説明

本質的に溶媒を含まない小粒子の製造のためのプロセス

本発明は、水混和性有機溶媒に溶解した有機化合物の溶液を水性媒体と混合して混合物を形成することおよび混合物をホモジナイズするのと同時に連続的に有機溶媒を除去することにより有機溶媒を本質的に含有しない小粒子の水性懸濁液を形成することによって、有機化合物の小粒子の形成に関する。これらの工程は、好ましくは、非経口、経口、肺内、鼻腔内、口腔、局所、眼内、直腸内、膣内、経皮等のような投与経路によるインビボの送達に適する、難溶性の薬学的に活性な化合物の小粒子の水性懸濁液を調製するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2000年12月22日出願の仮特許出願番号第60/258,160号の優先権を主張する2001年6月5日出願の出願番号第09/874,637号の一部継続出願である2001年9月17日出願の出願番号第09/953,979号の一部継続出願である2001年10月19日出願の出願番号第10/035,821号の一部継続出願である2002年9月17日出願の出願番号第10/246,802号の一部継続出願である2003年3月17日出願の出願番号第10/390,333号の一部継続出願である。上記した全ての出願は、本明細書中で参考として援用され、本発明の部分を構成する。
【0002】
(連邦支援の研究または開発)
該当なし。
【0003】
(発明の背景)
(技術分野)
本発明は、水混和性有機溶媒に溶解した有機化合物の溶液を水性媒体と混合して混合物を形成する工程、および、同時に混合物をホモジナイズしながら連続的に有機溶媒を除去することにより有機溶媒を本質的に含有しない小粒子の水性懸濁液を形成する工程により、有機化合物の小粒子を形成することに関する。これらのプロセスは好ましくは、非経口、経口、肺内、鼻腔内、口腔、局所、眼内、直腸内、膣内、経皮等のような投与経路によるインビボでの送達に適する、水に難溶性の薬学的に活性な化合物の小粒子の水性懸濁液を調製するために使用される。
【背景技術】
【0004】
(背景技術)
水溶液中において難溶性または不溶性を示す治療または診断作用のために製剤される、年々増大している多くの有機化合物が存在する。このような薬剤は、上記詳述した投与経路によりそれらを送達する場合には困難をもたらす。水に不溶である化合物は、サブミクロンの粒子の安定な懸濁液として製剤された場合には多大な利益を得ることができる。粒径の正確な制御は、これらの製剤の安全で有効な使用のために必須である。粒子は、塞栓を誘発することなく毛細管を安全に通過するためには直径が7ミクロン未満でなければならない(Allenら,1987;DavisおよびTaube,1978;Schroederら,1978;Yokelら,1981)。この問題点の1つの解決法は、不溶性薬剤候補の小粒子の調製およびマイクロ粒子状またはナノ粒子状の懸濁液の形成である。このようにすることにより、水系で製剤することが以前は不可能であった薬剤を静脈内投与に適するものにできる。静脈内投与への適正には、小粒径(<7μm)、低毒性(毒性の製剤成分または残留溶媒に由来)および投与後の薬剤粒子のバイオアベイラビリティが包含される。
【0005】
水不溶性薬剤の小粒子の調製はまた、経口、肺内、局所、眼内、鼻腔内、口腔、直腸内、膣内、経皮投与または他の投与経路に適し得る。粒子の小粒径は、薬剤の溶解速度を向上させ、従ってバイオアベイラビリティおよび潜在的にはその毒性の側面も改善する。これらの経路により投与された場合、薬剤の投与経路、製剤、溶解度およびバイオアベイラビリティに応じて5〜100μmの範囲の粒径を有することが望ましい。例えば、経口投与の場合は、約7μm未満の粒径を有することが望ましい。肺内投与の場合は、粒子は好ましくは約10μm未満の大きさである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は水混和性の第1の溶媒中における溶解度が水性の第2の溶媒中におけるものよりも高値である有機化合物の小粒子の懸濁液を調製するための方法を提供する。この方法は、(i)水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;(ii)この溶液を第2の溶媒と混合して混合物を形成する工程;および、(iii)この混合物を同時にホモジナイズし、かつ混合物から第1の溶媒を連続的に除去することにより、約100μmより小さい平均有効粒径を有する小粒子の水性懸濁液を形成する工程を包含する。この水性懸濁液は、本質的に第1の溶媒を含有しない。1つの実施形態においては、第2の溶媒との第1の溶液の混合は、混合物をホモジナイズしながらその混合物から第1の溶媒を連続的に除去することと同時に行われる。水混和性の第1の溶媒は、プロトン性の有機溶媒または非プロトン性の有機溶媒であり得る。好ましい実施形態においては、このプロセスは、さらに、第1の水混和性の溶媒または第2の溶媒、または第1の水混和性の溶媒と第2の溶媒との両方に、表面修飾剤1つ以上を混合する工程を包含する。
【0007】
この方法はさらに、加熱滅菌またはガンマ線照射により水性懸濁液を滅菌する工程を包含することができる。1つの実施形態においては、加熱滅菌は、ホモジナイザー内部において行われ、その場合のホモジナイザーは、滅菌のための加熱加圧源として作用する。滅菌はまた、混合前に溶液および第2の溶媒を滅菌濾過することおよびその後の工程を無菌的条件下で実施することにより達成することができる。
【0008】
この方法はまたさらに、水性溶媒を除去して小粒子の乾燥粉末を形成する工程を包含できる。
【0009】
これらの方法は好ましくは、非経口、経口、肺内、鼻腔内、口腔、局所、眼内、直腸内、膣内、経皮等のような投与経路によるインビボの送達に適する、水に難溶性の薬学的に活性な化合物の小粒子の水性懸濁液を調製するために使用される。
【0010】
本発明のこれらおよびその他の特徴および属性は、後に示す図面および添付する明細書を参照しながら考察する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は、多くの異なる形態において実施形態が可能である。本発明の好ましい実施形態は、本開示が本発明の原理の例示とみなされ、そして記載した実施形態に本発明の広範な特徴を限定する意図がないことを理解しながら開示される。
【0012】
本発明は、有機化合物の小粒子を形成するための組成物および方法を提供する。本発明のプロセスにおいて使用する有機化合物は、溶媒ごとに溶解度が減少する何れかの有機性の化学的実体である。この有機化合物は、薬学的に活性な化合物であり、これは治療薬、診断薬、化粧品、栄養補給剤および農薬から選択され得る。
【0013】
治療薬は、種々の既知の医薬品、例えば鎮痛剤、麻酔剤、興奮剤、アドレナリン作用剤、アドレナリンブロッキング剤、抗アドレナリン剤、副腎皮質剤、アドレナリン様作用剤、抗コリン作用剤、抗コリンエステラーゼ、鎮痙剤、アルキル化剤、アルカロイド、アロステリック阻害剤、アナボリックステロイド、食欲抑制剤、制酸剤、抗下痢剤、解毒剤、抗葉酸剤、解熱剤、抗リューマチ剤、精神病治療薬、神経遮断薬、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝固剤、抗欝剤、抗糖尿病剤、抗癲癇剤、抗カビ剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗マイコバクテリア剤、抗マラリア剤、防腐剤、抗新生物剤、抗原虫剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、抗甲状腺剤、抗ウィルス剤、不安緩解鎮静剤、収斂剤、ベータ−アドレナリン作用性受容体ブロッキング剤、造影剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、診断薬、診断用画像化剤、利尿剤、ドーパミン作用剤、止血剤、血液学的薬剤、ヘモグロビン修飾剤、ホルモン、催眠剤、免疫学的薬剤、抗高脂血剤および他の脂質調節剤、ムスカリン剤、筋肉弛緩剤、副交感神経様作用剤、上皮小体カルシトニン、プロスタグランジン、放射線医薬品、鎮静剤、性ホルモン、抗アレルギー剤、刺激剤、交感神経様作用剤、甲状腺剤、血管拡張剤、ワクチン、ビタミンおよびキサンチンから選択できるが、これらに限定されない。抗新生物剤または抗がん剤としては、例えばパクリタキセルおよび誘導体化合物ならびにアルカロイド、抗代謝剤、酵素阻害剤、アルキル化剤および抗生物質からなる群より選択される他の抗新生物剤が挙げられるがこれらに限定されない。治療薬はまた、タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチドおよび核酸を包含する生物学的物質であり得る。タンパク質は、ポリクローナルまたはモノクローナルであり得る抗体であり得る。
【0014】
診断薬には、X線画像化剤および造影剤が包まれる。X線画像化剤の例としては、ジアトラゾン酸のエチルエステル(EEDA)としても知られるWIN−8883(エチル3,5−ジアセトアミド−2,4,6−トリヨードベンゾエート)、WIN67722、すなわち(6−エトキシ−6−オキソヘキシル−3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾエート;エチル−2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨード−ベンジルオキシ)ブチレート(WIN 16318);エチルジアトリゾキシアセテート(WIN 12901);エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)プロピネート(WIN 16923);N−エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシアセトアミド(WIN 65312);イソプロピル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)アセトアミド(WIN 12855);ジエチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシマロネート(WIN 67721);エチル2−(3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨードベンゾイルオキシ)フェニルアセテート(WIN 67585);プロパン二酸、[[3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,5−トリヨードベンゾイル]オキシ]ビス(1−メチル)エステル(WIN 68165);および安息香酸,3,5−ビス(アセチルアミノ)−2,4,6−トリヨード−4−(エチル−3−エトキシ−2−ブテノエート)エステル(WIN 68209)が挙げられる。好ましい造影剤としては、生理学的条件下で比較的急速に崩壊するためいかなる粒子関連の炎症応答も最小限とすることが期待される造影剤が挙げられる。崩壊は、酵素的加水分解、生理学的pHにおけるカルボン酸の可溶化または他の機序により生じるものであってよい。すなわち、ヨージパミド、ジアトリゾン酸およびメトリゾン酸のような難溶性を有するヨウ素化カルボン酸ならびにWIN 67721、WIN 12901、WIN 68165およびWIN 68209のような加水分解的に不安定なヨウ素化物質種、または他のものが好ましくあり得る。
【0015】
他の造影剤としては、例えば、ガドリニウムキレートのような磁気共鳴画像化剤の特定の製剤または他の常磁性体の造影剤が挙げられるがこれらに限定されない。このような化合物の例は、ガドペンテテートジメグルミン(Magnevist(登録商標))およびガドテリドール(Prohance(登録商標))である。
【0016】
治療薬および診断薬のこれらのクラスの説明ならびに各クラス内の物質種の一覧は、本明細書中に参考として援用され本発明の部分を構成するMartindale,The Extra Pharmacopeia,第29版,The Pharmaceutical Press,London,1989に見出され得る。治療薬および診断薬は、市販品および/または当該分野で公知の手法により調製され得るものである。
【0017】
化粧剤は、化粧活性を有することができる何れかの活性成分である。これらの活性成分の例としては、特に、皮膚軟化剤、湿潤剤、フリーラジカル抑制剤、抗炎症剤、ビタミン、脱色素剤、抗アクネ剤、抗脂漏薬、角質溶解剤、スリミング剤、皮膚着色剤および日焼け止め剤、そして特にリノレン酸、レチノール、レチン酸、アスコルビン酸アルキルエステル、多不飽和の脂肪酸、ニコチン酸エステル、ニコチン酸トコフェロール、コメ、ダイズまたはシアバターの非ケン化性物質、セラミド、ヒドロキシ酸、例えばグリコール酸、セレン誘導体、抗酸化剤、βカロテン、γオリザノールおよびステアリルグリセレートが挙げられる。化粧品は、市販品および/または当該分野で公知の手法により調製され得るものである。
【0018】
本発明の実施において使用することを企図する栄養補給剤の例としては、タンパク質、炭水化物、水溶性ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB複合ビタミン等)、脂溶性ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等)およびハーブエキスが挙げられるがこれらに限定されない。栄養補給剤は市販品および/または当該分野で公知の手法により調製され得るものである。
【0019】
農薬という用語は、除草剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、外寄生生物撲滅薬および殺カビ剤を包含するものと理解される。本発明の農薬が属する化合物クラスの例としては、尿素、トリアジン、トリアゾール、カーバメート、リン酸エステル、ジニトロアニリン、モルホリン、アシルアラニン、ピレスロイド、ベンジル酸エステル、ジフェニルエーテルおよび多環ハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらのクラスの各々における農薬の特定の例は、Pesticide Manual,第9版,British Crop Protection Councilに列挙されている。農薬は、市販品および/または当該分野で公知の手法により調製され得るものである。
【0020】
好ましくは、有機化合物または薬学的に活性のある化合物は、水に難溶性である。「水に難溶性」とは、約10mg/mL未満、好ましくは1mg/mL未満の、化合物の水への溶解度である。これらの水に難溶性の薬剤は、それらが水性媒体中にこれらの薬剤を製剤する場合の限定された代替物であるので、水性懸濁液製剤に最も適している。
【0021】
本発明はまた、水溶性の薬学的に活性な化合物を用いて、これらの化合物を固体担体マトリックス(例えばポリラクチド−ポリグリコリドコポリマー、アルブミン、デンプン)中に取り込むことによるか、または、これらの化合物を薬学的化合物に対して非透過性である包囲ベシクル中に被包することにより、実施することもできる。この被包ベシクルはポリアクリレートのようなポリマーコーティングであることができる。さらにまた、これらの水溶性医薬から調製された小粒子は、化学安定性を向上させるため、および粒子からの薬剤の放出を制御することにより薬剤の薬物動態特性を制御するために、修飾することができる。水溶性医薬の例としては、単純な有機化合物、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび炭水化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の粒子は、動的光散乱法、例えば、光相関分光光度計、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光不透過法(例えばコールター法)、レオロジーまたは顕微鏡観察(光または電子)により測定した場合に一般的には約100μm未満の平均有効粒径を有する。しかしながら、粒子は広範な大きさ、例えば約20μm〜約10nm、約10μm〜約10nm、約2μm〜約10nm、約1μm〜約10nm、約400nm〜約50nm、約200nm〜約50nm、またはその中の何れかの範囲または範囲の組み合わせとなるように調製できる。好ましい平均有効粒径は、化合物の意図する投与経路、製剤、溶解度、毒性およびバイオアベイラビリティのような要因に応じて変動する。
【0023】
非経口投与に適するためには、粒子は好ましくは約7μm未満、より好ましくは約2μm未満、または何れかの範囲または範囲の組み合わせの平均有効粒径を有する。非経口投与は、静脈内、動脈内、クモ膜下腔内、腹腔内、眼内、関節内、硬膜内、脳室内、心膜内、筋肉内、皮内または皮下注射を包含する。
【0024】
経口剤型のための粒径は2μm超であることができる。粒子は十分なバイオアベイラビリティおよび経口剤型の他の特性を有する限り、約100μmまでの粒径の範囲であり得る。経口剤型は錠剤、カプセル、カプレット、ソフトゲルカプセルおよびハードゲルカプセル、または経口投与により薬剤を送達するための他の送達ビヒクルを包含する。
【0025】
本発明はさらに、肺投与のために適する剤型中に有機化合物の粒子を与えるために適している。肺用の剤型のための粒径は500nm超であることができ、典型的には約10μm未満である。懸濁液中の粒子はエアロゾル化され得、そして肺投与用のネブライザにより投与できる。あるいは、粒子は懸濁液から液相を除去した後に乾燥粉末吸入器により乾燥粉末として投与でき、あるいは、乾燥粉末は計量用量吸入器による投与のための非水性の高圧ガス中に再懸濁することができる。適切な高圧ガスの例はヒドロフルオロカーボン(HFC)、例えばHFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)およびHFC−227ea(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)である。クロロフルオロカーボン(CFC)とは異なり、HFCはオゾン枯渇の可能性が殆ど、または全くない。
【0026】
他の送達経路、例えば経鼻、局所、眼内、経鼻腔、口腔舌下、直腸内、膣内、経皮等のための剤型もまた本発明により調製される粒子から製剤できる。
【0027】
粒子を調製するためのプロセスは、4種の一般的なカテゴリーに分別できる。プロセスカテゴリーの各々は、以下の工程、すなわち(1)水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解して溶液を形成する工程、(2)第1の溶液を第2の溶媒と混合して有機化合物を沈殿させることにより予備懸濁液を形成する工程、および(3)高剪断混合または熱の形態で、または高剪断混合と熱との組み合わせの形態で、予備懸濁液にエネルギー付与することにより上記定義した所望の大きさの範囲を有する有機化合物の安定な形態を与える工程を共有している。混合の工程およびエネルギー付与工程は連続する工程において、または同時に実施することができる。
【0028】
プロセスカテゴリーはエネルギー付与工程の前およびエネルギー付与工程の後に実施されるX線回折試験、示差走査熱量測定(DSC)試験または他の適切な試験により測定された有機化合物の物理的特性に基づいて識別される。第1のプロセスカテゴリーにおいて、エネルギー付与工程の前には、予備懸濁液中の有機化合物は不定形の形態、半結晶の形態または過冷却液体の形態をとり、そして平均有効粒径を有している。エネルギー付与工程の後、有機化合物は、予備懸濁液の場合と本質的に同じかまたはそれ未満の平均有効粒径を有する結晶形態となる。
【0029】
第2のプロセスカテゴリーにおいて、エネルギー付与工程の前の有機化合物は、結晶形態であり、そして平均有効粒径を有している。エネルギー付与工程の後、有機化合物は、エネルギー付与工程の前と本質的に同様の平均有効粒径を有する結晶形態であるが、エネルギー付与工程後に結晶は凝集し難くなっている。
【0030】
有機化合物が凝集する傾向が低下していることは、レーザー動的光散乱および光学顕微鏡分析により観察される。
【0031】
第3のプロセスカテゴリーにおいて、エネルギー付与工程の前には有機化合物は、脆い結晶の形態であり、平均有効粒径を有する。「脆い」という用語は、粒子が壊れやすくより容易に分解されて小粒子になることを意味する。エネルギー付与工程の後、有機化合物は、予備懸濁液の結晶よりも小さい平均有効粒径を有する結晶形態である。有機化合物を脆い結晶形態にするために必要な工程をとることにより、脆さが小さい結晶形態の有機化合物と比較して、その後のエネルギー付与工程をより迅速かつ効率的に行うことができる。
【0032】
第4のプロセスカテゴリーにおいて、第1の溶液および第2の溶媒は、同時にエネルギー付与工程に供される。従って、エネルギー付与工程の前後の有機化合物の物理的特性は、測定されない。
【0033】
エネルギー付与工程は、予備懸濁液または第1の溶液および第2の溶媒がキャビテーション、剪断力または衝撃力に曝露される何れかの態様において実施できる。本発明の1つの好ましい実施形態においては、エネルギー付与工程はアニーリング工程である。アニーリングは、本発明においてはエネルギーの単回または反復適用(直接加熱または機械的応力)とその後の熱緩和により熱力学的に不安定な物質をより安定な形態に変換するプロセスとして定義される。エネルギーのこのような低下は、低秩序格子構造から高秩序格子構造への固体形態の変換により達成され得る。あるいは、この安定化は、固/液界面における界面活性剤分子の再秩序化により起こってもよい。
【0034】
これらの4種のプロセスカテゴリーは、後に個別に論じる。しかしながら界面活性剤または界面活性剤の組み合わせの選択、使用する界面活性剤の量、反応温度、溶液混合速度、沈殿速度等のようなプロセスの条件は、次に論じるカテゴリーの何れか1つの下において処理されるべき何れかの薬剤が得られるように選択することができる。
【0035】
第1のプロセスカテゴリー、ならびに第2、第3および第4のプロセスカテゴリーは、さらに2つのサブカテゴリー、すなわち図1および2に模式的に示す方法AおよびBにさらに分割できる。
【0036】
本発明の第1の溶媒は、目的の有機化合物が比較的可溶であり、そして第2の溶媒と混和性である溶媒または溶媒の混合物である。このような溶媒としては、例えば、分子内の水素原子が酸素、窒素または元素周期律表の他のVA族、VIA族およびVIIA族のような電気陰性の原子に結合している、水混和性のプロトン性化合物が挙げられるがこれらに限定されない。このような溶媒の例としては、アルコール類、アミン類(第1級または第2級)、オキシム類、ヒドロキサム酸類、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類、リン酸類、アミド類および尿素が挙げられるがこれらに限定されない。
【0037】
第1の溶媒の他の例はまた、非プロトン性の有機溶媒を包含する。これらの非プロトン性の溶媒の一部は水と水素結合を形成し得るがそれらは有効なプロトン供与基を欠いているのでプトロン受容体として機能するのみである。非プロトン性溶媒の1つのクラスは国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)により以下に定義されるとおり双極性の非プロトン溶媒である(IUPAC、Compendium of Chemical Terminology,第2版,1997):
強力な水素結合を形成するため不安定な水素原子を適切に供与することができない、約15より高値の、比較的高い相対誘電率(または誘電定数)、およびかなり大きい永久双極子モーメントを有する溶媒、例えばジメチルスルホキシド。
【0038】
双極性の非プロトン性溶媒はアミド(完全置換、結合した水素原子を欠く窒素を有する)、尿素(完全置換、窒素原子に結合した水素原子を有さない)、エーテル類、環状エーテル類、ニトリル類、ケトン類、スルホン類、スルホキシド類、完全置換ホスフェート類、ホスホン酸エステル類、ホスホルアミド類、ニトロ化合物等からなる群より選択できる。ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、2−ピロリジノン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリルおよびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ニトロメタンが特にこのクラスのメンバーである。
【0039】
溶媒は一般的には水不混和性であるが、低容量(10%未満)においては、このような低容量において水混和性の第1の溶媒として機能するのに十分な水溶性を有するものを選択してよい。例示されるものとしては、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類およびハロゲン化芳香族類、ハロゲン化アルケン類およびハロゲン化アルカン類が挙げられる。芳香族としては、ベンゼン(置換または非置換)および単環または多環のアレンが挙げられるがこれらに限定されない。置換ベンゼンの例にはキシレン(オルト、メタまたはパラ)およびトルエンが挙げられるがこれらに限定されない。アルカンの例としてはヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタンおよびシクロヘキサンが挙げられるがこれらに限定されない。ハロゲン化芳香族の例としてはクロロベンゼン、ブロモベンゼンおよびクロロトルエンが挙げられるが、これらに限定されない。ハロゲン化アルカンおよびハロゲン化アルケンの例にはトリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
上記した溶媒クラスの全ての例としては、N−メチル−2−ピロリジノン(別名N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(別名2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、ブチレングリコール(ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノアシル化モノグリセリドおよびジアシル化モノグリセリド(例えばグリセリルカプリレート)、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類、ハロゲン化芳香族類、ハロゲン化アルケン類、ハロゲン化アルカン類、キシレン、トルエン、ベンゼン、置換ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ポリエチレングリコール(PEG、例えばPEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150)、ポリエチレングリコールエステル類(例えばジラウリン酸PEG−4、ジラウリン酸PEG−20、イソステアリン酸PEG−6、パルミトステアリン酸PEG−8、パルミトステアリン酸PEG−150)、ポリエチレングリコールソルビタン類(例えばPEG−20ソルビタンイソステアレート)、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル(例えばPEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコールおよびグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)が挙げられるがこれらに限定されない。好ましい第1の溶媒はN−メチル−2−ピロリジノンである。別の好ましい第1の溶媒は乳酸である。
【0041】
第2の溶媒は水性の溶媒である。この水性溶液はそれ自体水であってよい。この溶媒はまた緩衝物質、塩、界面活性剤、水溶性ポリマーおよびこれらの賦形剤の組み合わせを含有してよい。
【0042】
(方法A)
方法A(図1参照)において、有機化合物(「薬剤」)をまず第1の溶媒に溶解することにより第1の溶液を形成する。有機化合物は第1の溶媒中の有機化合物の溶解度に応じて約0.1%(w/v)〜約50%(w/v)で添加することができる。第1の溶媒中の化合物の完全な溶解を確保するためには約30℃〜約100℃で濃縮物を加熱することが必要である。
【0043】
第2の水性溶媒は、それに添加されたアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または生物学的に界面活性の分子のような任意の界面修飾剤1つ以上と共に提供される。適切なアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホネート類、アルキルホスフェート類、アルキルホスホネート類、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンスルフェート類、アルギン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸およびそれらの塩、グリセリルエステル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、コール酸および他の胆汁酸類(例えばコール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸)およびそれらの塩(例えば、デオキシコール酸ナトリウム等)が挙げられるがこれらに限定されない。適切なカチオン性界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンズアルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、キトサン、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、塩酸アシルカルニチンまたはアルキルピリジニウムハライド)が挙げられるがこれらに限定されない。アニオン性界面活性剤としてはリン脂質を使用してよい。適切なリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ジアシル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(例えば、ジミリストイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DSPE)およびジオレオイル−グリセロ−ホスホエタノールアミン(DOPE))、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リソリン脂質、卵もしくは大豆のリン脂質またはこれらの組み合わせが挙げられる。リン脂質は、塩化または脱塩化、水素化または部分水素化、または、天然、半合成または合成のものであってよい。リン脂質はまた、水溶性または親水性のポリマーと結合体化されていてよい。好ましいポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、これはまたモノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)としても知られている。PEGの分子量は、例えば200〜50,000の範囲で変化し得る。一部の一般的に使用されている市販PEGとしては、PEG350、PEG550、PEG750、PEG1000、PEG2000、PEG3000およびPEG5000が挙げられる。リン脂質またはPEG−リン脂質結合体はまた、リガンド(例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物、糖タンパク質、抗体または薬学的に活性な物質が挙げられるがこれらに限定されない)に共有結合することができる官能基を取り込んでよい。これらの官能基は、例えば、アミド結合の形成、ジスルフィドまたはチオエーテルの形成、またはビオチン/ストレプトアビジン結合を介してリガンドと結合体化してよい。リガンド結合官能基の例としては、ヘキサノイルアミン、ドデカニルアミン、1,12−ドデカンジカルボキシレート、チオエタノール、4−(p−マレイミドフェニル)ブチルアミド(MPB)、4−(p−マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド(MCC)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(PDP)、スクシネート、グルタレート、ドデカノエートおよびビオチンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0044】
適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル類(MacrogolおよびBrij)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(Polysorbate)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類(Myrj)、ソルビタンエステル類(Span)、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー類(ポロキサマー)、ポロキサミン類、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、非結晶性セルロース、多糖類(例えば、デンプンおよびデンプン誘導体(例えば、ヒドロキシエチルデンプン(HES)))、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。本発明の好ましい実施形態においては、非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのコポリマーおよび好ましくはプロピレングリコールとエチレングリコールとのブロックコポリマーである。このようなポリマーは、商品名POLOXAMERの下で販売されており、しばしばPLURONIC(登録商標)とも称され、Spectrum ChemicalおよびRugerを含む幾つかの販売元から販売されている。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類には、短鎖アルキルを有するものも包含される。このような界面活性剤の1例は、BASF Aktiengesellschaftの調製するSOLUTOL(登録商標)HS 15、ポリエチレン−660−ヒドロキシステアレートである。
【0045】
界面活性の生物学的分子としては、アルブミン、カゼイン、ヒルジンまたは他の適切なタンパク質のような分子が挙げられる。多糖類の生物学的物質も包含され、それらは、例えばデンプン、ヘパリンおよびキトサンからなるが、これらに限定されない。
【0046】
水酸化ナトリウム、塩酸、トリス緩衝液またはクエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、メグルミン等のようなpH調節剤を第2の溶媒に添加することが望ましい。第2の溶媒は約3〜約11の範囲のpHを有さなければならない。
【0047】
経口剤型のためには、以下の賦形剤、すなわち、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド類)、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンズアルコニウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(例えば、マクロゴールエーテル類(例えば、セトマクロゴール1000))、ポリオキシエチレンひまし油誘導体類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、例えば、市販のTweenTM類、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド状二酸化珪素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルピロリドン(PVP)の1つ以上を利用してよい。これらの賦形剤の大部分はAmerican Pharmaceutical Association and The Pharmaceutical Society of Great Britain, the Pharmaceutical Press, 1986により共同出版されているHandbook of Pharmaceutical Excipientsに詳細に説明されている。界面修飾剤は市販品および/または当該分野で知られた手法で調製され得るものであることができる。2種以上の界面修飾剤を組み合わせて使用できる。
【0048】
本発明の好ましい形態において、有機化合物の小粒子を調製するための方法は、第2の溶媒に第1の溶液を添加する工程を包含する。添加速度は、バッチサイズおよび有機化合物の沈殿の速度論的特徴に応じたものである。典型的には、小規模の実験室のプロセス(1リットルの調製)の場合は、添加速度は約0.05cc/分〜約10cc/分である。添加中、溶液は一定の攪拌下になければならない。光学顕微鏡観察により不定形の粒子、半結晶の固体または過冷却の液体が形成されることにより予備懸濁液が生成していることがわかっている。この方法は、さらに不定形粒子、過冷却液体または半結晶の固体をより安定な結晶固体の状態に変換するためのエネルギー付与工程に予備懸濁液を付すという工程を包含する。得られる粒子は動的光散乱法(例えば光相関分光法、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光不透過法(例えばコールター法)、レオロジーまたは(光学または電子)顕微鏡観察により測定した場合に上記した範囲内の平均有効粒径を有する。プロセスカテゴリーの4つ目においては、第1の溶液および第2の溶媒を合わせながら、同時に例えばエネルギー付与工程を実施する。
【0049】
エネルギー付与工程は、音波処理、ホモジナイズ、対向流ホモジナイズ、マイクロフルイダイゼーションまたは衝撃、剪断またはキャビテーション力を与える他の方法を介してエネルギーを付与する工程を包含する。これらの試料は次の段階中に冷却または加熱してよい。本発明の1つの好ましい実施形態においては、エネルギー付与工程はAvestin Inc.から商品名EmulsiFlex−C160の下に販売されているもののようなピストンギャップホモジナイザーにより行われる。本発明の別の好ましい形態において、エネルギー付与工程はSonics and Materials, Inc.により製造されているVibra−Cell Ultrasonic Processor(600W)のような超音波プロセッサーを用いながら超音波により行ってもよい。本発明のさらに別の好ましい形態においては、エネルギー付与工程は、本明細書中に参考として援用され本発明の部分を構成する米国特許第5,720,551号に記載の乳化装置を用いることにより行ってよい。
【0050】
エネルギー付与の速度に応じて、処理されている試料の温度を約−30℃〜30℃の範囲に調節することが望ましい場合がある。あるいは、処理された固体において所望の相の変化を起こすために、エネルギー付与工程の間に予備懸濁液を約30℃〜約100℃の範囲の温度に加熱することが必要となる場合がある。
【0051】
(方法B)
方法Bは以下の点において方法Aとは異なる。第1の相違点は第1の溶液に界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを添加することである。界面活性剤は上記したアニオン系、非イオン系、カチオン系の界面活性剤および界面活性の生物学的修飾剤からなる群より選択してよい。
【0052】
(方法Aおよび方法Bならびに米国特許第5,780,062号の比較例)
米国特許第5,780,062号は、有機化合物の小粒子を、適切な水混和性の第1の溶媒中に化合物をまず溶解することにより調製する方法を開示している。第2の溶液は、ポリマーおよび両親媒性物質を水性溶媒中に溶解することにより調製する。次に第1の溶液を第2の溶液に添加することにより有機化合物およびポリマー−両親媒性物質複合体からなる沈殿を形成する。’062特許は、方法Aおよび方法Bにおける本発明のエネルギー付与工程の利用を開示していない。安定性の欠如は、典型的には急速な凝集および粒子の成長により顕在化する。一部の例においては、不定形の粒子が大型の結晶として再結晶する。上記した態様において予備懸濁液にエネルギーを付与することは、典型的には粒子の凝集および成長の速度の低下ならびに製品保存時の再結晶の不在を示す粒子を提供する。
【0053】
方法Aおよび方法Bは、さらに沈殿の前にポリマー−両親媒性物質複合体を形成する工程が無い点で’062特許のプロセスとは区別される。方法Aにおいては、このような複合体はポリマーを希釈剤(水性)の相に添加しないので形成することはできない。方法Bにおいては、両親媒性物質としても機能する界面活性剤が第1の溶媒中の有機化合物と共に溶解される。これにより沈殿の前のいかなる両親媒性物質−ポリマー複合体の形成も排除される。’062特許においては、小粒子の良好な沈殿は、沈殿より前の両親媒性物質−ポリマー複合体の形成に依存している。’062特許は、水性の第2の溶液中で両親媒性物質−ポリマー複合体が凝集物を形成することを開示している。’062特許は、疎水性の有機化合物が両親媒性物質−ポリマー複合体と相互作用することによりこれらの凝集物の溶解度を低下させ、沈殿を生じさせると説明している。本発明においては、第1の溶媒中に界面活性剤またはポリマーを含有させること(方法B)は、その後の第2の溶媒の添加時に、’062特許で説明されているプロセスで得られるものよりも、さらに均一で微細な粒子の形成をもたらす。
【0054】
この目的のために、製剤を調製して分析した。製剤の各々は、2種の溶液、すなわち濃縮物および水性希釈液を有し、これらを混合し、次に音波処理する。各製剤の濃縮物は、有機化合物(イトラコナゾール)、水混和性溶媒(N−メチル−2−ピロリジノンまたはNMP)および場合によりポリマー(ポロキサマー188)を有する。水性希釈液は、水、トリス緩衝液および場合によりポリマー(ポロキサマー188)および/または界面活性剤(ナトリウムデオキシコレート)を有する。有機粒子の平均粒径は、音波処理の前および音波処理の後に測定する。
【0055】
第1の製剤Aは、濃縮物としてイトラコナゾールおよびNMPを有する。水性希釈液は、水、ポロキサマー188、トリス緩衝液およびナトリウムデオキシコレートを含む。すなわち、水性希釈液は、ポリマー(ポロキサマー188)および両親媒性物質(ナトリウムデオキシコレート)を含み、これは重、合体/両親媒性物質複合体を形成してよく、そしてこのため、’062特許の開示に従っている。(しかしながら、ここでもまた’062特許はエネルギー付与工程を開示していない。)
第2の製剤Bは、濃縮物としてイトラコナゾール、NMPおよびポロキサマー188を有する。水性希釈液は、水、トリス緩衝液およびナトリウムデオキシコレートを含む。この製剤は、本発明に従って調製される。水性希釈液は、ポリマー(ポロキサマー)と両親媒性物質(ナトリウムデオキシコレート)との組み合わせを含有しないので、ポリマー/両親媒性物質複合体は、混合工程の前に形成されない。
【0056】
表1は、3連の懸濁液調製についてレーザー回折により決定された平均粒径を示す。初期の粒径測定を行った後に試料を1分間音波処理した。次に粒径の測定を反復した。方法Aの音波処理による大きい粒径の減少は、粒子の凝集を示していた。
【0057】
【表1】

本明細書に記載したプロセスの適用により得られる薬剤懸濁液は、注射用水を製剤に使用し溶液の滅菌のための適切な手段が適用される限り、注射用溶液として直接投与してよい。滅菌は、当該分野で周知の方法、例えば蒸気または加熱滅菌、ガンマ線照射等により行ってよい。特に粒子の99%超が200nm未満であるものに対する他の滅菌方法には、3.0ミクロンのフィルターを通した予備濾過、次いで0.45ミクロンの粒子フィルターを通した濾過、次いで蒸気または加熱滅菌または重複0.2ミクロンメンブレンフィルターを通した滅菌濾過を包含してもよい。滅菌のさらに別の手段は、薬剤および任意の界面活性剤を含有する第1の溶媒から調製した濃縮物の滅菌濾過および水性希釈液の滅菌濾過である。次にこれらを、好ましくは隔離された滅菌環境中において、滅菌混合容器中であわせる。次に懸濁液の混合、ホモジナイズおよびその後の処理を無菌条件下において実施する。
【0058】
滅菌のためのさらに別の操作法は、ホモジナイズ工程の前、最中、または後の滅菌またはホモジナイザーそのものの内部における加熱滅菌またはオートクレーブからなる。この加熱処理後の操作は、無菌条件下に行う。
【0059】
場合により、溶媒非含有の懸濁液を沈殿後の溶媒除去により調製してよい。これは、遠心分離、透析、透析濾過、力場分画(force−filed fractionation)、高圧濾過、逆浸透および当該分野で公知の他の分離手法により行うことができる。N−メチル−2−ピロリジノンの完全な除去は、典型的には1〜3連続の遠心分離の試行により行い;各遠心分離(18,000rpm30分)後には上清をデカントして、廃棄した。有機溶媒を有しない懸濁液ビヒクルの新しい容量を残存固体に添加し、混合物をホモジナイズにより分散させた。当業者の知る通り、他の高剪断混合手法もこの希釈再調製工程において適用できる。あるいは、溶媒非含有の粒子は経口、肺内、鼻腔内、局所、筋肉内等のような種々の投与経路に対して望ましい種々の剤型に製剤できる。
【0060】
さらにまた、界面活性剤のようないかなる望ましくない賦形剤も、上記パラグラフに記載した分離方法の使用により、より望ましい賦形剤と置き換えてよい。溶媒および第1の賦形剤は、遠心分離または濾過の後に上清と共に廃棄してよい。次に、溶媒非含有で第1の賦形剤も含まない懸濁液ビヒクルの新しい容量を添加してよい。あるいは、新しい界面活性剤を添加してよい。例えば薬剤、N−メチル−2−ピロリジノン(溶媒)、ポロキサマー188(第1の賦形剤)、ナトリウムデオキシコレート、グリセロールおよび水よりなる懸濁液を遠心分離および上清除去の後にリン脂質(新しい界面活性剤)、グリセロールおよび水と置き換えてよい。
【0061】
(I.第1のプロセスカテゴリー)
第1のプロセスカテゴリーの方法は、一般的に、水混和性の第1の溶媒中に有機化合物を溶解する工程、次いで、この溶液を水性溶媒と混合することにより予備懸濁液を形成する工程を包含し、ここで、有機化合物はX線回折試験、DSC、光学顕微鏡観察または他の分析手法により測定された場合に不定形の形態、半結晶の形態にあるか、または過冷却された液体であり、そして上記した有効粒径範囲の1つに包含される平均有効粒径を有する。混合工程の後にエネルギー付与工程を行う。
【0062】
(II.第2のプロセスカテゴリー)
第2のプロセスカテゴリーの方法は、本質的に第1のプロセスカテゴリーの工程の場合と同様の工程を包含するが、以下の点において異なる。予備懸濁液のX線回折、DSCまたは他の適切な分析手法によって、結晶形態にあり平均有効粒径を有する有機化合物が示される。エネルギー付与工程の後の有機化合物は、エネルギー付与工程の前と本質的に同じ平均有効粒径を有するが予備懸濁液の粒子の場合と比較してより大型の粒子に凝集する傾向は低い。特段の理論に制約されないが、粒子の安定性の差は、固/液界面における界面活性剤分子の再秩序化に起因すると考えられる。
【0063】
(III.第3のプロセスカテゴリー)
第3のカテゴリーの方法は、第1および第2のプロセスカテゴリーの最初の2工程を変更することにより、予備懸濁液中の有機化合物が平均有効粒径を有する脆い形態である(例えば、細長い針状物または薄片)ことを確実にする。脆い粒子は、適切な溶媒、界面活性剤または界面活性剤の組み合わせ、個々の溶液の温度、混合速度および沈殿速度等を選択することにより形成できる。脆さはまた、水性溶媒との第1の溶液の混合の工程の間に格子欠損(例えば切断面)を導入することにより増強され得る。これは、沈殿工程において可能であるような急速な結晶化により生じる。エネルギー添加工程において、これらの脆い結晶は速度論的に安定化され予備懸濁液よりも小さい平均有効粒径を有する結晶に変換される。速度論的に安定化されるとは、速度論的に安定化されない粒子と比較した場合に粒子の凝集傾向が低下していることを意味する。このような例においては、エネルギー付与工程は、脆い粒子の崩壊をもたらす。予備懸濁液の粒子が脆い状態にあることを確保することにより、脆い形態とするための工程を実施しない有機化合物の処理の場合と比較して、より容易に、そしてより迅速に、有機化合物を所望の粒径範囲内の粒子とすることができる。
【0064】
(IV.第4のプロセスカテゴリー)
第4のプロセスカテゴリーの方法は、エネルギー付与工程と同時に混合工程を実施すること以外は、第1のプロセスカテゴリーの工程と同様のものを包含する。
【0065】
(多形の制御)
本発明はさらに、有機化合物の結晶構造を制御することにより所望の粒径範囲および所望の結晶構造における化合物の懸濁液を最終的に調製するための別の工程を提供する。「結晶構造」という用語は、結晶の単位セル内の原子の配列を意味する。種々の結晶構造に結晶化できる化合物を多形と称する。同じ薬剤の異なる多形は、異なる溶解度、治療活性、バイオアベイラビリティおよび懸濁液安定性を示すことから、多形の発見は、薬剤の処方の重要な工程である。従って、製品の純度およびバッチごとの再現性を確保するためには化合物の多形を制御することが重要である。
【0066】
化合物の多形を制御する工程は、所望の多形の形成を確保するための第1の溶液、第2の溶媒または予備懸濁液への結晶種添加を包含する。結晶種添加は結晶種化合物の使用またはエネルギーの付与を包含する。本発明の好ましい形態においては、結晶種化合物は所望の多形形態を有する薬学的に活性な化合物である。あるいは、結晶種化合物はまた、不活性の不純物、所望の多形に関して構造的に無関係であるが、結晶核のテンプレートをもたらす化合物、または所望の多形と同様の構造を有する有機化合物であることができる。
【0067】
結晶種化合物は、第1の溶液から沈殿させることができる。この方法は、過飽和溶液を形成するために、第1の溶媒中の有機化合物の溶解度を超過するのに十分な量の有機化合物を添加する工程を包含する。過飽和溶液は、所望の多形形態の有機化合物を沈殿させるために処理する。過飽和溶液の処理は、結晶の形成が観察されて結晶種混合物が形成されるまでの時間、溶液をエイジングさせる工程を包含する。有機化合物は、溶液から所望の多形で析出できるように過飽和溶液にエネルギーを付与することもできる。エネルギーは、上記したエネルギー付与工程を包含する種々の方法で付与できる。加熱により、または、予備懸濁液を電磁エネルギー、粒子線または電子線の線源に曝露することによりさらにエネルギーを付与できる。電磁エネルギーは、光エネルギー(紫外線、可視光または赤外)またはレーザーにより生じるもののような可干渉性の放射、メーザー(maser:放射の刺激発射によるマイクロウェーブ増幅)により生じるもののようなマイクロウェーブエネルギー、動的電磁エネルギーまたは他の放射源を包含する。さらにまた、超音波、静電場または静磁場、またはこれらの組み合わせをエネルギー付与源として利用することも意図される。
【0068】
本発明の好ましい形態においては、エイジングした過飽和溶液から種結晶を調製するための方法は、(i)ある量の有機化合物を第1の溶媒に添加して過飽和溶液を形成する工程、(ii)過飽和溶液をエイジングさせて検出可能な結晶を形成させることにより結晶種添加混合物を形成する工程;および(iii)結晶種添加混合物を第2の溶媒と混合することにより有機化合物を沈殿させて予備懸濁液を形成する工程を包含する。次に予備懸濁液を上記した通り、さらに処理して所望の多形および所望の粒径範囲の有機化合物の水性懸濁液とする。
【0069】
結晶種添加は、曝露された液体が有機化合物または結晶種物質を含有する限り、第1の溶液、第2の溶媒または予備懸濁液にエネルギーを付与することによっても実施できる。エネルギーは、過飽和溶液に関して上記したものと同様の態様において付与できる。
【0070】
従って、本発明は、特定されない多形を本質的に含まない所望の多形の形態をとる有機化合物の物質の組成物を提供する。本発明の好ましい形態においては、有機化合物は、薬学的に活性な物質である。1つのこのような例は、後述する実施例16に記載する通りであり、そこではミクロ沈殿の間の結晶種添加により、原材料の多形を本質的に含まないイトラコナゾールの多形が提供される。本発明の方法は、多くの薬学的に活性な化合物について所望の多形を選択的に得るために使用できることを意図している。
【0071】
(小粒子の水性懸濁液を調製するための複合的および連続的なプロセス)
本発明の小粒子は、ミクロ沈殿を、ホモジナイズおよび一般的には有機溶媒(特段の記載が無い限り本セクションおよび関連する実施例19〜25において以降「溶媒」と称する)である水混和性第1溶媒の同時連続的除去と組み合わせた複合的かつ連続的なプロセスにより本質的に溶媒非含有の水性懸濁液としても調製できる。溶媒の存在は、特に医療用途の場合は懸濁液において望ましくない。溶媒は粒子の凝集により誘発される粒径の増大および安定性低下をもたらす懸濁液中の粒子のオスワルト熟成(Oswald ripening)を促進するものとして知られている。この現象は、典型的には、核形成の直後に開始され、そして高圧ホモジナイズ、超音波処理および他の粒径低減プロセスのようなエネルギー付与工程の間に一般的である高温により、さらに触媒される。従って、粒径低減の間に連続溶媒除去を含むプロセスは、小型で安定な粒子を得る場合に有利である。さらにまた、このような連続過程は、処理時間を短縮し、一貫性およびプロセス制御を与え、溶媒除去後の追加の粒径低減工程の必要性を排除する。このようなプロセスはまた、スケールアップが容易である。
【0072】
この複合的連続的プロセスにおいては、複合的なミクロ沈殿およびホモジナイズの工程から粒子が形成されると同時に連続的に溶媒が除去される。このプロセスは、粒子形成工程終了後に追加および個別の溶媒除去工程を必要としない点において、以前に記載した方法または他のミクロ沈殿法とは異なる。共通する溶媒除去プロセス、例えば遠心分離は、粒子の凝集を誘発する場合が多く、これは溶媒除去工程の後に凝集塊を破壊するためのさらに別の粒径低減工程を必要とする場合がある。複合的連続的プロセスは、いかなる残留有機溶媒も本質的に含まない小粒子の水性懸濁液を調製する。「いかなる残留有機溶媒も本質的に含まない」とは、水性懸濁液が溶媒約100ppm未満、より好ましくは約50ppm未満、最も好ましくは約10ppm未満含有することを意味する。
【0073】
図18に模式的に示したプロセスは、一般的に(i)水混和性の第1の溶媒に有機化合物を溶解して薬剤溶液(薬剤濃縮物とも称する)を形成する工程;(ii)溶液を水性である第2の溶媒(アンチ溶媒)と混合してミクロ沈殿プロセスを開始する混合物を形成する工程;および(iii)同時に混合物のホモジナイズと混合物からの第1溶媒の連続除去を行う工程を包含する。工程(iii)は、約100μm未満の平均有効粒径を有する水性懸濁液中の小粒子が形成されるまで反復する。ミクロ沈殿工程はホモジナイズ/溶媒除去工程と同時に実施できる。得られる水性水溶液は、本質的に第1の溶媒を含有しない。
【0074】
水混和性の第1の溶媒は、一般的に有機溶媒であり、これは本出願において上記した通りプロトン性の有機溶媒または非プロトン性の有機溶媒であることができる。好ましい溶媒は、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)である。別の好ましい溶媒は、乳酸である。好ましい実施形態においては、プロセスはさらに、第1の水混和性溶媒または水性の第2溶媒または第1の水混和性溶媒と水性の第2溶媒との両方に界面修飾剤1つ以上を混合する工程を包含する。
【0075】
同時ホモジナイズおよび連続溶媒除去は、薬剤溶液および第2の水性溶媒が混合される場合、ミクロ沈殿の開始後直ぐに開始できる。あるいは、ホモジナイズおよび連続溶媒除去は、薬剤溶液および第2の溶媒が混合されている間に同時に実施できる。両方の場合において、溶媒の除去は、水性懸濁液が実質的に第1溶媒非含有となるプロセスの終了まで連続を基本として実施する。
【0076】
本発明の粒子の大きさは、一般的に動的光散乱法、例えば光相関分光法、レーザー回折、低角度レーザー光散乱(LALLS)、中角度レーザー光散乱(MALLS)、光不透過法(例えばコールター法)、レオロジーまたは顕微鏡観察(光または電子)により測定した場合に一般的には約100μm未満の平均有効粒径を有する。しかしながら、粒子は広範な大きさ、例えば約20μm〜約10nm、約10μm〜約10nm、約2μm〜約10nm、約1μm〜約10nm、約400nm〜約50nm、約200nm〜約50nm、またはその中の何れかの範囲または範囲の組み合わせとなるように調製できる。粒径は、種々の要因、例えばホモジナイズの速度、ホモジナイズの温度、ホモジナイズの時間、および、溶媒除去の速度を制御することにより制御できる。
【0077】
任意の市販のホモジナイザーを本発明において使用できる。適切なホモジナイザーの例は、ピストンギャップホモジナイザー、例えばEmulsiFlex−C160の商品名でAvestin Inc.から販売されているようなものである。1つより多いホモジナイザーを連続して配置できる。
【0078】
幾つかの溶媒除去手法を本発明の連続溶媒除去のために利用できるが、好ましい手法は、クロスフロー限外濾過である。図19は、クロスフロー限外濾過を用いた本質的に溶媒非含有である小粒子の水性懸濁液を調製するための連続溶媒除去プロセスを説明する模式図である。図19に示す通り、水混和性有機溶媒(薬剤濃縮物)中および水性第2溶媒(アンチ溶媒)中に薬剤溶液を混合して混合物を形成した後、混合物を即座にホモジナイザーに導入してホモジナイズする。同時に、混合物を閉鎖ループ系内の再循環ポンプにより、ホモジナイザーから限外濾過装置を通過させホモジナイザーに戻すように循環させる。この再循環は、水性懸濁液が実質的に水混和性第1溶媒非含有となるまで可能な限り多いサイクル数を反復する。次に懸濁液をホモジナイザーから回収する。
【0079】
限外濾過において使用する膜は、好ましくは滅菌可能であり洗浄プロセスに適合する。適切な膜の例としては、ポリマー膜(例えば、ポリスルホンおよびセルロースの膜)およびセラミック膜が挙げられるがこれらに限定されない。セラミック膜は、特にポリマー膜に適合しないNMPのような溶媒の場合に望ましい。好ましくはクロスフロー濾過膜は、約300,000nm〜約10nmの分画分子量を有する。膜の分画分子量は、一般的には調製した粒子の粒径により異なる。1つの実施形態においては、クロスフロー限外濾過はまた、「バックパルス」操作であり、その場合、クロスフロー膜内の透過フローは極めて短時間だけ逆行し(パルス)、膜表面でケーキ化している粒子を脱着させる。
【0080】
限外濾過は、処理時間を短縮するために2工程において実施できる。第1の工程は、混合物から濃縮物を調製する全体的バッチ容量を低減するための濃縮工程である。第2の工程は、溶媒ならびにいかなる可溶性不純物も除去するための透析濾過工程である。
【0081】
この方法は、さらに例えば、加熱滅菌またはガンマ線照射による水性懸濁液の滅菌を包含する。1つの実施形態においては、加熱滅菌はホモジナイザーが滅菌のための加熱加圧源として作用するホモジナイザー内で行う。滅菌はまた、混合前に薬剤溶液および水性溶媒を滅菌濾過することおよびその後の工程を無菌条件下で実施することにより行うこともできる。
【0082】
この方法はさらに、小粒子の乾燥粉末を形成するための水性懸濁液中の水性媒体の除去を包含する。乾燥粉末は、吸入または肺経路で小粒子を投与するのに最も適している。あるいは、乾燥粉末を非経口投与のような別の投与経路に適する媒体中に再懸濁できる。非経口投与のための適切な媒体の例は、水性媒体、例えば生理食塩水または生理学的pHの緩衝液であるがこれらに限定されない。
【実施例】
【0083】
(A.プロセスカテゴリー1の実施例)
(実施例1:ホモジナイズを用いるプロセスカテゴリー1、方法Aの使用によるイトラコナゾール懸濁液の調製)
3Lのフラスコに注射用水1680mlを入れる。液体を60〜65℃に加熱し、次にPluronic F−68(ポロキサマー188)44グラムおよびナトリウムデオキシコレート12グラムをゆっくり添加し、その際、各添加の後に攪拌しながら固体を溶解する。固体の添加が終了した後、60〜65℃でさらに15分間攪拌し、完全に溶解するようにする。注射用水800mlにトリス6.06グラムを溶解することにより50mMトリス(トロメタミン)緩衝液を調製する。この溶液を0.1M塩酸でpH8.0となるまで滴定する。得られた溶液をさらに注射用水で1リットルに希釈する。トリス緩衝液200mlをポロキサマー/デオキシコレート溶液に添加する。十分攪拌して溶液を混合する。
【0084】
150mLのビーカーにイトラコナゾール20グラムおよびN−メチル−2−ピロリジノン120mlを入れる。混合物を50〜60℃に加熱し、攪拌して固体を溶解する。完全に溶解したことが観察された後、さらに15分間攪拌することによって完全に溶解するようにする。イトラコナゾール−NMP溶液を室温に冷却する。
【0085】
シリンジポンプ(2本の60mLガラスシリンジ)に上記調製したイトラコナゾール溶液120mlを充填する。その間、0〜5℃に予め冷却しておいたホモジナイザーホッパーに界面活性剤溶液全量を注ぎ込む(これは冷却液を循環させたジャケット付きホッパーを用いるか、氷でホッパーを包囲することにより行ってよい)。メカニカルスターラーをブレードが完全に浸積するように界面活性剤溶液内に設置する。シリンジポンプを使用しながら、攪拌冷却界面活性剤溶液にイトラコナゾール溶液の全量をゆっくり(1〜3ml/分)添加する。少なくとも700rpmの攪拌速度が推奨される。得られた懸濁液(懸濁液A)の一部を光学顕微鏡(Hoffman Modulation Contrast)およびレーザー回折(Horiba)により分析する。懸濁液Aは、光学顕微鏡によれば相互に結合しているかブラウン運動により自由に移動するほぼ球状の不定形粒子(1ミクロン未満)からなることがわかる。図3参照。動的光散乱法は、典型的には凝集塊(10〜100ミクロンの大きさ)の存在およびメジアン粒径が200〜700nmの範囲の単一不定形粒子の存在を明らかにする双峰性の分布パターンをもたらす。
【0086】
この懸濁液を即座に10〜30分間ホモジナイズ(10,000〜30,000psi)する。ホモジナイズ終了時のホッパー内の懸濁液の温度は75℃を超えてはならない。ホモジナイズした懸濁液を500ml容量のビンに収集し、これを即座に冷蔵庫中で冷却する(2〜8℃)。この懸濁液(懸濁液B)を光学顕微鏡で観察すると、長さ0.5〜2ミクロンおよび幅0.2〜1ミクロンの範囲の小型伸長平板からなることがわかる。図4参照。動的光散乱法によれば典型的にはメジアン直径は、200〜700nmである。
【0087】
(懸濁液A(「予備懸濁液」)(実施例1)の安定性)
懸濁液Aの一部を顕微鏡観察する間、不定形固体の結晶化が直接観察された。懸濁液Aを12時間2〜8℃で保存し、光学顕微鏡で観察した。試料の巨視的目視検査によれば、重度の凝結が有り、内容物の一部は容器の底面に沈降していた。顕微鏡観察によれば長さ10ミクロンを超える大型で伸長した平板様の結晶の存在が明らかになった。
【0088】
(懸濁液Bの安定性)
懸濁液Aとは反対に、懸濁液Bは予備安定性試験の期間(1ヶ月)は2〜8℃で安定であった。エイジング試料の顕微鏡観察によれば粒子の形態または大きさの有意な変化は起こらなかったことが明確であった。これは光散乱法により確認した。
【0089】
(実施例2:超音波処理を用いるプロセスカテゴリー1、方法Aの使用によるイトラコナゾール懸濁液の調製)
500mLのステンレス製容器に注射用水252mlを入れる。液体を60〜65℃に加熱し、次にPluronic F−68(ポロキサマー188)6.6グラムおよびナトリウムデオキシコレート0.9グラムをゆっくり添加し、その際、各添加の後攪拌しながら固体を溶解する。固体の添加が終了した後、60〜65℃でさらに15分間攪拌し、完全に溶解するようにする。注射用水800mlにトリス6.06グラムを溶解することにより50mMトリス(トロメタミン)緩衝液を調製する。この溶液を0.1M塩酸でpH8.0となるまで滴定する。得られた溶液をさらに注射用水で1リットルに希釈する。トリス緩衝液30mlをポロキサマー/デオキシコレート溶液に添加する。十分攪拌して溶液を混合する。
【0090】
30mLの容器にイトラコナゾール3グラムおよびN−メチル−2−ピロリジノン18mlを入れる。混合物を50〜60℃に加熱し、攪拌して固体を溶解する。完全に溶解したことが観察された後、さらに15分間攪拌することに完全に溶解するようにする。イトラコナゾール−NMP溶液を室温に冷却する。
【0091】
シリンジポンプに上記工程で調製したイトラコナゾール溶液18mlを充填する。メカニカルスターラーをブレードが完全に浸積するように界面活性剤溶液内に設置する。氷浴中に浸積することにより容器を0〜5℃に冷却する。シリンジポンプを使用しながら、攪拌冷却界面活性剤溶液にイトラコナゾール溶液の全量をゆっくり(1〜3ml/分)添加する。少なくとも700rpmの攪拌速度が推奨される。超音波処理装置のホーンを、得られた懸濁液中、ステンレス容器の底部の上方約1cmにプローブが来るように浸積する。5分間隔で15〜20分間超音波処理(10,000〜25,000Hz、少なくとも400W)する。最初の5分間の超音波処理の後、氷浴を除去し、さらに超音波処理する。超音波処理終了時に容器内懸濁液の温度は75℃を超えてはならない。
【0092】
懸濁液を500mLのI型ガラス瓶に収集し、これを即座に冷蔵庫(2〜8℃)で冷却する。超音波処理の前後の懸濁液の粒子の形態の特徴はホモジナイズの前後で方法Aにおいて観察されたものと極めて類似していた(実施例1参照)。
【0093】
(実施例3:ホモジナイズを用いるプロセスカテゴリー1、方法Bの使用によるイトラコナゾール懸濁液の調製)
注射用水800mlにトリス6.06グラムを溶解することにより50mMトリス(トロメタミン)緩衝液を調製する。この溶液を0.1M塩酸でpH8.0となるまで滴定する。得られた溶液をさらなる注射用水で1リットルに希釈する。3Lのフラスコに注射用水1680mlを添加する。トリス緩衝液200mlを水1680mLに添加する。十分攪拌して溶液を混合する。
【0094】
150mLのビーカー中、Pluronic F−68(ポロキサマー188)44グラムおよびナトリウムデオキシコレート12グラムをN−メチル−2−ピロリジノン120mlに添加する。混合物を50〜60℃に加熱し、攪拌して固体を溶解する。完全に溶解したことが観察された後、さらに15分間攪拌することに完全に溶解するようにする。この溶液に、イトラコナゾール20gを添加し、完全に溶解するまで攪拌する。イトラコナゾール−界面活性剤−NMP溶液を室温に冷却する。
【0095】
シリンジポンプ(2本の60mLガラスシリンジ)に前記調製した濃縮イトラコナゾール溶液120mlを充填する。その間、0〜5℃に予め冷却しておいたホモジナイザーホッパーに上記調製した希釈トリス溶液を注ぎ込む(これは冷却液を循環させたジャケット付きホッパーを用いるか、氷でホッパーを包囲することにより行ってよい)。メカニカルスターラーをブレードが完全に浸積するように界面活性剤溶液内に設置する。シリンジポンプを使用しながら、攪拌冷却界面活性剤溶液にイトラコナゾール−界面活性剤濃縮物溶液の全量をゆっくり(1〜3ml/分)添加する。少なくとも700rpmの攪拌速度が推奨される。得られた冷却懸濁液を即座に10〜30分間ホモジナイズ(10,000〜30,000psi)する。ホモジナイズ終了時にホッパー内の懸濁液の温度は75℃を超えてはならない。
【0096】
ホモジナイズした懸濁液を500ml容量のビンに収集し、これを即座に冷蔵庫中で冷却する(2〜8℃)。音波処理の前後の懸濁液の粒子の形態の特徴は実施例1で観察されたものと極めて類似していたが、ただし、プロセスカテゴリー1Bにおいては、予備ホモジナイズ物質は、より少なくより小さい凝集塊を形成する傾向を示し、これによりレーザー回折で測定した全体的粒径は、遥かに低値となった。ホモジナイズ後、動的光散乱法の結果は典型的には実施例1で示したものと同一であった。
【0097】
(実施例4:超音波処理を用いるプロセスカテゴリー1、方法Bの使用によるイトラコナゾール懸濁液の調製)
500mLのステンレス製容器に注射用水252mLを入れる。注射用水800mlにトリス6.06グラムを溶解することにより50mMトリス(トロメタミン)緩衝液を調製する。この溶液を0.1M塩酸でpH8.0となるまで滴定する。得られた溶液をさらに注射用水で1リットルに希釈する。トリス緩衝液30mlを水に添加する。十分攪拌して溶液を混合する。
【0098】
30mLの容器中、Pluronic F−68(ポロキサマー188)6.6グラムおよびナトリウムデオキシコレート0.9グラムをN−メチル−2−ピロリジノン18mlに添加する。混合物を50〜60℃に加熱し、攪拌して固体を溶解する。完全に溶解したことが観察された後、さらに15分間攪拌することに完全に溶解するようにする。この溶液にイトラコナゾール3.0グラムを添加し、完全に溶解するまで攪拌する。イトラコナゾール−界面活性剤−NMP溶液を室温に冷却する。
【0099】
シリンジポンプ(1本の30mLガラスシリンジ)に前記の通り調製した濃縮イトラコナゾール溶液18mlを充填する。メカニカルスターラーをブレードが完全に浸積するように界面活性剤溶液内に設置する。氷浴中に浸積することにより容器を0〜5℃に冷却する。シリンジポンプを使用しながら、攪拌冷却界面活性剤溶液にイトラコナゾール−界面活性剤濃縮物の全量をゆっくり(1〜3ml/分)添加する。少なくとも700rpmの攪拌速度が推奨される。得られた冷却懸濁液を即座に5分間隔で15〜20分間音波処理(10,000〜25,000Hz、少なくとも400W)する。最初の5分間の音波処理の後、氷浴を除去し、さらに音波処理する。超音波処理終了時に容器内懸濁液の温度は75℃を超えてはならない。
【0100】
得られた懸濁液を500mLビンに収集し、これを即座に冷蔵庫(2〜8℃)で冷却する。音波処理の前後の懸濁液の粒子の形態の特徴は、実施例1で観察されたものと極めて類似していたが、ただし、プロセスカテゴリー1、方法Bにおいては、予備音波処理物質はより少なくより小さい凝集塊を形成する傾向を示し、これによりレーザー回折で測定した全体的粒径は、遥かに低値となった。超音波処理後は動的光散乱法の結果は典型的には実施例1で示したものと同一であった。
【0101】
(B.プロセスカテゴリー2の実施例)
(実施例5:0.75%Solutol(登録商標)HR(PEG−660 12−ヒドロキシステアレート)プロセスカテゴリー2、方法Bによるイトラコナゾール懸濁液(1%)の調製)
Solutol(登録商標)(2.25g)およびイトラコナゾール(3.0g)をビーカーに秤量し、36mlの濾過したN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を添加した。この混合物を溶液の成分が溶解するまで約15分間低温(40℃以下)で攪拌した。この溶液を室温に冷却し、真空下で0.2ミクロンのフィルターで濾過した。2本の60mLのシリンジに濾過した薬剤濃縮物を充填し、シリンジポンプ内に入れた。ポンプは、急速攪拌(400rpm)された水性緩衝溶液中に約1mL/分の濃縮物が送達されるように設定した。緩衝液は、5mMトリス緩衝液中22g/Lのグリセロールからなるものとした。濃縮物添加の間を通じて緩衝溶液は、氷浴中2〜3℃に維持した。沈殿終了時において、緩衝溶液への濃縮物の完全添加の後、懸濁液約100mlを1時間遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿を水中20%NMP溶液に再懸濁し、そして再度1時間遠心分離した。この物質を25℃真空オーブン中一夜乾燥した。乾燥した物質をバイアルに移し、クロム照射を用いてX線回折により分析した(図5参照)。
【0102】
ミクロ沈殿させた懸濁液の別の100mlの小区分を20,000Hz、全振幅の80%(全振幅=600W)で30分間音波処理した。音波処理した試料を3等分にして各々45分間ホモジナイズした(Avestin C5,2〜5℃、15,000〜20,000psi)。合わせた画分を約3時間遠心分離し、上清を廃棄し、沈殿を20%NMPに再懸濁した。再懸濁混合物を再度遠心分離した(15,000rpm、5℃)。上清を廃棄し、沈殿を25℃で一夜真空下に乾燥した。沈殿をX線回折による分析に付した(図5参照)。図5から解る通り、処理した試料のX線回折パターンは、ホモジナイズの前後において、本質的に同一であったが、しかしなお、原料と比較した場合は有意に異なるパターンであった。未ホモジナイズの懸濁液は不安定であり、室温で保存すると集塊を形成する。ホモジナイズの結果として生じる安定化は粒子の表面上の界面活性剤の再配列に起因すると考えられている。この再配列は、粒子凝集の傾向を低下させるはずである。
【0103】
(C.プロセスカテゴリーの実施例)
(実施例6:ホモジナイズを用いるプロセスカテゴリー3、方法Aの使用によるイトラコナゾール懸濁液の調製)
カルバマゼピン2.08gをNMP10mlに溶解した。この濃縮物1.0mlをその後0.1mL/分で1.2%レシチンおよび2.25%グリセリンの攪拌溶液20mlに滴下した。レシチン系の温度は添加中を通じて2〜5℃に維持した。予備分散液を次に、冷温(5〜15℃)で35分間15,000psiでホモジナイズした。圧力を23,000psiに増大させ、ホモジナイズをさらに20分間継続した。プロセスにより生じた粒子は、平均粒径0.881μmを有し、粒子の99%が2.44μm未満であった。
【0104】
(実施例7:ホモジナイズによるプロセスカテゴリー3、方法Bの使用による0.125%Solutol(登録商標)を用いた1%カルバマゼピン懸濁液の調製)
N−メチル−2−ピロリジノン中の20%カルバマゼピンおよび5%グリコデオキシコール酸(Sigma Chemical Co.)の薬剤濃縮物を調製した。ミクロ沈殿工程では、薬剤濃縮物を0.1mL/分の速度で受容溶液(蒸留水)に添加した。受容溶液を攪拌し、沈殿の間は約5℃に維持した。沈殿後、最終成分濃度は1%カルバマゼピンおよび0.125%Solutol(登録商標)であった。薬剤結晶はポジティブ位相差(400X)を用いて光学顕微鏡で調べた。沈殿は直径約2ミクロンおよび長さ50〜150ミクロンの範囲の微細な針状物からなるものであった。
【0105】
約15分間約20,000psiでホモジナイズ(Avestin C−50ピストンギャップホモジナイザー)することにより粒径1ミクロン未満で大部分は未凝集の小粒子が得られる。ホモジナイズした物質のレーザー回折分析(Horiba)によれば粒子は、0.4ミクロンの平均粒子を有し、粒子の99%が0.8ミクロン未満であった。集塊粒子を破壊するには適切であるが個々の粒子の粉砕を起こすのに十分なエネルギーを有さない低エネルギー音波処理をHoriba分析前の試料について実施したが、結果に影響は無かった(音波処理の有無に関わらず同じ数値)。この結果は粒子の集塊の非存在と合致していた。
【0106】
上記プロセスにより調製した試料を遠心分離し、上清液を0.125%Solutol(登録商標)からなる交換液と交換した。遠心分離および上清交換の後、懸濁液の成分の濃度は、1%カルバマゼピンおよび0.125%Solutol(登録商標)であった。試料をピストンギャップホモジナイザーで再度ホモジナイズし、5℃で保存した。4週間の保存の後、懸濁液は、平均粒径が0.751であり99%が1.729未満であった。報告された数値は、未音波処理試料のHoriba分析より得られる。
【0107】
(実施例8:ホモジナイズによるプロセスカテゴリー3、方法Bの使用による0.06%ナトリウムグリコデオキシコレートおよび0.06%ポロキサマー188を用いた1%カルバマゼピン懸濁液の調製)
N−メチル−2−ピロリジノン中の20%カルバマゼピンおよび5%グリコデオキシコレートを含有する薬剤濃縮物を調製した。ミクロ沈殿工程では、薬剤濃縮物を0.1mL/分の速度で受容溶液(蒸留水)に添加した。従って以下の実施例は、上記方法AおよびBにおける水性沈殿溶液に界面活性剤または他の賦形剤を添加することが任意であることを示している。受容溶液を攪拌し、沈殿の間は約5℃に維持した。沈殿後、最終成分濃度は1%カルバマゼピンおよび0.125%Solutol(登録商標)であった。薬剤結晶はポジティブ位相差(400×)を用いて光学顕微鏡で調べた。沈殿は、直径約2ミクロンおよび長さ50〜150ミクロンの範囲の微細な針状物からなるものであった。沈殿の前の原材料と沈殿を比較したところ、表面修飾剤(グリコデオキシコール酸)の存在下の沈殿工程は、出発原材料よりも遥かに薄い極めて細い結晶をもたらす(図6参照)。
【0108】
約15分間約20,000psiでホモジナイズ(Avestin C−50ピストンギャップホモジナイザー)することにより、粒径1ミクロン未満で大部分は未凝集の小粒子が得られる。図7を参照のこと。ホモジナイズした物質のレーザー回折分析(Horiba)によれば粒子は0.4ミクロンの平均粒子を有し、粒子の99%が0.8ミクロン未満であった。Horiba分析前の試料の音波処理は結果に影響しなかった(音波処理の有無に関わらず同じ数値)。この結果は粒子の集塊の非存在と合致していた。
【0109】
上記プロセスにより調製した試料を遠心分離し、上清液を0.06%グリコデオキシコール酸(Sigma Chemical Co.)および0.06%Poloxamer 188よりなる交換液と交換した。試料をピストンギャップホモジナイザーで再度ホモジナイズし、5℃で保存した。2週間の保存の後、懸濁液は、平均粒径0.531ミクロンであり、99%が1.14ミクロン未満であった。報告された数値は、未音波処理試料のHoriba分析より得られる。
【0110】
出発原材料(カルバマゼピン)の粒子を破壊するために要する力と比較した場合の沈殿した粒子を破壊するために要する力の数学的分析(実施例8):
カルバマゼピン原材料(図6、左図)に観察される最大の結晶の幅は、ミクロ沈殿物質(図6、右図)中の結晶の幅よりもほぼ10倍高値である。結晶の厚みの比(1:10)が結晶の幅の比(1:10)に比例していると仮定すると、原材料中のより大型の結晶を分解するために要する力のモーメントはミクロ沈殿材料を破壊するために必要な力より約1000倍高値となるはずである。なぜならば:
=6PL/(Ewx) (式1)
(式中、
=結晶を破壊するために必要な長手軸方向の歪(「降伏値」)
P=梁上の負荷
L=支柱への負荷からの距離
E=弾性率
w=結晶の幅
x=結晶の厚み)
であるからである。
【0111】
LおよびEが原材料および沈殿物質に関して同様と仮定する。さらに、w/w=x/x=10と仮定する。次いで、
(e=6PL/(Ew)(ここで「0」の下付き文字は原材料を示す)
=6PL/(Ewx)(ミクロ沈殿の場合)と仮定し、
(eとeが等しいとすると、
6PL/(Ewx)=6PL/(Ew
であり、単純化すれば、
P=P(w/w)(x/x=P(0.1)(0.1)=0.001P
である。
【0112】
すなわち、ミクロ沈殿固体を破壊するために必要な降伏力Pは、原料結晶固体を破壊するために必要な力の千分の1である。急速な沈殿に起因して格子欠損または不定形の特性が導入されるとすれば、弾性率(E)は低下し、ミクロ沈殿はむしろより容易に分解するようになる。
【0113】
(実施例9:0.05%ナトリウムデオキシコレートおよび3%N−メチル−2−ピロリジノン、プロセスカテゴリー3、方法Bによる1.6%(w/v)」プレドニソロン懸濁液の調製)
全体的な調製プロセスの模式図を図8に示す。プレドニソロンおよびナトリウムデオキシコレートの濃縮溶液を調製した。プレドニソロン(32g)およびナトリウムデオキシコレート(1g)を十分な量の1−メチル2−ピロリジノン(NMP)に添加して最終容量を60mLとした。得られたプレドニソロンの濃度は、約533.3mg/mlであり、ナトリウムデオキシコレートの濃度は、約16.67mg/mlであった。NMP濃縮物60mlを約400rpmで攪拌しながら2.5mL/分の添加速度で5℃に冷却した水2Lに添加した。得られた懸濁液は、幅が2μm未満の細い針状結晶を含有していた(図9)。沈殿した懸濁液に含有される濃度は、1.6%(w/v)プレドニソロン、0.05%ナトリウムデオキシコレートおよび3%NMPであった。
【0114】
沈殿した懸濁液を水酸化ナトリウムおよび塩酸で7.5〜8.5にpH調整し、次に10,000psiで10回ホモジナイズ(Avestin C−50ピストンギャップホモジナイザー)した。2連続遠心分離工程を実施することによりNMPを除去し、その際、各回とも、懸濁液を安定化させるために必要な界面活性剤の所望濃度を含有する新しい界面活性剤溶液と上清とを交換した(表2参照)。懸濁液をさらに10回10,000psiでホモジナイズした。最終懸濁液は、平均粒径1μm未満の粒子を含有し、粒子の99%が2μm未満であった。図10は、ホモジナイズ後の最終プレドニソロン懸濁液の顕微鏡写真である。
【0115】
種々の界面活性剤を多様な濃度で遠心分離/界面活性剤交換の工程において使用した(表2参照)。表2は、粒径(平均<1μm、99%<2μm)、pH(6〜8)、薬剤濃度(2%損失未満)および再懸濁性(60秒以内に再懸濁)に関して適する界面活性剤の組み合わせを列挙している。
【0116】
留意すべき点はこのプロセスは界面活性剤または他の添加剤の存在がない場合に水性希釈剤に活性化合物を添加することを可能にする。これは図2におけるプロセス方法Bの変法である。
【0117】
(表2:図8のミクロ沈殿プロセスにより調製した安定なプレドニソロン懸濁液(実施例9)の一覧)
【0118】
【表2】

*5℃および25℃で2ヶ月間保存した試料の間のイトラコナゾール濃度の差。
**少なくとも6ヶ月を通して安定。
粒径(レーザー光散乱)(ミクロン単位):
5℃:0.80(平均)、1.7(99%)
25℃:0.90(平均)、2.51(99%)
40℃:0.99(平均)、2.03(99%)。
5℃および25℃で保存した試料の間のイトラコナゾール濃度の差:<2%。
【0119】
(実施例10:ホモジナイズによるプロセスカテゴリー3、方法Aの使用によるプレドニソロン懸濁液の調製)
プレドニソロン32gをNMP40mlに溶解した。溶解には40〜50℃の穏やかな加熱が必要であった。その後、薬剤NMP濃縮物を0.12%レシチンおよび2.2%グリセリンよりなる攪拌溶液2L内に2.5mL/分で滴下した。他の界面修飾剤は添加しなかった。界面活性剤系は5mMトリス緩衝液を用いてpH8.0で緩衝し、温度は全沈殿プロセス中0〜5℃に維持した。沈殿後の分散液は、次に10,000psiで20回冷温ホモジナイズ(5〜15℃)した。ホモジナイズの後、懸濁液を遠心分離し、上清を除去し、上清を新しい界面活性剤溶液と交換することによりNMPを除去した。この遠心分離後の懸濁液は、次に10,000psiでさらに20回、冷温(5〜15℃)で再びホモジナイズした。このプロセスにより調製された粒子は、平均粒径0.927μmを有し、粒子の99%が2.36μmより低値であった。
【0120】
(実施例11:ホモジナイズによるプロセスカテゴリー3、方法Bの使用によるナブメトン懸濁液の調製)
界面活性剤(2.2gのポロキサマー188)をN−メチル−2−ピロリジノン6mlに溶解した。この溶液を15分間45℃で攪拌し、その後、ナブメトン1.0gを添加した。薬剤は急速に溶解した。5mMトリス緩衝液および2.2%グリセロールからなる希釈液を調製し、pH8に調節した。希釈液の100ml分を氷浴中で冷却した。薬剤濃縮物を、激しく攪拌しながら希釈液にゆっくり添加した(約0.8ml/分)。この粗製の懸濁液を30分間15,000psiで、次に30分間20,000psiでホモジナイズした(温度5℃)。最終ナノ懸濁液は、有効平均粒径930nmを有していることがわかった(レーザー回折により分析)。粒子の99%は、約2.6ミクロン未満であった。
【0121】
(実施例12:ホモジナイズによるプロセスカテゴリー3、方法Bの使用および界面活性剤界面活性剤としてのSolutol(登録商標)HS 15の使用によるナブメトン懸濁液の調製)
(リン脂質媒体による上清液の交換)
ナブメトン(0.987グラム)をN−メチル−2−ピロリジノン8mlに溶解した。この溶液に2.2グラムのSolutol(登録商標)HS 15を添加した。この混合物を薬剤濃縮物中の界面活性剤の完全な溶解が起こるまで攪拌した。5mMトリス緩衝液および2.2%グリセロールからなる希釈液を調製し、pH8に調節した。希釈液を氷浴中で冷却し、薬剤濃縮物を、激しく攪拌しながら希釈液にゆっくり添加した(約0.5ml/分)。この粗製の懸濁液を20分間15,000psiで、次に30分間20,000psiでホモジナイズした。
【0122】
懸濁液を15分間15,000rpmで遠心分離し、上清を除去し、廃棄した。残存する固体ペレットを1.2%リン脂質からなる希釈液に再懸濁した。この媒体は、前工程において除去した上清の量と等容量であった。次に、得られた懸濁液を30分間約21,000psiでホモジナイズした。最終懸濁液をレーザー回折により分析したところ、平均粒径542nmを有する粒子を含有することがわかり、そして99%の累積粒径分布は、1ミクロン未満であった。
【0123】
(実施例13:約220nmの平均粒径の粒子を有する、ポロキサマーによる1%イトラコナゾール懸濁液の調製)
イトラコナゾールの濃縮物は、N−メチル−2−ピロリジノン60mlにイトラコナゾール10.02グラムを溶解することにより調製した。薬剤を溶解するために70℃まで加熱することが必要であった。次に溶液を室温に冷却した。50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン緩衝液(トリス緩衝液)の一部を調製し、5M塩酸でpH8.0とした。水性界面活性剤溶液は、22g/Lポロキサマー407、3.0g/L卵ホスファチド、22g/Lグリセロールおよび3.0g/Lコール酸ナトリウム2水和物を混合することにより調製した。界面活性剤溶液900mlをトリス緩衝液100mlと混合して水性希釈液1000mlを調製した。
【0124】
水性希釈液をホモジナイザーのホッパー(APV Gaulin Model 15MR−8TA)に添加し、これを、氷ジャケットを用いて冷却した。溶液を急速に攪拌(4700rpm)し、温度をモニタリングした。イトラコナゾール濃縮物を、約2ml/分の速度でシリンジポンプを用いることによりゆっくり添加した。添加は、約30分後に終了した。得られた懸濁液をさらに30分間攪拌し、その間、ホッパーはなお氷ジャケットで冷却し、そして少量を光学顕微鏡による分析用に採取し、動的光散乱を調べた。残存する懸濁液はその後10,000psiで15分間ホモジナイズした。ホモジナイズ終了時に温度は74℃に上昇していた。ホモジナイズした懸濁液を1LのI型ガラス瓶に採取し、ゴム栓で密封した。懸濁液を含有するビンを5℃で冷蔵庫中保存した。
【0125】
ホモジナイズ前の懸濁液の試料は、試料が自由粒子、粒子凝集物および多層状の脂質体よりなるものであることを示していた。自由粒子は、ブラウン運動により明確に目視できなかったが、凝集塊の多くは、不定形の非結晶性物質よりなるものであることがわかった。
【0126】
ホモジナイズした試料は、目視可能な脂質のベシクルを伴うことなく優れた粒径の均質性を有するサブミクロンの自由粒子を含有していた。動的光散乱によればメジアン直径約220nmの単分散の対数粒径分布が判明した。上99%の累積粒径カットオフは、約500nmであった。図11は、調製されたナノ懸濁液の粒径分布を典型的な非経口用の脂質エマルジョン製剤(10% Intralipid(登録商標)、Pharmacia)のものと比較したものである。
【0127】
(実施例14:ヒドロキシエチルデンプンを用いた1%イトラコナゾールナノ懸濁液の調製)
溶液Aの調製:ヒドロキシエチルデンプン(1g、Ajinomoto)をN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)3mlに溶解した。この溶液を1時間70〜80℃に水浴中で加熱した。別の容器にイトラコナゾール(Wyckoff)1グラムを添加した。NMP 3mlを添加し、混合物を70〜80℃に加熱して溶解させた(約30分)。リン脂質(Lipoid S−100)をこの熱溶液に添加した。加熱はリン脂質全てが溶解するまで30分間70〜90℃で継続した。ヒドロキシエチルデンプン溶液をイトラコナゾール/リン脂質溶液と合わせた。この混合物をさらに30分間80〜95℃に加熱した。
【0128】
溶液Aのトリス緩衝液への添加:50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノエタン緩衝液94mlを氷浴中で冷却した。このトリス溶液を急速に攪拌しながら、熱溶液A(上記参照)をゆっくり滴加した(2cc/分未満)。
【0129】
完全に添加した後、得られた懸濁液を音波処理(Cole−Parmer Ultrasonic Processor−20,000Hz,80%振幅設定)し、その間氷浴中で冷却した。1インチの固形プローブを使用した。音波処理は5分間継続した。氷浴を除去し、プローブを除去し、再チューニングし、プローブを再度懸濁液に浸積した。氷浴を使用せずにさらに5分間懸濁液を再度音波処理した。音波処理プローブを再度取り出し、再チューニングし、プローブを浸積した後、試料をさらに5分間音波処理した。この時点で懸濁液の温度は82℃に上昇していた。懸濁液を氷浴中、再度急速に冷却し、室温未満となった時点でI型ガラス瓶に注ぎ込み、密封した。粒子を顕微鏡観察したところ、個々の粒径は1ミクロン以下のオーダーであった。
【0130】
室温で1年間保存した後、懸濁液の粒径を再評価したところ約300nmの平均粒径を有していることがわかった。
【0131】
(実施例15:HESを用いた方法Aの予測的実施例)
本発明は、NMP溶液ではなくトリス緩衝液にHESを添加した以外は実施例14の工程に従って方法Aを使用しながらヒドロキシエチルデンプンを用いて1%イトラコナゾールナノ懸濁液を調製することを意図している。水溶液はHESを溶解するために加熱しておいてよい。
【0132】
(実施例16:多形の混合物をより安定な多形に変換するためのホモジナイズ時の結晶種添加)
試料の調製:イトラコナゾールナノ懸濁液は、以下の通りミクロ沈殿−ホモジナイズ法により調製した。イトラコナゾール(3g)およびSolutol(登録商標) HR(2.25g)を低加温および攪拌しながらN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)36mlに溶解し、薬剤濃縮溶液を形成した。溶液を室温に冷却し、真空下に0.2μmのナイロンフィルターで濾過し、未溶解の薬剤または粒状物質を除去した。溶液を偏光下に観察し、結晶性の物質が濾過後に存在しないことを確認した。次に薬剤濃縮溶液を1.0ml/分で水性緩衝溶液(5mMトリス緩衝液中22g/Lグリセロール)約264mlに添加した。水溶液を2〜3℃に維持し、薬剤濃縮物添加の間は、約400rpmで連続的に攪拌した。得られた懸濁液約100mlを遠心分離し、固体を水中20%NMPの予備濾過溶液中に再懸濁した。この懸濁液を再遠心分離し、固体を25℃で一夜乾燥するために真空オーブンに移した。得られた固体試料をSMP 2 PREと表示した。
【0133】
試料の特性評価:試料SMP 2 PRおよび原材料イトラコナゾールの試料を、粉末X線回折測定を用いて分析した。測定は銅照射、ステップサイズ0.02°22およびスキャンスピード0.25°22/分でRigaku MiniFlex+装置を用いて実施した。得られた粉末回折パターンを図12に示す。パターンは、SMP−2−PREが原材料とは有意に異なることを示しており、異なる多形または擬似多形の存在を示唆している。
【0134】
試料の示差走査熱量計(DSC)の軌跡を図13aおよび図13bに示す。両方の試料を外部と隔絶したアルミニウムパン中で180℃まで2°/分で加熱した。
【0135】
原材料イトラコナゾールの軌跡(図13a)は、約165℃に吸熱ピークを示している。
【0136】
SMP 2 PREの軌跡(図13b)は、約159℃および153℃に2つの吸熱を示している。この結果とX線回折パターンとを組み合わせると、SMP 2 PREは多形の混合からなり、優勢な形態は、原材料中に存在する多形より安定性が低い多形であることが示唆されている。
【0137】
この結論に関する別の証拠は、図14のDSC軌跡により与えられるものであり、これは、SMP 2 PREを第1の遷移を通して加熱し、その後冷却し、再加熱すれば、より不安定な多形が溶融して再結晶することにより、より安定な多形を形成していることを示している。
【0138】
結晶種添加:固体のSMP 2 PRE 0.2gおよび原材料のイトラコナゾール0.2gを蒸留水と共に合わせて最終容量20mlとすることにより懸濁液を調製した(結晶種添加試料)。懸濁液を固体が湿潤するまで攪拌した。第2の懸濁液は、原材料イトラコナゾールを添加しない以外は同様の態様で調製した(結晶種未添加試料)。両方の懸濁液を30分間約18,000psiでホモジナイズした。ホモジナイズ後の懸濁液の最終温度は、約30℃であった。次に懸濁液を遠心分離し、固体を30℃で約16時間乾燥した。
【0139】
図15は、結晶種添加および結晶種未添加の試料のDSC軌跡を示す。両方の試料の加熱速度は180℃まで2°/分であり、外部と隔絶したアルミニウムパン中で行った。結晶種未添加試料の軌跡は2つの吸熱を示し、多形の混合物がホモジナイズ後もなお存在していることを示していた。結晶種添加試料の軌跡は結晶種添加およびホモジナイズにより固体の安定な多形への変化が誘発されることを示している。従って、結晶種添加は安定性の低いものから安定性の高い多形の形態への遷移の動力学に影響すると考えられる。
【0140】
(実施例17:安定な多形を優先的に形成するための沈殿の間の結晶種添加)
試料の調製:イトラコナゾール−NMP薬剤濃縮物は、攪拌および穏やかに加熱しながらイトラコナゾール1.67gをNMP10mlに溶解することにより調製した。溶液を0.2μmのシリンジフィルターを用いて2回濾過した。次に薬剤濃縮物1.2mlを約3℃の水性受容溶液20mlに添加し、約500rpmで攪拌することによりイトラコナゾールのナノ懸濁液を調製した。結晶種添加されたナノ懸濁液は、受容溶液として蒸留水中の原材料イトラコナゾール約0.02gの混合物を用いて調製した。結晶種未添加ナノ懸濁液は、受容溶液として蒸留水のみを使用して調製した。両方の懸濁液を遠心分離し、上清をデカントし、固体を約16時間30℃で真空オーブン中で乾燥した。
【0141】
試料の特性評価:図16は、結晶種添加および結晶種未添加の懸濁液のDSC軌跡を比較したものである。試料は、外部と隔絶したアルミニウムパン中で180℃まで2°/分で加熱した。点線は、結晶種未添加試料を示し、2つの吸熱が観察され、多形混合物の存在が示されている。
【0142】
実線は、結晶種添加試料を示し、1つのみの吸熱が原材料の予測融点付近に観察され、結晶種物質がより安定な多形の形成のみを誘発したことを示している。
【0143】
(実施例18:薬剤濃縮物への結晶種添加による多形の制御)
試料の調製:室温(約22℃)におけるNMP中のイトラコナゾールの溶解度は、0.16g/mlであることが実験的に決定されている。0.20g/mlの薬剤濃縮液は、加熱攪拌しながら10mLのNMP中に2.0gのイトラコナゾールおよび0.2gのポロキサマー188を溶解することにより調製した。次にこの溶液を室温にまで冷却し、過飽和溶液とした。ミクロ沈殿実験を即座に実施し、薬剤濃縮物1.5mlを0.1%デオキシコレート、2.2%グリセロールを含有する水溶液30mlに添加した。添加工程中は水溶液を約2℃および350rpmの攪拌速度に維持した。得られた予備懸濁液は、50℃で約10分間、約13,000psiでホモジナイズした。次に懸濁液を遠心分離し、上清をデカントし、固体結晶を135時間30℃で真空オーブン中で乾燥した。
【0144】
過飽和薬剤濃縮物は、その後結晶化を誘発するために室温で保存することによりエイジングさせた。12日後、薬剤濃縮物は混濁し、結晶の形成が起こったことを示していた。イトラコナゾール懸濁液を薬剤濃縮物から第1の実験と同様の態様で0.1%デオキシコレート、2.2%グリセロールを含有する水溶液30mlに1.5mlを添加することにより調製した。添加工程中は、水溶液を約5℃および350rpmの攪拌速度に維持した。得られた予備懸濁液は、50℃で約10分間、約13,000psiでホモジナイズした。次に懸濁液を遠心分離し、上清をデカントして廃棄し、固体結晶を135時間30℃で真空オーブン中で乾燥した。
【0145】
試料の特性評価:X線粉末回折分析を用いて乾燥結晶の形態を測定した。得られたパターンを図17に示す。第1の実験(新しい薬剤濃縮物使用)の結晶は、より安定な多形からなることがわかった。これとは対照的に、第1の実験(エイジング薬剤濃縮物)の結晶は、大部分が安定性の低い多形からなり、少量のより安定な多形も存在していた。従って、エイジングは、薬剤濃縮物中の安定性の低い多形の結晶の形成を誘導し、これが次にミクロ沈殿およびホモジナイズの間に結晶種物質として作用し、これにより安定性の低い多形が優先的に形成されたと考えられる。
【0146】
(実施例19:クロスフロー限外濾過による連続溶媒除去プロセス)
図20は、本質的に溶媒非含有のイトラコナゾールの小粒子の水性懸濁液を調製するためのクロスフロー濾過による連続溶媒除去プロセスを説明する模式図である。NMP 120ml中のイトラコナゾール20gの溶液を、WFI 2L中にリン脂質24gおよびグリセリン44gを含有する界面活性剤溶液と混合して混合物を形成し、ミクロ沈殿プロセスを開始した。次に混合物をホモジナイザーに導入してホモジナイズした。ホモジナイズ後、混合物を供給タンクに移した。WFI 4.5Lをさらに供給タンクにいれ、混合物を洗浄した。次に洗浄した混合物を3回限外濾過プロセスに付し、そこで粒子の水性懸濁液よりなる保持液を供給タンクに再循環し、その間透過物を除去し、NMPを分析した。プロセスはまた、リン脂質12g、グリセリン22gおよびリン酸ナトリウム1.42gを含有する交換用界面活性剤溶液1Lで溶媒非含有水性懸濁液を洗浄する別の工程も包含した。交換用界面活性剤溶液中の小粒子をさらにホモジナイズした。
【0147】
(実施例20:濃縮工程を包含するクロスフロー限外濾過による連続溶媒除去プロセス)
実施例19に記載したプロセスは、10洗浄サイクルのための透析濾過を行う前に本実施例において10Lから2Lまで洗浄バッチを濃縮する別の工程を包含していた。この方法は限定された水への溶解度を有する有機化合物に特に適している。
【0148】
(実施例21:プロセスのスケールアップにおけるNMPの除去)
実施例19に記載した連続溶媒除去プロセスを200mlバッチから10Lバッチにスケールアップすることができ、各バッチにつき溶媒除去後のNMPの濃度は図21に示す通りである。
【0149】
(実施例22:2種の異なる薬剤および異なる界面活性剤に関する異なるスケールにおけるNMPの除去)
実施例19に記載のプロセスはまた、2種の異なる界面活性剤を用いたイトラコナゾールおよびブデソニドについて異なるスケールで適用した。水性懸濁液中の残留NMP濃度を表3に示す。
【0150】
(表3:2種の異なる薬剤、2種の異なる界面活性剤に関する異なるスケールにおいて達成されたNMP除去)
【0151】
【表3】

(実施例23:種々のスケールを有する種々のバッチにおけるNMPおよび薬剤力価の質量バランス)
種々のスケールにおいて実施例19に記載した連続溶媒除去プロセスからの試料の種々のバッチについて質量バランスを計算した。4種のパイロットスケールの10Lバッチにおいて、83%のNMPの収支であった。2種の200mLの実験スケールのバッチにおいては、79%のNMPの収支であった。収支に合わなかったNMPは限外濾過の膜、配管および/または粒子に吸着された可能性がある。
【0152】
95%超の薬剤力価が10Lバッチで維持されたのに対し、70%の薬剤力価が200mLバッチでは維持された。薬剤力価の損失は、恐らくは移送に起因すると考えられる。
【0153】
(実施例24:小粒子を調製するための複合的かつ連続的なプロセス)
複合的かつ連続的プロセスにおいては、水混和性溶媒および水性の第2の溶媒(アンチ溶媒)中に溶解した薬剤を含有する薬剤濃縮物をインラインで、ホモジナイズ容器内で混合する。ホモジナイズおよびクロスフロー限外濾過は、ホモジナイザーから限外濾過装置に至り、その後ホモジナイザーに戻ってくる閉鎖ループ内を循環する混合物循環と同時に実施する。所望の濃度まで有機溶媒を除去するためには可能な限り多くのサイクル数循環を反復する。プロセスを図22に模式的に示す。
【0154】
(実施例25:ポロキサマー188の水性媒体中に沈殿したイトラコナゾールの小粒子を調製するための複合的かつ連続的プロセス)
NMP中のイトラコナゾールの溶液を0.1%ポロキサマー188、0.1%デオキシコレートおよび2.2%グリセリンを含有する水性界面活性剤溶液中に沈殿させた。高圧ホモジナイズおよび溶媒除去をミクロ沈殿の発生後に開始し、ミクロ沈殿終了時まで継続した。最終平均粒径は340nmであり、顕微鏡下では凝集は観察されなかった。残留NMP濃度は10ppm未満であった。全プロセスは2時間で行われ、これはミクロ沈殿、その後のホモジナイズ、その後の遠心分離、その後のホモジナイズを用いて生成された同様のバッチと比較した場合、処理時間が50%減に相当している。
【0155】
特定の実施形態を例示して説明したが、本発明の精神から逸脱することなく多くの変更が想到され、そして保護の範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】図1は、本発明の1つの方法の図式表示を示す。
【図2】図2は、本発明の別の方法の図式表示を示す。
【図3】図3は、ホモジナイズの前の不定形の粒子を示す。
【図4】図4は、ホモジナイズによるアニーリング後の粒子を示す。
【図5】図5は、ホモジナイズの前および後のポリエチレングリコール−660 12−ヒドロキシステアレートを用いた場合のミクロ沈殿させたイトラコナゾールのX線回折図である。
【図6】図6は、ホモジナイズ前のカルバマゼピンの結晶を示す。
【図7】図7は、ホモジナイズ後のカルバマゼピンマイクロ粒子を示す(Avestin C−50)。
【図8】図8は、プレドニソロンのためのミクロ沈殿法を説明する図である。
【図9】図9は、ホモジナイズ前のプレドニソロン懸濁液の顕微鏡写真である。
【図10】図10は、ホモジナイズ後のプレドニソロン懸濁液の顕微鏡写真である。
【図11】図11は、ナノ懸濁液(本発明)と市販の脂肪エマルジョンとの粒径分布の比較を示す。
【図12】図12は、原材料のイトラコナゾール(上)とSMP−2−PRE(下)のX線粉末回折パターンを示す。原材料のパターンは透明度に関して上方にシフトしている。
【図13】図13aは、原材料イトラコナゾールのDSC軌跡を示す。図13bは、SMP−2−PREのDSC軌跡を示す。
【図14】図14は、SMP−2−PREのDSC軌跡を示しており、160℃までの加熱による安定性の低い多形の融解、冷却による再結晶の発生および180℃までの再加熱によるより安定な多形のその後の融解が観察される。
【図15】図15は、ホモジナイズ後のSMP−2−PRE試料の比較を示す。実線=原材料イトラコナゾールを結晶種とした試料。点線=結晶種無添加。実線は透明度に関して1W/gシフトしている。
【図16】図16は、沈殿の間の結晶種添加の作用を説明している。点線=結晶種無添加、実線=原材料イトラコナゾールを結晶種とした試料。結晶種無添加の軌跡(点線)は透明度に関して1.5W/g上方シフトしている。
【図17】図17は、エイジングのプロセスにおける薬剤濃縮物への結晶種添加の作用を示す。上のX線回折パターンは新しい薬剤濃縮物から調製した結晶に関するものであり、安定な多形と合致している(図12上参照)。下のパターンはエイジング(結晶種添加)した薬剤濃縮物から調製した結晶に関するものであり、メタ安定の多形と合致している(図12下参照)。上のパターンは透明度に関して上方シフトしている。
【図18】図18は、本質的に溶媒非含有の小粒子の水性懸濁液を調製するための複合連続溶媒除去プロセスを説明する模式図である。
【図19】図19は、クロスフロー濾過を用いた本質的に溶媒非含有の小粒子の水性懸濁液を調製するための連続溶媒除去プロセスを説明する模式図である。
【図20】図20は、本質的に溶媒非含有のイトラコナゾールの小粒子の水性懸濁液を調製するための連続溶媒除去プロセスを説明する模式図である。
【図21】図21は、200mLの実験室スケールから10Lのパイロットスケールへの実施例19に記載したプロセスのスケールアップにおけるNMP除去を説明するグラフである。
【図22】図22は、実質的に溶媒非含有の小粒子の水性懸濁液を調製するための複合連続プロセスを説明する模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物の小粒子を調製するための方法であって、水混和性の第1の溶媒中における該有機化合物の溶解度が、水性の第2の溶媒中における溶解度よりも大きく、該方法は、下記工程:
(i)該水混和性の第1の溶媒中に該有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;
(ii)該溶液を該第2の溶媒と混合して混合物を形成する工程;および、
(iii)該混合物を同時にホモジナイズし、該混合物から該第1の溶媒を連続的に除去して、約100μm未満の平均有効粒径を有する小粒子の水性懸濁液を形成する工程であって、ここで該水性懸濁液は、本質的に該第1の溶媒を含有しない、工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記水混和性の第1の溶媒が、プロトン性有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロトン性有機溶媒が、アルコール類、アミン類、オキシム類、ヒドロキサム酸類、カルボン酸類、スルホン酸類、ホスホン酸類、リン酸類、アミド類および尿素類からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記水混和性の第1の溶媒が、非プロトン性有機溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非プロトン性有機溶媒が、双極性の非プロトン性溶媒である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記双極性の非プロトン性溶媒が、完全置換アミド類、完全置換尿素類、エーテル類、環状エーテル類、ニトリル類、ケトン類、スルホン類、スルホキシド類、完全置換ホスフェート類、ホスホン酸エステル類、ホスホルアミド類およびニトロ化合物類からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水混和性の第1の溶媒が、N−メチル−2−ピロリジノン(N−メチル−2−ピロリドン)、2−ピロリジノン(2−ピロリドン)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、酢酸、乳酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、3−ペンタノール、n−プロパノール、ベンジルアルコール、グリセロール、ブチレングリコール(ブタンジオール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、モノ−アシル化モノグリセリドおよびジ−アシル化モノグリセリド、グリセリルカプリレート、ジメチルイソソルビド、アセトン、ジメチルスルホン、ジメチルホルムアミド、1,4−ジオキサン、テトラメチレンスルホン(スルホラン)、アセトニトリル、ニトロメタン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、芳香族炭化水素類、アルケン類、アルカン類、ハロゲン化芳香族類、ハロゲン化アルケン類、ハロゲン化アルカン類、キシレン、トルエン、ベンゼン、置換ベンゼン、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン、トリクロロエタン、塩化メチレン、二塩化エチレン(EDC)、ヘキサン、ネオペンタン、ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG−4、PEG−8、PEG−9、PEG−12、PEG−14、PEG−16、PEG−120、PEG−75、PEG−150、ポリエチレングリコールエステル類、ジラウリン酸PEG−4、ジラウリン酸PEG−20、イソステアリン酸PEG−6、パルミトステアリン酸PEG−8、パルミトステアリン酸PEG−150、ポリエチレングリコールソルビタン類、イソステアリン酸PEG−20ソルビタン、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル類、PEG−3ジメチルエーテル、PEG−4ジメチルエーテル、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレンアルギネート、PPG−10ブタンジオール、PPG−10メチルグルコースエーテル、PPG−20メチルグルコースエーテル、PPG−15ステアリルエーテル、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコールおよびグリコフロール(テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記水混和性の第1の溶媒が、N−メチル−2−ピロリジノンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記水混和性の第1の溶媒が、乳酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記水混和性の第1の溶媒または前記第2の溶媒、または、該水混和性の第1の溶媒および該第2の溶媒の両方に、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤および界面活性生物学的修飾剤からなる群より選択される、1つ以上の表面修飾剤を混合する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の溶媒の除去を濾過により行う、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記濾過が、クロスフロー限外濾過である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記限外濾過が、前記混合物を濃縮して濃縮物を形成する工程および該濃縮物を透析濾過して前記第1の溶媒を除去する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記限外濾過のために高分子膜を用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記限外濾過のためにセラミック膜を用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の溶媒が、約100ppm未満で前記水性懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の溶媒が、約50ppm未満で前記水性懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の溶媒が、約10ppm未満で前記水性懸濁液中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記有機化合物が水に難溶性である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記有機化合物が、約10mg/ml未満の水への溶解度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記有機化合物が薬学的に活性な化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記薬学的に活性な化合物がイトラコナゾールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記薬学的に活性な化合物がブデソニドである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記薬学的に活性な化合物がカルバマゼピンである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記薬学的に活性な化合物がプレドニゾロンである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記薬学的に活性な化合物がナブメトンである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記小粒子が約20μm〜約10nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記小粒子が約10μm〜約10nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記小粒子が約2μm〜約10nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記小粒子が約1μm〜約10nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記小粒子が約400nm〜約50nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記小粒子が約200nm〜約50nmの平均有効粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記水性懸濁液を滅菌する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記水性懸濁液を滅菌する工程が、混合前に前記溶液および前記第2の溶媒を濾過滅菌する工程およびその後の工程を無菌的条件下で実施する工程を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記滅菌工程が加熱滅菌工程を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記加熱滅菌が、ホモジナイザー内部において行われ、該ホモジナイザーは、滅菌のための加熱加圧源として機能する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記滅菌工程がガンマ線照射を包含する、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記水性懸濁液の水相を除去して前記小粒子の乾燥粉末を形成する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記水相を除去する工程が、蒸発、ロータリーエバポレート、凍結乾燥法、凍結乾燥、透析濾過、遠心分離、力場分画、高圧濾過および逆浸透からなる群より選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記小粒子に希釈剤を添加する工程をさらに包含する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記希釈剤が前記粒子の非経口投与に適する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
請求項1に記載の方法により調製される小粒子の組成物。
【請求項43】
非経口、経口、肺、局所、眼、鼻、経口腔粘膜、直腸、膣および経皮からなる群より選択される経路により、前記組成物を必要とする被験体に投与される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記溶液および前記第2の溶媒が混合される間に、前記混合物を同時にホモジナイズし、かつ該混合物から前記第1の溶媒を連続的に除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
有機化合物の小粒子を調製するための方法であって、該有機化合物の溶解度が、水性の第2の溶媒中においてよりも水混和性の第1の溶媒中において大きく、該方法は:
(i)該水混和性の第1の溶媒中に該有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;
(ii)該溶液を該第2の溶媒と混合して混合物を形成する工程;および
(iii)該混合物を同時にホモジナイズし、かつクロスフロー限外濾過により該混合物から該第1の溶媒を連続的に除去して、約100μm未満の平均有効粒径を有する小粒子の水性懸濁液を形成する工程であって、ここで該水性懸濁液は本質的に該第1の溶媒を含有しない、工程
を包含する、方法。
【請求項46】
水混和性の第1の溶媒中における溶解度が水性の第2の溶媒中における溶解度よりも高値である有機化合物の小粒子を調製するための方法であって、該方法は:
(i)該水混和性の第1の溶媒中に該有機化合物を溶解して溶液を形成する工程;および
(ii)該溶液を該第2の溶媒と混合して混合物を形成すると同時に該混合物をホモジナイズし、かつ該混合物から該第1の溶媒を連続的に除去することにより約100μm未満の平均有効粒径を有する小粒子の水性懸濁液を形成する工程であって、ここで該水性懸濁液は、本質的に該第1の溶媒を含有しない、工程
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公表番号】特表2007−512241(P2007−512241A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538153(P2006−538153)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/035335
【国際公開番号】WO2005/044225
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】