説明

樹脂で被覆した高耐電圧半導体装置及びその製造方法

【課題】高耐電圧の半導体チップを基板やパッケージに搭載し樹脂で封止すると、高い逆電圧を印加した時におけるリーク電流が大きくかつ不安定であり設計値どおりの絶縁耐電力が得られない場合がある。
【解決手段】パッケージもしくは基板に搭載された高耐電圧半導体チップに封止用樹脂を塗布し、硬化させる際に、チップの電極もしくはチップからワイヤ等の配線によって接続された電極端子の少なくとも1つと、この電極端子との間で絶縁耐電圧を必要とする他の電極との間に高電圧を印加しながら樹脂を硬化させる。封止用樹脂は、シロキサンによる橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAと、シロキサン(Si−O−Si結合体)による線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて有機珪素ポリマーCを構成し、共有結合で三次元的に連結させた合成高分子化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高耐電圧半導体素子を樹脂で覆って高耐電圧化をはかった半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(以下、SiCと記す)等のワイドギャップ半導体材料は、シリコン(以下、Siと記す)に比べて、エネルギーギャップが大きく絶縁破壊電界強度も約1桁大きい等の優れた物理特性を有しており、高耐熱かつ高耐電圧の半導体装置に用いるのに好適な半導体材料として注目されている。
SiCを用いた従来の高耐電圧半導体装置では、高逆耐電圧を有するSiC半導体素子を金属製のパッケージ内に収納している。SiC半導体素子の高電圧が印加される電極間の、周囲の空間における耐絶縁性を高めるために、パッケージ内には六弗化硫黄ガス等の絶縁用ガスを充填している。
六弗化硫黄ガスは絶縁用ガスとしては現在のところ最も優れた絶縁性を持つが、オゾン層破壊の原因物質である弗素を含んでいるため、地球温暖化防止の観点から使用を避ける必要がある。
【0003】
六弗化硫黄ガスの充填以外で優れた絶縁性を保つ方法としては、シロキサン(Si−O−Si結合体)の線状構造をもつポリメチルフェニルシロキサンを含む合成高分子化合物(一般にシリコンゴムと呼ばれている)や、シロキサンの橋かけ構造をもつポリフェニルシルセスキオキサンを含む合成高分子化合物で半導体素子を覆う方法がある。これらの合成高分子化合物を高粘度の液体の状態で半導体素子(半導体チップ)全体を覆うように塗布し、常温又は100℃から200℃程度の温度に加熱して硬化させる。これにより比較的高い絶縁性を保つことができる。
【特許文献1】特開2002−356617号公報
【特許文献2】特開2000−198930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のシリコンゴム等の液状の高分子化合物を塗布して硬化させた被覆を有する定格5kVの半導体装置の、例えばダイオードでは、アノード電極とカソード電極間に3kVから5kVの逆電圧を印加すると、図10に示すように両電極間に2μAから8μAの大きなリーク電流が流れる。印加逆電圧が3kVのとき、室温では曲線aで示すように1μAであったリーク電流は、半導体装置の温度が200℃では曲線bで示すように2μAに増加する。また室温では3.5kV以上、200℃では2.5kV以上の逆電圧を印加すると、曲線a及びbの凹凸で示すように印加逆電圧によってリーク電流が変動し、絶縁性が不安定になる。このため設計時に想定した所定の逆耐電圧特性が得られないことがある。この原因について発明者等は種々の実験、分析、調査を行った。その結果液状の高分子化合物が硬化するとき、分子の配向方向が不規則になり、そのために硬化後の高分子化合物の組織に局部的な不均一が生じている可能性があることが判った。このような組織の不均一が存在すると、逆電圧の印加時に生じる電界によって電気抵抗が低下してリーク電流が流れるものと思われる。
【0005】
本発明は、半導体装置を構成する半導体素子を高耐電圧を有する物質で覆った高耐電圧の半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高耐電圧半導体装置は、少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線、及び前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記電極との接続部近傍を覆うように塗布され、前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ硬化させた樹脂の被膜材を有する。
本発明によれば、未硬化の樹脂で覆われた少なくとも2つの電極間に直流電圧を印加することにより、未硬化の樹脂に電界が加えられる。この電界によって、未硬化の樹脂の分子の配向が電界の方向に向いて配向方向が揃い、配向方向が揃った状態で硬化させることにより、樹脂の誘電率が高くなるとともに直流抵抗が大きくなると発明者は推測しているが、現時点では理論的な解析はなされていない。いずれにしても実測した結果ではリーク電流が減少する。
【0007】
本発明の高耐電圧半導体装置の製造方法は、少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、及び前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線を有し、前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記電極との接続部近傍を覆うように樹脂を塗布する工程、前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ前記樹脂を硬化させる工程を有する。
本発明によれば、硬化後の高分子化合物は加熱すると軟化する。軟化した高分子化合物に電界を加えることにより、高分子化合物の分子の配向が一定の方向に向いて揃う。この状態で常温に戻すと、分子の配向方向は一定の方向に固定される。その結果高分子化合物の抵抗は極大値に保たれる。
【0008】
本発明の他の観点の高耐電圧半導体装置の製造方法は、少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、及び前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線を有する半導体装置の、前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記電極との接続部近傍を覆うように樹脂を塗布し硬化させる工程、前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ前記樹脂を所定の温度に加熱する工程を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体素子を覆うように樹脂を塗布し、半導体素子の高耐電圧を必要とする少なくとも2つの電極間に所定の逆電圧を印加しつつ前記樹脂を硬化させることにより、前記少なくとも2つの電極間の耐逆電圧を高くすることができる。また、前記樹脂の硬化後に、前記2つの電極間に所定の逆電圧を印加しつつ加熱することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明の好適な実施例の高耐電圧半導体装置及びその製造方法について図1から図9を参照して説明する。
【0011】
《第1実施例》
本発明の第1実施例の高耐電圧半導体装置及びその製造方法について図1から図7を参照して説明する。
図1は本発明の第1実施例の高耐電圧半導体装置である、耐電圧5kVの高耐電圧SiCダイオード装置の断面図である。図1において、パッケージを構成する金属基板1の中央部にSiCダイオード素子(チップ)2が高温半田等で接着されている。SiCダイオード素子2のアノード電極4はリード線4aでアノード端子5に接続されている。SiCダイオード素子2のカソード電極6はリード線6aでカソード端子7に接続されている。アノード端子5及びカソード端子7は金属基板1からガラス等の絶縁材8により絶縁されている。
上記のように金属基板1上に構成されたSiC半導体素子2、リード線4a、6a及びアノード端子5及びカソード端子7の金属基板1の上面からの突出部分を覆うように、熱硬化性の封止用の樹脂9を塗布する。樹脂9の粘度は、図1に示すように塗布層が山状に盛り上がり、かつ内部に気泡が生じないように適切な値に選定する。粘度が低すぎると、塗布層が山状に盛り上がらず、リード線4a、6aが塗布層の外へはみ出したり、SiCダイオード素子2の表面を覆う樹脂9の厚みが薄くなる。また粘度が高すぎると内部に気泡ができることがある。
【0012】
樹脂9としては一般的な熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂がある。より好適な樹脂としては、以下の3つの樹脂がある。
1.Siゴムと呼ばれるシロキサン(Si−O−Si結合体)の線状構造を持つポリジメチルシロキサンからなる合成高分子化合物
2.シロキサンの橋かけ構造を持つポリフェニルシルセスキオキサンからなる合成高分子化合物
3.シロキサンによる橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAとシロキサン(Si−O−Si結合体)による線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて有機珪素ポリマーCを構成し、この上記有機珪素ポリマーC同士を付加反応により生成される共有結合で三次元的に連結させた合成高分子化合物。
これらの合成高分子化合物はいずれも耐熱性が良く、これらのいずれか1つ又は複数のものを組み合わせて用いることができる。
【0013】
樹脂9を塗布した基板1を、図2に略図で示すように電気炉などの加熱炉10の中に入れる。アノード端子5及びカソード端子7を直流電源11(電圧1kV)の負端子及び正端子にそれぞれ接続し、SiCダイオード2に1kVの逆電圧を印加する。この逆電圧は100Vから5kVの範囲で、樹脂の種類や、アノード端子5とカソード端子7との間の距離などに応じて適切な値を実験によって定めればよい。この状態で加熱炉10の温度を200℃に上昇させて約5時間(硬化時間)加熱する。硬化時間経過後室温まで徐冷する。徐冷時間は約3時間とした。加熱炉10の温度は30℃から300℃程度の間で樹脂の種類に応じて選定する。
このようにして得られたSiCダイオード装置12のアノード端子5とカソード端子7に室温で0Vから5kVまでの逆電圧を印加してアノード端子5とカソード端子7間のリーク電流を測定した。その結果を図3に示す。図3において、横軸は印加逆電圧(kV)を示し、縦軸はリーク電流(μA)を示す。図3の曲線cは、前記背景技術の項で説明した図10の曲線aとほぼ同じものである。これは本実施例のSiC半導体装置12と比較するために、SiC半導体装置12のアノード端子5とカソード端子7間に逆電圧を印加せずに硬化させたサンプルの測定データである。
【0014】
図3の曲線dは、本実施例のSiC半導体装置12の室温での測定結果である。曲線cと曲線dとを比較すると、印加逆電圧が3kVのとき、曲線cではリーク電流が1μAであるのに対し、曲線dでは0.3μAであり約3分の1に低下している。また印加逆電圧が5kVのとき、曲線cではリーク電流が約6μAと大幅に増加するのに対して、曲線dでは約1μAと低い値であった。また曲線dは曲線cのような凹凸を有しておらず極めて滑らかである。この点から本実施例のSiCダイオード装置12ではリーク電流の値が印加逆電圧値に対して安定して変化することが判る。
本実施例のSiCダイオード装置12では、高い逆電圧を印加したときでもリーク電流がそれほど増加しない。そのため高い耐電圧性を維持することができる。
【0015】
本実施例のSiCダイオード装置12の温度を上げてリーク電流を測定した結果を図4に示す。図4において、曲線dは室温における測定結果であり、図3の曲線dと同じである。図4の曲線eは温度200℃における測定結果であり、曲線fは温度300℃における測定結果である。各測定においては、本実施例のSiCダイオード装置12を加熱炉に入れて所定の温度に保った。
【0016】
図4から判るように、印加逆電圧が3kVのとき、室温でのリーク電流は約0.3μA、200℃でのリーク電流は約0.6μA、300℃でのリーク電流は約1.0μAであった。図4の曲線eを、同じ温度200℃における従来のものの図10の曲線bと比較すると、従来例のSiCダイオード装置の逆電圧5kVでのリーク電流は8μAであるのに対し、本実施例のSiCダイオード装置12の逆電圧5kVでのリーク電流は2μAであり大幅に低いことが判る。
【0017】
本実施例のSiCダイオード装置では図1に示すように、SiCダイオード素子2、リード線4a、6a及びアノード端子5及びカソード端子7の基板1から上方への突出部分、のすべてを樹脂9で覆うのが最も好ましい。しかし構成を簡単にするために、図5に示すようにSiCダイオード素子2とリード線4a、6aの一部を樹脂15で覆う構成でもある程度本発明の効果を得ることができる。
【0018】
図6は本実施例の他の例のSiCダイオード装置の断面図である。図6に示すSiCダイオード装置13では、基板1の上にSiCダイオード素子2の周囲を囲むに十分な大きさの金属製又は耐熱樹脂製の枠17を設ける。枠17の中央部にSiCダイオード素子2を位置決めして、基板1に高温半田等で接着する。SiCダイオード素子2のアノード電極4をリード線4aでアノード端子5に接続し、カソード電極6をリード線6aでカソード端子7に接続する。枠17内に樹脂16を流し込み、図2に示すようにアノード端子5とアノード端子7間に逆電圧を印加しつつ加熱して硬化させる。
図6に示す例では、枠17があるため、樹脂16に粘度の低い樹脂を用いることが出来る。粘度の低い樹脂を用いると、樹脂16の内部に気泡などが入り難い。気泡が入ると絶縁性が低下するおそれがあるので気泡は極力入らないようにするのが好ましい。
【0019】
図7は本実施例の他の例のSiCダイオード装置14の断面図である。図7に示す例は、SiCダイオード素子2をプリント配線基板20に実装する場合を示している。図において、絶縁物の配線基板20にSiCダイオード素子2を耐熱接着剤により接着する。SiCダイオード2のアノード電極4はリード線4aによって所定の配線パターンの回路導体21に接続され、カソード電極6はリード線6aによって回路導体22に接続される。SiCダイオード素子2、リード線4a及び6a、及びリード線4a、6aとそれぞれの回路導体21、22との接続部を含む領域を覆うように、樹脂18を塗布する。次に図2に示すものと同様に回路導体21と22を直流電源11に接続してSiCダイオード素子2に逆電圧を印加しつつ常温又は所定の高温に加熱して樹脂18を硬化させる。その他の構成及び作用効果は図1に示すものと同様である。
【0020】
本実施例の図1から図7の半導体装置では、半導体素子としてSiCダイオード素子2を用いた例について説明したが、本発明はSiCダイオード素子2に限定されるものではなく、IGBT、GTOなどのバイポーラ素子、バイポーラ素子以外のFETなどあらゆる半導体素子に適用可能である。バイポーラトランジスタやFETなど、3端子又はそれ以上の端子を有する半導体素子では、最も高い逆電圧が印加される可能性のある2つの端子を、図2に示すように直流電源11に接続して逆電圧を印加しつつ所定の高温に加熱して樹脂を硬化させる。
本実施例では樹脂9、15、16、18を硬化させるとき200℃程度に加熱する方法について説明したが、樹脂の種類によっては200℃以下の温度又は常温で硬化させてもよい。
【0021】
《第2実施例》
本発明の第2実施例の高耐電圧半導体装置及びその製造方法について図8及び図9を参照して説明する。第2実施例の製造方法では、前記第1実施例で説明した封止用の樹脂9の硬化過程において電極間に高電圧を印加しない。
本実施例では、例えば図1を参照して説明すると、金属基板1の上の半導体素子2、リード線4a、6a及びアノード端子5とカソード端子7の金属基板1の上面の突出部分を覆うように封止用の樹脂9を塗布してそのまま硬化させる。樹脂9としては、エポキシ系樹脂、又はシロキサンによる橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAと、シロキサン(Si−O−Si結合体)による線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて有機珪素ポリマーCを構成し、この有機珪素ポリマーC同士を付加反応により生成される共有結合で三次元的に連結させた合成高分子化合物を用いる。半導体素子2としては高耐電圧のSiCダイオード2を用いる。樹脂9の硬化後、図2に示す構成によって、アノード端子5とカソード端子7との間に、例えば1kVの逆電圧を印加しつつSiCダイオード装置12を例えば約200℃に加熱する。上記の処理を以下、「高温課電」という。高温課電の時間は10分から2時間程度の範囲で、半導体素子2や封止用の樹脂9の種類に応じて決めればよい。印加逆電圧も100Vから5kVの範囲で適宜選定すればよい。
【0022】
図8は本実施例のSiCダイオード装置12の製造方法における高温課電の処理時間と、処理を加えた後のリーク電流との関係を示すグラフである。リーク電流を測定するために、図2の直流電源11とアノード端子5との間に図示を省略した電流計を接続する。アノード端子5とカソード端子7との間に1kVの逆電圧を印加しつつSiCダイオード装置12を加熱炉に入れて200℃に加熱した。高温課電の開始時のリーク電流は約0.4μAであり、高温課電の時間が長くなると曲線gに示すようにリーク電流が漸減することが判った。30分を経過するとリーク電流は約0.15μAとなり、それ以後はほとんど減少しなかった。
【0023】
図9はSiCダイオード装置12に高温課電の処理を行う前と行った後での、アノード端子5とカソード端子7間への逆電圧印加時の特性を示すグラフである。高温課電の処理前では、曲線hに示すように、印加逆電圧が3kVのときのリーク電流は約1μAであり、印加逆電圧が3.5kV以上になると、リーク電流が印加逆電圧に応じて変動し不安定な状態となる。曲線jは、30分間の高温課電を行った後の逆電圧印加時の特性を示す。印加逆電圧が3kVでのリーク電流は0.3μA以下であり、十分小さな値となった。また印加逆電圧が変化したときのリーク電流の変動もほとんどなく、良好な逆電圧印加特性が得られた。発明者の実験によると、高温課電処理における印加逆電圧及び温度は高い方がリーク電流の低減効果が高いことが判った。高温課電によるリーク電流の減少は以下の作用によるものと思われる。高温課電の処理前の硬化した樹脂の中には微量のイオンが含まれており、そのためアノードとカソード間に電圧をかけるとリーク電流が流れる。硬化した樹脂を高温にすることにより樹脂の粘度が下がり、その状態で課電を行った場合、樹脂中のイオンはそれぞれ帯電している符号と逆の電極に集まり、樹脂を冷却するとそのまま固定される。その結果樹脂中に移動できるイオンはほとんどなくなり、リーク電流が減少する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、樹脂封止型の高耐電圧半導体装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施例の高耐電圧SiCダイオード装置の断面図
【図2】本発明の第1実施例の高耐電圧SiCダイオード装置の製造方法における回路図
【図3】本発明の第1実施例の高耐電圧SiCダイオード装置の測定結果を従来例と比較して示すグラフ
【図4】本発明の第1実施例のSiCダイオード装置の温度を変えて測定した、印加逆電圧とリーク電流との関係を示すグラフ
【図5】本発明の第1実施例の他の例の高耐電圧SiCダイオード装置の断面図
【図6】本発明の第1実施例の更に他の例の高耐電圧SiCダイオード装置の断面図
【図7】本発明の第1実施例の更に他の例の高耐電圧SiCダイオード装置の断面図
【図8】本発明の第2実施例の高耐電圧SiCダイオード装置の、高温課電の時間とリーク電流の関係を示すグラフ
【図9】本発明の第2実施例の、高温課電の前後のリーク電流の比較を示すグラフ
【図10】従来のSiCダイオード装置の印加逆電圧とリーク電流との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0026】
1 基板
2 SiCダイオード素子
4 アノード電極
5 アノード端子
6 カソード電極
7 カソード端子
8 絶縁材
9、16、18 樹脂
10 加熱炉
11 直流電源
12、13、14 SiCダイオード装置
20 プリント配線基板
21、22 回路導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、
前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、
前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線、及び
前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記各電極との接続部近傍を覆うように塗布され、前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ硬化させた樹脂の被膜材
を有する高耐電圧半導体装置。
【請求項2】
前記樹脂が、Siゴムと呼ばれるシロキサン(Si−O−Si結合体)の線状構造を持つポリジメチルシロキサンからなる合成高分子化合物、シロキサンの橋かけ構造を持つポリフェニルシルセスキオキサンからなる合成高分子化合物、及びシロキサンによる橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAとシロキサン(Si−O−Si結合体)による線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて有機珪素ポリマーCを構成し、この上記有機珪素ポリマーC同士を付加反応により生成される共有結合で三次元的に連結させた合成高分子化合物、から選択した少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の高耐電圧半導体装置。
【請求項3】
前記直流電圧が100Vから5kVの範囲である請求項1に記載の高耐電圧半導体装置。
【請求項4】
少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、
前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、及び
前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線を有する半導体装置の、
前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記各電極との接続部近傍を覆うように樹脂を塗布する工程、
前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ前記樹脂を硬化させる工程
を有する高耐電圧半導体装置の製造方法。
【請求項5】
少なくとも2つの、相互間に高い耐電圧を要する電極を備えた高耐電圧半導体素子、
前記少なくとも2つの電極の一方に接続された第1のリード線、及び
前記少なくとも2つの電極の他方に接続された第2のリード線を有する半導体装置の、
前記高耐電圧半導体素子、前記電極及び前記第1及び第2のリード線の前記各電極との接続部近傍を覆うように樹脂を塗布し硬化させる工程、
前記第1及び第2のリード線に所定の直流電圧を印加しつつ前記樹脂を所定の温度に加熱する工程
を有する高耐電圧半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が、Siゴムと呼ばれるシロキサン(Si−O−Si結合体)の線状構造を持つポリジメチルシロキサンからなる合成高分子化合物、シロキサンの橋かけ構造を持つポリフェニルシルセスキオキサンからなる合成高分子化合物及びシロキサンによる橋かけ構造を有する有機珪素ポリマーAとシロキサン(Si−O−Si結合体)による線状連結構造を有する有機珪素ポリマーBとを交互にシロキサン結合により線状に連結させて有機珪素ポリマーCを構成し、この上記有機珪素ポリマーC同士を付加反応により生成される共有結合で三次元的に連結させた合成高分子化合物、から選択した少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4又は5記載の高耐電圧半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記直流電圧が100Vから5kVである請求項4から6のいずれかに記載の高耐電圧半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記加熱する温度が30℃から300℃である請求項5に記載の高耐電圧半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−108437(P2006−108437A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293873(P2004−293873)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】