説明

欠陥検査方法及び欠陥検査装置

【課題】 製造ラインに新たな製品種別が追加された場合であっても、比較的容易にしきい値を決定することができる欠陥検査方法を提供する。
【解決手段】 ウエハの表面にレーザビームを入射させて、該表面からの散乱光の強度分布に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥に起因する散乱光の強度と判定しきい値とを比較して、比較結果に基づいて欠陥が計数される。まず、(a)第1の工程の処理が終了した第1の製品種別のウエハの欠陥検査要求があると、該第1の製品種別の該第1の工程に関連付けられた判定しきい値が既に登録されているか否かを判定する。(b)工程aで、判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、既に登録されている判定しきい値に基づいて欠陥を計数し、まだ登録されていないと判定された場合には、新に判定しきい値を決定して欠陥を計数するとともに、新に決定された判定しきい値を、第1の製品種別の第1の工程に関連付けて登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハの種々の工程後に行われる欠陥検査方法、及び欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に、最上層の配線パターンの表面をレーザ光で走査し、反射光または散乱光の強度をしきい値と比較して、異物付着等の欠陥を検出する外観検査方法が開示されている。
【0003】
下記の特許文献2に、半導体ウエハ上の異なる2つのチップの画像データを比較し、その差画像データから欠陥を抽出する欠陥検査方法が開示されている。この方法では、2つのチップの画像データの輝度の差がしきい値以上の部分を欠陥と認定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−303587号公報
【特許文献2】特開2002−267625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び2に開示された方法では、半導体ウエハの表面からの散乱光の強度や画像データの輝度を、しきい値と比較し、比較結果から欠陥を検出している。しきい値を大きくし過ぎると、本来検出すべき欠陥を見逃してしまうことになる。しきい値を小さくし過ぎると、実際には欠陥が無いにもかかわらず、欠陥であると誤検出してしまうことがある。従来、複数の標準的なサンプルを作製して、その検査結果から経験的にしきい値を決定していた。
【0006】
また、しきい値は、製品種別や、検査対象となる工程ごとに設定する必要がある。このため、製造ラインに新しい製品種別が追加されると、その都度、複数のサンプルを作製して、しきい値を決定する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、製造ラインに新たな製品種別が追加された場合であっても、比較的容易にしきい値を決定することができる欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一観点によると、
ウエハの表面にレーザビームを入射させて、該表面からの散乱光の強度分布に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥に起因する散乱光の強度と判定しきい値とを比較して、比較結果に基づいて欠陥を計数する欠陥検査方法であって、
(a)第1の工程の処理が終了した第1の製品種別のウエハの欠陥検査要求があると、該第1の製品種別の該第1の工程に関連付けられた判定しきい値が既に登録されているか否かを判定する工程と、
(b)前記工程aで、前記判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、既に登録されている判定しきい値に基づいて欠陥を計数し、まだ登録されていないと判定された場合には、新に判定しきい値を決定して欠陥を計数するとともに、新に決定された判定しきい値を、前記第1の製品種別の前記第1の工程に関連付けて登録する工程と
を有する欠陥検査方法が提供される。
【0009】
本発明の他の観点によると、
ウエハの表面にレーザビームを入射させて、該表面からの散乱光の強度の分布に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥に起因する散乱光の強度と判定しきい値とを比較して、比較結果に基づいて欠陥を計数する欠陥検査装置であって、
製品種別及び工程ごとに、判定しきい値が登録される判定しきい値登録部と、
制御装置と
を有し、前記制御装置は、
(a)第1の工程の処理が終了した第1の製品種別のウエハの欠陥検査要求があると、該第1の製品種別の該第1の工程に関連付けられた判定しきい値が、前記判定しきい値登録部に登録されているか否かを判定する工程と、
(b)前記工程aで、前記判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、既に登録されている判定しきい値に基づいて欠陥を計数し、まだ登録されていないと判定された場合には、判定しきい値が未登録であることを操作者に通知する工程と
を実行する欠陥検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
検査要求のあった製品種別の判定しきい値が登録されていない場合に、他の製品種別の同一工程の判定しきい値を用いて検査するため、製造ラインに新しい製品種別が追加される度に判定しきい値を算出する必要が無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(1A)は、実施例による欠陥検査装置のブロック図であり、(1B)は、チップ表面からの散乱光の強度分布、及び欠陥に起因する散乱光の強度分布(差画像)の一例を示すグラフである。
【図2】検査レシピの様式を示す図表である。
【図3】実施例による欠陥検査方法のフローチャートである。
【図4】実施例による欠陥検査方法の検査レシピを新たに作成する手順を示すフローチャートである。
【図5】欠陥と、その欠陥に起因する散乱光の強度とを示すグラフである。
【図6】(6A)及び(6D)は、それぞれ表層部及び内層に異物が存在する半導体ウエハの断面図であり、(6B)及び(6E)は、それぞれ及び(6A)及び(6D)の欠陥(異物)に起因する散乱光の強度分布を示すグラフであり、(6C)及び(6F)は、それぞれ(6A)及び(6D)のSEM写真をスケッチした線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1Aに、実施例による欠陥検査装置のブロック図を示す。測定部1が、ステージ2、レーザ光原3、及び光検出器4を含む。ステージ2の上に、検査対象物、例えばある工程の処理を終えた半導体ウエハ5が保持される。レーザ光源3から出射したレーザビームが半導体ウエハ5の表面に斜め方向から入射する。半導体ウエハ5の表面からの散乱光が、光検出器4で検出される。レーザ光源3から出射したレーザビームを、半導体ウエハ5の表面上で2次元的に走査することにより、半導体ウエハ5の表面上における散乱光の強度分布が得られる。
【0013】
光検出器4で検出された散乱光の強度が制御装置10に入力される。制御装置10は、レーザ光源3から出射するレーザビームの走査情報と、光検出器4からの散乱光の強度とから、散乱光の強度分布(2次元画像データ)を生成する。なお、光検出器4に代えて、2次元受像装置、例えばCCDカメラ等を配置し、半導体ウエハ5の表面の被検査領域を均一に照明することにより、2次元画像データを取得してもよい。
【0014】
半導体ウエハ5の表面には、複数のチップが規則的に、例えば行列状に配置されている。ある1つのチップ内に形成されたパターン、例えば素子分離領域のパターン、ゲート電極のパターン、配線のパターン等は、他のチップ内に形成されたパターンと合同である。
【0015】
入出力装置15から制御装置10に、検査情報が与えられ、検査結果が、入出力装置15に表示される。入出力装置15は、例えばキーボード、マウス、パターン認識装置、表示装置、プリンタ等で構成される。操作者がキーボードやマウスから、検査すべき半導体ウエハの製品種別や半導体ウエハに付された通し番号等を入力するようにしてもよいし、パターン認識装置で、半導体ウエハの表面に刻印された製品種別や通し番号等を自動検出するようにしてもよい。
【0016】
検査レシピ登録部11に、検査レシピが登録される。
【0017】
図2に、検査レシピの一例を示す。製品種別及び工程ごとに、チップレイアウト情報、レーザ照射条件、及び判定しきい値が登録される。チップレイアウト情報は、半導体ウエハの表面に配置されるチップの位置情報や寸法を含む。レーザ照射条件は、図1Aに示したレーザ光原3から出射する検査用レーザビームのパワー、半導体ウエハ5への入射角及び方位角を含む。判定しきい値は、計測された散乱光強度分布から、計数すべき欠陥を抽出するための基準となる情報である。
【0018】
例えば、製品種別Aの半導体ウエハのチップレイアウトはL1である。この半導体ウエハについて、工程aの処理が完了すると、レーザ照射条件Ir1でレーザ照射を行い、欠陥検査を行う。欠陥を計数する際の判定しきい値はIth1である。一般に、製品種別が同じであれば、工程が変わってもチップレイアウトは同一である。
【0019】
一例として、工程aは、シャロートレンチアイソレーション法による素子分離絶縁膜を形成する際の化学機械研磨(CMP)工程に相当する。工程bは、ポリシリコン膜をパターニングしてゲート電極を形成する工程に相当する。工程cは、第1層目の層間絶縁膜に形成されたビアホール内に充填されるタングステンプラグを形成する際の、タングステン膜のCMP工程に相当する。工程dは、ダマシン法で上層配線を形成する際の、Cuのめっき膜のCMP工程に相当する。
【0020】
制御装置10は、検査レシピ登録部11に登録されている検査レシピに基づいて、レーザ光原3を制御する。光検出器4で検出された散乱光の強度が、制御装置10に入力される。制御装置10は、レーザビームの走査位置、及び光検出器4から入力された散乱光の強度に基づいて、散乱光の強度分布を作成する。
【0021】
図1Bの第1段目及び第2段目に、それぞれチップX及びチップYの表面からの散乱光の強度分布の一例を示す。実際には、散乱光の強度分布は2次元分布になるが、図1Bでは、単純化させて1次元分布としている。チップ表面に現れている材料の反射係数の差や、表面に形成されている段差等により、散乱光の強度が変化する。
【0022】
制御装置10は、チップX及びチップYの表面からの散乱光の強度分布の差を算出する。この強度分布は、「差画像」と呼ばれる。
【0023】
図1Cに、差画像の差の一例を示す。差画像は、実際には2次元画像であるが、図1Cでは、1次元に単純化して表している。チップAとチップBとの表面には、合同のパターンが形成されているため、理想的には、両者の散乱光の強度分布はほぼ一致する。ただし、異物の付着、パターンの欠損等の欠陥があると、その部分からの散乱光の強度に大きな差が現れる。すなわち、図1Cに示した差画像は、欠陥に起因する散乱光の強度分布と考えることができる。
【0024】
なお、欠陥が無い場合に散乱光の強度が一様であるような場合、例えば、まだパターンが形成されていない一様な表面上に、薄膜を形成する工程の検査の場合には、差画像を求める必要はなく、1つのチップからの散乱光のみに基づいて欠陥を抽出することが可能である。
【0025】
制御装置10は、差画像から、欠陥の位置(座標)、及びその欠陥に起因する散乱光の強度を、欠陥情報記憶部12に記憶させる。
【0026】
走査型電子顕微鏡(SEM)20により、差画像から検出された欠陥を観察する。SEMは、半導体ウエハの表面を電子ビームで走査し、表面から放出される2次電子を観測することにより、2次元画像情報を得る。操作者がSEM20を操作することによって、半導体ウエハ5上の欠陥をひとつずつ観察してもよいし、制御装置10からSEM20に、欠陥の位置情報を与え、その位置の画像を自動的にSEM20で取得するようにしてもよい。
【0027】
次に、図3〜図6を参照して、図1Aに示した欠陥検査装置を用いた欠陥検査方法について説明する。
【0028】
図3に、欠陥検査方法のフローチャートを示す。工程aの処理が完了した製品種別Xの半導体ウエハの検査要求があると、ステップSA1において、製品種別X、工程aの検査レシピがあるか否かを判定する。検査レシピのうち、チップレイアウト情報は、設計段階で既に決定している。検査に適切なレーザ照射条件は、半導体ウエハの表面状態によって、予め判明している。このため、工程aの処理終了後の半導体ウエハの表面状態と近似した表面状態の半導体ウエハを検査する際の適切なレーザ照射条件を、工程aの検査用のレーザ照射条件とすることができる。従って、現実には、ステップSA1において検査レシピの有無を判定することは、判定しきい値が登録されているか否かの判定を行うことに等しい。既に検査レシピ(判定しきい値)が登録されている場合には、ステップSA6において、検査を行うことができる。検査レシピ(判定しきい値)が登録されていない場合には、ステップSA2を実行する。
【0029】
ステップSA2において、他の製品種別の工程aの検査レシピ(判定しきい値)が登録されているか否かを判定する。検査される工程が同一であれば、製品種別が異なっても、半導体ウエハの表面状態や、内部の積層構造は等しい。このため、製品種別X、工程aの検査レシピとして、他の製品種別の同一工程aにおける検査レシピ(判定しきい値)をそのまま流用することが可能である。
【0030】
従って、他の製品種別の工程aの検査レシピ(判定しきい値)が既に登録されている場合には、ステップSA5において、既に登録されている検査レシピ(判定しきい値)に基づいて、製品種別Xの工程aにおける検査レシピ(判定しきい値)を決定する。決定された検査レシピ(判定しきい値)は、ステップSA4において、検査レシピ登録部11に登録されるとともに、ステップSA6において、検査が行われる。
【0031】
ステップSA2において、工程aの検査レシピ(判定しきい値)が登録されていないと判定された場合には、入出力装置15を通して、検査レシピ(判定しきい値)が未登録であることを操作者に通知する。操作者は、ステップSA3を実行することにより、新に検査レシピ(判定しきい値)を作成する。新たに作成された検査レシピを、ステップSA4において、検査レシピ登録部11に登録する。さらに、新に作成された検査レシピ(判定しきい値)に基づいて、ステップSA6において、検査を行う。
【0032】
図4に、ステップSA3の詳細なフローチャートを示す。まず、ステップSB1において、検査要求のあった半導体ウエハと同一の処理、すなわち製品種別Xの工程aを経たサンプルを、図1Aに示した欠陥検査装置のステージ2に保持し、差画像を計測することによって、欠陥を抽出する。ここでは、例えば、差画像の輝度(散乱光の強度差)が大きな順番に1000個の欠陥を抽出する。なお、抽出する欠陥の個数は、1000個に固定する必要はなく、適宜増減させてもよい。散乱光の強度差が大きな順番に、欠陥に通し番号を付与する。
【0033】
図5に、抽出された1000個の欠陥と、その欠陥に起因する散乱光の強度との関係を示す。散乱光の強度は、例えば256段階に区分されている。
【0034】
ステップSB2において、抽出された1000個の欠陥の位置をSEMで観察し、欠陥を、検出可能な群と、検出不可能な群とに分類する。
【0035】
図6A〜図6Fを参照して、SEMで検出可能な欠陥及び検出不可能な欠陥について説明する。
【0036】
図6A及び図6Dに、検査対象の半導体ウエハの部分断面図を示す。シリコンからなる基板30の表面に、素子分離絶縁膜31が形成され、活性領域が画定されている。活性領域内に、MOSFET32が形成されている。MOSFET32を覆うように、基板30の上に、1層目の層間絶縁膜35が形成されている。この層間絶縁膜35に複数のビアホールが形成され、その中にタングステンプラグ36が充填されている。2つのタングステンプラグ36が、それぞれMOSFET32のソース領域及びドレイン領域に接続されている。
【0037】
層間絶縁膜35の上に、2層目の層間絶縁膜40が形成されている。この層間絶縁膜40に、シングルダマシン法により、銅配線41が形成されている。層間絶縁膜40の上に、さらに層間絶縁膜45が形成されている。層間絶縁膜45に、デュアルダマシン法により、配線46が形成されている。
【0038】
図6Aは、最上層の層間絶縁膜45の表面に異物50が付着した場合を示している。図6Dは、内部の層間絶縁膜40の上面に異物51が付着し、その異物51が、その上の層間絶縁膜45で覆われている。
【0039】
図6B及び図6Eに、それぞれ図6A及び図6Dに示した半導体ウエハの欠陥に起因する散乱光の強度分布を示す。図6B及び図6Eに示した散乱光の強度分布に、それぞれ図6Aに示した異物50及び図6Dに示した異物51に起因するピークが現れている。
【0040】
図6C及び図6Fに、それぞれ図6A及び図6Dに示した半導体ウエハのSEM写真をスケッチした線図を示す。図6Cに示すように、半導体ウエハの露出表面に付着した異物50が観察される。ところが、図6Fに示すように、内部に存在する異物51はSEMでは検出できない。なお、この異物51は、金属顕微鏡を用いることにより検出することができる。例えば、図6A及び図6Bに示したデュアルダマシン法による配線46の形成工程の検査を行う場合には、図6Aに示した露出表面に付着した異物50を計数し、図6Dに示した内層の異物51は計数する必要はない。
【0041】
図5に示した欠陥のうち、一例として、SEMで検出可能な欠陥にハッチを付した。通常、内層に存在する欠陥よりも、露出表面に存在する欠陥に起因する散乱光の強度の方が大きい。このため、SEMで検出可能な群に属する欠陥は、散乱光の強度の大きな方(欠陥に付された通し番号の小さな方)に偏って分布する。
【0042】
例えば、図5に示した例においては、通し番号11以下の欠陥は、すべてSEMで検出可能である。通し番号12〜21の範囲には、SEMで検出可能な欠陥と検出不可能な欠陥とが混在する。通し番号22以上の欠陥は、すべてSEMで検出不可能である。SEMで検出不可能な欠陥は、露出表面ではなく、半導体ウエハの内部に存在すると考えられるため、工程aの検査工程において、欠陥として抽出する必要はない。
【0043】
SEMで検出可能な群に分類された欠陥のうち最も小さな散乱光強度を示す欠陥(図5の例においては、通し番号21の欠陥)を、「散乱強度最小の検出可能欠陥」と呼ぶこととする。散乱強度最小の検出可能欠陥に起因する散乱光の強度Ia以上の散乱強度を示す欠陥の個数を数えることにより、工程の良否を判定することができる。サンプルと同じ製品種別の半導体ウエハの同一工程の検査における判定しきい値は、余裕を見込んで、上記散乱光の強度Iaよりもやや低く設定することが好ましい。以下、判定しきい値の決定方法について説明する。
【0044】
散乱強度最小の検出可能欠陥の通し番号(図5の例では21)よりも大きな通し番号の欠陥(図5の例では、通し番号22〜1000の欠陥)の個数を数える。この個数(図5の例では、979個)の例えば5%分の余裕を確保する。具体的には、散乱強度最小の検出可能欠陥の通し番号に、979個の5%、すなわち49個分だけ大きな通し番号(図5の例では、通し番号70)の欠陥に起因する散乱光の強度Ithを、仮の判定しきい値とする。
【0045】
ステップSB4において、同一製品種別、同一工程の他のサンプルを、図1Aに示したステージ2に載置する。ステップSB5において、仮の判定しきい値の妥当性を検証する。具体的には、新たなサンプルについてステップSB1〜SB3と同一の手順を実行することにより、別の仮の判定しきい値を求める。1個目のサンプルを用いて決定された仮の判定しきい値と、2個目のサンプルを用いて決定された仮の判定しきい値とを比較する。両者の差が許容範囲内であれば、最初に求めた仮の判定しきい値は妥当であると判断され、許容範囲を越えている場合には、最初に求めた仮の判定しきい値は妥当ではないと判断される。
【0046】
ステップSB6において、仮の判定しきい値が妥当であると判断された場合には、ステップSB7において仮の判定しきい値を正式な判定しきい値として採用する。仮の判定しきい値が妥当でないと判断された場合には、ステップSB8において、サンプルを他のサンプルに交換し、ステップSB1に戻る。
【0047】
なお、1枚のサンプルの評価することによって正式な判定しきい値を決定してもよいし、3枚以上のサンプルの各々について仮の判定しきい値を算出し、これらの算出結果に基づいて、正式な判定しきい値を決定してもよい。
【0048】
図3のステップSA6の検査工程について説明する。検査対象の半導体ウエハ5をステージ2に載置する。半導体ウエハ5の表面をレーザビームで走査することにより、散乱光の強度分布を求める。相互に合同なパターンが形成された2つのチップの表面における散乱高強度分布の差分を算出することにより、欠陥に起因する散乱光強度分布(差画像)を求める。散乱光強度が、判定しきい値以上を示している欠陥を抽出し、その個数を数える。この個数が許容範囲内であれば、この半導体ウエハ5の工程aは、正常であると判定される。欠陥の個数が許容範囲を越えている場合には、この半導体ウエハ5の工程aは、異常であると判定される。判定結果は、入出力装置15を通して操作者に通知される。
【0049】
次に、上記実施例において、判定しきい値以上の散乱強度を示す欠陥のみを計数する効果について説明する。以下、最表面の欠陥数の平均が10個、内層の欠陥数の平均が990個、欠陥の総数のばらつきの標準偏差σが50個である標準的なサンプルについて、考察する。
【0050】
比較のために、判定しきい値を設定することなく、内層欠陥を含めて全ての欠陥を検出する場合について検討する。通常、欠陥個数が平均値+3σ以上である場合に、工程異常と判定される。平均値+3σが1150個であるため、検出された欠陥数が1150個以上になると、工程異常と判定されることになる。
【0051】
検査対象の工程よりも前の工程では、標準的な品質が維持されている場合、内層欠陥の個数はほぼ990個になる。従って、最表面の欠陥数が160個以上、すなわち平均値+150個以上になったとき、工程異常と判定される。
【0052】
次に、実施例のように、判定しきい値以上の散乱強度を示す欠陥のみを計数する場合について考察する。一例として、内層欠陥の990個のうち、6個のみが計数されるとする。他の984個の欠陥は、それに起因する散乱強度が判定しきい値以下であるため、計数されない。合計の欠陥数の平均は16個になり、計数される欠陥数の標準偏差σは、経験的に8個程度になる。この場合、欠陥数の平均値+3σは、40個になる。検査対象の工程よりも前の工程では、標準的な品質が維持されている場合、計数される内層欠陥の個数は、ほぼ6個になる。従って、最表面の欠陥数が24個以上、すなわち平均値+14個以上になったとき、工程異常と判定される。
【0053】
上述のように、判定しきい値を設定しない場合には、最表面の欠陥が、平均値+150個以上になったときに初めて工程異常と判定されるのに対し、実施例のように、判定しきい値を導入すると、最表面の欠陥が、平均値+14個以上になれば工程異常と判定される。このように、判定しきい値を導入することにより、工程異常の検出感度を高めることができる。
【0054】
また、上記実施例では、図3のステップSA5に示したように、製造ラインに新たな製品種別が追加されたとしても、従来の製品の同等の工程に関連付けられている検査レシピ(判定しきい値)を、新に追加された製品種別の検査レシピ(判定しきい値)として採用する。このため、製品種別が追加される度に、検査レシピを新に作成する手間を省くことができる。
【0055】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0056】
1 測定部
2 ステージ
3 レーザ光原
4 光検出器
5 半導体ウエハ(検査対象物)
10 制御装置
11 検査レシピ登録部
12 欠陥情報記憶部
15 入出力装置
20 走査型電子顕微鏡(SEM)
30 基板
31 素子分離絶縁膜
32 MOSFET
35、40、45 層間絶縁膜
36 タングステンプラグ
41、46 配線
50 表面の異物
51 内層の異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの表面にレーザビームを入射させて、該表面からの散乱光の強度分布に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥に起因する散乱光の強度と判定しきい値とを比較して、比較結果に基づいて欠陥を計数する欠陥検査方法であって、
(a)第1の工程の処理が終了した第1の製品種別のウエハの欠陥検査要求があると、該第1の製品種別の該第1の工程に関連付けられた判定しきい値が既に登録されているか否かを判定する工程と、
(b)前記工程aで、前記判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、既に登録されている判定しきい値に基づいて欠陥を計数し、まだ登録されていないと判定された場合には、新に判定しきい値を決定して欠陥を計数するとともに、新に決定された判定しきい値を、前記第1の製品種別の前記第1の工程に関連付けて登録する工程と
を有する欠陥検査方法。
【請求項2】
前記工程aにおいて、まだ登録されていないと判定された場合に、
前記工程bは、
(b1)前記第1の製品種別とは異なる製品種別の、前記第1の工程と同一の工程に関連付けられた判定しきい値が登録されているか否かを判定する工程と、
(b2)前記工程b1で、前記判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、前記第1の製品種別とは異なる製品種別の、前記第1の工程と同一の工程に関連付けられた判定しきい値を、前記第1の製品種別の前記第1の工程に関連付けて登録するとともに、新に登録された判定しきい値に基づいて、前記第1の製品種別のウエハの欠陥を計数し、前記工程b1で、前記判定しきい値が登録されていないと判定された場合には、新に判定しきい値を決定して、決定された判定しきい値を、前記第1の製品種別の前記第1の工程に関連付けて登録する工程と
を有する請求項6に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記工程b2において、前記判定しきい値が登録されていないと判定された場合に、前記工程b2は、さらに、
欠陥検査要求があったウエハと同一の処理を経たサンプルの表面からの散乱光を観測して、散乱光の強度に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥の位置、及び当該欠陥に起因する散乱光の強度を取得する工程と、
検出された欠陥を、表面に電子ビームを入射させたときに放出される2次電子を観測することにより検出できる群と、検出できない群とに分類する工程と、
欠陥を分類した結果と、欠陥に起因する散乱光の強度とに基づいて、計数すべき欠陥を抽出するための散乱光強度の判定しきい値を決定する工程と
を含む請求項2に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
ウエハの表面にレーザビームを入射させて、該表面からの散乱光の強度の分布に基づいて欠陥を検出し、検出された欠陥に起因する散乱光の強度と判定しきい値とを比較して、比較結果に基づいて欠陥を計数する欠陥検査装置であって、
製品種別及び工程ごとに、判定しきい値が登録される判定しきい値登録部と、
制御装置と
を有し、前記制御装置は、
(a)第1の工程の処理が終了した第1の製品種別のウエハの欠陥検査要求があると、該第1の製品種別の該第1の工程に関連付けられた判定しきい値が、前記判定しきい値登録部に登録されているか否かを判定する工程と、
(b)前記工程aで、前記判定しきい値が既に登録されていると判定された場合には、既に登録されている判定しきい値に基づいて欠陥を計数し、まだ登録されていないと判定された場合には、判定しきい値が未登録であることを操作者に通知する工程と
を実行する欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242407(P2011−242407A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180138(P2011−180138)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【分割の表示】特願2006−163776(P2006−163776)の分割
【原出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】