杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法
【課題】 本発明の目的は、住宅等の基礎を構成する杭の打込作業を行う際に、杭を正しい姿勢で打ち込むことを可能とする、杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法を提供する。
【解決手段】 地中への杭3の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置Sであって、杭3の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材1を有し、計測部材1は杭3に接触して配設され、杭3が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、杭3が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、杭3の姿勢が変更したときに、杭3が不適性位置にあることを示す表示手段20が設けられ、この表示手段20は計測手段1の進退動作に連動して表示を行う。
【解決手段】 地中への杭3の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置Sであって、杭3の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材1を有し、計測部材1は杭3に接触して配設され、杭3が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、杭3が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、杭3の姿勢が変更したときに、杭3が不適性位置にあることを示す表示手段20が設けられ、この表示手段20は計測手段1の進退動作に連動して表示を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法に関し、特に、地中に杭を回転圧入する際に杭の鉛直姿勢を確保し、精度良く打ち込むことを可能とする、杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の基礎は、一般に、地盤を掘削し、そこに鉄筋からなる構造体を構築し、型枠を設置した後、コンクリートを打設して形成されている。
しかし、上記基礎では、施工に手間を有し、さらに、敷地外に廃棄される残土を多く生じるという問題があった。
【0003】
また、リサイクルの観点から見ても、上記従来の基礎では、コンクリート部分と鋼材部分とを分離するのが容易ではなく、鋼材の再利用が難しいという問題があった。
【0004】
そこで、地盤に鋼製の杭を打ち込み、この杭の上端部に鋼製の基礎横架材が接合されてなる建物基礎の構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−064978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された基礎構造を採用するときは、杭を所定位置に精度良く打ち込むことが好ましい。
杭が適正な姿勢で打ち込まれているか否かを計測する技術は、例えば次の資料に示すものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された鋼管杭は、外側に設けられた筒部に姿勢計測装置を備え、筒部の軸心の方向を計測することで、鋼管杭の軸心の向きを把握し、その姿勢を計測するように構成されている。
【特許文献2】特開平4−353122号公報(第2頁、図1)
【0007】
しかし、上記特許文献2に開示された姿勢計測装置は、装置をそれぞれの鋼管杭に取り付ける必要があり、取り付けに手間がかかるとともに、コストが高くなるという問題があった。
また、照射光と反射光の位置で、杭の姿勢のズレが示されるが、杭の上部側で光による表示がなされるため、作業者にとって見づらいという不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、住宅等の基礎を構成する杭の打込作業を行う際に、杭を正しい姿勢で打ち込むことを可能とする、杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、請求項1に係る杭打込姿勢監視装置によれば、地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置であって、前記杭の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を有し、前記計測部材は前記杭に接触して配設され、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、前記杭が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、前記杭の姿勢が変更したときに、前記杭が不適性位置にあることを示す表示手段が設けられ、該表示手段は前記計測部材の進退動作に連動して表示を行う、ことにより解決される。
【0010】
本発明の杭打込姿勢監視装置は計測部材を備え、この計測部材が、杭が地中に回転圧入されるときの姿勢に応じて進退する。そして、表示手段によって計測装置の進退動作を示すことにより、杭が適正な姿勢で打ち込まれているか否かを示す機能を有する。
【0011】
また、前記計測部材は支持体に配設され、ユニット化されているので、所定の杭の打込作業が終了した後は別の場所に移動させて、別の杭の打ち込み作業に用いることができる。
このように、本発明の装置は、複数の杭に共通して用いることができるので、コスト面において有利である。
【0012】
前記計測部材は、弾性部材により前記杭に付勢されて配設されている。したがって、杭が傾いたりして姿勢が変わったとき、杭の姿勢に応じて進退し、杭の打込姿勢監視装置としての動作を行う。
また、計測部材が延出可能な範囲であれば、様々な杭径に対応することが可能である。
【0013】
また、前記計測部材の前記杭との接触箇所には、前記杭が打ち込まれる際の回転圧入動作に追随する回転部材が設けられており、杭が回転動作により打ち込まれる際にも、計測部材が無理なく杭に接触するように構成されている。
【0014】
また、前記計測部材の進退動作の量を記録する記録手段が設けられており、杭がどれくらいの量で姿勢変更したのかが把握できるように構成されている。
【0015】
なお、前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報が発せられるようにすると、警報に応じて杭の姿勢変更を行うことができ、即時に対応することが可能となり好適である。
【0016】
或いは、前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、前記杭を地中に打ち込む打込手段において前記杭の保持状態の補正制御がなされるようにすると、杭が傾いたときに、自動的に杭の姿勢を補正することができ好適である。
【0017】
杭の姿勢監視は次の方法により行う。すなわち、本発明の杭打込姿勢監視方法は、地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視方法であって、前記杭を打込位置に立設する工程と、前記杭の周りに、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を配設する工程と、前記計測部材の先端が前記杭に接触する位置になるよう調整する工程と、前記杭を地中に打ち込む工程と、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて前記計測部材が進退したとき、該計測手段の進退動作に連動して前記杭が不適性位置にあることを示す工程と、前記杭の姿勢を補正する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の杭打込姿勢監視装置は、杭の周りに配設され、計測部材で杭の姿勢を計測して、杭が適正な姿勢から不適正な姿勢になったときに、表示手段により示すように構成されている。
【0019】
したがって、作業者は表示手段を見ることにより、杭の姿勢が不適性になったことを把握し、杭の姿勢を随時補正することが可能となる。
【0020】
また、杭打込姿勢監視装置はユニット化されており、複数の杭が打ち込まれる場合に、それぞれの杭の打ち込み位置に簡単に移動することができ、一つの装置で、複数の杭の打ち込みに対応することができる。
【0021】
さらに、計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報が発せられるようにされており、作業者に杭の姿勢が不適性になったことが報知され、即時に杭の姿勢を補正することが可能となる。
【0022】
また、計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、杭を地中に打ち込む打込手段において杭の姿勢を自動的に補正する制御がなされ、常に適正な姿勢で杭を打ち込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0024】
図1乃至図8は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は本実施形態に係る杭打込姿勢監視装置の斜視図、図2は図1の要部拡大図、図3は計測部材の説明図、図4〜図8は打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の杭打込姿勢監視装置Sは、図1に示すように、計測部材1と、支持体としての支持台2と、を備えている。
杭打込姿勢監視装置Sは、住宅の基礎等を構成する杭3を地中に打ち込む際に、杭3が鉛直に打ち込まれるように、杭3の姿勢を監視する装置である。
【0026】
杭打込姿勢監視装置Sは、杭3を打ち込む前に、杭3の周りに設置される。
支持台2は図1に示す一部の辺2gがねじ2hにより着脱可能とされているので、杭3の周りに配設するときは、支持台2は辺2gが取り外されたコ字状になっており、杭3の周りにはめ込むように設置される。
【0027】
辺2gは、設置が終わったあとに、再度取り付けられる。
支持台2をロ字状とすることにより、支持台2に歪みが発生しにくくなり好適である。
なお、支持台2の形状が適正に保たれるのであれば、辺2gがなくても良い。
さらに、図1に示す辺2kも省略して、L字形の支持台2としても良い。
【0028】
計測部材1は、本体部10と、表示手段としての表示部20と、記録手段としての記録部30と、を備えて構成されている。
計測部材1は、支持台2上に二本設けられており、本例では中心軸線が互いに直交するように配設されている。
【0029】
なお、本例では、計測部材1が二本設けられた例を示しているが、計測部材1は支持台2の各辺に一本ずつ、計四本設けられていても良い。或いは、三本の計測部材1が設けられた構成としても良い。この場合も、隣接する計測部材1は、中心軸線が互いに直交するように配設される。なお、計測部材1は直交して配設されるのが好ましいが、杭1の傾きが計測可能であれば、必ずしも直交していなくても良い。
【0030】
支持台2には水準器2bが設けられている。水準器2bは、支持台2の水平を測るための気泡管2c、2dを備えている。
これらの気泡管2c、2dにより、支持台2の前後左右の水平を出すことができる。
すなわち、気泡管2c、2dの気泡が基準位置になっているとき、支持台2の上面の水平が保たれることになる。
【0031】
支持台2は脚部2eに支持されており、この脚部2eに連結された支持棒2fに連結されて、地面から離間して保持されている。
脚部2eの先端は尖った形状となっており、この脚部2eを地面に対して押し込みながら調整することにより、支持台2の水平を容易に出すことが可能である。
支持台2が水平になることにより、計測部材1が地盤面に対して水平に設置される。
【0032】
本体部10は、図3に示すように、本体11と、本体11を杭3に対して付勢する弾性部材としてのばね12と、本体11を両側から摺動可能に保持する複数のローラー部材13と、本体11と杭3との間に介在する回転部材14とを備えている。
【0033】
本体11は、鋼製の角パイプ材から形成されている。なお、本体11としては、本例の形状に限らず、円筒形、多角柱形、中実の長尺部材であっても良い。
ばね12は、例えばコイルばねであり、本体11の下部側に設けられている。ばね12は、本体11を常に杭3側に付勢している。ばね12の付勢力により、本体11は杭3側に延出される。
【0034】
杭3の径が太くなるほど、ばね12は圧縮されて本体11は外側に位置するようになる。逆に、杭3の径が小さくなるほど、ばね12は伸長し、本体11は支持台2から杭3側に延出する。
このように、本例の計測部材1によれば、杭3の径が変化しても、本体11を杭3に当接させることが可能である。
【0035】
本体11の杭3側の先端には、回転部材14が設けられている。回転部材14はボールベアリングであり、杭3が回転圧入されるときに、杭3の回転に合わせて作動し、杭3の回転中であっても、本体11が無理なく杭3に当接するように構成されている。
【0036】
本体11は、支持台2上の台座2aに保持されている。本体11は、台座2aに設けられたばね12により台座2aと接続されており、さらに、台座2aに設けられたローラー部材13により、長手方向の左右に振れないように、摺動可能に保持されている。
【0037】
さらに、本体11の底部には図示しないスリットが設けられており、このスリットに台座2a上の案内部材15が係合し、本体11を底側からスライド可能に保持している。
上記構成により、本体11は支持台2上で、杭3に対して進退可能に保持される。
【0038】
表示部20は、図2に示すように、台座2aに設けられた目盛部材21と、表示部材22とから構成されている。
目盛部材21は、真ん中に基準点21aが設けられており、この基準点21aから所定間隔で目盛が設けられている。
基準点21aは例えば赤点で表示されている。
【0039】
表示部材22は、位置決めがなされるまでは、本体11上を移動可能に配設されており、所定位置でねじ22aにより本体11に固定される。
表示部材22は、地上に適正な姿勢で立設された杭3に対して、本体11が当接した状態で、目盛部材21の基準点21aを指す位置に固定される。このように本体11に固定されることにより、表示部材22は本体11の動きと一緒に移動することとなる。
目盛部材21は支持台2側にあり動かないので、本体11と共に表示部材22が動くと、表示部材22は基準点21aとは別の場所を指し示すようになる。
表示部材22が基準点21aを示していれば杭3は適正な姿勢を保っており、表示部材22が基準点21aから外れれば、杭3が不適正な姿勢となったことがわかる。
【0040】
記録部30は、図2に示すように、本体11に固定された記録用紙31と、この記録用紙31への記録を行うペン32とから構成されている。
ペン32は台座2aに固定されている。ペン32には錘33が設けられており、この錘33により、ペン先が常に記録用紙31に押し付けられる。
計測部材1の位置決めがなされた時点では、ペン先は記録用紙31の真ん中に設定される。
【0041】
本体11が進退すると、記録用紙31も一緒に進退する。ペン32は支持台2側に固定されているので、本体11が進退すると、ペン32により記録用紙31上に本体11の移動量が記入される。
記録用紙31には目盛31aが振られており、杭3がどれくらいの量で変位したのかを、確認可能となっている。
【0042】
次に、図4〜図8に基づいて、上記構成からなる杭打込姿勢監視装置Sを用いて、地中に打ち込まれる杭3の姿勢を監視する方法を説明する。
まず、図4に示すように、杭打ち機4のリーダ4aに杭3を装着する。
リーダ4aには駆動部4bが連結され、この駆動部4bにはキャップ4cが設けられている。
【0043】
このキャップ4cに、杭3の頭部が接続される。また、杭3の下端部は、保持部材4dにより保持され、振れ止めが図られる。
杭打ち機4に杭3が装着されたら、杭3を打ち込む所定位置まで杭打ち機4を移動させる。
【0044】
次いで、杭3の打込位置に杭3を立設させる。杭3は水準器等を用いて鉛直に立設される。
杭3が立設されたら、図5に示すように、杭3の周りに杭打込姿勢監視装置Sを配設する。
【0045】
杭打込姿勢監視装置Sの計測部材1は、先端が杭3に当接して配設され、中心軸線がなす角度θが略90°となるように杭3の周りに配置される。
また、支持台2が地盤面に対して略水平になるように調整される。
そして、表示部20及び記録部30が基準点に設定される。
【0046】
杭打込姿勢監視装置Sが設置されたら、杭打ち機4により、地中へ向けて杭3を回転圧入する。
回転圧入を行っているときに、杭3が傾いて、杭3の姿勢が不適性なものとなると、図6に示すように、杭3に対して計測部材1の進退動作がなされる。
図6の例では、図中左側に位置する計測部材1は杭3に向けて進出し、図中上側に位置する計測部材1は後退している。
【0047】
このとき、図6の図中左側に位置する計測部材1の表示部20は、図7に示すようになり、図6の図中上側に位置する計測部材1の表示部20は、図8に示すようになる。
【0048】
それぞれの表示部20で、表示部材22が基準点21aを指していないことから、杭3の姿勢が傾いたことが示される。
それぞれの計測部材1の表示部20により、X方向及びY方向のずれが確認される。杭3の姿勢が不適性になったことは、杭打ち機4のオペレータに即時に連絡され、杭打ち機4のリーダ4aの傾きが調整されて、杭3の姿勢が補正される。
【0049】
本例の杭打込姿勢監視装置Sは、図1に示すように鏡9を備えている。
鏡9は杭3を映し、杭3の様子をオペレータに伝達するものである。杭打ち機4のオペレータからは、鏡9を介して杭3の状態がわかるようになっている。
オペレータは鏡9を見ながら杭打ち機4を操作し、杭3の姿勢を補正する。
【0050】
以上のように、杭打込姿勢監視装置Sによって杭3の姿勢が監視され、杭3の適正な姿勢を常に保ちながら、杭3の打込作業が行われる。
このようにして、杭3を鉛直に打ち込むことが可能となる。
【0051】
図9乃至図11に、本発明の他の実施例を示す。
上記実施例では、計測部材1を作業員が監視することにより、杭3の姿勢が不適性になったことを把握し、杭3の姿勢が不適性になったときには、作業員から杭打ち機4のオペレータに連絡して、杭3の姿勢を補正するようにしていた。
【0052】
本実施例では、杭打込姿勢監視装置Sに警報装置5が設けられた構成とされている。
図9は、本実施例で用いられる警報装置5を示す説明図である。
図示されているように、警報装置5は、複数のランプ5cを備えている。ランプ5cは、杭3の姿勢が前後左右のいずれかにずれたかを点灯または点滅により示すものである。
【0053】
図10は、警報装置5が作動するときの、杭打込姿勢監視装置Sと警報装置5との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
警報装置5を作動させるために、杭打込姿勢監視装置Sにはずれ量検出センサ40が設けられている。
ずれ量検出センサ40は変位センサであり、支持台2に設けられ、計測部材1が所定距離以上で進退動作したことを検知する。
【0054】
計測部材1が所定距離以上で進退したとき、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力される。
検知信号は有線または無線で送信され、警報装置5の受信部5aに受信される。さらに、受信部5aから制御部5bに送信される。
警報装置5の受信部5a及び制御部5bは、例えばワンチップマイクロコンピュータから構成され、警報装置5の枠体5eに設けられている。
【0055】
制御部5bは検知信号を受けると、ランプ5cを点灯させる。ランプ5cは四つ設けられており、杭3の姿勢を補正するために、杭3をどの方向に動かせば良いかを示すように構成されている。
【0056】
例えば、図6の状況では、図中左側に位置する計測部材1が所定距離進出したことを示す検知信号と、図中上側に位置する計測部材1が所定距離後退したことを示す検知信号が出力される。
【0057】
図6に示す位置にいる杭打ち機4に対してランプによる報知が行われる。図6の場合では、ランプ5cのうち、「左」を示すランプと、「後」を示すランプが点灯される。
オペレータはランプ5cの点灯を見ることにより、杭3を左方向及び後ろ方向に姿勢変更すれば良いことがわかる。
【0058】
なお、本例では、杭3の補正が必要となったときに、ランプ5cの点灯にあわせて、ブザー5dを鳴らすようにしている。
ブザー5dは、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力されたときに、制御部5bの制御により所定の音声を出力する。
このとき、左、右、前、後それぞれについて、別々の音声を発するようにしても良い。
【0059】
図11は警報装置5が作動するときの処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS1でずれ量検出センサ40により、計測部材1の移動が検出される。
次いで、ステップS2で警報装置5の作動設定がなされているか否かが判定される。警報装置5の作動設定がなされているとき(ステップS2;Yes)、警報装置5に検知信号が出力される(ステップS3)。
そして、検知信号の出力を受けて、警報装置が作動される(ステップS4)。
【0060】
図12乃至図15に、さらに他の実施例を示す。本実施例では、杭3の姿勢が不適性になったときに、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力され、この検知信号が杭打ち機4に有線または無線で送信され、杭3の姿勢が自動的に補正されるものである。
【0061】
図12は、杭打込姿勢監視装置Sと杭打ち機4との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
杭打ち機4では、受信部4gで検知信号が受信される。さらに、受信部4gからリーダ制御部4fに送信される。
リーダ制御部4fは検知信号を受けると、リーダ4aの姿勢を制御する。
【0062】
例えば、図6の状況では、リーダ制御部4fは、リーダ4aを左方向及び後ろ方向に姿勢変更する。
上記制御を可能とするために、リーダ4aの上端部または下端部に、リーダ4aの姿勢変更装置4eが設けられている。
【0063】
姿勢変更装置4eは、X方向及びY方向にリーダ4aを移動させ、リーダ4aの姿勢を変更するものである。
図13及び図14は姿勢変更装置4eの一例を示す説明図である。姿勢変更装置4eは、例えば図13に示すように、リーダ4aの側面に設けられ、リーダ4aを押したり引いたりすることが可能な一対の伸縮部材から構成されている。伸縮部材は油圧等により作動される。
伸縮部材は軸線が直交するように配設され、リーダ4aのX方向及びY方向の位置を調整可能とされている。
【0064】
或いは、姿勢変更装置4eとして、図14に示すように、リーダ4aの上端部または下端部に、支点Fで軸支されており、支点F回りに所定向きに回動することにより、リーダ4aの姿勢を変更可能な機構を設けても良い。
なお、リーダ4aの姿勢を変更するのではなく、杭3の姿勢を直接変更する構成としても良い。
【0065】
本実施例において、リーダ4aまたは杭3の姿勢を補正するために、どれくらいの移動量で動かせば良いかについては、ずれ量検出センサ40で検出された計測部材1の移動量に対応して予め決めておくと良い。
【0066】
図15は杭3の姿勢を自動で制御するときの処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS11でずれ量検出センサ40により、計測部材1の移動及び移動量が検出される。
次いで、ステップS12でリーダ4aの自動調整設定がなされているか否かが判定される。設定がなされているとき(ステップS12;Yes)、杭打ち機4に検知信号が出力される(ステップS13)。
そして、検知信号の出力を受けて、リーダ4aの傾斜角度が調整される(ステップS14)。
【0067】
以上のようにして、杭3は適正な姿勢で地中に打ち込まれる。
なお、杭3の打ち止めは、杭3が所定深さまで打ち込まれた時点でなされる。
本例では、図16乃至図19に示す打止レベル確認装置6を用いて、杭3が適正深さまで打ち込まれたことを確認し、打ち止めを行うようにしている。
【0068】
打止レベル確認装置6は、図1に示すように、杭打込姿勢監視装置Sの支持台2に設置されている。
打止レベル確認装置6は標尺8と組み合わせて使用されるものであり、図16に示すように、標尺置き台6aと、標尺支持部6bとを備えている。さらに、レベルアーム6cと、差し棒6dとを備えて構成されている。
レベルアーム6cは、ねじ6fを緩めることにより、保持部6gよりも下側に位置する部分が伸縮可能に構成されている。
【0069】
ここで、杭3の打止レベルについて、図17に基づいて説明する。
杭3は、地盤面(設計GL)から出る杭3の頭部が、所定突出量以下となるまで打ち込まれるように規定されている。
【0070】
図17では、説明のために起伏を大げさにして図示しているが、図示のように建築現場の地盤面GLは全ての場所で同一であるとは限らない。
しかし、地盤面GLに起伏があっても、全ての場所で、決められた十分な貫入量だけ杭3を打ち込み、さらに、杭3の上端部が同じ高さになるように打ち込まなければならない。
【0071】
図17の例では、最も低い地盤面に打ち込まれる杭3aを基準とし、杭3aの頭部が所定長さ以下となるように、杭3aが地面から出る長さを設定している。図17では杭3aの地面から出る長さはA1として設定されている。この長さA1は規定された基準長さ以内に収まるものである。
【0072】
その他の杭3b、3cが打ち込まれる地盤面は、杭3aが打ち込まれる地盤面よりも高いので、杭3bの地盤面からの突出長さA2、杭3cの地盤面からの突出長さA3のいずれも、規定された基準長さ内に収まることとなる。
【0073】
打止レベル確認装置6は、各杭3a〜3cに対して、各杭3a〜3cが打止レベルに達したとき、差し棒6dが杭3a〜3cの上端部を差すように設置される。
【0074】
打止レベル確認装置6の設置は次のようにして行う。
まず、任意の位置にレベル7を設置する。本例では、レベル7を、杭3aが打ち込まれる地盤面上に設置している。
そして、レベル7による視準を行い、任意の高さを設定する。この高さを、第一の基準高さH1とする。
【0075】
図17に示すように、各地点では、杭3の打止高さH2(図17では杭3の上端部)は、第一の基準高さH1から距離hだけ下がった位置になっている。
第一の基準高さH1と、距離hと、杭3a〜3cの突出長さA1〜A3との関係は次式のようになる。
【0076】
【数1】
なお、BM(ベンチマーク)は建物の各部の高さを定める基準となる高さであり、本例ではBMの高さを、第二の基準高さH3としている。
本例では、第一の基準高さH1は、この第二の基準高さH3よりも高い位置となるように設定されている。
【0077】
上記式1のうち、H1±(視準場所でのBMからGLまでの距離)の演算からは、第一の基準高さH1から、第二の基準高さH3までの距離、すなわち図17に示す距離L1が算出される。
【0078】
さらに、距離L1に、各地点での第二の基準高さH3からGLまでの距離を加減算し、杭3の突出長さA1〜3を減算することにより、距離hが得られる。
【0079】
次式より距離hが算出される。
【数2】
【0080】
なお、別の場所でも、次式により、距離hを求めることができる。
【数3】
【0081】
打止レベル確認装置6を設置するときは、図18に示すように、打止レベル確認装置6の標尺置き台6aに標尺8を乗せ、標尺支持部6bで支持して垂直に立てる。
そして、視準線7aの高さ(すなわち、第一の基準高さH1)に一致する目盛8aを読み取る。この目盛が示す数値は、図18の長さyに該当する。
【0082】
次に、打止レベル確認装置6のレベルアーム6cを伸縮させ、打止レベル確認装置6の全長zと、上記長さyを加算した長さが、高さhになるように調整する。
【0083】
打止レベル確認装置6の全長は、レベルアーム6c及び保持部6gに付された目盛6mにより、容易に把握することができる。
打止レベル確認装置6において、標尺置き台6aは目盛を付すことが困難な部位であるが、この部位は、その長さlが目盛一つ分となるように形成されている。
目盛6mは一定間隔に整数倍の寸法で設けられている。レベルアーム6c及び保持部6gには、周面上に目盛6mが付されているので、どの位置からでも、目盛を確認することができる。
【0084】
そして、y+z=hになるポイントで、ねじ6fを締めて、レベルアーム6cを固定する。
【0085】
このときの差し棒6dの差す位置が、杭3の打ち止めレベルとなる。すなわち、杭3の上端部が差し棒6dの位置まで来たときに、杭3の打ち止めがなされる。
差し棒6dの先端には着色部6eが設けられており、杭3の打ち止め位置の確認を確実に行えるようになっている。
【0086】
なお、杭3の上端ではなく、杭3の外周面に印を付けておき、この印の位置を杭3の打止高さH2とし、差し棒6dと印とが一致したときに、杭3の打ち止めを行うようにしても良い。
【0087】
この場合は、打止レベル確認装置6を設置するときに、杭3の上端部から印位置までの長さ分だけ、差し棒6dの位置を下げて設置すれば良い。
そして、杭3の印が差し棒6dの位置まで来たときに、杭3の打ち止めを行うようにすれば良い。
【0088】
なお、本例の差し棒6dは、異なる径の杭3に対応するために、伸縮自在に構成されている。
差し棒6dは、円筒状の基部6d1と、棒部材6d2とから構成されており、棒部材6d2は、基部6d1から突出可能に構成されている。
【0089】
杭3の径が太くなるほど、棒部材6d2基部6d1内に収納され、差し棒6dは短くされる。逆に、杭3の径が細くなるほど、棒部材6d2は杭3側に延出される。
【0090】
図19は、打止レベル確認装置6の他の実施例を示す説明図である。
本例の打止レベル確認装置6は、レベルアーム6cの他に、もう一本のレベルアーム6hを備えている。
【0091】
本例の打止レベル確認装置6は標尺8を用いない構成とされている。
このため、上記実施例における標尺置き台6a及び標尺支持部6bに相当する部材を備えていない。
【0092】
レベルアーム6cは、上記実施例と同様に、ねじ6f及び保持部6gを備え、保持部6gよりも下側に位置する部分が伸縮可能とされている。
【0093】
レベルアーム6hは、打止レベル確認装置6を設置するときのみ、接続部6iを介してレベルアーム6cに連結される。
レベルアーム6hが連結されることにより、標尺8を用いなくても、長さyの値を得ることが可能となる。
【0094】
レベルアーム6c及び6hには、周面上に目盛が付されているので、どの位置からでも、目盛を確認することができる。
また、目盛は一定間隔で色分けされている。例えば、100mmごとに色分けしておけば、色を見るだけで100mm単位の長さを把握することができ、容易に概略長さを把握することができる。
【0095】
図19に示す打止レベル確認装置6を使用する場合、杭打ちの初期段階、すなわち、杭打込姿勢監視装置Sを設置している段階では、レベルアーム6hを外しておく。こうすれば、打止レベル確認装置6が杭打ち作業の邪魔になることがない。
【0096】
そして、杭3がある程度打ち込まれ、打ち止め位置を確認する必要が生じた段階で、レベルアーム6hを接続し、打止レベル確認装置6の設置を行えば良い。
【0097】
杭3の打ち込みが終わったら、杭打込姿勢監視装置Sを別の場所に移動させて、別の杭3の打ち込みを行う。
このとき、本例の杭打込姿勢監視装置Sは、ユニット化されているので、容易に運ぶことができる。
【0098】
本例の杭打込姿勢監視装置Sは、図20に示すように、計測部材1、支持台2、脚部2e、支持棒2f、打止レベル確認装置6が一体とされているので、容易に移動することが可能である。
【0099】
また、杭打込姿勢監視装置Sには、運搬を容易に行うことができるように、脚部2eの上方にハンドル2iが設けられている。
さらに、支持台2の辺2gは、支持台2に着脱可能とされている。辺2gは脚部2eの上方に横架された支持棒2jにねじ等により保持される。
これにより、移動中に辺2gを紛失するようなことがなく、好適である。
なお、鏡9は、移動時は支持台2から外しておき、破損を防止するために別途移動するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る杭打込姿勢監視装置の斜視図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】計測部材の説明図である。
【図4】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図5】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図6】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図7】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図8】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図9】他の実施例に係る警報装置の説明図である。
【図10】杭打込姿勢監視装置と警報装置との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
【図11】警報装置が作動するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】杭打込姿勢監視装置と杭打ち機との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
【図13】杭打ち機のリーダの姿勢変更装置の一例を示す説明図である。
【図14】杭打ち機のリーダの姿勢変更装置の一例を示す説明図である。
【図15】杭の姿勢を自動で制御するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】打止レベル確認装置の斜視図である。
【図17】杭の打止レベルの説明図である。
【図18】打止レベル確認装置の設置方法を示す説明図である。
【図19】打止レベル確認装置の他の実施例を示す説明図である。
【図20】移動時の杭打込姿勢監視装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 計測部材
2 支持台(支持体)
2a 台座
2b 水準器
2c、2d 気泡管
2e 脚部
2f 支持棒
2g 辺
2h ねじ
2i ハンドル
2j 支持棒
2k 辺
3,3a,3b,3c 杭
4 杭打ち機
4a リーダ
4b 駆動部
4c キャップ
4d 保持部材
4f リーダ制御部
4e 姿勢変更装置
4g 受信部
5 警報装置
5a 受信部
5b 制御部
5c ランプ
5d ブザー
5e 枠体
6 打止レベル確認装置
6a 標尺置き台
6b 標尺支持部
6c レベルアーム
6d 差し棒
6d1 基部
6d2 棒部材
6e 着色部
6f ねじ
6g 保持部
6h レベルアーム
6i 接続部
6m 目盛
7 レベル
7a 視準線
8 標尺
9 鏡
10 本体部
11 本体
12 ばね(弾性部材)
13 ローラー部材
14 回転部材
15 案内部材
20 表示部(表示手段)
21 目盛部材
21a 基準点
22 表示部材
22a ねじ
30 記録部(記録手段)
31 記録用紙
31a 目盛
32 ペン
33 錘
40 ずれ量検出センサ
A、A1〜A3 杭が地盤面から出る長さ
BM ベンチマーク
F 支点
GL 地盤面
H1 第一の基準高さ
H2 杭の打止高さ
H3 第二の基準高さ
h 第一の基準高さから杭の打止高さまでの距離
s1 視準場所でのBMからGLまでの距離
s2,s3 各地点でのBMからGLまでの距離
S 杭打込姿勢監視装置
【技術分野】
【0001】
本発明は杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法に関し、特に、地中に杭を回転圧入する際に杭の鉛直姿勢を確保し、精度良く打ち込むことを可能とする、杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の基礎は、一般に、地盤を掘削し、そこに鉄筋からなる構造体を構築し、型枠を設置した後、コンクリートを打設して形成されている。
しかし、上記基礎では、施工に手間を有し、さらに、敷地外に廃棄される残土を多く生じるという問題があった。
【0003】
また、リサイクルの観点から見ても、上記従来の基礎では、コンクリート部分と鋼材部分とを分離するのが容易ではなく、鋼材の再利用が難しいという問題があった。
【0004】
そこで、地盤に鋼製の杭を打ち込み、この杭の上端部に鋼製の基礎横架材が接合されてなる建物基礎の構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−064978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された基礎構造を採用するときは、杭を所定位置に精度良く打ち込むことが好ましい。
杭が適正な姿勢で打ち込まれているか否かを計測する技術は、例えば次の資料に示すものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献2に開示された鋼管杭は、外側に設けられた筒部に姿勢計測装置を備え、筒部の軸心の方向を計測することで、鋼管杭の軸心の向きを把握し、その姿勢を計測するように構成されている。
【特許文献2】特開平4−353122号公報(第2頁、図1)
【0007】
しかし、上記特許文献2に開示された姿勢計測装置は、装置をそれぞれの鋼管杭に取り付ける必要があり、取り付けに手間がかかるとともに、コストが高くなるという問題があった。
また、照射光と反射光の位置で、杭の姿勢のズレが示されるが、杭の上部側で光による表示がなされるため、作業者にとって見づらいという不都合があった。
【0008】
本発明の目的は、住宅等の基礎を構成する杭の打込作業を行う際に、杭を正しい姿勢で打ち込むことを可能とする、杭打込姿勢監視装置及び杭打込姿勢監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、請求項1に係る杭打込姿勢監視装置によれば、地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置であって、前記杭の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を有し、前記計測部材は前記杭に接触して配設され、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、前記杭が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、前記杭の姿勢が変更したときに、前記杭が不適性位置にあることを示す表示手段が設けられ、該表示手段は前記計測部材の進退動作に連動して表示を行う、ことにより解決される。
【0010】
本発明の杭打込姿勢監視装置は計測部材を備え、この計測部材が、杭が地中に回転圧入されるときの姿勢に応じて進退する。そして、表示手段によって計測装置の進退動作を示すことにより、杭が適正な姿勢で打ち込まれているか否かを示す機能を有する。
【0011】
また、前記計測部材は支持体に配設され、ユニット化されているので、所定の杭の打込作業が終了した後は別の場所に移動させて、別の杭の打ち込み作業に用いることができる。
このように、本発明の装置は、複数の杭に共通して用いることができるので、コスト面において有利である。
【0012】
前記計測部材は、弾性部材により前記杭に付勢されて配設されている。したがって、杭が傾いたりして姿勢が変わったとき、杭の姿勢に応じて進退し、杭の打込姿勢監視装置としての動作を行う。
また、計測部材が延出可能な範囲であれば、様々な杭径に対応することが可能である。
【0013】
また、前記計測部材の前記杭との接触箇所には、前記杭が打ち込まれる際の回転圧入動作に追随する回転部材が設けられており、杭が回転動作により打ち込まれる際にも、計測部材が無理なく杭に接触するように構成されている。
【0014】
また、前記計測部材の進退動作の量を記録する記録手段が設けられており、杭がどれくらいの量で姿勢変更したのかが把握できるように構成されている。
【0015】
なお、前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報が発せられるようにすると、警報に応じて杭の姿勢変更を行うことができ、即時に対応することが可能となり好適である。
【0016】
或いは、前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、前記杭を地中に打ち込む打込手段において前記杭の保持状態の補正制御がなされるようにすると、杭が傾いたときに、自動的に杭の姿勢を補正することができ好適である。
【0017】
杭の姿勢監視は次の方法により行う。すなわち、本発明の杭打込姿勢監視方法は、地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視方法であって、前記杭を打込位置に立設する工程と、前記杭の周りに、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を配設する工程と、前記計測部材の先端が前記杭に接触する位置になるよう調整する工程と、前記杭を地中に打ち込む工程と、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて前記計測部材が進退したとき、該計測手段の進退動作に連動して前記杭が不適性位置にあることを示す工程と、前記杭の姿勢を補正する工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の杭打込姿勢監視装置は、杭の周りに配設され、計測部材で杭の姿勢を計測して、杭が適正な姿勢から不適正な姿勢になったときに、表示手段により示すように構成されている。
【0019】
したがって、作業者は表示手段を見ることにより、杭の姿勢が不適性になったことを把握し、杭の姿勢を随時補正することが可能となる。
【0020】
また、杭打込姿勢監視装置はユニット化されており、複数の杭が打ち込まれる場合に、それぞれの杭の打ち込み位置に簡単に移動することができ、一つの装置で、複数の杭の打ち込みに対応することができる。
【0021】
さらに、計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報が発せられるようにされており、作業者に杭の姿勢が不適性になったことが報知され、即時に杭の姿勢を補正することが可能となる。
【0022】
また、計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、杭を地中に打ち込む打込手段において杭の姿勢を自動的に補正する制御がなされ、常に適正な姿勢で杭を打ち込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0024】
図1乃至図8は、本発明に係る一実施形態を示すものであり、図1は本実施形態に係る杭打込姿勢監視装置の斜視図、図2は図1の要部拡大図、図3は計測部材の説明図、図4〜図8は打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【0025】
本実施形態の杭打込姿勢監視装置Sは、図1に示すように、計測部材1と、支持体としての支持台2と、を備えている。
杭打込姿勢監視装置Sは、住宅の基礎等を構成する杭3を地中に打ち込む際に、杭3が鉛直に打ち込まれるように、杭3の姿勢を監視する装置である。
【0026】
杭打込姿勢監視装置Sは、杭3を打ち込む前に、杭3の周りに設置される。
支持台2は図1に示す一部の辺2gがねじ2hにより着脱可能とされているので、杭3の周りに配設するときは、支持台2は辺2gが取り外されたコ字状になっており、杭3の周りにはめ込むように設置される。
【0027】
辺2gは、設置が終わったあとに、再度取り付けられる。
支持台2をロ字状とすることにより、支持台2に歪みが発生しにくくなり好適である。
なお、支持台2の形状が適正に保たれるのであれば、辺2gがなくても良い。
さらに、図1に示す辺2kも省略して、L字形の支持台2としても良い。
【0028】
計測部材1は、本体部10と、表示手段としての表示部20と、記録手段としての記録部30と、を備えて構成されている。
計測部材1は、支持台2上に二本設けられており、本例では中心軸線が互いに直交するように配設されている。
【0029】
なお、本例では、計測部材1が二本設けられた例を示しているが、計測部材1は支持台2の各辺に一本ずつ、計四本設けられていても良い。或いは、三本の計測部材1が設けられた構成としても良い。この場合も、隣接する計測部材1は、中心軸線が互いに直交するように配設される。なお、計測部材1は直交して配設されるのが好ましいが、杭1の傾きが計測可能であれば、必ずしも直交していなくても良い。
【0030】
支持台2には水準器2bが設けられている。水準器2bは、支持台2の水平を測るための気泡管2c、2dを備えている。
これらの気泡管2c、2dにより、支持台2の前後左右の水平を出すことができる。
すなわち、気泡管2c、2dの気泡が基準位置になっているとき、支持台2の上面の水平が保たれることになる。
【0031】
支持台2は脚部2eに支持されており、この脚部2eに連結された支持棒2fに連結されて、地面から離間して保持されている。
脚部2eの先端は尖った形状となっており、この脚部2eを地面に対して押し込みながら調整することにより、支持台2の水平を容易に出すことが可能である。
支持台2が水平になることにより、計測部材1が地盤面に対して水平に設置される。
【0032】
本体部10は、図3に示すように、本体11と、本体11を杭3に対して付勢する弾性部材としてのばね12と、本体11を両側から摺動可能に保持する複数のローラー部材13と、本体11と杭3との間に介在する回転部材14とを備えている。
【0033】
本体11は、鋼製の角パイプ材から形成されている。なお、本体11としては、本例の形状に限らず、円筒形、多角柱形、中実の長尺部材であっても良い。
ばね12は、例えばコイルばねであり、本体11の下部側に設けられている。ばね12は、本体11を常に杭3側に付勢している。ばね12の付勢力により、本体11は杭3側に延出される。
【0034】
杭3の径が太くなるほど、ばね12は圧縮されて本体11は外側に位置するようになる。逆に、杭3の径が小さくなるほど、ばね12は伸長し、本体11は支持台2から杭3側に延出する。
このように、本例の計測部材1によれば、杭3の径が変化しても、本体11を杭3に当接させることが可能である。
【0035】
本体11の杭3側の先端には、回転部材14が設けられている。回転部材14はボールベアリングであり、杭3が回転圧入されるときに、杭3の回転に合わせて作動し、杭3の回転中であっても、本体11が無理なく杭3に当接するように構成されている。
【0036】
本体11は、支持台2上の台座2aに保持されている。本体11は、台座2aに設けられたばね12により台座2aと接続されており、さらに、台座2aに設けられたローラー部材13により、長手方向の左右に振れないように、摺動可能に保持されている。
【0037】
さらに、本体11の底部には図示しないスリットが設けられており、このスリットに台座2a上の案内部材15が係合し、本体11を底側からスライド可能に保持している。
上記構成により、本体11は支持台2上で、杭3に対して進退可能に保持される。
【0038】
表示部20は、図2に示すように、台座2aに設けられた目盛部材21と、表示部材22とから構成されている。
目盛部材21は、真ん中に基準点21aが設けられており、この基準点21aから所定間隔で目盛が設けられている。
基準点21aは例えば赤点で表示されている。
【0039】
表示部材22は、位置決めがなされるまでは、本体11上を移動可能に配設されており、所定位置でねじ22aにより本体11に固定される。
表示部材22は、地上に適正な姿勢で立設された杭3に対して、本体11が当接した状態で、目盛部材21の基準点21aを指す位置に固定される。このように本体11に固定されることにより、表示部材22は本体11の動きと一緒に移動することとなる。
目盛部材21は支持台2側にあり動かないので、本体11と共に表示部材22が動くと、表示部材22は基準点21aとは別の場所を指し示すようになる。
表示部材22が基準点21aを示していれば杭3は適正な姿勢を保っており、表示部材22が基準点21aから外れれば、杭3が不適正な姿勢となったことがわかる。
【0040】
記録部30は、図2に示すように、本体11に固定された記録用紙31と、この記録用紙31への記録を行うペン32とから構成されている。
ペン32は台座2aに固定されている。ペン32には錘33が設けられており、この錘33により、ペン先が常に記録用紙31に押し付けられる。
計測部材1の位置決めがなされた時点では、ペン先は記録用紙31の真ん中に設定される。
【0041】
本体11が進退すると、記録用紙31も一緒に進退する。ペン32は支持台2側に固定されているので、本体11が進退すると、ペン32により記録用紙31上に本体11の移動量が記入される。
記録用紙31には目盛31aが振られており、杭3がどれくらいの量で変位したのかを、確認可能となっている。
【0042】
次に、図4〜図8に基づいて、上記構成からなる杭打込姿勢監視装置Sを用いて、地中に打ち込まれる杭3の姿勢を監視する方法を説明する。
まず、図4に示すように、杭打ち機4のリーダ4aに杭3を装着する。
リーダ4aには駆動部4bが連結され、この駆動部4bにはキャップ4cが設けられている。
【0043】
このキャップ4cに、杭3の頭部が接続される。また、杭3の下端部は、保持部材4dにより保持され、振れ止めが図られる。
杭打ち機4に杭3が装着されたら、杭3を打ち込む所定位置まで杭打ち機4を移動させる。
【0044】
次いで、杭3の打込位置に杭3を立設させる。杭3は水準器等を用いて鉛直に立設される。
杭3が立設されたら、図5に示すように、杭3の周りに杭打込姿勢監視装置Sを配設する。
【0045】
杭打込姿勢監視装置Sの計測部材1は、先端が杭3に当接して配設され、中心軸線がなす角度θが略90°となるように杭3の周りに配置される。
また、支持台2が地盤面に対して略水平になるように調整される。
そして、表示部20及び記録部30が基準点に設定される。
【0046】
杭打込姿勢監視装置Sが設置されたら、杭打ち機4により、地中へ向けて杭3を回転圧入する。
回転圧入を行っているときに、杭3が傾いて、杭3の姿勢が不適性なものとなると、図6に示すように、杭3に対して計測部材1の進退動作がなされる。
図6の例では、図中左側に位置する計測部材1は杭3に向けて進出し、図中上側に位置する計測部材1は後退している。
【0047】
このとき、図6の図中左側に位置する計測部材1の表示部20は、図7に示すようになり、図6の図中上側に位置する計測部材1の表示部20は、図8に示すようになる。
【0048】
それぞれの表示部20で、表示部材22が基準点21aを指していないことから、杭3の姿勢が傾いたことが示される。
それぞれの計測部材1の表示部20により、X方向及びY方向のずれが確認される。杭3の姿勢が不適性になったことは、杭打ち機4のオペレータに即時に連絡され、杭打ち機4のリーダ4aの傾きが調整されて、杭3の姿勢が補正される。
【0049】
本例の杭打込姿勢監視装置Sは、図1に示すように鏡9を備えている。
鏡9は杭3を映し、杭3の様子をオペレータに伝達するものである。杭打ち機4のオペレータからは、鏡9を介して杭3の状態がわかるようになっている。
オペレータは鏡9を見ながら杭打ち機4を操作し、杭3の姿勢を補正する。
【0050】
以上のように、杭打込姿勢監視装置Sによって杭3の姿勢が監視され、杭3の適正な姿勢を常に保ちながら、杭3の打込作業が行われる。
このようにして、杭3を鉛直に打ち込むことが可能となる。
【0051】
図9乃至図11に、本発明の他の実施例を示す。
上記実施例では、計測部材1を作業員が監視することにより、杭3の姿勢が不適性になったことを把握し、杭3の姿勢が不適性になったときには、作業員から杭打ち機4のオペレータに連絡して、杭3の姿勢を補正するようにしていた。
【0052】
本実施例では、杭打込姿勢監視装置Sに警報装置5が設けられた構成とされている。
図9は、本実施例で用いられる警報装置5を示す説明図である。
図示されているように、警報装置5は、複数のランプ5cを備えている。ランプ5cは、杭3の姿勢が前後左右のいずれかにずれたかを点灯または点滅により示すものである。
【0053】
図10は、警報装置5が作動するときの、杭打込姿勢監視装置Sと警報装置5との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
警報装置5を作動させるために、杭打込姿勢監視装置Sにはずれ量検出センサ40が設けられている。
ずれ量検出センサ40は変位センサであり、支持台2に設けられ、計測部材1が所定距離以上で進退動作したことを検知する。
【0054】
計測部材1が所定距離以上で進退したとき、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力される。
検知信号は有線または無線で送信され、警報装置5の受信部5aに受信される。さらに、受信部5aから制御部5bに送信される。
警報装置5の受信部5a及び制御部5bは、例えばワンチップマイクロコンピュータから構成され、警報装置5の枠体5eに設けられている。
【0055】
制御部5bは検知信号を受けると、ランプ5cを点灯させる。ランプ5cは四つ設けられており、杭3の姿勢を補正するために、杭3をどの方向に動かせば良いかを示すように構成されている。
【0056】
例えば、図6の状況では、図中左側に位置する計測部材1が所定距離進出したことを示す検知信号と、図中上側に位置する計測部材1が所定距離後退したことを示す検知信号が出力される。
【0057】
図6に示す位置にいる杭打ち機4に対してランプによる報知が行われる。図6の場合では、ランプ5cのうち、「左」を示すランプと、「後」を示すランプが点灯される。
オペレータはランプ5cの点灯を見ることにより、杭3を左方向及び後ろ方向に姿勢変更すれば良いことがわかる。
【0058】
なお、本例では、杭3の補正が必要となったときに、ランプ5cの点灯にあわせて、ブザー5dを鳴らすようにしている。
ブザー5dは、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力されたときに、制御部5bの制御により所定の音声を出力する。
このとき、左、右、前、後それぞれについて、別々の音声を発するようにしても良い。
【0059】
図11は警報装置5が作動するときの処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS1でずれ量検出センサ40により、計測部材1の移動が検出される。
次いで、ステップS2で警報装置5の作動設定がなされているか否かが判定される。警報装置5の作動設定がなされているとき(ステップS2;Yes)、警報装置5に検知信号が出力される(ステップS3)。
そして、検知信号の出力を受けて、警報装置が作動される(ステップS4)。
【0060】
図12乃至図15に、さらに他の実施例を示す。本実施例では、杭3の姿勢が不適性になったときに、ずれ量検出センサ40から検知信号が出力され、この検知信号が杭打ち機4に有線または無線で送信され、杭3の姿勢が自動的に補正されるものである。
【0061】
図12は、杭打込姿勢監視装置Sと杭打ち機4との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
杭打ち機4では、受信部4gで検知信号が受信される。さらに、受信部4gからリーダ制御部4fに送信される。
リーダ制御部4fは検知信号を受けると、リーダ4aの姿勢を制御する。
【0062】
例えば、図6の状況では、リーダ制御部4fは、リーダ4aを左方向及び後ろ方向に姿勢変更する。
上記制御を可能とするために、リーダ4aの上端部または下端部に、リーダ4aの姿勢変更装置4eが設けられている。
【0063】
姿勢変更装置4eは、X方向及びY方向にリーダ4aを移動させ、リーダ4aの姿勢を変更するものである。
図13及び図14は姿勢変更装置4eの一例を示す説明図である。姿勢変更装置4eは、例えば図13に示すように、リーダ4aの側面に設けられ、リーダ4aを押したり引いたりすることが可能な一対の伸縮部材から構成されている。伸縮部材は油圧等により作動される。
伸縮部材は軸線が直交するように配設され、リーダ4aのX方向及びY方向の位置を調整可能とされている。
【0064】
或いは、姿勢変更装置4eとして、図14に示すように、リーダ4aの上端部または下端部に、支点Fで軸支されており、支点F回りに所定向きに回動することにより、リーダ4aの姿勢を変更可能な機構を設けても良い。
なお、リーダ4aの姿勢を変更するのではなく、杭3の姿勢を直接変更する構成としても良い。
【0065】
本実施例において、リーダ4aまたは杭3の姿勢を補正するために、どれくらいの移動量で動かせば良いかについては、ずれ量検出センサ40で検出された計測部材1の移動量に対応して予め決めておくと良い。
【0066】
図15は杭3の姿勢を自動で制御するときの処理の流れを示すフローチャートである。
まず、ステップS11でずれ量検出センサ40により、計測部材1の移動及び移動量が検出される。
次いで、ステップS12でリーダ4aの自動調整設定がなされているか否かが判定される。設定がなされているとき(ステップS12;Yes)、杭打ち機4に検知信号が出力される(ステップS13)。
そして、検知信号の出力を受けて、リーダ4aの傾斜角度が調整される(ステップS14)。
【0067】
以上のようにして、杭3は適正な姿勢で地中に打ち込まれる。
なお、杭3の打ち止めは、杭3が所定深さまで打ち込まれた時点でなされる。
本例では、図16乃至図19に示す打止レベル確認装置6を用いて、杭3が適正深さまで打ち込まれたことを確認し、打ち止めを行うようにしている。
【0068】
打止レベル確認装置6は、図1に示すように、杭打込姿勢監視装置Sの支持台2に設置されている。
打止レベル確認装置6は標尺8と組み合わせて使用されるものであり、図16に示すように、標尺置き台6aと、標尺支持部6bとを備えている。さらに、レベルアーム6cと、差し棒6dとを備えて構成されている。
レベルアーム6cは、ねじ6fを緩めることにより、保持部6gよりも下側に位置する部分が伸縮可能に構成されている。
【0069】
ここで、杭3の打止レベルについて、図17に基づいて説明する。
杭3は、地盤面(設計GL)から出る杭3の頭部が、所定突出量以下となるまで打ち込まれるように規定されている。
【0070】
図17では、説明のために起伏を大げさにして図示しているが、図示のように建築現場の地盤面GLは全ての場所で同一であるとは限らない。
しかし、地盤面GLに起伏があっても、全ての場所で、決められた十分な貫入量だけ杭3を打ち込み、さらに、杭3の上端部が同じ高さになるように打ち込まなければならない。
【0071】
図17の例では、最も低い地盤面に打ち込まれる杭3aを基準とし、杭3aの頭部が所定長さ以下となるように、杭3aが地面から出る長さを設定している。図17では杭3aの地面から出る長さはA1として設定されている。この長さA1は規定された基準長さ以内に収まるものである。
【0072】
その他の杭3b、3cが打ち込まれる地盤面は、杭3aが打ち込まれる地盤面よりも高いので、杭3bの地盤面からの突出長さA2、杭3cの地盤面からの突出長さA3のいずれも、規定された基準長さ内に収まることとなる。
【0073】
打止レベル確認装置6は、各杭3a〜3cに対して、各杭3a〜3cが打止レベルに達したとき、差し棒6dが杭3a〜3cの上端部を差すように設置される。
【0074】
打止レベル確認装置6の設置は次のようにして行う。
まず、任意の位置にレベル7を設置する。本例では、レベル7を、杭3aが打ち込まれる地盤面上に設置している。
そして、レベル7による視準を行い、任意の高さを設定する。この高さを、第一の基準高さH1とする。
【0075】
図17に示すように、各地点では、杭3の打止高さH2(図17では杭3の上端部)は、第一の基準高さH1から距離hだけ下がった位置になっている。
第一の基準高さH1と、距離hと、杭3a〜3cの突出長さA1〜A3との関係は次式のようになる。
【0076】
【数1】
なお、BM(ベンチマーク)は建物の各部の高さを定める基準となる高さであり、本例ではBMの高さを、第二の基準高さH3としている。
本例では、第一の基準高さH1は、この第二の基準高さH3よりも高い位置となるように設定されている。
【0077】
上記式1のうち、H1±(視準場所でのBMからGLまでの距離)の演算からは、第一の基準高さH1から、第二の基準高さH3までの距離、すなわち図17に示す距離L1が算出される。
【0078】
さらに、距離L1に、各地点での第二の基準高さH3からGLまでの距離を加減算し、杭3の突出長さA1〜3を減算することにより、距離hが得られる。
【0079】
次式より距離hが算出される。
【数2】
【0080】
なお、別の場所でも、次式により、距離hを求めることができる。
【数3】
【0081】
打止レベル確認装置6を設置するときは、図18に示すように、打止レベル確認装置6の標尺置き台6aに標尺8を乗せ、標尺支持部6bで支持して垂直に立てる。
そして、視準線7aの高さ(すなわち、第一の基準高さH1)に一致する目盛8aを読み取る。この目盛が示す数値は、図18の長さyに該当する。
【0082】
次に、打止レベル確認装置6のレベルアーム6cを伸縮させ、打止レベル確認装置6の全長zと、上記長さyを加算した長さが、高さhになるように調整する。
【0083】
打止レベル確認装置6の全長は、レベルアーム6c及び保持部6gに付された目盛6mにより、容易に把握することができる。
打止レベル確認装置6において、標尺置き台6aは目盛を付すことが困難な部位であるが、この部位は、その長さlが目盛一つ分となるように形成されている。
目盛6mは一定間隔に整数倍の寸法で設けられている。レベルアーム6c及び保持部6gには、周面上に目盛6mが付されているので、どの位置からでも、目盛を確認することができる。
【0084】
そして、y+z=hになるポイントで、ねじ6fを締めて、レベルアーム6cを固定する。
【0085】
このときの差し棒6dの差す位置が、杭3の打ち止めレベルとなる。すなわち、杭3の上端部が差し棒6dの位置まで来たときに、杭3の打ち止めがなされる。
差し棒6dの先端には着色部6eが設けられており、杭3の打ち止め位置の確認を確実に行えるようになっている。
【0086】
なお、杭3の上端ではなく、杭3の外周面に印を付けておき、この印の位置を杭3の打止高さH2とし、差し棒6dと印とが一致したときに、杭3の打ち止めを行うようにしても良い。
【0087】
この場合は、打止レベル確認装置6を設置するときに、杭3の上端部から印位置までの長さ分だけ、差し棒6dの位置を下げて設置すれば良い。
そして、杭3の印が差し棒6dの位置まで来たときに、杭3の打ち止めを行うようにすれば良い。
【0088】
なお、本例の差し棒6dは、異なる径の杭3に対応するために、伸縮自在に構成されている。
差し棒6dは、円筒状の基部6d1と、棒部材6d2とから構成されており、棒部材6d2は、基部6d1から突出可能に構成されている。
【0089】
杭3の径が太くなるほど、棒部材6d2基部6d1内に収納され、差し棒6dは短くされる。逆に、杭3の径が細くなるほど、棒部材6d2は杭3側に延出される。
【0090】
図19は、打止レベル確認装置6の他の実施例を示す説明図である。
本例の打止レベル確認装置6は、レベルアーム6cの他に、もう一本のレベルアーム6hを備えている。
【0091】
本例の打止レベル確認装置6は標尺8を用いない構成とされている。
このため、上記実施例における標尺置き台6a及び標尺支持部6bに相当する部材を備えていない。
【0092】
レベルアーム6cは、上記実施例と同様に、ねじ6f及び保持部6gを備え、保持部6gよりも下側に位置する部分が伸縮可能とされている。
【0093】
レベルアーム6hは、打止レベル確認装置6を設置するときのみ、接続部6iを介してレベルアーム6cに連結される。
レベルアーム6hが連結されることにより、標尺8を用いなくても、長さyの値を得ることが可能となる。
【0094】
レベルアーム6c及び6hには、周面上に目盛が付されているので、どの位置からでも、目盛を確認することができる。
また、目盛は一定間隔で色分けされている。例えば、100mmごとに色分けしておけば、色を見るだけで100mm単位の長さを把握することができ、容易に概略長さを把握することができる。
【0095】
図19に示す打止レベル確認装置6を使用する場合、杭打ちの初期段階、すなわち、杭打込姿勢監視装置Sを設置している段階では、レベルアーム6hを外しておく。こうすれば、打止レベル確認装置6が杭打ち作業の邪魔になることがない。
【0096】
そして、杭3がある程度打ち込まれ、打ち止め位置を確認する必要が生じた段階で、レベルアーム6hを接続し、打止レベル確認装置6の設置を行えば良い。
【0097】
杭3の打ち込みが終わったら、杭打込姿勢監視装置Sを別の場所に移動させて、別の杭3の打ち込みを行う。
このとき、本例の杭打込姿勢監視装置Sは、ユニット化されているので、容易に運ぶことができる。
【0098】
本例の杭打込姿勢監視装置Sは、図20に示すように、計測部材1、支持台2、脚部2e、支持棒2f、打止レベル確認装置6が一体とされているので、容易に移動することが可能である。
【0099】
また、杭打込姿勢監視装置Sには、運搬を容易に行うことができるように、脚部2eの上方にハンドル2iが設けられている。
さらに、支持台2の辺2gは、支持台2に着脱可能とされている。辺2gは脚部2eの上方に横架された支持棒2jにねじ等により保持される。
これにより、移動中に辺2gを紛失するようなことがなく、好適である。
なお、鏡9は、移動時は支持台2から外しておき、破損を防止するために別途移動するのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明に係る杭打込姿勢監視装置の斜視図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】計測部材の説明図である。
【図4】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図5】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図6】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図7】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図8】本発明の打込姿勢監視装置を用いて杭の姿勢を監視する工程を示す説明図である。
【図9】他の実施例に係る警報装置の説明図である。
【図10】杭打込姿勢監視装置と警報装置との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
【図11】警報装置が作動するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図12】杭打込姿勢監視装置と杭打ち機との間での信号のやりとりを示すブロック図である。
【図13】杭打ち機のリーダの姿勢変更装置の一例を示す説明図である。
【図14】杭打ち機のリーダの姿勢変更装置の一例を示す説明図である。
【図15】杭の姿勢を自動で制御するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【図16】打止レベル確認装置の斜視図である。
【図17】杭の打止レベルの説明図である。
【図18】打止レベル確認装置の設置方法を示す説明図である。
【図19】打止レベル確認装置の他の実施例を示す説明図である。
【図20】移動時の杭打込姿勢監視装置を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
1 計測部材
2 支持台(支持体)
2a 台座
2b 水準器
2c、2d 気泡管
2e 脚部
2f 支持棒
2g 辺
2h ねじ
2i ハンドル
2j 支持棒
2k 辺
3,3a,3b,3c 杭
4 杭打ち機
4a リーダ
4b 駆動部
4c キャップ
4d 保持部材
4f リーダ制御部
4e 姿勢変更装置
4g 受信部
5 警報装置
5a 受信部
5b 制御部
5c ランプ
5d ブザー
5e 枠体
6 打止レベル確認装置
6a 標尺置き台
6b 標尺支持部
6c レベルアーム
6d 差し棒
6d1 基部
6d2 棒部材
6e 着色部
6f ねじ
6g 保持部
6h レベルアーム
6i 接続部
6m 目盛
7 レベル
7a 視準線
8 標尺
9 鏡
10 本体部
11 本体
12 ばね(弾性部材)
13 ローラー部材
14 回転部材
15 案内部材
20 表示部(表示手段)
21 目盛部材
21a 基準点
22 表示部材
22a ねじ
30 記録部(記録手段)
31 記録用紙
31a 目盛
32 ペン
33 錘
40 ずれ量検出センサ
A、A1〜A3 杭が地盤面から出る長さ
BM ベンチマーク
F 支点
GL 地盤面
H1 第一の基準高さ
H2 杭の打止高さ
H3 第二の基準高さ
h 第一の基準高さから杭の打止高さまでの距離
s1 視準場所でのBMからGLまでの距離
s2,s3 各地点でのBMからGLまでの距離
S 杭打込姿勢監視装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置であって、
前記杭の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を有し、
前記計測部材は前記杭に接触して配設され、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、
前記杭が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、
前記杭の姿勢が変更したときに、前記杭が不適性位置にあることを示す表示手段が設けられ、
該表示手段は前記計測部材の進退動作に連動して表示を行うことを特徴とする杭打込姿勢監視装置。
【請求項2】
前記計測部材は支持体に配設され、ユニット化されていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項3】
前記計測部材は弾性部材により前記杭に付勢されて配設されていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項4】
前記計測部材の前記杭との接触箇所には、前記杭が打ち込まれる際の回転圧入動作に追随する回転部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項5】
前記計測部材の進退動作の量を記録する記録手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項6】
前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報を発することを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項7】
前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、前記杭を地中に打ち込む打込手段において前記杭の保持状態の補正制御がなされることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項8】
地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視方法であって、
前記杭を打込位置に立設する工程と、
前記杭の周りに、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を配設する工程と、
前記計測部材の先端が前記杭に接触する位置になるよう調整する工程と、
前記杭を地中に打ち込む工程と、
前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて前記計測部材が進退したとき、該計測手段の進退動作に連動して前記杭が不適性位置にあることを示す工程と、
前記杭の姿勢を補正する工程と、を備えたことを特徴とする杭打込姿勢監視方法。
【請求項1】
地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視装置であって、
前記杭の周りで、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を有し、
前記計測部材は前記杭に接触して配設され、前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて進退し、
前記杭が適正な姿勢で立設している状態を適正位置として示すとともに、
前記杭の姿勢が変更したときに、前記杭が不適性位置にあることを示す表示手段が設けられ、
該表示手段は前記計測部材の進退動作に連動して表示を行うことを特徴とする杭打込姿勢監視装置。
【請求項2】
前記計測部材は支持体に配設され、ユニット化されていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項3】
前記計測部材は弾性部材により前記杭に付勢されて配設されていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項4】
前記計測部材の前記杭との接触箇所には、前記杭が打ち込まれる際の回転圧入動作に追随する回転部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項5】
前記計測部材の進退動作の量を記録する記録手段が設けられたことを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項6】
前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、警報を発することを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項7】
前記計測部材の進退動作の量が予め決められた所定量を超えたときに、前記杭を地中に打ち込む打込手段において前記杭の保持状態の補正制御がなされることを特徴とする請求項1記載の杭打込姿勢監視装置。
【請求項8】
地中への杭の打込姿勢の精度を確保するための杭打込姿勢監視方法であって、
前記杭を打込位置に立設する工程と、
前記杭の周りに、地盤面に対して略水平且つ中心軸線が互いに交わるように配設される少なくとも二つの計測部材を配設する工程と、
前記計測部材の先端が前記杭に接触する位置になるよう調整する工程と、
前記杭を地中に打ち込む工程と、
前記杭が地中に打ち込まれるときの姿勢に応じて前記計測部材が進退したとき、該計測手段の進退動作に連動して前記杭が不適性位置にあることを示す工程と、
前記杭の姿勢を補正する工程と、を備えたことを特徴とする杭打込姿勢監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−274634(P2006−274634A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93999(P2005−93999)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】
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