説明

有機フィールドエミッションデバイス

【課題】本発明は、電界放出現象を利用しつつ簡便なプロセスで作製できるモジュールを提供し、発光デバイスとしてディスプレイのみならず広範囲な分野において活用を図ることを目的とするものである。特に、高効率電子放出特性を有し、長寿命を持つエミッタ材料を提供し、また、低温で再現性に優れたエミッタ加工プロセスも提供する。
【解決手段】透明導電ガラス及び有機蛍光体薄膜からなるアノード基板と、半導体基板及び電界電子放出材料薄膜からなるカソード基板と、アノード基板とカソード基板とを対向して配設させ、基板間の空隙を高真空雰囲気に保持させるスペーサと、アノード基板とカソード基板と間に電界を印加させる電圧印加回路とを有し、基板間の空隙を真空チャネル領域として、基板間に電界を印加することにより電界電子放出材料薄膜からの電子を有機蛍光体薄膜に注入させて発光させることを特徴とする電界放出発光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄型パネルのディスプレイ,有機レーザデバイス,照明などに用いられる有機フィールドエミッションデバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高度情報社会においては、TV・インターネット・携帯電話等情報の受信及び発信のためのディスプレイは人間と情報とのインターフェイスとしてその重要性を一段と高めている。このようにディスプレイが多様に用いられるにつれ、要求される特性も薄型、大画面、自然色、高発光効率、低電力等多様化している。このような要求に応えるものとしてフィールド・エミッション・ディスプレイが注目されている。フィールド・エミッション・ディスプレイ(電界放出ディスプレイともいう)は、固体表面に強い電場をかけると、固体表面に閉じ込められていた電子が表面のポテンシャル障壁が低くなるために、トンネル効果で真空中に飛び出しやすくなる現象(電界放出)を利用したものである。すなわち電界放出現象を利用して、CRTに1つしかない電子銃を、超小型化してピクセル毎に無数に配置したものといえる。
【0003】
フィールド・エミッション・ディスプレイは原理的には電子銃を用いたCRTと共通点が多いため、広視野角を有し、発色性・応答性が良いという特徴を持つ。その一方で、熱放射により電子を放出させるCRTと異なり電界放射により電子を放出させるので、CRTに比べ省電力でありかつ薄型化も容易に実現可能である。
【0004】
図1に、フィールド・エミッション・ディスプレイの構造模式図を示す。図1に示すように、一般的なフィールド・エミッション・ディスプレイの構造は、微小な電子エミッタを形成した陰極と蛍光体を塗った陽極とを、スペーサを挟んで張り合わせ、内部を真空にしたものである。
フィールド・エミッション・ディスプレイはエミッタの構成によりいくつかの方式が開発されており、Spindt型の金属チップ、異方性エッチングしたSiチップ、MIM,MISトンネルジャンクションを利用したもの、カーボンナノチューブ(CNT)を用いたもの、陰極、陽極を平行に配置した表面電子伝導型(Surface conduction type)などがある。
【0005】
ここで、エミッタ材料としてGaNやAlNという窒化物半導体を採用することも提案されている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、いずれの提案もエミッタ材料を作製するのに、高温環境のプロセスを必要とするため、高温プロセスに起因する材料劣化の問題や高価な基板材料を用いなければならないといった問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−273398号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電界放出現象を利用しつつ簡便なプロセスで作製できるデバイス構造を提供し、発光デバイスとしてディスプレイのみならず広範囲な分野において活用を図ることを目的とするものである。
特に、高効率電子放出特性を有し、長寿命を持つエミッタ材料を提供し、また、低温で再現性に優れたエミッタの作製プロセスも提供するものである。
そして、低温プロセスで作製されたエミッタと低駆動電圧で発光する高効率の有機蛍光体とを用いて、有機電界放出型発光素子(フィールドエミッションデバイス;Field Emission Device(FED))を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点からは、透明導電ガラス及び有機蛍光体薄膜からなるアノード基板と、半導体基板及び電界電子放出材料薄膜からなるカソード基板と、前記アノード基板と前記カソード基板とを対向して配設させ、基板間の空隙を高真空雰囲気に保持させるスペーサと、アノード基板とカソード基板と間に電界を印加させる電圧回路とを少なくとも有し、基板間の空隙を真空チャネル領域として、基板間に電界を印加することにより前記電界電子放出材料薄膜からの電子を前記有機蛍光体薄膜に注入させて発光させることを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。
カソード基板を構成する電界電子放出材料に電圧が印加されると、電界放出により電子が発生し真空中に放たれる。この電子がアノード基板に引き寄せられて進み、アノード基板を構成する有機蛍光体薄膜に衝突する。電子が衝突することにより有機蛍光体は電子のエネルギーを光に変換して発光することとなる。
【0009】
本発明の第2の観点からは、電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置の真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去しながらスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。
真空槽内部の残留ガス中の水成分は作製する電界電子放出材料薄膜のエミッション特性に大きく影響し、特に飽和電流密度に関して2桁以上の特性の向上を図ることができるのである。
【0010】
真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去は、具体的には残留ガス中の水成分を10−6torr以下に抑えることがよい。また、スパッタリング装置に液体窒素トラップ若しくはクライオポンプを配設することで、簡便に、真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去することができる。ここで、液体窒素トラップは、例えば、コールドフィンガーを用いて、スパッタリング装置の排気回路部に設けるか、或るいは、ターゲット基板の近傍に設けることが好ましい。
【0011】
本発明の第3の観点からは、電界電子放出材料薄膜がSiドープ窒化アルミニウム薄膜である電界放出発光デバイスが提供される。
自発光デバイス、薄型パネル、広視野角、高速応答、高発光効率、低消費電力等の特徴を有するフィールド・エミッション・ディスプレイにおけるエミッタ材料として光電子放出効率、高電流密度、長寿命等の観点から窒化物が注目されている。
Siをドープした窒化アルミニウム薄膜をエミッタ材料として用いることで、非常に大きな電流密度を獲得することができる。
【0012】
本発明の第4の観点からは、Siドープ窒化アルミニウム薄膜が、窒素雰囲気下でアルミニウム(Al)とSiをスパッタリングすることで、nドープSi基板上に成長させ、作製されたものである電界放出発光デバイスが提供される。大面積ディスプレイの実績のあるスパッタリング法を採用しAlとSiを同時にスパッタすることにより、Siドープ窒化アルミニウム薄膜を作製することができる。
【0013】
本発明の第5の観点からは、nドープSi基板が250〜400度の低温に保持された状態で、Siドープ窒化アルミニウム薄膜を成長させることを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。後述するように、他の方法よりも低温のプロセスによりエミッタを作製することができる。
【0014】
本発明の第6の観点からは、Siドープ窒化アルミニウム薄膜の膜厚が150〜500nmである電界放出発光デバイスが提供される。後で詳述するが、膜厚を制御することによりエミッタの特性である閾値電界を低下させることができるのである。
【0015】
本発明の第7の観点からは、Siドープ窒化アルミニウム薄膜のSiドープ密度が1.0×1020/cm以上である電界放出発光デバイスが提供される。ここでは、窒化アルミニウム上のSiチップの数量を調整することによりSiドープ密度を制御することができる。Siドープ密度を制御することにより、AlN薄膜表面の突起の曲率半径を小さくすることができる。すなわち、突起先端部に電界が集中することにより極めて高効率の発光が可能となり、ひいては低消費電力による発光が実現できるのである。
【0016】
本発明の第8の観点からは、有機蛍光体薄膜と電界電子放出材料薄膜との間にゲート電極を配設し、ゲート電極の電位を制御することで、電界電子放出材料薄膜からの電子を有機蛍光体薄膜に注入させるアドレスを制御することを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。
【0017】
本発明の第9の観点からは、有機蛍光体薄膜が、赤色発光分子にa−sexithiophene、緑色発光分子にAlq3,青色発光分子にp−sexiphenylを用いたことを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。
【0018】
本発明の第10の観点からは、有機蛍光体薄膜が透明導電ガラス基板上に、100〜500nmの膜厚で形成されていることを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。室温に保ったITOガラス基板上で蒸着する膜厚を制御することにより発光特性を向上させることができる。
【0019】
本発明の第11の観点からは、前記透明伝導ガラスが、ITO(酸化インジウムスズ、Indium Tin Oxide)ガラスである電界放出発光デバイスが提供される。
【0020】
本発明の第12の観点からは、前記Siドープ窒化アルミニウム薄膜が所定の間隔でコーン状に素子分離されていることを特徴とする電界放出発光デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電界放出発光デバイスよれば、微小な電子エミッタを形成した陰極と有機蛍光体を塗った陽極を、スペーサを挟んで張り合わせ、内部を真空構造として電圧印加回路を設けたデバイスの提供より、薄型パネル、広視野角、高速応答、高発光効率、低消費電力という特徴を有した大画面ディスプレイが実現するのみならず、本デバイスの応用により、有機レーザデバイス、印刷製品、照明器具等広範囲な分野における発光デバイスとして活用を図ることができる。特に、有機レーザデバイスには、放出電子で励起するタイプのものに活用できる可能性が大きい。
【0022】
また、高電子放出効率、高電流密度、長寿命という窒化物の特徴に加え、Siドープにより更に電流密度を大幅に向上させることができる。
【0023】
また、実績のあるスパッタリング法を使用していることにより、安価に安定に高品質な膜形成が可能となる。スパッタリング法を用いた低温プロセスでのエミッタ作製により、部材の損傷防止、製造コスト低減等をもたらすことが可能となる。さらに、低温プロセスにより基板材料の選定においてもガラスに限定されず、プラスチックを基板として採用することが可能とるといった効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0025】
図2に本発明に係る電界放出発光デバイスの構造模式図を示す。本発明に係る電界放出発光デバイスは、Si基板1及び基板上に低温成長させたSiドープ窒化アルミニウム(AlN)薄膜2と、ITO(酸化インジウムスズ、Indium Tin Oxide)ガラス基板3及び有機蛍光体薄膜4とスペーサ5と電圧回路6とを少なくとも含む構成からなる。ここで、Si基板上に低温成長させたSiドープ窒化アルミニウム(AlN)薄膜はエミッタを形成する。
Si基板1とSiドープAIN薄膜2はカソード(陰極)10を形成し、ITOガラス基板3と有機蛍光体薄膜4はアノード(陽極)11を形成し、スペーサ5を挟んで対向する。カソードとアノード間の空隙は高真空雰囲気に保持されている。
尚、スペーサ5には厚み60μmのマイカ(雲母)を用いているが、カソードとアノード間の空隙は、狭い方がより好ましい。
また、カソード(陰極)とアノード(陽極)の間にグリッドを挿入して、放出電流を制御することも可能である。実際に実用化を考えた場合、カソード(陰極)とアノード(陽極)の間にグリッドを挿入する3極方式を採用することが好ましい。
【0026】
(SiドープAlN薄膜エミッタの作製方法)
ここで、Siをドープした窒化アルミニウム(AlN)薄膜により形成されたエミッタの作製方法について説明する。図3は、Siドープ窒化アルミニウム(AlN)薄膜により形成されたエミッタの作製にもちいた反応性RFマグネトロンスパッタリング装置の構造模式図を示している。
【0027】
以下、図3を参照しながら説明していく。エミッタの作製に用いた反応性RFマグネトロンスパッタリング装置30は、装置内のチャンバー上部にヒータ32を有し、チャンバー下部に高周波電源32(図示しない)を有し、チャンバー右部に反応ガス33を導入できる流入口があり、チャンバー左部の流出口から真空ポンプ39(図示しない)によって反応ガスを流出させる構造である。
【0028】
本装置上部に基板としてnドープSi(111)ウェハからなるSi基板34を収め、Si基板34と対向して下部にAl/Siターゲット35を載置する。Al/Siターゲット35は、図3の右下に示すように、Alターゲット36の上に1.5mm角のSiチップ37を所定の個数載置したものである。
【0029】
ヒータ31を制御し、Si基板34の温度を300℃に保持して、チャンバー内に40mTorrでNとArガスの反応ガス33を流し、スパッタ電圧1.8kV,RFパワー150Wでスパッタリングを行なっている。
【0030】
Siドープ量はAl上のSiチップ37の個数を変えることにより制御することとしている。Al/Siターゲット35の部分である陰極と高周波電源32(図示しない)の間にはマッチングボックスが設けてあり、コンデンサとコイルからなる整合回路によってインピーダンスのマッチングをとり高周波電力が有効に装置内に注入されるようになっている。
【0031】
また、Alターゲット36とSi基板34の間にシャッターを配設して、該シャッターの開閉によりSiドープAlN薄膜の膜圧を制御している。
【0032】
反応ガス33は真空ポンプ39(図示しない)によって、入った方向の対角の方向に出て行くように設計されており、スパッタが起こるチャンバー中央部に供給されるようになっている。
【0033】
また、マグネット40近傍には水冷管41が設けられており、スパッタによりターゲットが加熱され、溶解することを防止している。チャンバー本体にも水冷管42を設けており、プラズマによるチャンバーの温度上昇によるプラズマ状態の変化を防いでいる。
【0034】
(SiドープAlN薄膜の特性)
次に、作成されたSiドープAlN薄膜の特性について説明する。図4(a)は、上述の作製方法により作製したSiドープAlNエミッタ薄膜のX線解析スペクトル図である。図4に示すように、スペクトルは(0002)回折線ピークが強く現れており、Si基板面に垂直にC軸に配向していることがわかる。図4(b)にX線極点図を示す。X線極点図は回折条件を固定して全方位スキャンして、その空間分布を調べたものである。図4(b)の場合、C軸について極点図を取っており、C軸がどの方向に向いているかを示している。図4(b)から理解できるように、非常にシャープなピークがSi基板に垂直な方向に立っている。これは、C軸がSi基板に垂直に配向していることを示すデータである。
なお、このときの(0002)X線ロッキングカーブの半値幅は3度であり、これは高純度多結晶窒化物のデータに相当している。
【0035】
次に、厚さ440nmの膜について入射角度55度で測定した反射スペクトルを図5(a)に示す。半導体のバンド構造の情報が光吸収特性を調べることで得られ、また、反射スペクトルは光吸収特性を反映することから、上記作製方法で得られたSiドープAlN薄膜のバンドギャップを評価した。一般に、薄膜からの反射スペクトルは、多重反射を反映して干渉パターンを示すため、反射スペクトルを解析するのに際し、図5(b)に示す多重反射モデルを想定し、スペクトル形状を理論的に予測しながら実際の測定データを比較している。図5(c)は理論的に予測した反射スペクトルである。図5(a)の反射スペクトルの干渉の収束点から、バンドギャップが6.2eVとした。このバンドギャップが6.2eVの値は、バルクの良質なAlNのものと同程度であり、半導体として十分なエネルギーバンド構造を有していると理解できるものである。また、バルクと同様大きなバンドギャップを持つことは、負性電子親和力を有することを示すことになる。
【0036】
図6は原子間力顕微鏡(AFM)の観察イメージ画像である。Siのドープ量の制御は既述の通りSiチップの個数を変えることにより行なう。図6(a)はSiドープしない場合、図6(b)はSiドープ密度5.1×1019cm−3、図6(c)はSiドープ密度7.9×1019cm−3、図6(d)はSiドープ密度1.1×1020cm−3の場合である。図6の(a)〜(d)から、Siドープ量を増加させると共に突起が形成され、突起の曲率半径も小さくなっていくことが理解できる。SiドープAlN薄膜表面の突起形状はその先端部で、電界の集中を引き起こし、平板に加えている電界よりもはるかに高い電界が突起先端部に加わっていることになる。これが、Siドープによる閾値電界の低下の要因であると言えよう。
【0037】
次に、Siドープ量を変化させて作製したAlN薄膜のエミッタ特性について、特に、Siドープ量との関係について説明する。図7はSiドープ量を変化させて作製したAlN薄膜エミッタの特性についての閾値と電流密度の関係を示すグラフである。Siをドープしていない(undope)AlN薄膜エミッタの場合、閾値電界は26Vと高く、電流密度も低いことが理解できる。Siドープ量を1019ドープすると閾値電界は20Vまで下がり、電流密度は2桁上昇していることが理解できる。さらにSiドープ量を1020ドープすると電流密度は1μA/cm以上に上昇し、閾値電界は10V程度に急激に低下していることが理解できる。これはX線回折測定からSiドープ量が1020ドープ密度では格子定数の低下が見られ、SiがAlマトリックス内にドープされ均一な不純物準位を形成しているためと推定する。
【0038】
以上から、Siドープ窒化アルミニウム薄膜のSiドープ密度が1.0×1020cm−3以上であるものは閾値電界が10V程度を低く、省電力の電界放出発光デバイスとして好適なエミッタとなり得ることが言えよう。
【0039】
尚、このSiドープ量は、上述したようにAlターゲットに搭載するSiチップの個数で制御しているが、2.4×1020cm−3までSiドープ量を増加させることができたのであるが、それ以上高濃度にSiをドーピングさせようとSiチップの個数を増加させても、Siドープ濃度は増加せず、かえって減少の傾向を示したことを補足しておく。
【0040】
図8は、Siドープ密度を変えて得られたAlN薄膜エミッタの電子放出閾値電界と飽和電流密度を、上述の原子間力顕微鏡(AFM)の観察イメージ画像(図6)から求めたAlN薄膜表面の突起の平均曲率半径に対してプロットしたものである。このドープ密度範囲では、Siドープ濃度の増加により曲率半径が小さくなり、電圧集中効果により電子放出閾値電界が低下し、飽和電流密度が増加していることが理解できる。前述したように、Siドープ量の増加に伴いAlN薄膜表面の突起状の構造が顕著になり、突起形状はその先端部で電界の集中を引き起こし、平板に加えている電界よりも遥かに高い電界が突起先端部に加わっているといえる。このことが閾値電界の低下に大きく影響を与えているものと言えよう。
【0041】
また、スパッタ膜の膜厚を変えても表面の曲率半径が変化してそれに伴って閾値電界が増減することから、AlN薄膜のモルフォロジーの制御が閾値電界の低下にとって重要であると言えよう。
【0042】
(膜厚変化によるエミッタ特性の変化)
Siドープ量を一定にして膜厚を変化させた場合のSiドープAlN薄膜エミッタの特性について更に説明する。図9は、Siドープ濃度を1.1×1020cm―3とし、膜厚を100m、200nm、450nm、660nmと変化させた場合のフィールド・エミッションの特性の変化を示したグラフである。膜厚が100nmの場合の閾値は40Vを超えているのに対し、450nm、660nmの場合には非常に低くなっている。
【0043】
図10のグラフは、図9のデータから、横軸を膜厚として、閾値電界および電流密度をプロットしたものである。図10のグラフから、閾値電界は膜厚200nm,450nmの場合に非常に低くなっており、膜厚と曲率半径との関係に極めて密接に関連しているのに対し、電流密度は曲率半径とは関連が認められないことがわかる。このことから、電流密度は曲率半径には依存せず、Siドープ量に密接に関連していることが理解できる。すなわち、Siドープ量はエミッション電流を決める重要な要因のひとつと言えるであろう。もちろんAlN薄膜の結晶品質そのものも影響するであろうし、また、Si基板とAlN薄膜の界面も影響するであろう。要は電子の移動のしやすさに影響する因子が電流密度に影響を及ぼすことになる。
【0044】
(有機蛍光体薄膜の作製方法)
次に、有機蛍光体薄膜の作製方法について説明する。赤色発光分子としてα−sexithiophene(α−6T)、緑色発光分子としてAlq,青色発光分子としてp−sexiphenyl(p-6P)を用いた。α−6Tの化学式を下記化1に、Alqの化学式を下記化2に、p-6Pの化学式を下記化3に示す。
【0045】
【化1】

【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
これらの分子を室温に保ったITO(酸化インジウムスズ、Indium Tin Oxide)ガラス基板上に500nmの膜厚で真空蒸着して有機蛍光体薄膜を作成する。
【0049】
(電界放出発光デバイスの発光スペクトル評価)
次に、真空ポンプにより内部を5×10−6torrの真空に保ちつつ電圧を印加し、ITOガラスの背面から放射した発光のCCDカメラ観察と発光スペクトルの測定を行なった。図11に、発光スペクトルの測定装置の構成を示す。
【0050】
測定には、300℃の基板温度で成長させたSiドープAlN薄膜(膜厚400nm)と、蛍光体として膜厚500nmのp−6p蒸着膜を用いている。スペーサ厚みは60μmである。この場合の電界放出発光デバイス素子の電界強度と電流密度の関係を図12に示す。10V以下の閾値電界で電流が立ち上がり、電流が飽和すると共に発光し始める。p−6p薄膜の蛍光顕微鏡像では、膜は均一に蒸着されており全体が一様に光っているのを確認しているが、図13に示すp−6p薄膜の蛍光顕微鏡像による電界放出発光の写真によると、電界放出発光では点状の輝点として観察されている。これは、SiドープAlN薄膜エミッタ表面に突起があることから、突起部分に電界集中が起こり、その部分が光っているものと推定する。
【0051】
図14は、同様にAlqを用いて膜厚を100nmとして蒸着した膜を用いた素子の電界放出発光特性を示している。薄くすると電流電圧特性が一様になり、放電も減少して安定なAlqの緑色の発光輝点が観察された。図15に、Alqの電界放出発光の写真を示す。図15に示される発光は、局所的な発光であるが、本発明に係る電界放出発光デバイスの構成で発光が確認されたことから、これをエミッタ表面から均一に電子放出をさせることにより、ディスプレイ等の応用が可能となるのである。
【実施例2】
【0052】
実施例2では、排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製した電界電子放出材料薄膜により形成されたエミッタの特性について、特に、Siドープ量との関係について説明する。図16は、実施例2のエミッタの作製にもちいた反応性RFマグネトロンスパッタリング装置の構造模式図(排気回路に液体窒素トラップを配設したもの)を示している。
【0053】
以下、図16を参照しながら説明していく。実施例2におけるエミッタの作製に用いた反応性RFマグネトロンスパッタリング装置30は、装置内の真空チャンバー上部にヒータ32を有し、真空チャンバー下部に高周波電源32(図示しない)を有し、真空チャンバー右部に反応ガス33を導入できる流入口があり、真空チャンバー左部の流出口に液体窒素トラップ20を備え、スパッタリング装置内の真空チャンバー内部の残留ガス中の水成分を積極的に除去し、真空ポンプ39(図示しない)によって反応ガスを流出させる構造である。
【0054】
実施例2では、真空チャンバー左部の流出口の排気回路部分に液体窒素トラップ20を備えることで、残留ガス中の水成分が積極的に除去でき、水(H0)の残留を10−7torr台に抑えることが可能となるのである。後述する薄膜の特性のところで説明するが、水はエミッション特性に大きく影響し、特に飽和電流密度に関して、水の除去とともに約2桁の特性の向上を確認できている。
【0055】
実施例2では、真空チャンバー左部の流出口の排気回路部分に液体窒素トラップを備えることとしているが、残留ガス中の水成分を積極的に除去するものとして、液体窒素ゲッター以外にクライオポンプという真空ポンプを用いても同様の効果が期待できる。
また、Alターゲット近傍にコールドフィンガーを設置することも、残留ガス中の水成分を積極的に除去できる効果が期待できる。
【0056】
本装置上部に基板としてnドープSi(111)ウェハからなるSi基板34を収め、Si基板34と対向して下部にAl/Siターゲット35を載置する。Al/Siターゲット35は、図16の右下に示すように、Alターゲット36の上に1.5mm角のSiチップ37を所定の個数載置したものである。
ヒータ31を制御し、Si基板34の温度を300℃に保持して、チャンバー内に40mTorrでNとArガスの反応ガス33を流し、スパッタ電圧1.8kV,RFパワー150Wでスパッタリングを行なっている。
これらは、上述した実施例1における図3の説明と同様である。
【0057】
Siドープ量はAl上のSiチップ37の個数を変えることにより制御することとしている。Al/Siターゲット35の部分である陰極と高周波電源32(図示しない)の間にはマッチングボックスが設けてあり、コンデンサとコイルからなる整合回路によってインピーダンスのマッチングをとり高周波電力が有効に装置内に注入されるようになっている。
また、Alターゲット36とSi基板34の間にシャッターを配設して、該シャッターの開閉によりSiドープAlN薄膜の膜圧を制御している。
反応ガス33は真空ポンプ39(図示しない)によって、入った方向の対角の方向に出て行くように設計されており、スパッタが起こるチャンバー中央部に供給されるようになっている。
また、マグネット40近傍には水冷管41が設けられており、スパッタによりターゲットが加熱され、溶解することを防止している。チャンバー本体にも水冷管42を設けており、プラズマによるチャンバーの温度上昇によるプラズマ状態の変化を防いでいる。
これらも、上述した実施例1における図3の説明と同様である。
【0058】
実施例2における排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製したSiドープAlN薄膜の成長方法の条件を以下に列挙する。
・基板 : n+Si(111)
・背圧 : 1.0×10−6torr以下
・基板温度 : 300℃
・ガス圧 : 40mtorr
・分圧比 : Ar:N=1:1
・RFパワー : 150W
【0059】
(排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製したSiドープAlN薄膜の特性)
次に、排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて作製したSiドープAlN薄膜の特性(Siドープ量との関係)について説明する。図17は、排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて、電界電子放出材料薄膜を作製したAlN薄膜エミッタの特性についての閾値と電流密度の関係を示すグラフである。また、図18は、AlN薄膜エミッタの特性を測定するデバイスの構造模式図を示している。
【0060】
図17において、上述した図3と比較して、閾値電界が小さくなり、また、飽和電流密度の値が大きくなっていることが確認できる。例えば、図3においてSiドープ量が2.4×1020/cmのものは飽和電流密度が10−5A/cmであるのに対し、図17においてSiドープ量が4.71×1020/cmのものは飽和電流密度が10−3A/cmであり、排気回路に液体窒素トラップを配設したものは、そうでないものに対して作製されたAlN薄膜の飽和電流密度が2桁向上していることが確認できる。ここで、閾値電界が両者で大きな差異はないのは、閾値電界は膜表面形状に大きく影響をうけることが知られているが、両者の表面薄膜形状をAFMで測定しても同様な表面形状の結果であったためと考える。
【0061】
なお、図17において、Siドープ量が4.71×1020/cmで電圧をさらに上げていくとまだまだ電流値は上がるのであるが、10V以上ではオームの法則に従った単なる電流特性の増加であるので、非線形なエミッション特性とは区別するためグラフプロットは行っていない。電流は上がるに伴って、抵抗加熱による温度上昇も顕著になり、デバイスとしてはこのような領域でドライブすることは想定できないからである。
【0062】
(エージング特性)
図19は、排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて、電界電子放出材料薄膜を作製したAlN薄膜エミッタのエージング測定結果のグラフを示している。
エージング測定条件は、Siドープ量が4.71×1020/cmのものを、図18のデバイス構成で、14V/μmの電界を印加して、直流連続動作したものである。図18より、38時間にわたり10−5〜10−4A/cmのエミッション電流密度を持続していることが確認できた。
【0063】
図18のデバイス構成からわかるように、放熱などに対するデバイス構造等の最適化を行っていない。従って、図19の測定結果は、あくまでも参考程度のデータであるが、連続で約40時間の蛍光体の発光が確認できている。これは、ディスプレイ応用を想定して、例えばXGA(1024×769)を考えると、1秒間に1/768秒しか点灯しないことから、約40時間X768で、実質的には3万時間を越える性能を持っていることが理解できるであろう。
更に、エミッションに用いる蛍光体の種類に依存するのであるが、効率の高い青の場合には、700cd/mを超える性能を示している。
【0064】
(エミッタ材料について他の報告例との対比)
本実施例に係る電界放出発光デバイスに用いたエミッタ材料について、他の報告例との対比を下記表1に示す。本実施例では、SiCよりも安価なSi基板を用い、簡便なスパッタリング法で作製したSiドープAlN薄膜で低い閾値電界が得られることを示したが、さらに特徴的なことは、表1からわかるように、本実施例に係るスパッタリング法によるエミッタの作製方法は、他の作製方法が非常に高温を要するのに対して、300℃の低温プロセスでエミッタを形成できることである。
【0065】
また、本実施例に係るスパッタリング法を用いて、Si基板ではなく、ガラス基板に300℃でSiドープAlN薄膜を成長させた例がある。この成長させたSiドープAlN薄膜のX線回折特性もSi基板で成長させた場合と同様に基板面に垂直にC軸に配向していることを確認している。ガラス基板の場合は絶縁体であり、そのまま3極のエミッションデバイスに用いることはできないものの、表面電子伝導型には非常に有効な素子として利用できる可能性がある。
【0066】
下表1は、FEDを研究している各社の最新のベストデータを示している。実施例2で得られたものが、各社のベストデータと相当若しくは値を凌駕していることがわかる。低温プロセスで、このような小さい閾値電解が得られているのが特徴である。なお、下記表1の中で220mA/cm2(飽和電流密度)の電流密度の求め方は、鉛筆のような電極への電子放出を計測し、単純に電極先端面積で割っていることから、他と比べて非常に大きな値となっている。
【0067】
【表1】

【0068】
本明細書、または本明細書に開示している本発明の実施形態を読めば、当業者であれば、種々の用途および条件用に使用することができる他の実施形態を思いつくことができる。例えば、本発明に係る電界放出発光デバイスの構造内に他のゲート電極を追加することもできる。他の場合には、ITOガラスに替わり、適当なプラスチック、または柔軟および/または透明な他のポリマから本発明に係る電界放出発光デバイスを形成することができ、または、導電性フィルムを導電性ポリマから作ることができる。本明細書および実施形態は説明のためだけのものである。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る電界放出発光デバイスは、大画面ディスプレイ、有機レーザデバイス、印刷製品、照明器具等産業上において広範囲な利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】一般的なフィールド・エミッション・ディスプレイの構造模式図
【図2】本発明に係る電界発光デバイスの構造模式図
【図3】反応性RFマグネトロンスパッタリング装置の構造模式図
【図4】(a)はSiドープAlNエミッタ薄膜のX線解析スペクトル図である。(b)はX線極点図である。
【図5】(a)は厚さ440nmの膜について入射角度55度で測定した反射スペクトルを示す。(b)は多重反射モデルを示す。(c)は理論的に予測した反射スペクトルを示す。
【図6】原子間力顕微鏡(AFM)の観察イメージ画像
【図7】Siドープ量を変化させて作製したAlN薄膜エミッタの特性についての閾値と電流密度の関係を示すグラフを示す。
【図8】Siドープ密度を変えて得られたAlN薄膜エミッタの電子放出閾値電界と飽和電流密度を示す。
【図9】膜厚変化によるエミッタ特性を示すグラフである。
【図10】図9において、横軸を膜厚として閾値電界、電流密度をプロットしたものである。
【図11】発光スペクトルの測定装置の構成図
【図12】電界放出発光デバイス素子の電界強度と電流密度の関係を示すグラフ
【図13】p−6p薄膜の蛍光顕微鏡像による電界放出発光の写真
【図14】Alqを用いて膜厚を100nmとして蒸着した膜を用いた素子の電界放出発光特性
【図15】Alq薄膜の蛍光顕微鏡像による電界放出発光の写真
【図16】反応性RFマグネトロンスパッタリング装置の構造模式図(排気回路に液体窒素トラップを配設したもの)
【図17】排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて、電界電子放出材料薄膜を作製したAlN薄膜エミッタの特性についての閾値と電流密度の関係を示すグラフを示す。
【図18】AlN薄膜エミッタの特性を測定するデバイスの構造模式図を示す。
【図19】排気回路に液体窒素トラップを配設した反応性RFマグネトロンスパッタリング装置を用いて、電界電子放出材料薄膜を作製したAlN薄膜エミッタのエージング測定結果のグラフを示す。
【符号の説明】
【0071】
1 Si基板
2 Siドープ窒化アルミニウム(AlN)薄膜
3 ITOガラス基板
4 有機蛍光体薄膜
5 スペーサ
6 電圧回路
10 カソード(陰極)
11 アノード(陽極)
20 液体窒素トラップ
30 反応性RFマグネトロンスパッタリング装置
31 ヒータ
32 高周波電源
33 反応ガス(NとArガス)
34 Si基板
35 Al/Siターゲット
36 Alターゲット
37 Siチップ
38 マッチングボックス
39 真空ポンプ
40 マグネット
41 水冷管(マグネット近傍)
42 水冷管(チャンバー本体)
50 真空チャンバー
51 導電性テープ
52 グリッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電ガラス及び有機蛍光体薄膜からなるアノード基板と、半導体基板及び電界電子放出材料薄膜からなるカソード基板と、前記アノード基板と前記カソード基板とを対向して配設させ、基板間の空隙を高真空雰囲気に保持させるスペーサと、前記アノード基板と前記カソード基板の間に電界を印加させる電圧回路とを少なくとも有し、前記アノード基板と前記カソード基板の間の空隙を真空チャネル領域として、基板間に電界を印加することにより前記電界電子放出材料薄膜からの電子を前記有機蛍光体薄膜に注入させて発光させることを特徴とする電界放出発光デバイス。
【請求項2】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置の真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去しながらスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする電界放出発光デバイス。
【請求項3】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置の真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去しながらスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電界放出発光デバイス。
【請求項4】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置の真空槽内部の残留ガス中の水成分を10−6torr以下にしてスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする電界放出発光デバイス。
【請求項5】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置の真空槽内部の残留ガス中の水成分を10−6torr以下にしてスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電界放出発光デバイス。
【請求項6】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置に液体窒素トラップ若しくはクライオポンプを配設して真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去しながらスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする電界放出発光デバイス。
【請求項7】
電界電子放出材料薄膜が、基板とターゲット材料との間で放電を行ってターゲット材料から放出された原子を基板に付着させて薄膜の形成を行う方法(スパッタリング)を用いて作製され、かつ、スパッタリング装置に液体窒素トラップ若しくはクライオポンプを配設して真空槽内部の残留ガス中の水成分を除去しながらスパッタリングを行い作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載の電界放出発光デバイス。
【請求項8】
前記電界電子放出材料薄膜がSiドープ窒化アルミニウム薄膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電界放出発光デバイス。
【請求項9】
前記電界電子放出材料薄膜が、窒素雰囲気下でアルミニウム(Al)とSiをスパッタリングすることで、nドープSi基板上に成長させ、作製されたSiドープ窒化アルミニウム薄膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電界放出発光デバイス。
【請求項10】
前記nドープSi基板が250〜400度の低温に保持された状態で、前記Siドープ窒化アルミニウム薄膜を成長させることを特徴とする請求項8又は9に記載の電界放出発光デバイス
【請求項11】
前記Siドープ窒化アルミニウム薄膜の膜厚が150〜500nmである請求項8又は9に記載の電界放出発光デバイス
【請求項12】
前記Siドープ窒化アルミニウム薄膜のSiドープ密度が1.0×1020cm−3以上である請求項8又は9に記載の電界放出発光デバイス
【請求項13】
前記有機蛍光体薄膜と前記電界電子放出材料薄膜との間にゲート電極を配設し、前記ゲート電極の電位を制御することで、前記電界電子放出材料薄膜からの電子を前記有機蛍光体薄膜に注入させるアドレスを制御することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の電界放出発光デバイス
【請求項14】
前記有機蛍光体薄膜が、赤色発光分子にα−sexithiophene、緑色発光分子にAlq3,青色発光分子にp−sexiphenylを用いたことを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の電界放出発光デバイス
【請求項15】
前記有機蛍光体薄膜が前記透明導電ガラス上に、100〜500nmの膜厚で形成されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の電界放出発光デバイス
【請求項16】
前記透明伝導ガラスが、ITO(酸化インジウムスズ、Indium Tin Oxide)ガラスである請求項1乃至15のいずれかに記載の電界放出発光デバイス
【請求項17】
前記Siドープ窒化アルミニウム薄膜が所定の間隔でコーン状に素子分離されていることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の電界放出発光デバイス

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−351510(P2006−351510A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88557(P2006−88557)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】