説明

有機薄膜トランジスタ

【課題】塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造できる有機薄膜トランジスタを提供すること。
【解決手段】有機半導体層1を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層が、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とするものであることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。;


(Ar、Ar、Ar、Arは芳香族炭化水素もしくは芳香族複素環の二価基を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体材料を利用した有機薄膜トランジスタの研究開発が盛んである。有機半導体材料は、印刷法、スピンコート法等のウェットプロセスによる簡便な方法で容易に薄膜形成が可能であり、従来の無機半導体材料を利用した薄膜トランジスタと比し、製造プロセス温度を低温化できるという利点がある。これにより、一般に耐熱性の低いプラスチック基板上への形成が可能となり、ディスプレイ等のエレクトロニクスデバイスの軽量化や低コスト化できるとともに、プラスチック基板のフレキシビリティーを活かした用途等、多様な展開が期待できる。
【0003】
これまでに、有機半導体材料としてペンタセン等のアセン系材料が報告されている(例えば、特許文献1)。このペンタセンを有機半導体層として利用した有機薄膜トランジスタは、キャリアが比較的高移動度であることが報告されているが、これらアセン系材料は汎用溶媒に対し極めて溶解性が低く、それを有機薄膜トランジスタにおける有機半導体層として薄膜化する際には、真空蒸着工程を経る必要がある。ゆえに、前述したような塗布や印刷などの簡便なプロセスで薄膜を形成できるという有機半導体材料への期待に応えるものではない。
また、高分子有機半導体材料として、ポリ(3−アルキルチオフェン)(非特許文献1)やジアルキルフルオレンとビチオフェンとの共重合体(非特許文献2)等が提案されている。これらの高分子有機半導体材料は、アルキル基の導入により、低いながらも溶解性を有するため、真空蒸着工程を経ず、塗布や印刷で薄膜化が可能である。しかしながら、これらの高分子有機半導体材料は、分子間が整列した状態において、キャリアの高移動度が実現されるため、その薄膜形成に際し、溶媒種、塗工方法等により配列状態が異なり、結果としてトランジスタ特性にバラツキが生じたり、特性の再現性に欠けるということが問題になっている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−55568号公報
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,69(26),4108(1996)
【非特許文献2】Science,290,2123(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の問題を解決するため、塗工や印刷等の簡便なプロセスで製造でき、再現性の良い特性が得られる有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体を有機薄膜トランジスタの半導体層として用いることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち上記課題は、以下の本発明によって解決される。
(1)「有機半導体層を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層が、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とするものであることを特徴とする有機薄膜トランジスタ;
【0007】
【化1】

(式中、Ar、Ar、Ar、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素もしくは置換または無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
xは1以上3以下の整数を表わし、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよ同じ水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、これらは、xが2又は3の整数であるとき、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)」、
(2)「上記一般式(I)で示される繰返し単位を有する重合体を含む有機半導体層が下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記第(1)項に記載の有機薄膜トランジスタ;
【0008】
【化2】

(式中、ArおよびArは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素または置換もしくは無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、xは1以上3以下の整数を表わし、yおよびzはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表わし、x、yまたはzがそれぞれ独立に2以上の整数の場合、x個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、y個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、z個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)」、
(3)「上記一般式(I)および(II)で示される繰返し単位を有する重合体を含む有機半導体層が下記一般式(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記第(1)項又は第(2)項に記載の有機薄膜トランジスタ;
【0009】
【化3】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素または置換もしくは無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、xは1以上3以下の整数を表わし、y、zおよびuはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表わし、x、y、zまたはuがそれぞれ独立に2以上の整数の場合、x個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、y個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、z個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、u個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)」、
(4)「有機半導体層と、この有機半導体層を通じて電流を流すための対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなる有機薄膜トランジスタであって、有機半導体層が上記一般式(I)、(II)または(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ」、
(5)「少なくとも三つの電極と、絶縁層及び有機半導体層とから構成される有機薄膜トランジスタであって、有機半導体層が上記一般式(I)、(II)または(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ」。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、簡便な製造プロセスでバラツキが少なく、特性の再現性の高い有機薄膜トランジスタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
<トランジスタ構造>
図1の(A)〜(D)は本発明に係わる有機薄膜トランジスタの概略構造である。本発明に係わる有機薄膜トランジスタの有機半導体層(1)は、一般式で示した繰り返し単位を有する重合体を主成分とする。本発明の有機薄膜トランジスタには、空間的に分離されたソース電極(2)、ドレイン電極(3)およびゲート電極(4)が設けられており、ゲート電極(4)と有機半導体層(1)の間には絶縁膜(5)が設けられていてもよい。有機薄膜トランジスタはゲート電極(4)への電圧の印加により、ソース電極(2)とドレイン電極(3)の間の有機半導体層(1)内を流れる電流がコントロールされる。
【0012】
本発明の有機薄膜トランジスタは、支持体上に設けることができ、例えば、ガラス、シリコン、プラスチック等の一般に用いられる基板を利用できる。また、導電性基板を用いることにより、ゲート電極と兼ねること、さらにはゲート電極と導電性基板とを積層した構造にすることもできるが、本発明の有機薄膜トランジスタが応用されるデバイスのフレキシビリティー、軽量化、安価、耐衝撃性等の特性が所望される場合、プラスチックシートを支持体とすることが好ましい。
【0013】
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルム等が挙げられる。
【0014】
本発明の有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層は上記一般式(I)、(II)あるいは(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とするが、この重合体について詳細に説明する。
【0015】
本発明の重合体の製造方法は、例えばアルデヒドとホスホネートを用いたWittig-Horner反応、アルデヒドとホスホニウム塩を用いたWittig反応、ビニル置換体とハロゲン化物を用いたHeck反応、アミンとハロゲン化物を用いたUllmann反応などを用いることができ、公知の方法により製造可能である。特にWittig-Horner反応およびWittig反応は反応操作の簡便さから有効である。
【0016】
一例としてWittig-Horner反応を用いた本発明における重合体の製造方法について説明する。本発明における重合体は、一般的には下記反応式(1)で示されるようにホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物が化学量論的に等しく存在する溶液と、その2倍モル量以上の塩基を混合させることにより重合反応が進行し得ることができる。また、複数種のホスホン酸エステル化合物あるいはアルデヒド化合物を反応系内に添加することにより、ランダム共重合体を得ることもでき、諸特性を調整することも可能である。
【0017】
【化4】

【0018】
上記反応に使用する塩基はホスホネートカルボアニオンが形成されるものであれば特に限定されず、金属アルコシド、金属ヒドリド、有機リチウム化合物等が挙げられ、例えばカリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド、水素化ナトリウム、水素化カリウム、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、フェニルリチウム、リチウムナフチリド、リチウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド等を挙げることができる。
【0019】
反応に用いる塩基の量は、通常ホスホン酸エステル化合物の重合活性点に対して同量使用するだけでよいが、さらに過剰量用いても支障ない。
【0020】
上記の塩基は固形状態や懸濁溶液の状態で反応系内に添加してもよいが、得られる重合体の均質性が良好になるために、特に均一溶液として添加することが好ましい。塩基を溶解する溶媒としては、使用する塩基と安定な溶液を形成する溶媒を選択しなければならないが、その他の要因として塩基の溶解度が高いものがよく、また反応系で生成する高分子量体の反応溶媒に対する溶解性を損ねないものがよく、さらに生成する高分子量体が良好に溶解する溶媒がよく、用いる塩基と製造する高分子量体の特性に応じて、一般に知られているアルコール系、エーテル系、アミン系、炭化水素系溶媒等から任意に選択することができる。
【0021】
塩基とそれを均一に溶解する溶媒の組み合わせとしては、例えばナトリウムメトキシドのメタノール溶液、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドの2−メチル−2−プロパノール溶液、カリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、カリウムt−ブトキシドのジオキサン溶液、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液、メチルリチウムのエーテル溶液、リチウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液、リチウムジイソプロピルアミドのシクロヘキサン溶液、カリウムビストリメチルシリルアミドのトルエン溶液等をはじめとして、種々の組み合わせの溶液が挙げられ、幾つかの溶液は市販品として容易に入手することができる。温和な反応条件、取り扱いの容易さの観点から、好ましくは金属アルコキシド系の溶液が用いられ、生成する重合体の溶解性、取り扱いの容易さ、反応の効率性、生成する重合体の溶解性等の観点から、より好ましくは金属t−ブトキシドのエーテル系が用いられ、さらに好ましくはカリウムt−ブトキシドのテトラヒドロフラン溶液が用いられる。
【0022】
上記重合反応はホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液に塩基溶液を添加してもよく、塩基溶液にホスホン酸エステル化合物およびアルデヒド化合物の溶液を加えてもよく、同時に反応系に加えてもよく、添加の順序に制約はない。
上記重合反応における重合時間は、用いられるモノマーの反応性、または望まれる重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよいが、0.2時間〜30時間が好適である。
上記重合反応における反応温度は特に制御する必要なく室温において良好に重合反応が進行するが、反応効率をより上げるために加熱したり、またはより温和な条件に冷却することも可能である。
【0023】
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤または、末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応途中または反応後に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるπ共役ポリマーの末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。
【0024】
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。
【0025】
また、機械的特性を改良するために重合時に分岐化剤を少量加えることもできる。使用される分岐化剤は、重合反応活性基を3つ以上(同種でも異種でもよい)有する化合物である。これらの分岐化剤は単独で使用してもよく、また複数併用してもよい。
【0026】
以上のようにして得られた重合体は、重合に使用した塩基、未反応モノマー、末端停止剤、また、重合中に発生した無機塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、カラムクロマト法、吸着法、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
【0027】
上記製造方法により得られた本発明の重合体は、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の公知の成膜方法により、クラックのない強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能であり、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子用材料として好適に用いることができる。
【0028】
次に本発明の重合体の構成単位(I)、(II)および(III)についてさらに詳細に説明する。
前記一般式(I)における置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基としては単環基、多環基(縮合多環基、非縮合多環基)のいずれでもよく、芳香族炭化水素基として以下のものを挙げることができる。例えばフェニル基、ナフチル基、ピレニル基、フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などが挙げられる。また芳香族複素環基としてはチオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール等が挙げられる。
【0029】
また、上記の芳香族炭化水素基および芳香族複素環基は以下に示す置換基を有していてもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルキル基、アルコキシ基。
(3)アリールオキシ基。(アリール基としてフェニル基、ナフチル基を有するアリールオキシ基が挙げられる。これは、炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルキル基、炭素数1〜25の無置換もしくは置換のアルコキシ基、又はハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。)
(4)アルキルチオ基又はアリールチオ基。(アルキルチオ基又はアリールチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。)
(5)アルキル置換アミノ基。(具体的には、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(p−トリル)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ユロリジル基等が挙げられる。)
(6)アシル基。(アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。)
【0030】
本発明の重合体(I)、(II)および(III)は上述のように芳香環上に置換基を有するこができるが、有機溶媒への溶解性向上の観点からアルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基などがより好ましい。これら置換基の炭素数が増加すれば溶解性はより向上するが、その反面、電荷輸送性等の特性は低下してしまうため、溶解性が損なわれない範囲で所望の特性が得られるような置換基を選択することが好ましい。その場合の好適な置換基の例としては炭素数が1〜25のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。更に好適には、炭素数が2〜18のアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基が挙げられる。これら置換基は同一のものを複数導入してもよいし、異なるものを複数導入してもよい。また、これらのアルキル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基はさらにハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または炭素数1〜12の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基で置換されたフェニル基を含有していてもよい。
【0031】
アルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を一例として挙げることができ、アルコキシ基、アルキルチオ基としては上記アルキル基の結合位に酸素原子または硫黄原子を挿入してアルコキシ基、アルキルチオ基としたものが一例として挙げられる。
【0032】
本発明のトランジスタに用いられる重合体の合成に用いることのできるホスホン酸エステル化合物の一例を以下に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
本発明の重合体は、アルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基の存在により、溶媒への溶解性が向上する。これらの材質において溶解性を向上させることは、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など製造の際、湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。例えば塗工溶媒の選択肢の拡大、溶液調製時の温度範囲の拡大、溶媒の乾燥時の温度及び圧力範囲の拡大となり、これらプロセッシビリティーの高さにより高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる。
【0035】
<塗布方法:有機半導体層>
本発明に係わる有機半導体材料は、例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、トルエン、ジクロロベンゼン及びキシレン等の溶剤に溶解して、支持体上に塗布することによって薄膜を形成することができる。
これら有機半導体薄膜の作製方法としては、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、ディスペンス法等が挙げられ、材料に応じて、適した上記製膜方法と、上記溶媒から適切な溶媒が選択される。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層の膜厚としては、特に制限はないが、均一な薄膜(即ち、有機半導体層のキャリア輸送特性に悪影響を及ぼすギャップやホールがない)が形成されるような厚みに選択される。
有機半導体薄膜の厚みは、一般に1μm以下、特に5〜200nmが好ましい。
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、上記重合体を主成分として形成される有機半導体層は、ソース電極、ドレイン電極及び絶縁膜に接して形成される。
【0036】
<絶縁膜>
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて用いられる絶縁膜には、種々の絶縁膜材料を用いることができる。例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコウム酸化チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等の無機系絶縁材料が挙げられる。
また、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド、無置換またはハロゲン原子置換ポリパラキシリレン、ポリアクリロニトリル、シアノエチルプルラン等の高分子化合物を用いることができる。
さらに、上記絶縁材料を2種以上合わせて用いても良い。特に材料は限定されないが、中でも誘電率が高く、導電率が低いものが好ましい。
上記材料を用いた絶縁膜層の作製方法としては、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法のドライプロセスや、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法、キャスト法、ブレードコート法、バーコート法等の塗布によるウェットプロセスが挙げられる。
【0037】
<HMDS等 有機半導体/絶縁膜界面修飾>
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、絶縁膜と有機半導体層の接着性を向上、ゲート電圧の低減、リーク電流低減等の目的で、これら層間に有機薄膜を設けても良い。有機薄膜は有機半導体層に対し、化学的影響を与えなければ、特に限定されないが、例えば、有機分子膜や高分子薄膜が利用できる。
【0038】
有機分子膜としては、オクタデシルトリクロロシランやヘキサメチレンジシラザン等を具体的な例としたカップリング剤が挙げられる。また、高分子薄膜としては、上述の高分子絶縁膜材料を利用することができ、これらが絶縁膜の一種として機能していても良い。また、この有機薄膜をラビング等により、異方性処理を施していても良い。
【0039】
<電極>
本発明の有機薄膜トランジスタに用いられるゲート電極、ソース電極、ゲート電極としては、導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン、鉛、タンタル、インジウム、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等、及びこれらの合金やインジウム・錫酸化物等の導電性金属酸化物、あるいはドーピング等で導電率を向上させた無機及び有機半導体、例えば、シリコン単結晶、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ゲルマニウム、グラファイト、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチエニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。
ソース電極及びドレイン電極は、上記導電性の中でも半導体層との接触面において、電気抵抗が少ないものが好ましい。
【0040】
電極の形成方法としては、上記材料を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングしても良いし、塗工膜からリソグラフィーやレーザーアブレーション等により形成しても良い。さらに導電性ポリマーや導電性微粒子を含むインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
【0041】
<引き出し電極、保護層>
また、本発明の有機薄膜トランジスタは、必要に応じて各電極からの引出し電極を設けることができる。
本発明の有機トランジスタは、大気中でも安定に駆動するものであるが、機械的破壊からの保護、水分やガスからの保護、またはデバイスの集積の都合上の保護等のため必要に応じて保護層を設けることもできる。
【0042】
<応用デバイス>
本発明の有機薄膜トランジスタは、液晶、有機EL、電気泳動等の表示画像素子を駆動するための素子として利用でき、これらの集積化により、いわゆる「電子ペーパー」と呼ばれるディスプレイを製造することが可能である。また、ICタグ等のデバイスとして、本発明の有機薄膜トランジスタを集積化したICを利用することが可能である。
【実施例】
【0043】
本発明で用いられる重合体の合成例を示す。
<合成例1>
窒素ガス置換した50mlフラスコ中にて、下記式で表わされるジアルデヒド0.662g(1.417mmol)、表1中(V−5)で示されるジホスホネート0.880g(1.417mmol)を脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液4.2mlを室温にて徐々に滴下した。
【0044】
【化5】


滴下後室温で4.5時間撹拌した後、ベンズアルデヒド23mgを加え1.5時間攪拌し、ついで、ベンジルホスホン酸ジエチル45mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。内容物を水に滴下することにより粗ポリマーを得た。これをテトラヒドロフラン/メタノール、ついで、テトラヒドロフラン/アセトンで再沈精製を行なった後、塩化メチレンに溶解し、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、メタノール中に滴下してオレンジ色の下記式で示される本発明の重合体−1、0.33gを得た。
【0045】
【化6】


元素分析値(%)実測値(計算値)は、C:81.03(81.28)、H:8.09(7.93)、N:1.99(1.93)、S:4.27(4.43)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は18900、重量平均分子量は69000であった。
【0046】
<合成例2>
窒素ガス置換した50mlフラスコ中にて、合成例1で用いたジアルデヒド化合物0.862g(1.843mmol)、表1中(V−9)で示されるジホスホネート化合物1.170g(1.843mmol)を脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液5.6mlを室温にて徐々に滴下した。
滴下後室温で4.5時間撹拌した後、ベンズアルデヒド30mgを加え1.5時間攪拌し、ついで、ベンジルホスホン酸ジエチル59mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。内容物を水に滴下することにより粗ポリマーを得た。これをテトラヒドロフラン/メタノール、ついで、テトラヒドロフラン/アセトンで再沈精製をおこなった後、塩化メチレンに溶解し、イオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、メタノール中に滴下して黄色の下式で示される重合体−2、0.91gを得た。
【0047】
【化7】


元素分析値(%)実測値(計算値)は、C:86.27(86.20)、H:7.85(8.00)、N:1.73(1.76)、S:4.01(4.04)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は14,500、重量平均分子量は52,900であった。
【0048】
<合成例3>
窒素ガスで置換した50mlフラスコ中に、「合成例1」で用いたジアルデヒド化合物0.766g(1.637mmol)と、表1中(V−13)で示されるジホスホネート化合物0.767g(1.637mmol)とを脱水テトラヒドロフラン20mlに溶解し、カリウムt−ブトキシドの1.0moldm−3テトラヒドロフラン溶液5.0mlを室温に徐々に滴下して加えた。
滴下後室温で3時間撹拌した後、ベンズアルデヒド27mgを加え1.5時間攪拌し、次いで、ベンジルホスホン酸ジエチル52mgを加え1.5時間攪拌した後、酢酸で中和した。中和された内容物を水に滴下して粗ポリマーを得た。これをクロロホルム溶液としてシリカゲルカラムにて処理した後、このポリマー溶液をイオン交換水でその洗浄液の導電率がイオン交換水と同等になるまで洗浄を繰り返した。洗浄後、この洗浄物をメタノール中に滴下してオレンジ色の下式で示される重合体−3、0.35gを得た。
【0049】
【化8】


元素分析値(%)実測値(計算値)は、C:80.02(80.34)、H:6.98(7.22)、N:2.12(2.23)、S:10.05(10.21)。
GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量は2,800、重量平均分子量は4,800であった。
【0050】
<有機薄膜トランジスタ評価用基板の作製例>
30mm×30mmのp−ドープされたシリコン基板表面を熱酸化してSiOの絶縁膜を200nm形成した後、片面だけレジスト膜(東京応化製:TSMR8800)で覆い、もう片面をフッ酸により酸化膜を除去した。次いで、この熱酸化膜を除去した面にアルミニウムを300nm蒸着した。その後、レジスト膜をアセトンで除去し、有機薄膜トランジスタ評価用基板を作製した。
【0051】
<実施例1>
上記方法にて作製した有機薄膜トランジスタ評価用基板上に、合成例1で合成した重合体を用いて、下記の有機薄膜トランジスタを作製した。
上記重合体1の約1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を基板上にスピンコートして乾燥することにより、膜厚30nmの有機半導体層を作製した。
次いで、チャネル長30μm、チャネル幅10mmとなるように、金を蒸着することにより膜厚100nmのソース電極およびドレイン電極を形成し、有機薄膜トランジスタを作製した。
さらに、この有機薄膜トランジスタの特性の再現性を確認するため、同様の操作を繰り返し、有機薄膜トランジスタを作製した。
これら作製した有機薄膜トランジスタは、図1(D)の構造を有し、支持体として用いたp−ドープされたシリコン基板は下部に設けたアルミニウム薄膜とともにゲート電極として作用する。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定した。
なお、有機薄膜トランジスタの電界効果移動度の算出には、以下の式を用いた。
Ids=μCinW(Vg−Vth)/2L
(ただし、Cinはゲート絶縁膜の単位面積あたりのキャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長、Vgはゲート電圧、Idsはソースドレイン電流、μは移動度、Vthはチャネルが形成し始めるゲートの閾値電圧である。)
作製した有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、それぞれ、6.0×10−5cm/Vsおよび5.7×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0052】
<実施例2>
実施例1において、上記重合体1の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、5.7×10−5cm/Vsおよび5.8×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例1と実施例2から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0053】
<実施例3>
実施例1において、上記重合体2の1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、6.6×10−5cm/Vsおよび6.8×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0054】
<実施例4>
実施例1において、上記重合体2の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、6.7×10−5cm/Vsおよび7.0×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例3と実施例4から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0055】
<実施例5>
実施例1において、上記重合体3の1.0wt%のTHF/パラキシレン=8/2の混合溶媒からなる溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.4×10−5cm/Vsおよび1.6×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
【0056】
<実施例6>
実施例1において、上記重合体3の1.0wt%トルエン溶液を用いてスピンコートした以外は、実施例1と同様にして、2つの有機薄膜トランジスタを作製した。
このように作製した有機薄膜トランジスタの特性である電界効果移動度を測定したところ、1.5×10−5cm/Vsおよび1.7×10−5cm/Vsであった。
このように、作製したトランジスタは、素子間のバラツキが少なく、かつ、再現性良くトランジスタ特性が得られていることがわかる。
また、実施例5と実施例6から、再現性に優れ、かつ、溶媒種による特性のバラツキも少ない有機薄膜トランジスタが提供できることが明らかとなった。
【0057】
<比較例1>
実施例1において、SiO絶縁膜上に、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体の0.5wt%キシレン溶液をスピンコートして成膜した以外は実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、5.1×10−4cm/Vs、1.6×10−3cm/Vsであった。
【0058】
<比較例2>
実施例1において、SiO絶縁膜上に、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体の0.5wt%テトラヒドロフラン溶液をスピンコートして成膜した以外は実施例1と同様にして有機薄膜トランジスタを作製した。
この有機薄膜トランジスタの電界効果移動度は、1.3×10−4cm/Vs、5.2×10−4cm/Vsであった。
【0059】
以上の結果から、9,9−ジオクチルフルオレンとビチオフェンとの共重合体は、トランジスタ特性がバラツキを示すのに対し、本発明の高分子有機半導体を用いた有機薄膜トランジスタは、再現性が高く、溶媒種による影響が少ないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の有機薄膜トランジスタの概略図である。
【符号の説明】
【0061】
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機半導体層を具備する有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層が、下記一般式(I)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とするものであることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【化1】

(式中、Ar、Ar、Ar、Arは置換または無置換の芳香族炭化水素もしくは置換または無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
xは1以上3以下の整数を表わし、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよ同じ水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、これらは、xが2又は3の整数であるとき、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)
【請求項2】
上記一般式(I)で示される繰返し単位を有する重合体を含む有機半導体層が下記一般式(II)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜トランジスタ。
【化2】

(式中、ArおよびArは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素または置換もしくは無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、xは1以上3以下の整数を表わし、yおよびzはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表わし、x、yまたはzがそれぞれ独立に2以上の整数の場合、x個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、y個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、z個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)
【請求項3】
上記一般式(I)および(II)で示される繰返し単位を有する重合体を含む有機半導体層が下記一般式(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機薄膜トランジスタ。
【化3】

(式中、Arは置換もしくは無置換の芳香族炭化水素または置換もしくは無置換の芳香族複素環の二価基を表わす。
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルコキシ基、及び置換又は無置換のアルキルチオ基からなる群より選択される基であり、xは1以上3以下の整数を表わし、y、zおよびuはそれぞれ独立に1以上4以下の整数を表わし、x、y、zまたはuがそれぞれ独立に2以上の整数の場合、x個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、y個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、z個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、u個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族炭化水素基を表わす。)
【請求項4】
有機半導体層と、この有機半導体層を通じて電流を流すための対をなす電極を設けてなる構造体と、第三の電極とからなる有機薄膜トランジスタであって、有機半導体層が上記一般式(I)、(II)または(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。
【請求項5】
少なくとも三つの電極と、絶縁層及び有機半導体層とから構成される有機薄膜トランジスタであって、有機半導体層が上記一般式(I)、(II)または(III)で示される繰り返し単位を有する重合体を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機薄膜トランジスタ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−71020(P2009−71020A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237600(P2007−237600)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】