説明

有機ポリマー複合無機微粒子とその製造方法、および、その分散体と組成物

【課題】 安定な原料を使用し、製造工程数が少なく、製造方法も簡便な、新規な有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法と、塗料等の用途に優れた性能を有する新規な有機ポリマー複合無機微粒子、および、その分散体と組成物を提供する。
【解決手段】 本発明に係る有機ポリマー複合無機微粒子は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなり、前記化学結合は、無機微粒子を構成する金属原子と、有機ポリマー鎖中の炭素原子とが、酸素原子を介して結合してなる。また、本発明に係る有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法であって、縮合性金属化合物を、水酸基含有有機ポリマーの存在下で縮合することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種塗料、コーティング剤、成形材料等への添加剤などの用途に有用な有機ポリマー複合無機微粒子、その製造方法、および、その分散体と組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々の無機微粒子が、強度、難燃性、隠蔽性、耐熱性、表面硬度、防錆性等の特性付与を目的とする各種塗料および成型材料等の添加剤として、実用に供せられている。しかしながら、その性能は十分ではなく、この問題点を解決するために、種々の方法で有機ポリマー等を使用した無機微粒子の表面修飾がなされ、無機微粒子と有機媒体間の親和性の向上が計られている。
たとえば、特許文献1には、粒子径が5〜300nmのシリカ微粒子をシリルエーテル化ポリマーで処理した微粒子が記載されている。また、坪川らは、気相法で得られた粒子径が数十nmのシリカ微粒子表面へ重合性官能基や重合開始基を導入後、シリカ微粒子をラジカル重合またはシリル基含有ポリマーカップリング剤による表面処理によって、有機ポリマーがグラフトしたシリカ微粒子を得る実験を報告している(非特許文献1)。
【0003】
さらに、特許文献2には、気相法で得られた粒子径が数十nmのシリカ微粒子表面に重合性官能基を導入後、乳化重合を行い、シリカ表面にポリマーがグラフトした100nm以下の平均粒子径を有する微粒子が記載されている。一方、特許文献3には、粒子径が10〜5000nmのコロイダルシリカ表面をあらかじめカップリング剤で処理した後、酸基含有ポリマーで表面処理して、ポリマーで表面修飾されたシリカ微粒子を得る方法が記載されている。また、吉永らは、単分散シリカ微粒子をアルコキシシリル基含有ポリマーで処理して、有機ポリマーで表面修飾されたシリカ微粒子の例を報告している(非特許文献2)。
【0004】
また、種々の方法で有機ポリマー等で表面修飾された無機微粒子を成膜用組成物として応用し、成膜用組成物中の塗料用樹脂等の有機媒体と無機微粒子間の親和性の向上が計られている。たとえば、無機微粒子をあらかじめカップリング剤で表面処理した後、酸基含有ポリマーまたはアルコキシシリル基含有ポリマーで表面処理した無機微粒子を含有する成膜組成物がある。また、特許文献4には、アクリルポリオール樹脂、2個以上の官能基を有するイソシアネート化合物等の結合剤、無機質のオルガノゾル、溶剤を含むアクリル樹脂系塗料用組成物が挙げられ、この組成物を使用すると耐候性が改善されると記載されている。さらに、特許文献5には、特定の縮合性金属化合物と、ポリシロキサン基を有する特定の有機ポリマーとを用いて縮合反応することにより、塗料用途等に好適な有機ポリマー複合無機微粒子と、耐候性や耐汚染性などに優れたその成膜組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−271114号公報
【特許文献2】特開平5−115772号公報
【特許文献3】特開平4−180921号公報
【特許文献4】特開平4−173882号公報
【特許文献5】特開平7−178335号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「表面」第28巻,第4号,第286〜298頁,1990年
【非特許文献2】「繊維学会誌」第49巻,第3号,第130〜136頁,1993年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の有機ポリマー複合無機微粒子の製造においては、一般に多段階の工程からなり、操作が煩雑である。例えば、従来の水系有機ポリマー複合シリカゾルの典型的な製造工程は、まず、重合性のシロキサンモノマーを合成し、続いて、当該重合性シロキサンモノマーを必要に応じて他の親水性モノマー群と共存下で重合を行うことで縮合反応点を有する有機ポリマーを合成し、さらに、当該有機ポリマーと縮合性金属化合物との縮合反応を行うという、3段階の工程が必要であった。また、この方法で用いる縮合反応点を有する有機ポリマーは安定性に欠けるために、取扱いが容易ではなかった。
そこで、本発明の課題は、安定な原料を使用し、製造工程数が少なく、製造方法も簡便な、新規な有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法と、塗料等の用途に優れた性能を有する新規な有機ポリマー複合無機微粒子、および、その分散体と組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、有機ポリマーと無機微粒子との結合形態が従来とは異なる、新規な有機ポリマー複合無機微粒子を着想した。そして、この新規な有機ポリマー複合無機微粒子は、従来の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法にくらべて非常に簡便な方法で製造でき、しかも、用いる原料が安定であるという利点を有することが分かった。すなわち、従来複数工程を経て合成していた縮合反応点を有する有機ポリマーの代わりに、水酸基を有する比較的安定な有機ポリマーを使用し、縮合性金属化合物との共存下での反応により、極めて少ない工程で前記の新規有機ポリマー複合無機微粒子が得られることを見いだした。加えて、この新規な有機ポリマー複合無機微粒子は、従来の有機ポリマー複合無機微粒子とは有機ポリマーの結合形態が異なるものの、塗料用途等としての性能的には従来と同等もしくはそれ以上の効果を発揮することも分かった。
【0009】
従って、本発明に係る有機ポリマー複合無機微粒子は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子において、前記化学結合は、無機微粒子を構成する金属原子と、有機ポリマー鎖中の炭素原子とが、酸素原子を介して結合してなることを特徴とする。
また、本発明に係る有機ポリマー複合無機微粒子分散体は、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子が分散液に分散してなり、本発明に係るコーティング組成物は、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を含有してなることを特徴とする。
さらに、本発明に係る有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法であって、縮合性金属化合物を、水酸基含有有機ポリマーの存在下で縮合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定な原料を使用し、製造工程数が少なく、製造方法も簡便な、新規な有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法と、塗料等の用途に優れた性能を有する新規な有機ポリマー複合無機微粒子、および、その分散体と組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(有機ポリマー複合無機微粒子)
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を構成する無機微粒子は、任意の元素で構成される無機物の微粒子であれば、特に制限はなく、無機物として好ましく用いられるのは、無機酸化物である。前記無機酸化物は、金属原子が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。前記無機酸化物を構成する金属原子としては、たとえば、元素周期律表II〜VI族から選ばれる原子が好ましく、元素周期律表 III〜V族から選ばれる原子がさらに好ましい。その中でも、Si、Al、Ti、Zrから選ばれる原子が特に好ましく、前記無機酸化物を構成する金属原子がケイ素であるシリカ微粒子が、無機微粒子として最も好ましい。また、前記無機酸化物中に、有機基、水酸基を含有したり、あるいは後述する原料となる縮合性金属化合物に由来する各種の基が残留したり、有機ポリマーの一部分を包含していてもよい。前記有機基は、炭素数20以下の置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。前記無機酸化物は、1種のみまたは2種以上である。
【0012】
このような無機物からなる無機微粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
本発明における有機ポリマー複合無機微粒子の表面に化学結合してなる有機ポリマー鎖は、各種塗料や成形材料等に使用される場合、前記微粒子の分散性や、前記微粒子と有機媒体との親和性の向上に寄与し、また、成膜用組成物として用いられる場合は、バインダーとして作用するものである。
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなり、その化学結合は、無機微粒子を構成する金属原子と、有機ポリマー鎖中の炭素原子とが、酸素原子を介して結合してなることを特徴とする。すなわち、前述の無機微粒子を構成する金属原子(好ましくは、Si、Al、Ti、Zrであり、特に好ましくはSi)と、無機微粒子表面に存在する有機ポリマー鎖骨格を構成する炭素原子とが、それらの間に酸素原子を介して結合している形態をいう。例えば、無機微粒子を構成する金属原子がSiの場合には、Si−O−Cという結合形態が存在することを意味する。
【0013】
以下、便宜上、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の微粒子表面に結合した有機ポリマーを「有機ポリマー鎖」と称する。
前記有機ポリマー鎖部分の分子量、形状、組成、官能基の有無等については、特に限定はない。有機ポリマー鎖部分の形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。また、有機ポリマー鎖の構造の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が有する構造が挙げられる。中でも、有機ポリマー鎖が、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エーテルグリコール系樹脂が有する構造単位を含むことが好ましい。
【0014】
有機ポリマー複合無機微粒子は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、有機ポリマー複合無機微粒子のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。有機ポリマー複合無機微粒子中の有機ポリマーの有無は、たとえば、この有機ポリマー複合無機微粒子を500〜700℃で加熱し、有機ポリマーを熱分解した後の微粒子の比表面積の測定値と、微粒子の直径から算出される比表面積の理論値とを比較することにより、確認することができる。すなわち、有機ポリマー複合無機微粒子内に有機ポリマーを包含している場合は、加熱によって有機ポリマーが熱分解し、微粒子内に多数の細孔が生じるため、有機ポリマーを熱分解した後の微粒子の比表面積が、微粒子の直径から算出される比表面積の理論値よりもかなり大きい値となる。
【0015】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径は、好ましくは5〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmである。有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径が5nm未満では、有機ポリマー複合無機微粒子の表面エネルギーが高くなるため、凝集等が起こりやすくなる。また、有機ポリマー複合無機微粒子の平均粒子径が200nmを超えると、塗料等に使用した場合、塗膜の透明性等の物性が低下する。
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の粒子径の変動係数は、好ましくは50%以下であり、30%以下がより好ましい。有機ポリマー複合無機微粒子の粒子径分布が広いと、すなわち、粒子径の変動係数が50%を超えると、プラスティックフィルム等の充填材等に使用した場合に、フィルム表面が平滑ではなく、凹凸が激しく好ましくない。
【0016】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子中のアルコキシ基の含有量は、好ましくは、有機ポリマー複合無機微粒子1g当たり、0.01〜50mmolであり、より好ましくは0.01〜10mmol、さらに好ましくは0.01〜1mmol、最も好ましくは0.01〜0.5mmolである。ここでいうアルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。ここでRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は、同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。
上記のようなアルコキシ基は、有機ポリマー複合無機微粒子を各種塗料・成形材料として使用した場合に、有機媒体との親和性や、有機媒体中での分散性を補足的に向上させる作用がある。
【0017】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子中の無機物の含有率については、特に制限されるものではないが、前記微粒子を種々の樹脂中に添加した場合、無機物の有する硬度、耐熱性などの特性を、より効果的に発揮するには、前記微粒子中の無機物の含有率をできるだけ高めるのが有利であり、無機物の含有率としては、有機ポリマー複合無機微粒子の50〜99.5重量%が好ましい。
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、有機ポリマー複合無機微粒子の0.5〜50重量%が好ましい。
(有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法)
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を製造する方法について、以下に説明する。
【0018】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法は、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法であって、縮合性金属化合物を、水酸基含有有機ポリマーの存在下で縮合することを特徴とする。
ここで、本発明にいう「縮合」とは、必要に応じて加水分解反応を伴う縮合反応をいう。
本発明で用いる水酸基含有有機ポリマーとは、水酸基を少なくとも1個有する有機ポリマーであれば特に限定されないが、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート重合体やヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート/スチレン共重合体などの(メタ)アクリル系樹脂;クラレ(株)社製のクラレポバールPVA−CST、PVA−217、PVA−117等のメーカー各社から製品化されているポリビニルアルコール系樹脂;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のエーテルグリコール重合体や、花王(株)社製のエマルゲン(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど)やレオドール(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)等の非イオン性界面活性剤として知られているエーテルグリコール重合体の変性物などのエーテルグリコール系樹脂などが挙げられ、中でも特に、水酸基を含有する(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、エーテルグリコール系樹脂が好ましい。
【0019】
本発明で用いる水酸基含有有機ポリマーの分子量は特に限定されないが、数平均分子量が200,000以下であるのが好ましく、50,000以下であるのがさらに好ましい。分子量が高いと後述する有機溶剤に溶解しにくくなる場合があり好ましくない。
本発明の製造方法で用いる縮合性金属化合物は、加水分解・縮合することにより3次元的にネットワークを形成することができる。この縮合性金属化合物は、1種のみまたは2種以上を混合して使用することができる。
縮合性金属化合物としては、縮合性金属化合物を構成する金属原子が元素周期律表のIII 族、IV族、V族の各元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子であるものが好ましい。中でも、縮合性金属化合物を構成する金属原子がSi、Al、TiおよびZrからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子によって構成される金属化合物がより好ましい。また、縮合反応を制御し易いため、縮合性金属化合物を構成する金属原子としては、Siが最も好ましい。
【0020】
このような縮合性金属化合物の具体例としては、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム、三臭化ホウ素、三塩化ホウ素、二塩化メチルホウ素、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、メチルホウ酸、メチルホウ酸ジメチル、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、イソプロピルアルミニウムジクロライド、エチルエトキシアルミニウムクロライド、四塩化ケイ素、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルエトキシシラン、フェニルトリヒドロキシシラン、トリメチルヒドロキシシラン、ジメチルジヒドロキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシメチルシラン、ジエトキシ−3−グリシドキシプロピルメチルシラン、3−クロロプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、ゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、メチルゲルマニウムトリエトキシド、ジメチルゲルマニウムジメトキシド、トリメチルゲルマニウムメトキシド、トリエチル錫ヒドロキシド、ジメチル錫ジメトキシド、トリメチル錫メトキシド、ジメチル錫ジエトキシド、ジブチル錫ジブトキシド、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシロキシ)チタン、ジエトキシジブトキシチタン、イソプロポキシチタントリオクタレート、ジイソプロポキシチタンジアクリレート、トリブトキシチタンステアレート、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0021】
また、縮合性金属化合物として、上記化合物の誘導体を使用することができる。金属化合物の誘導体とは、例えば、ハロゲン、NO、SO、アルコキシ基、アシロキシ基等の加水分解性基の一部をジカルボン酸基、オキシカルボン酸基、β−ジケトン基、β−ケトエステル基、β−ジエステル基、アルカノールアミン基等のキレート化合物を形成しうる基で置換した金属化合物あるいは前記金属化合物および/または前記キレート置換金属化合物を部分的に加水分解および/または縮合して得られるオリゴマーおよびポリマー等である。
上記のキレート置換化合物としては、例えば、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート、オキシチタンジアセチルアセトネート、ジブトキシチタンビストリエタノールアミネート、ジヒドロキシチタンジラクテート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブトキシド、トリエタノールアミンジルコニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いる縮合性金属化合物は、下記の一般式(1)で示される化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
(RO) MR n−m (1)
(一般式(1)中、MはSi、Al、TiおよびZrから選ばれる少なくとも1種の金属原子、Rは水素原子またはアルキル基、アシル基から選ばれる、置換されていても良い少なくとも一種の基であり、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる、置換されていても良い少なくとも1種の基、nは金属元素Mの価数、mは1〜nの整数、Rおよび/またはRが1分子中に複数ある場合、複数のRおよび/またはRは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
ここでRの具体例としては、アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第2級ブチル基、第3級ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。Rは水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。これはRO基の加水分解・縮合速度がさらに速くなるという理由による。
【0023】
また、Rの具体例としては、アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第2級ブチル基、第3級ブチル基、ペンチル等基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえば、シクロヘキシル基等が挙げられる。アリール基としては、たとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基等が挙げられる。アラルキル基としては、たとえば、ベンジル基等の基が挙げられる。また置換されていても良いアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基とは、上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基の有する水素原子の1個または2個以上が、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、エポキシ基、ハロゲン等の官能基で置換された基を示す。
【0024】
一般式(1)で示される縮合性金属化合物の具体例としては、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、ジメチルアルミニウムメトキシド、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラ(2−エチルヘキシロキシ)チタン、ジエキトシジブトキシチタン、イソプロキシチタントリオクタレート、ジイソプロポキシチタンジアクリレート、トリブトキシチタンステアレート、ジルコニウムアセテート、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等が挙げられる。また、一般式(1)で示される縮合性金属化合物の誘導体の具体例としては、ジイソプロポキシチタンジアセチルアセトネート、オキシチタンジアセチルアセトネート、ジブトキシチタンビストリエタノールアミネート、ジヒドロキシチタンジラクチート、ジルコニウムアセチルアセトネート、アセチルアセトンジルコニウムブトキシド、トリエタノールアミンジルコニウムブトキシド、アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0025】
さらに、工業的に入手し易く、製造装置および最終製品の諸物性に悪影響を及ぼすハロゲン等を含んでいない等の理由から、一般式(1)においてMがSiであるシラン化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
シラン化合物の具体例としては、メチルトリアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、トリメチルアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等が挙げられる。また、シラン化合物の誘導体の具体例としては、上記シラン化合物の加水分解・縮合物等が挙げられる。
【0026】
シラン化合物のうち、アルコキシシラン化合物が原料として入手し易く特に好ましい。また、シラン化合物およびその誘導体が、Si(ORおよびその誘導体であると、加水分解・縮合速度が速く、より強固な骨格を形成した有機ポリマー複合無機微粒子が得られる点で好ましい。
本発明における有機ポリマー複合無機微粒子は、前記の水酸基含有有機ポリマーの共存下で、前記の縮合性金属化合物を縮合して製造される。縮合の方法は特に限定されないが、反応を容易に行えるという理由から、溶液中で行うのが好ましい。ここでいう溶液とは、後述する有機溶剤および/または水を含有する溶液であり、前記溶液の組成は特に限定されるものではない。
【0027】
前記有機溶剤の具体例としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられ、これら有機溶剤の少なくとも1種または2種以上を使用してもよい。中でも、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類の中の少なくとも1種または2種以上を必須として用いることが好ましい。
【0028】
水酸基含有有機ポリマー存在下での縮合性金属化合物の縮合は無触媒でも行うことができるが、酸性触媒または塩基性触媒の1種または2種以上を用いることができる。酸性触媒の具体例としては、たとえば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸類;酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸類;酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。また、塩基性触媒の具体例としては、たとえば、アンモニア;トリエチルアミン、トリプロピルアミン等の有機アミン化合物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;塩基性イオン交換樹脂等が挙げられる。触媒の種類は、酸性触媒よりも塩基性触媒を用いると、加水分解・縮合によって得られる無機成分が、より強固な骨格を形成するために、好ましい。
【0029】
加水分解・縮合の際の原料組成は、特に限定されるものではないが、水酸基含有有機ポリマー、縮合性金属化合物、有機溶剤、触媒および水等よりなる原料組成物全量に対して、水酸基含有有機ポリマーの量は、0.1〜80重量%が好ましく、0.5〜30重量%がより好ましい。縮合性金属化合物の量は、0〜80重量%が好ましく、0〜50重量%がより好ましい。有機溶剤の量は、0〜99.9重量%が好ましく、20〜99重量%がより好ましい。触媒の量は、0〜20重量%が好ましく、0〜10重量%がより好ましい。
加水分解・縮合に用いる水の量は、水酸基含有有機ポリマーの共存下で、縮合性金属化合物が、縮合によって粒子化する量であれば、とくに限定されないが、加水分解・縮合をより十分に行い、粒子の骨格をより強固にするには、使用する水の量は多ければ多いほど良い。具体的には、加水分解・縮合する加水分解性基に対する水のモル比が、0.1以上であり、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上の条件で加水分解・縮合を行うことにより有機ポリマー複合無機微粒子が得られる。
【0030】
加水分解・縮合の操作方法は、特に限定されるものではないが、具体例としては、たとえば、前記水酸基含有有機ポリマーまたはその溶液を、また、前記縮合性金属化合物またはその溶液を、水を含有する溶液に添加し、反応温度が0〜100℃で、好ましくは0〜70℃の範囲で、5分間〜100時間攪拌することによって行われる。この際、水酸基含有有機ポリマーまたはその溶液、縮合性金属化合物またはその溶液を混合してあるいはそれぞれ別々に、一括、分割、連続等の任意の添加方法で反応できる。また、添加を逆にして、水を含有する溶液を、水酸基含有有機ポリマーまたはその溶液や縮合性金属化合物またはその溶液中に添加しても良い。また、加水分解・縮合において、前記の触媒の1種または2種以上を使用することができる。触媒の使用方法は、特に限定されるものではないが、あらかじめ水、有機溶剤、水酸基含有有機ポリマー、縮合性金属化合物に混合して使用することができる。反応終了後、加水分解・縮合によって生成した副生物および触媒等を濾過や蒸留などで除去してもよく、得られた有機ポリマー複合無機微粒子を反応混合物から単離する方法は、常法によることができ、たとえば、溶媒の留去、遠心分離、再沈、限外ろ過等により単離、精製することができる。
【0031】
加水分解・縮合反応は、反応系のpHや、原料の量、水の量、アルカリの種類、原料の種類、希釈状態等の諸条件を変えることによって制御することができる。加水分解・縮合反応が早く進みすぎると、分散しない程度の大粒径(0.5mm以上)のゲル物ができてしまう。逆に加水分解・縮合反応が遅すぎると、条件を変更したときに急に反応が進行してしまい、系全体がゲル化してしまう。なお、適正なpH値は、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9.5、さらに好ましくは8〜9である。
なお、本発明の実施においては、上記水酸基含有有機ポリマーの存在下で、上記縮合性金属化合物の縮合を行うが、この際、従来の有機ポリマー複合無機微粒子の製造に用いられていた重合性ポリシロキサンや有機ポリマー(例えば、特開平7−178335号公報、特開平11−80601号公報に開示の化合物)を併用してもよい。
【0032】
加水分解・縮合の方法は、前記のように特に制限されるものではないが、より狭い(シャープな)粒子径分布を有する有機ポリマー複合無機微粒子を製造できる点で以下の方法がより好ましい。
すなわち、反応容器中に下記原料液(A)および原料液(B)を、個別に供給して加水分解・縮合を行うことにより、有機ポリマー複合無機微粒子がより好ましく製造される。
原料液(A): 水酸基含有有機ポリマー、または、水酸基含有有機ポリマーと縮合性金属化合物とを含有する液
原料液(B): 水を必須成分とする液
また、反応容器中に原料液(A)および原料液(B)とともに、個別に、下記原料液(C)を供給するのも好ましい。
【0033】
原料液(C): 縮合性金属化合物を含有する液
また、原料液(A)中に少なくとも1種の縮合性金属化合物を含有させておいて上記の加水分解・縮合するのも好ましい。
このような方法で加水分解・縮合を行うと、加水分解・縮合に伴う有機ポリマー複合無機微粒子の析出過程をより制御しやすくなって、よりシャープな粒子径分布を有する有機ポリマー複合無機微粒子が得られる。
前記原料液(A)〜原料液(C)の、反応容器中への個別の供給とは、各原料液が反応容器中に供給される以前に、各原料液が混合することなく供給が行われることである。
【0034】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法は、上述のように、縮合性金属化合物を、水酸基含有有機ポリマーの存在下で縮合することを特徴とする製造方法であり、無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法である。以下、水酸基含有有機ポリマーを共存させることによる本発明の特徴について説明する。
本発明で用いる水酸基含有有機ポリマーは、少なくとも1つの水酸基を有しているので、縮合性金属化合物と共存状態においては、当該縮合性金属化合物の縮合性OR基(変性によって生成したものでもよい)の少なくとも1つと有機ポリマーの水酸基の少なくとも1つとが反応することにより、脱アルコール反応が起こり、有機ポリマー鎖中の炭素原子と縮合性金属化合物の金属原子とが酸素原子を介して結合するものと考えられる。そして、当該有機ポリマー鎖が結合した縮合性金属化合物が、前記結合生成に関与しなかった縮合性基を用いて縮合することにより、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子が速やかに得られるものと考えられる。
(有機ポリマー複合無機微粒子分散体)
本発明における有機ポリマー複合無機微粒子分散体は、上記の本発明の有機ポリマー複合無機微粒子が分散液に分散してなるものである。すなわち、本発明における有機ポリマー複合無機微粒子分散体は、たとえば、上記の本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を任意の溶液に分散させたもの、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法で得られた反応混合物、前記反応混合物中の溶媒を加熱下蒸留しながら他の溶媒に置換したもの、前記反応混合物中の溶媒を留去、遠心分離、再沈、限外ろ過等により有機ポリマー複合無機微粒子を単離した後、分散媒に分散させたもの等であり、種々の分散媒に分散した分散体である。
【0035】
本発明における有機ポリマー複合無機微粒子分散体は、粗大粒子、凝集物、沈澱がなく、長期間にわたって沈澱の生成やゲル化が起こらない性質を有している。分散体中の有機ポリマー複合無機酸化物微粒子の分散状態は、光散乱式粒度分布測定等によって確認することができる。従来の方法で得られる分散体と異なり、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子分散体は、分散体中の有機ポリマー複合無機微粒子が凝集することなく、シャープな粒子径分布を維持した分散体である。
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子分散体の分散媒については、その組成等に特に制限されないが、有機ポリマー複合無機微粒子中の有機鎖が溶解する有機溶剤または水が好ましい。前記製造方法で説明した有機溶剤の中でも、エステル類、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶剤および/または水に有機ポリマー複合無機微粒子が分散した分散体は長期間保存安定性が良く、さらに種々の有機媒体への分散安定性が良好であるため、種々の用途に利用できる。
【0036】
本発明の有機ポリマー複合無機微粒子分散体中の有機ポリマー複合無機微粒子の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.5〜70重量%であり、さらに好ましくは1〜50重量%である。有機ポリマー複合無機微粒子分散体中の有機ポリマー複合無機微粒子の濃度が高いと、分散体の粘度が高くなり、各種用途に使用しにくくなる。
(コーティング組成物)
次に本発明にかかるコーティング用組成物は、本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を含有するものである。
本発明のコーティング用組成物は、従来のコーティング用組成物と比較して、有機ポリマー複合無機微粒子を必須に含有しているので、被膜物性が従来品よりも向上する。たとえば、一般の塗料用樹脂等に本発明の有機ポリマー複合無機微粒子を添加したコーティング用組成物は、表面硬度、耐熱性、耐摩耗性、耐汚染性等の被膜物性の良い塗膜を与える。
【0037】
本発明で得られる有機ポリマー複合無機微粒子は、無機微粒子表面に有機ポリマー鎖が結合されてなる構造を有しており、有機ポリマーがバインダーとして作用することにより、後述する各種基材にそのまま単独で塗布しても被膜を形成することができ、前記有機ポリマー複合無機微粒子を含有するコーティング用組成物は、透明で光沢のある良好な被膜を提供することができる。
本発明のコーティング用組成物は、有機ポリマー複合無機微粒子を必須成分として含有してなるものであれば、その量および塗料用樹脂等の他の成分の有無等については特に限定されないが、コーティング用組成物を塗布した後の被膜において、有機ポリマーが架橋構造を有すれば、耐溶剤性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が向上するので好ましい。
【0038】
コーティング用組成物を塗布した後、最終的に得られる被膜において、有機ポリマーが架橋構造を有するコーティング用組成物としては、たとえば、以下に示すものが挙げられる。
(1) 官能基(X)を有する有機ポリマーを用いて、上述した方法により得られる官能基(X)を有する有機ポリマー複合無機微粒子と、官能基(X)と反応するような官能基(Y)を2個以上有する化合物または樹脂からなるコーティング用組成物。
(2) 官能基(X)を有する有機ポリマーを用いて、上述した方法により得られる官能基(X)を有する有機ポリマー複合無機微粒子と、官能基(X)と反応するような官能基(Y)を有する有機ポリマーを用いて、上述した方法により得られる官能基(Y)を有する有機ポリマー複合無機微粒子からなるコーティング用組成物。
(3) 官能基(X)を有する有機ポリマーを用いて、上述した方法により得られる官能基(X)を有する有機ポリマー複合無機微粒子と、官能基(X)と反応するような官能基(Y)を2個以上有する化合物または樹脂と、官能基(X)と反応するような官能基(W)を有する有機ポリマーを用いて、上述した方法により得られる官能基(W)を有する有機ポリマー複合無機微粒子からなるコーティング用組成物。
(4) 上記(1)〜(3)において、さらに官能基(X)を2個以上有する化合物および/または樹脂も含有するコーティング用組成物。
【0039】
ここで官能基(X)としては、たとえば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、オキサゾリン基、アルデヒド基等が挙げられ、これら官能基(X)と反応する官能基(Y)、官能基(W)としては、たとえば、イソシアネート基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、アミノ基、不飽和基、カルボキシル基等が挙げられる。
また、官能基(X)、官能基(Y)や官能基(W)を有する有機ポリマー複合無機微粒子中の官能基(X)や官能基(Y)、官能基(W)のそれぞれの個数は特に限定されないが、少なすぎると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐熱性、表面硬度などの被膜物性が低下する傾向がある。
【0040】
中でも、官能基(X)として水酸基を有する有機ポリマー複合無機微粒子と、水酸基と反応するような官能基(Y)を2個以上有する化合物および/または樹脂として、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物(J)を含有するコーティング用組成物は、保存安定性が良好であり、耐汚染性、可とう性、耐候性、保存安定性等の良好な被膜物性の塗膜を与えることができ、得られる被膜も光沢があるため好ましい。有機ポリマー中に水酸基を含有する有機ポリマー複合無機微粒子と、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物(J)を含有するコーティング用組成物も、上記と同様に、好ましい。
【0041】
前記多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族およびその他の多官能イソシアネート化合物やこれらの変性化合物を挙げることができる。多官能イソシアネート化合物の具体例としては、たとえば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体等の3量体等;これらの多官能イソシアネート類とプロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの反応により生成される2個以上のイソシアネート基が残存する化合物;これらの多官能イソシアネート化合物をエタノール、ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトオキシム、メチルエチルケトキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、γ−カプロラクタム等のラクタム類等のブロック剤で封鎖したブロックド多官能イソシアネート化合物等を挙げることができる。これらの多官能イソシアネート化合物は、1種または2種以上の混合物を使用できる。中でも、好ましくない被膜の黄変色を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性多官能イソシアネート化合物が好ましい。
【0042】
前記メラミン化合物としては、たとえば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、イソブチルエーテル型メラミン、n−ブチルエーテル型メラミン、ブチル化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
前記アミノプラスト樹脂の具体例としては、アルキルエーテル化メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ、これらのアミノプラスト樹脂は、1種または2種以上の混合物もしくは共縮合物を使用できる。
ここで、アルキルエーテル化メラミン樹脂とは、アミノトリアジンをメチロール化し、シクロヘキサノールまたは炭素数1〜6のアルカノールでアルキルエーテル化して得られるものであり、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合メラミン樹脂が代表的なものである。また、硬化を促進させるためのスルホン酸系触媒、たとえば、パラトルエンスルホン酸およびそのアミン塩等を使用することができる。
【0043】
この発明のコーティング用組成物中に、1分子中に2個以上の水酸基を含有するポリオール(Q)を含むと、得られる被膜の強度、可とう性、耐溶剤性等の被膜物性が向上するので、さらに好ましい。
1分子中に2個以上の水酸基を含有してなるポリオール(Q)としては、前述の有機溶剤に溶解するものであれば特に限定されないが、有機ポリマー複合無機微粒子中の有機ポリマーと相溶性を有するものであれば、被膜の光沢あるいは透明性が向上するため好ましい。従って、有機ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
ポリオール(Q)としては、たとえば、後述の水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオール、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を使用してもよい。
【0044】
前記水酸基含有不飽和単量体としては、(イ)たとえば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(ロ)たとえば、エチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコールまたはエポキシ化合物と、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体等を挙げることができる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選ばれる少なくとも1種以上を重合してポリオールを製造することができる。
【0045】
また、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選ばれる少なくとも1種以上のエチレン性不飽和単量体と前記(イ)および(ロ)から選ばれる水酸基含有不飽和単量体とを重合してポリオールを製造することもできる。
【0046】
前記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの分子量は1,000〜500,000であり、好ましくは、5,000〜100,000である。また、その水酸基価は5〜300であり、好ましくは10〜200である。
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、たとえば、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、前記多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
【0047】
前記水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの分子量は500〜300,000であり、好ましくは、2,000〜100,000である。また、その水酸基価は5〜300であり、好ましくは10〜200である。
ポリオール(Q)のコーティング用組成物中の添加量は、任意の量を添加することができるが、コーティング用組成物中のポリオール(Q)/有機ポリマー複合無機微粒子の重量比は、0/100〜99/1であり、好ましくは30/70〜95/5である。ポリオール(Q)の割合が30%以上では、被膜の可とう性が高く、有機ポリマー複合無機微粒子の割合が5%以上では、被膜の表面硬度、耐汚染性に優れる。
【0048】
ポリオール(Q)としては、前記ポリエステルポリオールが好ましく使用される。また、前記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するポリオールであるアクリルポリオールも好ましく使用される。ポリオール(Q)は、用途に応じて、ポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
ポリオール(Q)中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
【0049】
本発明のコーティング用組成物は、有機ポリマー複合無機微粒子を種々の有機溶剤および/または水に分散したものであってもよく、使用する分散媒の種類および組成等に特に制限はないが、有機ポリマー複合無機微粒子中の有機鎖が溶解する有機溶剤および/または水が好ましい。このような有機溶剤としては、たとえば、本発明のコーティング用組成物に含有する有機ポリマー複合無機微粒子を製造する際に使用される前述の有機溶剤を挙げることができる。有機溶剤および/または水の使用量は、特に制限はなく、適宜量使用することができる。また、種々の塗料用樹脂等の他成分を混合したものであってもよい。
また、コーティング用組成物中には、1種以上の添加剤を混合してもよい。コーティング用組成物に使用する添加剤としては、特に制限はなく、たとえば、塗料用に一般に使用される各種レベリング剤、顔料分散剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、耐光安定剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、充填剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、防食剤、防錆剤、乳化剤、鋳型脱色剤、カーボンブラック、蛍光性増白剤、有機防炎剤、無機防炎剤、滴下防止剤、溶融流改質剤、静電防止剤を挙げることができる。上記の適当な添加剤は、カナダ国特許第1,190,038号明細書に例示されている。
【0050】
本発明のコーティング用組成物に対して顔料を添加することができ、添加する顔料の種類に制限はなく、たとえば、黄鉛、モリブデートオレンジ、紺青、カドミウム系顔料、チタン白、複合酸化物顔料、透明酸化鉄等の無機顔料、環式高級顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、染付顔料、顔料中間体等の有機顔料を例示することができる。
本発明のコーティング用組成物が、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種の化合物(J)を含有する場合は、架橋反応を促進させるために硬化触媒をさらに使用するのが好ましい。前記硬化触媒としては、酸性または塩基性の硬化触媒を使用できる。酸性硬化触媒の具体例としては、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸を挙げることができる。また、塩基性硬化触媒の具体例としては、トリエチルアミン、メチルイミダゾール、アクリジン、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムステアレート等のアミン系触媒;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、スタナスオクトエート等の有機錫化合物を挙げることができる。これら硬化触媒の少なくとも1種または2種以上を使用してもよく、必要に応じて助触媒を併用してもよい。
【0051】
本発明のコーティング用組成物は、例えばアルミニウム、ステンレス、トタン、ブリキ、鋼板、コンクリート、モルタル、スレート、ガラス等の無機素材あるいはポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、紙等の有機素材の基板またはフィルム上に被膜を形成することができる。また、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、ロールコート、スピンコート、バーコート等の常法によって塗布することができる。
本発明のコーティング用組成物より得られる被膜は、必要に応じて、焼き付け乾燥が行われる。たとえば、室温〜300℃の範囲の温度で0.2分間以上加熱することにより被膜を形成するものであり、この被膜は透明で光沢のある優れた塗膜である。
【実施例】
【0052】
以下に、この発明の具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
下記実施例、比較例で使用する有機ポリマー(P1〜P5、CP1)を下記製造例1〜6により製造した。また、製造例で使用するシロキサンポリマー(S−1)は下記参考例1により製造した。なお、製造例で得られた有機ポリマーの数平均分子量は、下記の方法により分析した。
〔数平均分子量〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の数平均分子量を下記条件において測定した。
【0053】
・試料の調整
テトラヒドロフランを溶媒として使用し、ポリマー0.05gを1gのテトラヒドロフランに溶解して試料とした。溶解しないものは、架橋などによる分子量増大が考えられるが、分子量測定不能とした。
・装置
東ソー株式会社製の高速GPC装置HLC−8020を用いた。
・カラム
東ソー株式会社製のG3000H、G2000HおよびGMHXLを用いた。
【0054】
・標準ポリスチレン
東ソー株式会社製のTSK標準ポリスチレンを用いた。
・測定条件
測定温度35℃、流量1ml/分で測定した。
(参考例1:重合性ポリシロキサン(S−1)の合成)
撹拌機、温度計および冷却管を備えた300mlの四つ口フラスコにテトラメトキシシラン150.0g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン23.3g、水19.5g、メタノール30.0g、アンバーリスト15(ロームアンドハースジャパン社製の陽イオン交換樹脂)、5.0gを入れ、65℃で2時間撹拌し、反応させた。反応混合物を室温まで冷却した後、冷却管に代えて蒸留塔、これに接続させた冷却管および流出口を設け、200mmHgの圧力下、65℃の温度で、メタノールが流出しなくなるまで同温度で保持し、さらに圧力を50mmHgまで減少させ、反応をさらに進行させた。再び、室温まで冷却した後、アンバーリスト15を濾別し、数平均分子量が1600の反応性ポリシロキサン(S−1)を得た。
(製造例1:有機ポリマーP1の合成)
撹拌機、温度計、冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管の付いた四つ口フラスコに重合用溶剤として酢酸ブチル100部を仕込み、重合温度として還流温度(123〜128℃)まで昇温した。そこへ窒素ガスを吹き込みながら、メタクリル酸0.5部、メチルメタクリレート50部、2−エチルヘキシルアクリレート20部、ヒドロキシメチルメタクリレート29.5部、及びアゾビスイソブチロニトリル1.0部からなる混合物のうち10%を一括添加した後、残りの混合物を4時間に渡って滴下ロートより滴下し、次いで後重合温度として90℃で1時間保持した後、30分間隔で3回アゾビスイソブチロニトリル0.2部を加えて、更に90℃で2時間保持した後、室温まで冷却して重合体(これをポリマーP1とする)の溶液を得た。分子量を表1に示した。
(製造例2〜6:有機ポリマーP2〜P5、比較有機ポリマーCP1の合成)
重合性単量体の組成及び条件を表1に示した通りとする他は製造例1と同様の操作を繰り返して有機ポリマーP2〜P5、比較有機ポリマーCP1の溶液を得た。分子量を表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例1)
撹拌機、温度計、2つの滴下層A,Bからの滴下口、冷却管および流出口が接続した蒸留塔を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸ブチル180g、メタノール30g、25%アンモニア水10gを入れておき、内温を45℃に調整した。ついで有機ポリマー(P1)の酢酸ブチル溶液70g、テトラメトキシシラン40gの混合液を滴下層Aに仕込み、滴下口から撹拌状態のフラスコ内に2時間かけて滴下した。滴下後、同温度で1時間撹拌を続け、有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(Z1A)を得た。次に、撹拌機、温度計、冷却管および流出口が接続した蒸留塔を備えた500mlの四つ口フラスコに、得られた有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(Z1A)を200g入れ、110mmHgの圧力下、フラスコ内温を100℃まで昇温し、アンモニア,メタノール,酢酸ブチルを固形分濃度が20%となるまで留去し、有機ポリマー複合シリカ微粒子が酢酸ブチルに分散した分散体(Z1B)を得た。各種条件を表2に示し、得られた分散体の有機ポリマー複合シリカ微粒子濃度および経時安定性、有機ポリマー複合シリカ微粒子中のシリカ含有量、アルコキシ基含有量、および有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径、変動係数を表3に示す。また、上記の各種物性等の測定方法は以下の通りである。
〔有機ポリマー複合無機酸化物微粒子濃度〕
有機ポリマー複合無機酸化物微粒子分散体を100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥し、下記の式より求めた。
【0057】
有機ポリマー複合無機酸化物微粒子濃度(wt%)=
(乾燥後の有機ポリマー複合無機酸化物微粒子の重量(g)×100)
÷(乾燥前の有機ポリマー複合無機酸化物微粒子分散体の重量(g))
〔経時安定性〕
得られた分散体をガードナー粘度チューブ中に密閉し、50℃で保存した。1ヶ月後、粒子の凝集、沈降や粘度の上昇が認められないものを○とした。
〔有機ポリマー複合無機酸化物微粒子中の無機酸化物含有量〕
有機ポリマー複合無機酸化物微粒子分散体を100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥したものについて元素分析を行い、灰分を有機ポリマー複合無機酸化物微粒子中の無機酸化物含有量とした。
〔有機ポリマー複合無機酸化物微粒子中のアルコキシ基含有量〕
有機ポリマー複合無機酸化物微粒子の分散体を、100mmHgの圧力下、130℃で24時間乾燥したもの5gを、アセトン50g、2N−NaOH水溶液50gの混合物に分散させ、室温で24時間撹拌した。その後、ガスクロマトグラフ装置で液中のアルコールを定量し、有機ポリマー複合無機酸化物微粒子のアルコキシ基含有量を算出した。
〔平均粒子径,変動係数〕
サブミクロン粒子径アナライザー(野崎産業株式会社製、NICOMP MODEL 370)を用いて、23℃で測定した。以下に示す平均粒子径は、体積平均粒子径である。
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
(実施例2〜4)
表2に示した条件とする以外は、実施例1と同様にして有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(Z2B〜Z4B)を得た。得られた分散体の有機ポリマー複合シリカ微粒子濃度および経時安定性、有機ポリマー複合シリカ微粒子中のシリカ含有量、アルコキシ基含有量、および有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径、変動係数を表3に示す。
(実施例5〜8)
表2に示した条件とした上で、さらに各滴下層からの滴下終了30分後に、表2に示した量の後添加水を添加すること以外は、実施例1と同様にして有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体(Z5B〜Z8B)を得た。得られた分散体の有機ポリマー複合シリカ微粒子濃度および経時安定性、有機ポリマー複合シリカ微粒子中のシリカ含有量、アルコキシ基含有量、および有機ポリマー複合シリカ微粒子の平均粒子径、変動係数を表3に示す。
(比較例1)
撹拌機、温度計、2つの滴下層A,Bからの滴下口、冷却管および流出口が接続した蒸留塔を備えた500mlの四つ口フラスコに、酢酸エチル120g、メタノール30g、25%アンモニア水10gを入れておき、内温を45℃に調整した。ついで上記有機ポリマー(CP1)の溶液70g、テトラメトキシシラン15gの混合液を滴下層Aに仕込み、滴下口から撹拌状態のフラスコ内に2時間かけて滴下した。滴下途中から大量の大粒子ゲル物が発生し、良好な有機ポリマー複合シリカ微粒子分散体とならなかった。
(実施例9〜11、比較例2〜4)
表4に示した樹脂組成で微粒子分散体と樹脂を混合して樹脂混合物を得た。該樹脂混合物を密閉容器中、40℃で1ヶ月間保存した結果について表4に示した。該樹脂混合物に酸化チタン(タイペークCR−95、石原産業(株)製)を用いて不揮発分顔料濃度が45重量%となるように配合し、サンドミルでよく分散し、樹脂と硬化剤(スミジュールN-3200、住友バイエルウレタン(株)製)を樹脂中のヒドロキシル基に対してイソシアネート基の等量比が1:1となる量だけ秤量し、シンナー(酢酸ブチル/酢酸エチル/キシレン/トルエン=2/1/2/1)で岩田カップで14秒となる程度に希釈し、0.8mm厚アルミニウム板に25μにスプレー塗装した。出来上がった白板を室温で20分放置した後、80度に調整した乾燥機内で1時間硬化をさせて室温に戻し、各種性能試験用の試験片を作成した。塗膜の性能を次に示す性能試験方法により評価した。評価結果をまとめて表4に示した。
【0061】
【表4】

【0062】
なお、各評価基準は以下の通りであった。
外観:目視で評価した
◎:優 ○:良 △:可 ×:不可
貯蔵安定性:40℃において30日間の貯蔵における安定性をみた。
◎:安定 ○:少し増粘 △:増粘 ×:多量の凝集物あり
乾燥性:強制乾燥後の指触で評価した。
◎:変化なし ○:少し跡がつく ×:強く跡がつく
耐溶剤性:メチルエチルケトンをしみこませた脱脂綿で50回ラビングをした後の表面状態
◎:変化なし ○:艶引け ×:塗膜が溶解消失
耐候性:サンシャインウェザーメーターにより、3000時間後の塗膜状態を調べた。
【0063】
◎:優秀 ○:良好 △:普通 ×:不良
耐汚染性:大阪府吹田市で南(30度)に向けて曝露を行い、JISZ8730に従って、初期の明度に対する3ヶ月後の被膜の明度の差(△L*値)を、一体型分光式色差計(日本電色工業社製)を用いて測定した。一般に、△L*値が0に近いほど、被膜は汚れていないことを示す。塗膜汚染性を下記評価基準で評価した。
◎:△L*≦5
○:5<△L*≦10
△:10<△L*≦15
×:△L*>15
(実施例12〜13、比較例5〜6)
下記の配合で混合し、ホモディスパーで十分に顔料が分散するまで攪拌した。
【0064】
脱イオン水 64.6部
分散剤(花王社製、デモールEP) 2.0部
消泡剤(サンノプコ社製、ノプコ8034) 0.3部
酸化チタンCR−95(石原産業社製) 60.0部
上記組成物 146.7部
成膜助剤(チッソ社製、CS−12) 15.0部
合計 288.6部
さらに、クレーブス単粘度計KU−1(ブルックフィールド社製)で測定した粘度が、80〜95(25℃)になるように、粘度調整剤(旭電化社製、アデカノールUH−420)を用いて粘度を調整して、それぞれの白塗料を調製した。得られた白塗料について、アルミニウム板上に40μの膜厚でフィルムアプリケーターにより塗装した。10分間室温セッティングの後、80℃のオーブンで20分間焼き付けた。さらに、7日間、室温乾燥の後の塗膜の評価結果をまとめて表4に示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法によって得られる有機ポリマー複合無機微粒子は、各種塗料、コーティング剤、成形材料等への添加剤などの用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子において、前記化学結合は、無機微粒子を構成する金属原子と、有機ポリマー鎖中の炭素原子とが、酸素原子を介して結合してなることを特徴とする、有機ポリマー複合無機微粒子。
【請求項2】
前記化学結合が、縮合性金属化合物と水酸基含有有機ポリマーとの反応により生成した結合である、請求項1に記載の有機ポリマー複合無機微粒子。
【請求項3】
前記無機微粒子を構成する金属原子がケイ素である、請求項1または2に記載の有機ポリマー複合無機微粒子
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の有機ポリマー複合無機微粒子が分散液に分散してなる、有機ポリマー複合無機微粒子分散体。
【請求項5】
前記分散液が、エステル系、アルコール系、ケトン系、芳香族炭化水素系から選ばれる少なくとも1種の有機溶媒および/または水である、請求項4に記載の有機ポリマー複合無機微粒子分散体。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれかに記載の有機ポリマー複合無機微粒子を含有してなる、コーティング組成物。
【請求項7】
無機微粒子の表面に有機ポリマー鎖が化学結合してなる有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法であって、縮合性金属化合物を、水酸基含有有機ポリマーの存在下で縮合することを特徴とする、有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記縮合性金属化合物が、下記一般式(1)で示される化合物およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種である、請求項7に記載の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法。
(RO) MR n−m (1)
(一般式(1)中、MはSi、Al、TiおよびZrから選ばれる少なくとも1種の金属原子、Rは水素原子またはアルキル基、アシル基から選ばれる、置換されていてもよい少なくとも1種の基であり、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基から選ばれる、置換されていてもよい少なくとも1種の基、nは金属元素Mの価数、mは1〜nの整数、Rおよび/またはRが1分子中に複数ある場合、複数のRおよび/またはRは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記水酸基含有有機ポリマーが、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、および、エーテルグリコール系樹脂から選ばれる少なくとも1種である、請求項7または8に記載の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記無機微粒子を構成する金属原子がケイ素である、請求項7から9までのいずれかに記載の有機ポリマー複合無機微粒子の製造方法。


【公開番号】特開2009−185292(P2009−185292A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38454(P2009−38454)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【分割の表示】特願平11−240388の分割
【原出願日】平成11年8月26日(1999.8.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】