説明

欠陥観察方法及びその装置

【課題】
観察座標を算出するのに不適当な,観察装置で検出するのが困難な欠陥(例えば,膜下欠陥など)が多発する品種・工程のウェーハにおいて,安定かつ高スループットに検査装置と観察装置の座標系のずれを補正する。
【解決手段】
観察装置を,座標変換情報を記憶する記憶手段と、検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報を記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を用いてそれぞれの欠陥に対応する観察装置上の座標情報に変換する座標情報変換手段と、座標情報変換手段で変換した観察装置上の座標情報に基づいてそれぞれの欠陥を撮像する撮像手段と、撮像手段で取得した画像から抽出した欠陥の座標情報と座標変換手段で変換したそれぞれの欠陥の座標情報とから記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を修正する座標情報修正手段とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,画像取得手段を用いて試料上の欠陥等を観察する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の歩留まり向上のため,製造工程における欠陥の発生原因を早急に究明することが重要となっている。現在,半導体の製造現場では欠陥検査装置(以降、検査装置を記す)と欠陥観察装置(以降、観察装置を記す)を用いて欠陥の解析を行っている。
欠陥検査装置とは光学的な手段もしくは電子線を用いてウェーハを観測し,検出された欠陥座標を出力する装置である。欠陥検査装置は広範囲を高速に処理する事が重要であるため,可能な限り取得する画像の画素サイズを大きく(つまり低解像度化)することによる画像データ量の削減を行っており,多くの場合,検出した低解像度の画像からは欠陥の存在は確認できても,その欠陥の種類を詳細に判別することはできない。そこで,観察装置が用いられる。
【0003】
観察装置とは,検査装置の出力を用い,ウェーハの欠陥座標を高解像度に撮像し,画像を出力する装置である。半導体製造プロセスは微細化が進み,それに伴い最小欠陥サイズも数十nmのオーダに達していることもあり,欠陥を詳細に観察するためには数nmオーダの分解能が必要である。そのため,近年では走査型電子顕微鏡を用いた観察装置(レビューSEM)が広く使われている。
【0004】
半導体の量産ラインでは欠陥を観察する作業の自動化が望まれており,レビューSEMは試料内の欠陥座標における画像を自動収集する欠陥観察処理(ADR:Automatic Defect Review)機能を搭載している。レビューSEMの欠陥自動観察に関しては,特許第3893825号公報(特許文献1)に方法が記載されている。
【0005】
欠陥観察処理機能は,欠陥検査装置でウェハを検査して検出した欠陥の座標(以下,検査座標と記載)を用いて欠陥部位を高い倍率で撮像した画像を自動で収集する機能である。しかし,検査装置と観察装置は別装置であることが多く,両装置の座標系が共有されていないため,観察装置のステージを検査座標に移動させ画像を取得しようとしても観察装置の視野内(約10um)に欠陥が含まれない場合が多い。この問題を解決するため方法として,ウェーハ上に形成された座標が既知の「位置合わせ用パターン」を検出し,座標系の合わせ込みをする方法(ウェーハアライメント)が知られている。しかし,検査装置と観察装置の間ではパターンの検出方法や検出精度が異なること,および位置合わせ用パターンをユーザが登録する際に位置ずれが発生する場合があることなどから,数十ミクロン程度の精度での合わせ込みを行えない場合が存在する。
【0006】
そこで,観察対象の欠陥点のうちの数点(例えば5点)について観察装置で欠陥を再検出し,検査装置と観察装置で検出した欠陥座標を対応させて記憶し,両者の座標が一致するような座標変換式を算出し,検査座標を補正する方法が知られている(特許第3671822号公報(特許文献2))。以下,この方法を用いて検査座標を補正する処理を「ファインアライメント処理」と記載する。
【0007】
検査装置と観察装置で検出される欠陥座標の「ずれ」には,座標系のオフセットや回転,ピッチ変化などに起因したシステマティックなものと,検査装置の検出精度などに起因したランダムなものが存在し,両者が組み合わさって発生するのが一般的である。このうち,前述のファインアライメント処理で補正可能な「ずれ」はシステマティック起因のものであり,ランダムなものは補正しきれない。ランダムな「ずれ」は検査装置の検出精度に依存するが,概ね±4[um]程度である。そこで欠陥観察処理では,まず視野10[um]程度で画像を撮像し,撮像した画像から欠陥を検出し,検出した欠陥を高倍率(例えば視野2.5um)で撮像するといった手順を踏む。
【0008】
そのほか,ファインアライメント処理に関する従来技術として,特開2006−261162号公報(特許文献3)において,観察装置の欠陥検出結果をもとにファインアライメントに用いる欠陥を選択する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3893825号公報
【特許文献2】特許第3671822号公報
【特許文献3】特開2006−261162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述したように「ファインアライメント処理」は,観察対象の欠陥点のうちの数点(例えば5点)について観察装置で欠陥を再検出し,検査座標と観察装置で検出した欠陥座標(以下,観察座標と記載)を対応させて記憶し,両者の座標が一致するような座標変換式を算出し,検査座標を補正する処理である。ここで,検査装置と観察装置で画像撮像方法などが異なる場合,検査装置で検出された欠陥が観察装置では検出することが困難となる場合が存在する。例えば,欠陥が透明酸化膜の膜下に存在する場合,光学式の検査装置では容易に検出できても,SEMを用いた観察装置では透明酸化膜の表面しか観察することができないため,欠陥を検出することは困難となる。
【0011】
このように,観察装置で検出が困難な欠陥からは観察座標を算出することが困難であるため,座標変換式を算出する際の評価対象からは除外することが望ましい。除外する方法として,検査装置が出力した情報をもとに事前に絞り込み選択を行う方法が特許文献2に,観察装置の欠陥検出結果をもとに適正を判定する方法が特許文献3に記載されている。
しかし,検査装置と観察装置の画像撮像方法が異なる場合,検査装置が出力した情報をもとに観察装置での検出可否を判定するのは困難である。また,観察装置の欠陥検出結果をもとにずれの算出適正を判定する場合,適当と判定される欠陥が数点(例えば5点)見つかるまで欠陥点を巡回するため,不適と判定される欠陥が多発する工程のウェーハにおいては効率が低下する。
【0012】
特許文献3に開示されている欠陥観察の概略のフローを図7に示す。従来の技術においては、ウェーハを観察装置にロードし(S701),検査装置で当該ウェハを検査した結果の情報を読み込み(S702)、検査装置で検出された欠陥の中からファインアライメント候補欠陥を抽出し(S703)、抽出したファインアライメント候補欠陥をSEMで撮像し(S704)、得られたSEM画像がアライメントに適しているかを判定する(S705)。
【0013】
アライメントに適していないと判定した場合には、次のアライメント候補欠陥の位置に移動してS704のステップとS705のステップを行う。S705のステップでアライメントに適していると判定された場合にはその欠陥のSEM上での位置座標を読み込む(S706)。
【0014】
S704のステップからS706のステップまでを繰り返し(S707)、所定の個数の欠陥についてその位置座標を読み込み終わるとそれら読み込んだ欠陥のSEM上での位置座標(SEM座標系)とS702のステップで読み込んだ検査装置で抽出した欠陥の位置座標(欠陥座標系)とをつき合わせて欠陥座標系のデータをSEM座標系のデータに変換するための座標補正係数を算出する(S708)。
【0015】
次にS702のステップで読み込んだ検査装置で抽出した欠陥の情報を用いてレビューする欠陥をサンプリングし(S709)、S708のステップで算出した座標補正係数を用いてサンプリングした欠陥のSEM上での位置座標を求め(S710)、この求めたSEM上での位置座標に基づいてサンプリングした各欠陥をSEMでレビューして画像を取得し(S711)、取得した画像の特徴量から欠陥を分類し(S712)、全てのサンプリング点についてレビューが完了したらウェハをアンロードして(S713)処理を終了する。
【0016】
本発明では,観察座標を算出するのに不適当な,観察装置で検出するのが困難な欠陥(例えば,膜下欠陥など)が多発する品種・工程のウェーハにおいて,高精度かつ高スループットに検査座標を補正する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
観察座標を算出するのに不適当な欠陥(観察装置で検出するのが困難な膜下欠陥など)が多発する品種・工程のウェーハにおいても,全欠陥を巡回すれば観察座標の算出に適した異物欠陥などが存在する場合が多い。また,量産ラインにおいては,ウェーハの種類(例えば,品種名と工程名の組み合わせ)が同一であれば,座標系のシステマティックなずれの傾向が同様であることが多い。
【0018】
以上の事から,ADR後に座標変換式を算出し,算出した座標変換式をウェーハの種類と関連付けて保存しておけば,次に同一の種類のウェーハが入力された場合は,データベースに記憶した座標変換式を用いて,検査座標の補正を行うことが可能となる。
【0019】
そこで,本発明では以下のステップにより検査座標を変換するようにした。
(1)座標変換式データベースに記憶されている座標変換式を用いて観察対象ウェーハの検査座標を変換する。観察するウェーハの種類に応じた座標変換式が記憶されていない場合は,前述のファインアライメント処理により座標変換式を算出する。
(2)ADR時に得られた検査座標と観察座標の対応関係をもとに座標変換式を算出する。
(3)算出した座標変換式の信頼性を判定する。
(4)信頼性がある場合は,記憶してある座標変換式と算出した座標変換式を用いて座標変換式データベースを更新する。
【0020】
なお,座標変換式データベースに記憶されている座標変換式は,ウェーハの種類と関連付けて記憶する。また,ウェーハの種類が同一であれば,欠陥座標のシステマティックなずれ方の傾向は同じであるとする。本発明は,(4)の処理により,同一の種類のウェーハで発生している平均的な「座標系のずれ」を算出し,補正精度の安定化を実現することを特徴とする。
【0021】
すなわち、本発明では、上記目的を達成するために、検査装置で検出した欠陥を観察する観察装置において,座標変換情報を記憶する記憶手段と、検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報を記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を用いてそれぞれの欠陥に対応する観察装置上の座標情報に変換する座標情報変換手段と、座標情報変換手段で変換した観察装置上の座標情報に基づいてそれぞれの欠陥を撮像する撮像手段と、撮像手段で取得した画像から抽出した欠陥の座標情報と座標変換手段で変換したそれぞれの欠陥の座標情報とから記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を修正する座標情報修正手段とを備えて構成した。
【0022】
また、上記目的を達成するために本発明では、検査装置で検出した欠陥を観察する観察装置において,検査装置で検出した欠陥を観察装置で観察するために検査装置で検出した欠陥の位置情報を観察装置上の位置情報に変換する位置変換情報を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶しておいた位置変換情報を用いて検査装置で検出した欠陥の位置情報を補正する位置情報変換手段と、位置情報変換手段で補正した位置情報に基づいて検査装置で検出した欠陥を撮像して欠陥の画像を取得する撮像手段と、撮像手段で取得した画像から欠陥の位置情報を抽出する位置情報抽出手段と、位置情報変換手段で補正した欠陥の位置情報と位置情報抽出手段で抽出した欠陥の位置情報とを用いて記憶手段に記憶しておいた位置変換情報を修正する位置情報修正手段とを備えて構成した。
【0023】
更に、上記目的を達成するために、本発明では、検査装置で検出した欠陥を観察装置で観察する方法において,検査装置で検出した複数の欠陥について記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を用いてそれぞれの欠陥の位置情報を補正し、補正した位置情報に基づいて検査装置で検出したそれぞれの欠陥を観察装置で順次撮像してそれぞれの欠陥の画像を取得し、取得した画像からそれぞれの欠陥の観察装置上での位置情報を得、それぞれの欠陥の補正した位置情報と得た位置情報とを用いて記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を修正するようにした。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば,観察座標を算出するのに不適当な欠陥(観察装置で検出するのが困難な膜下欠陥など)が多発する品種・工程のウェーハにおいて,数点の欠陥(例えば5点)から算出した座標変換式を用いて検査座標の補正を行うのではなく,データベースに記憶した座標変換式を用いることで安定に検査座標を補正することが可能となる。
【0025】
また,複数枚の同じ種類のウェハを観察する場合に、2枚目のウェハからはADRを実行する前に観察座標を算出する処理(ファインアライメント処理)を必要としないため,高スループット化が実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例に関わる欠陥レビューのステップの処理フロー図である。
【図2】本発明の実施例に関わる装置の構成図である。
【図3】本発明の実施例に関わる演算部の構成である
【図4】本発明の実施例に関わる出力画面の一例である。
【図5】本発明の実施例に関わる出力画面の一例である。
【図6】本発明の実施例に関わる欠陥観察処理のフローである。
【図7】従来の欠陥レビューの処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例】
【0028】
以下に,本発明に関わる一実施例として走査電子顕微鏡を用いた半導体レビューSEMについて説明する。
【0029】
本発明に関わるレビューSEMの装置構成を図2に示す。本発明に係るレビューSEM装置は,SEM画像取得部227と処理部228で構成され,その間をバス229で繋がれている。SEM画像取得部227において201は1次電子208を発生させる電子源,202は1次電子を加速する為の加速電極,203は1次電子を収束する為の集束レンズ,2031は集束レンズで一旦広げられた1次電子のうち周辺部をカットして中央部の電子密度の高い部分を通過させる開口部2032を有するアパーチャ、204はアパーチャ2031の開口部2032を通過した1次電子を2次元走査偏向する偏向器,205は1次電子を試料206上に収束させるための対物レンズである。207は試料を搭載するXY平面内で移動可能なステージである。210は試料より発生した2次電子209を検出する検出器,211は試料面で反射した反射した1次電子を検出する検出器,212は検出された信号をデジタル化する(A/D変換)ためのデジタル化手段である。これらの各部位は,バス229を通じて全体制御部213に接続されている。
【0030】
一方,信号処理部228は,演算部219,記憶部214,装置に対し指示を与える為のキーボードやマウスなどのデバイス,及び装置からのデータを出力するモニタやプリンタなどからなる入出力部226を備えて構成されており,それらの間はバス229により互いに接続されている。演算部219は,画像処理部220,観察座標の算出を行う観察座標算出部221,座標変換式の算出を行う座標変換式算出部222,座標変換式の信頼性を判定する座標変換式信頼性判定部223,検査座標の変換を行う検査座標変換部224,座標変換式のデータベースを更新するデータベース更新部225を含む。また,記憶部214は,撮像した画像データを格納する画像記憶部215,検査座標と観察座標を記憶する欠陥座標記憶部216,座標変換式を記憶する座標変換式記憶部217,自動観察を行うためのレシピを記憶するレシピ記憶部218を含む。
【0031】
次に,本発明に関わるレビューSEMの処理フローを図6に示す。まず,予め検査装置で検査されて欠陥を検出された半導体ウェーハ206をステージ207に搭載する(S601)。次に,このステージ207に搭載した半導体ウェーハ206を予め検査装置により検査した結果得られて図示していない記憶手段に記憶しておいた欠陥座標を読み込む(S602)。次に,オペレータが入出力部226を通して指定したレシピを,記憶部218から読み出す(S603)。そして,レシピに記載された条件を用いてS603にて読み込んだ欠陥座標から,観察対象となる欠陥をサンプリングする(S604)。次に,観察対象となる欠陥について以下において説明するS101〜S109の処理を行うことで欠陥の詳細を観察するための画像(以下,観察画像)の収集を行い(S605),観察画像をユーザが定義した欠陥の種類毎に自動分類する(S606)。最後に半導体ウェーハをアンロードする(S607)。
【0032】
ここで,自動観察対象となる欠陥の座標は,他の検査装置により検出された欠陥の座標であり,他の検査装置とは,
(i) 光学的な手段を用いて信号を取得し,欠陥を検出する装置
(ii) 試料に荷電粒子ビームを照射する手段を用いて信号を取得し,
欠陥を検出する装置
などを用いれば良い。
【0033】
図7で説明した従来の処理フローと比べると、本実施例では従来のS703からS708にかけてのステップが無い。即ち、同じ種類の複数枚のウェハを順次観察する場合、最初のウェハを除いて、従来技術においてレビューに先立って毎回行っていたファインアライメント処理を不要とする点に特徴がある。
【0034】
以下に、このファインアライメント処理を如何にして不要としたかを説明する。
本発明にかかわるレビューSEMにおいて,観察画像を自動収集するための流れを図1に示す。他の欠陥検査装置で検査して検出した欠陥座標のうち,サンプリングされた観察対象の欠陥座標全てについて,S101〜S109の処理を実行することで観察画像を自動収集する。
【0035】
まず,観察対象ウェーハの情報を入出力部226から入力すると、全体制御部213は座標変換記憶部217を走査して入力された観察対象ウェハの種類に対応する座標変換式が,座標変換記憶部217に記憶されているかを判定する(S101)。対応する座標変換式が存在しない場合(最初にレビューするウェハの場合),前述の従来の技術として説明したのと同じファインアライメント処理により座標変換式を算出する。
【0036】
次に,観察対象の欠陥点についてS103〜S106を繰り返すことにより,観察座標の算出と,観察画像の収集を行う。まず,座標変換式により検査座標の変換を行い(S103),変換後の検査座標にステージを移動させ,画像を撮像する(S104)。そして撮像した画像から欠陥を検出することで観察座標を算出し(S105),観察画像を撮像する(S106)。
【0037】
観察対象の欠陥点についての観察座標を算出した後,算出した観察座標と検査座標をもとに座標変換式を算出する(S107)。そして,算出した座標変換式の信頼性を判定し(S108),信頼性がある場合は,座標変換式のデータベースを更新する(S109)。なお,信頼性の判定は省略可能である。
【0038】
座標変換式について説明する。座標変換式は,入力された座標を変換し,座標を出力するものである。本実施例ではアフィン変換により座標を変換するものとし,欠陥座標を(x,y),変換後の座標を(X,Y)とすると座標変換式は数1となる。この場合,a1 〜 a6が座標変換式の係数となる。また,アフィン変換の代わりにルックアップテーブルを用いても良い。この場合,座標変換式の係数はルックアップテーブル内のテーブル値となる。座標変換式の係数は,i を1から「観察対象の欠陥点数」としたとき,欠陥座標(xi,yi)に対応する観察座標(Xi’,Yi’)を用い,(xi,yi)の変換後の座標(Xi,Yi)と観察座標(Xi’,Yi’)の差の総和が最小となるa1 〜 a6の値を求めれば良い。
【0039】
【数1】

【0040】
データベース更新処理について説明する。本処理では,算出した座標変換式と,記憶してある座標変換式の係数の加重平均を算出し,新たな座標変換式を算出する。そして新たに算出した座標変換式を座標変換式記憶部に記憶する。これにより,同一の種類のウェーハで発生している平均的な「座標系のずれ」を補正する座標変換式を得ることが可能となる。なお,加重平均を算出する際の重みは,予め定められたものを用いれば良い。また,新たな座標変換式を記憶する際に,観察対象ウェーハから算出した座標変換式を合わせて記憶しても良い。また,座標変換式を記憶する際に,以前の座標変換式を上書きするのではなく,履歴情報を残すように追記するようにしても良い。
【0041】
座標変換式の信頼性判定について説明する。同じ種類のウェーハであっても,他のウェーハと座標系のずれが異なるウェーハが突発的に発生する場合が考えられる。このようなウェーハから算出した座標変換式をもとに記憶する座標変換式を更新すると,その後の同一種類のウェーハを観察する際に,誤った座標変換が行われる可能性がある。そこで,座標変換式信頼性判定処理では,観察対象ウェーハから算出した座標変換式と,記憶してある座標変換式の係数を比較し,予め定められたしきい値よりも,変動が大きければ,信頼性がないと判定する。
【0042】
各演算部の構成について図3を用いて説明する。観察座標算出部は画像処理部によって欠陥部位が顕在化された画像をもとに観察座標の算出を行い,検査座標と対応させて,欠陥座標記憶部に記録する。なお,全体制御部は算出された観察座標をもとに観察画像を取得する。座標変換式算出部では,欠陥座標記憶部に記憶された1つ以上の検査座標と観察座標の組み合わせをもとに,座標変換式を算出する。座標変換式信頼性判定部では,座標変換式算出部で算出された座標変換式と,座標変換式記憶部に記憶されている座標変換式をもとに,座標変換式算出部で算出された座標変換式の信頼性を判定する。データベース更新部では,座標変換式信頼性判定部の判定結果をもとに,算出された座標変換式と記憶された座標変換式をもとに新たな座標変換式を算出し,座標変換式記憶部に記録する。検査座標変換部は,座標変換式記憶部に記憶された座標変換式を用いて,欠陥座標記憶部に記憶された検査座標を変換し出力する。
【0043】
本発明に関する表示部に関して説明する。本発明に関わる観察装置は,座標変換式のログを時系列に表示する表示部を備える。図4にその一例を示す。図4は、座標変換式ログを表示する画面401で、ウェハ種類選択エリア402において、検査装置選択欄403で使用する検査装置を指定し、品種欄404で検査対象ウェーハ上に形成される半導体デバイスの品種を選択し,工程欄405で観察対象とするウェハがどの工程を経たウェハかを指定する。また、座標変換式ログ表示エリア410には、観察したウェーハから算出した座標変換式および座標変換式記憶部に記憶された座標変換式の係数の経時変化407を表示することが可能である。座標変換式の係数は,システマティックな座標系のずれの傾向を表している。これにより,座標系のずれの傾向を捉えることが可能となり,例えば座標系のずれが大きく変化した場合などに,ユーザは検査装置や観察装置のメンテナンスや条件設定を行うことが可能となる。
【0044】
また,観察したウェーハにおける検査座標と観察座標の対応関係を表示する機能を備える。その画面例を図5に示す。図5の検査座標と観察座標の対応関係を示す画面501は、図4に示した座標変換式のログを表示する画面401から呼び出すことも可能である。この画面501では,選択したウェーハの観察条件を表示する機能502,検査座標と観察座標の対応関係をウェーハ上にマッピングして表示する機能503,検査座標を変換する前後において観察装置で撮像した画像における欠陥位置を表示する機能504を含む。なお,これらの画面はウェーハの観察中に表示することも可能である。
【0045】
なお,以上は走査型電子顕微鏡を用いた実施例を示したが,画像取得手段として走査型電子顕微鏡以外の手段を用いても良い。また,上記実施例では試料として半導体ウェーハを取り上げて説明したが,本発明は半導体ウェーハの観察に限定したものでなく,液晶パネルやプラズマディスプレイパネル,磁気ヘッド,磁気ディスクなどの試料上の欠陥を観察する場合にも用いることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
213・・・全体制御部 215・・・画像を記憶する記憶部 216・・・欠陥の座標を記憶する記憶部 217・・・座標変換式を記憶する記憶部 220・・・画像処理を行う演算部 221・・・観察座標を算出する演算部 222・・・座標変換式を算出する演算部 223・・・座標変換式の信頼性を判定する演算部 224・・・検査座標を変換する演算部 225・・・座標変換式のデータベースを更新する演算部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置で検出した欠陥を観察する観察装置であって,
座標変換情報を記憶する記憶手段と、
検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報を前記記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を用いてそれぞれの欠陥に対応する観察装置上の座標情報に変換する座標情報変換手段と、
該座標情報変換手段で変換した観察装置上の座標情報に基づいて前記それぞれの欠陥を撮像する撮像手段と、
該撮像手段で取得した画像から抽出した欠陥の座標情報と前記座標変換手段で変換したそれぞれの欠陥の座標情報とから前記記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を修正する座標情報修正手段と、
を備えたことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の欠陥観察装置であって、前記座標情報修正手段で修正した前記座標変換情報に関する情報を表示する表示手段を更に備えることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の欠陥観察装置であって、前記表示手段には、前記検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報と前記座標情報変換手段で変換した観察装置上の座標情報との対応関係を表示するマップ、又は、前記検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報と前記撮像手段で撮像して得た画像、又は、前記座標情報変換手段で変換した観察装置上の座標情報と前記撮像手段で撮像して得た画像のうち少なくとも何れか1つを表示することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項4】
検査装置で検出した欠陥を観察する観察装置であって,
検査装置で検出した欠陥を観察装置で観察するために前記検査装置で検出した欠陥の位置情報を前記観察装置上の位置情報に変換する位置変換情報を記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶しておいた位置変換情報を用いて検査装置で検出した欠陥の位置情報を補正する位置情報変換手段と、
該位置情報変換手段で補正した位置情報に基づいて前記検査装置で検出した欠陥を撮像して該欠陥の画像を取得する撮像手段と、
該撮像手段で取得した画像から前記欠陥の位置情報を抽出する位置情報抽出手段と、
前記位置情報変換手段で補正した欠陥の位置情報と前記位置情報抽出手段で抽出した前記欠陥の位置情報とを用いて前記記憶手段に記憶しておいた前記位置変換情報を修正する位置情報修正手段と
を備えたことを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項5】
請求項4に記載の欠陥観察装置であって,
前記撮像手段で撮像した欠陥の検査座標と観察座標との対応関係をマップ上に表示する表示部,又は、前記位置座標変換手段で変換前の検査座標を用いて前記撮像手段で画像を撮像した際に欠陥が撮像される位置を表示する表示部,又は、前記位置座標変換手段で変換後の検査座標を用いて前記撮像手段で画像を撮像した際に欠陥が撮像される位置を表示する表示部のうち少なくとも1つ以上を更に備えることを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項6】
請求項1又は4に記載の欠陥観察装置であって、前記画像取得手段は走査型電子顕微鏡を用いて前記試料の電子線画像を取得することを特徴とする欠陥観察装置。
【請求項7】
検査装置で検出した欠陥を観察装置で観察する方法であって,
検査装置で検出した複数の欠陥について記憶手段に記憶しておいた座標変換情報を用いてそれぞれの欠陥の位置情報を補正し、
該補正した位置情報に基づいて前記検査装置で検出したそれぞれの欠陥を観察装置で順次撮像して該それぞれの欠陥の画像を取得し、
該取得した画像から前記それぞれの欠陥の前記観察装置上での位置情報を得、
該それぞれの欠陥の補正した位置情報と前記得た位置情報とを用いて前記記憶手段に記憶しておいた前記座標変換情報を修正する
ことを特徴とする欠陥観察方法。
【請求項8】
請求項7記載の欠陥観察方法であって、前記修正した座標変換情報を用いて前記検査装置で検出した新たな欠陥の位置情報を修正し、該位置情報を修正した欠陥を前記観察装置で観察することを特徴とする欠陥観察方法。
【請求項9】
請求項7に記載の欠陥観察方法であって、前記検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報と前記記憶しておいた座標変換情報を用いて補正した位置情報との対応関係を示すマップ、又は、前記検査装置で検出した複数の欠陥の座標情報と前記撮像して得た画像、又は、前記座標変換情報を用いて補正した欠陥の位置情報と前記撮像して得た画像とのうち少なくとも何れか1つを画面上に表示することを特徴とする欠陥観察方法。
【請求項10】
請求項7に記載の欠陥観察方法であって、前記欠陥を撮像する観察装置は走査型電子顕微鏡を用いた観察装置であることを特徴とする欠陥観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−82299(P2011−82299A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232439(P2009−232439)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】