説明

検査条件設定方法、検査条件設定装置、検査条件設定プログラム

【課題】電子回路の外観検査前の設定作業を効率化する。
【解決手段】検査条件設定装置(検査装置1)は、半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータ(41)と被検査物画像(43)との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する。当該装置は、粗画像生成手段(ST21)と、輪郭抽出手段(ST22)と、認識手段(ST23)と、を備える。粗画像生成手段は、上記対比を行うために上記CADデータから生成する模範画像よりも、粗い画素密度の粗画像(45)を、上記CADデータから生成する。輪郭抽出手段は、上記粗画像から、ひとまとまりの個片(61、62等)の輪郭を各々抽出する。認識手段は、上記輪郭から、上記個片のパターンの一致を判定し、1または複数のパターンの個片を認識し、同一パターンのグループごとに上記個片を分類する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路の外観検査の際の検査条件の設定を効率化し、設定にかかる手間を軽減する方法、装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体、液晶回路、プリント基板などの電子部品の製造過程においては、これらの製造物が良品か否かを判定する外観検査工程が行われている。
【0003】
この外観検査工程には、検査装置が用いられている。検査装置は、製造工程の被検査物を撮像した画像(以下、「被検査物画像」と称する)と、良品の画像または元となるCADデータから生成した画像と比較することで、検査を行う。これにより、電気配線などの欠落や断線を検査することができる。
【0004】
ただし、実際の被検査物は、CADデータどおりに生成されていない。エッチングや各種製造工程により、たとえば、部品番号のナンバリングなどがなされているからである。したがって、CADデータを画像化したものそのままと被検査物を撮像した画像と比較すると、余計な欠陥が多く検出されてしまう。これを回避するため、予め編集作業をCADデータに施し、編集後の画像を比較することが行われている。たとえば、図形のコーナー部分に丸みをつけたり、検査不要な領域(たとえば、ナンバリングの領域)をマスクしたりするといった作業を行う。編集作業時には、その前準備として、どの部分にマスクなどを施すのかを設定する設定作業が必要があった。
【0005】
被検査物であるウェハや基板上には、チップや回路のパターンを同時に生成するため、ほぼ同形状の個片が並んでいることがある。ここで、個片とは、1まとまりの回路構成を有する回路パターンであって、各々のそれ(=個片)が互いに分離しているものを称することにする。このように、ほぼ同形状にもかかわらず、この設定作業を逐一行うのは、大変な作業であった。
【0006】
特許文献1には、同一個片がどこに配置されているのかを示す情報(以下「配置情報」と称する)がCADデータに組み込まれている場合に、各個片の設定を代表するマスタ画像を各個片に適用することにより、大幅に効率を向上させたパターン検査方法などが開示されている。
【特許文献1】特開2006−234554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では、確かに、個片の配置情報がCADデータに組み込まれている場合には、適用できる。しかしながら、必ずしもその情報を有さないタイプのCADデータが存在する。そのようなCADデータには特許文献1の方法を適用できず、設定作業を効率化できない虞があった。
【0008】
そこで、本発明は、個片の配置情報がCADデータに組み込まれていない場合でも、外観検査前の設定作業を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の構成を備えることができる。なお、以下では、理解の容易のために()内に対応する実施形態の符号等を付しているが、本発明を限定するものではない。
【0010】
(1) 本発明は、
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータ(41)と被検査物画像(43)との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定方法(検査条件設定プログラム11により実行するST2)であり、粗画像生成ステップ(ST21)と、輪郭抽出ステップ(ST22)と、認識ステップ(ST23)と、を実行する。
粗画像生成ステップでは、上記対比を行うために上記CADデータから生成する模範画像(42)よりも粗い画素密度で、上記CADデータから粗画像(45)を生成する。
輪郭抽出ステップでは、上記粗画像から、ひとまとまりの個片(61、62等)の輪郭を各々抽出する。
認識ステップでは、上記輪郭から、上記個片のパターンの一致を判定することにより、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成される、グループごとに上記個片を分類する(グループデータ5参照)。なお、ここでは、上記グループごとに上記外観検査の条件を設定する設定ステップ(ST25)を実行してもよい。
【0011】
この方法では、粗画像から、ひとまとまりの個片の輪郭を各々抽出し、個片を分類しているので、1つの個片の検査条件を設定するだけで、同一パターンの複数の個片について、同時に検査条件を設定することができる。したがって、CADデータに個片の情報が記述されていない場合でも、ユーザーは、その設定作業の効率を大幅に効率化することができる。
【0012】
なお、CADデータと被検査物画像との対比による外観検査においては、CADデータを画像化して対比してもよいし、必ずしもしなくてもよい。
【0013】
(2) 上記認識ステップでは、上記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、上記個片同士のパターンの一致を判定するようにしてもよい(付加処理(図9))。
【0014】
この方法によれば、同一形状であるが、角度、向きが異なる個片に対して、同一の個片と判定できる場合が増える可能性が高まる。したがって、この方法によれば、外観検査前の設定作業をよりいっそう効率化することが期待できる。
【0015】
(3) 上記粗画像生成ステップでは、上記粗画像として、各個片内の配線パターン(90)のピッチよりも粗い画素密度の画像を生成するようにしてもよい。
【0016】
このようにすれば、粗画像の周囲をたどれば、配線パターンが互いに分離している場合がありうるにもかかわらず、個片の外周を連続した外周として抽出できる。
【0017】
(4) 上記粗画像生成ステップでは、
CADデータに記述された配線パターンの配置を格子状に区切った領域に分類し、
ある領域に1点でも配線パターンが通過する部分(領域93A)があれば、パターンが存在する画素(93B)として記憶し、ある領域に配線パターンが通過する部分がまったくなければ(領域95A)、パターンが存在しない画素(95B)として記憶することにより、上記粗画像を生成するようにしてもよい。
【0018】
この構成では、1点でも配線パターンが対応する部分(領域93A)があれば、パターンが存在する画素(領域93B)として記憶するので、配線パターンが互いに分離している場合があっても、粗画像において、個片の内部を塗りつぶすことができ、個片の外周を連続した外周として抽出できる。
【0019】
(5) 本発明は、
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータ(41)と被検査物画像(43)との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定装置(検査装置1)であり、粗画像生成手段(ST21)と、輪郭抽出手段(ST22)と、認識手段(ST23)と、を備える。
粗画像生成手段は、上記対比を行うために上記CADデータから生成する模範画像よりも、粗い画素密度の粗画像(45)を、上記CADデータから生成する。
輪郭抽出手段は、上記粗画像から、ひとまとまりの個片(61、62等)の輪郭を各々抽出する。
認識手段は、上記輪郭から上記個片のパターンの一致を判定し、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成されるグループごとに上記個片を分類する(グループデータ5参照)。
設定手段は、上記グループごとに上記外観検査の条件を設定する(ST25)。
【0020】
この構成の作用効果は、上記(1)と同様である。
【0021】
(6) 上記認識手段は、上記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、上記個片同士のパターンの一致を判定するようにしてもよい(付加処理(図9))。
【0022】
この構成の作用効果は、上記(2)と同様である。
【0023】
(7) 上記粗画像生成手段は、上記粗画像として、各個片内の配線パターン(90)のピッチよりも粗い画素密度の画像を生成するようにしてもよい。
【0024】
この構成の作用効果は、上記(3)と同様である。
【0025】
(8) 上記画像生成手段は、
CADデータに記述された配線パターンの配置を格子状に区切った領域に分類し、
ある領域に1点でも配線パターンが通過する部分(領域93A)があれば、パターンが存在する画素(93B)として記憶し、ある領域に配線パターンが通過する部分がまったくなければ(領域95A参照)、パターンが存在しない画素(95B)として記憶することにより、上記粗画像を生成するようにしてもよい。
【0026】
この構成の作用効果は、上記(4)と同様である。
【0027】
(9)本発明は、
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータ(41)と被検査物画像(43)との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定装置(検査装置1)を動作させるプログラムであって、画像生成ステップ(ST21)と、輪郭抽出ステップ(ST22)と、認識ステップ(ST23)と、をコンピュータに実行させるプログラムである。
粗画像生成ステップでは、上記対比を行うために上記CADデータから生成する模範画像(42)よりも、粗い画素密度の粗画像(45)を、上記CADデータから生成する。
輪郭抽出ステップでは、上記粗画像から、ひとまとまりの個片の輪郭を各々抽出する。
認識ステップでは、上記輪郭から、上記個片のパターンの一致を判定することにより、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成されるグループごとに上記個片を分類する(グループデータ5参照)。
設定ステップは、上記グループごとに上記外観検査の条件を設定する(ST25)。
【0028】
この構成の作用効果は、上記(1)と同様である。
【0029】
(10) 上記認識ステップでは、上記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、上記個片同士のパターンの一致を判定するようにしてもよい(付加処理(図9)参照)。
【0030】
この構成の作用効果は、上記(2)と同様である。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ひとまとまりの個片の輪郭を抽出し、同一パターンの個片を抽出しているので、同一パターンの個片については、外観検査前の設定作業を効率化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明に係る検査装置の第1実施形態について説明する。
【0033】
(検査装置の構成図)
図1は、検査装置1の概要を示す。検査装置1は、半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物(たとえばプリント基板など)を検査する。検査装置1は、コンピュータ2、モニター3を備え、検査プログラム10を動作させることにより、コンピュータ2を検査装置として機能させる。コンピュータ2は、たとえば、汎用のコンピュータとして構成でき、CPU21、RAM22、グラフィックボード23、入力部24、および記憶装置25などを備えている。
【0034】
CPU21は、記憶装置25内の各種のプログラムをRAM22にロードして実行する。RAM22は、CPU21の作業領域として機能する一時的記憶装置である。
【0035】
グラフィックボード23は、画像をモニター3へ出力するためのデータを作成する。入力部24は、キーボード、マウスなどであり、ユーザーから指示または操作を受け付ける。記憶装置25は、たとえば、ハードディスクなどの不揮発性の記憶媒体または記録媒体であり、プログラム、データを記憶する。
【0036】
記憶装置25は、プログラムとして、検査プログラム10、検査条件設定プログラム11を記憶する。記憶装置25は、データとして、CADデータ41、模範画像42、被検査物画像43、粗画像45、およびグループデータ5を記憶する。
【0037】
検査プログラム10は、上記被検査物が、CADデータ41どおり生成されたかを検査するためのプログラムである。CADデータ41は、被検査物の設計図のデータであり、この設計図には、ひとまとまりの電子回路が互いに分離して多数描かれている。この検査では、CPU21は、CADデータ41を画像化した模範画像42と、被検査物を撮像した画像である被検査物画像43とを入力し、これらの画像(42、43)の間で比較を行う。模範画像42と被検査物画像43との誤差が所定の閾値未満であれば、検査装置1は、異常がないと判定する。なお、上記の比較を行う場合、閾値は小さい方が望ましいが、許容される場合でも異常であると判定されないように、閾値は、0より大きい値に設定されている。
【0038】
検査条件設定プログラム11は、検査装置1が検査条件設定プログラム11を実行する前の処理として、検査条件を設定するためのプログラムである。粗画像45は、検査条件設定プログラム11の実行に伴って生成される(詳細は後述する)。グループデータ5は、検査条件設定プログラム11の実行の結果として生成される。
【0039】
モニター3は、記憶装置25内のプログラムの実行に伴って、被検査物画像43などの種々の画像を表示する。
【0040】
(模範画像の例)
次に、図2を参照しながら、検査条件設定プログラム11、グループデータ5についてさらに詳しく説明する。図2は、模範画像42の例を示す。
【0041】
模範画像42は、CPU21により、CADデータ41から生成される。模範画像42には、上述したひとまとまりの電子回路(以下、「個片」と称する)が複数形成されている(被検査物画像43も同様である)。それぞれの個片には、詳細図Sに示すように、配線パターン90が形成されている。図2の61〜66、71〜76、81〜86は、それぞれ個片である(以下では、適宜、これらを単に「個片」と総称する)。被検査物において、個片は、物理的に互いに分離して基板上に形成されており、それぞれが電子回路である。ここで、このように被検査物上に、複数の個片が形成されるのは、1枚のプリント基板から多くの回路を生成するためであり、生産性向上のためである。
【0042】
(検査条件設定処理の必要性)
模範画像42には、パートナンバー420(図2参照)などが付されている。他方、被検査物画像43には、製造工程で、実際の番号が付されるので、模範画像42の内容と異なる。そこで、その異なる部分を検査の比較の対象から、除外したりマスクしたりする方が、検査時の判定基準を厳しくする(具体的には閾値を小さくする)ことができるので好ましい。そこで、このようなマスク処理をするために、検査装置1のユーザーは、この検査条件を設定する作業をする必要がある。
【0043】
(グループデータ5の意義)
個片61〜66、個片71〜76、個片81〜86は、同一の形状ごとに分類すると、6つのグループ(それぞれグループA1、グループA2、グループB1、グループB2、グループC1、グループC2)に分けられる。なお、以下では、各グループ内の個片の形状を「パターン」と称する(これは、上記「配線パターン90」とは異なる)。同じグループ内の個片は、すべて同じ形状で、同じ機能を発揮し、個片内の設定(たとえば上記マスクをすべき位置など)は同じである。そのため、これらをグループ化して検査条件を同じ設定にするよう検査装置1が支援すれば、ユーザーは、各個片について、いちいちマスクする位置を設定する必要がないので、大幅な効率の向上を図ることができる。グループデータ5は、このような効率の向上を図るため、個片を1または複数のグループにグループ化して関連付けたデータである。
【0044】
また、グループA1の個片61〜63と、グループA2の個片64〜66は、同じ個片を互いに180度回転した関係になっている。これは、個片のL字が互いに向き合うよう配置することにより、1つの基板上に多数の回路を生成するためである(個片71〜76、個片81〜86も同様である)。
【0045】
CPU21は、検査条件設定プログラム11を実行して個片の外形を対比することにより、少なくとも、グループA1の個片61〜63を同じグループの個片として把握する。さらに進んで、CPU21は、グループA2の個片64〜66を、グループA1の個片61〜63を180度回転したものとして、同一のグループAとして把握するのが望ましい。この場合、検査装置1は、グループデータ5内に、個片の座標と併せて角度を記憶させる。このようにすれば、CPU21は、1つの設定作業で設定できる個片の数を増やすことができ、ユーザーによる手間を軽減できる。同様に、グループB1とグループB2についても同一のグループBとして把握するのが望ましい。グループC1とグループC2についても同一のグループCとして把握するのが望ましい。その処理フローについては、後に図9において詳述する。
【0046】
(検査処理の概要)
次に、図3を用いて、検査処理の概要について説明する。検査処理は、検査プログラム10をコンピュータ2のCPU21により実行することにより行われる。
【0047】
ST1において、検査装置1は、ユーザーが操作する入力部24から、CADデータ41(模範画像42でもよい)、および被検査物画像43の選択を受け付ける。換言すれば、検査プログラム10に入力されるデータは、CADデータ41(模範画像42でもよい)および被検査物画像43である。この選択を受け付けると、CPU21は、CADデータ41および模範画像42をRAM22にロードする。なお、CPU21が被検査物画像43をRAM22にロードするのは、ST5の直前でもよい。
【0048】
ST2において、CPU21は、検査条件設定プログラム11を検査前に予め実行する。ここでは、CPU21は、上述したように、マスク処理等の検査条件を設定する。
【0049】
ST3において、被検査物画像43と対比する模範画像42を生成する。模範画像42は、CADデータ41をビットマップ形式などの2次元画像へ変換したものである。さらに、CPU21は、模範画像42の所定の部分について、被検査物画像43と対比がなされないよう、模範画像42には、マスク処理を行う。なお、図示は省略するが、CPU21は、被検査物画像43についても個片内の同じ部分にマスク処理を行う。
【0050】
ST4において、CPU21は、模範画像42の輝度と被検査物画像43の輝度との差を画素ごとに算出して、第1の差分画像を生成する。第1の差分画像の生成は、RAM22上で行う。なお、CPU21は、生成された第1の差分画像を記憶装置25に記憶してもよい。
【0051】
ST5で、CPU21は、検査体が合格品であるかを判定する、検査体合格判定処理を行う。この判定は、たとえば、第1の差分画像のビットの合計が第1の閾値未満であるか否かを判定することにより行う。これにより、CPU21は、模範画像42、被検査物画像43との差が所定範囲であることを判定できる。
【0052】
(検査条件設定処理の概要)
次に図4のフロー図を用いて、検査条件設定処理(図3のST2)の概要について説明する。この設定処理では、CPU21は、粗画像生成処理(ST21)、輪郭抽出処理(ST22)、グループ化処理(ST23)、グループごとに条件を設定する条件設定処理(ST24)を実行する。
【0053】
ST21の粗画像生成処理では、図3のST3で生成する模範画像42よりも粗い画像(以下、本明細書では、「粗画像45」と称する)をCADデータ41から生成する。ここで粗画像45は、いわば、CADデータ41を2次元上に展開した図を、遠くから見た図である。粗画像45は、細かい配線パターン90の集合である個片61等をひとまとまりとみなして、個片の連続した輪郭を抽出するために生成される。ST22において、CPU21は、個片の周囲を探索することにより、個片61等の輪郭を抽出する。
【0054】
ST23において、CPU21は、個片61等を分類して、グループ化する処理を行う。この処理では、CPU21は、個片61等の外周形状の一致を、第2の閾値を用いて判定する。すなわち、一定の第2の閾値未満であれば、同じグループと判定する。ST23については、後に詳述する。
【0055】
ST24では、CPU21は、あるグループ内の1つの個片を拡大して表示し、ユーザーからマスク処理のための設定を受け付ける。この設定は、各グループについてそれぞれ受け付ける。
【0056】
(粗画像生成処理)
図5A、図5B、図6を用いて、粗画像生成処理(ST21)について説明する。図5A、図5Bは、粗画像生成処理を示す説明図である。図6は、この処理のフローの例である。
【0057】
図5Aは、より詳細には、CADデータ41から2次元に展開した個片の一部を、粗画像45の画素と共に示している。ここで、個片61、62は図2のそれに対応している。図5Aの詳細図S2は、個片62を拡大したものである。図5Bは、粗画像45を生成した結果を表している。
【0058】
粗画像生成処理(ST21)では、CPU21は、CADデータ41から2次元に展開した図を格子状の領域91(=1画素の範囲)に区切る。そして、CPU21は、CADデータ41の配線パターン90が領域91を1点でも通過するか否かを判定する。
【0059】
ここで、模範画像42において、各個片は、物理的に分離してまとまって配置されている。しかし、図2の詳細図Sに示すように、CPU21が模範画像42を用いて個片61等の周囲を追跡しても、配線パターン90に示すように外形が連続していないから、個片の外形を抽出するのは容易でない。そこで、CPU21は、CADデータ41に基づいて粗画像45を生成する。CPU21は、配線パターン90の間の隙間が埋まる程度の粗さで粗画像45を生成する。すなわち、格子の領域91は、配線パターン90の間隔(ピッチ)より大きく設定されている(CPU21は、格子の領域91の大きさを予め入力部24から入力してもよいし、配線パターン90を認識して自動的に設定してもよい)。このように格子の領域91の大きさを設定すれば、粗画像45上で、配線パターン90の間隔は塗りつぶされる。したがって、個片61は、ひとまとまりとなり、CPU21は、配線パターン90間の隙間にかかわらず、外周を抽出できる。
【0060】
粗画像生成処理(ST21)では、領域91の1つである領域93Aのように、1点でも、領域91の内部を通過する配線パターン90があれば、CPU21は、領域93A全体を通過するものとして、画素93Bに示すように、領域93A全体の輝度を0にして、黒く塗りつぶす(具体的には配線パターンが存在する領域として記憶する)。領域91の1つである領域95Aのように、領域91の内部を、配線パターン90が1点も通過しない場合には、CPU21は、領域93A全体を通過するものとして、画素95Bに示すように、領域95Aの輝度を1にする(具体的には配線パターンが存在しない領域として記憶する)。
【0061】
なお、粗画像生成処理(ST21)では、CPU21は、必ずしも、グラフィックボード23を介して粗画像45をモニター3に出力することを要しない。計算により画像データを生成すれば十分である。
【0062】
図6は、粗画像生成処理(ST21)のフロー図である。
【0063】
ST211において、CPU21は、CADデータに含まれる配線パターン90の線分等を2次元領域に展開する。
【0064】
ST212において、CPU21は、CADデータに含まれる線分等を格子の領域91(図5A参照)に分割する。
【0065】
ST213において、CPU21は、格子の領域91内に1点でも配線パターン90の線分等が通過するか判定する。格子の領域91内に1点でも配線パターン90の線分等が通過する場合には(ST213のYES)、ST214において、CPU21は、その領域91の輝度を0にする(図5Aの領域93A、図5(B)の領域93A参照)。格子の領域91内に1点も配線パターン90の線分等が通過しない場合には(ST213のYES)、ST215において、CPU21は、その領域91の輝度を1にする(図5Aの領域95A、図5(B)の領域95B参照)。
【0066】
さらに、以上のST213〜ST215の処理を各格子の領域91について繰り返す。これにより、CPU21は、粗画像45を生成できる。
【0067】
(グループ化処理)
次に図7〜図9を用いて、グループ化処理ST23についてより詳細に説明する。図7は、グループ化処理の結果として記憶装置25に記憶するグループデータ5の構成を示している。図8は、グループ化処理のフローを示している。図9は、グループ化処理(付加的処理)のフローを表している。
【0068】
(グループデータ5の構成)
図7に示すように、CPU21は、個片をグループA、グループB、グループC・・・に分類して、グループデータ5として管理する。ここでの個片の分類は、被検査物画像43ではなく、ST21で生成した粗画像45に基づいて行う。CPU21は、各グループに、少なくとも各個片の座標を記憶する。また、個片を回転すれば個片が別のグループの個片と同じ形状になる(すなわち同じパターンになる)場合には、CPU21は、それらの個片を同一グループとして分類すると共に、その角度を個片の座標と併せて記憶する実施形態が好ましい(後述の図9の付加処理参照)。この実施形態の場合、たとえば、図2の例では、CPU21は、A1、A2を同一のグループAとして、A2のグループの各個片については、各個片の座標と併せて角度(180度)を記憶するようにする。
【0069】
このようなグループデータ5を記憶することにより、CPU21は、グループ内の1つの個片の設定を受け付けるだけで、グループ内のすべての個片について検査条件を設定することができる。したがって、検査装置1を用いた場合、ユーザーは、各個片について、それぞれ検査条件を設定する必要がなくなり、その設定作業の労力を大幅に軽減できる。
【0070】
図8は、グループ化処理(ST23)のフローである。
【0071】
ST231において、CPU21は、輪郭抽出処理(ST22)で抽出した個片のうち、2つを選択する。この個片を、個片k、および個片jとする。
【0072】
ST232において、CPU21は、個片k、および個片jとの間の差分画像を生成する。これを以下では、「第2の差分画像」と称する。
【0073】
ST233において、CPU21は、第2の差分画像の輝度の合計が閾値未満であるか否か判定する。第2の差分画像の輝度の合計が閾値未満であれば(ST233のYES)、CPU21は、個片kを個片jのグループと同一のグループに入れる(ST234)。ST234の後、ST235に進む。なお、CPU21は、模範画像42を2値化した画像として管理し、処理してもよいが、この場合、ここでの輝度の合計は、ビットの合計になる。
【0074】
ST235において、図7に示すように、個片kの座標をそのグループと関連付けて記憶する。
【0075】
第2の差分画像の輝度の合計が閾値以上であれば(ST233のNO)、CPU21は、新たなグループを作成し(ST236)、個片kの番号k、個片kの位置を新たなグループに記憶する(ST237)。
【0076】
さらに、CPU21は、以上のST231〜ST237を、各個片k、jについて繰り返す。
【0077】
図9の付加処理は、ST23の処理の一部として実行するのが好ましい。この付加処理は、図8の処理の後であって、かつST24の前に行う。前述の図8の処理では、個片の向き(または角度)が異なる場合には別グループとして認識したが、この付加処理では、さらに進んで、CPU21は、個片を所定角度刻みで回転しながら、同一形状の個片であるか否かを判定する。
【0078】
ST51において、CPU21は、グループX(X=1〜グループ数)、グループY(Y=1〜グループ数)を選択する。グループX、グループYのうち、一方のグループYの1つの個片を90度回転する。ここで、グループX、Yは、上記グループA1,A2,B1,B2,C1,C2・・・のいずれかとすることができる。
【0079】
ST52において、CPU21は、グループY内の1つの個片を90度回転させた画像を生成する。
【0080】
ST53において、CPU21は、グループX内の1個片と、グループY内の回転した個片との間の差分画像を生成する。なお、この差分画像を「第3の差分画像」と称する。
【0081】
ST54において、CPU21は、第3の差分画像の輝度の合計が第3の閾値未満であるか判定する。第3の差分画像の輝度の合計が第3の閾値未満であれば(ST54のYES)、CPU21は、グループYをグループXと同一グループに設定し(ST55)、グループYの各個片について角度を併せて記憶する(ST56)。第3の差分画像の輝度の合計が第3の閾値以上であれば(ST54のNO)、ST55、ST56をスキップする。
【0082】
さらに、CPU21は、以上のST52、ST53、ST54、ST55、ST56のフローを繰り返す。これにより、ST53において、グループX内の1個片と、グループY内の90度、180度、270度回転した個片との間の一致を判定できる。
【0083】
さらに、CPU21は、以上のST51〜ST56のフローを各グループX,Yについて繰り返す。これにより、CPU21は、各グループ間の一致を判定できる。その後、フローは、ST24へ移動する。
【0084】
以上の実施形態について、以下に補足説明を行う。
【0085】
以上の図1の説明では、機能ごとに分離したブロックで説明したが、実装上は、これらの機能のうち、いずれかが複数の機能が一体として構成してもよいし、1つのブロックを複数に分離して構成してもよい。検査条件設定プログラム11は、製品の検査を行う検査装置1と別に構成してもよい。
【0086】
以上で、第1の差分画像、第2の差分画像、第3の差分画像を閾値と比較することにより画像の一致を判定したが、その判定方法の別の方法としては、差分画像の輝度の二乗を合計してもよいし、その他所定の重みをつけて閾値と比較してもよい。この場合において、模範画像42、被検査物画像43を入力、記憶、または処理する場合には、データ容量削減のため、模範画像42、被検査物画像43を2値化したデータとするのが好ましい。この場合には、上記第1の差分画像、第2の差分画像、第3の差分画像を閾値と比較する場合においてCPU21が算出する上記の輝度の合計は、(輝度の高い)ビット(=1)の合計になる。画像を2値化する場合には、0および1で2値化してもよいし、−1および1で2値化してもよい。また、模範画像42、被検査物画像43を多ビットの画像として管理してもよい。さらに、図3のST5、図8のST233、図9のST54において、CPU21は、対比する画像の差が所定範囲内であると分析する方法であれば、どのような判定方法を用いてもよい。また、ST232、ST233において、差分画像ではなく、個片の外周長、面積、重心の位置などの特徴量を比較することにより、同一パターンの個片であるかを判定してもよい。
【0087】
以上の説明で、処理のフローで大小比較をしている説明の中に、「≦」、「<」(以上、以下、未満、越えている)という意味の説明があるとすれば、相互に読み替えて適用してもよい。すなわち、閾値により判断していればよく、「≦(超えているまたは同じ場合)」か「<(超えている場合であり、同じ場合は含まない)」かいずれを適用すべきかについて技術的な意味はない。
【0088】
また、粗画像45は、メモリー上で生成していれば足り、必ずしも、記憶装置25に記憶することを要しない。
【0089】
粗画像45の生成方法としては、CPU21は、図5A、図5B、図6に示した方法のみならず、模範画像42の画素を、その画素よりも大きい格子の領域に区分けして、その領域内の複数の画素の輝度を平均化して、その平均化した輝度を閾値で判断して、2値化する方法でもよい。
【0090】
図9のST52における回転角度の刻み幅は90度に限られず、その他の角度でもよい。また、以上の図9の説明では、CPU21が、個片をグループ化してから、個片を回転して同一パターンの個片をさらに同一グループとするものとしたが、CPU21は、ST233の前に予め複数の角度で回転してST233でパターンの合致を判断してもよい。
【0091】
上記実施形態では、粗画像生成処理(ST21)において、領域91Aの内部を通過する配線パターン90が1点でもあれば、領域91A全体の輝度を0にし、領域91Aの内部を通過する配線パターン90が1点もなければ、領域91A全体の輝度を1にしたが、前者の輝度を1にして、後者の輝度を0にしてもよい。配線パターンが存在する領域を区別して記憶することができればよい。また、粗画像生成処理(ST21)では、一点でも配線パターン90が通過するかを判定することにより、パターンが存在する画素であるか否かを判定したが、CPU21は、領域91内に通過する配線パターン90の量、長さ、面積のいずれかの値を所定の閾値と比較して、この値が閾値以上であれば、パターンが存在する画素として記憶してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、たとえば、半導体、半導体基板、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路の外観検査の際の検査条件を設定する装置、プログラム、方法に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1実施形態に係る検査装置の構成図
【図2】本発明の第1実施形態に係る被検査物画像の例
【図3】本発明の第1実施形態に係る検査処理のフローの概要
【図4】本発明の第1実施形態に係る検査条件設定処理のフローの概要
【図5A】本発明の第1実施形態に係る粗画像生成処理の説明図
【図5B】本発明の第1実施形態に係る粗画像生成処理の説明図
【図6】本発明の第1実施形態に係る粗画像生成処理のフロー
【図7】本発明の第1実施形態に係るグループデータの例
【図8】本発明の第1実施形態に係るグループ化処理のフロー
【図9】本発明の第1実施形態に係るグループ化処理(付加処理)のフロー
【符号の説明】
【0094】
1…検査装置
2…コンピュータ
21…CPU
22…RAM
23…グラフィックボード
24…入力部
25…記憶装置
10…検査プログラム
11…検査条件設定プログラム
3…モニター
41…CADデータ
42…模範画像
43…被検査物画像
420…パートナンバー
45…粗画像
5…グループデータ
61〜66…個片
71〜76…個片
81〜86…個片
90…配線パターン
91…領域
A…グループ
B…グループ
C…グループ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータと被検査物画像との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定方法において、
前記対比を行うために前記CADデータから生成する模範画像よりも、粗い画素密度の粗画像を、前記CADデータから生成する粗画像生成ステップと、
前記粗画像から、ひとまとまりの個片の輪郭を各々抽出する輪郭抽出ステップと、
前記輪郭から前記個片のパターンの一致を判定することにより、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成される、グループごとに前記個片を分類する認識ステップと、
を実行することを特徴とする検査条件設定方法。
【請求項2】
前記認識ステップでは、前記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、前記個片同士のパターンの一致を判定することを特徴とする請求項1に記載の検査条件設定方法。
【請求項3】
前記粗画像生成ステップでは、前記粗画像として、各個片内の配線パターンのピッチよりも粗い画素密度の画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の検査条件設定方法。
【請求項4】
前記粗画像生成ステップでは、
CADデータに記述された配線パターンの配置を格子状に区切った領域に分類し、
ある領域に1点でも配線パターンが通過する部分があれば、パターンが存在する画素として記憶し、ある領域に配線パターンが通過する部分がまったくなければ、パターンが存在しない画素として記憶することにより、前記粗画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の検査条件設定方法。
【請求項5】
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータと被検査物画像との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定装置であって、
前記対比を行うために前記CADデータから生成する模範画像よりも、粗い画素密度の粗画像を、前記CADデータから生成する粗画像生成手段と、
前記粗画像から、ひとまとまりの個片の輪郭を各々抽出する輪郭抽出手段と、
前記輪郭から前記個片のパターンの一致を判定し、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成されるグループごとに、前記個片を分類する認識手段と、
前記グループごとに前記外観検査の条件を設定する設定手段と、を備えることを特徴とする検査条件設定装置。
【請求項6】
前記認識手段は、前記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、前記個片同士のパターンの一致を判定することを特徴とする請求項5に記載の検査条件設定装置。
【請求項7】
前記粗画像生成手段は、前記粗画像として、各個片内の配線パターンのピッチよりも粗い画素密度の画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の検査条件設定装置。
【請求項8】
前記粗画像生成手段は、
CADデータに記述された配線パターンの配置を格子状に区切った領域に分類し、
それぞれの前記領域について、当該領域に1点でも配線パターンが通過する部分があれば、パターンが存在する画素として記憶し、当該領域に配線パターンが通過する部分がまったくなければ、パターンが存在しない画素として記憶することにより、前記粗画像を生成することを特徴とする請求項5に記載の検査条件設定装置。
【請求項9】
半導体、液晶回路、またはプリント基板などの電子回路を複数搭載する被検査物の外観検査をCADデータと被検査物画像との対比によって行う前に、当該外観検査の条件を予め設定する検査条件設定装置を動作させるプログラムにおいて、
前記対比を行うために前記CADデータから生成する模範画像よりも、粗い画素密度の粗画像を、前記CADデータから生成する粗画像生成ステップと、
前記粗画像から、ひとまとまりの個片の輪郭を各々抽出する輪郭抽出ステップと、
前記輪郭から、前記個片のパターンの一致を判定することにより、1または複数のパターンの個片を認識し、同一のパターンで構成される、グループごとに前記個片を分類する認識ステップと、
前記グループごとに前記外観検査の条件を設定する設定ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする検査条件設定プログラム。
【請求項10】
前記認識ステップでは、前記輪郭抽出ステップで抽出した個片を所定の角度で回転して、前記個片同士のパターンの一致を判定することを特徴とする請求項9に記載の検査条件設定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−151660(P2010−151660A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330963(P2008−330963)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】