領域Taを有する爪部Tの全域において印刷に必要な記録濃度(以下「必要濃度」とする。)が確保されるようにインクの噴射回数を調整するものである。
【0042】
ここで、図15を参照しつつ、爪部Tにおける必要濃度について説明する。
図15は、一般的な爪部Tの形状である幅方向Wtの両端部が低く中央部近傍が高く盛り上がった湾曲形状をした爪部Tについて、必要濃度を確保するために必要な濃度率を示す必要濃度率と、爪部Tの断面の高さ寸法との関係の一例を表したグラフである。なお、図15では、爪部Tの幅方向の寸法が8000μmであり、爪部Tの断面の高さ方向の寸法が最も高い中央部近傍で3000μm程度である場合を例としている。
ここで、必要濃度率とは、爪部Tの断面幅方向に水平に一定間隔Δxを刻んだ場合(図11(A)〜(C)参照)に、このΔxに対応する爪部表面の実際の長さ寸法ΔL(図11(A)〜(C)参照)を、Δxで除したもの(ΔL/Δx)である。
平面に対して印刷する場合(すなわち、爪部Tの断面幅方向に水平に刻んだ一定間隔Δxと、これに対応する爪部表面の実際の長さ寸法ΔLとがほぼ等しい場合)には、必要濃度率は「1」となり、Δxに対応する爪部表面の実際の長さ寸法ΔLが長くなるにしたがって必要濃度率の値は大きくなる。
爪部Tの高さや盛り上がり方には人により個人差があるが、爪領域が湾曲し曲面となっている部分でも、例えば図15の一点鎖線で示すように、爪部Tの両端部近傍以外では必要濃度率(ΔL/Δx)はほぼ一定の「1」を示している。すなわち、この領域では平面に対して印刷する場合とほぼ同等の記録濃度で印刷すれば足りる。これに対して、左右の端部からそれぞれ中央部に向かって1000μmまでの範囲では、必要濃度率が大きくなっており、最も端部に近いあたりでは必要濃度率の値は「4」程度となっている。
【0043】
噴射回数基本テーブルは、このような爪部Tにおける必要濃度率に対応して、図14に示すように、爪部Tの中央部及びその近傍には、平面におけるインクの噴射回数と同じ回数である、基準となる平均噴射回数(これを「基準噴射回数」という。)を示す「1」を、爪部Tの端部にはこの基準噴射回数の2倍から4倍の平均噴射回数を示す「2」「3」「4」のいずれかがそれぞれ対応付けられている。
【0044】
なお、図15に示すように、爪部Tにおける必要濃度率が「1」以外である部分(すなわち、ピッチ調整が必要となる部分)は、爪部Tの幅方向の端部から中央部にかけての2000μm以内の範囲内にほぼ収まっていることから、噴射回数基本テーブルは、幅方向の一端部から中央部にかけての2000μm分の噴射回数を100μmを1単位(以下「1項」とする。)として指定したものであり、図14に示すように、1項から20項までとなっている。
また、爪部Tは、幅方向の中央部を中心としてほぼ左右対称となっていることから、噴射回数基本テーブルは、一端部から中央部にかけての2000μm分(1項〜20項)のみで構成されており、爪部Tの逆側については噴射回数基本テーブルにおいて対応付けられた数値を左右反転させて適用することで対応する。
【0045】
なお、本実施形態では、ピッチ調整基本テーブルが記録ヘッド46からインクを噴射する噴射回数を調整する噴射回数基本テーブルである場合を例示したが、ピッチ調整基本テーブルはインクの噴射量を調整可能なものであればよく、ここに例示したものに限定されない。インクの噴射量は、1回の噴射あたりのインク量と噴射回数とを乗じたものであり、この両者又はいずれか一方を調整することによって噴射量を調整するものであればよい。
【0046】
図14に示すように、例えば、爪形状パターンAに対応する噴射回数基本テーブルでは、爪部Tの幅方向の最端部の1項(図14において「1」)に最も噴射回数の多い「4」(すなわち、平面における噴射回数である基準噴射回数の4倍)が対応付けられ、これに隣接する8項(図14において「2」から「9」)に次に噴射回数の多い「3」(すなわち、平面における噴射回数である基準噴射回数の3倍)が対応付けられ、さらにこれに隣接する4項(図14において「10」から「13」)に次に必要濃度率の高い「2」(すなわち、平面における噴射回数である基準噴射回数の2倍)が対応付けられ、これ以外には全て基準噴射回数である「1」がそれぞれ対応付けられている。
また、例えば、爪形状パターンBに対応する噴射回数基本テーブルでは、爪部Tの幅方向の最端部の2項(図14において「1」及び「2」)には噴射回数「3」(すなわち、平面における噴射回数である基準噴射回数の3倍)が対応付けられ、これに隣接する6項(図14において「3」から「8」)には噴射回数「2」(すなわち、平面における噴射回数である基準噴射回数の2倍)が対応付けられ、これ以外には全て基準噴射回数である「1」がそれぞれ対応付けられている。
なお、各数値(噴射回数)については、ここでは爪部Tの幅方向の最端部の1項から10項(図14において「1」から「10」)まで(すなわち、爪部Tの幅方向の端部から1000μmまで)の噴射回数の平均値が当該範囲内における「必要濃度率」の平均値になるように爪部Tの形状を考慮して決められているが、当該噴射回数の平均値は、爪形状パターンAでは3以上、爪形状パターンBでは1.5〜3.0、爪形状パターンCでは1〜1.5の範囲であるようにすることが望ましい。
また、爪部Tの幅方向の最端部の1項から10項(図14において「1」から「10」)まで(すなわち、爪部Tの幅方向の端部から1000μmまで)において、印刷部40から噴射されるべきインクの記録濃度の平均値は、爪形状パターンAでは平面部分の2倍以上、爪形状パターンBでは平面部分の1.5倍〜2倍、爪形状パターンCでは平面部分の1.5倍未満とすることが望ましい。
【0047】
RAM53は、各種データ等を記憶する記憶領域と、制御部51が各種処理を行う際にプログラム等を展開する作業領域(図示せず)とを備えている。
本実施形態においてRAM53の記憶領域には、撮影部30により撮影された印刷対象領域画像としての爪領域画像、幅寸法測定部511によって測定された爪領域画像の幅方向の長さ寸法(図9参照)、高さ寸法測定部512により取得された印刷部40のインク噴射方向における爪部Tの高さ寸法、テーブル選択部513によるユーザの爪部Tの形状のパターン分類結果、調整テーブル作成部514により噴射回数基本テーブルに基づいて生成されたユーザの爪部Tの形状に対応したピッチ調整テーブルとしての噴射回数調整テーブル(図16から図19参照)、印刷用データ生成部515によって生成された印刷用データ等が記憶される。
【0048】
また、制御部51は、機能的に見た場合、幅寸法測定部511、高さ寸法測定部512、テーブル選択部513、調整テーブル作成部514、印刷用データ生成部515、印刷制御部516、表示制御部517等を備えている。これら幅寸法測定部511、高さ寸法測定部512、テーブル選択部513、調整テーブル作成部514、印刷用データ生成部515、印刷制御部516、表示制御部517等としての機能は、CPUとROM52に記憶されたプログラムとの共働によって実現される。
【0049】
幅寸法測定部511は、撮影手段である撮影部30によって得られた爪領域画像(すなわち、印刷対象領域画像)の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定手段である。
幅寸法測定部511が爪領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する手法は特に限定されないが、例えば、事前に基準となる長さの画素数を測定してROM52等に記憶させておき、撮影部30により取得された爪領域画像の画素数をこの基準となる長さの画素数と比較することにより爪領域画像の画素数から爪領域画像の幅方向の長さ寸法を求める等の手法による。
本実施形態において、幅寸法測定部511は、まず、爪領域画像から左右のストレスポイントSpL,SpRを結んだライン(これを「基準ラインa0,b0」とする。)の長さ(すなわちa0,b0間の長さ寸法)を基準ラインa0,b0の幅寸法として取得する。さらに、この基準ラインa0,b0の上下複数個所について爪領域画像の幅寸法を基準ラインa0,b0の幅寸法を取得したのと同様の手法で取得する。例えば、図9では、基準ラインa0,b0の幅寸法の他、この基準ラインa0,b0より下のラインa1,b1、ラインa2,b2、ラインa3,b3について幅寸法を取得した例を示しており、基準ラインa0,b0の幅寸法が10000μmであり、ラインa1,b1の幅寸法が8000μmであり、ラインa2,b2の幅寸法が5000μmであり、ラインa3,b3の幅寸法が200μmとなっている。
なお、幅寸法測定部511により何箇所のラインの幅寸法を取得するかは特に限定されないが、多くの箇所について幅寸法を取得するほど爪領域画像の形状を正確に把握することができ、精度の高い印刷を行うことができる。
【0050】
高さ寸法測定部512は、撮影部30により撮影されたスリット像を含む爪領域画像を取得して、このスリット像を分析し、これにより、印刷手段である印刷部40のインク噴射方向における爪部T(印刷対象物)の高さ寸法を算出するものであり、撮影部30とともに爪部Tの高さ方向の寸法を測定する高さ寸法測定手段を構成している。本実施形態においては、高さ寸法測定手段は、少なくとも左右のストレスポイントSpL,SpRを結んだライン上の爪部Tの幅方向の端部から1000μmの位置(図10において「基準位置P」)の高さ方向の寸法を測定する。
高さ寸法測定部512が印刷部40のインク噴射方向における爪部Tの高さ寸法を測定する手法は特に限定されないが、本実施形態では、高さの違いによるスリット像の現れ方の違いから爪部Tの高さを算出するようになっている。なお、前述のように高さ寸法測定手段が爪部Tの高さ寸法を測定する手法は特に限定されず、例えば撮影部30によって爪部Tの側面にスポット光を照射して撮影を行った場合には、高さ寸法測定部512は、得られたスポット光像に基づいて爪部Tの高さを算出する。
なお、より精度の高い印刷を行うために、高さ寸法測定部512は、印刷対象物である爪部Tについて複数個所の高さ寸法を測定して、爪部Tの複数個所の高さ寸法を取得することが好ましい。この場合には、撮影部30は爪部Tの複数箇所においてスリット光を照射して撮影を行い、高さ寸法測定部512は、得られたスリット像に基づいて各部の爪部Tの高さを算出する。
【0051】
テーブル選択部513は、高さ寸法測定手段である撮影部及び高さ寸法測定部512により取得された爪部Tの高さ寸法に応じて、基本テーブル記憶手段であるROM52に記憶されている複数種類の噴射回数基本テーブルの中から当該爪部Tに適合する噴射回数基本テーブルを選択するテーブル選択手段である。
前述のように、本実施形態では、3種類の爪形状パターンA〜Cに対応して3種類の噴射回数基本テーブルがROM52に記憶されており、テーブル選択部513は、爪部Tの高さ寸法に応じて当該爪部Tの形状を分類し、その形状に最も適合する噴射回数基本テーブルを選択するようになっている。例えば、印刷対象となる爪部Tの基準位置Pの高さが2000μmより高ければ爪形状パターンAに分類され(図10参照)、テーブル選択部513は爪形状パターンAに対応するパターンAの噴射回数基本テーブル(図14参照)を選択する。また、爪部Tの基準位置Pの高さが1000μm以上200以下であれば爪形状パターンBに分類され(図10参照)、テーブル選択部513は爪形状パターンBに対応するパターンBの噴射回数基本テーブル(図14参照)を選択する。また、爪部Tの基準位置Pの高さが1000μmより低ければ爪形状パターンCに分類され(図10参照)、テーブル選択部513は爪形状パターンCに対応するパターンCの噴射回数基本テーブル(図14参照)を選択する。
【0052】
調整テーブル作成部514は、基本テーブル記憶手段であるROM52に記憶されている噴射回数基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)に基づいて、幅寸法測定部511によって測定された爪領域画像(印刷対象領域画像)の幅方向の長さ寸法に対応した当該爪領域Ta(印刷対象面)の印刷に適用される個別のピッチ調整テーブルである噴射回数調整テーブルを作成するピッチ調整テーブル作成手段である。
調整テーブル作成部514は、まず、基準となる噴射回数調整テーブルを作成し、これに基づいて各ラインについての噴射回数調整テーブルを作成するようになっている。
【0053】
例えば、図9に示す爪部Tについて各ラインの噴射回数調整テーブルを作成する場合には、調整テーブル作成部514は、まず、噴射回数基本テーブルに基づいて、基準となる噴射回数調整テーブルとして、基準ラインa0,b0の噴射回数調整テーブル(図16参照)を作成する。前述のように、本実施形態において、噴射回数基本テーブルは、爪部Tの幅方向の端部から2000μmまでを100μm刻みを1単位(1項)とし、それぞれの項にインク噴射回数の値を指定したものであり(図14において1項〜20項)、この1項から20項に割り当てられた噴射回数の値を、基準ラインa0,b0の左右の端部にそれぞれ端部から中央部に向かって1項から20項の順となるように割り当てる(図16参照)。これにより、図16に示すように、幅寸法が10000μmである基準ラインa0,b0の1項から20項及び81項から100項についての噴射回数の値が決定され、残りの21項から80項の部分については、噴射回数「1」が割り当てられる。この結果、爪部Tの両端部から1300μmの位置(すなわち、1項〜13項と88項〜100項)には噴射回数「2」以上が割り当てられ、これ以外の爪部Tの中央部分(すなわち、14項〜87項)には噴射回数「1」が割り当てられた噴射回数調整テーブルa0,b0が作成される。
【0054】
次に、この噴射回数調整テーブルa0,b0を基準として、爪部Tの他の幅寸法ax,bxの部分についての噴射回数調整テーブルを作成する。
具体的には、ax,bxの幅寸法が基準となる噴射回数調整テーブルを作成したa0,b0よりも大きい場合(ax,bx長さ>a0,b0長さ)には、噴射回数調整テーブルa0,b0における噴射回数の値「1」が割り当てられる部分(すなわち、噴射回数「1」が割り当てられる項)を必要な長さ分だけ増やし、長さax,bxの噴射回数調整テーブルax,bxを作成する。
逆に、ax,bxの幅寸法が基準となる噴射回数調整テーブルを作成したa0,b0よりも小さい場合(ax,bx長さ<a0,b0長さ)には、ax,bx長さ/a0,b0長さの比によって噴射回数調整テーブルa0,b0全体を縮小する。すなわち、噴射回数調整テーブルa0,b0の中心部分の噴射回数の値「1」が割り当てられている箇所を必要数減らす。また、噴射回数の値「2」以上が割り当てられている両端部の部分については全体の数をax,bx長さ/a0,b0長さの比によって縮小する。ただし縮小方法としては両端部の噴射回数の値の大きな部分から削減していく。
【0055】
すなわち、例えば図17に示すように、幅寸法が8000μmであるラインa1,b1の場合には、8000μm/10000μmの比によって全体のテーブルを縮小し、噴射回数調整テーブルa0,b0では14項から87項までの74項あった噴射回数の値「1」が割り当てられた部分を11項から70項までの60項に減少させる。また、端部については、噴射回数調整テーブルa0,b0では両端部に1項から13項まで及び88項から100項まで、それぞれ13項あった噴射回数の値「1」以上が割り当てられた部分を1項から10項まで及び71項から80項まで、それぞれ10項に減少させる。そして、項数を減少させる際には、端部の噴射回数の値「4」、「3」が割り当てられている部分から削減する。
また、例えば図18に示すように、幅寸法が5000μmであるラインa2,b2の場合には、5000μm/10000μmの比によって全体のテーブルを縮小し、噴射回数調整テーブルa0,b0では14項から87項までの74項あった噴射回数の値「1」が割り当てられた部分を8項から43項までの37項に減少させる。また、端部については、噴射回数調整テーブルa0,b0では両端部に1項から13項まで及び88項から100項まで、それぞれ13項あった噴射回数の値「1」以上が割り当てられた部分を1項から7項まで及び44項から50項まで、それぞれ7項に減少させる。そして、項数を減少させる際には、端部の噴射回数の値「4」、「3」が割り当てられている部分から削減する。
さらに、例えば図19に示すように、幅寸法が200μmであるラインa3,b3の場合には、噴射回数調整テーブル全体で2項となり、200μm/10000μmの比によって全体のテーブルを縮小する。その結果、噴射回数調整テーブルa0,b0では14項から87項までの74項あった噴射回数の値「1」が割り当てられた部分が全て削除され、2項分にはそれぞれ噴射回数の値「3」が割り当てられる。
なお、ax,bxの幅寸法が基準となる噴射回数調整テーブルを作成したa0,b0の幅寸法と同じである場合には、噴射回数調整テーブルa0,b0をそのまま噴射回数調整テーブルax,bxとする。
【0056】
印刷用データ生成部515は、基本テーブル記憶手段であるROM52に記憶されている噴射回数基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)に応じて、元画像データ記憶手段であるROM52に記憶されている元画像データから幅寸法測定部511によって測定された爪領域Ta(印刷対象領域)の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成手段である。
本実施形態では、印刷用データ生成部515は、噴射回数基本テーブルに基づいて作成された各ラインごとの噴射回数調整テーブルに応じて印刷用データを生成するようになっている。
【0057】
本実施形態において、印刷用データ生成部515は、元画像データの各ラインについて、調整テーブル作成部514によって作成された噴射回数調整テーブルを参照しつつ印刷用データを生成する。インクの噴射回数を調整しない場合には、図13に示すように端部に行くほど印刷濃度が薄くなってしまうが、このようにインクの噴射回数を端部に行くほど多くするように調整することにより、図20(A)に示すように、端部まで印刷濃度を一定に保つことができる。
【0058】
印刷制御部516は、印刷用データ生成部515によって生成された印刷用データを印刷部40に出力し、印刷用データにしたがって爪部T(印刷対象物)の爪領域Ta(印刷対象面)に印刷を施すように印刷部40を制御する印刷制御手段である。
例えば、幅寸法a2,b2の部分に解像度20μmでインクを噴射していく場合、図18に示す噴射回数調整テーブルa2,b2を参照し、記録ヘッド46が爪部Tの左端部から右側方向に向かう際には、爪領域Taへの最初のインク噴射回数は噴射回数調整テーブルa2,b2の値「3」となる。そこで、例えば1画素あたりの噴射回数が4回である場合、12回(4回×3)インクを噴射して100μm分(噴射回数調整テーブルa2,b2における1項分)の印刷を行う。そして、次の噴射回数調整テーブルa2,b2の値「3」を参照し、同様に印刷を行う。このように爪領域Taの幅寸法に応じて爪領域Taの全体について印刷を行う。
【0059】
なお、印刷用データにしたがってそのまま印刷すると、図20(A)に示すように、端部においてデザインが伸びたり歪んだりしてしまい形が崩れた状態で印刷されてしまう。
そこで、本実施形態では、印刷制御部516は、印刷用データ生成部515によって生成された印刷用データを印刷部40に出力する際に、印刷用データを適宜間引くことにより、端部におけるデザインの伸びや歪みを生じないようにしている。
【0060】
具体的には、例えば図16に示す噴射回数調整テーブルa0,b0のように、爪部Tの端部に噴射回数の値「4」が割り当てられている場合、1画素あたりのインク噴射回数を4回とすると、端部では、本来16画素分(4回×4)インクを噴射することとなる。この場合に、図21に示すように、印刷制御部516が、2、3、4、6、7、8、10、11、12、14、15、16の画素を間引いて印刷用データを印刷部40に出力することにより、インクを噴射した総画素数は16であり平面の場合と同様であるが、1、5、9、13の画素しか印刷用データがないことから、この端部においては1/4に圧縮された画像が印刷されることとなり、これが実際の印刷対象面である爪領域Taの表面上で引き伸ばされた状態で印刷される。これにより、画素を間引いた分、解像度は多少落ちるものの、印刷濃度が端部まで均一でデザインの伸びや歪み、崩れ等のない良好な状態で印刷することができる。
【0061】
表示制御部517は、表示手段としての表示部13に各種の表示を表示させる表示制御手段である。本実施形態では、表示制御部517は、前述のようにデザイン選択画面、デザイン確認画面、各種の指示画面等を表示部13に表示させるようになっている。
【0062】
なお、これらの各機能部の他、制御部51に、撮影部30により撮影された指爪画像に含まれている爪部Tの爪領域画像から爪部の輪郭を抽出する爪輪郭抽出手段としての爪輪郭抽出部を設けて、指爪画像から爪部Tの輪郭を抽出するようにしてもよい。
また、複数の印刷指U1について撮影部30により複数の印刷指U11に対応する複数の指爪画像(爪部Tについての爪領域画像を含む印刷指U1の画像)が取得された場合に、各指爪画像から各指の種類を検出する指種類検出手段としての指種類検出部を制御部51に設けてもよい。この場合、指種類検出部は、例えば指爪画像の配置、長さ寸法や幅寸法等に基づいて各指爪画像の指種類を検出する。
【0063】
次に、本実施形態における印刷制御処理について、図22及び図23を参照しつつ説明する。
【0064】
図22に示すように、印刷制御処理の全体の流れとしては、まず、撮影部30により、印刷対象物であるユーザの爪部Tの爪領域画像(印刷対象領域である爪領域Taの画像)を取得する(ステップS1)。
そして、撮影部30により得られた画像を高さ寸法測定部512が分析することにより基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法を測定する(ステップS2)。そして、得られた爪部Tの高さ寸法はRAM53等に記憶される(ステップS3)。さらに、テーブル選択部513が、基準位置Pにおける爪部Tの高さ寸法に基づいてユーザの爪部Tを爪形状パターンA〜Cのいずれに当たるかを分類し(ステップS4)、この分類パターンをRAM53等に記憶させる(ステップS5)。そして、テーブル選択部513は、ROM53に記憶されている複数の噴射回数基本テーブルの中から分類された爪形状パターンに対応する噴射回数基本テーブルを、当該ユーザの爪部Tに適用される噴射回数基本テーブルとして選択する(ステップS6)。そして、噴射回数基本テーブルが選択されると、ユーザの爪部Tの爪領域Taにネイルデザインを印刷する爪印刷処理(図23参照)が行われる(ステップS7)。
【0065】
図23に示すように、爪印刷処理(図22のステップS7参照)を行う場合には、まず、幅寸法測定部511が、爪部Tの幅方向の基準となるライン(本実施形態では、ストレスラインSpLとSpRとを結んだラインである基準ラインa0,b0)の長さを測定する(ステップS11)。測定された幅寸法はRAM等の記憶手段に記憶される(ステップS12)。なお、幅寸法測定部511はこの基準となるライン以外のラインについても複数個所幅方向の長さを取得してもよい。
次に、調整テーブル作成部514は、噴射回数基本テーブルに基づいて、まず、基準となるライン(本実施形態では、基準ラインa0,b0)の長さに応じた噴射回数調整テーブルa0,b0(図16参照)を作成する(ステップS13)。さらに、調整テーブル作成部514は、印刷するそれぞれの箇所について当該箇所の幅方向の長さ寸法に対応する噴射回数調整テーブル(図17から図19参照)を作成する(ステップS14)。そして、印刷用データ生成部515は、作成された噴射回数調整テーブルを参照しつつ、元画像データから印刷用データを生成し(ステップS15)、印刷制御部516は、この印刷用データを印刷部40に出力して、記録ヘッド46から噴射回数調整テーブルに応じた噴射回数インクを噴射させ、各ラインについて順次印刷を行う(ステップS16)。なお、この際、印刷制御部516は印刷用データを適宜間引いて印刷部40に出力することにより、爪部Tの端部において伸びのない良好な画像を印刷することができる。制御部51は、全ての指について印刷が完了したか否かを判断し(ステップS17)、全ての指について印刷が完了している場合(ステップS17;YES)には、処理を終了し、全ての指について印刷が完了してない場合(ステップS17;NO)にはステップS14からステップS16の処理を繰り返す。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、印刷対象面である爪領域Taの幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルとしての噴射回数基本テーブルを備え、この噴射回数基本テーブルに応じて元画像データからユーザの爪領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成し、爪部Tへの印刷を行うようになっている。これにより、人の指の爪部Tのように、インク噴射方向における印刷部40との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面(爪領域Ta)を有する印刷対象物(爪部T)に対して印刷を行う場合でも、記録ヘッド46を爪部Tの形状に合わせて立体的に移動させることなく平面的に水平移動させるだけで端部まで印刷濃度を確保することができ、高精細な画像を印刷することができる。
また、ピッチ調整基本テーブルとしての噴射回数基本テーブルを、印刷対象物(爪部T)の高さに応じて複数(本実施形態では爪形状パターンAからCに対応した3種類)備えており、ユーザの爪部Tの高さに合う噴射回数基本テーブルを選択できるようになっている。このため、ユーザの爪部Tの形状を3種類のパターンに分類するだけでユーザの爪部Tの形状に合ったピッチ調整(噴射回数調整)を行うことができ、簡単な高さ形状認識機構である高さ測定手段を準備すれば足り、低コストと装置の小型化を実現しつつ、印刷濃度の低下やデザインの伸びや歪み等のない高精細な画像を印刷することができる。
また、本実施形態では、調整テーブル作成部514により、噴射回数基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)に基づいて、爪領域画像(印刷対象領域画像)の幅方向の長さ寸法に対応した当該印刷対象面の印刷に適用される個別の噴射回数調整テーブル(ピッチ調整テーブル)を作成するため、印刷用データを生成する際に個別の噴射回数調整テーブル(ピッチ調整テーブル)を参照すればよく、簡易に処理を行うことができる。
また、本実施形態では、ピッチ調整基本テーブルとして、印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際のインクの噴射回数が多くなるように対応付けられた噴射量調整基本テーブルである噴射回数基本テーブルを備えている。このため、人の指の爪部Tのように、インク噴射方向における印刷部40との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面(爪領域Ta)を有する印刷対象物(爪部T)に対して印刷を行う場合でも、印刷濃度の低下のない高精細な画像を印刷することができる。
また、この場合、さらに印刷用データを間引いて印刷部40に出力し、印刷しているため、爪部Tのような曲面に印刷する場合でも端部におけるデザインの伸びや歪み等を抑えることができ、簡易な手法で曲面に対して高精細な画像を印刷することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
次に、図24から図30を参照しつつ、本発明に係る曲面印刷装置の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態は、曲面印刷装置が備えているピッチ調整基本テーブルが第1の実施形態と異なるものであるため、以下においては、特に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0068】
本実施形態における曲面印刷装置は第1の実施形態と同様にネイルプリント装置であり、第1の実施形態とほぼ同様の装置構成を備えている。
【0069】
本実施形態では、ネイルプリント装置の制御装置50のROM52には、ピッチ調整基本テーブルとして、印刷対象面である爪領域Taの幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が多くの単位画素データが割り付けられるように元画像データにおける画素を再配分する画像変換基本テーブルが記憶されている。
【0070】
図24は、ピッチ調整基本テーブルとしての画像変換基本テーブルの一例である。
図24に示すように、画像変換基本テーブルは、噴射回数基本テーブルと同様に、爪形状パターンA〜Cに応じて3種類用意されている。画像変換基本テーブルは、幅方向の両端部が低く中央部近傍が高く盛り上がった湾曲形状をなす印刷対象面である爪領域Taを有する爪部Tの全域において印刷に必要な記録濃度(以下「必要濃度」とする。)が確保されるように単位画素データの割り付け量を調整するものである。
【0071】
本実施形態では、制御部51のテーブル選択部513は、ROM52に記憶されている爪形状パターンA〜Cに応じた3種類の画像変換基本テーブル(図24参照)の中からユーザの爪部Tの高さに応じて、適切な画像変換基本テーブルを選択するようになっている。画像変換基本テーブルは、第1の実施形態で示した噴射回数基本テーブルと同様に、爪部の幅方向の端部から2000μmまでを100μm刻みの項に分けて、各項に単位画素データ数の値を指定したものである(図24において1項〜20項)。
【0072】
また、調整テーブル作成部514は、テーブル選択部513によって選択された画像変換基本テーブルに基づいてユーザの爪部Tの幅寸法に応じた画像変換調整テーブルを作成する。
調整テーブル作成部514は、第1の実施形態と同様に、まず爪部Tの基準ラインa0,b0についての画像変換調整テーブルを作成する。図25及び図26は、基準ラインa0,b0が10000μmの場合の画像変換調整テーブルの例を示したものである。例えば図25における「a1」は、図24に示す画像変換基本テーブルにしたがって、図26に示すように「4」に対応付けられており、図25における「a2」は、図24に示す画像変換基本テーブルにしたがって、図26に示すように「3」に対応付けられている。
すなわち、調整テーブル作成部514は、画像変換基本テーブルの1項から20項の各項に割り当てられた単位画素データ数の値を、基準ラインa0,b0の左右の端部にそれぞれ端部から中央部に向かって1項から20項の順となるように割り当てる(図26参照)。これにより、図26に示すように、幅寸法が10000μmである基準ラインa0,b0の1項から20項及び81項から100項についての単位画素データ数の値が決定され、残りの21項から80項の部分については、単位画素データ数「1」が割り当てられる。この結果、両端部から1300μmの位置(すなわち、1項〜13項と88項〜100項)には単位画素データ数「2」以上が割り当てられ、これ以外の爪部Tの中央部分(すなわち、14項〜87項)には単位画素データ数「1」が割り当てられた画像変換調整テーブルa0,b0が作成される。
さらに、調整テーブル作成部514は、この基準となる基準ラインa0,b0についての画像変換調整テーブルを縮小等することにより、各幅寸法ax,bxの部分も対応した個々の画像変換調整テーブルを作成する。
なお、図27は、a2,b2の幅寸法が5000μmの場合(図9参照)の画像変換調整テーブルの例を示したものである。なお、幅寸法ax,bxの部分に対応した画像変換調整テーブルの作成手法は第1の実施形態で説明したものと同様であることから、その説明を省略する。
【0073】
図28(A)及び図28(B)は、画像変換調整テーブルに基づく元画像データの変換を模式的に示した説明図である。
例えば、図28(A)及び図28(B)に示すように、画像変換調整テーブルがT1からT8までの8項で構成され、爪部Tの端部に当たるT1とT8には「3」、T2とT7には「2」、それ以外の中央部分には「1」の単位画像データを割り付けるように対応付けられている場合、各項に割り付けられている割り付け数の和は「14」となっている。
そこで、この場合には、爪領域Taに印刷すべき元画像データを14ブロックに分割し、単位画素データの総数を「14」とする。そして、画像変換テーブルのT1の項には「3」の値が対応付けられていることから、14ブロックに分割された単位画素データのうち、3ブロック分のイメージデータが割り付けられる。この結果、図28(A)に示すように、T1の項に対応する爪部T上の領域では、「1」の値が対応付けられているT3やT4に比べて、印刷の精細性が3倍の精細さで印刷されることとなる。
すなわち、図28(A)に示すように、インク噴射方向における印刷部40との距離が幅方向の中央部では小さな距離L1であり、幅方向の端部に行くほど大きな距離L2となる湾曲形状をなす爪領域Taを有する爪部Tに対して印刷を行うにあたり、爪領域Taの幅方向の中央部の印刷ピッチP1よりも幅方向の両端部の方の印刷ピッチP2が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルに応じて、爪領域Taに印刷すべき画像の元画像データから爪領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成し、この印刷用データにしたがって爪領域Taに印刷を施す。
【0074】
また、例えば、端部における領域に「4」の値が対応付けられている場合であって1画素あたりの噴射回数を4とした場合には、図29に示すように、爪部Tの端部において、総画素数16画素(4×4)が印刷(噴射)される。このため、爪部Tの端部まで平面に印刷するのと同等の精細さを確保することができる。
このように画像変換基本テーブルに基づいて元画像データを変換することにより、爪部Tの形状に応じた印刷が可能になり、印刷すべきデザイン(元画像データの表されているデザイン)を爪部T上に印刷した際に、例えば図30に示すような、伸びや歪み等の変形や印刷濃度の低下等が生じず、高精細な画像を印刷することができる。
【0075】
なお、ネイルプリント装置の性能において、仮にこの印刷精度を実現することができない場合(すなわち、印刷解像度が不足している場合)には、例えばT1、T2、T7、T8の項に対応する領域では画像データを必要な分解能まで適正に間引くことにより印刷されるデザインが伸びや歪みを生じないように正しく印刷することができる。
【0076】
なお、その他の構成は、第1の実施形態で示したものと同様であるため、その説明を省略する。
【0077】
次に、本実施形態における印刷制御処理について説明する。
なお、印刷制御処理の全体の流れは、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0078】
爪印刷処理(図23のステップS7参照)を行う場合には、まず、幅寸法測定部511が、爪部の幅方向の基準となるライン(本実施形態では、ストレスラインSpLとSpRとを結んだラインである基準ラインa0,b0)の長さを測定する。測定された幅寸法はRAM等の記憶手段に記憶される。なお、幅寸法測定部511はこの基準となるライン以外のラインについても複数個所幅方向の長さを取得してもよい。
次に、調整テーブル作成部514は、画像変換基本テーブルに基づいて、まず、基準となるライン(本実施形態では、基準ラインa0,b0)の長さに応じた画像変換調整テーブルa0,b0(図25及び図26参照)を作成する。さらに、調整テーブル作成部514は、印刷するそれぞれの箇所について当該箇所の幅方向の長さ寸法に対応する画像変換調整テーブル(図27参照)を作成する。そして、印刷用データ生成部515は、作成された画像変換調整テーブルを参照しつつ、元画像データから印刷用データを生成し、印刷制御部516は、この印刷用データを印刷部40に出力して、記録ヘッ46ドから画像変換調整テーブルに応じた単位画素データ数に応じてインクを噴射させ、各ラインについて順次印刷を行う。
なお、その他の処理については第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
以上のように、本実施形態によれば、印刷対象面である爪領域の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルとしての画像変換基本テーブルを備え、この画像変換基本テーブルに応じて元画像データからユーザの爪領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成し、爪部Tへの印刷を行うようになっている。これにより、人の指の爪部Tのように、インク噴射方向における印刷部40との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面(爪領域Ta)を有する印刷対象物(爪部T)に対して印刷を行う場合でも、印刷濃度の低下やデザインの伸びや歪み等のない高精細な画像を印刷することができる。
また、ピッチ調整基本テーブルとしての画像変換基本テーブルを、印刷対象物(爪部T)の高さに応じて複数(本実施形態では爪形状パターンAからCに対応した3種類)備えており、ユーザの爪部Tの高さに合う画像変換基本テーブルを選択できるようになっているため、ユーザの爪部Tの形状に合ったピッチ調整(単位画素データの割り当て数調整)を行うことができ、より確実に印刷濃度の低下やデザインの伸びや歪み等のない高精細な画像を印刷することができる。
また、本実施形態では、調整テーブル生成部514により、画像変換基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)に基づいて、爪領域画像(印刷対象領域画像)の幅方向の長さ寸法に対応した当該爪領域(印刷対象面)の印刷に適用される個別の画像変換調整テーブル(ピッチ調整テーブル)を作成するため、印刷用データを生成する際に個別の画像変換調整テーブル(ピッチ調整テーブル)を参照すればよく、簡易に処理を行うことができる。
【0080】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0081】
例えば、上記各実施形態では、ユーザの爪部Tの形状を爪形状パターンA〜Cに分類し、ピッチ調整基本テーブルもこの爪形状パターンA〜Cに対応して3種類備えている場合を例としたが、ユーザの爪部Tの形状を爪形状パターンA〜Cに分類することは、本発明の必須の要素ではない。
例えば、ピッチ調整基本テーブルとしての噴射回数基本テーブル又は画像変換基本テーブルを1種類だけ備え、これに基づいて印刷対象面である爪領域の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が印刷部40による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるようにピッチ調整を行うようにしてもよい。
この場合には、爪部Tの高さ方向の寸法を取得する必要もなく、撮影部30により爪領域画像を取得したら、ピッチ調整基本テーブルを参照して元画像データからユーザの爪領域Taの幅方向の長さ寸法に応じた印刷用データを生成し、この印刷用データに従って爪印刷処理を行うことができる。
【0082】
また、上記各実施形態では、基準となるピッチ調整テーブル(噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブル)として基準ラインa0,b0についての噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルを作成し、その他に、ラインa1,b1、ラインa2,b2等についてもそれぞれ個別の噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルを作成して、これを参照しつつ印刷用データを作成する例について説明したが、基準ラインa0,b0についての噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブル以外のテーブルを作成することは必須ではない。
基準となる噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルを作成したら、印刷時に、この基準となる噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルを参照して、印刷箇所ごとの幅寸法に応じて噴射回数や単位画素データの割り付け数を設定し、印刷を行うようにしてもよい。
さらに、基準となる噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルも作成せずに、ピッチ調整基本テーブルとしての噴射回数基本テーブル又は画像変換基本テーブルを直接参照して、元画像データからユーザの爪領域Taの幅方向の長さ寸法に応じた印刷用データを生成し、この印刷用データに従って爪印刷処理を行うようにしてもよい。
すなわち、ピッチ調整基本テーブルの値と印刷幅、印刷位置から毎回噴射回数や単位画素の割り当て数を求めてもよい。また、この場合には、毎回噴射回数や単位画素の割り当て数が印刷位置に対してリニアに変化するようにしてもよい。この場合には、調整テーブル作成部514を設ける必要がない。
また、印刷用データ生成部515を設けずに、印刷制御部516が、印刷時に、随時ピッチ調整基本テーブル又はこれに基づいて生成されたピッチ調整テーブルを参照しつつ印刷用データを印刷部40に出力するようにしてもよい。
【0083】
また、噴射回数調整テーブル又は画像変換調整テーブルは100μm刻みで値が指定されたテーブルとしたが、印刷部40の噴射解像度に合わせた1ライン分のデータテーブルとしてもよい。
【0084】
また、上記第1の実施形態では、ピッチ調整基本テーブルとして噴射回数基本テーブルを備え、第1の実施形態では、ピッチ調整基本テーブルとして画像変換基本テーブルを備える例を挙げて説明したが、ピッチ調整基本テーブルは噴射回数基本テーブル、画像変換基本テーブルのいずれか1つである必要はなく、両者を掛け合わせて適用してもよい。
例えば、ピッチ調整基本テーブルとして画像変換基本テーブルを備える場合に、画像データの間引きを行うことなく印刷した場合には噴射回数の調整を行うことは不要であり、全て平面の部分と同じように印刷すれば足りるが、印刷部40の印刷解像度が不足している場合には、画像データの間引きを行う必要がある。この場合には噴射回数基本テーブルを合わせて適用し、インクの噴射回数を調整することによって、画像データの間引きが行われた部分の印刷濃度が低下しないように調整することが好ましい。
【0085】
また、噴射回数基本テーブルを画像変換基本テーブルとして使用してもよい。
【0086】
また、上記各実施形態では、撮影部30において、側面からスリット光又はスポット光を照射することにより得た画像を高さ寸法測定部において分析することにより、爪部(印刷対象物)の高さ寸法を測定する場合を例として説明したが、爪部T(印刷対象物)の高さ寸法を測定する手法は個々に例示したものに限定されない。
例えば、図31(A)及び図32(A)に示すように、爪部TのストレスポイントSpL、SpRを結ぶ線上の中心点を基準点Cpとして、カメラ32等により認識し、その画像を取得する。このままユーザが指を時計回り又は反時計回りに回転させ、カメラ32等により基準点Cpの位置を追尾する。そして、図31(B)及び図32(B)に示すように、基準点Cpが端部に来た状態、すなわち、指が真横になった状態を認識して撮影し、この画像から爪部Tの高さ方向の寸法を取得してもよい。
【0087】
この場合には、図33に示すように、まず、ユーザが印刷対象となる指の爪部を印刷指挿入部20aに挿入し、セットすると撮影部30により爪領域画像が取得される(ステップS21)。そして、幅寸法測定部511により、例えば爪部TのストレスポイントSpL、SpR間の幅方向の長さ寸法が取得され(ステップS22)、その中心位置(すなわち、ストレスポイントSpL、SpRを結ぶ線上の中心点)である基準点Cpの位置情報を取得する(ステップS23)。そして、指を回転させるよう指示する指回転指示画面を表示部13に表示させる(ステップS24)。撮影部30は回転する指の画像を随時取得し(ステップS25)、制御部51は、この画像から基準点Cpが指の画像の端部に来たか否かを常に判断する(ステップS26)。そして、基準点Cpが指の画像の端部に来ていないと判断されるとき(ステップS26;NO)は、撮影部30による指の画像の取得(ステップS25)とステップS26の判断を繰り返す。他方、基準点Cpが指の画像の端部に来たと判断したとき(ステップS26;YES)は、この時点における基準点Cpと爪部TのストレスポイントSpL、SpRとの間の長さを爪部Tの高さ方向の寸法H(図31(B))として取得する(ステップS27)。
【0088】
なお、図34に示すように、指を真横にした状態で支持することのできる治具51を設けて、指を真横にした状態で固定し、撮影部30による撮影を行い、基準点Cpと爪部TのストレスポイントSpL、SpRとの間の長さを爪部Tの高さ方向の寸法H(図31(B))として取得する構成とすることもできる。この場合には、ユーザによる指回転動作を行う必要がない。
【0089】
また、高さ寸法測定部512は、印刷対象物である爪部Tについて複数個所の高さ寸法を測定して、複数個所の高さ寸法を取得するものとしてもよい。この場合には、高さの異なる部分には、それぞれ当該高さに応じた噴射回数基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)を適用するようにする。このように高さに応じて細かく噴射回数基本テーブル(ピッチ調整基本テーブル)を変えて適用することにより、よりユーザの爪部Tの形状に合致したピッチ調整を行うことができ、印刷濃度の低下やデザインの伸びや歪み等のない高精細な画像を印刷することができる。
【0090】
また、上記各実施形態においては、曲面印刷装置が、人の指の爪部Tに印刷を施すネイルプリント装置である場合を例として説明するが、曲面印刷装置は、ネイルプリント装置に限定されず、例えば筒状、円柱状または多角柱状、の印刷対象物のように、印刷対象面が湾曲形状または曲面形状である対象物に対して印刷を施すものであれば広く適用することが可能である。
【0091】
その他、本発明が本実施形態に限定されず、適宜変更可能であることはいうまでもない。
【0092】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影手段と、
前記撮影手段によって得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定手段と、
前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データを記憶する元画像データ記憶手段と、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルを記憶する基本テーブル記憶手段と、
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成手段と、
前記印刷用データ生成手段により生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えていることを特徴とする曲面印刷装置。
<請求項2>
前記基本テーブル記憶手段は、前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法に応じて前記ピッチ調整基本テーブルを複数種類記憶しており、
前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法を測定する高さ寸法測定手段と、
この高さ寸法測定手段により取得された前記印刷対象物の高さ寸法に応じて、当該印刷対象物に適合する前記ピッチ調整基本テーブルを前記基本テーブル記憶手段に記憶されている複数種類の中から選択するテーブル選択手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記テーブル選択手段により選択された前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴とする請求項1に記載の曲面印刷装置。
<請求項3>
前記高さ寸法測定手段は、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を測定して、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を取得するものであることを特徴とする請求項2に記載の曲面印刷装置。
<請求項4>
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて、前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法に対応した当該印刷対象面の印刷に適用される個別のピッチ調整テーブルを作成するピッチ調整テーブル作成手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記ピッチ調整テーブル作成手段により作成された前記ピッチ調整テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
<請求項5>
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルは、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際のインクの噴射回数が多くなるように対応付けられた噴射量調整基本テーブル、及び/又は、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が多くの単位画素データが割り付けられるように前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データにおける画素を再配分する画像変換基本テーブルであり、
前記印刷用データ生成手段は、前記噴射量調整基本テーブル及び前記画像変換基本テーブルの少なくともいずれか1つに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
<請求項6>
前記印刷対象物は人の指の爪部であり、
前記印刷対象面は爪領域であり、
前記印刷手段は、人の爪部の表面にネイルプリントを施すものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
<請求項7>
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置の印刷制御方法であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定ステップと、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルに応じて、前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データから前記幅寸法測定ステップにおいて測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成ステップと、
前記印刷用データ生成ステップにおいて生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含んでいることを特徴とする印刷制御方法。
【符号の説明】
【0093】
1 ネイルプリント装置
2 ケース本体
20a 印刷指挿入部
30 撮影部
40 印刷部
50 制御装置
52 ROM
53 RAM
51 制御部
511 幅寸法測定部
512 高さ寸法測定部
513 テーブル選択部
514 調整テーブル作成部
515 印刷用データ生成部
516 印刷制御部
T 爪
Ta 爪領域
U1 印刷指
U2 非印刷指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影手段と、
前記撮影手段によって得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定手段と、
前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データを記憶する元画像データ記憶手段と、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルを記憶する基本テーブル記憶手段と、
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成手段と、
前記印刷用データ生成手段により生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御手段と、
を備えていることを特徴とする曲面印刷装置。
【請求項2】
前記基本テーブル記憶手段は、前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法に応じて前記ピッチ調整基本テーブルを複数種類記憶しており、
前記印刷手段のインク噴射方向における印刷対象物の高さ寸法を測定する高さ寸法測定手段と、
この高さ寸法測定手段により取得された前記印刷対象物の高さ寸法に応じて、当該印刷対象物に適合する前記ピッチ調整基本テーブルを前記基本テーブル記憶手段に記憶されている複数種類の中から選択するテーブル選択手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記テーブル選択手段により選択された前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴とする請求項1に記載の曲面印刷装置。
【請求項3】
前記高さ寸法測定手段は、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を測定して、前記印刷対象物について複数個所の高さ寸法を取得するものであることを特徴とする請求項2に記載の曲面印刷装置。
【請求項4】
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルに基づいて、前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法に対応した当該印刷対象面の印刷に適用される個別のピッチ調整テーブルを作成するピッチ調整テーブル作成手段をさらに備え、
前記印刷用データ生成手段は、前記ピッチ調整テーブル作成手段により作成された前記ピッチ調整テーブルに基づいて前記印刷用データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
【請求項5】
前記基本テーブル記憶手段に記憶されている前記ピッチ調整基本テーブルは、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際のインクの噴射回数が多くなるように対応付けられた噴射量調整基本テーブル、及び/又は、前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が多くの単位画素データが割り付けられるように前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データにおける画素を再配分する画像変換基本テーブルであり、
前記印刷用データ生成手段は、前記噴射量調整基本テーブル及び前記画像変換基本テーブルの少なくともいずれか1つに応じて、前記元画像データ記憶手段に記憶されている元画像データから前記幅寸法測定手段によって測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
【請求項6】
前記印刷対象物は人の指の爪部であり、
前記印刷対象面は爪領域であり、
前記印刷手段は、人の爪部の表面にネイルプリントを施すものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の曲面印刷装置。
【請求項7】
印刷対象物に対してインクを噴射して印刷を施す印刷手段を備え、インク噴射方向における前記印刷手段との距離が幅方向の中央部では小さく、幅方向の端部に行くほど大きくなる湾曲形状をなす印刷対象面を有する印刷対象物に対して印刷を行う曲面印刷装置の印刷制御方法であって、
前記印刷対象面を撮影して印刷対象領域画像を得る撮影ステップと、
前記撮影ステップにおいて得られた印刷対象領域画像の幅方向の長さ寸法を測定する幅寸法測定ステップと、
前記印刷対象面の幅方向の中央部よりも幅方向の両端部の方が前記印刷手段による印刷の際の印刷ピッチが細かくなるように対応付けられたピッチ調整基本テーブルに応じて、前記印刷対象面に印刷すべき画像の元画像データから前記幅寸法測定ステップにおいて測定された印刷対象領域画像の幅寸法に対応した印刷用データを生成する印刷用データ生成ステップと、
前記印刷用データ生成ステップにおいて生成された前記印刷用データにしたがって前記印刷対象物の印刷対象面に印刷を施すように前記印刷手段を制御する印刷制御ステップと、
を含んでいることを特徴とする印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−232414(P2012−232414A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100438(P2011−100438)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】